JP4977878B2 - 連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置 - Google Patents

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Description

本発明は、連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置に関するものである。
連続焼鈍炉では、鋼帯を連続的に加熱・均熱および冷却し、必要により過時効処理する工程を行う。鋼帯の特性を所望のものにするためには、加熱温度や均熱時間のほかに、その鋼帯を均一に急速冷却することが重要である。近年、自動車用材料等のハイテン開発が進行し、所望の引張強度、曲げ特性、伸び特性等を実現するために焼鈍温度900〜800℃から300〜150℃程度の温度まで急冷するようなプロセス開発が行われている。
鋼帯の冷却では、各種の冷却媒体が採用されており、この冷媒の選択によって鋼帯の冷却速度も異なってくる。
水を冷媒として用いると、高い冷却速度の冷却が可能であるが、焼き入れ歪によって鋼帯の形状変化が発生することが最大の難点であり、また水との接触により鋼帯の表面に酸化膜が生じ、これを除去するための設備が必要となり、高経済性・高生産性は望めない。
ロール内部に水またはその他の冷却媒体を通し、冷却されたロール表面に鋼帯を接触させて冷却するロール冷却方法がある。この方法では、鋼帯が冷却ロールに接する際に、局部的に非接触となる部分が存在し、鋼帯の幅方向の冷却が不均一となりやすく、蛇行や材質バラツキ等の操業および材質上の問題が多かった。
別の冷却手法としてガスを冷媒とする冷却方法が実用化されている。この方法は、前記した水冷却やロール冷却に比べて冷却速度が遅いが、比較的鋼帯の幅方向の均一な冷却が可能である。ガス冷却の最大の難点である冷却速度を上げるため、箱状のヘッダーにガスを噴射する細長い突出ノズルを取り付け、先端を鋼帯に極力近づけて熱伝達率を上げて冷却速度を上げるものが特許文献1に開示され、水素を投入して冷却効率を高めるものが特許文献2に開示されている。
特開2005−146373号公報 特開2006−144104号公報
しかし、本発明者らが検討したところによれば、上記従来技術は以下のような問題があることがわかった。
特許文献1の方法では、ノズルから噴射したガスは鋼帯上を流れるかヘッダー側に跳ね返ってくる流れとなるが、箱状のヘッダーを設置しているために、ガスが滞留しやすい構造になっている。そのため炉内ガス温度が上がりやすく、所望の冷却能力を得ることができなかった。この現象は、噴射ガス圧力が高いほどその影響が大きいこともわかってきた。また、この箱状ヘッダーは、鋼帯からの輻射熱を受けて温度が上がりやすく、そのため、トータルの冷却能力が低下する問題があった。また、突出ノズル長さが150〜200mmと長いために、圧力損失が大きく、ブロアを強大なものにする必要があるため、消費電力が大きく、操業コスト上好ましくない。
特許文献2の方法では、ヘッダーに均一濃度(20〜80%)の水素ガスを導入するが、鋼帯幅方向の温度分布は、ガス流れや炉壁、ヘッダー構造等の影響によりムラが出るため鋼帯幅方向を同じように冷却したのでは、幅方向に温度分布がついて材質ムラとなる。また鋼帯のばたつきが発生するため、噴射ガス速度に制限(100〜190m/s)を設けている。
