JP5787413B2 - 塊茎生産能または匍匐枝形成能が野生株に比して向上している匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物 - Google Patents

塊茎生産能または匍匐枝形成能が野生株に比して向上している匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物 Download PDF

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Description

本発明は、塊茎生産能が野生株に比して向上している匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物に関する。また本発明は匍匐枝形成植物の塊茎生産能を向上させるためのキットに関する。
さらに本発明は、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキットをも包含する。
2008年は国際連合が定めたジャガイモを対象とした国際イモ年である。国際連合によると、これからの20年間に、世界の人口は平均値で、毎年1億人以上ずつ増加するものと予測されており、人口増加に伴う食糧難は世界的問題となっている。特にこの人口の増加傾向の95%以上は、開発途上諸国で生じるとされる。ジャガイモ等のイモ類は、栄養価の高い作物であるとともに、狭い土地で栽培可能である等の開発途上国での栽培条件を満たすため、普及活動が広く推進されている。インドでは、向こう5〜10年でジャガイモ生産量を2倍にする研究に着手し、またサハラ以南のアフリカではジャガイモ生産量があらゆる作物を上回るペースで拡大している。今後、ジャガイモ消費量が拡大していけば、その多くを栽培している開発途上国の農家収入の増加につながり、ジャガイモは食糧安全保障と収入創出の両面をカバーできる作物であると考えられている。
しかしながら、これらの達成には農地面積が限られている現状を考慮すると、農地単位面積当たりの作物(ジャガイモ等のイモ類等)の収穫量、つまり植物個体当たりの作物の収量増加が必要となる。そこで、これまで遺伝子組換え技術を用いて、植物個体当たりの作物の生産性を向上させることについて多くの研究がなされてきた。
例えば、デンプン合成原料であるショ糖の合成鍵酵素SPS(ショ糖リン酸合成酵素)遺伝子をジャガイモに導入することでデンプンの代謝機能を促進させ、ジャガイモの可食部である塊茎の生産性を1.2倍向上させたことが非特許文献1に開示されている。またADK(アデニル酸キナーゼ)遺伝子をジャガイモに導入することでデンプンの代謝機能を促進させ、ジャガイモの可食部である塊茎の生産性を約2倍向上させたことが非特許文献2に開示されている。
一方、本発明者らはラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードする遺伝子をタバコに導入し、タバコの葉緑体で当該遺伝子を発現させることによって、光合成機能を向上させ植物の生育を促進することに成功している(特許文献1を参照のこと)。
また、本発明者らは植物の根に対する伸長促進活性を有する遺伝子(Ran遺伝子)を、ボツワナ原産スイカ(Citrullus lanatus)から新たに見出し、当該Ran遺伝子をシロイヌナズナに導入することによって、根の伸長が促進されたシロイヌナズナの取得に成功している(特許文献2を参照のこと)。
日本国公開特許公報「特開2002−300821(公開日:平成14年(2002)10月15日)」 国際公開第2007/100094号パンフレット(国際公開日:2007年9月7日)
Plant Prod. Sci. 2(2), 92−9 (1999) Nature Biotechnol. 20(12), 1256−60 (2002)
背景技術で記載したように、食糧難問題を解決するため、世界的主要産物であるイモ類、特にジャガイモの収量増加を目指して研究が行われてきた。しかし、これまでに遺伝子組換え技術を用いて得られたトランスジェニックジャガイモの可食部である塊茎の収量は、野生株の2倍程度の増加に過ぎない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ジャガイモ等の匍匐枝形成植物について、塊茎生産能が野生株に比して顕著に向上している匍匐枝形成植物を作製するための手段、および当該方法によって作製された匍匐枝形成植物を提供することにある。
さらに本発明は、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキットを提供することを目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、偶然にも植物の根に対する伸長促進活性を有する遺伝子(Ran遺伝子)をジャガイモに導入することで、塊茎の重量と数が増加することを見出した。またRan遺伝子をジャガイモに導入することで、匍匐枝の数を増加させることができることも発見した。さらに検討を重ねた結果、上記Ran遺伝子に加えて、光合成を促進させる機能を有する遺伝子(ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードする遺伝子)をジャガイモに導入することで、さらにジャガイモの塊茎の収量が増加することを見出し、本発明を完成するに至った。この発明によるジャガイモ収量増加は、過去に報告された収量増加をはるかに凌ぐものであった。
なお、上記Ran遺伝子はあくまで根の伸長を促進するための機能を有する遺伝子であることが知られているに過ぎず、かようなRan遺伝子が茎組織である塊茎の生産能向上および光合成能向上に寄与するなどということは当業者に予想できない。
本発明にかかる作製方法は、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法であり、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴としている。
本発明にかかる匍匐枝形成植物は、上記作製方法により作製されてなる、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物である。
本発明にかかるキットは、匍匐枝形成植物の塊茎生産能を向上させるためのキットであり、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴としている。
また本発明は、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴とする匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法をも包含する。
さらに本発明は、上記作製方法により作製されてなる、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物をも包含する。
さらに本発明は、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を含むことを特徴とする、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキットをも包含する。
本発明により、塊茎生産能が野生株に比して向上している匍匐枝形成植物の作製方法、当該作製方法によって作製された匍匐枝形成植物を提供することが可能となる。また本発明により、匍匐枝形成植物の塊茎生産能を向上させるためのキットを提供することが可能となる。
さらに本発明は、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキットを提供することが可能となる。
それゆえ本発明によれば、世界的な食糧難問題を解決する一つの手段を提供することができる。
