JP2013155426A - 銅精鉱の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 Cu品位の高い銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することができる銅精鉱の処理方法を提供する。
【解決手段】 銅精鉱の処理方法は、黄銅鉱と、黄鉄鉱と、輝銅鉱、ダイジェナイト、ハン銅鉱およびアイダ鉱の少なくともいずれかと、を含む銅精鉱粒子を不活性ガス雰囲気において350℃〜450℃で硫黄と反応させることによって硫化精鉱粒子を得る硫化変換工程と、前記硫化精鉱粒子を摩鉱する摩鉱工程と、前記摩鉱工程で得られる摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理する浮遊選鉱工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 銅精鉱の処理方法は、黄銅鉱と、黄鉄鉱と、輝銅鉱、ダイジェナイト、ハン銅鉱およびアイダ鉱の少なくともいずれかと、を含む銅精鉱粒子を不活性ガス雰囲気において350℃〜450℃で硫黄と反応させることによって硫化精鉱粒子を得る硫化変換工程と、前記硫化精鉱粒子を摩鉱する摩鉱工程と、前記摩鉱工程で得られる摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理する浮遊選鉱工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は銅精鉱の処理方法に関する。
銅鉱山で産出される銅鉱石は、主に硫化鉱である。硫化鉱を大別すると、輝銅鉱(Cu2S)、銅藍(CuS)などの鉱物を主体とした比較的高銅品位の二次硫化銅鉱と、黄銅鉱(CuFeS2)を主体とする初生硫化鉱とに分けられる。近年、銅鉱山で採取される銅鉱石は、後者主体となっている。その結果、鉄、硫黄などの不純物が増加し、銅品位は低下傾向にある。このことは、鉱山で銅製錬向けに生産する銅精鉱の銅品位の低下、鉄分の増加などの要因となる。
銅精鉱を処理する乾式銅製錬所においては、一般に、銅は製品電気銅として、鉄分はスラグとして、硫黄分は硫酸として回収される。銅精鉱の低品位化は、銅製錬プロセスにおいて処理コストの上昇を招き、事業収益を慢性的に圧迫しているスラグの需給をさらに悪化させる要因である。すなわち、銅精鉱の銅品位低下および鉄分の増加は、銅製錬業の重大な懸念点の一つである。この問題緩和のために、銅精鉱中の鉄含有量を低減するための効率の良い手段が望まれる。
銅鉱山における選鉱処理では、原料鉱石(粗鉱)のCu品位が低下すると、製品銅精鉱のCu品位も低下する。一般的に、製品銅精鉱中のCu品位を高めようとするとCu回収率が低下するため、とりわけ高銅価の昨今では大きな収益ロスの要因となる。銅精鉱のCu品位およびCu回収率を維持するためには、粉砕、摩鉱、浮遊選鉱などの一連の工程の段数増加などの何らかの追加手段が必要となり、コスト増加は避けられない。
通常の選鉱処理とは別に、この問題を解決するための一手段として、銅精鉱の予備処理法の応用がある。予備処理法とは、黄銅鉱(CuFeS2)を主体とする銅精鉱粒子を硫黄(S)とともに所定の温度で反応させ、銅藍(CuS)と黄鉄鉱(FeS2)とで構成される銅精鉱粒子に硫化変換する処理のことである。本変換反応は、一般的に難浸出性の黄銅鉱を、比較的浸出が容易な形態にするという意味で、湿式製錬の前処理法として知られているが、予備処理から湿式製錬までのトータルコストに問題があり、現状普及していないプロセスである。上記問題を解決する他の手段として、予備処理(硫化変換反応)後の銅藍と黄鉄鉱とを選別分離し、銅藍主体の高銅品位精鉱として乾式製錬に供する方法がある。
