JP5771115B2 - 車両用タイヤ及び当該タイヤのバフ方法 - Google Patents
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バフ工程では、最初に作業者が使用済みタイヤのトレッド表面からタイヤ半径方向の最外に位置する最外ベルト表面までを手作業によって掘ることで穴を設け、この穴を利用してトレッド表面から最外ベルト表面までのゴム厚さを測定することでバフ掛けすべきトレッドのバフ掛け量を設定することや、バフ掛け量を設定する作業を省略するために、バフ工程における切削の目安となるインジケータをタイヤ側面に予め型付けしておき、タイヤが使用限界に達したときに、設定したバフ掛け量やインジケータを目安としてバフ掛けすることで、バフ掛け後の貼着面の断面形状を所定の形状とする方法が開示されている。
しかしながら、建設車両用タイヤに代表される車両用タイヤにあっては、最外ベルトからトレッドの溝底面までの厚さが厚くなる傾向にあるため、作業者がトレッド表面から最外ベルトまで手作業によって掘り、穴を設ける作業は非常に手間がかかり、リトレッドタイヤの生産性を向上させる上での妨げとなる。また、建設車両用タイヤに限らず、トレッドの下部に位置するベルト構造はタイヤの種別によって異なるため、タイヤ側面に設けたインジケータのみを目安としてバフ掛けを行うと、バフ掛けによって最外ベルトを露出させたり、傷つけたりする虞がある。
本態様によれば、タイヤのトレッド部に形成され、タイヤ幅方向に延長する溝部と、トレッド部より径方向内側に配設されたベルトと、溝部の溝底面よりタイヤ径方向に窪む複数の凹部とを備え、複数の凹部が、ベルト表面から溝底面までの厚さが最も薄い最薄点上にタイヤ幅方向中央に対して対称に設けられた第一の凹部と、第一の凹部よりも、タイヤ幅方向内側又は外側に離間した第二の凹部とを有することにより、上記凹部を目安としたトレッド部のバフ掛けを可能とし、バフ掛け前のタイヤ溝底面からタイヤ半径方向最外に位置するベルトまでのトレッド部のゴム厚さを測定して、トレッド部のバフ掛け量(削り深さ)を設定する作業を不要にすることができる。そして、溝底面に設けられた複数の凹部が視認できなくなるまでトレッド部をバフ掛けすることで、トレッド部を所望の形状に成形することができる。また、第一の凹部が最外ベルトからタイヤ溝底面までの厚さが最も薄肉となる位置に設けられることにより、バフ工程において最外ベルトを傷つけることがない。
また、本発明の他の態様として、第一の凹部が、タイヤ幅方向中央からタイヤ幅寸法に4分の1を乗じた基準点よりも幅方向内側に位置し、第二の凹部が、第一の凹部よりもタイヤ幅寸法に8分の1を乗じた距離タイヤ幅方向外側に離間した態様とした。
本態様によれば、上記効果に加え、第一の凹部と第二の凹部とをトレッド部において、均等に4等分した領域内にそれぞれ配置し、互いにタイヤ幅寸法の8分の1の距離離間することで、トレッド部をバフ掛けするときに、第一の凹部と第二の凹部とをトレッド部に略均等に配置できるので、トレッド部をバフ掛けするときにトレッド部全体を均一にバフ掛けすることができる。即ち、第一の凹部と第二の凹部とを結ぶようにバフ掛けすることにより、最外ベルトから新たなトレッドを貼着する貼着面までの厚さを最適値としてトレッド部を所望の形状に精度良く仕上げることができるので、バフ掛け後に新たなトレッドが貼着されたタイヤのトレッド踏面は、タイヤの性能上最適な曲率のクラウン形状を有するタイヤとなる。
また、本発明の他の態様として、第一の凹部が、タイヤ幅方向中央からタイヤ幅寸法に4分の1を乗じた基準点よりも幅方向外側に位置し、第二の凹部が、第一の凹部よりもタイヤ幅寸法に8分の1を乗じた距離タイヤ幅方向内側に離間した態様とした。
