JP5775513B2 - 軸方向気体ベアリングを備えたサイドチャネル型ポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、流体媒体(気体又は液体)をポンプ輸送するポンプに関する。特に、本発明は、再生式真空ポンプとして構成された真空ポンプに関する(しかしながら、これには限定されない)。
本発明を真空ポンプに関して以下に説明するが、本発明は、真空ポンプには何ら限定されず、他形式のポンプ、例えば液体ポンプ、気体圧縮機等にも同様に利用できることはいうまでもない。
再生式ポンプ輸送(吸込み吐出し)機構体を有する真空ポンプが従来公知である。公知の再生式ポンプ輸送機構体は、ロータブレード(回転翼)の複数の環状アレイを有し、これらロータブレードアレイは、ロータに取り付けられると共にロータからステータに形成されているそれぞれの環状チャネル中に軸方向に延びている。ロータの回転により、ブレードは、チャネルに沿って進み、それにより気体渦が生じ、この気体渦は、ポンプ輸送機構体の入口と出口との間の流路に沿って流れる。
この種の真空ポンプの例が当該技術分野において知られており、かかるポンプの特定のバリエーションが欧州特許第0568069号明細書及び同第1170508号明細書に記載されている。これら特許文献に記載されている再生式ポンプ輸送機構体は、ポンプ要素がロータの各側に設けられた円板状の形態で形成されたロータを有する場合がある。ポンプ輸送された気体は、この気体がロータの一方の側部に沿って入口から流れ、次にロータの他方の側まで、そしてここから出口まで先に連続的に移送されるよう構成された流路を辿る。
欧州特許第0568069号明細書 欧州特許第1170508号明細書
本発明は、従来型ポンプと比べて改良されたポンプを提供する。
本発明は、ポンプであって、ステータに対して回転可能に軸方向シャフトに取り付けられた全体として円板状のポンプロータを含む再生式ポンプ輸送機構体を有し、ポンプロータは、表面内に設けられると共にポンプロータとステータとの間に形成されていて、気体をポンプ輸送機構体の入口から出口までポンプ輸送するための流路の少なくとも一部分を構成するロータ特徴部を有し、ポンプロータ及びステータは、ポンプ作動中、ロータとステータとの間の軸方向隙間を制御するよう構成された軸方向気体ベアリングを有することを特徴とするポンプを提供する。かくして、ポンプのこの構成により、ロータに設けられていて、ポンプのロータ及びステータコンポーネント相互間の軸方向隙間の制御具合を向上させることができる気体ベアリングが提供される。
代替的に又は追加的に、本発明は、ポンプであって、ステータに対して回転可能に軸方向シャフトに取り付けられた全体として円板状のポンプロータを含む再生式ポンプ輸送機構体を有し、ポンプロータは、各々に一連の異形凹部が同心円の状態で形成された第1及び第2の表面と、ステータの表面に形成されていて、ポンプロータの第1又は第2の表面のうちの一方に向いたステータチャネルとを有し、前記同心円の各々は、ポンプ入口と出口との間に延びる気体流路の一区分を形成するようステータチャネルの一部分と整列しており、ポンプロータは、流路の一区分を小区分に分割し、気体が任意の小区分に沿って出口に向かって同時に流れることができるようになっている。その結果、ポンプ輸送されている気体は、ロータの両方の表面に沿って並行に流れる。かくして、この形態により、ロータの各側の気体圧力を実質的に互いに等しくすることができ又は均衡させることができるポンプ輸送機構体を提供することができる。
代替的に又は追加的に、本発明は、再生式ポンプロータであって、ポンプステータに対して回転可能に軸方向シャフトに取り付けることができる全体として円板状のポンプロータを有し、ポンプロータは、各々に一連の異形凹部が同心円の状態で形成された第1及び第2の表面を有すると共にステータの表面に形成されたステータのチャネルに向くよう構成され、使用中、同心円の各々は、真空ポンプの入口と出口との間に延びる気体流路の一区分を形成するようステータチャネルの一部分と整列し、気体流路は、気体が第1の表面及び第2の表面に沿って入口に向かって同時に流れることができるようロータによって分割されている。かくして、この形態により、ロータの各側の気体圧力を実質的に互いに等しくすることができ又は均衡させることができるポンプ輸送ロータ機構体を提供することができる。
軸方向気体ベアリングは、ポンプロータに設けられたロータ側部品と、前記ステータに設けられたステータ側部品とから成るのが良い。この構成により、比較的少ないコンポーネント上に多数のポンプ部品を比較的容易に作ることができる。