この硫化変換反応とその応用について述べているものに、特許文献1が挙げられる。特許文献1によると、硫化変換プロセスは、硫化変換後の銅藍と黄鉄鉱とから銅藍を選別回収し、乾式製錬または湿式製錬処理に供するために実施される。特許文献1では、銅藍と黄鉄鉱との選別において、静電的方法、重力的方法、磁気的方法、風力的方法、粒径的方法、ハイドロサイクロン法、浮遊選鉱あるいはこれらの組み合わせにより行うことが開示されている。
しかしながら、特許文献1では、銅藍と黄鉄鉱とを選別する具体的な方法については記述されていない。
本発明は上記の課題に鑑み、Cu品位の高い銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することができる銅精鉱の処理方法を提供することを目的とする。
本発明に係る銅精鉱の処理方法は、黄銅鉱と、黄鉄鉱と、輝銅鉱、ダイジェナイト、ハン銅鉱およびアイダ鉱の少なくともいずれかと、を含む銅精鉱粒子を不活性ガス雰囲気において350℃〜450℃で硫黄と反応させることによって硫化精鉱粒子を得る硫化変換工程と、前記硫化精鉱粒子を摩鉱する摩鉱工程と、前記摩鉱工程で得られる摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理する浮遊選鉱工程と、を含むことを特徴とする。本発明に係る銅精鉱の処理方法によれば、Cu品位の高い銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することができる。
前記硫化変換工程における温度範囲を、前記硫化精鉱粒子中の銅鉱物に銅藍とヌクンダマイトとが共存する温度範囲としてもよい。前記硫化変換工程における温度範囲を、380℃〜430℃としてもよい。前記摩鉱工程において、50%通過粒子径(P50)が10μm〜20μmとなるように、前記硫化精鉱粒子を摩鉱してもよい。前記浮遊選鉱工程で得られた浮選精鉱を、50%通過粒子径(P50)が4μm〜10μmとなるように摩鉱し、得られた摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理を実施してもよい。前記摩鉱工程において、ボールミル、ジェットミル、アトリッションミル、またはチューブミルにより摩鉱してもよい。
本発明によれば、Cu品位の高い銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することができる。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
(実施形態)
本実施形態は、黄銅鉱(CuFeS2)と、黄鉄鉱(FeS2)と、輝銅鉱(Cu2S)、ダイジェナイト(Cu2−xS(x=0.45〜1))、ハン銅鉱(Cu5FeS4)およびアイダ鉱(Cu5FeS6)の少なくともいずれかと、を含む銅精鉱粒子を不活性ガス雰囲気において350℃〜450℃で硫黄(S)と反応させることによって硫化精鉱粒子を得て、前記硫化精鉱粒子を摩鉱し、前記摩鉱によって得られる摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理する方法を開示する。この銅精鉱の処理方法によれば、黄鉄鉱主体のCu品位の低い尾鉱を分離し、高いCu回収率でCu品位を高めた銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することで、銅精鉱に含まれる鉄量を低減し、銅製錬プロセスのコスト上昇防止とスラグ発生削減による銅製錬事業採算の改善を可能とする。また、銅鉱山においても、本処理方法を用いることにより、安価に、高い銅回収率で、精鉱Cu品位を高めることができる。
