JP2017202481A - 選鉱方法 - Google Patents

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一 三木
秀和 松岡
Hidekazu Matsuoka
秀和 松岡
パンディ ウイスヌ スーヤンタラ グディ
Pandhe Wisnu Suyantara Gde
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Abstract

【課題】銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる選鉱方法を提供する。
【解決手段】少なくとも銅鉱物とモリブデン鉱物とを含む鉱物粉末の選鉱方法であって、鉱物粉末を含む鉱物スラリーを撹拌して鉱物粉末を分散させる分散工程と、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加して所定時間保持する酸化工程と、鉱物スラリーを用いて浮遊選鉱を行う浮遊選鉱工程とを備える。鉱物スラリーを撹拌して鉱物粉末を分散させることで、鉱物粒子の表面が酸化剤と接触しやすくなり、酸化処理の効率がよくなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、選鉱方法に関する。さらに詳しくは、銅鉱物とモリブデン鉱物とを分離するための選鉱方法に関する。
銅精錬の分野では、銅を含有する銅鉱石や銅精鉱などの原料から銅を回収する様々な方法が提案されている。例えば、銅鉱石から銅を回収するには以下の処理が行われる。
(1)選鉱工程
選鉱工程では、鉱山で採掘された銅鉱石を粉砕した後、水を加えてスラリーとし、浮遊選鉱を行う。浮遊選鉱では、スラリーに抑制剤、起泡剤、捕収剤などで構成される浮選剤を添加し、空気を吹き込んで銅鉱物を浮遊させつつ、脈石を沈降させて分離を行う。これにより銅品位30%前後の銅精鉱が得られる。
(2)乾式製錬工程
乾式製錬工程では、選鉱工程で得られた銅精鉱を自溶炉などの炉を用いて熔解し、転炉および精製炉を経て銅品位99%程度の粗銅にまで精製する。粗銅は次工程の電解工程で用いられるアノードに鋳造される。
(3)電解工程
電解工程では、硫酸酸性溶液(電解液)で満たされた電解槽に前記アノードを挿入し、カソードとの間に通電して電解精製を行う。電解精製によって、アノードの銅は溶解し、カソード上に純度99.99%の電気銅として析出する。
ところで、銅は黄銅鉱や斑銅鉱などの硫化鉱物として硫化銅鉱石中に存在するものが多い。ポーフィリー型と呼ばれる銅鉱床をもつ鉱山では、鉱石中の黄銅鉱や斑銅鉱に輝水鉛鉱や硫砒銅鉱が随伴されている。
輝水鉛鉱に含まれるモリブデンは特殊鋼の合金成分、石油精製の触媒、潤滑剤などに用いられる有価な元素である。また、輝水鉛鉱が炉で熔解されると、揮発したモリブデンが設備に付着し腐食を促進する。そのため、選鉱工程において銅鉱物とモリブデン鉱物とを分離することが求められる。
銅鉱物とモリブデン鉱物との分離は、工業的な取り扱い性、コスト、分離性が優れていることから、浮遊選鉱により行われることが多い。この浮遊選鉱は、抑制剤として硫化水素ナトリウム(NaHS)などの硫化剤を添加することで銅鉱物が浮上することを抑制し、モリブデン鉱物を浮上させてこれらを分離する。しかし、硫化水素ナトリウムを用いた浮遊選鉱は、選鉱条件を設定することが難しい。また、鉱物スラリーが酸性を呈する場合には、硫化水素ナトリウムを添加したスラリーから有害ガスである硫化水素が発生する。
また、銅鉱物およびモリブデン鉱物はともに強い浮遊性を有するため、これらを浮遊選鉱で分離するのは非常に困難である。そこで、これらの鉱物に処理を施した後に浮遊選鉱を行うことで、分離を容易にすることが試みられてきた。
特許文献1には、鉱物の表面をオゾン酸化させた後に浮遊選鉱を行う方法が開示されている。より詳細には、銅粗選および銅精選によって得られた銅精鉱に対してモリブデン浮選を行う。得られた浮鉱の輝水鉛鉱含有量が約1重量%になった時点で浮鉱をオゾン酸化する。この浮鉱を再度浮遊選鉱に付してモリブデン鉱物を浮鉱として回収する。
