JP2017226313A - 空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法 - Google Patents

空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外観不良の発生を抑制すること。
【解決手段】トレッド部2に形成され、タイヤ周方向に延びる複数の周方向主溝30と、周方向主溝30によって画成されて周方向主溝30同士の間に位置すると共に、接地面3がトレッド部2の基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出するリブ20と、を備え、リブ20には、リブ20における、接地面3が基準輪郭線PLよりも最もタイヤ径方向外側に突出している部分である最大突出部Rに交差する、または最大突出部Rの近傍に位置するラグ溝31が配置され、ラグ溝31は、ラグ溝31が有する一対の溝壁35に両端が接続されるスピュー40を有し、スピュー40は、接地面3上における最大突出部Rからのタイヤ幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、スピュー40の長さ方向における中心が位置して配置される。
【選択図】図3

Description

本発明は、空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法に関する。
空気入りタイヤのトレッド面には、排水性の向上等を目的として複数の溝が形成されるが、従来の空気入りタイヤの中には、所望の性能を実現するために、溝壁や溝底から突出する部材を溝内に設けているものがある。例えば、特許文献1に記載された空気入りタイヤでは、周方向に断続して延びる複数の溝同士における、トレッド幅方向に重複する部分同士の間に亘って延びる横溝の溝内に、一方の側壁と他方の側壁とを繋ぐクロスベントを設けることにより、ロードノイズの低減を図っている。
また、近年の空気入りタイヤの中には、所望の性能を得るために、複数の溝によって区画される陸部の接地面を、仮想トレッドプロファイルよりも突出させているものがある。例えば、特許文献2に記載された空気入りタイヤでは、排水性能や耐偏摩耗性能を向上させることを目的として、陸部の接地面のプロファイルを、仮想トレッドプロファイルよりもタイヤ半径方向外側に突出させている。
特開2010−70045号公報 特開2014−118123号公報
ここで、空気入りタイヤのトレッド面は、空気入りタイヤを加硫成形する際に用いるタイヤ成形金型のトレッド成形面にグリーンタイヤの外表面が押し付けられることにより、各種の溝が形成され、トレッドパターンが形成される。詳しくは、グリーンタイヤをタイヤ成形金型の内側に入れた状態で、グリーンタイヤの内側からグリーンタイヤに対して圧力を付与するブラダーによって圧力を付与することにより、グリーンタイヤの外表面をタイヤ成形金型のトレッド成形面に押し付ける。その際に、グリーンタイヤの外表面とタイヤ加硫成形金型との間にある残留空気や、加硫により発生したガス等の残留ガスは、タイヤ成形金型に形成される孔状のベントや、タイヤ成形金型に形成される微細な隙間からなるスリットベント等の排出経路から排出される。
しかし、陸部の接地面を、トレッドプロファイルよりも突出する形状にする場合、トレッドプロファイルから突出させる分、トレッド部の厚さが厚くなり、陸部においてトレッドプロファイルから最も突出する部分では、厚さが最も厚くなる。このように、トレッド部の厚さが厚い部分では、グリーンタイヤの内側からブラダーによって付与した圧力が伝わり難くなっており、陸部の接地面におけるトレッドプロファイルから最も突出した部分では、他の位置と比較して圧力が低くなり易いため、加硫成形時に残留ガスが逃げ難くなる。このため、例えば、タイヤ成形金型のスリットベントに詰まりが発生した際には、スリットベントにおけるこの部分から排出されるべき残留ガスは、加硫成形時における圧力が比較的低い、トレッドプロファイルからの突出量が最も大きい位置に流れ易くなる。この場合、残留ガスは、加硫成形時の圧力が比較的低い位置に滞留し易くなるため、残留ガスが滞留する位置ではこれに起因してゴムが流れ難くなり、外観不良が発生する虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外観不良の発生を抑制することのできる空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に形成され、タイヤ周方向に延びる複数の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画成されて前記周方向主溝同士の間に位置すると共に、接地面が前記トレッド部の基準輪郭線よりもタイヤ径方向外側に突出するリブと、を備え、前記リブには、前記リブにおける、前記接地面が前記基準輪郭線よりも最もタイヤ径方向外側に突出している部分である最大突出部に交差する、または前記最大突出部の近傍に位置するラグ溝が配置され、前記ラグ溝は、前記ラグ溝が有する一対の溝壁に両端が接続されるスピューを有し、前記スピューは、前記接地面上における前記最大突出部からのタイヤ幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、前記スピューの長さ方向における中心が位置して配置されることを特徴とする。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤは、スリットベントを有するタイヤ加硫成形金型を用いて製造され、前記リブには、前記リブを画成する前記周方向主溝のうち少なくとも一方の前記周方向主溝からの距離D1が1.0mm≦D1≦3.0mmの範囲内となる前記接地面に、前記スリットベントのベント跡が形成されていることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ベント跡は、タイヤ幅方向における位置が前記最大突出部とは異なる位置に形成されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、外径dが0.3mm≦d≦2.0mmの範囲内であることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、外径dと前記ラグ溝の溝幅Wgとの関係が、0.25≦(d/Wg)≦1.5の範囲内となって形成されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記接地面を基準とする前記ラグ溝の深さ方向における前記スピューの配置深さHが、0.5mm≦H≦3.0mmの範囲内に配置されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記接地面を基準とする前記ラグ溝の深さ方向における前記スピューの配置深さHと、前記ラグ溝の深さHgとの関係が、0.1≦(H/Hg)≦0.6の範囲内となる位置に配置されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記接地面の平面視における前記ラグ溝の溝中心線と前記スピューの中心線とのなす角度θが、80°≦θ≦100°の範囲内となって形成されることが好ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ加硫成形金型は、空気入りタイヤの周方向主溝を形成する複数の周方向主溝成形骨と、前記空気入りタイヤの接地面を成形する接地面成形面と、を有するトレッド成形面を備えるタイヤ加硫成形金型において、前記トレッド成形面は、隣り合う前記周方向主溝成形骨同士の間に、前記接地面成形面が前記接地面成形面の基準となる基準輪郭線よりも前記タイヤ加硫成形金型の径方向における外側に突出して、前記空気入りタイヤのリブを成形するリブ成形部を有し、前記リブ成形部には、前記リブ成形部における、前記接地面成形面が前記基準輪郭線よりも最も前記タイヤ加硫成形金型の径方向における外側に突出している部分である最大突出部に交差し、または前記最大突出部の近傍に位置し、前記空気入りタイヤのラグ溝を成形するラグ溝成形骨が配置され、前記ラグ溝成形骨は、前記ラグ溝成形骨を貫通する横穴ベントを有し、前記横穴ベントは、前記接地面成形面上における前記最大突出部からの前記タイヤ加硫成形金型の幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、前記横穴ベントの長さ方向における中心が位置して形成されることを特徴とする。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ製造方法は、上記タイヤ加硫成形金型を用いてタイヤ加硫成形工程を行うことを特徴とする。
本発明に係る空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法は、外観不良の発生を抑制することができる、という効果を奏する。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。 図2は、図1のA−A矢視図である。 図3は、図2のB部詳細図である。 図4は、基準輪郭線の説明図であり、図1に示すセンターリブの詳細図である。 図5は、基準輪郭線の説明図であり、図1に示すショルダーリブの詳細図である。 図6は、基準輪郭線の説明図であり、リブに面取りが施される場合における基準輪郭線の説明図である。 図7は、図3のD−D断面図である。 図8は、図3のE部詳細図である。 図9は、図8のF−F断面図である。 図10は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、最大突出部に交差しないラグ溝にスピューを設ける場合の説明図である。 図11は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、スピューが最大突出部に沿った向きで形成される場合の説明図である。 図12は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、最大突出部がリブの中心からずれる場合の説明図である。 図13は、実施形態に係る空気入りタイヤを製造するタイヤ加硫成形金型の説明図である。 図14は、図13に示すタイヤ加硫成形金型を構成する複数のセクターの連結構造の説明図である。 図15は、図14に示すタイヤ加硫成形金型を用いたタイヤ製造方法を示す説明図である。 図16は、タイヤ加硫成形金型のスリットベント及び横穴ベントを示す説明図である。 図17は、タイヤ加硫成形金型のスリットベント及び横穴ベントを示す説明図である。 図18は、リブ成形部の詳細図である。 図19は、図17のJ−J矢視図である。 図20は、タイヤ加硫成形時における圧力の作用の仕方についての説明図である。 図21は、スピューの詳細図である。 図22Aは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。 図22Bは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。 図22Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
[空気入りタイヤ]