本実施形態は、黄銅鉱(CuFeS2)と、黄鉄鉱(FeS2)と、輝銅鉱(Cu2S)、ダイジェナイト(Cu2−xS(x=0.45〜1))、ハン銅鉱(Cu5FeS4)およびアイダ鉱(Cu5FeS6)の少なくともいずれかと、を含む銅精鉱粒子を不活性ガス雰囲気において350℃〜450℃で硫黄(S)と反応させることによって硫化精鉱粒子を得て、前記硫化精鉱粒子を摩鉱し、前記摩鉱によって得られる摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理する方法を開示する。この銅精鉱の処理方法によれば、黄鉄鉱主体のCu品位の低い尾鉱を分離し、高いCu回収率でCu品位を高めた銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することで、銅精鉱に含まれる鉄量を低減し、銅製錬プロセスのコスト上昇防止とスラグ発生削減による銅製錬事業採算の改善を可能とする。また、銅鉱山においても、本処理方法を用いることにより、安価に、高い銅回収率で、精鉱Cu品位を高めることができる。
本実施形態に係る処理方法が対象とする出発原料は、銅精鉱である。当該銅精鉱は、黄銅鉱と、黄鉄鉱と、輝銅鉱、ダイジェナイト、ハン銅鉱およびアイダ鉱の少なくともいずれかと、を含んでいる。例えば、当該銅精鉱は、重量比にて、黄銅鉱1に対して輝銅鉱などの上記高銅品位鉱物を合計で0.5〜1.5含み、黄鉄鉱を0.5〜1.5含んでいる。上記高銅品位鉱物以外に微量に検出される成分も、不純物として本実施形態に係る銅精鉱に含まれる。当該銅精鉱は、Cuを25mass%〜35mass%、Feを20mass%〜33mass%含有する。このような銅精鉱は、鉄を多く含むため、製錬工程において、多量のスラグ発生をもたらす。
図1は、本実施形態に係る銅精鉱の処理方法の一例を示す工程図である。図1を参照して、まず、銅精鉱に対して、硫化変換工程を実施する。例えば、銅精鉱中の銅(Cu)に対して、硫黄(S)を1.0から1.3のモル当量比で添加する。添加硫黄量を増してもよいが、反応性の向上は確認できず、連続処理する際の試料の流動性低下、変換銅精鉱への単体硫黄の残存などの弊害が多くなる。銅精鉱に対して、単体硫黄を混合することによって供給してもよく、別の容器で加熱して得た硫黄蒸気を供給してもよい。
次に、硫黄を添加した銅精鉱に対して熱処理を実施することによって、黄鉄鉱と、銅藍粒子および/またはヌクンダマイト(Cu4−xFexS4(x=0.33〜0.62))とを含む硫化精鉱粒子を得る。この硫化変換の際には、銅精鉱中の黄鉄鉱が銅硫化物と反応することによって、銅藍またはヌクンダマイトの割合が大きい粗大な粒子が形成されると考えられる。
上記熱処理においては、硫黄を添加した銅精鉱に対して、不活性雰囲気において所定の温度および所定の時間で熱処理を施す。この熱処理は、例えば、ロータリキルンなどを用いて行うことができる。例えば、不活性雰囲気として、窒素ガスを用いることができる。また、熱処理時間を30分〜60分とすることが好ましい。未反応黄銅鉱の残存量を低下させることができるからである。
熱処理温度は、350℃〜450℃である。この熱処理温度よりも低いまたは高い温度では、Cu品位の高い粒子とFe品位の高い粒子との分離性が低下する。具体的には、高い温度では、黄鉄鉱として存在するFeが減少する。また、低い温度では、大粒の硫化精鉱粒子に未反応黄銅鉱が残存することや、変換粒子の外側に生成する銅藍層が未発達で薄く、摩鉱時に、銅藍が細かくなり易く、浮鉱への銅藍の回収率の低下、尾鉱への混入が生じる。