本発明の塊茎生産能を向上させる作用機序を示す模式図である。 実施例および比較例において、ジャガイモに導入した遺伝子構築物の構造を示す模式図である。 実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモについて、各遺伝子導入をPCRによって確認したPCR産物のアガロースゲル電気泳動図である。 実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)について、導入された各遺伝子の発現をウエスタンブロット法により確認した結果を示す図であり、(a)はRanタンパク質を検出した結果を示し、(b)はFBPase/SBPaseを検出した結果を示す。 (a)は実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の植物体全体の写真であり、(b)は同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の地下茎部および根部周辺の写真であり、(c)は同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)から収穫した塊茎の写真である。 (a)は実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の地上部の高さを比較したグラフであり、(b)は実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の地上部乾燥重量を比較したグラフであり、(c)は実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の匍匐枝の数を比較したグラフであり、(d)は同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の塊茎の数を比較したグラフであり、(e)は同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の塊茎の重量を比較したグラフであり、(f)は同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の光合成速度を比較したグラフである。 (a)は実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ塊茎を萌芽能試験に供した1ヶ月後の写真であり、(b)は2ヶ月後の写真である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.匍匐枝形成植物の作製方法>
本発明にかかる匍匐枝形成植物の作製方法(「本発明の作製方法」という)は、Ran遺伝子を導入する工程(「Ran遺伝子導入工程」という)を含むことを特徴としている。また、本発明にかかる匍匐枝形成植物の作製方法には、上記Ran遺伝子導入工程に加えて、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチド(FBPase/SBPase遺伝子)を導入する工程(「FBPase/SBPase遺伝子導入工程」)が含まれていてもよい。さらに上記導入工程の他、匍匐枝形成植物の作製において含まれ得るその他の工程が含まれていてもよい。上記その他の工程としては、例えば、導入工程後に匍匐枝形成植物を培養する工程が挙げられる。
なお、本明細書においては「フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ」と表記するが、「フルクトース−1,6−/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ」と同義である。また本明細書では「FBPase/SBPase」と表記するが、「FBP/SBPase」と同義である。
なお、上記Citrullus lanatus由来のRan遺伝子およびラン藻由来のFBPase/SBPase遺伝子をそれぞれ単独で匍匐枝形成植物に導入するよりも、両者の遺伝子を共に導入することで、塊茎生産能を一層向上させることが可能となる。
<1−1.Ran遺伝子導入工程>
上記Ran遺伝子導入工程では、匍匐枝形成植物にRan遺伝子を導入することで塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物を作製できる。
本発明にかかる作製方法は、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法であり、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴としている。
本発明にかかる作製方法は、上記Ran遺伝子が、以下の(A)または(B)であることを特徴とするものであってもよい:
(A)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(B)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
本発明にかかる作製方法は、上記Ran遺伝子が、以下の(C)または(D)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とするものであってもよい:
(C)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(D)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチド。
ここで「塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチド」とは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを匍匐枝形成植物に導入し、当該ポリヌクレオチドが発現することによって、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物を作製することできる活性を有するポリペプチドのことを意味する。
ここで「Ran遺伝子」は、アフリカ・ボツアナ共和国付近一帯に位置するカラハリ砂漠に生育する野生のスイカ(シトルルスラナタス:Citrullus lanatus)に由来する。本発明の作製方法において好適に使用可能なRan遺伝子は、Citrullus lanatus由来の組織から当業者に公知の方法で調製した全mRNAを鋳型として、上記Ran遺伝子の全長を増幅可能なように設計したプライマーを用いて、RT−PCR法により取得することができる。また、上記Ran遺伝子は、Citrullus lanatus由来のcDNAライブラリーを鋳型として、上記Ran遺伝子の全長を増幅可能なように設計したプライマーを用いてPCR法により取得することもできる。
PCR法による上記Ran遺伝子の増幅は、鋳型となるポリヌクレオチド、PCRバッファー、プライマーセット(フォワードプライマー、およびリバースプライマー)、dNTPmixture(デオキシヌクレオチド三リン酸の混合物)、およびDNAポリメラーゼを含む反応溶液中で、温度の上下のサイクルを繰り返すことにより実施される。
本発明の一実施形態では、上記Ran遺伝子は化学的に合成された塩基で置換されてもよい。また、上記Ran遺伝子が置換される部位は特に限定されず、置換後の塩基配列から発現するタンパク質が好適な性質を有していればよい。
上記Ran遺伝子は、Citrullus lanatusに由来するRanタンパク質をコードするポリヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、その他の塩基配列が付加されていてもよい。付加され得る塩基配列としては、限定されないが、標識タンパク質をコードする塩基配列(例えば、ヒスチジンタグ、Mycタグ、およびFLAGタグなど)、GSTやMBPなどRanタンパク質と融合させるタンパク質をコードする塩基配列、プロモーター配列をコードする塩基配列(例えば、酵母由来プロモーター配列、ファージ由来プロモーター配列、および大腸菌由来プロモーター配列など)、およびシグナル配列(例えば、小胞体移行シグナル配列、および分泌配列など)をコードする塩基配列などが挙げられる。これらの塩基配列が付加される部位は特に限定されるものではなく、翻訳されるタンパク質のN末端であっても、C末端であってもよい。
