JP5774374B2 - 砒素鉱物を含む含銅物からの砒素鉱物の分離方法 - Google Patents

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本発明は、砒素を含有鉱物する含銅物から砒素鉱物を分離して高品位の銅精鉱を得る選鉱方法に関する。
銅精錬の分野では、銅を含有する銅鉱石や銅精鉱などの処理対象物(以降、含銅物と称する)から銅を回収する様々な方法が提案されている。例えば、含銅物の一形態である硫化銅鉱石中から銅を回収するには、一般的に以下の各段階を経た処理が行われる。
(1)選鉱工程
選鉱工程では、鉱山で採掘された銅鉱石を粉砕した後、水を加えてスラリーとし、浮遊選鉱(浮選とも称する)を行う。この浮遊選鉱では、スラリーに抑制剤、起泡剤、捕収剤などで構成される浮選剤を添加し、空気を吹き込んで銅を含む鉱物を浮遊させつつ、脈石を沈降させて分離を行う。これにより銅品位30%前後の銅精鉱が得られる。得られた銅精鉱は次工程の乾式製錬工程に送られる。
(2)乾式製錬工程
乾式製錬工程では、上記選鉱工程で得られた銅精鉱を自溶炉などの炉を用いて熔解し、転炉及び精製炉を経て銅品位99%程度の粗銅にまで精製する。粗銅はアノードに鋳造された後、次工程の電解工程に送られる。この乾式製錬において、銅精鉱に含まれる砒素は、スラグやダストや粗銅に分配される。スラグは水砕して埋立て材などに利用され、ダストは炉に繰り返される。また、銅精鉱に含まれる硫黄は、亜硫酸ガスとして分離され、硫酸の原料となる。
(3)電解工程
電解工程では、硫酸酸性溶液(電解液)で満たされた電解槽に上記アノードを装入し、カソードとの間に通電して電解精製を行う。この電解精製によって、アノードの銅は溶解された後、カソード上に純度99.99%の電気銅として析出し、製品となる。この時、アノードに分配されていた砒素は電解液中に溶出する。溶出した砒素は、脱銅電解によって脱銅スライムとして回収される。この脱銅スライムは、中間原料とされたり、炉に繰り返されたりする。
上述の乾式製錬工程において、スラグに分配された砒素は安定した形態で固定される。しかしダストや脱銅スライムに分配された砒素は不安定な形態であり、そのままの状態で系外に払い出して処分することは望ましくない。そこで、これらのダストや脱銅スライムは、炉に繰り返されたり、別途処理されたりする。こうして銅精鉱中の大部分の砒素分は最終的にスラグに分配され、安定した形態で固定化される。
ところで、近年では原料事情が変化し、銅鉱石中の不純物、特に砒素品位は年々増加傾向にあり、得られる銅精鉱中の砒素品位も徐々に高くなってきている。具体的に例示すると、以前の銅精鉱中の砒素品位は0.1〜0.2%程度であったが、近年では砒素品位が1%を超える場合も珍しくない。したがって、銅精鉱の処理量が以前と同じであっても、砒素の含有量が増加しているため、スラグに固定する処理が追いつかない場合も生じてきた。この問題を解決するために、スラグ処理設備を新設したり増強したりすることが考えられるが、多大の投資を必要とし、コストを増加させてしまう。
そこで、銅鉱石から銅精鉱を得る際に砒素を分離除去し、例えば以前と同レベルの砒素品位の銅精鉱にすることが出来れば、このような投資が不要となり、砒素処理の負荷を以前のまま変更することなく操業できると考えられる。
これに関し、特許文献1には、黄鉄鉱に含まれる硫砒鉄鉱を浮遊選鉱を用いて分離する方法が示されている。この方法は、黄鉄鉱に亜硫酸水素ナトリウムなど亜硫酸水素イオンを含む硫酸系の抑制剤を添加し、さらにスラリーのpHを8以下に維持し、かつスラリー温度を30℃以上として浮遊選鉱を行うことで、黄鉄鉱と硫砒鉄鉱とを分離するものである。
しかしながら、この方法を銅鉱石や銅精鉱からの砒素の分離にそのまま適用することは困難である。なぜなら、例えば黄銅鉱や斑銅鉱などを主成分とする銅精鉱では、砒素は四面砒銅鉱((CuFe)12As13)や硫砒銅鉱(CuAsS)などの砒素鉱物として存在する場合が多く、これらの砒素鉱物は、黄銅鉱や斑銅鉱などと似た浮遊特性を持つため、浮遊選鉱によって銅と砒素とを分離することは困難なためである。