特許文献2には、鉱物の表面にプラズマ処理を施した後に浮遊選鉱を行う方法が開示されている。より詳細には、銅を含む鉱物とモリブデンを含む鉱物の混合物に、酸素を酸化剤とする雰囲気下でプラズマ照射を行う。プラズマ処理後の混合物をアルカリ金属塩の水溶液で洗浄する。洗浄後の混合物を浮遊選鉱に付して銅を含む鉱物とモリブデンを含む鉱物とを分離する。
特許文献3には、精鉱を、反応によりパルプ(スラリー)中に有害イオンを生じない酸化剤、例えば過酸化水素、オゾン、その他の試薬により表面処理し、これを精選することにより、目的成分を優先分離することが開示されている。
特開平5−195106号公報 特開2014−188428号公報 特公昭45−016322号公報
しかし、特許文献1の方法では、オゾンによって鉱物中の硫黄まで酸化され、硫化水素が発生してしまう恐れがある。また、鉱物スラリーが酸性を呈することから、一部の銅が溶解し、銅が排水とともに排出される恐れがある。
特許文献2の方法にはプラズマ処理が必要であるが、大型のプラズマ照射装置は知られていない。そのため、工業的な規模での実施は困難である。
特許文献3には、表面に捕収剤を吸着した方鉛鉱(鉛鉱物)に対する酸化剤の作用について記載されているのみであり、銅鉱物やモリブデン鉱物の酸化については何ら記載されていない。
本発明は上記事情に鑑み、銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる選鉱方法を提供することを目的とする。
第1発明の選鉱方法は、少なくとも銅鉱物とモリブデン鉱物とを含む鉱物粉末の選鉱方法であって、前記鉱物粉末を含む鉱物スラリーを撹拌して、前記鉱物粉末を分散させる分散工程と、前記分散工程の後、前記鉱物スラリーに過酸化水素水を添加して所定時間保持する酸化工程と、前記酸化工程の後、前記鉱物スラリーを用いて浮遊選鉱を行う浮遊選鉱工程と、を備えることを特徴とする。
第2発明の選鉱方法は、第1発明において、前記分散工程の後、前記酸化工程の前に、前記鉱物スラリーを希釈する希釈工程を備えることを特徴とする。
第3発明の選鉱方法は、第1または第2発明において、前記酸化工程における保持時間を270分以上とすることを特徴とする。
第4発明の選鉱方法は、第1、第2または第3発明において、前記酸化工程において、前記鉱物スラリーに硫酸鉄を添加することを特徴とする。
第5発明の選鉱方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記浮遊選鉱工程の前に、前記鉱物スラリーのpHを9〜10に調整することを特徴とする。
第6発明の選鉱方法は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記銅鉱物は黄銅鉱と斑銅鉱と輝銅鉱とを含む混合硫化銅鉱物であり、前記モリブデン鉱物は輝水鉛鉱であることを特徴とする。
本発明によれば、鉱物スラリーを撹拌して鉱物粉末を分散させることで、鉱物粒子の表面が酸化剤と接触しやすくなり、酸化処理の効率がよくなる。過酸化水素水により銅鉱物の表面を酸化することで、銅鉱物とモリブデン鉱物の親水性に差異を与えることができる。そのため、モリブデン鉱物を選択的に浮遊させることができ、銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる。
本発明の一実施形態に係る選鉱方法の工程図である。 浮選時間に対する銅回収率の変化を示すグラフである。 浮選時間に対するモリブデン回収率の変化を示すグラフである。 他の条件における浮選時間に対する銅回収率の変化を示すグラフである。 他の条件における浮選時間に対するモリブデン回収率の変化を示すグラフである。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る選鉱方法は、(1)前処理工程と、(2)バルク浮選工程と、(3)分散工程と、(4)希釈工程と、(5)酸化工程と、(6)浮遊選鉱工程とを備えている。