ステータは、ポンプロータの軸方向側部にそれぞれ隣接して配置された2つのステータ部分を有し、ロータ特徴部は、ポンプロータの軸方向側部の各々に設けられ、流路は、ポンプロータによって小流路に分割され、気体がポンプロータの各軸方向側部に沿って同時に出口まで流れることができるようになっている。加うるに、小流路は、ポンプロータの半径方向中心線に関して対称であるように配置可能である。加うるに、第1及び第2の流路小部分をポンプロータの両側に設けられた第1及び第2の表面によって構成することができ、第1及び第2のステータチャネルは、それぞれ、ポンプロータの第1及び第2の表面の各々にそれぞれ向いている。さらに、第1のステータチャネルにより構成された第1の流路小区分及び第2のステータチャネルにより構成された第2の流路小区部は、等しい量の気体をポンプ輸送するよう配置可能である。さらに、第1及び第2の流路小区分は、例えばポンプロータの内側半径方向位置からの気体を半径方向外側の位置に差し向けるよう気体を同一の半径方向に差し向けるよう配置可能である。この構成により、バランスのとれたポンプ輸送構成が得られ、それにより、ポンプ輸送された気体によってロータの各側に及ぼされる圧力は、互いに実質的に等しくなる。その結果、ロータポンプコンポーネントとステータポンプコンポーネントとの間の軸方向隙間を比較的僅かな距離に維持することができ、それにより、ロータとステータとの間の気体漏れが減少し、それによりポンプ輸送効率を向上させることができる。
軸方向気体ベアリングのロータコンポーネントは、ポンプの作動中、ロータとポンプのステータとの間の軸方向回転隙間を制御するために気体ベアリングのステータコンポーネントと協働するよう構成可能である。さらに、軸方向気体ベアリングのコンポーネントの一部分は、第1の表面と同一平面内に位置する。軸方向気体ベアリングは、ポンプロータの各軸方向側部に設けられていて、ステータ部分のそれぞれに設けられたステータ側部品と協働することができるロータ側部品を有するのが良く、その結果、流路に沿ってポンプ輸送された気体は、ロータの各軸方向側の2つの部品相互間を通ることができるようになっている。換言すると、排出された気体は、気体ベアリングを作動させるのに必要な気体の少なくとも一部分を供給するために利用可能である。その結果、ポンプ送りされた気体を用いて軸方向気体ベアリングを駆動することができる。
再生式ポンプ輸送機構体の入口は、ポンプの半径方向内側部分に設けられるのが良く、出口は、ポンプの半径方向外側部分に設けられる。かくして、気体流路は、ポンプ輸送されている気体が機構体の内側部分から機構体の外側部分に流れるように構成されている。加うるに、空気ベアリングが出口の近くに位置するポンプロータ及びステータの半径方向外側部分のところに設けられている場合、高い「出口圧力」の状態にある気体は、ベアリングを駆動するために使用できる。さらに、この構成により、ポンプロータとステータとの間の軸方向回転隙間が40μm未満、30μm未満、20μm未満又は15μm未満のうちのいずれか1つのオーダであるようにすることができる。確かに、隙間は、約8μmであるのが良い。かかる隙間は、代表的には、従来型再生式ポンプ機構体で達成できる隙間よりも極めて小さい。その結果、ロータとステータとの間のポンプ輸送された気体の漏れを最小限に抑えることができ、それにより、ポンプ効率及び/及びスループットの潜在的な向上が達成される。
さらに、ポンプの機構体の表面は、コンポーネントの構成材料よりも硬質の材料で被覆されるのが良い。例えば、ロータ特徴部が設けられたポンプロータ表面の少なくとも一部分、ポンプロータの表面に向いたステータ表面又は軸方向気体とベアリングを有するポンプロータ又はステータの表面をかかる材料で被覆するのが良い。被覆材料は、ニッケルPTFEマトリックス、陽極処理アルミニウム、炭素を主成分とする材料又はこれら組み合わせのうちのいずれか1つであるのが良い。さらに、炭素を主成分とする材料は、ダイヤモンド材料又は化学気相成長(CVD)法によって成膜された合成ダイヤモンド材料のうちの任意の1つであるのが良い。かかる硬質被膜は、ポンプコンポーネントを摩耗から保護するのを助けるために使用できる。また、被膜は、ポンプ輸送された気体流中に同伴されている粒子がポンプロータとステータとの間の隙間空間に入るのを阻止するのに役立ち得る。
ポンプロータの第1及び第2の表面は、互いに平行に配置されるのが良い。また、有利には、第1及び第2の表面は、平坦な表面(即ち、平面状の表面)を有するよう構成されるのが良く、第1の表面の平面は、第2の表面の平面に平行である。さらに、軸方向気体ベアリングコンポーネントの一部分は、第1の表面か第2の表面かのいずれかと同一の平面内に位置するよう配置されるのが良い。その結果、表面は、比較的高い平坦度まで機械加工され、ラップ仕上げされ又は研磨されるのが良い。これは、ロータポンプコンポーネントとステータポンプコンポーネントとの間の僅かな軸方向隙間を維持するのを助けることができる。