また、特許文献2には、砒素を含む銅精鉱を対象として、銅精鉱を90〜120℃で加熱処理した後、銅の抑制剤としてヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム(黄血塩:K[Fe(CN)])を銅精鉱1トン(t)あたり10〜15kg添加することで、砒素鉱物を浮遊させ、沈降する黄銅鉱や斑銅鉱などと分離する方法が示されている。
この方法は加熱により銅精鉱中の銅鉱物表面を酸化し、表面に不活性の酸化皮膜を形成することで銅鉱物と砒素鉱物の表面での表面化学的あるいは結晶化学的な状態に違いを生じさせ、後の浮遊選鉱における浮遊性の差を生じさせるものと考えられている。しかし、この方法を実操業で用いるには、大量の銅精鉱を加熱する設備とエネルギーを必要とし、その分コストが増加するという問題があった。
さらに、特許文献3には、砒素を含む非鉄金属硫化鉱物を対象として、空気、過酸化水素、その他の酸化剤を添加し、ザンセートを捕収剤、ポリアミン及び硫黄化合物の混合物を抑制剤としてpH9〜10で浮選することによって砒素鉱物を抑制する方法が示されている。この方法では、主として硫化ニッケル鉱と砒素鉱物との分離方法が述べられているが、銅鉱物と砒素鉱物との分離性は明らかにされていない。
また、非特許文献1には、銅鉱物を含有するスラリーを過酸化水素で処理した後に、硝酸ナトリウムを加えてpH5に調整し、浮遊選鉱を行う方法が示されている。また同じ文献には、銅鉱物に過酸化水素とEDTAを添加し、その後に水酸化カリウムでpH11に調整して浮遊選鉱を行う方法も提案されている。しかし、これら二つの方法は、劇物を使用するなど取扱い時の安全性やコストの点で問題があった。
以上述べたように、いずれの方法も、浮遊選鉱法を用いて含銅物から高効率に砒素鉱物を分離するのは困難であった。
米国特許第5171428号公報 特開2006−239553号公報 米国特許第7004326号公報
D.Fornasiero, D.Fullston, C.Li and J.Ralston:Mineral Processing, 61(2001), 109−119
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、砒素鉱物を含有する含銅物から効率よく砒素鉱物を分離する選鉱方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明が提供する含銅物からの砒素鉱物の分離方法は、砒素鉱物を含む含銅物に水を添加してスラリーにした後、該スラリーのpHを8〜12に調整して浮遊選鉱することによって含銅物から砒素鉱物を分離する方法であって、銅イオンとのキレートを生成するキレート剤を用いて含銅物を処理する工程と、該キレート剤で処理された含銅物に酸化剤(過酸化水素を除く)を添加して砒素鉱物を酸化処理する工程とを該浮遊選鉱の前処理として行うことを特徴としている。
上記本発明の砒素鉱物の分離方法においては、キレート剤にトリエチレンテトラミン及び/又はエチレンジアミン四酢酸を用いることが好ましい。また、酸化剤には空気及び/又は酸素を使用することが好ましい。
本発明によれば、特別な設備や危険な薬品を使用することなく、砒素や黄鉄鉱を多く含む含銅物から高品位の銅精鉱を得ることができる。このようにして得られた高品位の銅精鉱を用いて銅を製錬することにより、製錬工程中の砒素による環境への影響を抑制できる。また、砒素副産物の処理負荷の増加に伴う投資と操業費を抑制できる。
本発明の実施例において使用した砒素鉱物の分離方法を示す概略フロー図である。
以下、本発明による含銅物からの砒素鉱物の分離方法の一具体例を、含銅物が銅鉱石の場合を例にとって説明する。なお、本発明で処理する砒素鉱物や黄鉄鉱を多く含む含銅物中の金属品位や鉱物の種類は、特に限定するものではない。浮遊選鉱を行うには、砒素鉱物や黄鉄鉱が単体粒子で存在していなければ効果的でないため、粉砕等の前処理を行って、砒素鉱物の多くが単体分離されていることが望ましい。