原料である鉱石には、少なくとも、銅を含有する鉱物(以下、「銅鉱物」と称する。)と、モリブデンを含有する鉱物(以下、「モリブデン鉱物」と称する。)とが含まれていればよい。銅鉱物としては黄銅鉱(chalcopyrite:CuFeS2)、斑銅鉱(bornite:Cu5FeS4)、硫砒銅鉱(enargite:Cu3AsS4)、輝銅鉱(chalcocite:Cu2S)、砒四面銅鉱(tennantite:(Cu,Fe,Zn)12(Sb,As)4S13)などが挙げられる。モリブデン鉱物としては輝水鉛鉱(molybdenite:MoS2)などが挙げられる。
本実施形態の選鉱方法は銅鉱物とモリブデン鉱物の分離に好適に用いられる。ポーフィリー型と呼ばれる銅鉱床をもつ鉱山では、鉱石中の黄銅鉱や斑銅鉱に輝水鉛鉱や硫砒銅鉱などが随伴されている。そのため、本実施形態の選鉱方法はポーフィリー型の銅鉱床から採掘された鉱石に対して好適に用いられる。
(1)前処理工程
前処理工程では、鉱石の粉砕、鉱物スラリーの製造、脈石の除去などが行われる。
鉱石を粉砕して鉱物粉末を得る。鉱物粉末の粒度は、鉱石に含まれる鉱物の大きさに合わせて、単独鉱物が得られるように調整される。例えば、黄銅鉱の場合篩下100μm程度、輝水鉛鉱の場合篩下30μm程度に調整することが一般的である。種々の鉱物を含む鉱石を原料とする実操業では、篩下100μm程度に粉砕した後で、浮選成績などを勘案して鉱石の粒度を最適な条件に合わせることが一般的である。
なお、粉砕後、鉱物粉末を長時間保管すると、付着物などにより鉱物の表面状態が変化する場合がある。この場合、鉱物粉末を次工程に装入する前に、鉱物表面の付着物を除去することが好ましい。付着物の除去方法は特に限定されないが、例えば、硝酸洗浄や、摩擦粉砕(アトリッション)などが挙げられる。
鉱物粉末(粉砕された鉱石)に水を加えて鉱物スラリーを製造する。スラリーとすることで、浮遊選鉱が可能となるだけでなく、後工程の分散処理および酸化処理を容易に行うことができる。
鉱物スラリーの液相にカルシウムイオンやマグネシウムイオンが含まれていると浮遊選鉱に悪影響を与えることが知られている。そこで、鉱物粉末に添加する水は不純物イオンを含まない純水であることが好ましい。工業的にはイオン交換水を用いてもよい。
必要に応じて鉱石に含まれる脈石を除去することが好ましい。脈石の除去には浮遊選鉱をはじめとする種々の選鉱方法を採用できる。
(2)バルク浮選工程
バルク浮選工程では、鉱物スラリーに含まれる硫化鉱物とその他の脈石とを浮遊選鉱により分離する。バルク浮選では、鉱物スラリーに起泡剤、捕収剤などで構成される浮選剤を添加し、空気を吹き込んで種々の硫化鉱物をまとめて浮遊させつつ、脈石を沈降させて分離を行う。起泡剤としてはパイン油、MIBC(メチルイソブチルカルビノール)などが挙げられる。捕収剤としてはディーゼル油、ケロシン油、メルカプタン系捕収剤、チオノカーバメート系捕収剤などが挙げられる。
バルク浮選により得られた硫化鉱物をバルク精鉱と称する。ポーフィリー型の銅鉱床から採掘された鉱石を原料とした場合、バルク精鉱の鉱物割合、銅およびモリブデンの品位は表1に示す通りである。ここで、鉱物割合はMLA分析、銅およびモリブデンの品位は化学分析により得られた結果である。なお、MLA(Mineral Liberation Analyser)とは、エネルギー分散型X線分析器を有する走査電子顕微鏡をベースとした鉱物分析装置である。
表1から分かるように、モリブデン精鉱には、少なくとも銅鉱物とモリブデン鉱物とが含まれている。銅鉱物は黄銅鉱を主成分とし、斑銅鉱と輝銅鉱とを含む混合硫化銅鉱物である。モリブデン鉱物は輝水鉛鉱である。
(3)分散工程
分散工程では鉱物スラリー(バルク精鉱を含むスラリー)を撹拌して、凝集した鉱物粉末を分散させる分散処理を行う。鉱物粉末を分散させることで、後工程の酸化処理を効率よく行うことができる。より詳細には、鉱物粉末を分散させることで、鉱物粒子の表面が酸化剤と接触しやすくなる。また、鉱物スラリーを撹拌することで、鉱物粒子の表面の付着物が除去され、鉱物粒子の表面が酸化剤と接触しやすくなる。その結果、後工程の酸化処理を効率よく行うことができる。
(4)希釈工程
希釈工程では、鉱物スラリーに水を添加して希釈する。鉱物スラリーに添加する水は不純物イオンを含まない純水であることが好ましい。工業的にはイオン交換水を用いてもよい。