本発明の他の好ましい観点及び/又はオプションとしての観点が本明細書において説明されると共に添付の図面に記載されている。
次に、本発明の内容を良好に理解することができるようにするため、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明するがこれは一例に過ぎない。
真空ポンプを概略的に示す図である。 図1に示された真空ポンプのロータの平面図である。 図1に示された真空ポンプのステータの平面図である。 図2に示されたロータのロータ特徴部を詳細に示す図である。 変形例としてのロータ特徴部を詳細に示す図である。
図1を参照すると、再生式ポンプ輸送機構体11を有する真空ポンプ10が示されている。真空ポンプは、排気されるべき装置又はチャンバに連結可能な入口13及び代表的には大気への排気を行なう出口15を有している。図1に示されている真空ポンプは、再生式ポンプ輸送機構体の上流側に配置された分子ドラッグポンプ輸送機構体90を更に有し、これについては以下に詳細に説明する。
再生式ポンプ輸送機構体は、ステータ16に対して回転可能に軸方向シャフト14に取り付けられた全体として円板状のロータ12を有している。シャフトは、モータ18によって駆動され、このシャフトは、10,000rpm〜75,000rpmの速度、好ましくは約40,000rpmの速度で回転することができる。ロータ12は、ロータを回転させると、気体をステータに設けられたチャネル22に沿ってポンプ輸送機構体の入口24と出口26との間の流路を辿ってポンプ輸送する複数個のロータ特徴部20を有している。入口及び出口は、図3に詳細に示されている。以下に詳細に説明するように、ロータ特徴部は、ロータの平面状の軸方向に向いた表面の各々に形成された凹部である。
ロータ12及びステータ16は、ロータとステータとの間の軸方向隙間Xを制御する軸方向気体ベアリング28を有している。受動型磁気ベアリング30がステータ16に対するロータ12の半径方向位置を制御する。
軸方向気体ベアリング28は、ポンプロータに設けられたロータ側部品32と、ステータに設けられたステータ側部品34とから成っている。このベアリングは、低真空又は大気圧状態で、出口26の近くに位置するポンプ輸送機構体の一部として設けられている。気体ベアリングは、これによりチャネルからのポンプ輸送気体の漏れを減少させると共に高効率小型ポンプを製作するのに必要なロータとステータとの間の僅かな軸方向回転隙間の実現が可能なので有益である。本発明の実施形態において達成可能な代表的な軸方向隙間は、30μm未満、それどころか5〜15μmである。
空気ベアリングが僅かな軸方向回転するのを生じさせることができるが、空気ベアリングは、比較的重い荷重を支えるには好適ではない。したがって、図1では、ステータ16は、ロータの軸方向側部40,42にそれぞれ隣接して配置された2つのステータ部分36,38を有し、ロータは、その各軸方向側部に設けられていて、気体をステータ部分26,28のそれぞれに設けられたチャネル22に通して入口24と出口26との間のそれぞれの流路に沿ってポンプ輸送するためのロータ特徴部20を有している。このように、流路は、ロータによって分けられ又は分割され、分割された小流路がロータ12の軸方向中心線に関して鏡像関係をなし、ポンプ輸送された気体は、ロータの両側部に沿って並行して流れるようになっている。ポンプ輸送中に生じた力は、一般に、空気ベアリング28が加えられた荷重に耐えることができる程度まで均衡化される(即ち、ポンプ輸送された気体により及ぼされる正味の荷重はゼロである)。換言すると、ポンプ輸送機構体によってポンプ輸送されると共に圧縮されている気体は、軸方向荷重をポンプ輸送機構体のロータ及びステータに及ぼすであろう。上述の構成により、実質的に0ニュートン(N)に等しい正味の軸方向荷重がロータに加えられる。というのは、ロータの各側に加わる軸方向荷重は、典型的には大きさが等しく且つ互いに逆方向に加えられるので、互いに打ち消し合うからである。
ロータは、ロータの一方の軸方向側部からロータの他方の軸方向側部に気体を通過させることができる図1に破線で示された少なくとも1つの貫通ボア25を有している。貫通ボア25により、気体をロータの各軸方向側部で流路に沿ってポンプ輸送することができる。
ロータの上面40とステータ部分36との間の軸方向隙間及びロータの下面42とステータ部分38との間の軸方向隙間を制御するため、軸方向気体ベアリング28は、ロータの各軸方向側部に設けられたロータ側部品44,46を有している。ロータ側部品44,46は、ステータ部分36,38にそれぞれ設けられたステータ側部品48,50と協働可能であり、その結果、排気領域の気体は、ベアリングコンポーネント相互間の空間内に入ってロータと両方のステータ部分との間の軸方向隙間Xを制御するようになっている。さらに、流路に沿ってポンプ輸送された気体は、ロータの各軸方向側部で2つの部品、即ち、部品44,48と部品46,50との間を流れてベアリングに利用される気体の少なくとも一部分を形成するようになっている。