上記Ran遺伝子には、Citrullus lanatusに由来するRanタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号1または2に示した塩基配列を有するポリヌクレオチド)、またはこれに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドも含まれる。つまり本発明のRan遺伝子として機能するものであれば、配列番号1または2に示した塩基配列を有するポリヌクレオチドに限定されるものではなく、Ran遺伝子の変異体をも含む意味である。このようなポリヌクレオチドであれば、塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチドをコードしているといえ、本発明における所望の効果を奏する。
ここで、本明細書における「ストリンジェントな条件」とは、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドのT値から15℃、好ましくは10℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。具体例としては、一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。換言すれば上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、さらに好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味している。
本発明の作製方法に利用されるRan遺伝子の塩基配列は、参考文献:Science., 214(4526), 1205-10 (1981)に記載されたジデオキシ法により決定され得る。
本発明の作製方法に好適に使用可能な組換えベクターは、植物形質転換用ベクターに上記Ran遺伝子を挿入することにより取得し得る。植物細胞形質転換用ベクターとしては、特に限定されないが、例えば、Tiプラスミド由来のpBI101、pBI121、pBI122(クロンテック社製)、PBE2113-GUS(独立行政法人農業生物資源研究所)等や、ジェミニウイルスベクター(WDVなど)、RNAウイルス由来のベクター(タバコモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、ポティウイルス由来のウイルスベクターなど)などを好ましく用いることができる。さらにベクターから切り出したRan遺伝子のポリヌクレオチド断片を植物細胞中に直接導入したり、プロモーター、ポリAのいずれかまたは両方を持たないポリヌクレオチド断片を直接植物ゲノムに組み込み、内在性のプロモーターやポリAシグナルにより転写制御したりすることも可能である。
本発明に好適に使用可能な組換えベクターを構築するには、上記Ran遺伝子を分離および精製した後、制限酵素処理などを用いて切断した該ポリヌクレオチドの断片と、ベースとなるベクターを制限酵素で切断して得た直鎖ポリヌクレオチドとを結合閉鎖させて構築することができる。結合閉鎖する際にはDNAリガーゼなどがベクターおよび該ポリヌクレオチドの性質に応じて使用され得る。上記ベクターを複製可能な宿主に導入した後、ベクターのマーカーおよび酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、上記Ran遺伝子を含有する植物の形質転換体を得ることができる。よって、上記ベクターには薬剤耐性遺伝子などのマーカー遺伝子が含まれていることが好ましい。
なお、配列番号1および2に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドを用いて構築されたベクターは、それぞれ配列番号3および4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの発現ベクターとして利用することができる。
本発明の作製方法においては、上記組換えベクターを目的の宿主植物に導入することによって、塊茎生産性の促進された植物を作製することができる。
本発明の作製方法によって塊茎生産能の促進効果がある植物としては、塊茎を作製し得る植物である。塊茎は匍匐枝の先端が肥大し、そこにデンプンや他の栄養分が蓄積されている。よって本発明の作製方法によって塊茎生産能の促進効果がある植物は、匍匐枝(「ストロン」ともいう)を形成し得る植物(「匍匐枝形成植物」という)であるといえる。本発明の作製方法が適用される匍匐枝形成植物は、特に限定されるものではなく、例えばジャガイモ、クワイ、サトイモ、コンニャク、レンコン、キクイモ、ショウガ、甘草などが挙げられる。
なお、後述する実施例で示したように、匍匐枝形成植物にRan遺伝子を導入することで匍匐枝の数が野生株に比して増加する。よって、本発明は、上記Ran遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴とする匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法をも包含するといえる。この場合、本発明が適用される植物は上記塊茎を作製する匍匐枝形成植物に加え、塊茎を作製しない匍匐枝形成植物(例えばイチゴ、ユキノシタなど)であってもよいといえる。イチゴなどは、匍匐枝を地上に形成し、当該匍匐枝上に可食部(果実)が形成される。このため、匍匐枝形成能を向上させる(すなわち匍匐枝の数が増える)ことによって、イチゴの可食部(果実)の収量を増加させることが可能となり得る。なお、本発明に係る匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法の説明は、本発明に係る塊茎生産能が野生株に比して向上している匍匐枝形成植物の作製方法の説明を援用し得る。
宿主植物の形態および導入部位については、植物培養細胞;カルス;プロトプラスト;栽培植物の植物体全体:葉、花弁、茎、根、根茎、種子等の植物器官;および表皮、師部、柔組織、木部、維管束等の植物組織のいずれであってもよい。
Ran遺伝子を宿主植物に導入する方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属細菌を用いる方法(アグロバクテリウム法)、エレクトロポレーション法、パーティクルクルガン法、マイクロインジェクション法などの当業者に公知の方法が採用され得る。これらの中でも、植物の形質転換法として好適なアグロバクテリウム法が特に好ましい。
アグロバクテリウム法は周知であり、例えば、上記組換えベクターが導入されたアグロバクテリウム細菌を植物細胞または切片に感染させることによって実施される(例えば、参考文献:Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94(6), 2117-21 (1997)参照)。
本発明には、特許文献2に開示されている全てのCitrullus lanatus由来のRan遺伝子および該遺伝子から転写・翻訳されるタンパク質が好適に使用され得る。上記Ranタンパク質のアミノ酸配列において、欠失、置換、付加が行われても、Ranタンパク質としての機能を保持する限り、本発明の範囲内である。
<1−2.FBPase/SBPase遺伝子導入工程>
本発明にかかる作製方法は、ラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドを、匍匐枝形成植物に導入する工程をさらに含むものであってもよい。
本発明にかかる作製方法は、上記ラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドが、以下の(E)または(F)であることを特徴とするものであってもよい:
