JP5783703B2 - 還元環境下において安定な、規定されたフレームワークを有するイントラボディーおよびそれらの用途 - Google Patents
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Description
本出願は、その全体が参照によりここに組み込まれる1999年12月28日に出願されたPCT特許出願IB99/02054、および2000年3月1日に出願されたPCT特許出願IB00/00218の優先権を主張する。
本発明は、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域の単鎖融合体(scFv)に関し、特に規定された安定なフレームワークを有しかつ細胞内で発現されたかかるscFv(イントラボディー)に関する。
b)特異的な既知の抗原を発現でき、かつ抗原−scFv相互作用の存在下でのみ生存する宿主細胞を、前記scFvライブラリーで形質転換し、
c)そのようにして形質転換した宿主細胞を、抗原およびscFvを発現するのに好適な条件下で培養して、抗原−scFv相互作用の存在下においてのみ細胞を生存させ、
d)生存している細胞内で発現され、また還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを有するscFvを単離する。
a)細胞内(たとえば、ヒト細胞内または他のいかなる細胞内でも)で自然に起こる分子相互作用を好適な細胞(好ましくは酵母)内で再構成させるか、または酵母内在性の相互作用を使用する。次のスクリーニングで、再構成されたかまたは内在性の分子の生物活性によるこれらのCDRの干渉によって、高親和性のCDRを同定する。そのような拮抗性のCDRはたとえば、シグナル伝達経路に含まれる2つのタンパク質をブロックすることにより機能できるであろう。
a)選択されたフレームワークは転写活性化ドメインに融合可能であり、しかもその機能を保持することが示されるであろう。このキメライントラボディーを、DNA結合活性を有するDNA結合部位または転写因子に融合されて得られる抗原に対して高親和性であるCDRの選択に使用する。抗原とCDRが相互作用する時には、転写活性化ドメインは選択マーカー遺伝子の遺伝子発現を媒介し、選択条件下でのこの細胞の生存を許容する。
さらなる好ましい実施形態においては、前記第2タンパク質はDNA結合部位またはトランス活性化ドメインと、前記ライブラリーにコードされるタンパク質の定常領域と相互作用するタンパク質とを含む。ここで使用される術語「定常領域」は、ライブラリー構築物によってコードされ、タンパク質相互作用のパートナーとして働くいかなるタンパク質部位、またはいかなる近接するアミノ酸配列をも含み、また前記用語はたとえばイントラボディーまたはGal11pの一部を含む。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) 還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを有するscFvの単離方法であって、
(a)既知の抗原に対するscFvのDNA配列の少なくとも1つのフレームワークコード領域の突然変異、および前記突然変異の好適な発現ベクターへの導入により、種々のフレームワークおよび定常的なCDRを有するscFvライブラリーを作製し、
(b)特異的な既知の抗原を発現可能であり、かつ抗原−scFv相互作用の存在下でのみ生存する宿主細胞を前記scFvライブラリーで形質転換し、
(c)前記形質転換した宿主細胞を、前記抗原および前記scFvを発現するのに好適な条件下で培養して、前記抗原−scFv相互作用の存在下においてのみ生存させ、
(d)生存細胞内で発現され、また還元環境において安定性かつ可溶性である
規定されたフレームワークを有する前記scFvを単離する方法。
(項目2) 前記宿主細胞が真核生物である項目1記載の方法。
(項目3) 前記宿主細胞が酵母細胞である項目1または2記載の方法。
(項目4) 項目1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られる規定されたフレームワークを有するscFv。
(項目5) 少なくとも1つのCDRの選択的な交換を可能にする制限酵素認識部位を含む項目4記載のscFv。
(項目6) 前記制限酵素認識部位がCDRに隣接する前記フレームワーク内に位置する項目5に記載のscFv。
(項目7) CDR領域における選択的な変更に好適なフレームワークを含むscFvをコードするDNAの産生方法であって、部位特異的変異誘発により、規定された安定性かつ可溶性であるscFvをコードするDNAの配列に特異的な制限酵素認識部位を導入する方法。