上記熱処理温度は、硫化精鉱粒子に銅藍とヌクンダマイトとが共存する温度範囲であることが好ましい。この場合、ヌクンダマイトよりも低Cu品位のハン銅鉱の生成量が抑制され、Cu品位の高い粒子とFe品位の高い粒子との分離性を向上させることができるためである。本発明者らが鋭意試験・調査した結果、硫化精鉱粒子に銅藍とヌクンダマイトとが共存する温度範囲は、380℃〜430℃である。この温度範囲においては、銅精鉱中に含まれる輝銅鉱の多くは銅藍へ、一部は黄銅鉱と作用してハン銅鉱に変換される。その結果、硫化変換粒子の主な銅含有鉱物は、銅藍と、ヌクンダマイトと、少量のハン銅鉱となる。
図2は、銅精鉱に対する425℃での硫化変換工程後における硫化精鉱粒子の電子線マイクロアナライザ(EPMA)組成像である。図2に示すように、銅精鉱中の黄銅鉱が消失し、ハン銅鉱、銅藍、ヌクンダマイト、および黄鉄鉱が硫化精鉱粒子に含まれている。図3は、図2の一部拡大図である。銅精鉱中の黄銅鉱粒子は、図3に示すように、内殻として黄鉄鉱が存在し、黄鉄鉱をヌクンダマイトまたは銅藍が外殻として覆う粒子に変換される。
このような硫化精鉱粒子から高Cu品位鉱物を主体として回収するためには、各硫化精鉱粒子を高Cu品位鉱物と、黄鉄鉱とに単体分離できることが好ましい。本発明者らが鋭意試験・調査した結果、単体分離に好ましい粒子径は、概ね10μmより小さい粒子であることがわかった。そこで、硫化変換工程によって得られた硫化精鉱粒子に対して、第1摩鉱工程を実施する。摩鉱に用いる粉砕機は、ボールミル、ジェットミル、アトリッションミル、チューブミル等である。粒子径が10μm〜20μm程度の範囲に入るように摩鉱度を調整できるものであれば、湿式および乾式を問わず、粉砕機の種類は問われない。
図4は、硫化精鉱粒子を粉砕して得た50%通過粒子径(P50)=14.5μmの摩鉱精鉱粒子のEPMA画像である。図4に示すように、10μmより小さい粒子径まで粉砕された粒子は、ほぼ単体鉱物になっていることがわかる。また、粒子径10μm〜20μmの範囲の粒子は、外殻のヌクンダマイトや銅藍が大部分分離された黄鉄鉱、ハン銅鉱等であることがわかる。そこで、摩鉱工程においては、50%通過粒子径(P50)が10μm〜20μmになるまで摩鉱工程を実施することが好ましい。
次に、摩鉱工程で得られた摩鉱精鉱粒子に対して、浮遊選鉱工程を実施する。浮遊選鉱工程においては、空気供給式浮選機、空気吸込式浮選機、機械攪拌式浮選機、あるいはこれらの組み合わせを用いることができる。浮遊選鉱工程においてpH調整剤としてCa(OH)2を用い、捕収剤として銅藍およびヌクンダマイトを優先的に捕収するブチルザンセート(BX)を用いることで、Cu品位の高い浮選精鉱とFe品位の高い浮選尾鉱との分離が容易となる。なお、浮遊選鉱工程におけるpH調整剤および捕収剤はこれに限られる訳ではない。pH調整剤は、例えば、NaOHを用いることもできる。捕収剤は、鉱Cu品位鉱および高Fe品位鉱のいずれか一方を優先的に捕収するものであればよく、例えば、アミルザンセート(AX)やエチルザンセート(EX)を用いることもできる。
浮遊選鉱工程における起泡剤は、特に限定されるものではない。起泡剤の一例として、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、パイン油などを用いることができる。浮遊選鉱工程の条件は、選別精鉱のCu品位、浮遊選鉱工程におけるCu回収率、処理コストなどに応じて、任意に変更可能である。また、Cu品位のさらなる向上を狙う場合は、浮遊選鉱工程を多段にわたって実施すればよい。または一旦浮選精鉱と浮選尾鉱とに分けた後、必要な粒度まで再摩鉱して浮遊選鉱工程を再度実施すればよい。