分散工程の後に希釈工程を設けることで、分散工程における鉱物スラリーの固形分比率を高くできる。そうすると、鉱物スラリーの液量が少ないことから、撹拌効率を向上させることができ、鉱物粉末を十分に撹拌できる。また、希釈した鉱物スラリーを酸化工程に装入することで、鉱物スラリー中の鉱物粒子間の距離が大きくなることから、酸化剤と鉱物粒子とが十分に接触する。希釈した鉱物スラリーを浮遊選鉱工程に装入することで、沈降すべきモリブデン鉱物の粒子が浮上する泡や銅鉱物の粒子に巻き込まれて浮上することが抑制される。
なお、希釈工程は省略してもよい。この場合、鉱物スラリーを製造する段階で適した固形分比率のスラリーを製造すればよい。
また、鉱物スラリーの液相が浮遊選鉱に適したpHとなるように、pH調整を行うことが好ましい。ここで、鉱物スラリーのpHを9〜10に調整することが好ましい。
pH調整剤は特に限定されないが、アルカリとして水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)などを用いることができ、酸として塩酸(HCl)などを用いることができる。pH調整剤を水溶液の形態で用いる場合には、その濃度は特に限定されず、鉱物スラリーを目的のpHに調整することが困難とならない濃度であればよい。
鉱物スラリーのpH調整は、浮遊選鉱工程の前に行えばよい。すなわち、pH調整を分散工程の後に行ってもよいし、希釈工程の後に行ってもよいし、酸化工程の後に行ってもよい。
(5)酸化工程
酸化工程では鉱物スラリーに酸化剤を添加して所定時間保持することで鉱物粒子の表面を酸化する酸化処理を行う。酸化剤として過酸化水素水(H2O2)を用いる。
過酸化水素水により銅鉱物の鉱物粒子の表面が酸化される。一方、モリブデン鉱物の鉱物粒子の表面はほとんど酸化されない。そのため、銅鉱物とモリブデン鉱物の親水性に差異を与えることができる。そのため、次工程の浮遊選鉱工程において、モリブデン鉱物を選択的に浮遊させることができ、銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる。
過酸化水素水は酸化剤および還元剤として働くことが知られている。本実施形態の処理では、pHが低下する傾向が認められることから還元反応が起こっていると考えられる。鉱物スラリーのpHを9〜10に維持するためにpH調整剤(水酸化ナトリウム)が添加される。
過酸化水素水による還元反応ではO2バブルが生成され、金属(鉄、銅等)の存在下では、フェントン反応によりラジカルが生成されることが知られている。生成されたラジカルは強力な酸化剤として鉱物粒子の表面を酸化する。そのため、銅鉱物の表面は強く酸化され、親水化し、浮遊性が低下する。
一方、モリブデン鉱物の表面は酸化されにくい。酸化されたとしても酸化モリブデン(MoO3)はpH9〜10付近では溶けやすいため、モリブデン鉱物の表面の性質は変わらない。そのため、モリブデン鉱物は高い浮遊性を維持する。その結果、銅鉱物とモリブデン鉱物とで浮遊性に大きな差が発生し、浮遊選鉱における回収率の差が大きくなる。
なお、鉱物スラリーの液相の過酸化水素濃度を1重量%以上とすることが好ましい。そうすれば、銅鉱物とモリブデン鉱物との浮選回収率の差が大きくなり、浮遊選鉱により銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる。
酸化工程における保持時間は特に限定されないが例えば10分程度でよい。また、保持時間を270分(4.5時間)以上とすることが好ましい。そうすれば、銅鉱物とモリブデン鉱物との浮選回収率の差が大きくなり、浮遊選鉱により銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる。
単に酸化剤で鉱物粒子を酸化した場合には、鉱物に対する酸化の程度が過剰になりやすい。そのため、鉱物スラリーに硫化水素ナトリウムを添加している場合は、有害ガスである硫化水素が発生する。しかし、本実施形態のように、酸化処理の前に分散処理をすることで、酸化剤の添加量が必要十分な量となり、過剰な酸化が避けられる。その結果、硫化水素の発生を抑制できる。
