以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<<第1実施形態>>
本実施形態に係るハイブリッド車輌1は、複数の動力源を車輌の駆動に使用するパラレル方式の電気自動車である。このハイブリッド車輌1は、図1に示すように、内燃機関(以下、「エンジン」という)10、第1クラッチ15、モータジェネレータ(電動機・発電機)20、第2クラッチ25、バッテリ30、インバータ35、自動変速機40、プロペラシャフト51、ディファレンシャルギアユニット52、ドライブシャフト53、及び左右の駆動輪54を備えている。
エンジン10は、ガソリン又は軽油を燃料として作動する内燃機関であり、エンジンコントロールユニット70からの制御信号に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度、インジェクタの燃料噴射量、点火プラグの点火時期等が制御される。このエンジン10には、エンジン10の回転数Neを検出するためのクランク角センサ11が設けられている。
第1クラッチ15は、エンジン10の出力軸とモータジェネレータ20の回転軸との間に介装されており、エンジン10とモータジェネレータ20との間の動力伝達を断接する。この第1クラッチ15の具体例としては、例えば比例ソレノイドで油流量及び油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチ等を例示することができる。この第1クラッチ15は、統合コントローラユニット60からの制御信号に基づいて油圧ユニット16の油圧が制御されることで、クラッチ板を締結(スリップ状態も含む。)/解放させる。
モータジェネレータ20は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータである。このモータジェネレータ20には、ロータ回転角を検出するレゾルバ21が設けられている。このモータジェネレータ20は、電動機としても機能するし発電機としても機能する。インバータ35から三相交流電力が供給されている場合には、モータジェネレータ20は回転駆動する(力行)。一方、外力によってロータが回転している場合には、モータジェネレータ20は、ステータコイルの両端に起電力を生じさせることで交流電力を生成する(回生)。また、回生中において、モータジェネレータ20には負のトルクが発生するので、駆動輪54に対して制動機能をも奏する。なお、モータジェネレータ20によって発電された交流電力は、インバータ35によって直流電流に変換された後に、バッテリ30に充電される。
バッテリ30の具体例としては、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等を例示することができる。このバッテリ30には電流・電圧センサ31が取り付けられており、これらの検出結果をモータコントロールユニット80に出力することが可能となっている。
第2クラッチ25は、モータジェネレータ20と左右の駆動輪54との間に介装されており、モータジェネレータ20と左右の駆動輪54との間の動力伝達を断接する。この第2クラッチ25の具体例としては、上述の第1クラッチ15と同様に、例えば、湿式多板クラッチ等を例示することができる。この第2クラッチ25は、トランスミッションコントロールユニット90からの制御信号に基づいて油圧ユニット26の油圧が制御されることで、クラッチ板の締結(スリップ状態も含む。)/解放させる。
自動変速機40は、前進7速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機である。この自動変速機40は、トランスミッションコントロール90からの制御信号に基づいて変速比を変化させる。なお、第2クラッチ25としては、専用クラッチとして新たに追加したものである必要はなく、図1に示すように、自動変速機40の各変速段階にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、幾つかの摩擦締結要素を流用したものとすることができる。
但し、このような構成に限定されず、例えば、図2に示すように、第2クラッチ25をモータジェネレータ20の出力軸と自動変速機40の入力軸との間に介装した構成としてもよい。或いは、図3に示すように、第2クラッチ25を、自動変速機40の出力軸とプロペラシャフト51との間に介装した構成としてもよい。
なお、図2及び図3においては、他の実施形態におけるハイブリッド車輌の構成を示す図であり、パワートレイン以外の構成は図1と同様であるため、パワートレインのみを示している。また、図1〜図3においては、後輪駆動のハイブリッド車輌を例示したが、前輪駆動のハイブリッド車両や四輪駆動のハイブリッド車輌とすることも勿論可能である。
図4は自動変速機40の構成を示すスケルトン図である。自動変速機40は、第1遊星ギアセットGS1(第1遊星ギアG1、第2遊星ギアG2)と、第2遊星ギアセットGS2(第3遊星ギアG3、第4遊星ギアG4)とを備えている。なお、これら第1遊星ギアセットGS1(第1遊星ギアG1、第2遊星ギアG2)及び第2遊星ギアセットGS2(第3遊星ギアG3、第4遊星ギアG4)は、入力軸Input側から軸方向出力軸Output側に向けて、この順に配置されている。
また、自動変速機40は、摩擦締結要素として複数のクラッチC1,C2,C3と、複数のブレーキB1,B2,B3,B4と、複数のワンウェイクラッチF1,F2と、を備えている。
第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、これら両ギアS1,R1に噛合する第1ピニオンP1を支持する第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、これら両ギアS2,R2に噛合する第2ピニオンP2を支持する第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
また、第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、これら両ギアS3,R3に噛合する第3ピニオンP3を支持する第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