浮遊選鉱工程の実施によって、摩鉱精鉱粒子は、浮遊する浮選精鉱と沈降する浮選尾鉱とに分離する。捕収剤にブチルザンセート等を用いることで、捕収剤によって銅藍およびヌクンダマイトが優先的に捕収され、浮選精鉱には銅藍およびヌクンダマイトが比較的多く含まれ、浮選尾鉱には黄鉄鉱が比較的多く含まれる。すなわち、浮選精鉱にはCu品位の高い鉱物が比較的多く含まれ、浮選尾鉱にはFe品位の高い鉱物が比較的多く含まれる。したがって、浮遊選鉱工程によって得られた浮選精鉱を回収することによって、Cu品位の高い銅精鉱を効率よくかつ経済的に回収することができる。
得られた浮選精鉱を銅製錬精鉱として用いることによって、スラグ発生量の少ない銅製錬を行うことができる。したがって、スラグ販売での損益の改善、スラグ取扱設備の工作費の低減、銅精鉱の取扱量減少に伴う輸送・乾燥設備の工作費やエネルギーコストの低減などの効果が期待できる。
一方で、得られた浮選尾鉱は、黄鉄鉱主体の高Fe品位鉱である。浮選尾鉱のCu品位は、一例として0.7mass%〜1.5mass%である。すなわち、銅製錬プロセスにおける主要なCuロスの一つである、自溶炉スラグ中と同等のCu品位で、銅精鉱から予めFe分を除去することができる。一例として、浮遊選鉱処理によって、Cu品位の低い、即ちCuロスの少ない浮選尾鉱として、銅精鉱中の全Fe分のうち重量率で15〜45%を除去することができる。
なお、浮遊選鉱工程に供する精鉱粒子径が10μmよりも小さくなると、疎水性粒子の気泡への付着性が低下し、添加すべき捕収剤の量を多くしなければならない。また、この場合、浮選尾鉱に残る微細な銅鉱物量が増加し、Cuロスが大きくなる。したがって、50%通過粒子径(P50)が10μm〜20μmになるまで摩鉱工程を実施することによって、Cu品位の高い浮選精鉱とFe品位の高い浮選尾鉱とへの分離性と効率性とを向上させることができる。
浮遊選鉱工程において、浮選尾鉱を分離除去することによって得られた残りの精鉱粒子のCu品位は、浮選尾鉱へのFe除去率が高くなるにつれて上昇する。必要に応じ、摩鉱工程と浮遊選鉱工程とを複数回繰返し、得られる浮選精鉱のCu品位をさらに高めてもよい。2回目以降の浮遊選鉱工程においては、硫化精鉱粒子が鉱物別にほぼ単体分離する粒子径は、およそ10μm以下である。そこで、再摩鉱の際には、摩鉱精鉱粒子径が10μm以下となるようにすることが好ましい。また、一般的に3μmよりも粒子径が小さくなると、気泡との斥力によって、疎水性粒子であっても気泡へ付着しづらくなる。この場合、浮上性、即ち回収率が著しく低下する。したがって、2回目以降の摩鉱工程においては、P50=4〜10μmになるように摩鉱することが好ましい。
本実施形態に係る銅精鉱の処理方法によれば、出発原料の銅精鉱が黄銅鉱と、黄鉄鉱と、輝銅鉱、ダイジェナイト、ハン銅鉱およびアイダ鉱の少なくともいずれかと、を含んでいることから、350℃〜450℃の硫化変換工程によって、硫化精鉱粒子として、黄鉄鉱と、銅藍粒子および/またはヌクンダマイトとで構成される粒子が得られる。すなわち、Cu品位の高い粒子とFe品位の高い粒子とが得られる。これに対して摩鉱工程および浮遊選鉱工程を実施することによって、Cu品位の高い銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収することができる。
なお、出発原料の銅精鉱の鉱物組成は、各温度における硫化変換工程後の鉱物組成に影響する。輝銅鉱やダイジェナイト、ハン銅鉱またはアイダ鉱は、変換処理において、それぞれ銅藍そのもの、粒子の外側に厚い銅藍またはヌクンダマイトを生成した粒子に変化するが、一部は、共存する黄銅鉱に作用し、外側に厚みのある銅藍やヌクンダマイトの層の生成に寄与する。これにより摩鉱工程の際に、10μm〜20μmの50%通過粒子径(P50)の粒度で存在する高Cu品位粒子の存在比率が高まる。
