JPH0596320A - 厚鋼板の均一冷却方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】熱間鋼板の幅方向の冷却むらをなくす冷却手段
を提供する。 【構成】高温鋼板４の通板方向に対して直角に配置され
たハイクエンチノズル２の前または後に、鋼板の中央部
のみに冷却水を噴射する補助クエンチノズル５を配置す
る。鋼板搬送ローラ１により搬送される高温鋼板４に対
し、前記ハイクエンチノズル２と補助クエンチノズルと
から冷却水を噴射する。 【効果】鋼板中央部の冷却を促進できる。鋼板中央部と
エッジ部間の冷却速度差がなくなり、板幅全面にわたり
均一冷却できる。ローラクエンチ設備により平坦度良好
な薄物広幅材を製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、熱間圧延された高温
厚鋼板、特に比較的薄くかつ広幅の厚鋼板をローラクエ
ンチ装置により均一冷却する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】熱間圧延された高温鋼板の機械的性質の
向上や合金元素の低減をはかることを目的として、高温
鋼板をオンラインで所定の温度まで冷却する熱処理方法
および装置はすでに多くの提案がなされ、実用化されて
いる。その中で、鋼板の焼入設備としてローラクエンチ
装置により高温鋼板を冷却する方法がある。ここで使用
されるローラクエンチは、加熱炉から出た鋼板をテーブ
ルで送込み上下のローラで鋼板をはさみ連続的に移送さ
せながら、多数のスプレーパイプから出る噴水で冷却す
る装置である。この装置は焼入効果が大きいこと、およ
び均一な品質の鋼板を高能率で処理することが可能であ
ることがその特徴とされている。このローラクエンチ装
置は図４に一般的な構成を示すように、ハイクエンチゾ
ーンとロークエンチゾーンからなり、ハイクエンチゾー
ンは高圧多量の水を噴射して鋼板表面温度を下げ、大き
な熱伝達率を得やすくし、鋼板内部の熱伝導を大きくす
るゾーンであるのに対し、ロークエンチゾーンは鋼板内
部から出てくる熱を奪う働きをするゾーンである。この
ためローラクエンチ装置では、冷却ゾーンによってノズ
ルの型式が異なり、通常ハイクエンチゾーンはボックス
式のノズル（水量密度大）が採用され、ロークエンチゾ
ーンではパイプ式ノズル（水量密度小）が使用されてい
る。図中、１は鋼板搬送ローラ、２はハイクエンチノズ
ル、３はロークエンチノズル、４は鋼板である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、ハイクエン
チノズルで高圧多量の冷却水により鋼板表面温度を下
げ、ロークエンチノズルにて比較的少量の冷却水により
鋼板中心部を常温まで冷却する従来のローラクエンチ設
備では、薄物広幅材を幅方向に均一冷却できないという
問題がある。これは、特に広幅材の場合は、冷却水が鋼
板に衝突した後、鋼板表面において中央部の水が鋼板エ
ッジ部に流れ、エッジ部の水量が増加することにより過
冷却となり、エッジ部と中央部の冷却速度が異なるため
である。このような冷却むらを解消する方法として、例
えば特開昭６１−２１９４１２号公報には幅方向での流
量分布を変える方法が示されているが、高張力鋼等の製
造におけるローラクエンチ設備では、冷却水量および水
圧共に大きいため薄物広幅材の幅方向均一冷却は難しい
という問題がある。また、板幅方向での流量差のついた
ノズルを使用して冷却する方法（特開昭６１−４１８２
３号、特開昭６２−３０８４５号等参照）が提案されて
いるが、設備費が高くつくばかりでなく、薄物広幅材に
おいて幅方向の冷却速度差を解消することは容易でない
という難点がある。このため、従来のローラクエンチ設
備では平坦度良好な薄物広幅材を容易に製造することが
できなかった。

【０００４】この発明は、従来のこのような問題点を解
決するためになされたものであって、ローラクエンチ装
置のハイクエンチゾーンにおいて特殊な技術的工夫を要
することなく簡易な手段で鋼板中央部の冷却を促進する
ことによって、板幅方向の均一冷却を達成し得る冷却方
法を提案しようとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明に係る厚鋼板の
均一冷却方法は、高温鋼板の通板方向に対して直角に配
置されたハイクエンチゾーンに、鋼板中央部のみに冷却
水を噴射する補助クエンチノズルをハイクエンチノズル
と平行に配置し、この補助クエンチノズルとハイクエン
チノズルにより冷却することを要旨とするものである。