(E)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(F)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつFBPase/SBPaseの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
本発明にかかる作製方法は、上記ラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドが、以下の(G)または(H)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とするものであってもよい:
(G)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(H)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつFBPase/SBPaseの活性を有するポリペプチド。
ここで、ラン藻(Synechococcus PCC 7942)由来のFBPase/SBPaseは、原核藻類であるラン藻に広く分布する酵素をコードする遺伝子である。また、該遺伝子から転写・翻訳されたタンパク質は、1つでFBPase/SBPaseの2つの酵素活性を有するバイファンクショナル酵素である。このFBPase/SBPaseについては、参考文献「Archives of Biotechnology and Biophysics,Vol.334,No1,pp.27 to 36, 1996 「Molecular characterization and resistance to hydrogen peroxide of two fructose-1,6-bisphosphatase from Synechococcus PCC 7942」」に記載されている。なお、「FBPase/SBPase遺伝子」は、Genbank にAccession No. D83512として登録されている。
本発明には、特許文献1に開示されている全てのラン藻由来のFBPase/SBPase遺伝子および該遺伝子から転写・翻訳されるタンパク質が好適に使用可能である。つまり、上記FBPase/SBPaseタンパク質のアミノ酸配列において、欠失、置換、付加が行われても、FBPase/SBPaseタンパク質としての酵素学的な性質を保持する限り、本発明の作製方法において好適に使用可能である。
また、FBPase/SBPase遺伝子導入工程においては、上記Ran遺伝子導入工程の遺伝子導入方法が好適に使用可能である。また、上記Ran遺伝子とFBPase/SBPase遺伝子とはそれぞれ別々の組換えベクターを使用して匍匐枝形成植物体へ導入されてもよいし、同一の組換えベクター内に上記Ran遺伝子とFBPase/SBPase遺伝子とが挿入された1つの組換えベクター使用して匍匐枝形成植物体へ導入されてもよいが、組換え操作が容易であること、遺伝子導入効率が高いことから後者の方がより好ましいといえる。
図1に本発明の作用機序を示した。Ran遺伝子が匍匐枝形成植物体へ導入されることによって匍匐枝(ストロン)の発達が促進される。これにより将来塊茎になるべき部位数が増加する。塊茎になるための部位数が増加することで、デンプン合成の促進シグナルが働き、これが地上部の葉での光合成を活性化する。これによって、野生株より、活性化された光合成によりショ糖合成量が高くなり、ショ糖(デンプン合成の原料)が地下部に転流され、これがデンプンに変換され匍匐枝に蓄積し、野生株よりも塊茎重量および/または塊茎数が増加すると考えられる。さらにRan遺伝子に加え、FBPase/SBPase遺伝子が導入されることによって、Ran遺伝子単独導入の場合よりもさらに光合成が促進される。これによって、デンプンの原料となるショ糖が増加し、さらにデンプンの合成が促進される。その結果、さらに塊茎の生産性が向上するということになる。
なお、本明細書において上記「1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により置換、欠失、若しくは付加できる程度の数のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されていることを意味する。このような変異ポリペプチドは、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
<2.本発明の匍匐枝形成植物>
本発明にかかる匍匐枝形成植物は、上記本発明の作製方法により作製されてなる、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物であることを特徴としている。ここで「塊茎生産能が野生株に比して向上する」とは、本発明の作製方法により取得された形質転換植物の塊茎重量および/または塊茎数が、本発明の作製方法が実施されていない匍匐枝形成植物(野生株)のそれらに比して増加することを意味する。塊茎生産能が野生株に比して向上したかどうかは、複数個体の野生株と形質転換植物とについて塊茎重量および/または塊茎数を検討し、1個体当たりの平均塊茎重量および/または平均塊茎数を比較し、後者が前者を上回っていれば塊茎生産能が野生株に比して向上したと判断することができる。
上記Ran遺伝子を宿主植物へ導入後、上記Ran遺伝子が導入された植物細胞を選択し、当該細胞からカルス状の組織を形成させ、次いで、当該カルス状の組織から芽が出現した段階で発根培地に移植することにより、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物体を得ることができる。
上記Ran遺伝子が導入された植物細胞を選択し、当該植物細胞から芽が出現したカルス状の組織を形成させるには、例えば、以下の培養条件を採用することが好ましい。即ち、上記Ran遺伝子が導入された植物細胞または切片を、導入された選抜マーカー遺伝子の種類に応じた適当な選抜用薬剤の存在下で、適量のスクロースを含むムラシゲ−スクーグ培地等の寒天培地上で、約4〜50℃、好ましくは約15〜37℃、さらに好ましくは約22〜30℃の温度条件下で、約3〜180日、好ましくは約7日〜90日、さらに好ましくは約14〜60日培養する。培養の最適温度は植物毎に培養実験によって定めることができる。また、植物の種類によっては、上記日数よりも長時間の培養が必要なものもある。
このようにして得られた芽を、4μMインドール酪酸を含むムラシゲ−スクーグ培地等の公知の発根培地に移植し、例えば、約3〜180日、好ましくは約7〜90日、さらに好ましくは約14〜60日培養することにより植物体にする。こうして得られた植物体は、必要に応じて、バーミキュライトまたは土に移植して育てることもできる。
また、上記Ran遺伝子を導入したトランスジェニック植物およびその次世代に上記Ran遺伝子が組み込まれていることは、これらの細胞または組織のゲノムDNAから、PCR法またはサザン分析法などにより、導入した上記Ran遺伝子を検出することにより確認できる。なお、上記Ran遺伝子に加えて上記FBPase/SBPase遺伝子を導入した場合は、「Ran遺伝子」を「Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子」と読み替えることによって両遺伝子が導入された植物体の説明となる。
本発明の一実施形態において、上記Ran遺伝子を単独で導入された植物体では、野生株に比して、植物個体あたりの塊茎の重量と数とが増加している。また、本発明の一実施形態において、上記Ran遺伝子と上記FBPase/SBPase遺伝子とを共に導入された植物体では、野生株に比して地上部の高さと地上部乾燥重量にほとんど変化が無いにも関わらず、植物個体あたりの塊茎重量および塊茎数が特異的に増加している。上記FBPase/SBPase遺伝子を導入することによって、植物の成長が促進し地上部の高さと地上部乾燥重量とを含む植物体自体の大きさが野生株に比して大きくなることが知られている(特許文献1を参照のこと)ため、上記Ran遺伝子と上記FBPase/SBPase遺伝子とを共に導入された植物体についても、野生株に比して地上部の高さと地上部乾燥重量とが増加することが予想されたが、意外にも地上部の高さに変化が無く、植物個体あたりの塊茎重量および塊茎数が特異的に増加した。これは、Ran遺伝子とFBPase/SBPase遺伝子とを共に導入する態様における、予期せぬ効果であるといえる。