本発明の課題は、鋼帯幅方向の温度分布の不均一やガス噴射速度を速くしたときの鋼帯のばたつきを低減し、高効率冷却を実現できる連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)鋼帯表裏の各々の面に対向して、鋼帯幅方向に延在し、その長さが鋼帯幅より長い管状の圧力ヘッダーが鋼帯長手方向に間隔Lを設けて各々複数配置され、さらに該圧力ヘッダーに該圧力ヘッダーから突出して設けられたノズルが鋼帯幅方向に間隔Wで複数配置され、かつ該ノズルは鋼帯長手方向に千鳥状に配置された連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置であって、
鋼帯表裏の圧力ヘッダーの鋼帯長手方向間隔が、前記鋼帯長手方向の圧力ヘッダー間隔Lの1/3以上、2/3以下となるように、鋼帯表裏の圧力ヘッダーの位置が鋼帯長手方向にずらして配置され、
さらに、鋼帯表裏の一方の側のノズル群のノズルに対して、鋼帯表裏の他方の側のノズル群のノズルの鋼帯幅方向のずらし量が、前記鋼帯幅方向のノズル間隔Wの1/6以上、1/3以下になるように鋼帯表裏のノズルが鋼帯幅方向にずらして配置されたことを特徴とする連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
(2)前記各圧力ヘッダーは、鋼帯幅方向に3分割以上7分割以下に分割され、前記各圧力ヘッダーにガスを供給するメインヘッダーは、前記各圧力ヘッダーの鋼帯幅方向位置が同じ位置の各分割ヘッダーにガスを供給する、圧力ヘッダーと同じ数のメインヘッダーに分割され、各分割されたメインヘッダーは、個別にヘッダー圧力の調整が可能であることを特徴とする(1)に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
(3)前記各分割された各メインヘッダーに導入されるガスは、連続焼鈍炉の雰囲気ガスであることを特徴とする(2)に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
(4)前記各分割された各メインヘッダーへは、さらに水素ガス又は体積%で30%以上の水素ガスを含む窒素−水素の混合ガスの導入及びその導入量の調整が可能であることを特徴とする(3)に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
(5)前記突出して設けられたノズルは、ノズル底部開口面積がノズル先端部開口面積より大きいテーパ構造を有し、そのテーパ角度が4°以上、30°以下で、突出部の長さが20mm以上、120mm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
本発明によれば、ノズルからのガス噴出速度を速くしても、ガスの滞留を防止して冷却帯のガス循環を促進できるので、ノズル冷却能力を最大限に発揮し、高効率冷却を達成することができる。また鋼帯のばたつきによる擦り傷や鋼帯幅方向の材質ムラがなく、材質が均一で美麗な製品を製造することができる。
ガスジェット冷却装置の圧力ヘッダーおよびノズルの配置を示す縦断面図である。 ノズルの開口部の配置を示す正面図である。 本発明の実施形態に係るガスジェット冷却装置を備える鋼帯の連続焼鈍炉の冷却帯の要部を示す縦断面図である。 ガスジェット冷却装置のガスジェットで鋼帯に働く力を示す概念図である。 鋼帯がC反り形状となるときの鋼帯幅方向の温度プロファイルを示す概略図である。 圧力ヘッダーを鋼帯幅方向で分割したガスジェット冷却装置の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。 ガスジェット冷却装置の圧力ヘッダーの別の断面形状を示す縦断面図である。 ガスジェット冷却装置の圧力ヘッダーの別の断面形状を示す縦断面図である。
本発明の実施形態に係るガスジェット冷却装置を鋼帯の連続焼鈍炉の冷却帯に配置したときの実施形態について、図1〜図8を用いて具体的に説明する。なお、本明細書において、炉内ガス、圧力ヘッダー等に導入するガスの成分組成の%は、体積%である。