図1及び図3に詳細に説明されているように、入口24は、ポンプ輸送機構体11の半径方向内側部分のところに設けられ、出口26は、ポンプ輸送機構体の半径方向外側部分のところに設けられている。機構体の半径方向外側部分は、半径方向内側部分よりも比較的高い圧力状態にある。典型的には、ポンプは、大気に又は比較的低い真空に排気する。気体ベアリングは、低真空状態でポンプ輸送機構体の半径方向外側部分のところに設けられている。というのは、この気体ベアリングは、ロータをステータに対して支持するのに十分な量の気体を必要とするからである。先行技術の再生式機構体では、入口は、典型的には、半径方向外側部分のところに設けられ、出口は、半径方向内側部分のところに設けられている。しかしながら、気体ベアリングを用いる場合、ベアリングをロータ及びステータの外側半径方向部分のところに設けることが好ましい。というのは、それにより、高い安定性が得られると共に軸方向隙間Xを正確に制御することができるからである。したがって、この実施形態では、入口の配設場所と出口の配設場所は、気体ベアリングが比較的高い圧力状態の出口の近くの外側半径方向部分のところに位置して作動のために十分な気体を受け入れるだけでなく高い支持作用及び安定性を提供するよう交換可能である。ポンプ輸送機構体の出口を外側半径方向部分のところに設けた場合の追加の利点として、気体の流れ中に同伴された粒子が遠心力によって全体として出口に向かって押され、そしてポンプ輸送機構体から押し出されるということにある。
次に、図2及び図3を参照して気体ベアリングについて詳細に説明する。図2は、ロータ図2の上側軸方向側部40の平面図、図3は、ステータ部分36の平面図である。
図2では、気体ベアリングのロータ側部品32は、ロータの外側半径方向部分のところに配置され、このロータ側部品は、対称の支承力をロータに及ぼすようロータの周囲に沿って均等に分布して配置された複数のベアリング表面52を有する。ベアリング表面は、ロータの上面40と同一高さ位置にあり又はこれと同一平面内に位置している。凹み部分54が回転方向R(この例では、反時計回りの方向)に関してベアリング表面52の前縁のところにそれぞれ設けられている。凹み部分54は各々、ベアリング表面から見て互いに異なる深さだけ凹み、深さがベアリング表面に向かって減少する2つの凹み表面56,58を有している。凹み表面56は、円板12の上面40から見て約1mmの相対的深さのところに位置している。凹み表面58は、上面40から見て約15μmという比較的浅いところに位置している。
図3に示されたステータ側部品48は、ロータベアリング表面52の半径方向距離と同等の半径方向距離にわたって延びる平面状の周方向ベアリング表面60を有している。ベアリング表面60は、ステータ部分36,38の平面状の表面69,71と同一高さ位置にあり又はこれと同一平面内に位置している。
理解されるように、変形構成例では、ベアリング表面52がステータに設けられ、周方向ベアリング表面60がロータに設けられても良い。
使用にあたり、深い凹み表面56は、ステータのベアリング表面60と一緒になって、出口26を通って排出された周囲空気又は気体を取り込む。ロータの回転により、取り込まれた気体は、段付きの表面58とステータ表面60との間に押し込められ、それによりこの気体が中間ポケットの浅い深さ部によって圧縮されているときに圧力が増大する。深いポケットとベアリング表面との間の段部により、圧力の漸次増大が可能であり、したがって、ベアリング表面52とステータ表面60との間における気体の流れが促進される。次に、気体は、ベアリング表面52とステータ表面60との間で押され、それにより気体が圧縮されているときに圧力が増大する。軸方向隙間Xは、ベアリング表面52とステータ表面60との間の距離によって制御され、この場合、比較的高い圧力の気体がロータを支持すると共にステータに対する軸方向運動に抵抗する。即ち、ロータの両方の軸方向側部の支承構造体は、一緒になって、両方の軸方向における運動に抵抗する。代表的には、ベアリング表面52とステータ表面60との間の軸方向隙間は、10〜30μm、好ましくは15μmである。
