JP5784192B1 - フィルム延伸装置、及びフィルム延伸方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなフィルム製造工程で用いられる横延伸装置が、フィルムの搬送方向(以下、MD(Machine Direction)方向と称する)と直交するフィルムの幅方向(以下、TD(Transverse Direction)方向と称する)の両端部をクリップで把持しながら、熱処理装置(以下、テンターオーブンと称する)の内部をフィルムは通過する。テンタ−オーブンの内部において、ダクトに設けられたノズルの噴射孔から吹き出す熱風を吹き付けてフィルムを加熱しながら、対向するクリップ間隔をTD方向に対して広げることで、TD方向に対する延伸が行われる。
ダクトは、フィルムを挟んで上下に対向して配置されており、フィルムの表面に対向する面に、複数のノズル列が設けられている。各ノズルの噴射孔は、フィルムの表面に平行な噴射面上に設けられており、フィルムの表面に対して垂直方向からフィルムに空気を吹き付ける構成が標準的である。
特に、フィルムを加熱しながら延伸する前にフィルムの予熱を行う予熱ゾーンは、他の温調ゾーンに比べて、フィルムの表面に対する熱伝達効率を高めることが要求されている。熱伝達効率を高めるためには、ノズルの噴射孔から噴射する熱風の風量、風速を高めることや、熱風の温度を高く設定することが効果的である。しかし、消費エネルギを削減する観点では、熱風の温度を高く設定せずに、ダクトの熱伝達効率を効果的に高め、噴射孔の配置を最適化することによって、消費エネルギを大幅に削減することが可能である。
ここで、ダクトから空気を噴射するためのノズルの噴射孔の形状や配列に関して、図12に示すように、噴射孔単体における衝突噴流の熱伝達係数と比較して説明する。
噴射孔が円形であるとき、複数の噴射孔の配列が、縦横の正方格子状に配列される場合と、互いに隣接する噴射孔同士が正三角形をなすように最密六方格子状に配列される場合とを、噴射孔単体の場合と比較したとき、衝突噴流の熱伝達係数の比が、単体:正方格子状の配列:最密六方格子状の配列=1:3.1:3.6となる。したがって、複数の噴射孔の配列に関して、最密六方格子状に配列された場合が、フィルムの表面に対して熱伝達効率が最も高くなることが知られている(非特許文献1、2)。
特許文献1、2には、フィルムのTD方向において、フィルムが熱風から受ける熱量にムラが生じることを解消するための噴射孔の配列が提案されている。この配列では、TD方向に沿って配列された複数の孔列において、各孔列の噴射孔を、TD方向に対して互いに位置をずらして配置することで、各孔列の噴射孔が、TD方向に対して均一な間隔をあけて並べて配置されている。すなわち、各孔列の噴射孔は、TD方向における一端側から他端側に向かって、各孔列を跨ぐ周期的な順番で配置されており、TD方向に対する位相差が等しくなるように配列されている。この配列によって、搬送されるフィルムのTD方向において、フィルムに伝えられる熱エネルギを均一化することが可能になっている。
したがって、MD方向に搬送されるフィルムのTD方向において、フィルムに伝えられる熱エネルギを均一化させることと、フィルムの表面に付与される熱伝達効率を高めることとを両立させる必要がある。
なお、本発明において、最密六方格子状に互いに等間隔に配置されるとは、平面上に投影した最密六方格子をなす正六角形の各頂点及び中心(各配列線同士の交点)に配置されることを指している。換言すれば、これは、平面上で互いに組み合わされて配列された正三角形の各頂点に配置されることを意味している。
なお、本発明における熱処理とは、フィルムの加熱、保温、冷却を含めて指している。
図1に、本実施形態のエア噴射装置を備えるテンタ−オーブンの、TD方向に平行な断面図を示す。図2に、本実施形態のエア噴射装置の要部の斜視図を示す。
図1に示すように、フィルムの製造工程においてフィルムの熱処理を行うテンタ−オーブンは、一方向であるMD方向に搬送されるフィルム3の表面に空気を吹き付けるエア噴射装置1と、搬送されるフィルム3のTD方向の両側をそれぞれ把持してフィルム3をTD方向に延伸するためのクリップ6と、を備えている。
フィルム3を挟んで上下に配置される一対のダクト7において、フィルム3の表面に吹き付ける空気による押圧力を、フィルム3の両面で等しくするために、一対のダクト7における複数の噴射孔12の位置が同一にされている。
エア噴射装置1に供給されるフィルム3は、TD方向における両端がクリップ6によって把持されながらMD方向に搬送される。エア噴射装置1は、MD方向に搬送されるフィルム3を挟んで上下に配置された一対のダクト7の噴射孔12から熱風を噴射し、熱風がフィルム3の表面に吹き付けられることでフィルム3が加熱される。