図3は、本発明の実施形態に係るガスジェット冷却装置を備える鋼帯の連続焼鈍炉の冷却帯の要部を示す縦断面図である。図3において、1は冷却帯、2〜4はロール、5、6は押さえロール、7〜10はガスジェット冷却装置、11は圧力ヘッダー、17はメインヘッダー、13〜16は送風ファン、Sは鋼帯である。
冷却帯1は、単数の温度制御ゾーンまたは複数の温度制御ゾーンからなる。本実施形態では、温度制御ゾーンは4ゾーンからなり、各ゾーンにガスジェット冷却装置7〜10が設置されている。
冷却ガス(冷媒)は、送風ファン13〜16を用いて、各メインヘッダー17に送風され、そこから各圧力ヘッダー11に送風される。
図1は、ガスジェット冷却装置における圧力ヘッダー11とノズル12の配置を説明する縦断面図である。
ガスジェット冷却装置7〜10には、各々、鋼帯表裏に複数の圧力ヘッダー11が鋼帯進行方向に直列に配置されている。各圧力ヘッダー11の鋼帯対向側に、該圧力ヘッダー11から突出して設けられたノズル12が鋼帯幅方向に等間隔で複数配置されている。圧力ヘッダー11は円管形状をなす。圧力ヘッダー11は、鋼帯幅方向に延在し、その長さが鋼帯幅よりも長い。
ノズル12から、非酸化性の冷却ガス(N、Hあるいはその混合ガス等)を鋼帯Sに吹き付ける。冷却ガスは、通常、送風ファン13〜16を用いて送風する。その際、炉内ガスを内部循環させてもいいし、外部からガスを引き込んでもかまわない。通常、この冷却帯では、焼鈍後の900〜600℃程度の鋼帯を、550〜200℃程度まで冷却する。
ノズル12の形状は、ノズル底部開口面積をノズル先端部開口面積より大きくし、テーパが付いた突出構造が良い。ノズル底部開口面積をノズル先端部開口面積より大きくし、テーパ構造とすることで圧力損失を小さくし、コンパクトなノズルで高い噴出速度を得ることができ、またノズルを出た後のガス速度の減衰も小さい。実験により確認した結果、テーパ角度(θ:図1参照)が4°以上、30°以下で良好な効果が得られることが分かった。またノズルの突出長さ(H:図1参照)は20mm以上、120mm以下が良い。20mmより短いと鋼帯−圧力ヘッダー間での熱のこもりが原因で冷却効果が減少する。120mmより長いと圧力損失が大きくなり噴射風量が少なくなってしまう。好ましくは40〜100mmが良い。
図2は、ノズル12の開口部の配置を示す正面図である。圧力ヘッダー11は、鋼帯表裏の各々に、鋼帯長手方向に等間隔Lで複数配置されている。したがって、ノズル12も鋼帯長手方向に等間隔Lで配置されている。また、各圧力ヘッダー11のノズル12は鋼帯幅方向に等間隔Wで複数配置されている。
また、鋼帯表裏の各々では、鋼帯長手方向下流の圧力ヘッダー11のノズル12の鋼帯幅方向位置は、その上流の圧力ヘッダー11のノズル12の間に位置するように千鳥状に配置されている。ノズル12がこのように千鳥状に配置された場合、ノズル1個が作用する範囲が最適化され、冷却能力が高いことが一般的に知られている。
このようなノズル配置において、鋼帯表裏で圧力ヘッダー11を鋼帯長手方向にずらして配置した場合、すなわち、鋼帯表裏でノズル12を鋼帯長手方向にずらして配置した場合、鋼帯の振動を抑制できることを見出した。鋼帯の振動は、ノズルからの高速で噴射される乱流、形状が不安定な鋼帯に沿って流れる随伴流の乱れ等によって引き起こされる。鋼帯の振動を抑制できる条件を詳細に検討した結果、鋼帯表裏の圧力ヘッダーの鋼帯長手方向の間隔(図2の寸法L1)が前記圧力ヘッダー間隔Lの1/3以上、2/3以下となるように、鋼帯表裏で、圧力ヘッダー11の位置を鋼帯長手方向にずらして配置することで前記効果が発生することを見出した。鋼帯表裏の圧力ヘッダーの鋼帯長手方向のずらし量が、前記圧力ヘッダー間隔Lの1/3より小さいか、2/3より大きいと、鋼帯表裏の長手方向のノズル間隔が近づきすぎて振動抑制効果が得られなかった。