以下、上記実施形態に係る処理方法に従って、銅精鉱を処理した。
(実施例1)
実施例1の試験に供した銅精鉱のCu品位は34mass%であり、Fe品位は23.5mass%であり、S品位は35mass%であった。X線回折(XRD)および電子線マイクロアナライザ(EPMA)によって特定された鉱物組成は、黄銅鉱(CuFeS2)30mass%、輝銅鉱(Cu2S)30mass%、黄鉄鉱(FeS2)30mass%、脈石成分(SiO2等)が10mass%であった。また、僅かにハン銅鉱(Cu5FeS4)も確認された。
実施例1の試験に供した銅精鉱のCu品位は34mass%であり、Fe品位は23.5mass%であり、S品位は35mass%であった。X線回折(XRD)および電子線マイクロアナライザ(EPMA)によって特定された鉱物組成は、黄銅鉱(CuFeS2)30mass%、輝銅鉱(Cu2S)30mass%、黄鉄鉱(FeS2)30mass%、脈石成分(SiO2等)が10mass%であった。また、僅かにハン銅鉱(Cu5FeS4)も確認された。
硫化変換工程においては、銅精鉱と単体硫黄とを、モル比で銅精鉱中Cu:S=1:1.2で混合し、窒素雰囲気中において、425℃で45分処理することで、銅藍、ヌクンダマイト、ハン銅鉱および黄鉄鉱で構成される硫化精鉱粒子に変換した。図5は、硫化精鉱粒子のXRD解析結果を示す図である。図5に示すように、銅精鉱は、銅藍、ヌクンダマイト、および黄鉄鉱に変化していることがわかる。EPMAで観察されたハン銅鉱は、全体量の5〜10mass%でXRDでは同定できなかった。
摩鉱工程においては、硫化精鉱粒子(Cu品位=31mass%、Fe品位=21mass%)を、湿式ボールミルを用いて摩鉱した。50%通過粒子径は14.5μmであった。摩鉱精鉱粒子の状態は、図4で示した。次に、摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱工程を実施した。浮遊選鉱工程においては、京大式アジテア型試験浮選機を用いた。パルプ濃度100g/lの摩鉱精鉱粒子のスラリーを、浮選セル内に入れ、Ca(OH)2飽和溶液添加によりpH12.0とし、摩鉱精鉱粒子あたり100g/tに相当する量の捕収剤ブチルザンセート(BX)を添加し、コンディショニングとして10分間攪拌した。その後、起泡剤としてメチルイソブチルカルビノール(MIBC)を20μl添加し、浮選機に空気を供給し、浮鉱(フロス)を回収した。浮鉱回収においては、鉱物の付着した安定的な気泡がなくなるまで回収し、その後、初期供給精鉱に対し、BXを100g/t、MIBCを20μlずつ回分添加し、同様の操作を6回繰り返した。この浮遊選鉱により回収した各浮鉱と、浮選機セル内のスラリーに最後まで残存した尾鉱のCu品位、およびFe品位を分析した。Cu品位に応じて、浮選精鉱、浮選尾鉱、およびその中間物に仕分けした。
実施例1における第1段浮遊選鉱工程においては、Cu品位0.7mass%という低品位で、Feを全Fe重量の29.8mass%を尾鉱中に分離することができた。さらに、第2段浮遊選鉱工程においては、Cu品位1.2mass%という品位で、第1段浮遊選鉱工程で得られた浮鉱中のFe重量の18.5mass%に相当するFeを浮選尾鉱として分離することができた。これにより第1段浮遊選鉱工程および第2段浮遊選鉱工程の合計で、Cu品位1.0mass%で、全Fe重量の43.8mass%に相当するFeを浮選尾鉱中に分離することができた。