ベアリング表面52と凹み部分54との間の前縁62は、半径方向(破線で示されている)に対して角度をなしており、したがって、1本又は複数本の流路に沿う粒子は、使用中、遠心力の作用で前縁62によってポンプ出口15に向かって下流に差し向けられるようになる。この例では、角度は、約30°である。ただし、必要に応じて他の角度を採用することができる。同様に、凹み表面56,58相互間の交線又は交差部64も又、半径方向に対して角度をなしており、したがって、流路に沿う粒子は、出口の方へ差し向けられるようになる。交差部64及び前縁62の角度は、好ましくは、表面58又はベアリング表面52上でこれに沿って進む気体が内側半径方向の場所及び外側半径方向の場所のところでほぼ同一距離進んで圧力がこれら表面を横切ってほぼ等しくなるよう同一である。かかる角度相互間には僅かな差がある。というのは、ロータの接線方向速度が表面の内側半径方向場所よりも外側半径方向場所の方が高いからである。
空気ベアリング表面は、セラミックで作られ又はセラミックで被覆されるのが良い。というのは、かかる材料は、気体ベアリングに適した比較的平坦且つ低摩擦性の表面を提供するからである。ロータの作動を開始すると、ロータとステータは、当初接触状態にあり、速度が約1000rpmに達するまでこすれ合う。ロータが十分な速度にいったんなると、気体ベアリングは、ロータをステータから遠ざけて支持する。したがって、好ましくは、気体ベアリングの表面は、非常に滑らかであり又は自滑性である。
ロータとステータの相対的半径方向位置決めは、図1に示されている受動型ベアリング30によって制御される。変形構成例では、ボールベアリングを採用しても良い。しかしながら、磁気ベアリングは、多くの真空ポンプ用途にとって好ましい乾式ベアリングである。さらに、比較的高速で作動されるように構成されたこの種の小型ポンプでは、気体ベアリングと磁気ベアリングの組み合わせにより、回転に対する抵抗が比較的小さい無接触ベアリング構成が提供される。加うるに、気体ベアリングは、軸方向における磁気ベアリング要素の相対運動に抵抗する。磁気ベアリングの故障に備えてバックアップベアリング(図示せず)を設けるのが良い。
次に、図2〜図5を参照してこの実施形態の再生式ポンプ輸送機構体について詳細に説明する。
ロータの平面状の表面40,42は、ステータ部分36,38の平面状表面69,71のすぐ隣りに位置する共にこれらに平行である。ロータ12のロータ特徴部20は、ロータの平面状表面40,42に同心円66をなして又は環状アレイの状態で設けられた一連の異形凹部(又はバケット)によって形成されている。この実施形態では、これら特徴部は、両方の表面40,42に形成されている。ただし、他の構成例では、ロータ凹部は、ロータの一方の軸方向側部にのみ設けられても良い。図2では、凹部20の7つの同心円が示されているが、要件に応じてこれよりも多い又は少ない数の同心円を設けることが可能である。複数本の全体として周方向のチャネル68が第1のステータ部分36の平面状表面69に形成されていて、ロータの一方の面40に形成されている同心円66と整列している。第2の複数本の全体として周方向のチャネル68が第2のステータ部分38の平面状表面71に形成されていて、ロータの他方の面42に形成されている同心円66と整列している。注目されるように、分かりやすくするために図3では3本のチャネル68しか示されていないが、図2に示されたロータに用いられるようになったステータは、7つの同心円66の各々と整列した7本のチャネルを有する。
一方の軸方向側部のロータ及びステータの平面状表面40,69及び他方の軸方向側部の平面状表面42,71は、各々、軸方向回転隙間Xだけ隔てられている。回転隙間が小さいので、凹部及びチャネル68からの気体の漏れが生じにくいようになり、その結果、気体流路70がポンプ輸送機構体の入口24から出口26までロータの各側に形成されるようになる。したがって、ロータを回転させると、異形凹部は、流路に沿って流れる気体渦を生じさせる。
ステータチャネル68は、これらの広がりの大部分にわたって周方向であるが、これらステータチャネルは、気体を或る1本のチャネルから半径方向外側チャネルに差し向けるための全体として真っ直ぐな区分72を有している。かくして、これら真っ直ぐな区分は、これまた気体を或る1本のポンプチャネルから次のポンプチャネルまで移送するよう働く従来型再生式ポンプに見受けられるいわゆる「ストリッパ」と類似している。異形凹部20は、図3に破線で示されているようにロータの平面状表面69を横切る。
公知の再生式ポンプ輸送機構体では、ロータ特徴部は、典型的には、羽根であり、これら羽根は、ロータ表面の平面から出てステータ表面の平面とオーバーラップする。これら羽根は、ロータの同心円と整列したステータのチャネル中に突き出る同心円の状態で配置されている。かかる先行技術のロータの回転時、これら羽根は、気体を流路に沿って圧縮する気体渦を発生させる。ロータの1枚又は複数枚の羽根を支持する部材と流路からの気体の滲出を制御するチャネルとの間には半径方向隙間が存在する。ポンプの作動により、ポンプの部品は、温度が上昇するが、ロータは、典型的には、ステータの温度上昇よりも高く温度が上昇する。温度上昇により、最も顕著には半径方向におけるロータ及びステータの膨張が生じる。ロータがステータの度合いとは異なる度合いまで膨張すると、ロータの1枚又は複数枚の羽根を支持する部材とステータとの間の半径方向隙間は、ロータの1枚又は複数枚の羽根の支持部材がステータに接触しないよう膨張速度差に順応するほど十分大きくなければならない。したがって、必然的に、半径方向隙間は、比較的大きいので流路からの気体の漏れを許容する。