このメカニズムについて次のように考える。図4はガスジェット冷却装置の圧力ヘッダーのノズルによって鋼帯にかかる力の関係を示す。ガスが鋼帯Sに衝突する圧力をP、鋼帯Sの張力をT、鋼帯表裏で鋼帯長手方向に一番近いノズル間隔をZとすると、鋼帯上に回転モーメントPZが働き、鋼帯Sには長手方向に曲がる力が働く。鋼帯を曲げる力に対し鋼帯の張力Tは、鋼帯を真っ直ぐに伸ばす復元力を発生させる。この復元力により振動が抑制されると考えられる。
さらに、鋼帯表裏のノズル位置を鋼帯幅方向にずらした場合、温度分布の不均一がなくなり均一な材質の鋼帯が得られることを見出した。鋼帯表裏の一方の側のノズル群に対して、鋼帯表裏の他方の側のノズル群の鋼帯幅方向のずらし量(図2中のW1)が、前記鋼帯幅方向のノズル間隔W(図2参照)の1/6以上、1/3以下になるようにすると、温度分布の不均一が減少する。前記鋼帯表裏のノズルの鋼帯幅方向のずらし量(図2中のW1)が前記した鋼帯幅方向のノズル間隔Wの1/6より小さいか、または1/3より大きいと、鋼帯表裏のノズルが鋼帯幅方向に離れすぎて温度分布均一化の効果が得られない。
冷却ガスは、メインヘッダー17に導入された後、メインヘッダー17から各圧力ヘッダー11に送られる。各メインヘッダー17を鋼帯幅方向で3分割以上7分割以下に分割した分割構造とし、その分割数に対応させて、圧力ヘッダー11を、鋼帯幅方向で3分割以上7分割以下に分割した構造にすることが好ましい。分割メインヘッダーは、幅方向位置が対応する、すなわち幅方向位置が同じ位置になる各分割した圧力ヘッダーにガスを供給可能とし、さらに、各分割メインヘッダー17は、ヘッダー圧力の調整を可能にする。
鋼帯を幅方向に切断した断面がアルファベットのCのように反る形状、いわゆるC反りの場合、鋼帯の幅方向の温度分布は、図5に示すように鋼帯中心部に冷たいガスが集中し中心部の温度が下がるような分布を持つ。その場合、メインヘッダー17を鋼帯幅方向に分割し、それに対応させて圧力ヘッダー11を鋼帯幅方向に分割し、メインヘッダー17の鋼帯幅方向の圧力を調整して鋼帯幅方向で圧力ヘッダー11のガス吹き付け量(ヘッダー圧力)を変えることで鋼帯温度の調整を行う。鋼帯幅方向のヘッダー分割数が3分割より少ないと、温度分布を均一にすることができない。また7分割までは温度分布の改善がみられたが7分割より多くても7分割と比べて温度分布に改善はみられなかった。そのため設備コスト面から7分割以下とするのが良い。
圧力ヘッダー11に導入する冷却ガスとして、連続焼鈍炉の冷却帯の炉内ガスを使用できる。冷却帯の炉内ガスの水素濃度は、還元雰囲気を作り出すため、通常5〜20%程度である。冷却ガスの水素濃度を、冷却帯の炉内ガスの水素濃度より高めることで冷却能力を向上させることができる。メインヘッダー17に水素濃度が冷却帯の炉内ガスより高濃度の水素ガスを含有するガスを導入することで、圧力ヘッダー11に導入される冷却ガスの水素濃度を高めることができる。冷却帯の炉内ガスより高濃度の水素ガスを含有するガスの水素濃度が30%未満では冷却能力を向上する効果が認められないので、メインヘッダー17に導入する冷却帯の炉内ガスより高濃度の水素ガスを含有するガスは、水素ガス、または体積%で30%以上の水素ガスを含む窒素−水素の混合ガスが好ましい。
メインヘッダー17と圧力ヘッダー11を鋼帯幅方向に分割した場合、各メインヘッダー17に、水素ガス、または水素ガス濃度が30%以上の窒素−水素の混合ガスを導入可能とし、またさらにその流量も調整可能にすることで鋼帯幅方向の温度均一性をより良好にできるようになる。