本態様によれば、上記効果に加え、第一の凹部と第二の凹部とをトレッド部において、均等に4等分した領域内にそれぞれ配置し、互いにタイヤ幅寸法の8分の1の距離離間することで、トレッド部をバフ掛けするときに、第一の凹部と第二の凹部とをトレッド部に略均等に配置できるので、トレッド部をバフ掛けするときにトレッド部全体を均一にバフ掛けすることができる。即ち、第一の凹部と第二の凹部とを結ぶようにバフ掛けすることにより、最外ベルトから新たなトレッドを貼着する貼着面までの厚さを最適値としてトレッド部を所望の形状に精度良く仕上げることができるので、バフ掛け後に新たなトレッドが貼着されたタイヤのトレッド踏面は、タイヤの性能上最適な曲率のクラウン形状を有するタイヤとなる。
また、本発明の他の態様として、複数の凹部が、タイヤ幅方向中央に設けられた第三の凹部をさらに有する態様とした。
本態様によれば、上記効果に加え、タイヤ幅方向中央に設けられた第三の凹部をさらに有することにより、より精度良くトレッド部をバフ掛けすることができる。
また、本発明のタイヤのバフ方法として、タイヤ設計図に基づいて、トレッド部より径方向内側に配設されたベルトとトレッド部に形成されたタイヤ幅方向に延長する溝部の溝底面との厚さが最も薄い最薄点を特定する工程と、最薄点上に溝底面よりタイヤ径方向に窪む凹部をタイヤ幅方向中央に対して対称に形成する工程と、トレッド部を前記凹部が視認不能となるまで除去する工程とを備えるようにした。
本態様によれば、タイヤ設計図に基づいて、トレッド部より径方向内側に配設されたベルトとトレッド部に形成されたタイヤ幅方向に延長する溝部の溝底面との厚さが最も薄い最薄点を特定し、最薄点上に溝底面よりタイヤ径方向に窪む凹部をタイヤ幅方向中央に対して対称に形成し、凹部が視認不能となるまでトレッド部を除去することにより、バフ掛け前にタイヤ溝底面からタイヤ半径方向最外に位置するベルトまでのトレッド部のゴム厚さを測定して、トレッド部のバフ掛け量(削り深さ)を設定する作業を不要とし、複数の凹部が見えなくなるまでバフ掛けすることで、トレッド部を所望の形状に成形することができる。また、凹部が最外ベルトからタイヤ溝底面までの厚さが最も薄肉となる位置に設けられることにより、バフ工程において最外ベルトを傷つけることがない。
本発明のタイヤのバフ方法の他の態様として、最薄点上に凹部を形成した後に、当該凹部よりもタイヤ幅方向内側又は外側に離間し、タイヤ幅方向中央に対して対称に設けられた第二の凹部を形成する工程を備えるようにした。
本態様によれば、上記効果に加え、バフ掛け時の目安となる凹部をさらに設けてバフ掛けすることにより、より精度の良いバフ掛けを行うことができる。
カーカス11に対して、最も近い位置にあるベルトから最外に位置するベルトまでを、順に第1ベルト13A、第2ベルト13B、第3ベルト13C、第4ベルト13D、第5ベルト13Eとすると、各ベルト幅は、第4ベルト13D<第5ベルト13E<第3ベルト13C<第1ベルト13A<第2ベルト13Bの関係となっている。なお、以下の説明において第5ベルト13Eは、タイヤTを構成するベルト層13のうち、径方向最外に位置するベルトであるから、最外ベルト13Eとして説明する。
なお、ベルト層13は、上記5層構造に限らず、増減することも可能であり、ベルト幅、ベルトの積層順についても適宜変更可能である。
なお、本明細書において幅方向外側とは、幅方向中央Cを基準とした場合の両サイド部側の方向であるが、幅方向中央Cを基準として一方の側に設けられた凹部24;25が位置する方向を幅方向内側又は外側とし、幅方向中央Cを基準として他方の側に設けられた凹部24;25が位置する方向を幅方向外側又は内側として把握することも可能である。また、凹部24;24は、幅方向中央Cを中心として幅方向に対称であれば良く、周方向に位置ずれしていても良い。また、凹部25;25は、幅方向中央Cを中心として幅方向に対称であれば良く、周方向に位置ずれしていても良い。
図3,図4に示すように、中央凹部23は、例えば、直径d1及び深さL1の円柱形状を有する。円柱形状をなす中央凹部23の軸心は、タイヤTの幅方向中央Cに位置し、タイヤTにおける法線Nと一致する。つまり、タイヤTの幅方向中央Cと軸心とは一致する。また、中央凹部23の直径d1は、幅方向溝21の溝幅MWより短い直径となるように、例えば2mmから10mmまでの間から設定され、深さL1は、例えば4mm〜10mmに設定される(図1(b)参照)。