本実施形態では、ロータ及びステータの平面状表面40,69と平面状表面42,71との間の軸方向回転隙間Xは、流路の密封具合(即ち、流路の連続した円又はラップ相互間の密封具合)を制御する。この構成例が図1に明確に示されており、ここでは、3つのラップが示されている。機構体の半径方向外側部分のところの高圧チャネルからこれから見て半径方向内方の低圧チャネルへの気体の漏れが生じにくいようになる。というのは、軸方向隙間は小さく、好ましくは50μm未満、より好ましくは10μm〜30μm、最も好ましくは約15μmだからである。この構成例では、気体ベアリングは、流路からの滲出が許容可能に僅かであるよう十分に小さい軸方向回転隙間を提供することができる。さらに、軸方向におけるロータとステータとのオーバーラップが存在しない。したがって、滲出を増大させないでロータとステータとの間の半径方向における膨張差に容易に順応することができる。というのは、半径方向における膨張は、ロータとステータとの間の軸方向隙間Xに影響を及ぼさないからである。半径方向膨張差により、ステータのチャネルとロータの同心円との間に僅かな位置合わせ不良が生じる場合があるが、かかる位置合わせ不良は、ポンプ輸送にそれほど悪影響を及ぼさない。
表面から軸方向に延びる羽根ではなく、凹部をロータ表面に設けたことによるもう1つの利点として、例えばフライス加工又は鋳造により凹部を容易に作ることができる。さらに、ロータ表面及びステータ表面を比較的高い表面平坦度を備えた平坦な表面及び高い公差レベルに機械加工し、ラップ仕上げし又は研磨することができる。これにより、ロータ及びステータの相対的表面は、互いに衝突することなくポンプ作動中、極めて僅かな距離の範囲内で互いに通ることができる。
次に、図4及び図5を参照してロータに形成された凹部について詳細に説明する。なお、図4及び図5は、それぞれ、凹部の第1の実施例及び第2の実施例を示している。
図4aは、図4bに示されている中心線Cに沿うロータ凹部20の円66の断面図である。図4bは、ロータの円66の平面図である。凹部は、使用の際、これらが流路70に沿う気体渦の流れ方向に運動量を気体に与えるよう形作られている。即ち、凹部は、流路70に沿って気体と相互作用して流路中に気体渦を発生させると共にこれを維持する。渦を発生させると共に維持することに加えて、凹部と気体の相互作用により、気体が圧縮され、それにより渦度が増大し又は気体が流路に沿って高速回転する速度が増大する。
図4に示されているように、凹部20が全体としてロータ12の平面状表面40のうちの一表面に設けられた非対称切れ目によって形成されている。凹部は、回転方向Rに対して先導部分72及び後続部分74を有している。先導部分は、凹部の深さDを傾斜した前縁76から次第に増大させることによって形成されている。この点に関し、前縁76は、平面状表面40に対して約30°(±10°)の角度をなしている。後続部分は、後縁78までの深さDの比較的急な減少によって形成されている。後続部分は、先導部分に対してほぼ直角をなすと共に平面状表面40と約60°(±10°)の角度をなしている。後続部分76は、方向Rに対して約180°方向転換し、渦中の変化する気体の流れ方向にほぼ近い湾曲した表面を形成する。点“a”と点“b”との間の中心線Cに沿う距離と中心線Cに垂直な方向における凹部の幅の比は、約0.7:1である。
使用にあたり、ロータを方向Rに回転させると、気体は、前縁76の点“a”のところで凹部に入る。点“a”のところでは、渦の流れ方向は、全体として、湾曲面74と先導部分の両方(約30°)に平行である。図4bの矢印は、流れ方向「羽根キャビティ中への空気流」を示している。湾曲した後続部分74の角度及び先導部分72の角度は、凹部が渦中の気体の流れ方向と補角をなしたときに凹部に流入する気体の量を増大させる。凹部内の気体は、湾曲した後続部分74回りに差し向けられる。図4bの平面図から理解されるように、気体は、約90°〜約180°方向転換され、その結果、気体が凹部から流出するときに、気体は、全体として直角に又は気体が凹部に流入した方向とは逆に流れるようになる。さらに、気体は、これが後続部分の出口点“b”に近づいたときに迅速に方向転換され、それにより、運動量が気体に与えられ、気体が流路70に沿って圧縮される。先導部分72は、気体が後続部分74に沿って流れているときに深さが次第に増大し、ついには、先導部分が点“d”のところで凹部の最も深い部分に達するようになる。