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、接地面3として形成されている。トレッド部2には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30が複数形成されており、この周方向主溝30により、トレッド部2の表面には複数の陸部が区画形成されている。また、周方向主溝30は、内部に摩耗末期であることを示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を有している。
本実施形態では、周方向主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の周方向主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。また、本実施形態では、周方向主溝30によって画成されて周方向主溝30同士の間に位置する陸部、及びタイヤ幅方向において最も外側に位置する周方向主溝30に隣接して当該周方向主溝30のタイヤ幅方向における外側に位置する陸部は、タイヤ周方向に延びる陸部であるリブ20として形成されている。
また、周方向主溝30によって画成されるリブ20のうち、タイヤ幅方向における内側に位置する2本の周方向主溝30同士の間に位置し、タイヤ赤道面CL上に位置するリブ20は、センターリブ21になっている。センターリブ21は、タイヤ幅方向における中心が、タイヤ赤道面CLとほぼ一致する位置となって配置されている。また、センターリブ21のタイヤ幅方向外側に位置し、周方向主溝30を介してセンターリブ21に隣り合うリブ20はセカンドリブ22になっている。また、セカンドリブ22のタイヤ幅方向外側に位置し、周方向主溝30を介してセカンドリブ22に隣り合うリブ20はショルダーリブ23になっている。
また、タイヤ幅方向における両側の2箇所に配置されるショルダーリブ23のうち、一方のショルダーリブ23には、溝幅が周方向主溝30の溝幅よりも狭く、溝深さが周方向主溝30の溝深さよりも浅い深さでタイヤ周方向に延びる溝である周方向細溝28が形成されている。
なお、この場合における周方向主溝30は、溝幅が7mm以上12mm以下の範囲内となり、溝深さが7mm以上9mm以下の範囲内となってタイヤ周方向に延びる溝になっている。また、周方向細溝28は、溝幅が1mm以上3mm以下の範囲内となり、溝深さが5mm以上10mm以下の範囲内となってタイヤ周方向に延びる溝になっている。また、周方向主溝30及び周方向細溝28は、厳密にタイヤ周方向に延びていなくてもよく、タイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に湾曲したり屈曲したりしていてもよい。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内方側には、サイドウォール部8が配設されている。つまり、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内方側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外方にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、複数のビードワイヤを束ねてなる環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外方側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2のタイヤ径方向内方には、複数のベルト層14が設けられている。ベルト層14は、複数の交差ベルト141、142とベルトカバー143とが積層されることによって設けられている。このうち、交差ベルト141、142は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20°以上55°以下のベルト角度を有して構成される。また、複数の交差ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義されるベルトコードが互いに異なっており、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。また、ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチール、或いは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0°以上10°以下のベルト角度を有する。このベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外方側に積層されて配置される。
このベルト層14のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス13が連続して設けられている。このカーカス13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス13は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外方に巻き返されている。また、カーカス13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されており、タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角であるカーカス角度が、絶対値で80°以上95°以下となって形成されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス13の巻き返し部のタイヤ径方向内方側やタイヤ幅方向外方側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス13の内方側、或いは、当該カーカス13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ15がカーカス13に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。トレッド部2には、周方向主溝30の他に、ラグ溝31やサイプ38が形成されている。トレッド部2には、これらの複数の溝により、表面にトレッドパターンが形成されている。本実施形態では、ラグ溝31としては、センターリブ21に形成されるセンターラグ溝32と、セカンドリブ22に形成されるセカンドラグ溝33と、ショルダーリブ23に形成されるショルダーラグ溝34とが設けられている。
このうち、センターラグ溝32は、一端が周方向主溝30に接続されて周方向主溝30に開口し、他端がセンターリブ21内で終端する、いわゆるセミクローズドタイプのラグ溝31になっている。センターラグ溝32は、センターリブ21を画成する2本の周方向主溝30のうち、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから見て周方向細溝28が位置する側の反対側に位置する周方向主溝30に接続されている。このように周方向主溝30に接続されるセンターラグ溝32は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に延びて形成されており、周方向主溝30に接続される側の端部からセンターリブ21内で終端する側の端部に向かうに従って、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が大きくなる方向に湾曲している。また、センターラグ溝32は、タイヤ赤道面CLを跨いで形成されており、即ち、センターラグ溝32におけるセンターリブ21内で終端する側の端部が、タイヤ赤道面CLから見て、センターラグ溝32における周方向主溝30に接続される側の端部の反対側に位置している。
また、2箇所のセカンドリブ22に形成されるセカンドラグ溝33のうち、タイヤ赤道面CLから見て周方向細溝28が位置する側に配置されるセカンドリブ22に形成されるセカンドラグ溝33は、第1セカンドラグ溝33aとなっている。第1セカンドラグ溝33aは、一端が周方向主溝30に接続されて周方向主溝30に開口し、他端がセカンドリブ22内で終端するセミクローズドタイプのラグ溝31になっている。この第1セカンドラグ溝33aは、第1セカンドラグ溝33aが設けられるセカンドリブ22を区画する2本の周方向主溝30のうち、タイヤ幅方向内側の周方向主溝30に接続され、当該周方向主溝30から、タイヤ幅方向外側に延びつつタイヤ周方向に向かう方向に傾斜している。この場合における第1セカンドラグ溝33aの、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向は、センターラグ溝32のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向の反対方向になっている。
また、2箇所のセカンドリブ22に形成されるセカンドラグ溝33のうち、他方のセカンドリブ22に形成されるセカンドラグ溝33である第2セカンドラグ溝33bとなっている。第2セカンドラグ溝33bは、一端が周方向主溝30に接続されて周方向主溝30に開口し、他端はセカンドリブ22内で終端しており、セカンドリブ22内で終端している側の端部には、サイプ38が接続されている。この第2セカンドラグ溝33bは、第2セカンドラグ溝33bが設けられるセカンドリブ22を区画する2本の周方向主溝30のうち、タイヤ幅方向外側の周方向主溝30に接続され、当該周方向主溝30から、タイヤ幅方向内側に延びつつタイヤ周方向に向かう方向に傾斜している。この場合における第2セカンドラグ溝33bの、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向は、センターラグ溝32のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になっている。また、第2セカンドラグ溝33bは、周方向主溝30に接続される端部側よりも、セカンドリブ22内で終端する端部側の方が、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が大きくなる方向に、両端部の間で屈曲している。
この第2セカンドラグ溝33bに接続されるサイプ38は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に延びており、第2セカンドラグ溝33bの傾斜方向と同じ方向に、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。また、当該サイプ38における第2セカンドラグ溝33bに接続される側の端部の反対側の端部は、セカンドリブ22内で終端している。
また、2箇所のショルダーリブ23のうち、周方向細溝28が形成される側のショルダーリブ23には、ショルダーラグ溝34として第1ショルダーラグ溝34aと第2ショルダーラグ溝34bとが設けられている。このうち、第1ショルダーラグ溝34aは、周方向細溝28よりもタイヤ幅方向における内側に配設されており、一端が、周方向主溝30に接続されて周方向主溝30に開口し、他端がセカンドリブ22内で終端するセミクローズドタイプのラグ溝31になっている。この第1ショルダーラグ溝34aは、周方向細溝28が形成されるショルダーリブ23を画成する周方向主溝30に接続され、当該周方向主溝30から、タイヤ幅方向外側に延びつつタイヤ周方向に向かう方向に傾斜している。この場合における第1ショルダーラグ溝34aの、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向は、第1セカンドラグ溝33aのタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向の反対方向になっている。