また、本発明が対象とする含銅物は銅鉱石に限定されるものでなく、銅精鉱であってもよい。この場合は、従来から行われている一般的な浮遊選鉱法を用いて先ず不純物を多く含む低品位の銅精鉱を回収し、次に本発明の分離方法に従って砒素鉱物や黄鉄鉱を分離して高品位の銅精鉱を回収することになる。すなわち、低品位の銅精鉱から高品位の銅精鉱を回収する場合にも本発明を適用することができる。この場合、中間原料となる不純物を高濃度に含む銅精鉱の銅品位には特に限定がない。
本発明の一具体例の砒素鉱物の分離方法では、先ず高品位に砒素を含有する銅鉱石に対して必要に応じて水を添加した上で粉砕し、粉砕された銅鉱石に所定量の水を加えてスラリー化する。次に得られたスラリーに水酸化カルシウムなどのアルカリを添加し、スラリーのpHを8〜12、より好ましくは8.5〜11.5の範囲に調整する。そして、このpH調整されたスラリーを浮遊選鉱に供し、浮上した鉱石(浮鉱)として高品位の銅精鉱を得る。
浮遊選鉱(浮選)時はスラリーのpHが8未満であると、砒素鉱物の浮上を十分に抑制することができなくなり、砒素と銅との分離の割合を示す下記式1で定義される分離度が低下する。一方、スラリーのpHが12を超えると、水酸化カルシウムなどのアルカリの消費量が急激に増大する上、銅鉱物の浮上が抑制されて下記式1の分離度が低下する。
[式1]
Figure 0005774374
この式1に示す分離度は、浮鉱側に含有される銅の分配率が高くて砒素の分配率が低くなるほど高い値となる。すなわち、この分離度の値が高ければ本発明の目的に合った好ましい結果が得られており、分離度の値が低ければ好ましくない結果が生じていることになる。
ところで、発明者らは上記浮選の際、本来浮上しないはずの砒素鉱物までもが浮遊することがあり、その原因としてスラリーの水相及びけん濁している砒素鉱物の表面に存在する可溶性の銅(以降、可溶性銅とも称する)が砒素鉱物と捕収剤との結合を促し、これによって砒素鉱物が浮遊することを見出した。この可溶性銅は、含銅物が酸化して生じたと考えられる。
そこで本発明者らは、上記浮選に供されるスラリーにキレート剤を添加して可溶性銅を錯化し、砒素鉱物の表面から可溶性銅を除去することによって砒素鉱物の浮遊性を低下させ、よって砒素鉱物と銅精鉱との浮選分離を確実に行うことを可能にした。
添加するキレート剤には、銅との錯生成定数が高いものが好ましい。具体的には、TETA(トリエチレンテトラミン)やEDTA(エチレンジアミン四酢酸)等を挙げることができる。これらキレート剤の種類や添加量は、予備試験などを行って、対象物に含まれる可溶性銅に対して必要十分な量を予め求めておき、その基準に従って適宜決定すれば良い。
キレート剤を添加するタイミングは、浮選の際に添加する捕収剤の添加と同時かそれ以前であれば特に限定はないが、粉砕工程よりも前の段階か又は粉砕工程中に添加するのが好ましい。なぜなら、粉砕に伴って空気が巻き込まれるので、その酸化作用により発生した可溶性銅を迅速かつ効果的に除去できるからである。なお、この粉砕工程において、後述する酸化工程に先立って砒素鉱物に対してある程度の酸化処理を施すことが可能である。
キレート剤及び水の存在下で含銅物を粉砕する場合は、粉砕後に生じるスラリーの水相部分にキレート剤によって錯体となった可溶性銅が溶存している。このため、粉砕後は当該スラリーをろ過又は沈降濃縮等によって固液分離するのが好ましい。これにより、可溶性銅を含む水相部分を固形分から分離することができる。得られた固形分は、再度水を添加してリパルプ(スラリー化)した後、次の酸化工程に送る。
なお、上記固液分離によって除去された水相にはキレート剤が含まれるため、適宜処理を施してキレート剤の回収を行うのが好ましい。例えば、水相に水硫化ナトリウム等の硫化剤を添加することにより、当該水相内に蓄積している銅やその他の金属成分を硫化物の形態で沈殿させて分離することができる。これにより、キレート剤の錯化能力を回復し、再び粉砕工程に繰り返して使用できる。