銅製錬工程における主要なCuロスである自溶炉スラグ中のCu品位は、おおよそ0.6mass%〜1mass%である。したがって、実施例1で得られた浮選尾鉱を乾式銅製錬工程に供さなければ、銅地金生産量を現状よりも減少させることなく、スラグ発生量を大幅に削減することができる。また、実施例1における浮選尾鉱以外の残りの精鉱は、合計で40mass%の高Cu品位精鉱である。したがって、銅精鉱輸送コストや、銅製錬工程における乾燥コスト、酸素コストの低減をはじめ、様々な利点が期待できる。また、浮遊選鉱工程と銅製錬コストとのバランスに応じて、実施例1における中間品を、当該浮遊選鉱工程内への繰返しとし、表1の浮選精鉱のみを乾式銅製錬処理に供することもできる。
比較例1においても、実施例1と同様に、Cu品位45mass%の浮選精鉱を回収できたが、Cu回収率は、実施例1の92.3%から75.7%へ低下した。また、除去対象となる黄鉄鉱を主体とする浮選尾鉱へのFe回収率、即ちFe分離率は、実施例1の43.8%から26.6%へ低下した。一方で、浮選尾鉱へのCu回収率、即ちCuロスは、実施例1の0.7%から1.0%に増加した。以上のことから、実施例1は、比較例1よりも低いCuロス率で、Feを1.65倍除去できることがわかった。
(実施例2)
実施例1の出発原料の銅精鉱を、反応時間45分で、350℃、385℃、450℃の3水準の熱処理温度で硫化変換工程を実施した。硫化変換工程後のそれぞれのXRD解析結果を図6、図7および図8に示した。図6に示すように、350℃の硫化変換後の硫化精鉱粒子においては、銅藍および黄鉄鉱のピークのみ確認できた。図7に示すように、385℃の硫化変換後の硫化精鉱粒子においては、銅藍および黄鉄鉱の一部がヌクンダマイト(Cu4−xFexS4)となっていた。また、図8に示すように、450℃の硫化変換後の硫化精鉱粒子においては、銅藍および黄鉄鉱の強度が低下し、ヌクンダマイトの強度が増加した。さらに、ハン銅鉱(Cu5FeS4)のピークも明確に出現した。したがって、385℃および450℃の熱処理によって、Cu成分およびFe成分は、それぞれ銅藍および黄鉄鉱主体ではなく、ヌクンダマイト、ハン銅鉱といったCuFe硫化鉱物主体に変化した。
実施例1の出発原料の銅精鉱を、反応時間45分で、350℃、385℃、450℃の3水準の熱処理温度で硫化変換工程を実施した。硫化変換工程後のそれぞれのXRD解析結果を図6、図7および図8に示した。図6に示すように、350℃の硫化変換後の硫化精鉱粒子においては、銅藍および黄鉄鉱のピークのみ確認できた。図7に示すように、385℃の硫化変換後の硫化精鉱粒子においては、銅藍および黄鉄鉱の一部がヌクンダマイト(Cu4−xFexS4)となっていた。また、図8に示すように、450℃の硫化変換後の硫化精鉱粒子においては、銅藍および黄鉄鉱の強度が低下し、ヌクンダマイトの強度が増加した。さらに、ハン銅鉱(Cu5FeS4)のピークも明確に出現した。したがって、385℃および450℃の熱処理によって、Cu成分およびFe成分は、それぞれ銅藍および黄鉄鉱主体ではなく、ヌクンダマイト、ハン銅鉱といったCuFe硫化鉱物主体に変化した。
硫化変換工程で得られた硫化精鉱粒子を、実施例1および比較例1の第1段浮遊選鉱と同様の分離処理を実施した結果、表3のような分離成績が得られた。350℃と450℃変換鉱の浮選分離試験で得られた浮選尾鉱は、385℃の硫化変換工程後の浮遊選鉱工程で得られた浮選尾鉱よりもCuロスが多く、Feの回収率が低くなった。また、実施例1の425℃の硫化変換工程後の第1段浮遊選鉱工程で得られた浮選尾鉱のCuロスおよびFe回収率は、385℃の硫化変換工程後鉱のCuロスおよびFe回収率と比べて僅かではあるが良好であることが確認できた。図9は、硫化変換温度別の浮選尾鉱へのFe回収率およびCu品位を示す図である。