なお本発明は、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物をも包含する。ここで「匍匐枝形成能が野生株に比して向上する」とは、本発明の作製方法により取得された形質転換植物の匍匐枝数が、本発明の作製方法が実施されていない匍匐枝形成植物(野生株)のそれらに比して増加することを意味する。匍匐枝形成能が野生株に比して向上したかどうかは、複数個体の野生株と形質転換植物とについて匍匐枝数を検討し、1個体当たりの平均匍匐枝数を比較し、後者が前者を上回っていれば匍匐枝形成能が野生株に比して向上したと判断することができる。
<3.本発明のキット>
本発明にかかるキットは、匍匐枝形成植物の塊茎生産能を向上させるためのキットであり、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴としている。
本発明のキットに含まれる、上記Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドの形態は特に限定されるものではないが、例えば、水溶液、懸濁液または凍結乾燥粉末などの形態が採用され得る。上記凍結乾燥粉末は常法に従って作製され得る。
また上記Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドは、デキストリン等の賦形剤等の添加物が含まれていても良い。前記添加物の配合法は特に制限されるものではない。例えば、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドを含む緩衝液に添加剤を配合する方法、添加剤を含む緩衝液にCitrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドとを配合する方法、またはRan遺伝子、およびラン藻由来のFBPase/SBPaseをコードするポリヌクレオチドと安定化剤とを緩衝液に同時に配合する方法などが挙げられる。
本発明は、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキットをも包含する。
<まとめ>
本発明は以下の発明を包含する。
本発明にかかる作製方法は、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法であり、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴としている。
本発明にかかる作製方法は、上記Ran遺伝子が、以下の(A)または(B)であることを特徴とするものであってもよい:
(A)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(B)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
本発明にかかる作製方法は、上記Ran遺伝子が、以下の(C)または(D)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とするものであってもよい:
(C)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(D)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチド。
本発明にかかる作製方法は、ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを、匍匐枝形成植物に導入する工程をさらに含むものであってもよい。
本発明にかかる生産方法は、上記ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(E)または(F)であることを特徴とするものであってもよい:
(E)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(F)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
本発明にかかる作製方法は、上記ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(G)または(H)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とするものであってもよい:
(G)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(H)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼの活性を有するポリペプチド。
本発明にかかる匍匐枝形成植物は、上記作製方法により作製されてなる、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物である。
本発明にかかるキットは、匍匐枝形成植物の塊茎生産能を向上させるためのキットであり、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴としている。
また本発明は、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴とする匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法をも包含する。
この時、上記Ran遺伝子が、以下の(A)または(B)であってもよい。
(A)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(B)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ匍匐枝形成能を向上する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
また上記Ran遺伝子が、以下の(C)または(D)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであってもよい。
(C)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(D)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ匍匐枝形成能を向上する活性を有するポリペプチド。
さらに本発明は、上記作製方法により作製されてなる、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物をも包含する。
さらに本発明は、Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を含むことを特徴とする、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキットをも包含する。
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種種の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
〔1.形質転換ベクターの構築〕
<1−1.FS形質転換ベクターの構築>