また、鉱物スラリーに硫酸鉄を添加することが好ましい。銅鉱物とモリブデン鉱物とについて、硫酸鉄により処理する前後の接触角を測定したところ、銅鉱物は硫酸鉄で処理すると濡れ性が高くなる一方、モリブデン鉱物の濡れ性は変わらないことが確認された。そのため、鉱物スラリーに硫酸鉄を添加することで、銅鉱物とモリブデン鉱物の親水性に差異を与えることができる。なお、硫酸鉄の添加量は特に限定されないが、過酸化水素水の添加量の数%でよい。
(6)浮遊選鉱工程
浮遊選鉱工程では酸化処理後の鉱物スラリーを用いて浮遊選鉱を行う。浮遊選鉱によりモリブデン鉱物を浮鉱として、銅鉱物を沈鉱として分離する。浮遊選鉱に用いる装置や方式は特に限定されない、一般的な多段式浮遊選鉱装置を用いればよい。
前述のごとく、酸化処理により、銅鉱物とモリブデン鉱物の親水性に差異を与えることができる。そのため、銅鉱物を沈降させつつ、モリブデン鉱物を選択的に浮遊させることができる。その結果、銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できる。
なお、(3)分散工程から(6)浮遊選鉱工程までは、浮遊選鉱装置内で順次進行させるよう構成してもよい。そうすれば、鉱物スラリーの移送の手間が省ける。
つぎに、実施例を説明する。
(実施例1)
バルク浮選:
南米産銅鉱石(ポーフィリー型の銅鉱床から採掘された鉱石)をボールミルで粉砕し、鉱物スラリーを製造し、バルク浮選を行った。バルク浮選には起泡剤としてMIBC(鉱石1t当り15g添加)、捕収剤としてディーゼル油(鉱石1t当り65g添加)を用いた。
バルク浮選により得られたバルク精鉱の粒度は篩下100μm以下である。バルク精鉱を含む鉱物スラリーの固形分比率は50%である。バルク精鉱の鉱物割合、銅およびモリブデンの品位は表2に示す通りである。ここで、鉱物割合はMLA分析、銅およびモリブデンの品位は化学分析により得られた結果である。
バルク精鉱を含む鉱物スラリー500g(固形分250g)を浮遊選鉱機に装入した。用いた浮遊選鉱機はデンバー型浮遊選鉱機(Metso Minerals社製)である。デンバー型浮遊選鉱機は、スラリー槽の中央に中空円筒が立設されており、その下端に円盤状のフードが固定され、さらにその下にインペラが配置された構成である。インペラの回転軸は中空円筒の中を通っている。インペラは円盤に6〜8枚の羽根が設けられた構造である。インペラの回転によりフードとインペラの間に負圧が生じ、中空円筒の上部から外気が吸引される。中空円筒上部の外気吸引口には手動のバルブが備えられており、外気の吸引量を調整できる。外気はフードとインペラの周端部で細かく剪断され、気泡が発生する。気泡がインペラの回転に伴って液相中に分散供給される。
分散工程:
浮遊選鉱機に備えられたインペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを60分間撹拌した。この際、外気の吸引量を0とした。
希釈工程:
つぎに、鉱物スラリーの固形分比率が11%となるようにイオン交換水を添加した。希釈後の鉱物スラリーの重量は2,273gである。また、鉱物スラリーに水酸化ナトリウムを添加し、pHを9に調整した。
酸化工程:
つぎに、鉱物スラリーに過酸化水素水を20.23g添加し、液相の過酸化水素濃度を1重量%とした。インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら10分間保持し、酸化処理を行った。保持時間経過後に液相のpHが低下していたことから、水酸化ナトリウムを添加し、pHを9に調整した。
浮遊選鉱工程:
つぎに、浮遊選鉱機のインペラを稼働させ、気泡を導入して浮遊選鉱を行った。外気の吸引量は所定の浮選時間となるまでにスラリー槽から浮鉱が溢れないように調整した。浮遊選鉱の開始から3分、8分、15分、25分、40分の各タイミングにおいてスラリー槽の上面に溜まった浮鉱を掻きとって別の容器に回収した。浮選時間3分で得られた浮鉱を浮鉱1、浮選時間8分で得られた浮鉱を浮鉱2、浮選時間15分で得られた浮鉱を浮鉱3、浮選時間25分で得られた浮鉱を浮鉱4、浮選時間40分で得られた浮鉱を浮鉱5と称する。