さらに、第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、これら両ギアS4、R4に噛合する第4ピニオンP4を支持する第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジン10からの回転駆動力を入力する。出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を図外のファイナルギア等を介して駆動輪54に伝達する。
第1連結メンバM1は、第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とを一体的に連結するメンバである。第2連結メンバM2は、第3リングギアR3と第4キャリアPC4とを一体的に連結するメンバである。第3連結メンバM3は、第1サンギアS1と第2サンギアS2とを一体的に連結するメンバである。
第1遊星ギアセットGS1は、第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3により連結してなり、4つの回転要素から構成される。
また、第2遊星ギアセットGS2は、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4とを、第2連結メンバM2により連結してなり、5つの回転要素から構成されている。
第1遊星ギアセットGS1は、入力軸Inputから第2リングギアR2に入力されるトルク入力経路を有する。第1遊星ギアセットGS1に入力されたトルクは、第1連結メンバM1から第2遊星ギアセットGS2に出力される。
第2遊星ギアセットGS2は、入力軸Inputから第2連結メンバM2に入力されるトルク入力経路と、第1連結メンバM1から第4リングギアR4に入力されるトルク入力経路とを有する。第2遊星ギアセットGS2に入力されたトルクは、第3キャリアPC3から出力軸Outputに出力される。
なお、H&LRクラッチC3が解放され、第3サンギアS3よりも第4サンギアS4の回転数が大きい時は、第3サンギアS3と第4サンギアS4は独立した回転数を発生する。よって、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギアが独立したギア比を達成する。
また、インプットクラッチC1は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。ダイレクトクラッチC2は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。H&LRクラッチC3は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。なお、第3サンギアS3と第4サンギアS4との間には、第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
フロントブレーキB1は、第1キャリアPC1の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、フロントブレーキB1と並列に配置されている。ローブレーキB2は、第3サンギアS3の回転を選択的に停止させるブレーキである。2346ブレーキB3は、第3連結メンバM3(第1サンギアS1及び第2サンギアS2)の回転を選択的に停止させるブレーキである。リバースブレーキB4は、第4キャリアPC4の回転を選択的に停止させるブレーキである。
図5は自動変速機40での前進7速、後退1速の締結作動表を示す図である。図5中の「○」は、該当するクラッチ若しくはブレーキが締結している状態を示し、図5中の空白は、これらが解放している状態を示す。また、図5中の「(○)」は、エンジンブレーキ作動時にのみ締結することを示す。
なお、上述したように、本実施形態においては、第2クラッチ25として、自動変速機40内の摩擦締結要素を流用しており、図5中において太い線で囲まれた摩擦締結要素を第2クラッチ25とすることができる。具体的には、第1速〜第3速まではローブレーキB2を第2クラッチ25として利用し、第4速〜第7速まではH&LRクラッチC3を第2クラッチ25として利用する。
なお、上述した前進7速後退1速の有段階の変速機に特に限定されず、例えば、特開2007−314097号に記載されているような、前進5速後退1速の有段階の変速機を自動変速機40として用いてもよい。
図1に戻り、自動変速機40の出力軸は、プロペラシャフト51、ディファレンシャルギアユニット52、及び左右のドライブシャフト53を介して、左右の駆動輪54に連結されている。なお、図1において55は左右の操舵前輪である。
本実施形態におけるハイブリッド車輌1は、第1及び第2クラッチ15,25の締結/解放状態に応じて3つの走行モードに切り替えることが可能となっている。
一つ目の走行モードは、第1クラッチ15を解放させると共に第2クラッチ25を締結させて、モータジェネレータ20の動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モード(以下、「EV走行モード」と称する。)である。
二つ目の走行モードは、第1クラッチ15及び第2クラッチ25のいずれも締結させて、モータジェネレータ20に加えてエンジン10を動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と称する。)である。
三つ目の走行モードは、第2クラッチ25をスリップ状態として、エンジン10又はモータジェネレータ20の少なくとも一方を動力源に含みながら走行するスリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と称する。)である。このWSC走行モードは、特にバッテリ30のSOC(充電量:State of Charge)が低下している場合やエンジン10の冷却水の温度が低い場合等にクリープ走行を達成するモードである。
なお、EV走行モードからHEV走行モードに移行する際には、解放していた第1クラッチ15を締結し、モータジェネレータ20のトルクを利用してエンジン10を始動させる。
さらに、上記の「HEV走行モード」には、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを含む。
「エンジン走行モード」は、エンジン10のみを動力源として駆動輪54を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジン10とモータジェネレータ20の2つを動力源として駆動輪54を動かす。「走行発電モード」は、エンジン10を動力源として駆動輪54を動かすと同時に、モータジェネレータ20を発電機として機能させる。