(項目8) 前記制限酵素認識部位が前記フレームワーク内に位置し、それによって前記制限酵素認識部位を発生させるための前記ヌクレオチドの置換がアミノ酸配列に影響しない項目7記載の方法。
(項目9) 還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを含むscFvの産生方法であって、還元環境において安定性かつ可溶性である少なくとも2つの異なるフレームワーク、好ましくは項目4〜6のうちいずれか1項記載のフレームワークまたは項目1〜3のいずれか1項に従って単離されるフレームワークのうち少なくとも2つの変異が、規定されたフレームワークを有するscFvを製造するために組み合わされる方法。
(項目10) 項目9の方法により得られる前記規定されたフレームワークを有するscFv。
(項目11) 前記変異が前記可変軽鎖のCDR1の上流に存在する項目10記載のscFv。
(項目12) 前記変異が前記可変重鎖のCDR2とCDR3との間に位置する項目10記載のscFv。
(項目13) 少なくとも1つの変異がCDR1の上流に存在し、かつ少なくとも1つの変異が前記可変重鎖のCDR2とCDR3との間に位置する項目10記載のscFv。
(項目14) 少なくとも2つの変異がCDR1の上流に存在し、かつ少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの変異が前記可変重鎖のCDR2とCDR3との間に位置する項目10記載のscFv。
(項目15) SEQ ID NO 1において規定されたフレームワークを含むscFv。
(項目16) 還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを含むCDRライブラリーの産生方法であって、項目1〜15のいずれか1項記載のscFvをコードするDNA配列が、配列当たり少なくとも1つのCDRを修飾されたCDRで置換するために消化される方法。
(項目17) 前記修飾されたCDRが無作為な変更により産生される項目16記載の方法。
(項目18) 少なくとも1つの無作為化されたCDRおよび、還元環境下において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを有するイントラボディーのライブラリー。
(項目19) 特異的な抗原と相互作用するCDRのスクリーニング方法であって、既知の抗原をコードする核酸配列、特にDNA配列で形質転換させた宿主細胞をさらに、還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを有する無作為化したCDRライブラリーで形質転換し、それによって抗原および/またはscFvをマーカーシステムまたはマーカーシステムの一部に連結させ、したがって選択的な条件下において培養した細胞は抗原/scFv相互作用の存在下でのみ生存し、このように形質転換させた細胞を選択的な条件下において培養し、残存している細胞を培養してイントラボディーを収集する方法。
(項目20) 前記フレームワークが項目1〜19のいずれか1項において規定されるようなフレームワークである、項目19記載の方法。
(項目21) 前記細胞が真核細胞、特に酵母細胞である項目19または20記載の方法。
(項目22) 前記抗原をコードするDNA配列および前記scFvをコードするDNA配列がいずれも、生存許容マーカーに連結された転写活性化システムの一部にいずれも連結された前記抗原またはscFvをそれぞれ含むキメラ分子をコードする、項目19〜21のいずれか1項記載の方法。
(項目23) 前記抗原がDNA結合ドメインに融合され、かつ前記scFvが転写活性化因子ドメインに融合されるか、または前記抗原が転写活性化因子ドメインに融合され、かつ前記scFvがDNA結合ドメインに融合される、項目22記載の方法。
(項目24) scFvと相互作用している抗原のスクリーニング方法であって、興味のある少なくとも1つの抗原を発現する宿主細胞を、還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを有する少なくとも一つのscFv、または還元環境において安定性かつ可溶性である規定されたフレームワークを有する無作為化されたCDRライブラリーで形質転換し、それによって抗原および/またはscFvをマーカーシステムまたはマーカーシステムの一部に連結させ、したがって選択的な条件下において培養した細胞は抗原/scFv相互作用の存在下でのみ生存し、このように形質転換させた細胞を選択的な条件下で培養し、残存している細胞を培養してscFvを収集する方法。
(項目25) 前記フレームワークが項目1〜23のいずれか1項において規定されるようなフレームワークである項目24記載の方法。
(項目26) 前記細胞が真核細胞、特に酵母細胞である項目24または25記載の方法。