凹部24;25の位置関係は、幅方向溝21の溝底面21aから最外ベルト13E表面までの厚さが最薄となる最薄点Pと、溝底面21a上における幅方向中央Cからの距離である基準点Qとの関係によって規定される。
他方の凹部25は、最薄点Pと基準点Qとの関係により、最薄点Pよりも幅方向外側又は幅方向内側に配置される。ここで、基準点Qとは、幅方向中央Cから所定の距離離間した仮想地点であって、本例においては幅方向中央Cから、タイヤ幅寸法Wに4分の1を乗じた距離、タイヤ幅方向外側に離間した位置に設定される。
そして、凹部25の位置は、最薄点Pが上記の通り設定された基準点Qに対して幅方向内側に存在するか、或いは幅方向外側に存在するかによって決定される。具体的には、図示のように最薄点Pが基準点Qよりも幅方向内側に存在する場合には、凹部25の位置が一方の凹部24よりも幅方向外側に設定され、逆に最薄点Pが基準点Qよりも幅方向外側に存在する場合には、凹部25の位置が一方の凹部24よりも幅方向内側に設定される。
図5に示すように、バフ装置50は、概略、バフ掛け対象となるタイヤTを固定するドラム51と、ドラム51に固定されたタイヤTのトレッド部5をバフ掛けするグラインダ52と、バフ装置50によるバフ掛けを制御する制御装置100とを有する。ドラム51は、略水平に延長する回転軸53の一端側に固着される。回転軸53は、図外の伝達機構を介してモータと接続され、モータの回転により回転する。モータは、制御装置100と接続され、制御装置100から出力される信号に基づいて回転・停止する。ドラム51は、略円筒状の筒体であって、外周面を構成する複数のドラムセグメント51aを半径方向に移動させてタイヤTを固定する拡縮機構と、ドラム51に固定されたタイヤTに内圧を印加するための内圧印加手段とを備える。
よって、バフ掛け対象となるタイヤTは、ドラム51を拡径することによりビード部とドラム51の外周面とが密着し、空気供給手段54から供給される空気が内圧印加手段を介してタイヤT内に供給されることにより、タイヤTは内圧が印加された状態でドラム51に固定される。そして、回転軸53を回転させることにより、内圧を印加した状態のタイヤTを回転させることが可能となる。
まず、作業者が、バフ掛け対象となるタイヤTをドラム51に配置する。次に、作業者は、ドラム51に配置したタイヤTのタイヤ品番及びタイヤサイズを入力表示手段103から入力する。制御装置100の制御部102は、記憶部101から入力されたタイヤ品番及びタイヤサイズに対応するバフ形状と、印加する内圧値とを読み出し、入力されたタイヤサイズに対応する拡径信号と、タイヤ品番に対応する内圧値の内圧印加信号とを出力する。拡径信号に基づき拡縮機構がドラム51を拡径させてタイヤTを固定し、内圧印加信号に基づき内圧印加手段が空気供給手段54から供給される空気を所定の内圧値となるようにタイヤT内に供給する。
次に、制御装置100は、グラインダ52を有する移動テーブル55に移動信号を出力して、タイヤTの外周面とグラインダ52の外周面とが対向するように移動テーブル55を移動してグラインダ52とタイヤTのトレッド部5とを接触させる。このとき、例えばグラインダ52の幅方向中央とタイヤTの幅方向中央Cとが接触し、グラインダ52の回転軸とタイヤTの回転軸53とが平行となるように配置する。
そして、移動テーブル55がタイヤT側に移動することによりタイヤTのトレッド部5が徐々に切削される。トレッド部5のトレッドブロックがバフ掛けにより除去されると、やがて溝底面21aが露出し、回転するタイヤTのタイヤ表面において凹部23;24;25が残像効果により線状に目視される。