浮選回収率を以下の手順で求めた。まず、バルク精鉱中の銅およびモリブデンの量をICP分析(ICP分析装置:英弘精機株式会社製 型番SPS3000)により求めておく。浮遊選鉱の後、回収された浮鉱1〜5をそれぞれ酸溶解し、ICP分析により浮鉱1〜5中の銅およびモリブデンの量を求める。そして、次式にしたがい、バルク精鉱中の金属の量(投入量)に対する浮鉱として回収された金属の量(回収量)の割合として浮選回収率を求めた。
浮選回収率[%]=100×回収量/投入量
実施例1の結果について、図2に銅回収率を、図3にモリブデン回収率を示す。なお、図2、3における浮選回収率は浮鉱1〜5から求められた浮選回収率の積算値である。
(比較例1)
鉱物スラリーに酸化処理を行わなかった(過酸化水素水を添加しなかった)ほかは、実施例1と同様の手順とした。
比較例1の結果について、図2に銅回収率を、図3にモリブデン回収率を示す。なお、図2、3における浮選回収率は浮鉱1〜5から求められた浮選回収率の積算値である。
図2より、銅回収率は実施例1(過酸化水素水添加)と比較例1(過酸化水素水未添加)とで差が生じることが分かる。一方、図3より、モリブデン回収率は実施例1(過酸化水素水添加)と比較例1(過酸化水素水未添加)とで差が生じないことが分かる。また、いずれの場合も浮選時間が長いほど浮選回収率が上昇するが、25分以上経過すると浮選回収率はあまり変化しないことが分かる。
表3に、実施例1、比較例1の浮選回収率を比較した。
表3において、銅とモリブデンの浮選回収率の差を回収率差分と称する。回収率差分が大きいほど浮遊選鉱による分離が容易である。実施例1では回収率差分が約25%であり、浮遊選鉱により銅鉱物とモリブデン鉱物とを分離可能であることが分かる。一方、比較例1では浮遊選鉱により銅鉱物とモリブデン鉱物とを分離不可能であることが分かる。
(実施例2)
実施例1と同様の処理を行った。希釈工程において、鉱物スラリーの固形分比率が22%となるようにイオン交換水を添加した。酸化工程において、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加し、液相の過酸化水素濃度を2重量%とした。また、インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら10分間保持し、酸化処理を行った。その余の条件は実施例1と同様とした。
(実施例3)
実施例1と同様の処理を行った。希釈工程において、鉱物スラリーの固形分比率が22%となるようにイオン交換水を添加した。酸化工程において、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加し、液相の過酸化水素濃度を2重量%とした。また、インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら270分間保持し、酸化処理を行った。その余の条件は実施例1と同様とした。
実施例2、3の結果について、図4に銅回収率を、図5にモリブデン回収率を示す。なお、図4、5における浮選回収率は浮鉱1〜5から求められた浮選回収率の積算値である。
図4より、酸化工程における保持時間を270分にした実施例3は、銅回収率が著しく低下することが分かる。一方、図5より、モリブデン回収率は実施例2と3とで差が生じないことが分かる。
表4に、実施例2、3の浮選回収率を示す。
表4より、実施例2では回収率差分が約35%であるのに対して、実施例3は回収率差分が約85%であることが分かる。これより、酸化工程における保持時間を270分以上とすれば、浮遊選鉱により銅鉱物とモリブデン鉱物とを効率よく分離できることが確認された。
(実施例4)
実施例1と同様の処理を行った。希釈工程において、鉱物スラリーの固形分比率が22%となるようにイオン交換水を添加した。酸化工程において、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加し、液相の過酸化水素濃度を2重量%とした。また、インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら270分間保持し、酸化処理を行った。また、希釈工程、酸化工程において鉱物スラリーのpHを9.5に調整した。その余の条件は実施例1と同様とした。