また、第2ショルダーラグ溝34bは、タイヤ幅方向における外側の端部がショルダーリブ23のタイヤ幅方向外側の端部まで延び、タイヤ幅方向における内側の端部は、周方向細溝28よりもタイヤ幅方向外側の位置で、ショルダーリブ23内で終端している。
また、2箇所のショルダーリブ23のうち他方のショルダーリブ23、つまり、周方向細溝28が形成されていない側のショルダーリブ23には、ショルダーラグ溝34として第3ショルダーラグ溝34cが設けられている。第3ショルダーラグ溝34cは、タイヤ幅方向における外側の端部が、当該ショルダーリブ23のタイヤ幅方向外側の端部まで延び、タイヤ幅方向内側の端部は、ショルダーリブ23内で終端している。また、第3ショルダーラグ溝34cにおけるショルダーリブ23内で終端している側の端部には、サイプ38が接続されている。このサイプ38の他端側は、ショルダーリブ23を画成する周方向主溝30に接続されている。
複数のラグ溝31は、これらのように直線状に形成されたり、湾曲したり屈曲したりして形成されることにより、それぞれタイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に延びている。なお、ラグ溝31は、タイヤ周方向に延びていなくてもよく、少なくともタイヤ幅方向に延びていればよい。また、ラグ溝31は、溝幅が1mm以上3mm以下の範囲内となり、溝深さが3mm以上10mm以下の範囲内となって形成されている。
[ベント跡]
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、スリットベントS(図13参照)を有する、後述するタイヤ加硫成形金型100(図14参照)によって製造する。スリットベントSは、タイヤ加硫成形金型100におけるトレッド成形面130(図13参照)に設けられるため、空気入りタイヤ1の接地面3には、トレッド成形面130のスリットベントSが設けられている位置に該当する位置に、スリットベントSの跡であるベント跡50が形成される。
図3は、図2のB部詳細図である。スリットベントSの跡として接地面3に現れるベント跡50は、タイヤ幅方向に並ぶ全てのリブ20の接地面3に現れる。各リブ20のベント跡50は、それぞれのリブ20を画成する周方向主溝30の近傍に、周方向主溝30に沿ってタイヤ周方向における全周に亘って延在して現れ、これにより、ベント跡50は、各リブ20の接地面3に形成されている。詳しくは、ベント跡50は、各リブ20を画成する周方向主溝30のうち少なくとも一方の周方向主溝30の近傍に形成されており、リブ20の接地面3における、周方向主溝30からの距離D1が1.0mm≦D1≦3.0mmの範囲内となる位置に形成されている。ベント跡50は、後述するタイヤ加硫成形工程にて、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの開口部により形成され、微細、且つ、線状の凸部として接地面3に備えられている。ベント跡50は、例えば、0.005mm以上0.008mm以下の幅で接地面3に現れる。
また、ベント跡50は、隣り合うベント跡50同士のタイヤ幅方向における間隔が5mm以上となって配設されており、複数のリブ20のうち、ベント跡50同士の間隔としてこの間隔を維持できるリブ20には、周方向主溝30の近傍以外の位置にもベント跡50が形成される。具体的には、ショルダーリブ23は、タイヤ幅方向における幅がセンターリブ21やセカンドリブ22よりも広いため、ショルダーリブ23には、周方向主溝30の近傍以外の位置にもベント跡50が形成される(図2参照)。即ち、ショルダーリブ23には、周方向主溝30の近傍の他に、周方向主溝30から離れた位置にも、ベント跡50同士の間隔が5mm以上となる位置にベント跡50が形成される。
[基準輪郭線]
周方向主溝30によって画成される各リブ20は、接地面3がトレッド部2の基準輪郭線PL(図1参照)よりもタイヤ径方向外側に突出して形成されている。つまり、センターリブ21とセカンドリブ22とショルダーリブ23とは、それぞれ接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出して形成されている。また、基準輪郭線PLは、複数のリブ20のそれぞれに対して規定される。即ち、基準輪郭線PLは、トレッド部2の外表面全体の基準となる輪郭線であるため、基準輪郭線PLは、センターリブ21とセカンドリブ22とショルダーリブ23とのそれぞれに対して規定される。
次に、基準輪郭線PLについて説明する。図4は、基準輪郭線の説明図であり、図1に示すセンターリブの詳細図である。基準輪郭線PLについて、まずセンターリブ21やセカンドリブ22のように、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって画成されるリブ20に対して規定される基準輪郭線PLについて説明する。タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって画成されるリブ20の場合、基準輪郭線PLは、図4に示すように、子午面断面において、当該リブ20のタイヤ幅方向における両側に隣接する2本の周方向主溝30における4つの開口端Pのうちの少なくとも3つを通り、円弧の中心が接地面3のタイヤ径方向内側に位置して最大曲率半径で描ける円弧をいう。
図5は、基準輪郭線の説明図であり、図1に示すショルダーリブの詳細図である。次に、トレッド部2のタイヤ幅方向における端部付近に位置し、タイヤ幅方向における一方のみが周方向主溝30によって画成されるリブ20であるショルダーリブ23に対して規定される基準輪郭線PLについて説明する。タイヤ幅方向における端部付近に位置するショルダーリブ23では、基準輪郭線PLは、子午面断面において、ショルダーリブ23上に位置する接地端TをP1とし、ショルダーリブ23に隣接する周方向主溝30のタイヤ幅方向外側寄りの開口端をP2とし、当該周方向主溝30のタイヤ幅方向内側寄りの開口端をP3としたとき、P1,P2,P3を通り、円弧の中心が接地面3のタイヤ径方向内側に位置する曲率半径で描ける円弧をいう。
なお、この場合における接地端Tは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して、規定内圧、例えば、規定荷重に対応した空気圧の内圧条件、及び規定荷重の条件で、平板上に垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面において、タイヤ幅方向における最も外側に位置する部分に該当する接地面3上の位置をいう。即ち、接地端Tは、規定内圧及び規定荷重での接地面における接地幅最大位置になっている。また、上記基準輪郭線PLは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して、規定内圧の内圧条件で、荷重を加えない無負荷状態のときの基準輪郭線PLである。
この場合における規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
図6は、基準輪郭線の説明図であり、リブに面取りが施される場合における基準輪郭線の説明図である。なお、周方向主溝30の内壁面とリブ20の接地面3で形成される角部に面取りCが施されている場合、面取面と接地面3との交点を周方向主溝30の開口端として、上記のように基準輪郭線PLを規定する。図6では、周方向主溝30の開口端に面取Cが施されている場合の一例として、タイヤ幅方向における両側が周方向主溝30によって画成されるリブ20を示しているが、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダーリブ23であっても同様に、面取面と接地面3との交点を周方向主溝30の開口端として、上記のように基準輪郭線PLを規定する。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、4本の周方向主溝30により区画形成される5本のリブ20は、それぞれ接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出しており、タイヤ幅方向における両端部寄りに位置するリブ20よりも、タイヤ赤道面CL寄りに位置するリブ20の方が突出量Gが大きくなっている。
なお、複数のリブ20は、全てのリブ20の接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出していなくてもよい。複数のリブ20は、一部のリブ20のみ、接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出し、他の一部のリブ20は、接地面3が基準輪郭線PLに沿った形状で形成されていてもよい。
図7は、図3のD−D断面図である。センターリブ21に形成されるセンターラグ溝32は、センターリブ21における、接地面3が基準輪郭線PLよりも最もタイヤ径方向外側に突出している部分である最大突出部Rに交差して配置されている。即ち、センターラグ溝32は、センターリブ21の接地面3において基準輪郭線PLからの突出量Gが最も大きくなる最大突出部Rを通って配置されている。センターリブ21を含めたリブ20は、子午面断面の形状が変化することなくタイヤ周方向に延びて形成されているので、最大突出部Rも、タイヤ幅方向における位置が変化することなくタイヤ周方向に延びている。
なお、本実施形態では、センターリブ21の最大突出部Rのタイヤ幅方向における位置は、タイヤ赤道面CLの位置とほぼ同じ位置になっており、また、最大突出部Rは、センターリブ21の幅方向におけるほぼ中央に位置している。即ち、最大突出部Rから、センターリブ21の幅方向における一方の端部までの幅Waと、他方の端部までの幅Wbとは、ほぼ同じ大きさになっている。また、センターリブ21の最大突出部Rは、タイヤ幅方向における位置が、センターリブ21に形成されるベント跡50のタイヤ幅方向における位置とは異なる位置になっている。換言すると、センターリブ21に形成されるベント跡50は、タイヤ幅方向における位置が、センターリブ21の最大突出部Rのタイヤ幅方向における位置とは異なる形成されている。
[スピュー]
図8は、図3のE部詳細図である。センターラグ溝32は、センターラグ溝32が有する一対の溝壁35に両端が接続されるスピュー40を有しており、スピュー40は、外径dが0.3mm≦d≦2.0mmの範囲内となる、略円柱状の形状で形成されている。即ち、スピュー40は、円柱の軸方向における両側の端部41が、それぞれセンターラグ溝32の溝壁35に接続されている。これにより、スピュー40は、溝壁35と一体に形成されている。また、スピュー40は、接地面3上におけるセンターリブ21の最大突出部Rからのタイヤ幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、スピュー40の長さ方向における中心である中央部42が位置して配置されている。