なお、タイヤTの回転中に凹部23;24;25が視認できないときには、タイヤTの回転を一旦停止して、凹部23;24;25のバフ掛けすべき深さを確認しても良い。作業者は、回転するタイヤ表面に視認できる凹部23;24;25を確認し、凹部23;24;25が視認できなくなるまでバフ掛けを継続する。そして、作業者が凹部23;24;25が視認できなくなったときに、入力表示手段103を操作して、バフ掛けの停止信号を制御装置100に出力し、バフ掛けを停止することで、新たなトレッドを配設する貼着面がタイヤ表面に成形される。
上記実施形態では、幅方向溝21それぞれに凹部23;24;25を備える構成としたが、1つの幅方向溝21にのみ形成するようにしても良い。また、図6に示すように、円周方向に隣接する幅方向溝21毎にいずれかの凹部23;24;25を一つづつ形成するようにしても良い。また、上記実施形態では、タイヤTに予め凹部23;24;25を備えるとして説明したが、タイヤTが凹部23;24;25を備えていない場合には、バフ工程前に凹部23;24;25を溝底面21aに形成しても良い。具体的には、バフ掛け対象のタイヤTの設計図面に基づいて最薄点Pを特定し、当該最薄点P上に凹部24を形成すれば、当該凹部24をバフ掛けの目安として用いることが可能となる。また、凹部25を形成する際には、上述の実施形態と同様の関係を有するようにすれば良い。このように、凹部23;24;25を備えていないタイヤTに、凹部23;24;25を形成することで、手作業により切削深さを測定するときに最外ベルト13Eを傷つけてしまう危険性を回避することができる。また、凹部23;24;25は、図面に基づいて上記位置に機械的に形成すれば良いので作業者の熟練度を必要とすることがないので、バフ工程における作業時間を短縮することができる。
13 ベルト層、13E 最外ベルト、14 ビードフィラー、
15 インナーライナーゴム、16 サイドウォールゴム、17 トレッドゴム、
20 トレッドブロック、21 幅方向溝、21a 溝底面、22 円周方向溝、
23 中央凹部、24;25 凹部、C 幅方向中央、d1;d2;d3 直径、
L1;L2;L3 深さ、T タイヤ、W タイヤ幅寸法。
Claims (6)
- トレッド部に形成され、タイヤ幅方向に延長する溝部と、
前記トレッド部より径方向内側に配設されたベルトと、
前記溝部の溝底面よりタイヤ径方向に窪む複数の凹部とを備え、
前記複数の凹部は、ベルト表面から前記溝底面までの厚さが最も薄い最薄点上に
タイヤ幅方向中央に対して対称に設けられた第一の凹部と、
前記第一の凹部よりも、タイヤ幅方向内側又は外側に離間した第二の凹部とを有する車両用タイヤ。 - 前記第一の凹部が、タイヤ幅方向中央からタイヤ幅寸法に4分の1を乗じた基準点よりも幅方向内側に位置し、
前記第二の凹部が、前記第一の凹部よりもタイヤ幅寸法に8分の1を乗じた距離タイヤ幅方向外側に離間した請求項1記載の車両用タイヤ。 - 前記第一の凹部が、タイヤ幅方向中央からタイヤ幅寸法に4分の1を乗じた基準点よりも幅方向外側に位置し、
前記第二の凹部が、前記第一の凹部よりもタイヤ幅寸法に8分の1を乗じた距離タイヤ幅方向内側に離間した請求項1記載の車両用タイヤ。 - 前記複数の凹部が、タイヤ幅方向中央に設けられた第三の凹部をさらに有する請求項1乃至請求項3いずれかに記載の車両用タイヤ。
- タイヤ設計図に基づいて、トレッド部より径方向内側に配設されたベルトとトレッド部に形成されたタイヤ幅方向に延長する溝部の溝底面との厚さが最も薄い最薄点を特定する工程と、
前記最薄点上に溝底面よりタイヤ径方向に窪む凹部をタイヤ幅方向中央に対して対称に形成する工程と、
前記トレッド部を前記凹部が視認不能となるまで除去する工程とを備えた車両用タイヤのバフ方法。 - 最薄点上に前記凹部を形成した後に、当該凹部よりもタイヤ幅方向内側又は外側に離間し、タイヤ幅方向中央に対して対称に設けられた第二の凹部を形成する工程を備えた請求項5記載の車両用タイヤのバフ方法。
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