pBI101ベクター(クロンテック社)のHindIIIとSacI制限酵素サイトに、5’末端にHindIIIと3’末端にSphIとの制限酵素サイトを付加したトマトrbcS(Ribulose bisphosphate carboxylase/oxygenase small subunit遺伝子)プロモーターおよびトランジットペプチドのコード領域、ならびに5’末端にSphIと3’末端にSacIとの制限酵素サイトを付加したラン藻Synechococcus PCC7942由来のFBPase/SBPase遺伝子を連結したDNA断片をpBI101ベクターのβ-グルクロニダーゼ遺伝子と置換する形で挿入した。以上のようにして、FS形質転換ベクターを作製した(図2中「FS」で表記)。
<1−2.RAN形質転換ベクターの構築>
次に、Citrullus lanatusのRAN全長cDNAから、5’-aaaaagcaggctccttttccaatggctt-3’(配列番号7)と5’-agaaagctgggttttttactcgaacgcg-3’(配列番号8)とを用いて、ORF全長をPCRにより増幅した。
このPCR産物を植物細胞形質転換用ベクターpGWB2のカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとノパリンシンターゼ (NPTII)ターミネーターとの間に、GATEWAYシステム(インビトロジェン社)を用いて組換え反応により導入し、RAN遺伝子が導入されたRAN形質転換ベクターを作製した(図2中「RAN」で表記)。
<1−3.FS/RAN形質転換ベクターの構築>
次に、RAN形質転換ベクターをテンプレートにして、それぞれEcoRIサイトを導入した5'-gaattcgcatgcctgcaggt-3'(配列番号9)と5'-gaattcccgatctagtaaca-3'(配列番号10)とを用いてPCRを行い、RAN遺伝子を含む35SプロモーターからNPTIIターミネーターまでの領域のDNA断片を増幅した(上記塩基配列における「gaattc」はEcoRI部位)。
得られたPCR産物をEcoRIによって処理し、FSベクターのEcoRIサイトに挿入した。FBPase/SBPase遺伝子のためのNPTIIターミネーター下流に35Sプロモーター、RAN遺伝子、NPTIIターミネーターの向きで挿入されているプラスミドを選抜し、FS/RAN形質転換ベクターとした(図2中「FS/RAN」で表記)。
〔2.形質転換〕
pBI121(コントロールベクター)、FS形質転換ベクター、RAN形質転換ベクター、およびFS/RAN形質転換ベクターを、それぞれエレクトロポレーション法によりアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)EHA105株へ導入し、形質転換を行った。
3%スクロースを添加したムラシゲ・スクーグ(MS)寒天培地で無菌培養したジャガイモ(メイクイーン)から約1cm長の胚軸を複数調製し、これらと形質転換ベクターを有する各アグロバクテリウム培養液と15分間、室温でインキュベーションを行った。
その後、0.4mg/l インドール酢酸、2 mg/l ベンジルアデニンを含むMS寒天培地上に胚軸を置き、2日間、室温でインキュベートした。
次に、胚軸を2mg/l ベンジルアデニン、0.1mg/l ジベレリン酸、100mg/l カナマイシン、および50mg/l セフォタキシムを含むMS寒天培地上でシュート形成させた。形成したシュートをカナマイシンと50mg/l セフォタキシムとを含むMS寒天培地に移し、発根させ、植物体の再生を行った。再生個体は土上げし、塊茎を回収し、暗所、4℃で保存した。
〔3.形質転換体の解析〕
pBI121(コントロールベクター)、FS形質転換ベクター、RAN形質転換ベクター、およびFS/RAN形質転換ベクターで各遺伝子導入を行ったコントロールジャガイモ塊茎、RAN形質転換ジャガイモ塊茎、FS形質転換ジャガイモ塊茎、およびFS/RAN形質転換ジャガイモ塊茎を、それぞれ室温において萌芽させた。その後、土を満たした3Lポットに移し、16時間明期/8時間暗所の条件で18℃に保って5週間生育させた。
5週間生育後、これらの形質転換体の葉から全ゲノムDNAを抽出し、NPTII、RAN遺伝子、およびFBPase/SBPase遺伝子の導入をPCRによって確認した(図3)。また、RANタンパク質の発現とFBPase/SBPaseタンパク質の発現をウェスタンブロッティングによって確認した(図4)。
RAN遺伝子の導入と発現とが確認されたRAN形質転換ジャガイモ、並びにRAN遺伝子の導入と発現とFBPase/SBPase遺伝子導入と発現とが確認されたFS/RAN形質転換ジャガイモについて、地上部の高さ、地上部乾燥重量、匍匐枝数、塊茎数、塊茎重量、および光合成速度(光合成CO固定速度)を測定した(図6)。
なお、光合成速度(光合成CO固定速度)は、光強度1000μmol photons/m/sec、CO濃度350ppm下において携帯用光合成蒸散測定装置LI‐6400(LI-COR社)を用いて測定を行った。
〔4.結果〕
実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモについて、各遺伝子導入をPCRにより確認したアガロースゲル電気泳動図を図3に示す。図3中「RAN」と表記されたレーンはRan遺伝子のみが導入されたジャガイモ(実施例1)の結果、「FS」と表記されたレーンはFBPase/SBPase遺伝子のみが導入されたジャガイモ(比較例)の結果、「FS/RAN」と表記されたレーンはRan遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモ(実施例2)の結果である。また図3中「M」は分子量マーカー、「+」は陽性対照、「Wt」は野生株の結果、「CV」はコントロールであるベクターのみが導入されたジャガイモの結果を示す。また図3中「NPTII」はベクター由来のDNAを検出した結果、「CLRan1」はRan遺伝子を検出した結果、「FBP/SBP」はFBPase/SBPase遺伝子を検出した結果を示す。
図3の「RAN」のレーンからRan遺伝子およびベクター由来のDNAのみが検出され、「FS」のレーンからFBPase/SBPase遺伝子およびベクター由来のDNAのみが検出され、「FS/RAN」のレーンからRan遺伝子、FBPase/SBPase遺伝子およびベクター由来のDNAが検出された。よって、所望の遺伝子が導入された形質転換ジャガイモがそれぞれ取得されたことが確認された。
また実施例および比較例で取得した形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)について、FBPase/SBPaseおよびRANタンパク質の発現をウエスタンブロット法により確認した結果を図4に示す。図4の(a)はRanタンパク質を検出した結果を示し、(b)はFBPase/SBPaseを検出した結果を示す。図4中「RAN」と表記されたレーンはRan遺伝子のみが導入されたジャガイモ(実施例1)の結果、「FS」と表記されたレーンはFBPase/SBPase遺伝子のみが導入されたジャガイモ(比較例)の結果、「FS/RAN」と表記されたレーンはRan遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモ(実施例2)の結果である。各形質転換ジャガイモにおいて、Ran遺伝子および/またはFBPase/SBPase遺伝子が発現し、遺伝子がコードするタンパク質が発現していることが確かめられた(図4(b)の「FS/RAN」のレーン1および3を除く)。このウエスタン解析の結果から、以下の解析にはウエスタン解析におけるRANのレーン1、FSのレーン1、およびFS/RANのレーン2で用いた形質転換体を用いることにした。