なお、以上に説明したモードの他に、停車時において、エンジン10の動力を利用してモータジェネレータ20を発電機として機能させ、バッテリ30を充電したり電装品へ電力を供給する発電モードを備えてもよい。
本実施形態におけるハイブリッド車輌1の制御系は、図1に示すように、統合コントロールユニット60、エンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80、トランスミッションコントロールユニット90、及びブレーキコントロールユニット95を備えている。これらの各コントロールユニット60,70,80,90,95は、例えばCAN通信を介して相互に接続されている。
エンジンコントロールユニット70は、エンジン10に設けられたクランク角センサ11等からのセンサ情報を入力し、統合コントロールユニット60からの目標エンジントルクtTe等の指令に応じ、エンジン動作点(エンジン回転数Ne、エンジントルクTe)を制御する指令を、エンジン10に備えられたスロットルバルブアクチュエータ、インジェクタ、点火プラグ等に出力する。なお、エンジン回転数Ne等の情報は、CAN通信線を介して統合コントロールユニット60に送出される。
モータコントロールユニット80は、モータジェネレータ20に設けられたレゾルバ21等からの情報を入力し、統合コントロールユニット60からの目標モータジェネレータトルクtTm等の指令に応じて、モータジェネレータ20の動作点(モータ回転数Nm、モータトルクTm)を制御する指令をインバータ35に出力する。また、モータコントロールユニット80は、モータジェネレータ20に流れる電流値(電流値の正負によって駆動トルクと回生制御トルクを区別している)に基づいて、モータジェネレータトルクTmを推定する。モータ回転数Nm、モータトルクTm等の情報は、CAN通信を介してモータコントロールユニット80から統合コントロールユニット60に送出される。
また、モータコントロールユニット80は、電流・電圧センサ31により検出された電流値及び電圧値に基づいてバッテリ30のSOCを演算及び管理する。このバッテリSOC情報は、モータジェネレータ20の制御情報に用いられると共に、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。
トランスミッションコントロールユニット90は、アクセル開度センサ91及び車速センサ92等からのセンサ情報を入力し、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc1及び目標変速段を達成するように、第2クラッチ25の油圧ユニット26を含む自動変速機40内のソレノイドバルブを駆動制御する。なお、アクセル開度APO及び車速VSP等のセンサ情報は、CAN通信を介してトランスミッションコントロールユニット90から統合コントロールユニット60に送出される。
ブレーキコントロールユニット95は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ96と、ブレーキストロークセンサ97からのセンサ情報を入力し、統合コントロールユニット60からの回生協調制御指令等の指令に応じ、摩擦制動トルクを発生させる制動指令を各輪(一対の駆動輪54および一対の操舵前輪55)に備えられたブレーキユニットに出力する。各輪に備えられたブレーキユニットとしては、たとえば、摩擦制動力により制動可能なディスクブレーキを備えるものが挙げられる。車輪速センサ96やブレーキストロークセンサ97等からのセンサ情報は、CAN通信線を介して統合コントロールユニット60に送出される。
統合コントロールユニット60は、エンジン10、モータジェネレータ20、自動変速機40、第1クラッチ15及び第2クラッチ25からなるパワートレインの動作点を統合的に制御することで、ハイブリッド車輌1を効率的に走行させるための機能を担うものである。
そして、この統合コントロールユニット60は、CAN通信を介して取得される各センサからの情報に基づいてパワートレインの動作点を演算し、エンジンコントロールユニット70への制御指令によるエンジンの動作制御、モータコントロールユニット80への制御指令によるモータジェネレータ20の動作制御、トランスミッションコントロールユニット90への制御指令による自動変速機40の動作制御、ブレーキコントロールユニット95への制御指令による回生協調ブレーキ制御、第1クラッチ15の油圧ユニット16への制御指令による第1クラッチ15の締結・解放制御、及び、第2クラッチ25の油圧ユニット26への制御指令による第2クラッチ25の締結・解放制御を実行する。
次いで、統合コントロールユニット60により実行される制御について説明する。図6は統合コントロールユニット60の制御ブロック図である。なお、以下に説明する制御は、例えば10msec毎に実行される。
図6に示すように、統合コントロールユニット60は、目標駆動力演算部100、モード選択部200、目標充放電演算部300、及び動作点指令部400を備えている。
目標駆動力演算部100は、予め定められた目標駆動力マップを用いて、アクセル開度センサ91により検出されたアクセル開度APOと、車速センサ92により検出された車速VSPとに基づいて、目標駆動力tFo0を演算する。図7に目標駆動力マップの一例を示す。
モード選択部200は、予め定められたモードマップを参照し、目標モードを選択する。図8にモードマップの一例を示す。この図8のモードマップには、車速VSPとアクセル開度APOに応じて、EV走行モード、WSC走行モード、及びHEV走行モードの領域がそれぞれ設定されている。
このモードマップにおいて、エンジン始動線L0の内側にEV走行モードが割り当てられ、当該始動線L0の外側にHEV走行モードが割り当てられている。従って、モード選択部200は、EV走行モードから始動線L0を超えてHEV走行モードに移行する場合に、動作点指令部400に対してエンジン10を始動させることを要求する。
また、EV走行モード及びHEV走行モード双方の低速領域には上述のWSC走行モードがそれぞれ割り当てられている。なお、このWSC走行モードを規定するWSC車速VSPWSCは、エンジン10が自立回転不能となる車速であり、当該WSC車速VSPWSC以下の低速領域では、第2クラッチ25を締結されたままの状態ではエンジン10は安定して燃焼することができない。なお、このWSC車速VSPWSCは、HEV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウン線L2以下に設定されている。