酸化工程では、可溶性銅の除去された含銅物を含むスラリーに酸化剤を加えて適度な酸化条件下にする。これにより、砒素鉱物だけを選択的に酸化処理することが可能となり、砒素鉱物の疎水性を低下させて砒素鉱物と含銅物との分離性を改善することができる。使用する酸化剤には、空気、酸素、次亜塩素酸ナトリウム、オゾン等一般的な酸化剤から適宜選定することができる。この中では、純酸素をボンベからスラリー中に吹き込む方法が最も容易かつ効果的である。
酸化剤の添加量は、対象となる鉱石や鉱物によって変化するため、予備試験を行なって定めれば良い。あるいはスラリーの酸化還元電位を測定し、得られた電位値と予備試験で得た結果を比較するなどして管理する方法も効果がある。例えば酸化剤に純酸素を用いる場合は、スラリーに5〜60分程度吹込むのが好ましい。この時間が60分を超えて長時間になると、含銅物が再び酸化して浮上し難くなる。一方、5分未満では酸化の効果がほとんど得られない。
上記したキレート剤の添加による可溶性銅の除去処理や酸化剤の添加による酸化処理における処理条件は、処理される含銅物の酸化状態によって適宜調整するのが好ましい。具体的には、原料としての含銅物がほとんど酸化されていない場合には、キレート剤の添加量を減らすか若しくは全く添加しないのが好ましい。一方、原料としての含銅物が既に適度な酸化を受けている場合は、酸化剤の添加量を減らすか若しくは全く添加しないのが好ましい。
このように、処理される含銅物の酸化状態に応じて、銅イオンとのキレートを生成するキレート剤を用いて含銅物を処理する工程を行うか、若しくは酸化剤を用いて砒素鉱物を酸化処理する工程を行うか、又はこれらの工程を両方とも行うか適宜選択するのが好ましい。なお、含銅物の酸化状態は、前述したように、スラリー化したときの酸化還元電位を測定する等の予備試験を行うことにより判断することができる。
キレート剤を用いて含銅物を処理する工程及び/又は酸化剤を用いて砒素鉱物を酸化処理する工程で処理されたスラリーは、次に浮遊選鉱工程に送られる。ここでスラリーに起泡剤及び捕収剤を添加すると共に空気を吹き込むことにより、水に対する親和性の違いを利用して含銅物を浮鉱と沈鉱とに分離することができる。すなわち、含銅物中に含まれる脈石及び砒素鉱物を沈鉱とし、含銅物中に含まれる低砒素品位の銅精鉱を浮鉱として分離することができる。
このように、本発明では選鉱工程において砒素濃縮物と低砒素品位の銅精鉱とを得ることができるので、含銅物の砒素含有量が増加しても、乾式製錬工程において、スラグ処理や脱銅電解など砒素を除去し回収する設備を増強するといった多大な投資を必要とせずに、以前と同様に処理して製品電気銅を得ることができる。また、砒素濃縮物は、別途処理することで、砒素を回収して金属砒素や砒素化合物などの原料として用いることができる上、砒素濃縮物に分配した銅を回収することもできる。
なお、上記した砒素鉱物の分離方法では最初に含銅物の粉砕を行ったが、含銅物が細かな銅精鉱で構成される場合は、かかる粉砕処理をバイパスしてもよい。また、キレート剤は含銅物の粉砕後に添加してもよいが、前述したように粉砕前に水と共にキレート剤を添加したほうが、粉砕に伴う含銅物の酸化を抑制できるので好ましい。含銅物にキレート剤を添加するときは、含銅物に水を加えてスラリーにした後に添加してもよいし、含銅物にキレート剤を添加した後に水を加えてスラリーにしてもよい。
以下に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例では、化学分析値はICP発光分析法を用いて求め、鉱物割合は顕微鏡観察によって求めた。また、含銅物には下記の表1に示す化学分析値及び鉱物割合を有する各銅精鉱を使用した。
Figure 0005774374
[実施例1]