(項目27) 前記抗原をコードするDNA配列およびscFvをコードするDNA配列が両者共に、いずれも生存許容マーカーに連結された転写活性化システムの一部に連結された抗原またはscFvをそれぞれ含むキメラ分子をコードする、項目24〜26のいずれか1項記載の方法。
(項目28) 前記抗原がDNA結合ドメインに融合され、かつ前記scFvが転写活性化因子ドメインに融合されるか、または前記抗原が転写活性化因子ドメインに融合され、かつ前記scFvがDNA結合ドメインに融合される、項目27記載の方法。
(項目29) 治療または診断または予防用薬剤としての規定されたフレームワークを有するscFv。
(項目30) 細胞内スクリーニングのための規定されたフレームワークを有するscFvの使用。
(項目31) イントラボディーフレームワークまたはイントラボディーの同定方法であって、好適な宿主細胞をライブラリーおよびマーカーシステムで形質転換し、それによって前記ライブラリーはイントラボディーライブラリーと前記マーカーシステムの少なくとも一部の融合産物となり、前記マーカーシステムは可溶性かつ安定性であるイントラボディーフレームワークをコードする融合タンパク質の存在下においてのみ活性化され、また、可溶性かつ安定性であるイントラボディーフレームワークを発現する細胞の同定および選択を可能にする条件下において前記細胞を培養する方法。
(項目32) 前記ライブラリーが、イントラボディーライブラリーとマーカータンパク質の融合産物である項目31記載の方法。
(項目33) 前記マーカータンパク質が選択可能な活性、特に酵素活性または蛍光活性を有する項目32記載の方法。
(項目34) 前記ライブラリーが、イントラボディーライブラリーと転写を活性し得るDNA結合タンパク質との融合産物である項目31記載の方法。
(項目35) 前記好適な宿主細胞を、イントラボディーおよびトランス活性化システムの一部分を含むタンパク質をコードするライブラリーで形質転換し、前記細胞はさらに前記トランス活性化システムの第2部分を含む第2タンパク質を発現し、それによって前記トランス活性化システムを生存許容マーカーに連結させ、前記細胞が前記2つのタンパク質間の相互作用が存在する選択的な条件下においてのみ生存する、項目31記載の方法。
(項目36) 前記ライブラリーにコードされるタンパク質が転写活性化ドメインを含み、かつ前記第2のタンパク質がDNA結合ドメインを含むか、または前記ライブラリーにコードされるタンパク質がDNA結合ドメインを含み、かつ前記第2のタンパク質が転写活性化ドメインを含む項目35記載の方法。
(項目37) 前記第2タンパク質が、DNA結合ドメインまたはトランス活性化ドメインのそれぞれと、前記第1のライブラリーにコードされたタンパク質の定常領域と相互作用するタンパク質とを含む、項目35または36記載の方法。
(項目38) 特に項目1記載の方法において使用するための、項目31〜37のいずれか1項に記載の方法によって得られる規定されたフレームワークを含むscFv。
scFvおよびCDRライブラリーの品質管理
術語「品質管理」は、scFvライブラリーからの安定性かつ可溶性であるイントラボディーの選択を可能にするアッセイを定義する。
この目的のために、scFvライブラリーを、転写活性化ドメイン(この場合Gal4AD)および定常領域(この場合Gal11P aa263−352)へ融合させる。融合タンパク質の安定性は、scFv部分の安定性および溶解性に依存する。定常Gal11Pドメインは、Gal4の二量体化ドメイン(Gal4DNA結合部位(DBD)の一部である58−97残基(Barberis et al.,1995))と相互作用する。
本発明において記述される品質管理システムの原理は、よく特徴付けられた多数のscFvを用いて実証された。これらは、本質的に同一の抗原結合特性を有するが、インビトロでの安定性は異なる。種々のscFvフラグメントをGal11P−Gal4AD融合タンパク質として発現させた。Gal4二量体化ドメイン(58−97残基)をLexAのC末端に融合させ、6x LexA結合部位の制御下におけるレポーター遺伝子を含有するレポーター株YDE173に転換した(下記参照)。
好適なscFvフラグメントは、たとえば、免疫したマウスから作製されたライブラリーからのリボソームディスプレイによって最初に得られた抗GCN4野生型scFvである(Hanes et al.,1998)。抗原は、7P14P(ジッパードメインの7および14の位置がプロリン残基に変異されていることを示唆する)と呼ばれるGcn4pロイシンジッパーの二重プロリン変異体であり、これは溶液中でランダムコイルを形成する(Leder et al.,1995)。scFvフラグメントは、ランダムコイル高次構造内でモノマーとして野生型ペプチドにも結合するので、インビトロにおいて野生型Gcn4pコイルドコイルペプチドの二量体化を阻止する(Berger et al.,1999)。本発明と関連して「野生型」と呼ばれる抗GCN4 scFvフラグメントは、ロイシンジッパーペプチドからの解離定数が4×10−11Mであることが測定されている(Hanes et al.,1998)。