目標充放電演算部300は、予め定められた目標充放電量マップを用いて、バッテリ30のSOCから、目標充放電電力tPを演算する。図9に目標充放電量のマップの一例を示す。
動作点指令部400は、アクセル開度APO、目標駆動力tFo0と、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、パワートレインの動作点達成目標として、過渡的な目標エンジントルクtTe、目標モータジェネレータトルクtTm、第1クラッチ伝達トルク容量tTc1、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2、及び自動変速機40の目標変速段を演算する。
自動変速機40の目標変速段は、上述の図8に一例を示す変速線L1,L2に従って演算される。この変速線L1,L2は、車速VSPとアクセル開度APOに基づいて設定されている。例えば、図8における変速線L1は、EV走行モードにおいて自動変速機40を第2速から第1速に変速するシフトダウン線であり、同図における変速線L2は、HEV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウン線である。なお、図8には、変速線の一例(シフトダウン線L1,L2)のみを図示しており、実際のシフトスケジュールは、他のシフトダウン線(例えば第3速から第2速へのダウンシフト線等)やシフトアップ線も備えている。
また、動作点指令部400は、回生協調ブレーキ制御を行うための回生制御部410を備えている。回生制御部410は、ブレーキストロークセンサ97により検出されるブレーキストロークから求められる要求制動力に基いて要求制動トルクを算出し、算出された要求制動トルクを充足するように、モータジェネレータ20による回生制動トルクと、各輪に備えられたブレーキユニットによる摩擦制動トルクとをそれぞれ設定する。そして、回生制動トルクは、目標モータジェネレータトルクtTmとして、モータコントロールユニット80に送出される。一方、摩擦制動トルクは、回生協調制御指令として、ブレーキコントロールユニット95に送出される。
なお、回生制御部410は、回生制動トルクおよび摩擦制動トルクを設定する際には、モータジェネレータ20による回生制動を優先し、回生分で賄える限りは、摩擦制動を用いずに、要求制動力を充足できるような回生制動トルクを設定する。一方、回生分では要求制動力を賄えない場合には、回生制動トルクを最大に設定すると共に、不足分を摩擦制動トルクで補うように設定する。
例えば、ドライバによってブレーキ踏み込み操作がなされたことで制動要求がされた場合において、ブレーキストロークセンサ97により検出されるブレーキストロークから求められる要求制動力に対して、モータジェネレータ20による回生制動トルクだけでは不足するときに、その不足分を摩擦制動トルクで補うように、各輪(一対の駆動輪54および一対の操舵前輪55)に備えられたブレーキユニットへ制動指令を送出することで、回生協調ブレーキ制御を行なう。
動作点指令部400によって演算された目標エンジントルクtTeは、統合コントロールユニット60からエンジンコントロールユニット70に送出され、目標モータジェネレータトルクtTmは、統合コントロールユニット60からモータコントロールユニット80に送出される。また、目標第2クラッチ伝達トルク容量tTc2と目標変速段は、統合コントロールユニット60からトランスミッションコントロールユニット90に送出される。さらに、回生協調制御指令は、統合コントロールユニット60からブレーキコントロールユニット95に送出される。
一方、目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1については、統合コントロールユニット60が、当該目標第1クラッチ伝達トルク容量tTc1に対応したソレノイド電流を油圧ユニット16に供給する。
さらに、本実施形態においては、上述の動作点指令部400の回生制御部410が、モード選択部200によって選択された走行モードに応じて、モータジェネレータ20による回生制動が可能な回生可能車速域の下限値を切り替えることが可能となっている。
図10は本実施形態におけるHEV走行モード及びEV走行モードでの回生解除車速域を示すタイムチャート、図11及び図12は本実施形態におけるHEV走行モード及びEV走行モードにおける回生制御の一例をそれぞれ示すタイムチャートである。
具体的には、本実施形態では、図10に示すように、EV走行モードでは、モータジェネレータ20による回生制動が可能な回生可能車速域の下限値VSPALが、例えば7km/hに設定されている。一方、HEV走行モードでは、モータジェネレータにより回生制動可能な回生可能車速域の下限値VSPBLが、例えば29km/hに設定されており、EV走行モードにおける下限値VSPALよりも相対的に高く設定されている。
また、本実施形態では、EV走行モード及びHEV走行モードのいずれにおいても、車速VSPが回生可能車速域の下限値に到達する前に、モータジェネレータ20による回生制動の解除を開始する。
具体的には、EV走行モードにおいて、車速センサ92により検出される車速VSPが例えば14km/h(回生解除開始車速VSPAH)となったら、モータジェネレータ20により回生制動の解除を開始して回生制動トルクを漸次的に減少させ、上記の下限値VSPAL(回生解除完了車速)となったらモータジェネレータ20による回生制動の解除を完了する。すなわち、本実施形態では、モータジェネレータ20による回生制動トルクを7km/hの車速幅の中で連続的に減少させる。
なお、EV走行モードにおいては、回生解除開始車速VSPAHが、EV走行モードにおいて自動変速機40を第2速から第1速にシフトダウンする車速VSPA2−1と一致している。なお、この車速VSPA2−1は、図8に示すシフトダウン線L1上でアクセル開度がゼロ(すなわちコースト走行)である場合に対応した車速である。
同様に、HEV走行モードにおいても、車速センサ92により検出される車速VSPが例えば36km/h(回生解除開始車速VSPBH)となったら、モータジェネレータ20による回生制動の解除を開始して回生制動トルクを漸次的に減少させ、上記の下限値VSPBL(回生解除完了車速)となったらモータジェネレータ20による回生制動の解除を完了する。すなわち、HEV走行モードにおいても7km/hの車速幅の中で、モータジェネレータ20による回生制動トルクを連続的に減少させる。