図6は、メインヘッダーと圧力ヘッダーを鋼帯幅方向で5分割し、分割ヘッダー毎のガス圧力と水素ガス量を調整可能にしたガスジェット冷却装置の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。鋼帯表裏の各々に複数の圧力ヘッダーが配置される。図6では、説明の便宜のために、一方の側の3基の圧力ヘッダーだけが示されている。
図6において、ノズルが設置された各圧力ヘッダー11は、破線で示すように鋼帯幅方向に5分割されている。11−1〜11−5は分割によって形成された分割圧力ヘッダーである。圧力ヘッダー11は、分割圧力ヘッダー毎に区切られている。各分割圧力ヘッダー11−1〜11−5の背面に、鉛直方向に延在し、圧力ヘッダー11の分割数と同じ数の分割メインヘッダー17−1〜17−5が配置されている。分割メインヘッダー17−1〜17−5は、各々、分割圧力ヘッダー11−1群〜11−5群の各群の分割圧力ヘッダーに接続されている。
分割メインヘッダー17−1〜17−5には、各々、冷却帯の炉内ガス(雰囲気ガス)を導入する雰囲気ガス導入管18−1〜18−5、炉内ガスより高濃度の水素ガスを含有するガスを導入する高濃度水素ガス導入管19−1〜19−5が接続されている。雰囲気ガス導入管18−1〜18−5、高濃度水素ガス導入管19−1〜19−5は、各々、開度又は圧力を調整する機構20−1〜20−5、21−1〜21−5を備え、分割メインヘッダー17−1〜17−5は、開度又は圧力を調整する機構20−1〜20−5、21−1〜21−5を操作することで、分割メインヘッダー17−1〜17−5の各々の内部圧力、水素濃度を調整できるようになっている。分割メインヘッダー17−1〜17−5に導入されたガスは、当該ヘッダーに接続されている各分割圧力ヘッダー11−1〜11−5に導出される。
分割メインヘッダー17−1〜17−5の内部圧力、水素濃度を調整することで、圧力ヘッダー11の鋼帯幅方向の冷却能力を変更し、鋼帯幅方向の温度分布を調整することができる。
図6では、圧力ヘッダー11は、分割圧力ヘッダー毎に区切られるが、分割圧力ヘッダー毎の区切りを設けずに分割メインヘッダー17−1〜17−5の内部圧力及び/又は水素濃度を変更して圧力ヘッダー11の鋼帯幅方向の冷却能力を変更することで、鋼帯幅方向の温度分布の調整を行ってもよい。
鋼帯表裏のもう一方の側の圧力ヘッダー、メインヘッダーも上記と同様に構成されている。この鋼帯表裏のもう一方の側のメインヘッダーと、それと幅方向位置が対応する前記分割メインヘッダー17−1〜17−5とは、鋼帯端部側方を回って形成されたヘッダー管によって連通されている(図示なし)。このように構成することで、鋼帯表裏で前記した作用効果が発現される。
冷却効率の良い千鳥配置のノズルを製造しようとすると、構造的に容易なのは、特許文献1のように長手方向に複数列のノズル配置が可能な、一つの大きな箱状ヘッダーを用いることである。しかしこの形式では、ガスが鋼帯と箱状ヘッダー間に滞留しやすい構造になっているため、炉内ガス温度が上がりやすく、所望の冷却能力を得ることができない。この現象は、噴射ガス圧力が高いほど(風量が多いほど)その影響が大きいこともわかってきた。また、この箱状ヘッダーは、鋼帯からの輻射熱を受けて温度が上がりやすく、トータルの冷却能力が低下する問題もある。
そこで、本発明では、一列のノズル列に対して1本の圧力ヘッダーを持つ形式にし、圧力ヘッダー間の隙間を変更して上述の問題を解消できるヘッダー構造とした。しかし圧力ヘッダーの断面積が小さいと幅方向に風量分布が発生しやすくなる。この問題は、鋼帯幅方向で圧力ヘッダーを分割することで解消できるが、鋼帯幅方向で圧力ヘッダーを分割しない場合は、圧力ヘッダーの断面積を大きくすることが望ましい。圧力ヘッダーの断面積を大きくするには、圧力ヘッダーの断面形状は円形である必要はなく、図7、図8に示すように直方型や台形型等にして断面積を確保してもよい。ヘッダー断面形状はこれらに限るものではない。