含銅物として上記表1の内のオーストラリア産銅精鉱Aを用い、これを図1に示すフローに沿って処理して低砒素品位銅精鉱と砒素濃縮物とを得た。具体的には、上記表1のオーストラリア産銅精鉱A100gに水100mlを混合し、さらにTETA(トリエチレンテトラミン)を銅精鉱1tに対して100kg添加し、ボールミルで80%通過粒径が25μmになるように粉砕した(粉砕工程1及び可溶性銅除去工程2)。
粉砕物を取り出してろ紙及びヌッチェを用いて固液分離し、溶出した銅(可溶性銅)及びTETAを含む水溶液を固形分から分離した(キレート剤回収工程3)。得られた固形分に水を加えてリパルプし、全体の体積が400mlのスラリーとした(スラリー化工程4)。このスラリーを、セル容量0.5Lのアジテア型浮遊選鉱試験機に装入し、攪拌を開始した。
撹拌しながら、純酸素を2リットル/min吹き込み、これを10min続けた(酸化工程5)。次に、スラリーに水酸化カルシウムを添加してpHを11.0に調整した後、捕収剤として、米国Cytec Industries Inc.社製の商品名AP208を銅精鉱1tあたり75gの添加量に相当する0.0075g添加した。
さらに、起泡剤として、MIBC(メチルイソブチルカービノール)を銅精鉱1tあたり90gの添加量に相当する0.0090g添加した。これらの添加量は、予備実験によって最良の結果が得られる量から求めた。これらの捕収剤と起泡剤とを添加した後、2分間攪拌しながらpHを測定し、pHが低下している場合には消石灰を添加してpHを11.0に調整した。
その後、攪拌を継続し、空気をおおよそ2リットル/minの流量で吹き込みながら4分間浮選し、浮鉱(低砒素銅精鉱)と沈鉱(砒素濃縮物)とに分離した(浮遊選鉱工程6)。この実施例においては、簡略化のため精選工程を省略し、1回の浮選で工程を終了した。このようにして、試料1の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。
次に、酸化工程5における純酸素の吹き込み時間を、それぞれ20、30、及び45min続けた以外は上記試料1の場合と同様にして試料2〜4の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。
更に、酸化工程5を実施しない以外は上記試料1の場合と同様にして試料5の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。また、キレート剤を添加しないこと、すなわち可溶性銅除去工程2を実施しない以外は上記試料2の場合と同様にして試料6の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。そして比較のため、酸化工程5及び可溶性銅除去工程2を共に実施しないことに加えて浮選時のpHを11.0に代えて7.0にした以外は上記試料1の場合と同様にして試料7の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。
このようにして得た試料1〜7について、低砒素銅精鉱の歩留及び品位、低砒素銅精鉱及び砒素濃縮物の実収率、並びに分離度を主な処理条件と共に表2に示す。なお、実収率は、砒素濃縮物及び低砒素銅精鉱にそれぞれ含まれる銅及び砒素の量を、処理前の含銅物に含まれるそれぞれの量で除して得た値であり、歩留は低砒素銅精鉱の重量を処理前の銅精鉱の重量で除すことによって得た値である。また、分離度は前述した式1から得た値である。
Figure 0005774374
上記表2から分かるように、比較例の試料7は銅の実収率と分離度がそれぞれ63.0%と0.7であった。これに対して、試料1は銅の実収率が71.5%、分離度が6.1と共に高い値となった。また、純酸素吹き込み時間をそれぞれ20、30、及び45minに延長した試料2〜4は、銅の実収率が徐々に低下した。これは、本来浮遊性を有する銅鉱物の一部が酸化されて親水化したことに因るものと考えられる。