また、スピュー40は、スピュー40の長手方向がセンターラグ溝32の溝壁35に対して略直交しており、接地面3の平面視におけるセンターラグ溝32の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θが、80°≦θ≦100°の範囲内となって形成されている。つまり、スピュー40は、センターリブ21の最大突出部Rからタイヤ幅方向に10mm以下の範囲内に中央部42が位置し、センターラグ溝32の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θが、90°±10°の範囲内となって、センターラグ溝32の溝壁35同士の間に形成されている。なお、センターラグ溝32の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θは、好ましくは85°≦θ≦95°の範囲内であることがより好ましい。
図9は、図8のF−F断面図である。また、スピュー40は、接地面3を基準とするセンターラグ溝32の深さ方向におけるスピュー40の配置深さHが、0.5mm≦H≦3.0mmの範囲内に配置されている。さらに、スピュー40は、接地面3を基準とするセンターラグ溝32の深さ方向におけるスピュー40の配置深さHと、センターラグ溝32の深さHgとの関係が、0.1≦(H/Hg)≦0.6の範囲内となる位置に配置されている。なお、この場合におけるスピュー40の配置深さHは、接地面3から、スピュー40における溝開口部側の頂面までの距離として測定される。さらに、スピュー40は、外径dとセンターラグ溝32の溝幅Wgとの関係が、0.25≦(d/Wg)≦1.5の範囲内となって形成されている。
また、ラグ溝31内に形成されるスピュー40は、センターラグ溝32におけるセンターリブ21の接地面3の最大突出部Rからの距離が10mm以下となる部分以外にも形成されており、スピュー40は、接地面3に形成されるベント跡50とラグ溝31との交差位置の近傍にも形成されている(図2、図3参照)。ベント跡50とラグ溝31との交差位置の近傍に形成されるスピュー40は、ベント跡50とラグ溝31との交差位置から、スピュー40が形成されるラグ溝31に沿ったペリフェリ長さが10mm以下となる範囲内に形成されるのが好ましい。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センターラグ溝32がセンターリブ21の接地面3の最大突出部Rに交差し、センターラグ溝32には、最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内にスピュー40が形成されているが、このように最大突出部Rから10mm以下の範囲内にスピュー40が形成されるラグ溝31は、センターラグ溝32以外のラグ溝31であってもよい。接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出するリブ20に、最大突出部Rに交差するラグ溝31が形成されている場合には、ラグ溝31されるリブ20に関わらず、ラグ溝31における最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内に、ラグ溝31の溝壁35に両端が接続されるスピュー40を配置してもよい。
また、最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内にスピュー40を形成するラグ溝31は、最大突出部Rに交差していなくてもよい。図10は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、最大突出部に交差しないラグ溝にスピューを設ける場合の説明図である。ラグ溝31が最大突出部Rに交差しない場合でも、最大突出部Rの近傍にラグ溝31が位置することにより、最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内でラグ溝31内にスピュー40を配置することができれば、当該範囲内にスピュー40を配置してもよい。最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内にスピュー40を配置することができるラグ溝31であれば、最大突出部Rとラグ溝31との相対的な関係にはとらわれない。また、スピュー40は、円柱以外の形状で形成されていてもよく、例えば、角柱状の形状で形成されていたり、楕円柱状の形状で形成されていたりしてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、最大突出部Rの近傍に配置されるスピュー40は、ラグ溝31の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θが、80°≦θ≦100°の範囲内となって形成されているが、スピュー40は、これ以外の角度で形成されていてもよい。図11は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、スピューが最大突出部に沿った向きで形成される場合の説明図である。ラグ溝31における、最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内に配置されるスピュー40は、図11に示すように、スピュー40の長さ方向が最大突出部Rに沿う向きで形成されていてもよい。つまり、スピュー40は、タイヤ周方向に延びる向きで形成されていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、リブ20の最大突出部Rは、タイヤ幅方向における位置がリブ20のタイヤ幅方向におけるほぼ中央に位置しているが、最大突出部Rは、リブ20のタイヤ幅方向における中央以外に位置していてもよい。図12は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、最大突出部がリブの中心からずれる場合の説明図である。リブ20の最大突出部Rは、図12に示すように、最大突出部Rからリブ20の幅方向における一方の端部までの幅Waと、他方の端部までの幅Wbとが異なる大きさとなる位置に配置されていてもよい。最大突出部Rからのタイヤ幅方向における位置が、リブ20の幅方向における中央以外に位置する場合でも、ラグ溝31における、最大突出部Rからの距離が10mm以下の範囲内にスピュー40が配置されていればよい。
[タイヤ加硫成形金型]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造に用いるタイヤ加硫成形金型100について説明する。図13は、実施形態に係る空気入りタイヤを製造するタイヤ加硫成形金型の説明図である。図14は、図13に示すタイヤ加硫成形金型を構成する複数のセクターの連結構造の説明図である。タイヤ加硫成形金型100は、図14に示すように、分割型のタイヤ加硫成形金型100である、いわゆるセクターモールドとして構成されており、複数のセクター101を相互に連結して成る環状構造を有している。なお、図14では、タイヤ加硫成形金型100が8つのセクター101から成る8分割構造の形態を図示しているが、タイヤ加硫成形金型100の分割数は、これに限定されない。
1つのセクター101は、図13に示すように、製品となる空気入りタイヤ1のトレッドプロファイルに対応する凹凸部102をもつ複数のピース103と、これらのピース103を相互に隣接させて装着するバックブロック104とを備える。なお、図13はセクター101の一例であり、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッドパターンとは異なるトレッド成形面130を備えている。
1つのピース103は、一定のピッチまたは任意のピッチで分割されたトレッドパターンの一部分に対応し、このトレッドパターンの部分を形成するための凹凸部102をトレッド成形面130に有している。また、複数のピース103が集合して、1つのセクター101のトレッド成形面130が構成される。例えば、図13に示すセクター101では、1つのセクター101のトレッド成形面130が、タイヤ軸方向に2分割され、且つ、タイヤ周方向に4分割されて、8つのピース103に分割されている。
また、各ピース103は、第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとからなり、これらの第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとを、ダイカスト鋳造により複数回のショットに分けて積層して製造される。
具体的には、各ピース103は、まず第1ショット鋳造工程にて、第1ピースブロック103a用の分割金型に、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料を鋳込んで、第1ピースブロック103aを鋳造する。この第1ピースブロック103aには、1つのピース103に割り当てられたトレッドパターンの部分の一部と、第2ピースブロック103bを積層するための領域とが形成される。また、必要に応じて、鋳造後の第1ピースブロック103aに機械加工が行われる。次に、第2ショット鋳造工程にて、第2ピースブロック103b用の分割金型に第1ピースブロック103aを配置し、第1ピースブロック103aと同種の金属材料を鋳込んで、第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとの積層体を鋳造する。このとき、第2ピースブロック103bには、トレッドパターンの部分の残りが形成される。これにより、1つのピース103が鋳造される。また、必要に応じて、鋳造後のピース103に機械加工が行われる。
バックブロック104は、U字断面形状の円弧状部材からなり、複数のピース103をU字断面形状の凹部に所定の配列で装着して保持する。これにより、1つのセクター101が構成される。
タイヤ加硫成形金型100は、これらのように構成されるセクター101が複数用いられ、複数のセクター101が環状に連結されることにより構成される(図14参照)。タイヤ加硫成形金型100は、このように複数のセクター101が環状に連結されることにより、各セクター101のトレッド成形面130が集合し、トレッドパターン全体のトレッド成形面130が構成される。
[タイヤ製造方法]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。図15は、図14に示すタイヤ加硫成形金型を用いたタイヤ製造方法を示す説明図である。図15は、図14に示すタイヤ加硫成形金型100を備える金型支持装置105の軸方向断面図を示している。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、以下の製造工程により製造される。
まず、ビードコア11を構成するビードワイヤ、カーカス13を構成するカーカスプライ、ベルト層14を構成するベルトプライ141〜143、トレッド部2を構成するゴム、サイドウォール部8を構成するゴム、リムクッションゴム17などの各部材(図1参照)が成形機にかけられて、グリーンタイヤWが成形される。次に、このグリーンタイヤWが、金型支持装置105に装着される(図15参照)。
図15において、金型支持装置105は、支持プレート106と、外部リング107と、セグメント109と、上部プレート110及びベースプレート112と、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113と、タイヤ加硫成形金型100とを備える。支持プレート106は、円盤形状を有し、平面を水平にして配置される。外部リング107は、径方向内側のテーパ面108を有する環状構造体であり、支持プレート106の外周縁下部に吊り下げられて設置される。セグメント109は、タイヤ加硫成形金型100の各セクター101に対応する分割可能な環状構造体であり、外部リング107に挿入されて外部リング107のテーパ面108に対して軸方向に摺動可能に配置される。上部プレート110は、外部リング107の内側で、且つ、セグメント109と支持プレート106との間にて、軸方向に昇降可能に設置される。ベースプレート112は、支持プレート106の下方で、且つ、軸方向における支持プレート106の反対側の位置に配置される。