まず、ノズルの噴射孔12が最密六方格子状に配列される場合、噴射孔12の配列パターンの一例として、図3に示すように、MD方向に対して3列の孔列が並んで配置される構成や、図4に示すように、MD方向に対して5列の孔列が並んで配置される構成が考えられる。
図3及び図4に示すように、これらの構成では、フィルム3がMD方向に搬送されたとき、TD方向におけるフィルム3の同一位置(TD方向における同一座標)に熱風が吹き付けられ続けることになり、同一位置に熱エネルギが蓄積されることになる。このため、フィルム3のTD方向に対する座標において、熱風から熱エネルギが蓄えられやすい(付与されやすい)座標と、熱エネルギが蓄えられにくい座標とが分布することになる。その結果、フィルム3のTD方向において、フィルム3に伝わる熱エネルギのムラが生じやすいという不都合がある。
言い換えると、最密六方格子の傾斜角θが所定の角度であるときに、複数の噴射孔12は、MD方向における位置を周期的に変化させるように配置され、かつ、TD方向に対する各噴射孔12の位相差が均等に配置されることになる。また、TD方向における一端側から他端側にわたって噴射面11に配置された複数の噴射孔12において、TD方向における同一座標に位置する噴射孔12は存在していない。
このとき、隣接する噴射孔12同士を結ぶ配列線13の全てが、フィルム3のMD方向及びTD方向に対してそれぞれ傾斜して配置されている。すなわち、噴射面11における全ての配列線13は、MD方向及びTD方向に対してそれぞれ非平行になるように、噴射孔12が配置されている。
図6に示す配置例では、TD方向における同一座標に、噴射孔12iと噴射孔12jとがそれぞれ配置されることになる。このような配置は、本発明における課題の観点から、TD方向における同一座標に噴射孔12が存在することを避ける必要がある。このため、実質的に噴射孔12iと噴射孔12jとを同時に存在させることができないので、噴射孔12iと噴射孔12jのいずれか一方のみが存在することになる。このように考えると、図6中に示す第1孔列(1)と第1’孔列(1’)は、周期的な配列パターンにおける同一の孔列と見なすことができる。このため、図6に示した孔列の配置例は、実質的に、第1孔列(1)ないし第4孔列(4)からなる4列の配置であると考えることができる。
なお、本実施形態では、一例として最密六方格子を反時計回りに回転させて配置している。このため、最密六方格子の傾斜角θは、図6に示すように、噴射孔12iと噴射孔12jとを結ぶ直線に平行な方向、すなわちMD方向に平行な直線(基準線)と、この直線の図6中左側に隣接する配列線13とがなす角度として定義されている。しかし、最密六方格子を反時計回りに回転させて配置する構成に限定するものではなく、時計回りに回転させて配置してもよく、本実施形態と同一の効果を得ることができる。最密六方格子を時計回りに回転させて配置する場合、最密六方格子の傾斜角θは、MD方向に平行な直線と、この直線の右側に隣接する配列線13とがなす角度として定義される。
したがって、配列線13の長さWを一定にした場合には、MD方向に対して間隔をあけて並ぶ孔列の数nが増えること伴って、TD方向における噴射孔12の間隔xが小さくなる。
なお、噴射孔12の直径よりも、TD方向における噴射孔12の間隔xが大きすぎる場合には、MD方向に搬送されるフィルム3に吹き付けられる熱風によって付与される熱量の分布が、TD方向に対して生じ易くなる。したがって、TD方向に対してフィルムをムラなく加熱するためには、上述したように、噴射孔12の直径は、噴射孔12の間隔x以上に設定することが望ましい。
上述した実施形態のエア噴射装置1の効果について、比較例と比較した結果を説明する。
図7に、第1の比較例のダクト7における噴射孔12の配列の平面図を示す。図8に、第2の比較例のダクト7における噴射孔12の配列の平面図を示す。図9に、実施例のダクト7における噴射孔12の配列の平面図を示す。
第1及び第2の比較例、実施例では、ファン9からダクト7へ供給する空気の温度を160℃とし、ダクト7へ供給する空気の流量を93[m3/min]とし、ダクト7を通過するフィルム3の初期温度(ダクト7の通過前の温度)を20℃とした。また、フィルム3は、TD方向に対する幅寸法を900mmとし、搬送速度を240[m/min]とした。
ダクト7の外形寸法は、TD方向の長さを1600mm、MD方向の長さを300mm、フィルム3の全幅にわたって空気が吹き付けられるようにTD方向における幅1100mmの領域にわたって噴射孔12を配置した。また、フィルム3の表面と、ダクト7の噴射面11との距離(図2に示す距離H)を140mmに設定した。
図7に示すように、第1の比較例において、第1孔列(1)と第3孔列(3)は、噴射孔12をTD方向と平行にピッチ60mmで配列し、配列を互いに同一にした。第2孔列(2)は、噴射孔12をTD方向と平行にピッチ60mmで配列し、噴射孔12が、第1孔列(1)において隣接する噴射孔12同士の間の中央に位置するように、TD方向に対して位置をずらして配置した。