また、酸化工程5を省略した試料5は、砒素鉱物の浮遊性がやや高くなり、分離度は4.0となった。一方、キレート剤の添加による可溶性銅の除去を行わなかった試料6は、砒素鉱物の浮遊性が増して分離度が2.4となった。これらはいずれも試料7の0.7を大きく上回っているものの、オーストラリア産銅精鉱Aの場合は、可溶性銅除去工程2と酸化工程5の両方を適用することにより効果的に砒素鉱物の浮遊を抑制できることが分かる。
[実施例2]
含銅物として上記表1のオーストラリア産銅精鉱Aに代えてペルー産銅精鉱Bを使用した以外は上記実施例1の試料1及び2の場合と同様にして、それぞれ試料8及び9の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。また、酸化工程5における純酸素の吹き込み時間を60min続けた以外は上記試料8の場合と同様にして試料10の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。
更に、酸化工程5を実施しない以外は上記試料8の場合と同様にして試料11の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。そして比較のため、酸化工程5及び可溶性銅除去工程2を共に実施しないことに加えて浮選時のpHを11.0に代えて7.0にした以外は上記試料8の場合と同様にして試料12の砒素濃縮物と低砒素銅精鉱とを作製した。
このようにして得た試料8〜12について、低砒素銅精鉱の歩留及び品位、低砒素銅精鉱及び砒素濃縮物の実収率、並びに分離度を主な処理条件と共に表3に示す。なお、実収率、歩留及び分離度は実施例1と同様にして得た値である。
Figure 0005774374
上記表3から分かるように、比較例の試料12は銅の実収率と分離度がそれぞれ84.5%と2.1であったのに対して、試料8は銅の実収率が81.9%と僅かに低下し、分離度は4.3に上昇した。酸素吹き込み時間をそれぞれ20minと60minに延長した試料9及び10は、分離度がそれぞれ4.7及び6.7に上昇したが、銅の実収率はそれぞれ72.8%と72.1%に低下した。この結果から、ペルー産銅精鉱Bの場合は、目的に応じて可溶性銅除去工程2及び酸化工程5の内のいずれかを適用したり、これら両方の工程を適用したりすることによって効果的に砒素鉱物の浮遊を抑制できることが分かる。
1 粉砕工程
2 可溶性銅除去工程
3 キレート剤回収工程
4 スラリー化工程
5 酸化工程
6 浮遊選鉱工程

Claims (5)

  1. 砒素鉱物を含む含銅物に水を添加してスラリーにした後、該スラリーのpHを8〜12に調整して浮遊選鉱することによって含銅物から砒素鉱物を分離する方法であって、銅イオンとのキレートを生成するキレート剤を用いて含銅物を処理する工程と、該キレート剤で処理された含銅物に酸化剤(過酸化水素を除く)を添加して砒素鉱物を酸化処理する工程とを該浮遊選鉱の前処理として行うことを特徴とする含銅物からの砒素鉱物の分離方法。
  2. 前記キレート剤がトリエチレンテトラミン及び/又はエチレンジアミン四酢酸であることを特徴とする、請求項1に記載の含銅物からの砒素の分離方法。
  3. 前記酸化剤が空気及び/又は酸素であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の含銅物からの砒素の分離方法。
  4. 前記含銅物を処理する工程は、銅鉱石からなる含銅物を前記キレート剤及び水の存在下で粉砕する工程を有し、該キレート剤は該粉砕の前又は粉砕の最中に該含銅物に添加されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の砒素の分離方法。
  5. 前記含銅物を処理する工程は、前記粉砕により得たスラリーを固液分離して水分を除去する工程と、該水分の除去により得た固形分に再度水を添加してスラリー化する工程とを更に有することを特徴とする、請求項4に記載の砒素の分離方法。
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