なお、このHEV走行モードにおいては、自動変速機40を第2速から第1速にシフトダウンする車速VSPB2−1が例えば19km/hに設定されており、回生解除開始車速VSPBHはこの車速VSPB2−1よりも高く設定されている。なお、この車速VSPB2−1は、図8に示すシフトダウン線L2上でアクセル開度がゼロ(すなわちコースト走行)である場合に対応した車速である。
また、本実施形態では、図10に示すように、HEV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLが、自動変速機40を第2速から第1速にシフトダウンする車速VSPB2−1よりも高く設定されている。そのため、本実施形態では、図11に示すように、HEV走行モードにおいて、自動変速機40の変速段が第1速に設定されている場合には、モータジェネレータ20による回生制動を実行することはない。このため、HEV走行モードにおいて、エンジン10が自立回転可能な車速よりも低い低速領域(WSC領域)でのモータジェネレータ20により回生制動をなくすことができ、ドライバに与える違和感を低減することができる。
因みに、HEV走行モードにおいて自動変速機40の変速段が第1速に設定されている場合に、モータジェネレータ20による回生制動を継続すると、図11の(a)にて一点鎖線で示すように、エンジン10の燃焼が不安定となり、ドライバに違和感を与えかねない。
一方、EV走行モードにおいては、回生解除完了車速VSPALが、自動変速機40を第2速から第1速にシフトダウンする車速VSPA2−1よりも低く設定されている。そのため、図12に示すように、EV走行モードにおいては、自動変速機40の変速段が第1速に設定されている場合にもモータジェネレータ20による回生制動を継続するので、燃費の向上が図られている。
以下に、上述したHEV走行モードにおける回生解除開始車速VSPBH及び回生解除完了車速VSPBLの設定方法について、図13及び図14を参照しながら説明する。
図13及び図14は、本実施形態におけるHEV走行モードの回生解除開始車速及び回生解除完了車速の設定方法を示す図であり、図13は変速段指示信号の生成を示す図、図14はG段差の確認を示す図である。
先ず、HEV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウンの車速VSPB2−1を、上述のシフトスケジュール(すなわち変速線L2)上で確認する。上述のように、本実施形態においては、このシフトダウンの車速VSPB2−1は19km/hに設定されている。
次いで、上記のシフトダウン車速VSPB2−1に基づいて、第2速から第1速へのシフトダウンの変速段指示NEXTGPを自動変速機40に出力する際の指示車速VSPNEXTGPを算出する。具体的には、図13に示すように、シフトダウン車速VSPB2−1を、自動変速機40の第2速から第1速への変速に要する変速時間Tg分だけ図13中の実車速線上で早めることで、指示車速VSPNEXTGPを算出する。車速VSPがこの指示車速VSPNEXTGPとなったら変速段指示NEXTGPを自動変速機40に対して出力することで、シフトダウン車速VSPB2−1までに自動変速機40の変速を完了させることができる。なお、有段式の自動変速機40の変速に要する時間は、ハイブリッド車輌1の減速度に関わらず一定であるので、減速度が大きいほど指示車速VSPNEXTGPが高くなる。
次いで、上記の指示車速VSPNEXTGPに対して、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動に切り替えるために必要な車速幅を上乗せする。さらに、この際、変速段指示NEXTGPを自動変速機40に出力する際に、モータジェネレータ20による回生制動の解除完了に伴って発生する減速度の変化量(G段差)が所定の許容値以下であるが否かを確認する。
具体的には、図14に示すように、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動に切り替えるために必要な車速幅として、指示車速VSPNEXTGPに7Km/hを上乗せする。この際、変速段指示NEXTGPを自動変速機40に出力する際のG段差が例えば0.03G(G段差許容値)以内であるか確認する。本実施形態では、例えば、許容値内ではあるがG段差が最大となる減速度0.3Gの場合の回生解除開始車速36km/hを、HEV走行モードにおける回生解除開始車速VSPBHとして全ての減速度に対して一律に設定する。また、この回生解除開始車速36km/hと、上述の回生制動から摩擦制動への切替時間(7km/h)とから、回生解除完了車速VSPBLが29km/hに設定される。
このように回生制動から摩擦制動への切り替えに必要な車速幅を指示車速VSPNEXTGPに上乗せすることで、当該切替時に生じる車輌空走感が発生するのを防止することができる。
なお、回生制動から摩擦制動への切り替えに必要な車速幅に代えて、指示車速VSPNEXTGPに対して、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動に切り替えるために必要な時間を上乗せしてもよい。
また、減速度に応じて回生解除開始車速VSPBHを予め設定しておき、HEV走行モードにおいてモータジェネレータ20による回生制動が行われる毎に、回生制御部410が減速度に対応した回生解除開始車速VSPBHを読み込んでもよい。
以上のようなに、本実施形態では、HEV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLを、HEV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウン車速VSPB2−1(すなわちシフトダウン線L2)と、第2速から第1速への変速に要する変速時間Tgと、に基づいて設定する。具体的には、本実施形態では、同一減速度の速度−時間直線上で車速VSPB2−1を変速時間Tgだけ早めた車速VSPNEXTGP以上の車速を、モータジェネレータ20の回生可能車速の下限値VSPBLとして設定する。これにより、HEV走行モードにおいて自動変速機40が第1速にシフトダウンする前に、モータジェネレータ20による回生制動を確実に解除しきることができ、動力伝達経路を介してモータジェネレータ20にトルクを伝達できない変速段に移行する変速が発生する前に回生制動を解除しきることができるので、ドライバに与える違和感を低減することができる。