上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における両側面の形状であるサイドプロファイルの成形面を有する。また、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113とは、上型サイドモールド111が上部プレート110の下面側に取り付けられ、下型サイドモールド113がベースプレート112の上面側に取り付けられると共に、それぞれの成形面を相互に対向させて配置される。タイヤ加硫成形金型100は、上記のように、トレッドプロファイルを成形可能なトレッド成形面130をもつ分割可能な環状構造(図14参照)を有する。また、タイヤ加硫成形金型100は、各セクター101が、対応するセグメント109の内周面に取り付けられ、トレッド成形面130を、上型サイドモールド111や下型サイドモールド113の成形面が位置する側に向けて配置される。
次に、グリーンタイヤWが、タイヤ加硫成形金型100の成形面と上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113の成形面との間に装着される。このとき、支持プレート106が軸方向下方に移動することにより、外部リング107が支持プレート106と共に軸方向下方に移動し、外部リング107のテーパ面108がセグメント109を径方向内側に押し出す。すると、タイヤ加硫成形金型100が縮径して、タイヤ加硫成形金型100の各セクター101のトレッド成形面130が環状に接続し、また、タイヤ加硫成形金型100の成形面全体と下型サイドモールド113の成形面とが接続する。また、上部プレート110が軸方向下方に移動することにより、上型サイドモールド111が下降して、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113との間隔が狭まる。すると、タイヤ加硫成形金型100の成形面全体と上型サイドモールド111の成形面とが接続する。これにより、グリーンタイヤWが、タイヤ加硫成形金型100の成形面、上型サイドモールド111の成形面及び下型サイドモールド113の成形面に囲まれて保持される。
また、グリーンタイヤWをタイヤ加硫成形金型100の装着する際には、グリーンタイヤWの内側にはブラダー200を入り込ませ、グリーンタイヤWの内側からブラダー200を装着する。ブラダー200は、ゴム風船状に形成されており、内側から高温・高圧の蒸気を注入することによって膨張し、グリーンタイヤWの内側から、外側方向への圧力を付与することが可能になっている。即ち、ブラダー200は、グリーンタイヤWの内側から、グリーンタイヤWをタイヤ加硫成形金型100や上型サイドモールド111、下型サイドモールド113に押し付けることが可能になっている。
次に、加硫前のタイヤであるグリーンタイヤWが加硫成形される。具体的には、タイヤ加硫成形金型100が加熱され、ブラダー200を含む加圧装置により、グリーンタイヤWが径方向外方に拡張されてタイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130に押圧される。そして、グリーンタイヤWが加熱されることにより、トレッド部2のゴム分子と硫黄分子とが結合して加硫が行われる。すると、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130がグリーンタイヤWに転写されて、トレッド部2にトレッドパターンが成形される。
その後に、加硫成形後のタイヤが、製品となる空気入りタイヤ1である製品タイヤとして取得される。このとき、支持プレート106及び上部プレート110が軸方向上方に移動することにより、タイヤ加硫成形金型100、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113が離間して、金型支持装置105が開く。その後に、加硫成形後のタイヤが金型支持装置105から取り出される。
[スリットベント及び横穴ベント]
図16、図17は、タイヤ加硫成形金型のスリットベント及び横穴ベントを示す説明図である。これらの図において、図16は、図13に記載したセクター101の径方向断面図を示し、図17は、図16に記載したセクター101の拡大図を示している。
図16、図17に示すように、タイヤ加硫成形金型100は、複数のスリットベントSをトレッド成形面130に備える。スリットベントSは、0.005mm以上0.008mm以下の開口幅Wsを有する、微細な線状の排気口であり、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130に開口する。また、スリットベントSは、ピース103の内部に形成された排気孔114に連通する。
タイヤ加硫成形時には、グリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間に発生した残留ガスが、スリットベントSを介して排気孔114に吸引されて金型の外部に排出される。これにより、残留ガスに起因する製品タイヤの成形不良が抑制される。また、このとき、複数のスリットベントSのベント跡50(図2参照)が、製品タイヤの接地面3に形成される。
かかる微細なスリットベントSは、金属材料の凝固収縮により形成される。即ち、タイヤ加硫成形金型100のピース103は、第1ピースブロック103a及び第2ピースブロック103bから成る積層構造を備える(図13参照)。また、ピース103は、上述した第1ピースブロック103aを成形する第1ショット鋳造工程と、第1ピースブロック103aに第2ピースブロック103bを成形する第2ショット鋳造工程とが順次行われて、ピース103の積層構造が形成される。そして、第2ショット鋳造工程における第2ピースブロック103bの金属材料の凝固収縮を利用して、スリットベントSの微細な開口幅Wsが形成される。なお、これらのようにして形成されるスリットベントSの形成工程は、特許第3733271号公報などに詳しい。
また、本実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100のセクター101では、複数のスリットベントSが、セクター101を周方向にそれぞれ貫通し、また、セクター101の軸方向に所定間隔をあけて配置される(図13参照)。また、複数のセクター101を環状に連結して成るタイヤ加硫成形金型100では、各セクター101のスリットベントSが相互に連通して、タイヤ加硫成形金型100の全周に渡って延在する。これにより、複数のスリットベントSが、トレッド成形面130の全域に分散して配置される。
また、ピース103のトレッド成形面130には、空気入りタイヤ1の周方向主溝30を形成する周方向主溝成形骨103cが複数形成されている。周方向主溝成形骨103cは、各セクター101のピース103に設けられると共に、複数のセクター101を環状に連結することにより、タイヤ加硫成形金型100の全周に渡って延在している。
また、トレッド成形面130は、空気入りタイヤ1の接地面3を成形する接地面成形面131を有している。接地面成形面131は、製品となる空気入りタイヤ1の接地面3を成形することができる曲面状に形成されており、即ち、目的とする接地面3の形状で形成されている。接地面成形面131は、周方向主溝成形骨103cと同様に描く各セクター101のピース103に形成され、複数のセクター101を環状に連結することにより、ピース103間で連続する面として形成される。
さらに、トレッド成形面130は、隣り合う周方向主溝成形骨103c同士の間や、複数の周方向主溝成形骨103cのうち周方向主溝成形骨103cが並んでいる方向において最も外側に位置する周方向主溝成形骨103cのさらに外側に、空気入りタイヤ1のリブ20を成形するリブ成形部132を有している。
図18は、リブ成形部の詳細図である。リブ成形部132は、接地面成形面131が、接地面成形面131の基準となる基準輪郭線PLmよりもタイヤ加硫成形金型100の径方向における外側、即ち、タイヤ加硫成形金型100によって成形する空気入りタイヤ1のタイヤ径方向外側に突出した形状で形成されている。つまり、リブ成形部132は、接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出する形状になるように、空気入りタイヤ1のリブ20を成形することができる形状で形成されている。例えば、周方向主溝成形骨103cに挟まれたリブ成形部132では、基準輪郭線PLmは、空気入りタイヤ1の接地面3の基準輪郭線PLと同様に、2つの周方向主溝成形骨103cにおける、接地面成形面131との境界部分である4つの境界部Pmのうちの少なくとも3つを通り、円弧の中心が周方向主溝成形骨103cの突出方向側に位置して最大曲率半径で描ける円弧をいう。
複数の周方向主溝成形骨103cのうち、最も外側に位置する周方向主溝成形骨103cの外側に位置するリブ成形部132においても、ショルダーリブ23に対して規定される基準輪郭線PLと同様に基準輪郭線PLmが規定される。リブ成形部132の接地面成形面131は、これらの基準輪郭線PLmよりもタイヤ加硫成形金型100の径方向における外側に突出する形状で形成されている。
図19は、図17のJ−J矢視図である。リブ成形部132には、空気入りタイヤ1のラグ溝31を成形するラグ溝成形骨120が配置されている。このラグ溝成形骨120は、周方向主溝成形骨103cと共に、空気入りタイヤ1のトレッドパターンを形成できる形状で形成され、配置されている。このように、ラグ溝成形骨120は、空気入りタイヤ1のトレッドパターンを形成できるように配設されているため、各ラグ溝成形骨120は、空気入りタイヤ1における対応するラグ溝31と同じ形態で配設されている。例えば、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1におけるセンターラグ溝32を成形するラグ溝成形骨120は、リブ成形部132における、接地面成形面131が基準輪郭線PLmよりも最もタイヤ加硫成形金型100の径方向における外側に突出している部分である最大突出部Rmに交差して配置されている。
センターラグ溝32を成形するラグ溝成形骨120は、当該ラグ溝成形骨120を貫通する横穴ベント125を有している。この横穴ベント125は、接地面成形面131上における最大突出部Rmからのタイヤ加硫成形金型100の幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、横穴ベント125の長さ方向における中心である中央部127が位置して形成されている。
さらに、各ラグ溝成形骨120には、スリットベントSと交差する位置の近傍にも横穴ベント125が形成されている。ラグ溝成形骨120とスリットベントSとの交差位置の近傍に形成される横穴ベント125は、ラグ溝成形骨120とスリットベントSとの交差位置から、横穴ベント125が形成されるラグ溝成形骨120に沿ったペリフェリ長さが10mm以下となる範囲内に形成されるのが好ましい。