凹部の第2の実施例が図5に示されている。図5aは、凹部の平面図である。図5bは、ロータ及びステータの中心線Cに沿って取った断面図である。図5cは、中心線Cに垂直な線に沿って取った凹部及びチャネルの断面図である。
図4に示されている凹部とは異なり、図5に示されている凹部は、対称である。凹部20は、全体として、ロータ12の平面状表面40,42のうちの一表面に入れられた対称の切れ目によって形成されている。凹部は、先導部分78及び後続部分80を有している。先導部分は、凹部の深さを傾斜前縁82から次第に増大させることによって形成されている。この点に関し、先導部分は、平面状表面40に対して約30°(±10°)の角度をなしている。後続部分80は、後縁84までの深さの比較的急な減少によって形成されている。先導部分は、湾曲した表面により後続部分に滑らかに移行している。後続部分76は、約180°方向転換し、渦中の変化する気体の流れ方向にほぼ近い湾曲した表面を形成する。前縁82は、中心線Cに対して直角をなしている。
使用にあたり、ロータを方向Rに回転させると、気体は、前縁76のところで凹部に流入する。渦の流れ方向は、30°に近く、全体として中心線Cに平行な角度をなして凹部に入る。図5bの矢印は、流れ方向「気体流入」を示している。湾曲した後続部分の角度は、全体として、入口のところの流れ方向と整列している。凹部内の気体は、湾曲した後続部分80回りに差し向けられる。図5bの平面図から理解されるように、気体は、約180°方向転換し、その結果、気体が凹部から流出しているとき、気体は、気体が凹部に入った方向とは全体として逆の方向に流れ、それにより、運動量が気体に与えられ、気体は、流路70に沿って圧縮される。
図5cは、凹部20及びステータチャネル68により形成された導管内の気体渦の流れ方向を示している。
ロータ表面及び/又はステータ表面のいずれか一方に施された被膜は、摩耗の減少を助けることができる。ポンプの開始段階の際、ロータが回転増速して作業速度に達すると、ロータ及びステータの表面は、互いに接触してこすれ合う恐れが生じる。このこすれは、軸方向空気ベアリングが動作していないときにロータがしきい値レベル以下の速度で回転している間に生じる。このしきい値を超えると、空気ベアリングは、ロータコンポーネントとステータコンポーネントを分離するのに十分な「揚程」をもたらす。硬化されると共に/或いは自滑性の被膜を施すことにより、摩耗の大きさを制御し又は制限することができる。さらに、被膜は、ポンプ輸送された気体流中に同伴されている粒子がロータとステータとの間の隙間に入るのを阻止するのを助けることができる。これは、ロータコンポーネントとステータコンポーネントとの間の比較的僅かな隙間に起因した特定の問題として把握されている。或る特定の直径又はサイズの塵粒子等がこの隙間の中に入り込むことができる場合、塵粒子は、研磨剤として働く場合があり、それによりポンプコンポーネントに過度の摩耗を与える。最も悪い場合では、ポンプが焼き付く場合がある。
多くの適当な被膜が想定されるが、被膜材料は、ニッケルPTFEマトリックス、陽極処理アルミニウム、炭素を主成分とする材料又はこれらの組み合わせのうちのどれか1つであるのが良い。さらに、化学気相成長(CVD)法により成膜されたダイヤモンドライク材料(DLM)又は合成ダイヤモンド材料のうちのいずれか一方であるのが良い。被膜がロータとステータの両方に被着される同種の材料のものである必要はなく、互いに異なる被膜を選択して被膜の各特性を利用しても良い。例えば、ステータコンポーネントは、自滑性被膜で被覆され、ロータは、ダイヤモンドライク材料で被覆される。
図1に示されている実施形態では、再生式ポンプ輸送機構体11は、上流側分子ドラッグポンプ輸送機構体90と直列関係をなしている。分子ドラッグポンプ輸送機構体90は、この実施形態では、ジーグバーン(Siegbahn)ポンプ輸送機構体であり、この機構体は、ステータに対して回転可能に軸方向シャフト14に取り付けられた全体として円板状のロータ92を有している。ステータは、ロータ円板92の各軸方向側部に設けられたステータ部分94,96によって形成されている。各ステータ部分は、ロータ円板に向かって延びると共に複数本の螺旋チャネル100を構成する複数の壁98を有している。気体ベアリング28が再生式ポンプ輸送機構体のロータを支持し、再生式ポンプ輸送機構体とジーグバーンポンプ輸送機構体の両方がシャフト14に取り付けられているので、気体ベアリングは、ジーグバーン機構体のロータに対する軸方向支持体となる。使用にあたり、ジーグバーン機構体中の流路が矢印によって示されており、この流路は、ロータの第1の又は上側軸方向側部上でこれに沿って半径方向外方に且つロータの第2の又は下側軸方向側部に沿って半径方向内方に延びている。