また、本実施形態では、HEV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLを、EV走行モードにおける回生解除完了車速VSPALよりも高く設定する。このため、HEV走行モードにおいてはWSC領域でのモータジェネレータ20による回生制動をなくすことができ、ドライバに与える違和感を低減することができるのに対し、EV走行モードでは、最大限に回生制動を行うことができるので、燃費向上を図ることができる。
また、本実施形態では、HEV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウン線L2と、第2速から第1速への変速に要する変速時間Tgと、に加えて、モータジェネレータ20による回生制動の解除完了時における減速度の変化量(G段差)の許容値に基づいて、HEV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLを設定するので、回生制動を絞り切った際に生じるショックを抑制することができ、ドライバに与える違和感を低減することができる。
また、本実施形態では、回生制御部410が、HEV走行モードにおいてモータジェネレータ20による回生制動を開始してから完了するまでの間に、モータジェネレータ20による回生制動トルクを漸次的に減少させるので、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動への切替時に車輌空走感が発生するのを防止することができる。
さらに、本実施形態では、HEV走行モードにおいて、自動変速機40の変速段が第1速に設定されている場合に、モータジェネレータ20による回生制動を実行することはない(すなわちモータジェネレータ20による回生制動が禁止されている)ので、自動変速機40の入力側の回転数がエンジン10の自立回転可能な回転数よりも低くなる低速領域(WSC領域)でのモータジェネレータ20により回生制動をなくすことができ、ドライバに与える違和感を低減することができる。
なお、本実施形態における回生制御部410が本発明における回生制御手段の一例に相当し、本実施形態におけるシフトダウン線L2が、本発明におけるHEV走行モードでの第2速から第1速への変速線の一例に相当の一例に相当し、本実施形態における自動変速機40の第2速から第1速への変速に要する変速時間Tgが、本発明における変速機の変速に要する変速時間の一例に相当し、本実施形態におけるEV走行モードの回生解除完了車速VSPALが本発明におけるEV走行モードでの回生可能車速域の下限値の一例に相当し、本実施形態におけるHEV走行モードの回生解除完了車速VSPBLが本発明におけるHEV走行モードでの回生可能車速域の下限値の一例に相当し、本実施形態におけるG段差の許容値が本発明におけるモータジェネレータによる回生制動の解除完了時の前記減速度の変化量の許容値の一例に相当する。
<<第2実施形態>>
以下に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。図15は本実施形態における各走行モードでの回生制動トルクと車速との関係を示すグラフ、図16は本実施形態におけるモードマップ及び変速線を示す図である。
本実施形態のハイブリッド車輌は、図1において破線で示すように、自動変速機40を自動で変速させる自動変速モード(Dレンジ)と、自動変速機40を手動で変速させる手動変速モード(Mモード)とを、切り換えるマニュアルモードセレクトスイッチ93を備えている。このマニュアルモードセレクトスイッチ93は、例えば、手動変速モードが選択されたことを示すON信号を出力するように、トランスミッションコントロールユニット90に接続されている。
そして、トランスミッションコントロールユニット90は、このマニュアルモードセレクトスイッチ93がONとなっている場合には、ドライバによるシフトアップ/ダウンスイッチ(不図示)の操作に応じて自動変速機40を変速する。一方、マニュアルモードセレクトスイッチ93がOFFとなっている場合には、トランスミッションコントロールユニット90は、第1実施形態と同様に、統合コントロールユニット60からの指令に基づいて自動変速機40を自動的に変速する。
従って、本実施形態では、EV走行モードにおいて、マニュアルモードセレクトスイッチ93がONである場合には手動変速EV走行モードとなるのに対し、マニュアルモードセレクトスイッチ93がOFFである場合には自動変速EV走行モードとなる。同様に、HEV走行モードにおいて、マニュアルモードセレクトスイッチ93がONである場合には手動変速HEV走行モードとなるのに対し、マニュアルモードセレクトスイッチ93がOFFである場合には自動変速HEV走行モードとなる。
また、本実施形態における回生制御部410は、EV走行モード及びHEV走行モードの2つの走行モードだけではなく、自動変速EV走行モード、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードの4つの走行モードに応じて、回生可能車速域の下限値を切り替えることが可能となっている。
具体的には、図15に示すように、自動変速EV走行モードでは、モータジェネレータ20による回生制動が可能な回生可能車速域の下限値VSPALが、例えば7km/hに設定されている。一方、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードでは、モータジェネレータにより回生制動可能な回生可能車速域の下限値VSPBLが、例えば29km/hに設定されており、自動変速EV走行モードにおける下限値VSPALよりも相対的に高く設定されている。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、自動変速EV走行モード、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードのいずれにおいても、車速VSPが回生可能車速域の下限値に到達する前から、モータジェネレータ20による回生制動の解除を開始する。
具体的には、自動変速EV走行モードにおいて、車速センサ92により検出される車速VSPが例えば14km/h(回生解除開始車速VSPAH)となったら、モータジェネレータ20により回生制動の解除を開始して回生制動トルクを漸次的に減少させ、上記の下限値VSPAL(回生解除完了車速)となったらモータジェネレータ20による回生制動の解除を完了する。すなわち、本実施形態では、モータジェネレータ20による回生制動トルクを7km/hの車速幅の中で連続的に減少させる。