上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、これらのように構成されるタイヤ加硫成形金型100を用いてタイヤ加硫成形工程を行うことにより成形する。タイヤ加硫成形時には、グリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間に発生した残留ガスが、スリットベントSを介して排気孔114に吸引されて金型の外部に排出される。しかし、スリットベントSは、微細な排気口であるため、ベントホールと比較して詰まりが発生し易くなっており、タイヤ加硫成形の回数を重ねるに従って、ゴムやオイル等の汚れによってスリットベントSは詰まりが発生し易くなっている。スリットベントSに詰まりが発生した場合、グリーンタイヤWとタイヤ加硫成形金型100との間の抜け難くなるため、製品となる空気入りタイヤ1に外観不良が生じる可能性がある。
特に、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向側に突出しており、タイヤ加硫成形金型100も、接地面成形面131が基準輪郭線PLmよりも突出している。このため、最大突出部Rm付近では、グリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間の圧力が、他の部分と比較して低くなり、残留ガスが、より抜け難くなる。
図20は、タイヤ加硫成形時における圧力の作用の仕方についての説明図である。タイヤ加硫成形時にはグリーンタイヤWの内側からブラダー200によって外側方向への圧力を付与し、グリーンタイヤWの外表面をタイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130に押し付ける。その際に、ブラダー200からグリーンタイヤWに付与される圧力は、ブラダー200と外表面との間に介在するゴム等の部材が多い部分ほど力が分散されるため、圧力が低くなる。例えば、リブ20の接地面3と、周方向主溝30の溝底部分とでは、タイヤ径方向におけるトレッド部2の厚さが、周方向主溝30の溝底部分よりもリブ20の接地面3の位置の方が厚くなる。このため、グリーンタイヤWの内側から、ブラダー200によってタイヤ径方向における外側方向への圧力が付与された際に、リブ20の接地面3の位置では、ブラダー200から当該接地面3の位置に伝わるまでの間に周方向主溝30の溝底部分と比較して圧力が分散され易くなり、周方向主溝30の溝底部分と圧力が低くなり易くなる。
特に、リブ20の接地面3における最大突出部Rの位置では、リブ20における他の位置と比較してトレッド部2の厚さがさらに厚くなるため、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130に押し付けられる際の圧力がさらに低くなる。タイヤ加硫成形工程では、グリーンタイヤWに対して高い圧力を付与することにより、グリーンタイヤWのゴムをトレッド成形面130に沿って流れさせ、グリーンタイヤWの外表面の形状がトレッド成形面130に沿った形状になるようにするが、リブ20の接地面3の最大突出部Rの位置は他の位置と比較して圧力が低いため、他の位置と比較してタイヤ加硫成形時にゴムが流れ難くなる。このため、例えば、タイヤ加硫成形の回数を重ねることによりスリットベントSの一部に詰まりが発生し、その付近のゴムや残留ガスの流れが悪くなった場合、残留ガスは、他の位置と比較して圧力が低い、最大突出部R付近に流れ易くなる。この場合、タイヤ加硫成形後の空気入りタイヤ1における、最大突出部R上の当該位置付近の形状が、トレッド成形面130の形状に沿った形状にならない可能性があり、外観不良が発生する可能性がある。
これに対し、本実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100では、センターラグ溝32を成形するリブ成形部132に、最大突出部Rmと交差するラグ溝成形骨120が配置され、ラグ溝成形骨120には、最大突出部Rmからの距離が10mm以下となる範囲内に、長さ方向における中央部127が位置する横穴ベント125が形成されている。これにより、ラグ溝成形骨120の幅方向における両側の領域を連通させることができ、タイヤ加硫成形時に、ラグ溝成形骨120の両側の領域同士の間で横穴ベント125を介して残留ガスやゴムを流すことができる。センターラグ溝32には、このように横穴ベント125を流れるゴムにより、スピュー40が形成される。
タイヤ加硫成形時には、ラグ溝成形骨120に形成される横穴ベント125を介して、ラグ溝成形骨120の両側の領域同士の間で残留ガスやゴムを流すことができるため、スリットベントSの一部に詰まりが発生して残留ガスが排出され難くなった場合でも、詰まりが発生した部分の周囲の領域では、横穴ベント125によって残留ガスを他の領域に流すことができる。つまり、スリットベントSにおける詰まりが発生した部分の近傍の領域では、残留ガスが溜まり易くなり、溜まった残留ガスは、圧力が低い最大突出部Rmの方向に流れ易くなる。その際に、残留ガスが一箇所に集中すると、この部分にゴムが流れ難くなるため、外観不良が発生する。
特に、ラグ溝成形骨120が最大突出部Rmに交差する場合は、残留ガスはラグ溝成形骨120に遮られることにより、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域同士の間では流れ難くなり、残留ガスが一箇所に集中し易くなる。これに対し、本実施形態では、ラグ溝成形骨120に横穴ベント125が形成されているため、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域同士の間では、横穴ベント125を介して残留ガスを流すことができる。従って、残留ガスが一箇所に集中して溜まることに起因してこの部分にゴムが流れ難くなり、タイヤ加硫成形後の空気入りタイヤ1の接地面3がトレッド成形面130の形状に沿った形状にならなくなることを抑制することができる。この結果、外観不良の発生を抑制することができる。
また、横穴ベント125が、最大突出部Rmから10mmの範囲内に形成されているため、タイヤ加硫成形時に最大突出部Rm付近でゴムが流れ難くなることを、より確実に抑制することができる。つまり、横穴ベント125が、最大突出部Rmからの距離が10mmを超える位置に形成されている場合、タイヤ加硫成形時の圧力が他の位置と比較して低くなる最大突出部Rm付近に残留ガスが流れた際に、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域にこの残留ガスを流すことが困難になる。この場合、残留ガスが溜まった領域では、タイヤ加硫成形時にゴムが流れ難くなる。これに対し、横穴ベント125を、最大突出部Rmから10mmの範囲内に形成した場合には、最大突出部Rm付近に残留ガスが流れた際に、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域同士の間で、横穴ベント125によって残留ガスを流すことができる。これにより、残留ガスが一部の領域に溜まることを抑制することができ、タイヤ加硫成形時における圧力が他の位置より低くなる最大突出部Rm付近のゴムが流れを確保することができる。この結果、外観不良の発生を抑制することができる。
また、横穴ベント125は、ラグ溝成形骨120における、ラグ溝成形骨120とスリットベントSとの交差位置の近傍にも形成されているため、ラグ溝成形骨120を挟んで隣り合う領域同士の空間を、横穴ベント125によってつなげることができる。これにより、タイヤ加硫成形時に、スリットベントSの一部に詰まりが発生した場合でも、詰まりが発生した領域の残留ガスを、横穴ベント125を介して隣りの領域に流すことができる。この結果、スリットベントSの一部に詰まりが発生した場合でも、残留ガスが排出されないことに起因してゴムの流れが悪くなることを抑制することができ、スリットベントSの一部に詰まりが発生した場合における外観不良の発生を、より確実に抑制することができる。
タイヤ加硫成形金型100を用いた加硫成形が完了したら、タイヤ加硫成形金型100は空気入りタイヤ1から取り外されるが、その際に、横穴ベント125にゴムが入り込むことにより形成されたスピュー40は、ラグ溝成形骨120をラグ溝31から引き抜く際に切れる。つまり、タイヤ加硫成形金型100を空気入りタイヤ1から取り外す際には、ラグ溝成形骨120はラグ溝31から引き抜かれるが、ラグ溝成形骨120を引き抜く際の力により、ラグ溝31における一方の溝壁35側に接続される部分と他方の溝壁35側に接続される部分とに分離する。横穴ベント125が形成されるラグ溝成形骨120は、横穴ベント125に入り込むスピュー40がこのように切れることにより、ラグ溝31から引く抜くことができる。
図21は、スピューの詳細図である。スピュー40はゴムからなり、弾力性を有しているため、ラグ溝成形骨120を引く抜くことによって切れた後も、弾力性によって切れる前の形状に戻り、円柱状の形状になるが、厳密には、スピュー40は分離した状態になる。つまり、スピュー40は、端部41同士の間に切断部44を有し、切断部44よりも一方の溝壁35側の部分と、切断部44よりも他方の溝壁35側の部分とに分離した状態になる。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1におけるスピュー40の構成及び変形例(例えば、スピュー40の配置、外径d、深さH、Hgなど)は、当業者自明の範囲内にて、タイヤ加硫成形金型100における横穴ベント125に転用できる。例えば、横穴ベント125が、最大突出部Rmから10mmの範囲内に形成されるラグ溝成形骨120は、空気入りタイヤ1のセンターラグ溝32以外のラグ溝31を形成するラグ溝成形骨120であってもよい。
また、最大突出部Rmから10mmの範囲内に横穴ベント125が形成されるラグ溝成形骨120は、最大突出部Rmに交差していなくてもよい。例えば、ラグ溝成形骨120が最大突出部Rmに交差していない場合でも、最大突出部Rmの近傍にラグ溝成形骨120が位置することにより、最大突出部Rmから10mmの範囲内でラグ溝成形骨120に横穴ベント125を形成することができれば、当該ラグ溝成形骨120に横穴ベント125を形成してもよい。
上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、これらのように構成されるタイヤ加硫成形金型100を用いて製造される。その際に、空気入りタイヤ1は、リブ20の接地面3が基準輪郭線PLよりもタイヤ径方向外側に突出して形成される。リブ20の接地面3における最大突出部Rは、タイヤ加硫成形時における圧力が低くなりがちなので、タイヤ加硫成形時にタイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの一部の詰まりが発生した際に、残留ガスが最大突出部Rの付近に流れ易くなる。一方で、最大突出部Rを有するセンターリブ21に形成されるセンターラグ溝32では、最大突出部Rの近傍にスピュー40が形成されるため、空気入りタイヤ1の製造時には、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域同士は、タイヤ加硫成形金型100のラグ溝成形骨120における、スピュー40を形成するための横穴ベント125によって繋がった状態になる。このため、空気入りタイヤ1の製造時には、トレッド部2を形成するためのゴムや、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130との間の残留ガスは、ラグ溝成形骨120に形成される横穴ベント125を通ることにより、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域間で移動することができる。