図5に実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の植物体全体の写真(図5(a))、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の地下茎部および根部周辺の写真(図5(b))、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)から収穫した塊茎の写真(図5(c))をそれぞれ示す。図5中「RAN」と表記されたジャガイモはRan遺伝子のみが導入されたジャガイモ(実施例1)の結果、「FS」と表記されたジャガイモはFBPase/SBPase遺伝子のみが導入されたジャガイモ(比較例)の結果、「FS/RAN」と表記されたジャガイモはRan遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモ(実施例2)の結果、「control」と表記されたジャガイモはコントロールベクターのみが導入されたジャガイモである。なお、本願発明者らは、地上部の高さ、地上部乾燥重量、匍匐枝数、塊茎の大きさ、塊茎数、塊茎重量、および光合成速度(光合成CO固定速度)について、コントロールベクターのみが導入されたジャガイモ株(control)と、野生株と差がないことを確認している(図示せず)。よって、各実施例または比較例とcontrolとの比較は、各実施例または比較例と野生株との比較とみなすことができる。
図5の結果から、Ran遺伝子のみが導入されたジャガイモ(実施例1)、FBPase/SBPase遺伝子のみが導入されたジャガイモ(比較例)、Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモ(実施例2)は、いずれもcontrolに比して塊茎の大きさが明らかに増加しているということがわかる(特に図5(c)を参照のこと)。またRan遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモ(実施例2)は、植物体の丈自体(地上部の高さ)は変化しておらず、塊茎のみの大きさが増加するという意外な結果が得られた(特に図5(a)、(c)を参照のこと)。
図6に実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)について、地上部の高さ、地上部乾燥重量、匍匐枝数、塊茎数、塊茎重量、および光合成速度(光合成CO固定速度)を測定した結果を示す。図6(a)は、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の地上部の高さを比較したグラフであり、図6(b)は、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の地上部乾燥重量を比較したグラフであり、図6(c)は、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の匍匐枝の数(匍匐枝数)を比較したグラフであり、図6(d)は、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の塊茎の数(塊茎数)を比較したグラフであり、図6(e)は、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の塊茎の重量(塊茎重量)を比較したグラフであり、図6(f)は、同形質転換ジャガイモ(栽培5週間目)の光合成速度を比較したグラフである。なお図6(f)における「比光合成速度」は、controlの光合成速度を1.0とした時の相対値である。図6のデータはT検定による有意差検定を行っており、「*」が付された結果はcontrolに比して有意差があったことを示す(危険率5%未満)。
図6(a)の結果より、RAN遺伝子が導入された植物体(実施例1)、並びにRAN遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入された植物体(実施例2)においては、controlと比較して地上部の高さに有意差は認められなかった。また図6(b)の結果より、RAN遺伝子が導入された植物体(実施例1)、並びにRAN遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入された植物体(実施例2)においては、controlと比較して地上部の乾燥重量にも有意差は認められなかった。しかし、Ran遺伝子が導入された植物体(実施例1)においては、匍匐枝の数がcontrolに比して有意に増加し、また、Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入された植物体(実施例2)においても匍匐枝の数がcontrolに比して有意に増加した(図6(c))。植物個体あたりの塊茎の数は、Ran遺伝子が導入された植物体(実施例1)においてcontrolに比して有意に増加したが、Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入された植物体(実施例2)においては、有意差が認められなかった(図6(d))。植物個体あたりの塊茎の重量は、Ran遺伝子が導入された植物体(実施例1)において約2倍増加し、Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入された植物体(実施例2)において約3.5倍増加した(図6(e))。また、光合成速度は、Ran遺伝子が導入された植物体(実施例1)はcontrolに比して約1.2倍有意に上昇し、Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入された植物体(実施例2)はcontrolに比して約1.5倍有意に上昇した(図6(f))。
図6の結果より、Ran遺伝子を導入すれば匍匐枝の数が多くなる(すなわち匍匐枝の発達が促進される)ことによって、デンプンの溜まる部位数が増すためデンプンの合成が促進される(すなわち光合成速度が増加する)。その結果として、塊茎数および塊茎重量がcontrolに比して増加する(すなわち、塊茎の生産能が向上する)ということがわかった。
またFBPase/SBPase遺伝子を導入した場合は、匍匐枝の発達には特に影響が無いが、光合成速度が増加することによって、結果的に塊茎数および塊茎重量がcontrolに比して増加する(すなわち、塊茎の生産能が向上する)ということがわかった。またRan遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子を導入した場合は、匍匐枝の数が多くなる(すなわち匍匐枝の発達が促進される)ことによってデンプンの溜まる部位数が増すためデンプンの合成が促進される(すなわち光合成速度が増加する)とともに、FBPase/SBPase遺伝子の導入による光合成速度増加されることによって、結果的に塊茎数および塊茎重量がcontrolに比してさらに顕著に増加する(すなわち、塊茎の生産能が向上する)ということがわかった。
次に実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ塊茎の萌芽能を解析した(萌芽能試験)。1ヶ月間4℃に保存しておいた各形質転換ジャガイモ塊茎を、水を染み込ませたろ紙の上に置き、樹脂フィルムで覆い乾燥を防止しながら、暗所下、25℃に静置した。
図7にその結果を示す。図7(a)は実施例および比較例で取得した各形質転換ジャガイモ塊茎を萌芽能試験に供した1ヶ月後の写真であり、(b)は2ヶ月後の写真である。図7中「RAN」と表記されたジャガイモはRan遺伝子のみが導入されたジャガイモ(実施例1)の結果、「FS」と表記されたジャガイモはFBPase/SBPase遺伝子のみが導入されたジャガイモ(比較例)の結果、「FS/RAN」と表記されたジャガイモはRan遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモ(実施例2)の結果、「control」と表記されたジャガイモはコントロールベクターのみが導入されたジャガイモである。
図7によれば、全ての各形質転換ジャガイモはいずれも同程度に萌芽が形成されていることが分かる。この結果は、全ての形質転換ジャガイモ塊茎が萌芽能を有していることを示しており、Ran遺伝子およびFBPase/SBPase遺伝子が導入されたジャガイモにおいても、萌芽形成能が維持されており、controlと同様に次世代を残し、さらには種イモとしての役割を果たすことが可能であることが分かった。