連続溶融亜鉛鍍金ラインの均熱帯の後の冷却帯に、下記の仕様のガスジェット冷却装置を設置し、高張力鋼帯の製造実験を行った。
[本発明例、比較例]
図1〜図3に示したガスジェット冷却装置とした。
圧力ヘッダー:断面円形50A相当、長さ1750mm
ノズル径:先端φ20mm、基部φ28.8mm、ノズル突出高さ:50mm
ノズルテーパ角度:10.058°
ノズル〜鋼帯距離:100mm
圧力ヘッダーのノズル配置:ピッチ(W)140mmで12個
鋼帯長手方向の圧力ヘッダーの配置:表裏ともピッチ(L)125mmで65列
圧力ヘッダーの幅方向分割数:5分割。中央の分割圧力ヘッダーに4個のノズル、その外側の分割圧力ヘッダー、端部側分割圧力ヘッダーに各2個のノズルが配置されるように、中央、その外側、端部側の分割圧力ヘッダー長は、各々560mm、280mm、315mmとした。
上記のように構成した鋼帯表裏のノズル群について、鋼帯裏側ノズル群を鋼帯表側ノズル群に対して、鋼帯長手方向に長手方向圧力ヘッダーピッチ(L)の1/4〜1/2(31.25mm〜62.5mm)ずらし、鋼帯幅方向にノズルピッチ(W)の1/7〜1/4(20mm〜35mm)ずらして配置した。
冷却ゾーン数:4
[従来例]
特許文献1の記載に基づいた冷却ノズルを下記のように配置した。
圧力ヘッダー(冷却箱):幅1700mm×長手7000mm(1ゾーン分)
ノズル径:先端φ20mm、基部φ40mm
幅方向のノズルピッチ:40mm
幅方向のノズル本数:40個
ノズル高さ:200mm
長手方向のノズルピッチ:270mm
長手方向のノズル列数:25列
突出ノズルのノズル先端の開口面積の総和が冷却箱の表面積の2〜4%内に入るように配置した。
ヘッダー幅方向の分割:なし
ノズル〜鋼帯距離:100mm
1冷却ゾーンの圧力ヘッダー数:1個(箱形状)
冷却ゾーン数:4
上記冷却設備にて、板厚1.4mm、板幅1400mmの鋼帯を通板した結果を表1に示す。冷却停止温度は、冷却帯出側温度である。幅方向最大温度偏差は、冷却帯出側における鋼帯幅方向の最大温度差である。鋼帯の最大振幅は、4番目の冷却ゾーン(No.4ゾーン)中間に設置したレーザー変位計で計測した最大振幅である。
本発明例、比較例は、冷却ガスとして、H:10%、残部Nガスからなる冷却帯の雰囲気ガスを、冷却帯に設けた吸気口から吸引し、冷却水が流れる金属管によって構成された水冷式のガスクーラーで冷却したものを、送風ファンで各メインヘッダーに供給した。圧力ヘッダーのノズルから噴出されたガスは、冷却帯に設けられた吸気口から吸引し、循環使用した。本発明例の一部は、エッジ側分割メインヘッダーに、さらに当該ヘッダーに接続された高濃度水素ガス導入管より水素ガスを供給した。
本発明例では、出側鋼帯温度分布を確認しながら幅方向温度差が軽減されるように各分割メインヘッダーに供給するガスの圧力調整を行った。
水素ガスを供給した発明例は、実験開始時に10%であった水素濃度は、実験の経過とともに徐々に増加し、実験終了時の水素濃度は、No.1は17%、No.2は18%であった。水素ガスを導入した分割メインヘッダーと水素ガスを導入しない分割メインヘッダーの水素濃度差は小さかった。
従来例は、ガスクーラーで冷却したH:10%、残部Nガスからなる冷却帯の雰囲気ガスを圧力ヘッダーに供給した。圧力ヘッダーのノズルから噴出された冷却ガスは、再び冷却帯の吸気口から吸引し、循環使用した。
ノズルから噴出されるガス温度は、鋼帯温度が高く抜熱量の多いNo.1ゾーン側が高く、No.4ゾーン側が低くなる。噴出ガス温度は約110〜50℃程度である。
Figure 0004977878