実施例1および実施例2の結果から、上記実施形態に係る処理方法に従って銅精鉱を処理することによって、Cu品位の高い銅精鉱を効率良くかつ経済的に回収できることがわかった。また、実施例1および実施例2の結果から、黄銅鉱に黄鉄鉱および高銅品位硫化銅鉱を含む銅精鉱を硫化変換し、少ないCuロスで、Feを効率良く浮選分離するための変換温度は、ヌクンダマイトの生成開始から、銅藍とヌクンダマイト及び少量のハン銅鉱が主なCu含有鉱物となる380〜430℃が最も良いことがわかった。
また、CuとFeとの分離性を高めるには、未反応黄銅鉱を残存させないことが有効であるが、温度を高めるに従って銅藍よりもヌクンダマイトまたはハン銅鉱の存在比率が高まり、350〜380℃での硫化変換をピークに単体黄鉄鉱の存在比率が低下した。よって、原料銅精鉱中に予め所定の割合で黄鉄鉱を含んでいる銅精鉱について、比較的高温で変換した本手法でのCuとFeとの分離性が良好であることがわかった。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
Claims (6)
- 黄銅鉱と、黄鉄鉱と、輝銅鉱、ダイジェナイト、ハン銅鉱およびアイダ鉱の少なくともいずれかと、を含む銅精鉱粒子を不活性ガス雰囲気において350℃〜450℃で硫黄と反応させることによって硫化精鉱粒子を得る硫化変換工程と、
前記硫化精鉱粒子を摩鉱する摩鉱工程と、
前記摩鉱工程で得られる摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理する浮遊選鉱工程と、を含むことを特徴とする銅精鉱の処理方法。 - 前記硫化変換工程における温度範囲を、前記硫化精鉱粒子中の銅鉱物に銅藍とヌクンダマイトとが共存する温度範囲とすることを特徴とする請求項1記載の銅精鉱の処理方法。
- 前記硫化変換工程における温度範囲を、380℃〜430℃とすることを特徴とする請求項1記載の銅精鉱の処理方法。
- 前記摩鉱工程において、50%通過粒子径(P50)が10μm〜20μmとなるように、前記硫化精鉱粒子を摩鉱することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅精鉱の処理方法。
- 前記浮遊選鉱工程で得られた浮選精鉱を、50%通過粒子径(P50)が4μm〜10μmとなるように摩鉱し、得られた摩鉱精鉱粒子に対して浮遊選鉱処理を実施することを特徴とする請求項4記載の銅精鉱の処理方法。
- 前記摩鉱工程において、ボールミル、ジェットミル、アトリッションミル、またはチューブミルにより摩鉱することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の銅精鉱の処理方法。
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JP2013209718A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-10 | Jx Nippon Mining & Metals Corp | 銅精鉱の処理方法 |
CN105344494A (zh) * | 2015-12-08 | 2016-02-24 | 中南大学 | 一种低碱度下低品位硫化铜矿的选矿方法 |
CN108787155A (zh) * | 2018-04-04 | 2018-11-13 | 云南迪庆矿业开发有限责任公司 | 一种高硫铁铜矿石浮选处理方法 |
CN113649101A (zh) * | 2021-07-26 | 2021-11-16 | 陕西冶金设计研究院有限公司 | 一种低品位铅锌矿综合利用的装置及工艺方法 |
-
2012
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