図8に示すように、第2の比較例において、第1孔列(1)、第2孔列(2)、第3孔列(3)は、噴射孔12をTD方向と平行にピッチ72mmで配列した。また、第2孔列(2)の噴射孔12の位置を、第1孔列(1)の噴射孔12の位置に対して1/3ピッチだけ位置をずらして配置した。同様に、第3孔列(3)の噴射孔12の位置を、第2孔列(2)の噴射孔12の位置に対して1/3ピッチだけ位置をずらして配置した。したがって、第1孔列(1)の噴射孔12に対して、第2孔列(2)の噴射孔12、第3孔列(3)の噴射孔12が互いに1/3ピッチずつ位置をずらして配置されている。
また、第1の比較例、第2の比較例、実施例の各配列において、噴射面11に配置される噴射孔12の総数が異なるので、噴射孔12からの空気の流量が一定値とするために、流量が互いに等しくなるように噴射孔12の直径をそれぞれ設定した。第1の比較例、第2の比較例、実施例において、噴射孔12からの流量が30[m/s]となるように、第1の比較例における噴射孔12の直径をφ25mmとし、第2の比較例における噴射孔12の直径をφ22mmとし、実施例における噴射孔12の直径をφ22mmとした。
図10に、1つのダクト7の噴射面11を通過したフィルム3のMD方向における面平均熱伝達率[W/m2K]の比較結果を示す。図11に、1つのダクト7の噴射面11を通過したフィルム3のTD方向における面平均熱伝達率[W/m2K]の比較結果を示す。
第1の比較例の配列では、TD方向における噴射孔12のピッチが、相対的に狭い60mmであるため、TD方向に対して隣接する噴射孔12同士が噴射する空気が互いに干渉し、フィルム3の表面に対する熱伝達効率の低下を招いた。その結果、第1の比較例では、図10及び図11に示すように、MD方向及びTD方向に対する面平均熱伝達率が53.2[W/m2K]程度になった。
第2の比較例の配列では、TD方向における噴射孔12のピッチが、第1の比較例よりも広い74mmであるため、TD方向に対して隣接する噴射孔12同士が噴射する空気が互いに干渉することが少なくなり、TD方向に対する熱伝達効率が、第1の比較例よりも高くなった。その結果、第2の比較例は、図11に示すように、TD方向に対する面平均熱伝達率が61.4[W/m2K]となり、第1の比較例と比べて15.2%向上した。また、第2の比較例の配列は、第1孔列(1)から第3孔列(3)の各噴射孔12を、TD方向に対して1/3ピッチずつ位置をずらして配置したことで、MD方向に対する熱伝達効率が高められた。その結果、第2の比較例は、図10に示すように、MD方向に対する面平均熱伝達率が61.0[W/m2K]となり、第1の比較例と比べて14.7%向上した。
したがって、実施形態のエア噴射装置1は、フィルム3の表面に空気の熱エネルギをムラなく効率的に伝えることを可能とし、フィルム3の品質の向上を図ることができる。その結果、本実施形態によれば、噴射孔12の配列を最適化することが可能になり、フィルム3を効率的に加熱することができ、消費エネルギの削減に貢献できる。
なお、本発明は、フィルムの加熱に限定されるものではなく、冷却や保温等の熱処理に用いられてもよいことは勿論である。
3 フィルム
7 ダクト
11 噴射面
12 噴射孔
13 配列線
Claims (9)
- エア噴射装置を備えたフィルム延伸装置であって、
前記エア噴射装置が、延伸しながら一方向に搬送されるフィルムに空気を吹き付ける複数の噴射孔と、前記フィルムの面に対向し、前記複数の噴射孔が配列された噴射面と、を有する噴射部材を備え、
前記複数の噴射孔は、前記噴射面上において、最密六方格子状に互いに等間隔に配置されると共に、互いに隣接する前記噴射孔同士を仮想的に結ぶ配列線の全てが、前記フィルムの搬送方向及び前記搬送方向に直交する前記フィルムの幅方向に対してそれぞれ傾斜している、フィルム延伸装置。 - 前記噴射孔の直径は、前記間隔x以上である、請求項3に記載のフィルム延伸装置。
- 前記複数の噴射孔は、前記搬送方向に搬送される前記フィルムを挟んで互いに対向する位置に配置されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置。
- フィルム延伸方法であって、
延伸しながら一方向に搬送されるフィルムに、前記フィルムの面に対向する噴射面に配列された複数の噴射孔から所定の温度の空気を吹き付ける熱処理工程を有し、
前記熱処理工程では、最密六方格子状に互いに等間隔に配置されると共に、互いに隣接する前記噴射孔同士を仮想的に結ぶ配列線の全てが、前記フィルムの搬送方向及び前記搬送方向に直交する前記フィルムの幅方向に対してそれぞれ傾斜して配置された前記複数の噴射孔から、前記フィルムに空気を吹き付ける、フィルム延伸方法。 - 前記噴射孔の直径を、前記間隔x以上にする、請求項8に記載のフィルム延伸方法。
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