(実施例5)
実施例1と同様の処理を行った。希釈工程において、鉱物スラリーの固形分比率が22%となるようにイオン交換水を添加した。酸化工程において、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加し、液相の過酸化水素濃度を2重量%とした。また、インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら270分間保持し、酸化処理を行った。また、希釈工程、酸化工程において鉱物スラリーのpHを10.0に調整した。その余の条件は実施例1と同様とした。
表5に、実施例4、5の浮選回収率を示す。
表4、5より、実施例3(pH9)は回収率差分が約85%、実施例4(pH9.5)は回収率差分が約88%、実施例5(pH10.0)は回収率差分が約80%であることが分かる。これより、鉱物スラリーのpHを9〜10に調整すれば、十分な回収率差分が得られることが確認された。
(実施例6)
実施例1と同様の処理を行った。希釈工程において、鉱物スラリーの固形分比率が22%となるようにイオン交換水を添加した。酸化工程において、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加し、液相の過酸化水素濃度を2重量%とした。また、インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら60分間保持し、酸化処理を行った。その余の条件は実施例1と同様とした。
(実施例7)
実施例1と同様の処理を行った。希釈工程において、鉱物スラリーの固形分比率が22%となるようにイオン交換水を添加した。酸化工程において、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加する前に、硫酸鉄を添加し、液相の硫酸鉄濃度を0.02重量%とした。また、鉱物スラリーに過酸化水素水を添加し、液相の過酸化水素濃度を2重量%とした。また、インペラ(1,200rpm)で鉱物スラリーを撹拌しながら60分間保持し、酸化処理を行った。その余の条件は実施例1と同様とした。
表6に、実施例6、7の浮選回収率を示す。
表6より、実施例6(硫酸鉄未添加)の回収率差分は約77%であるのに対して、実施例7(硫酸鉄添加)の回収率差分は約85%であることが分かる。これより、鉱物スラリーに硫酸鉄を添加した方が、回収率差分が向上することが確認された。

Claims (6)

  1. 少なくとも銅鉱物とモリブデン鉱物とを含む鉱物粉末の選鉱方法であって、
    前記鉱物粉末を含む鉱物スラリーを撹拌して、前記鉱物粉末を分散させる分散工程と、
    前記分散工程の後、前記鉱物スラリーに過酸化水素水を添加して所定時間保持する酸化工程と、
    前記酸化工程の後、前記鉱物スラリーを用いて浮遊選鉱を行う浮遊選鉱工程と、を備える
    ことを特徴とする選鉱方法。
  2. 前記分散工程の後、前記酸化工程の前に、前記鉱物スラリーを希釈する希釈工程を備える
    ことを特徴とする請求項1記載の選鉱方法。
  3. 前記酸化工程における保持時間を270分以上とする
    ことを特徴とする請求項1または2記載の選鉱方法。
  4. 前記酸化工程において、前記鉱物スラリーに硫酸鉄を添加する
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の選鉱方法。
  5. 前記浮遊選鉱工程の前に、前記鉱物スラリーのpHを9〜10に調整する
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の選鉱方法。
  6. 前記銅鉱物は黄銅鉱と斑銅鉱と輝銅鉱とを含む混合硫化銅鉱物であり、
    前記モリブデン鉱物は輝水鉛鉱である
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の選鉱方法。
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