抗GCN4 scFvについて初めに、GAL1およびADH−駆動(driven)プロモーターを含む複数の酵母ベクターから発現されるその生物活性を調べた。さらに、SV40ラージT抗原由来の核移行シグナル(NLS)を抗GCN4 scFvのN末端に融合させた。試験した組み合わせのうち、TRP1選択マーカーを含むpESBA−Act発現ベクター(実施例を参照)、および2μオリジン(origin)(データ示さず)を用いて、いかなるNLSをも伴わないアクチン1プロモーターから発現させた場合に、抗GCN4 scFvが最も強い生物学的効果を示した。このベクターを引き続き、全てのさらなる実験において使用した。
レポーター遺伝子としてのLacZの発現をモニターするツーハイブリッドアッセイにおける、抗原と相補性決定領域(CDR)との間の好結果の相互作用を図3Bに示す。レポーター株YDE173を使用した。YDE173株は、2000年2月11日に、ドイツ、ブラウンシュヴァイク所在のDeutsche Summlung von Mikroorganismen und Zellkulturen DSZMに、番号DSM13333として寄託された。YDE173は、ゲノムのhis3遺伝子座に、互いに異なる方向に向き付けられたレポーター遺伝子HIS3およびLacZを制御する6つのLexA結合サイトを含有するレポータープラスミドpDE200が組み込まれている、酵母株JPY5(Matα ura3−52 his3Δ200 leu2Δ1 trp1Δ63 lys2Δ385)に由来するものである。
組み込まれたレポーター構築物はLacZレポーター遺伝子だけでなくHIS3遺伝子をも含有するので、ヒスチジンを欠如することはプレート上での増殖選択にとって好ましい。さらに、HIS3遺伝子産物の競合的な阻害剤である種々の濃度の3−アミノトリアゾール(3−AT)を添加することにより、ベイト/抗原とGal4 AD−scFv間の相互作用の強さに依存する酵母細胞の増殖を阻害(抑制)することが可能である。
Gal11P(263−352残基)およびGal4活性化ドメインを、λグラフトscFv(Gal11P−Gal4AD λグラフト)のN末端に融合させた。Gcn4p依存性遺伝子活性化を阻害するその生物活性は、λグラフトのみに匹敵する。図5Aに示すように、定常ドメインのscFvへの融合は、Gcn4p依存性遺伝子活性化に対する阻害活性を妨げなかった。
CDR3 VH(GLFDY)を無作為ペプチドライブラリーと交換するために、この超可変領域に隣接する2つの独特の制限酵素認識部位(BglIIおよびXhoI)を、沈黙突然変異誘発(silent mutagenesis)により導入した。これらの沈黙交換は、抗体のアミノ酸配列に影響せず、したがって、λグラフト変異体のインビボでの性能を変化させなかった(図5B参照)。
酵母内の種々のGcn4p結合scFvフラグメントの溶解性を、ウェスタンブロット解析により調べた。λおよびκグラフト変異体の場合のみ、明らかな量の可溶性タンパク質が細胞粗抽出液中に検出された(図6)。
好ましくは本発明に従った方法により単離されるフレームワーク内の変異は、還元環境において安定性かつ可溶性であるさらなるフレームワークを作製するために組み合わせることができる。そのようにして得られるフレームワークは、1つだけの変異を有するフレームワークに比べて、インビボにおける性能が増強される。6つの変異を組み合わせたフレームワークを、SEQ ID NO:1と規定する。
CDR−グラフトされた抗GCN4 scFvフラグメントの設計
scFvフラグメントのクローニング、発現、および精製
全てのscFvフラグメントは、20−merのリンカー(GGGGSGGGGSGGGGSSGGGS)およびC末端のhis5−tagによってVL−VHに配向している。
Gal4活性化ドメインを、テンプレートとしてpGAD424(Clontech)を用いたポリメラーゼ連鎖反応法により増幅させた。両プライマー[上流プライマー:5’−CCATGGGCCCAAGCTTTGCAAAGATGGATAAAG−3’(Seq.Id.No.2)、下流プライマー:5’−TTTGGGCCCGAAGAACCGCCACCACCAGAACCGCCTCCACCAGAGCCACCACCACCAGGCCTGATCTCTTTTTTTGGGTTTGGTG−3’(Seq.Id.No.3)]は、pESBA Actと関連して、種々のscFvに対するSV40T−抗原核局在化シグナルN末端を含むGal4活性化ドメイン(AD)ポリペプチドのクローニングに好適なApaIサイトを含有する。活性化ドメインと単鎖抗体とは、下流プライマーによってコードされる(GGGS)3リンカーによって分離される。