【０００６】

【作用】この発明における補助クエンチノズルは、多数
列のハイクエンチノズル間において通板方向に対して直
角にしかも鋼板の中央部のみに１乃至複数配置し、この
補助クエンチノズルからも冷却水を吐出させるものであ
って、これにより鋼板中央部の冷却が促進され、鋼板エ
ッジ部との冷却速度差がなくなり、鋼板全面にわたる均
一冷却が達成される。一方、ハイクエンチノズルから噴
射された冷却水は鋼板に衝突した後、中央部の水が鋼板
エッジ部に流れ、エッジ部の水量が増すが、この発明で
はこのエッジ部に集まる水量を考慮して、上記補助クエ
ンチノズルの水量および水圧を制御することにより、鋼
板エッジ部と中央部との冷却速度（正確にはマルテンサ
イト変態の終了するタイミング）を一致させることが容
易である。

【０００７】

【実施例１】図１はこの発明の一実施例を示す装置の概
略側面図、図２は同上装置の概略平面図であり、５は補
助クエンチノズルである。

【０００８】補助クエンチノズル５は、ハイクエンチノ
ズル２の前後に１〜複数個配置され、かつ高温鋼板４の
中央部のみにわたる長さを有している。なお、鋼板搬送
ローラ１、ハイクエンチノズル２、鋼板４は前記図４に
示すものと同一である。

【０００９】熱間圧延された高温鋼板４は、搬送ローラ
１によって矢印の方向へ移送され、当該鋼板の上面側お
よび下面側に配置されたハイクエンチノズル２および補
助クエンチノズル５から噴射される冷却水により所定の
温度まで走行しながら冷却される。この冷却時、多数列
のハイクエンチノズル２から噴射され鋼板４の表面にお
いて中央部の水が鋼板エッジ部へ流れ、エッジ部の水量
が増加し過冷となるが、鋼板中央部に配置した補助クエ
ンチノズル５から噴射される冷却水により鋼板中央部の
冷却が促進されるため、鋼板中央部とエッジ部はほぼ同
一冷却速度で冷却される。この場合、補助クエンチノズ
ル５の冷却水量および水圧は、ハイクエンチノズル２の
冷却水量および水圧を考慮して制御すればよい。なお、
前記補助クエンチノズル５としては、水量密度小のパイ
プ式ノズルの適用が望ましく、また冷却水の噴射角度と
してはハイクエンチノズル２と同一角度とすることによ
り十分に効果を発揮できる。

【００１０】ちなみに、前記図１、図２に示す構成の装
置を用いて、板厚６ｍｍ、板幅２５００ｍｍ、長さ９０
００ｍｍの高温鋼板を速度１８ｍ／分で走行させなが
ら、９００℃からＲＴ℃まで冷却したときの、板幅方向
各位置における寸法の変化を補助クエンチノズルのない
従来装置による冷却方法と比較して図３に示す。図３に
示す結果より明らかなごとく、従来の冷却方法では鋼板
中央部とエッジ部間において伸び量が大きく変化し、鋼
板中心部ではセンターバックリング（座屈）が生じたの
に対し、この発明法では鋼板中央部とエッジ部間におけ
る伸び量の変化が抑制され、平坦度良好な薄物広幅材が
得られた。

【００１１】

【発明の効果】以上説明したごとく、この発明方法によ
れば、ローラクエンチ装置のハイクエンチクエンチノズ
ルと、該ノズルと平行に鋼板中央部に配置した補助クエ
ンチノズルとの併用により、板幅方向にわたる冷却速度
差を解消できるので、鋼板エッジ部および中央部の幅方
向伸びを最小に抑制することができる。したがって、厚
鋼板の中でも幅方向均一冷却が困難な薄物広幅材であっ
ても、特別な技術的工夫を施すことなく鋼板全面にわた
って均一冷却を達成でき、平坦度良好な鋼板を容易にか
つ低コストで製造できるという大きな効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す装置の概略側面図で
ある。

【図２】同上装置の概略平面図である。

【図３】この発明の実施例における鋼板の伸び量を示す
図である。

【図４】従来のローラクエンチ装置による鋼板の冷却方
法を示す概略側面図である。

【符号の説明】

１ 鋼板搬送ローラ ２ ハイクエンチノズル ３ ロークエンチノズル ４ 鋼板 ５ 補助クエンチノズル

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱間圧延された高温厚鋼板をローラクエ
   ンチ装置により冷却する方法において、前記高温鋼板の
   通板方向に対して直角にハイクエンチノズルが配置され
   たハイクエンチゾーンに、鋼板中央部のみに冷却水を噴
   射する補助クエンチノズルをハイクエンチノズルと平行
   に配置し、前記ハイクエンチノズルと補助クエンチノズ
   ルにより冷却することを特徴とする厚鋼板の均一冷却方
   法。