このスピュー40は、最大突出部Rからの距離が10mm以下となる範囲内に中央部127が位置して配置されているため、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの一部に詰まりが発生し、残留ガスが最大突出部R付近に流れた場合でも、この残留ガスが、スピュー40を形成するための横穴ベント125を通って、ラグ溝成形骨120を挟んだ隣りの領域に流れるようにすることができる。つまり、スピュー40が、最大突出部Rからの距離が10mmを超える位置に中央部127が位置するように配置される場合、タイヤ加硫成形金型100の横穴ベント125と最大突出部Rとの距離が大きくなるため、最大突出部Rの付近に位置する残留ガスの、横穴ベント125への流れ易さが低下する。このため、スリットベントSの一部に詰まりが発生することにより、残留ガスが最大突出部Rの付近の流れた場合、最大突出部Rから横穴ベント125の方向に流れ難くなる。この場合、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130と空気入りタイヤ1のトレッド部2との間に残留ガスが滞留し続けるため、タイヤ成形時にトレッド部2を構成するゴムが流れ難くなり、接地面3の一部がトレッド成形面130に沿った形状にならなくなる可能性がある。
これに対し、最大突出部Rからのタイヤ幅方向における距離が10mm以下となる範囲内にスピュー40を配置する場合には、横穴ベント125が最大突出部Rの近くに形成されるようにできるため、最大突出部R付近と横穴ベント125との間での残留ガスの流れ易さを確保することができる。これにより、スリットベントSの一部に詰まりが発生し、詰まりが発生している部分から排出されるべき残留ガスが最大突出部R付近に流れた際に、この残留ガスが、スピュー40を形成するための横穴ベント125を通って、ラグ溝成形骨120を挟んで隣り合う領域に流れるようにすることができる。従って、接地面3が基準輪郭線PLよりも突出する空気入りタイヤ1の製造時に、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの一部に詰まりが発生することにより残留ガスが最大突出部R付近に流れた場合でも、この残留ガスを、ラグ溝成形骨120を挟んで隣り合う領域に流すことができ、接地面3の形状を、より確実にトレッド成形面130に沿った形状にすることができる。この結果、外観不良の発生を抑制することができる。
また、リブ20には、リブ20を画成する周方向主溝30のうち少なくとも一方の周方向主溝30からの距離D1が1.0mm≦D1≦3.0mmの範囲内となる接地面3に、スリットベントSのベント跡50が形成されているため、周方向主溝30の成形時におけるスリットベントSの影響を低下しつつ、タイヤ加硫成形時における残留ガスを、効果的に排出することができる。つまり、タイヤ加硫成形時には、周方向主溝30を形成する周方向主溝成形骨103cは、グリーンタイヤWを構成するゴムを多く押し退けるため、これに伴い、周方向主溝成形骨103cの近傍では、多くの残留ガスが発生する。しかし、周方向主溝30とベント跡50との距離D1がD1>3.0mmである場合には、周方向主溝成形骨103cからスリットベントSまでの距離が大き過ぎるため、周方向主溝成形骨103cの近傍で発生した残留ガスを効率良く排出するのが難しくなる可能性がある。また、周方向主溝30とベント跡50との距離D1がD1>1.0mmである場合には、周方向主溝成形骨103cからスリットベントSまでの距離が小さ過ぎるため、周方向主溝30を形成する際にスリットベントSが影響し、周方向主溝30形状を精度よく形成し難くなる可能性がある。
これに対し、周方向主溝30とベント跡50との距離D1が1.0mm≦D1≦3.0mmの範囲内となる接地面3にベント跡50が形成される場合は、スリットベントSが影響を受けることなく周方向主溝30を成形できると共に、タイヤ加硫成形時に周方向主溝成形骨103cの近傍で発生した残留ガスをスリットベントSによって効果的に排出して、タイヤ加硫成形時における周方向主溝30の近傍のゴムの流れ易さを確保することができる。この結果、外観不良の発生を、より確実に抑制することができる。
また、ベント跡50は、タイヤ幅方向における位置が最大突出部Rとは異なる位置に形成されるため、ベント跡50の位置とは異なる位置に位置する最大突出部Rの近傍におけるラグ溝31内に、スピュー40を設けることにより、タイヤ加硫成形時の残留ガスが、最大突出部R付近の一部に溜まることを抑制することができる。この結果、外観不良の発生を、より確実に抑制することができる。
また、スピュー40は、外径dが0.3mm≦d≦2.0mmの範囲内であるため、スピュー40の強度が高くなり過ぎて、ラグ溝成形骨120の引き抜き時にスピュー40が切断し難くなることを抑制しつつ、横穴ベント125で流すことのできる残留ガスの流量を確保することができる。つまり、スピュー40の外径dが0.3mm未満の場合には、スピュー40を形成するための横穴ベント125の開口面積が小さ過ぎるため、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域同士の間で、横穴ベント125を通って流れる残留ガスの流量を確保することが困難になる可能性がある。この場合、空気入りタイヤ1の製造時にスリットベントSの一部で詰まりが発生することにより、残留ガスが最大突出部R付近に流れた際に、最大突出部R付近の残留ガスは、ラグ溝成形骨120を介して隣り合う領域に対して横穴ベント125を通って流れ難くなり、これに起因して、残留ガスが流れた最大突出部R付近でのゴムの流れが低下する可能性がある。また、スピュー40の外径dが2.0mmより大きい場合には、スピュー40の外径dが大き過ぎてスピュー40の強度が高くなり過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時にラグ溝31からラグ溝成形骨120を引き抜く際に、スピュー40が適切に切断されずに、スピュー40がラグ溝成形骨120に追従し続けて接地面3に欠け等の故障が発生する可能性がある。
これに対し、スピュー40の外径dを、0.3mm≦d≦2.0mmの範囲内にした場合は、残留ガスが横穴ベント125を流れる際における、横穴ベント125によって流すことのできる流量を確保することができ、ラグ溝成形骨120を引き抜く際に、スピュー40が適切に切断されるようにすることができる。この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー40は、外径dとラグ溝31の溝幅Wgとの関係が、0.25≦(d/Wg)≦1.5の範囲内となって形成されるため、スピュー40の強度が高くなり過ぎることを抑制しつつ、横穴ベント125で流すことのできる残留ガスの流量を確保することができる。つまり、スピュー40の外径dとラグ溝31の溝幅Wgとの関係が、(d/Wg)<0.25である場合は、ラグ溝31の溝幅Wgに対してスピュー40の外径dが小さ過ぎ、スピュー40を形成するための横穴ベント125の開口面積が小さ過ぎる可能性がある。この場合、横穴ベント125を通って流れる残留ガスの流量を確保することが困難になるため、空気入りタイヤ1の製造時にスリットベントSの一部で詰まりが発生して残留ガスが最大突出部R付近に流れた際に、最大突出部R付近で残留ガスが滞留し、残留ガスが流れた最大突出部R付近でのゴムの流れが低下する可能性がある。また、スピュー40の外径dとラグ溝31の溝幅Wgとの関係が、(d/Wg)>1.5である場合は、ラグ溝31の溝幅Wgに対してスピュー40の外径dが大き過ぎるため、スピュー40の強度が高くなり過ぎる可能性がある。この場合、空気入りタイヤ1の製造時にラグ溝31からラグ溝成形骨120を引き抜く際に、スピュー40が適切に切断されずに、接地面3に欠け等の故障が発生する可能性がある。
これに対し、外径dとラグ溝31の溝幅Wgとの関係を、0.25≦(d/Wg)≦1.5の範囲内にした場合は、残留ガスが横穴ベント125を流れる際における、横穴ベント125によって流すことのできる流量を確保することができ、ラグ溝成形骨120を引き抜く際に、スピュー40が適切に切断されるようにすることができる。この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー40は、接地面3を基準とするラグ溝31の深さ方向における配置深さHが、0.5mm≦H≦3.0mmの範囲内に配置されるため、接地面3にクラックを発生させることなく、より確実に残留ガスが一箇所に留まることを抑制することができる。つまり、スピュー40が配設される位置の深さHが0.5mm未満である場合には、ラグ溝31に形成されるスピュー40が接地面3に近過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時においてタイヤ加硫成形金型100のラグ溝成形骨120をラグ溝31から引き抜く際に、スピュー40と共に接地面3が変形し易くなる。この場合、変形によって接地面3にクラックが発生し、外観不良が発生する可能性がある。また、スピュー40が配設される位置の深さHが3.0mmよりも深い場合には、ラグ溝31に形成されるスピュー40が接地面3から離れ過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時に、スピュー40を形成する横穴ベント125とタイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130との距離が大きくなり過ぎる可能性がある。この場合、トレッド成形面130とグリーンタイヤWとの間の残留ガスが横穴ベント125まで流れ難くなるため、一部の領域のスリットベントSに詰まりが発生することによって残留ガスが最大突出部R付近に流れた際に、ラグ溝成形骨120を挟んで隣り合う領域に横穴ベント125を通って残留ガスが流れ難くなり、接地面3の一部の形状が、トレッド成形面130に沿った形状にならない可能性がある。
これに対し、スピュー40が配設される位置の深さHを、0.5mm≦H≦3.0mmの範囲内にした場合には、接地面3にクラックが発生しない程度にスピュー40をラグ溝31の浅い位置に配設し、ラグ溝成形骨120を挟んで隣り合う領域同士の間で、残留ガスを横穴ベント125によって流通させることによって残留ガスが一箇所に滞留することを抑制することができる。これにより、接地面3にクラックを発生させることなく、接地面3の形状をトレッド成形面130に沿った形状にすることができ、この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー40は、接地面3を基準とするラグ溝31の深さ方向におけるスピュー40の配置深さHと、ラグ溝31の深さHgとの関係が、0.1≦(H/Hg)≦0.6の範囲内となる位置に配置されるため、接地面3にクラックを発生させることなく、より確実に残留ガスが一箇所に留まることを抑制することができる。つまり、スピュー40の配置深さHとラグ溝31の深さHgとの関係が、(H/Hg)<0.1である場合は、ラグ溝31に形成されるスピュー40が接地面3に近過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時においてタイヤ加硫成形金型100のラグ溝成形骨120をラグ溝31から引き抜く際に、接地面3にクラックが発生して外観不良が発生する可能性がある。つまり、スピュー40の配置深さHとラグ溝31の深さHgとの関係が、0.6<(H/Hg)である場合は、ラグ溝31に形成されるスピュー40が接地面3から離れ過ぎるため、残留ガスが横穴ベント125まで流れ難くなる。このため、残留ガスが最大突出部R付近に流れた際に、残留ガスが滞留し易くなり、接地面3の一部の形状が、トレッド成形面130に沿った形状にならない可能性がある。