Gal11wtおよびGal11pはいすれも、以下のプライマーを用いて増幅させた。上流プライマー:5’−CATGCCATGGTTCCTCAACAGCAGCAAATGCAAC−3’(Seq.Id.No.4)、下流プライマー:5’−CATGCCATGGCGCTAGCCAAAGCTTGGATTTTTCTCAGG−3’(Seq.Id.No.5)であり、いずれもNcoIサイトを含有している。アミノ酸263−352をコードしているPCR産物を、pESBA−Act2 Gal4(AD)−scFv融合構築物(上述した)のNcoIサイトに挿入した。これは、それぞれのGal11対立遺伝子の、Gal4(AD)−scFvとのインフレーム融合体を産生した。Gal11インサートの正確な配向性を、独特な酵素NheIで消化することにより確認した。
GCN4ロイシンジッパー(aa245−285)を、LexA(aa1−202)の下流をクローニングするのに便利なEcoRIサイトを含有するプライマーを用いてPCR増幅させた。これを、ADHプロモーターの制御下で融合タンパク質を発現する、LEU2選択マーカーを含むArs CenプラスミドpAdM018とする。
可変重鎖のCDR3の交換を容易にするために、部位特異的変異誘発によって、Gal4 AD−λグラフトscFvの初めの構造を変えることなく、CDR3 VHに隣接させて2つの独特な制限酵素認識部位を導入した。これらの沈黙点変異を、テンプレートとしてλグラフトを用いたPCRにより導入した。第1ラウンドにおいては、2つの別々のPCR反応を、2つの重複したPCR産物を導くプライマーである、#2421と#2487、および#2486と#2488を用いて行った。これらの2つの産物は、SpeIおよびSalIサイトを含有する外側のプライマー、#2421および#2488を用いたPCRの第2ラウンド用のテンプレートとして働く。最終産物を、SpeIおよびSalIを用いてGal4 AD−λグラフトにサブクローニングした。
フレームワークで安定化された、Gal4活性化ドメインに融合させたλグラフトscFv(λグラフトscFv−Gal4 AD)の可変重鎖からのCDR3の初めの3アミノ酸(GLF)は、ロイター(Reiter)らによって記載された方法に基づいたPCRによって無作為化させた。CDR3の最後の2残基(DおよびY)は、その保存および構造上の重要性のために(Chothia and Lesk,1987)、無作為化させなかった。可変重鎖の8000の異なるCDR3変異体を潜在的にコードするλグラフトscFv−Gal4 ADライブラリーを得た。無作為に選んだ6つのライブラリークローンの配列解析により、予想した位置に無作為なCDR3配列の存在が明らかとなった。
フレームワークで安定化されたλグラフト変異体を、イントラボディーのフレームワークに沿って統計的にアミノ酸変化を導入するために、Sambrook et al.によって説明されるようにPCRにより無作為に突然変異誘発させた。酵母株YDE173を、このGal4の活性化ドメインに融合させて無作為突然変異誘発させたscFvライブラリー、およびLexAに融合させた特異的な抗原(GCN4ロイシンジッパーのaa245−258)を発現するプラスミドで同時形質転換し、80mMの3ATを含有するドロップアウトプレート上で培養した。6つの候補となるクローンを選択し、それぞれはフレームワーク内に1つの単独のアミノ酸変化を有していた。これら6つの変異体フレームワークは全て、λグラフト変異体と比べて向上したインビボにおける性能を示し、これはβ−ガラクトシダーゼ活性の測定により確認され、定量化された。イントラボディーの性能を向上させる種々のアミノ酸変化は相加的に振る舞うという仮定をもとに、本発明者らは、Gal4活性化ドメインに融合させた1つのフレームワーク内の6つ全ての変異を組み合わせ、LacZレポーター遺伝子の活性化について、フレームワークで安定化させたλグラフト変異体と比較した。図2は、6つの点変異を全て含む混合性のこの新規なフレームワーク(Ωグラフト)は、本来のλグラフト変異体と比較してインビボにおける性能がほぼ30%優れていることを示すことを示す。驚くべきことに、これら6アミノ酸の置換はクラスター形成されており、そのうち2つ(E→KおよびL→R)は可変軽鎖のCDR1の上流に存在し、残りの4つ(N→D、G→C、K→E、T→S)は可変重鎖のCDR2とCDR3の間に位置する。