ステータに対するロータの半径方向配設場所は、ベアリング30によって制御され、このベアリングは、受動式磁気ベアリングである。上述したように、ベアリング構造体は両方共、非接触型乾式ベアリングであり、これらベアリングは、乾式ポンプ輸送環境に特に適している。
再生式ポンプ輸送機構体11とジーグバーンポンプ輸送機構体の組み合わせにより、1時間当たり10立方メートルのポンプ送りを行なうことができ、しかも既存のポンプよりも比較的小型である真空ポンプが提供される。
本発明の変形実施形態が特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって想定される。例えば、貫通ボア25は、ロータを貫通して設けられた一連のボアから成っていても良い。気体圧力をロータの各側で均衡化することができる追加の手段を提供するよう別のボアを相対的に外側の半径方向位置に設けても良い。変形例として、ロータの前後に圧力差が存在している場合、ロータの一方の側の気体がロータの別の側に流れることができるようにするためにクロスフィードチャネルをステータに設けても良い。

Claims (11)

  1. 流体をポンプ輸送するポンプであって、ステータに対して回転可能に軸方向シャフトに取り付けられた全体として円板状のポンプロータを含む多段再生式ポンプ輸送機構体を有し、前記ポンプロータは、その各軸方向側面に配置された複数列のロータ凹部を有し、前記ステータは、前記ロータの各側に配置された2つのステータ部分と、前記ロータの各側に設けられた各々のロータ列と対向する複数のステータチャネルとを有し、各ロータ列と、ステータチャネルは、ポンピング段を形成するように協働し、前記ロータ及び前記ステータは、前記ロータの各側に設けられた多ポンピング段を通る、前記多段再生式ポンプ輸送機構体の入口から出口までの径方向へのガス同時流れのための小流路を有する流路を形成し、前記ポンプロータ及び前記ステータは、ポンプ作動中、前記ロータと前記ステータとの間の軸方向隙間を制御するよう構成され、前記ロータの各側に配置された低真空ポンピング段の出口側に配置された軸方向気体ベアリングを有する、ポンプ。
  2. 前記軸方向気体ベアリングは、前記ポンプロータに設けられたロータ側部品と、前記ステータに設けられたステータ側部品とから成る、請求項1記載のポンプ。
  3. 前記小流路は、前記ポンプロータの半径方向中心線に関して互いに鏡像関係をなしている、請求項1又は2記載のポンプ。
  4. 前記軸方向気体ベアリングは、ステータ部分のそれぞれに設けられたステータ側部品と協働可能な前記ポンプロータの各方向側部に設けられたロータ側部品を有し、前記流路に沿ってポンプ輸送された気体が前記ロータの各軸方向側部の2つの前記部分相互間を通ることができるようになっている、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のポンプ。
  5. 前記多段再生式ポンプ輸送機構体の前記入口は、前記ポンプの半径方向内側部分に設けられ、前記出口は、前記ポンプの半径方向外側部分に設けられている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のポンプ。
  6. 前記軸方向気体ベアリングは、前記出口のすぐ近くに位置した前記ポンプロータ及び前記ステータの半径方向外側部分のところに設けられている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のポンプ。
  7. 使用中、前記ポンプロータと前記ステータとの間の軸方向回転隙間は、30μm未満、20μm又は約8μm未満のうちのいずれか1つである、請求項1記載のポンプ。
  8. 前記軸方向気体ベアリングの前記ロータ側部品は、複数のベアリング表面を有し、前記ステータ側部品は、全体として平坦な表面を有する、請求項記載のポンプ。
  9. ロータ凹部が設けられた前記ポンプロータ表面、
    前記ポンプロータ表面に向いたステータ表面、又は
    前記軸方向気体ベアリングを有する前記ポンプロータ又は前記ステータの表面のうちの少なくとも1つは、ポンプロータ又はステータ材料よりも硬質の材料で被覆されている、請求項1記載のポンプ。
  10. 前記材料は、ニッケルPTFEマトリックス、陽極処理アルミニウム、炭素を主成分とする材料又はこれらの組み合わせのうちの任意の1つである、請求項9記載のポンプ。
  11. 前記炭素を主成分とする材料は、ダイヤモンドライク材料又は化学気相成長法により成膜された合成ダイヤモンドのうちの任意の1つである、請求項10記載のポンプ。
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