自動変速EV走行モードにおいては、回生解除開始車速VSPAHが、自動変速機40を第2速から第1速にシフトダウンする車速VSPA2−1(=5km/h)よりも高くなっている。なお、この車速VSPA2−1は、図16に示すシフトダウン線L1上でアクセル開度がゼロ(すなわちコースト走行)である場合に対応した車速である。
同様に、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードにおいても、車速センサ92により検出される車速VSPが例えば36km/h(回生解除開始車速VSPBH)となったら、モータジェネレータ20による回生制動の解除を開始して回生制動トルクを漸次的に減少させ、上記の下限値VSPBL(回生解除完了車速)となったらモータジェネレータ20による回生制動の解除を完了する。すなわち、HEV走行モードにおいても7km/hの車速幅の中で、モータジェネレータ20による回生制動トルクを連続的に減少させる。
なお、この手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードにおいては、自動変速機40を第2速から第1速にシフトダウンする車速VSPB2−1が例えば19km/hに設定されており、回生解除開始車速VSPBHはこの車速VSPB2−1よりも高く設定されている。なお、この車速VSPB2−1は、図16に示すシフトダウン線L2上でアクセル開度がゼロ(すなわちコースト走行)である場合に対応した車速である。
本実施形態では、第1実施形態と同様の方法によって、同一減速度の速度−時間直線上で車速VSPB2−1を変速時間Tg分だけ早めた車速VSPNEXTGP以上の車速を、回生解除完了車速VSPBLとして設定する。また、回生解除開始車速VSPBHも、第1実施形態と同様の方法によって設定する。
なお、本実施形態では、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードにおける回生解除開始車速VSPBH及び回生解除完了車速VSPBLを同一としたが、特にこれに限定されず、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードに対して回生解除開始車速や回生解除完了車速を個別に設定してもよい。また、回生解除開始車速や回生解除完了車速を設定する際に、車速VSPB2−1に代えて、WSC車速VSPWSCを用いてもよい。
さらに、本実施形態では、トランスミッションコントロールユニット90は、図1において破線で示すように、走行状況に応じて変速線を変化させるASC(Adaptive Shift Control)部94を備えている。
このASC部94は、例えば、目標エンジントルクtTeや車速VSPに基づいて、走行中の道路が登坂路であるか又は降坂路であるかを判断する。そして、例えば、走行中の道路が登坂路であると判断した場合には、図16に示すように、シフトダウン線L1,L2をL1’,L2’に上昇させて、シフトハンチングを防止する。一方、走行中の道路が降坂路であると判断した場合には、通常のシフトダウン線L1,L2を維持する。
なお、このASC部94が、横Gセンサ(不図示)の検出結果に基づいて、走行中の道路が緩やかなカーブであるか又は急なカーブであるか等を判断し、その判断結果に基づいて変速線を変化させてもよい。また、本実施形態では、ASC機能が自動的に作動するが、例えば、ドライバがセレクトスイッチ等を介して手動でASC機能を作動させてもよい。また、このASC部94を第1実施形態に適用してもよい。
次に、本実施形態における回生解除開始車速及び回生解除完了車速の切替方法について、図17を参照しながら説明する。図17は本実施形態における回生解除開始車速及び回生解除完了車速の切替方法を示すフローチャートである。
先ず、図17のステップS10において、トランスミッションコントロールユニット90は、マニュアルモードセレクトスイッチ93の出力に基づいて、手動変速モード又は自動変速モードの何れが選択されているかを判断する。
EV走行モードにおいて手動変速モードが選択されていると判断した場合(ステップS10にてNO)には、ステップS30において、回生制御部410が、回生解除開始車速を、自動変速EV走行モードにおける回生解除開始車速VSPAH(=14km/h)から手動変速EVモードにおける回生解除開始車速VSPBH(=36km/h)に上昇させると共に、回生可能車速域の下限値を、自動変速EV走行モードにおける回生解除完了車速VSPAL(=7km/h)から手動変速EV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBL(=29km/h)に上昇させる。
一方、EV走行モードにおいて自動変速モードが選択されていると判断した場合(ステップS10にてYES)には、ステップS20において、ASC部94が変速線を変化させているか否かを判断する。
例えば、図16に示すように、シフトダウン線L1,L2がL1’,L2‘に変化している場合(ステップS20にてYES)には、ステップS30において、回生制御部410が、上昇後のシフトダウン線L1’,L2’に基づいて設定された回生解除開始車速と回生解除完了車速に切り替える。なお、この場合の回生解除開始車速と回生解除完了車速は、通常の自動変速EV走行モードにおける回生解除開始車速VSPAHと回生解除完了車速VSPALよりも高く設定されている。
一方、ASC部94がシフトダウン線L1,L2を変化させていない場合(ステップS20にてNO)には、回生制御部410は、通常の自動変速EV走行モードにおける回生解除開始車速VSPAH(=14km/h)と回生解除完了車速VSPAL(=7km/h)とを維持する(ステップS40)。
以上のように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、自動変速HEV走行モード及び手動変速HEV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLを、自動変速HEV走行モード及び手動変速HEV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウン車速VSPB2−1(すなわちシフトダウン線L2)と、第2速から第1速への変速に要する変速時間Tgと、に基づいて設定する。