これに対し、スピュー40の配置深さHとラグ溝31の深さHgとの関係を、0.1≦(H/Hg)≦0.6の範囲内にした場合には、接地面3にクラックが発生しない程度にスピュー40をラグ溝31の浅い位置に配設し、ラグ溝成形骨120を挟んで隣り合う領域同士の間で、残留ガスを横穴ベント125によって流通させることによって残留ガスが一箇所に滞留することを抑制することができる。これにより、接地面3にクラックを発生させることなく、接地面3の形状をトレッド成形面130に沿った形状にすることができ、この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー40は、接地面3の平面視におけるラグ溝31の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θが、80°≦θ≦100°の範囲内となって形成されるため、スピュー40の強度が高くなり過ぎて、ラグ溝成形骨120の引き抜き時にスピュー40が切断し難くなることを抑制することができる。つまり、ラグ溝31の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θが、θ<80°であったり、θ>100°であったりする場合は、スピュー40はラグ溝成形骨120の厚さ方向に対してスピュー40が傾斜する状態になるため、ラグ溝成形骨120の厚さ方向に見た場合におけるスピュー40の断面積が、スピュー40を長さ方向に見た場合における断面積と比較して、大幅に大きくなる。このため、ラグ溝成形骨120をラグ溝31から引き抜く方向に対するスピュー40の強度が大幅に高くなるため、空気入りタイヤ1の製造時にラグ溝31からラグ溝成形骨120を引き抜く際に、スピュー40が適切に切断されずに、スピュー40がラグ溝成形骨120に追従し続けて接地面3に欠け等の故障が発生する可能性がある。
これに対し、ラグ溝31の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θを、80°≦θ≦100°の範囲内にした場合は、スピュー40の長さ方向をラグ溝成形骨120の厚さ方向に近付けることができるため、ラグ溝成形骨120の厚さ方向に見た場合におけるスピュー40の断面積を、スピュー40を長さ方向に見た場合における断面積と同程度の大きさにすることができる。このため、ラグ溝成形骨120をラグ溝31から引き抜く方向に対するスピュー40の強度が大幅に高くなることを抑制できるため、ラグ溝成形骨120を引き抜く際に、スピュー40が適切に切断されるようにすることができる。この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
[実施例]
図22A〜図22Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤ1の製造時における、外観不良発生時の加硫回転数についての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤ1を複数製造することにより行った。外観不良発生時の加硫回転数の評価は、従来例、比較例、本発明の実施例ごとに異なるタイヤ加硫成形金型100を用いてそれぞれ空気入りタイヤ1の加硫成形を行い、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの詰まりが発生することによってリブ20の最大突出部R付近に残留ガスが流れることに起因する空気入りタイヤ1の外観不良が発生した時点での加硫を行った回数、即ち加硫回転数を計測することにより行った。外観不良発生時の加硫回転数が大きいほど、最大突出部R付近での残留ガスの滞留に起因して発生する空気入りタイヤ1の外観不良が生じ難いことを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入り入りタイヤ1である実施例1〜10と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例との12種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤのうち、従来例の空気入りタイヤは、ラグ溝31にスピュー40が設けられておらず、また、金型のベントがベントホールになっている。また、比較例の空気入りタイヤは、ラグ溝31にスピュー40が設けられ、金型のベントがスリットベントSになっているものの、スピュー40は、リブ20の最大突出部Rと距離Lが10mmを超える位置に配置されている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜10は、全てリブ20の最大突出部Rから10mmの範囲内にスピュー40が配置されている。さらに、実施例1〜10に係る空気入りタイヤ1は、スピュー40の外径dや、ラグ溝31の溝幅Wgに対するスピュー40の外径dの割合、スピュー40の配置深さH、ラグ溝31の深さHgに対するスピュー40の配置深さHの割合、ラグ溝31の溝中心線36とスピュー40の中心線43とのなす角度θが、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図22A〜図22Cに示すように、実施例1〜10に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例と比較して、外観不良発生時の加硫回転数が多くなることが分かった。つまり、実施例1〜10に係る空気入りタイヤ1や、これらの加硫成形に用いたタイヤ加硫成形金型100及び当該タイヤ加硫成形金型100を用いたタイヤ製造方法は、空気入りタイヤ1の外観不良の発生を抑制することができる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 接地面
8 サイドウォール部
10 ビード部
13 カーカス
14 ベルト層
20 リブ
21 センターリブ
22 セカンドリブ
23 ショルダーリブ
28 周方向細溝
30 周方向主溝
31 ラグ溝
32 センターラグ溝
33 セカンドラグ溝
34 ショルダーラグ溝
35 溝壁
36 溝中心線
38 サイプ
40 スピュー
42 中央部
43 中心線
50 ベント跡
100 タイヤ加硫成形金型
103 ピース
103a 第1ピースブロック
103b 第2ピースブロック
103c 周方向主溝成形骨
104 バックブロック
105 金型支持装置
120 ラグ溝成形骨
125 横穴ベント
127 中央部
130 トレッド成形面
131 接地面成形面
132 リブ成形部
200 ブラダー

Claims (10)

  1. トレッド部に形成され、タイヤ周方向に延びる複数の周方向主溝と、
    前記周方向主溝によって画成されて前記周方向主溝同士の間に位置すると共に、接地面が前記トレッド部の基準輪郭線よりもタイヤ径方向外側に突出するリブと、
    を備え、
    前記リブには、前記リブにおける、前記接地面が前記基準輪郭線よりも最もタイヤ径方向外側に突出している部分である最大突出部に交差する、または前記最大突出部の近傍に位置するラグ溝が配置され、
    前記ラグ溝は、前記ラグ溝が有する一対の溝壁に両端が接続されるスピューを有し、
    前記スピューは、前記接地面上における前記最大突出部からのタイヤ幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、前記スピューの長さ方向における中心が位置して配置されることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記空気入りタイヤは、スリットベントを有するタイヤ加硫成形金型を用いて製造され、
    前記リブには、前記リブを画成する前記周方向主溝のうち少なくとも一方の前記周方向主溝からの距離D1が1.0mm≦D1≦3.0mmの範囲内となる前記接地面に、前記スリットベントのベント跡が形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ベント跡は、タイヤ幅方向における位置が前記最大突出部とは異なる位置に形成される請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記スピューは、外径dが0.3mm≦d≦2.0mmの範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記スピューは、外径dと前記ラグ溝の溝幅Wgとの関係が、0.25≦(d/Wg)≦1.5の範囲内となって形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記スピューは、前記接地面を基準とする前記ラグ溝の深さ方向における前記スピューの配置深さHが、0.5mm≦H≦3.0mmの範囲内に配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記スピューは、前記接地面を基準とする前記ラグ溝の深さ方向における前記スピューの配置深さHと、前記ラグ溝の深さHgとの関係が、0.1≦(H/Hg)≦0.6の範囲内となる位置に配置される請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記スピューは、前記接地面の平面視における前記ラグ溝の溝中心線と前記スピューの中心線とのなす角度θが、80°≦θ≦100°の範囲内となって形成される請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 空気入りタイヤの周方向主溝を形成する複数の周方向主溝成形骨と、前記空気入りタイヤの接地面を成形する接地面成形面と、を有するトレッド成形面を備えるタイヤ加硫成形金型において、
    前記トレッド成形面は、隣り合う前記周方向主溝成形骨同士の間に、前記接地面成形面が前記接地面成形面の基準となる基準輪郭線よりも前記タイヤ加硫成形金型の径方向における外側に突出して、前記空気入りタイヤのリブを成形するリブ成形部を有し、
    前記リブ成形部には、前記リブ成形部における、前記接地面成形面が前記基準輪郭線よりも最も前記タイヤ加硫成形金型の径方向における外側に突出している部分である最大突出部に交差し、または前記最大突出部の近傍に位置し、前記空気入りタイヤのラグ溝を成形するラグ溝成形骨が配置され、
    前記ラグ溝成形骨は、前記ラグ溝成形骨を貫通する横穴ベントを有し、
    前記横穴ベントは、前記接地面成形面上における前記最大突出部からの前記タイヤ加硫成形金型の幅方向における距離が10mm以下となる範囲内に、前記横穴ベントの長さ方向における中心が位置して形成されることを特徴とするタイヤ加硫成形金型。
  10. 請求項9に記載のタイヤ加硫成形金型を用いてタイヤ加硫成形工程を行うことを特徴とするタイヤ製造方法。
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