従来例は、冷却帯出側温度が高く、さらに鋼帯幅方向の温度不均一と板のばたつきが大きい。本発明例は、従来例に比べて冷却帯出側温度が80℃低く、鋼帯幅方向の温度不均一と板のばたつきの両方が低減されている。比較例は、従来例に比べて冷却帯出側温度が低くなるが、鋼帯幅方向の温度不均一と板のばたつきの両方を同時に低い水準にできない。
本発明のガスジェット冷却装置によれば、冷却能力を向上し、冷却ムラの発生を防止できるので、連続焼鈍炉の冷却帯に配置されるガスジェット冷却装置として利用することができる。
1 冷却帯
2〜4 ロール
5、6 押さえロール
7〜10 ガスジェット冷却装置
11 圧力ヘッダー
11−1〜11−5 分割圧力ヘッダー
12 ノズル
13〜16 送風ファン
17 メインヘッダー
17−1〜17−5 分割メインヘッダー
18−1〜18−5 雰囲気ガス導入管
19−1〜19−5 高濃度水素ガス導入管
20−1〜20−5、21−1〜21−5 開度又は圧力を調整する機構
S 鋼帯

Claims (5)

  1. 鋼帯表裏の各々の面に対向して、鋼帯幅方向に延在し、その長さが鋼帯幅より長い管状の圧力ヘッダーが鋼帯長手方向に間隔Lを設けて各々複数配置され、さらに該圧力ヘッダーに該圧力ヘッダーから突出して設けられたノズルが鋼帯幅方向に間隔Wで複数配置され、かつ該ノズルは鋼帯長手方向に千鳥状に配置された連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置であって、
    鋼帯表裏の圧力ヘッダーの鋼帯長手方向間隔が、前記鋼帯長手方向の圧力ヘッダー間隔Lの1/3以上、2/3以下となるように、鋼帯表裏の圧力ヘッダーの位置が鋼帯長手方向にずらして配置され、
    さらに、鋼帯表裏の一方の側のノズル群のノズルに対して、鋼帯表裏の他方の側のノズル群のノズルの鋼帯幅方向のずらし量が、前記鋼帯幅方向のノズル間隔Wの1/6以上、1/3以下になるように鋼帯表裏のノズルが鋼帯幅方向にずらして配置されたことを特徴とする連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
  2. 前記各圧力ヘッダーは、鋼帯幅方向に3分割以上7分割以下に分割され、前記各圧力ヘッダーにガスを供給するメインヘッダーは、前記各圧力ヘッダーの鋼帯幅方向位置が同じ位置の各分割ヘッダーにガスを供給する、圧力ヘッダーと同じ数のメインヘッダーに分割され、各分割されたメインヘッダーは、個別にヘッダー圧力の調整が可能であることを特徴とする請求項1に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
  3. 前記各分割された各メインヘッダーに導入されるガスは、連続焼鈍炉の雰囲気ガスであることを特徴とする請求項2に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
  4. 前記各分割された各メインヘッダーへは、さらに水素ガス又は体積%で30%以上の水素ガスを含む窒素−水素の混合ガスの導入及びその導入量の調整が可能であることを特徴とする請求項3に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
  5. 前記突出して設けられたノズルは、ノズル底部開口面積がノズル先端部開口面積より大きいテーパ構造を有し、そのテーパ角度が4°以上、30°以下で、突出部の長さが20mm以上、120mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の連続焼鈍炉のガスジェット冷却装置。
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