そのため、自動変速HEV走行モード及び手動変速HEV走行モードにおいて自動変速機40が第1速にシフトダウンする前に、モータジェネレータ20による回生制動を確実に解除しきることができる。このため、自動変速機の入力側回転数が内燃機関の自立回転可能な回転数よりも低い領域でのモータジェネレータによる回生制動をなくすことができ、動力伝達経路を介してモータジェネレータ20にトルクを伝達できない変速段に移行する変速が発生する前に回生制動を解除しきることができるので、ドライバに与える違和感を低減することができる。
また、本実施形態では、手動変速EV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLも、手動EV走行モードにおける第2速から第1速へのシフトダウン車速VSPB2−1(すなわちシフトダウン線L2)と、第2速から第1速への変速に要する変速時間Tgと、に基づいて設定される。
そのため、手動EV走行モードにおいて自動変速機40が第1速にシフトダウンする前に、モータジェネレータ20による回生制動を確実に解除しきることができ、減速度の絶対値が瞬間的(一時的)に減少する(減速度が0に近づくように変化する)変速が発生する前に回生制動を解除しきることができる。このため、シフトダウン時に自動変速機40に生じる油圧抜けに伴うショックを防止することができ、ドライバに与える違和感を低減することができる。
因みに、手動変速EV走行モードにおいて、回生可能車速域の下限値を、自動変速EV走行モードと同様の7km/hに設定すると、回生制動中にシフトダウンが行われることとなるので、シフトダウン時に自動変速機40に一時的に生じる油圧抜けによってドライバに違和感を与えかねない。
また、本実施形態では、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードにおける回生解除完了車速VSPBLを、自動変速EV走行モードにおける回生解除完了車速VSPALよりも高く設定する。このため、手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードにおいてはドライバに与える違和感を低減することができるのに対し、自動変速EV走行モードでは、最大限に回生制動を行うこので、燃費向上を図ることができる。
また、本実施形態では、ACS部94によって変速線が変化している場合には、当該変化後の変速線に基づいて設定された回生解除開始車速と回生解除完了車速を用いるので、走行状況に応じて変速線が上昇した場合でも、第2速から第1速へのシフトダウンが開始する前に、モータジェネレータ20による回生制動を確実に解除しきることができる。
図18は本実施形態において回生制動中に自動変速モードから手動変速モードへの切替が行われた場合の回生制御の一例を示すタイムチャート、図19は本実施形態において回生制動中に手動変速モードから自動変速モードへの切替が行われた場合の回生制御の一例を示すタイムチャートである。
さらに、本実施形態では、EV走行モードにおいてシフトダウン中であり且つ回生制動中に、自動変速モードと手動変速モードとの間で変速モードの切替が行われた場合に、回生制御部410は、回生制動トルクを漸次的に増加又は減少させる制御を行うことが可能となっている。
ここで、自動変速EV走行モードと手動変速EV走行モードでは回生制動トルクが大きく相違するため(図15参照)、ドライバによるマニュアルモードセレクトスイッチ93の操作に応じて回生制動トルクを急に変化させると、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動への切替が追い付けず、ドライバに違和感を与えかねない。
そこで、本実施形態では、図18に示すように、自動変速EV走行モードから手動変速EV走行モードに切り替えられると(図18の(a)参照)、回生制御部410は、モータジェネレータ20による回生制動トルクを徐々に減少させる(図18の(b)参照)。また、それと同時に、回生制動トルクの減少分を相殺するために、ブレーキユニットによる摩擦制動トルクを徐々に増加させる(図18の(c)参照)。
このため、本実施形態では、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動への切替をスムーズに行うことができ、ドライバに与える違和感を低減することができる。また、自動変速機40内の油圧も緩やかに変化することとなるので、変速ショックを防止することもできる(図18の(d)参照)。
一方、図19に示すように、手動変速EV走行モードから自動変速EV走行モードに切り替えられると(図19の(a)参照)、回生制御部410は、モータジェネレータ20による回生制動トルクを徐々に増加させる(図19の(b)参照)。また、それと同時に、回生制動トルクの増加分を相殺するために、ブレーキユニットによる摩擦制動トルクを徐々に減少させる(図19の(c)参照)。これにより、モータジェネレータ20による回生制動からブレーキユニットによる摩擦制動への切替をスムーズに行うことができ、ドライバに与える違和感を低減することができる。
なお、自動変速EV走行モードから手動変速HEV走行モードへの切替の際や、自動変速HEV走行モードから手動変速EV走行モード又は手動変速HEV走行モードへの切替の際に、上記の図18に示す制御を実行してもよい。また、手動変速EV走行モードから自動変速HEV走行モードへの切替の際や、手動変速HEV走行モードから自動変速EV走行モード又は自動変速HEV走行モードへの切替の際に、上記の図19に示す制御を実行してもよい。
なお、本実施形態における回生制御部410が本発明における回生制御手段の一例に相当し、本実施形態における回生解除完了車速VSPALが本発明における自動変速EV走行モードでの回生可能車速域の下限値の一例に相当し、本実施形態における回生解除完了車速VSPBLが本発明における手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードでの回生可能車速域の下限値の一例に相当し、本実施形態におけるシフトダウン線L2が、本発明における手動変速EV走行モード、自動変速HEV走行モード、及び手動変速HEV走行モードでの第2速から第1速への変速線の一例に相当の一例に相当し、本実施形態におけるWSC車速VSPWSCが本発明におけるWSC遷移線の一例に相当し、本実施形態における自動変速機40の第2速から第1速への変速に要する変速時間Tgが、本発明における変速機の変速に要する変速時間の一例に相当し、本実施形態におけるASC部94が、本発明における変速線変更手段の一例に相当する。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。