なお、本発明にかかる匍匐枝形成植物の作製方法には、形質転換植物が次世代植物を形成し得る能力の有無を確認すべく、上述の萌芽能試験を行う工程が含まれていてもよい。
本発明によって塊茎生産能が野生株に比して向上している匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物を提供することができる。さらに本発明によれば、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法、当該方法によって作製された匍匐枝形成植物を提供することが可能となる。よって、本発明は、農業分野、食品産業等への更なる貢献が期待できる。

Claims (13)

  1. Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程、および、
    Citrullus lanatus由来のRan遺伝子が導入された形質転換植物の塊茎生産能が野生株に比して向上したかどうかを比較する工程を含むことを特徴とする、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法。
  2. 上記Ran遺伝子が、以下の(A)もしくは(B)である、または以下の(C)もしくは(D)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることであることを特徴とする請求項1に記載の作製方法:
    (A)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (B)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (C)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (D)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチド。
  3. ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを、匍匐枝形成植物に導入する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の作製方法。
  4. 上記ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(E)もしくは(F)である、または以下の(G)もしくは(H)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項3に記載の作製方法:
    (E)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (F)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (G)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (H)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼの活性を有するポリペプチド。
  5. Citrullus lanatus由来のRan遺伝子、およびラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、匍匐枝形成植物の塊茎生産能を向上させるためのキット。
  6. Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程、および
    ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴とする、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法。
  7. 上記Ran遺伝子が、以下の(A)もしくは(B)である、または以下の(C)もしくは(D)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項6に記載の作製方法:
    (A)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (B)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ匍匐枝形成能を向上する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (C)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (D)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ匍匐枝形成能を向上する活性を有するポリペプチド。
  8. 請求項6または7に記載の作製方法により作製されてなる、匍匐枝形成能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物。
  9. Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を含むことを特徴とする、匍匐枝形成植物の匍匐枝形成能を向上させるためのキット。
  10. Citrullus lanatus由来のRan遺伝子を、匍匐枝形成植物に導入する工程、および
    ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドを、匍匐枝形成植物に導入する工程を含むことを特徴とする、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物の作製方法。
  11. 上記Ran遺伝子が、以下の(A)もしくは(B)である、または以下の(C)もしくは(D)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることであることを特徴とする請求項10に記載の作製方法:
    (A)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (B)配列番号1または2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (C)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (D)配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ塊茎生産能を向上する活性を有するポリペプチド。
  12. 上記ラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(E)もしくは(F)である、または以下の(G)もしくは(H)のいずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項10または11に記載の作製方法:
    (E)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (F)配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (G)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
    (H)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、
    かつフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼの活性を有するポリペプチド。
  13. 請求項3、4、10、11、または12に記載の作製方法により作製されてなる、塊茎生産能が野生株に比して向上した匍匐枝形成植物。
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