組み込み用レポータープラスミドpAB183は、GAL1プロモーターのTATAボックスの上流150の位置で2つのGcn4p結合サイトをクローニングした、pJP161(Barberis et al.,1995)に由来する。Gcn4p結合サイトは、5’SphIおよび3’SalI適合性のオーバーハング配列を有する2つの相補的なオリゴヌクレオチドをアニーリングすることにより発生させた。このオリゴヌクレオチドは次のようである:5’−CCTATGACTCATCCAGTTATGACTCATCG−3’(Seq.Id.No.6);5’−TCGACGATGAGTCATAACTGGAT GAGTCATAGGCATG−3’(Seq.Id.No.7)。このレポータープラスミドをApaIサイトで直線化し、JPY5株(Barberis et al.,1995)の酵母ゲノム遺伝子座ura3へ組み込み、YAdM2xGCN4−150とした。YAdM2xGCN4−150株は、2000年2月11日に、ドイツ、ブラウンシュヴァイク所在のDeutsche Summlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH DSZMに、番号DSM13332として寄託された。4つの独立した酵母形質転換を機能解析において試験し、全てが同じGCN4−依存性のレポーター遺伝子活性を示した。クローンのうち1つ(YAdM2xGCN4−150)を後の実験のために選択し、これを酵母野生型と呼ぶ。
酵母細胞を、次の標準的な手順に従った酢酸リチウム法を用いて形質転換した。形質転換体をドロップアウト培地(−Trp/−Leu)中で一晩30℃で培養した。飽和になった培養液を、ドロップアウト培地でOD600=0.7になるまで希釈し、少なくとも2倍の時間再びインキュベートした。各培養液を、およその濃度が106cells/mlから始めて、水で系列希釈し(希釈係数(dilution factor)5)、各希釈溶液から10μlずつ、0mM、20mM、40mM、60mM、80mM、または100mMの3−アミノトリアゾールを含むドロップアウトプレート(−Trp/−Leu/−His)上にスポットした。各形質転換体の6つの異なる希釈溶液をドロップアウトプレート上にスポットした。プレートを30℃でインキュベートし、48時間、72時間、および120時間後に調査した。
溶液中のβ−ガラクトシダーゼアッセイを、記述されているように(Kaiser et al., 1994, Escher and Schaffner 1997)透過化処理した細胞を用いて行った。活性は、アッセイした細胞数に対して規準化した。
種々の抗GCN4scFvフラグメントの溶解性をウェスタンブロットにより解析した。5mlの培養液を30℃で光学密度が約2〜3になるまで培養した。細胞を同じ細胞密度になるように規準化し、沈殿させ、可溶性タンパク質のやさしい単離を促進させる穏やかな界面活性剤調合物であるピアス社製のY−PERTM酵母タンパク質抽出剤で全細胞タンパク質を抽出した。可溶性および不溶性の画分を遠心分離(13000rpm、10分、4℃)により分離した。可溶性および不溶性の粗抽出物のサンプルを標準的な手順に従ってSDS−PAGEに供し、PVDF膜にブロットした。His5−tagの付いたscFvフラグメントを、抗His5scFv−AP融合体を用いた既知の方法(Lindner et al.,1997)に従って、ベーリンガーマンハイム社製の化学発光ホスファターゼ基質(chemoluminescent phosphatase substrate)CSPDを用いて検出した。ウェスタンブロットにおいて適切な強度を得るために、可溶性画分においては不溶性画分において用いるよりも約5倍高いタンパク質濃度を用いなければならず、またブロット時間も異なった。したがって、直接的な比較は、それぞれ全て可溶性の試料の間、または全て不溶性の試料の間でのみ意味のあることである。
Claims (4)
- 還元環境において安定でありかつ可溶性である規定されたフレームワークを有するscFvを単離するための方法であって、
(a)既知の抗原に対するscFvのDNA配列の少なくとも1つのフレームワークコード領域の突然変異、および前記突然変異の好適な発現ベクターへの導入により、種々のフレームワークおよび定常的なCDRを有するscFvライブラリーを産生し、
(b)特異的な既知の抗原を発現可能であり、かつ抗原−scFv相互作用の存在下でのみ生存する宿主細胞を前記scFvライブラリーで形質転換し、
(c)前記形質転換した宿主細胞を、前記抗原および前記scFvを発現するのに好適な条件下で培養して、抗原−scFv相互作用の存在下においてのみ細胞を生存させ、
(d)生存細胞内で発現され、また還元環境において安定でありかつ可溶性である規定されたフレームワークを有する前記scFvを単離する方法。 - 前記宿主細胞が真核細胞である請求項1記載の方法。
- 前記宿主細胞が酵母細胞である請求項1または2記載の方法。
- SEQ ID NO 1で表されるscFv。
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