JP2017222242A - 空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】空気入りタイヤの外観不良の発生を抑制すること。
【解決手段】スリットベントSを有するタイヤ加硫成形金型100を用いて製造された空気入りタイヤ1であって、サイプ40と、サイプ40に交差するスリットベントSのベント跡50とをトレッド面3に備え、サイプ40は、サイプ40が有する一対のサイプ壁44に両端が接続されるスピュー46を有し、スピュー46は、サイプ40とベント跡50との交差位置Pからのサイプ40に沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部47が配置されている。
【選択図】図4
【解決手段】スリットベントSを有するタイヤ加硫成形金型100を用いて製造された空気入りタイヤ1であって、サイプ40と、サイプ40に交差するスリットベントSのベント跡50とをトレッド面3に備え、サイプ40は、サイプ40が有する一対のサイプ壁44に両端が接続されるスピュー46を有し、スピュー46は、サイプ40とベント跡50との交差位置Pからのサイプ40に沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部47が配置されている。
【選択図】図4
Description
本発明は、空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法に関する。
空気入りタイヤのトレッド面には、排水性の向上等を目的として複数の溝が形成されるが、従来の空気入りタイヤの中には、所望の性能を実現するために、溝壁や溝底から突出する部材を溝内に設けているものがある。例えば、特許文献1に記載された空気入りタイヤでは、周方向に断続して延びる複数の溝同士における、トレッド幅方向に重複する部分同士の間に亘って延びる横溝の溝内に、一方の側壁と他方の側壁とを繋ぐクロスベントを設けることにより、ロードノイズの低減を図っている。
ここで近年では、空気入りタイヤを製造する際に、外観が優れ、且つ、タイヤ加硫成形時に不良品の発生を低減させることのできる空気入りタイヤを製造するために、スピューレスモールドを使用することがある。スピューレスモールドのタイヤ成形金型は、微細な隙間からなるスリットベントをトレッド成形面に備えており、スリットベントは、タイヤ加硫成形工程において、グリーンタイヤの外表面とタイヤ加硫成形金型との間にある残留空気や、加硫により発生したガス等の残留ガスの排出経路となる。スピューレスモールドでは、このようにタイヤ成形金型にスリットベントを設けることにより、ベントホールやベントグルーブをトレッド成形面に形成することなく空気入りタイヤの成形を行うことができ、トレッド面から突出するスピューの発生を回避しつつ、残留ガスに起因する製品タイヤの成形不良を抑制することができる。
しかし、スリットベントは、微細な隙間からなるため、タイヤ加硫成形の回数、即ち加硫回転数が増えた際に、ゴムやオイル等の加硫時の汚れで詰まってしまうことがある。スリットベントが詰まった場合、グリーンタイヤの外表面とタイヤ加硫成形金型との残留ガスを排出し難くなり、これに起因して外観不良が発生する虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外観不良の発生を抑制することのできる空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、スリットベントを有するタイヤ加硫成形金型を用いて製造された空気入りタイヤであって、サイプと、前記サイプに交差する前記スリットベントのベント跡とをトレッド面に備え、前記サイプは、前記サイプが有する一対のサイプ壁に両端が接続されるスピューを有し、前記スピューは、前記サイプと前記ベント跡との交差位置からの前記サイプに沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部が配置されていることを特徴とする。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記サイプと前記ベント跡との交差位置からの前記ペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる領域に複数が配置されていることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記サイプにおける深さが異なる位置に複数が配置されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記トレッド面を基準とする前記サイプの深さ方向における配置深さHが、0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内に配置されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、前記トレッド面を基準とする前記サイプの深さ方向における前記スピューの配置深さHと、前記サイプの深さHgとの関係が、0.10≦(H/Hg)≦0.60の範囲内となる位置に配置されることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スピューは、外径dが0.5mm≦d≦3.0mmの範囲内であることが好ましい。
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ベント跡は、タイヤ周方向に亘って延在しており、前記サイプは、複数が前記ベント跡に交差しており、1つの前記ベント跡に交差する前記サイプと当該ベント跡との複数の交差位置の総数Naと、前記交差位置で前記ベント跡に交差する前記サイプに設けられる前記スピューの総数N1とが、0.20≦(N1/Na)の関係を有することが好ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ加硫成形金型は、サイプを成形するサイプブレードと、前記サイプブレードに交差するスリットベントと、をトレッド成形面に備えるタイヤ加硫成形金型において、前記サイプブレードは、前記サイプブレードを貫通する横穴ベントを有し、前記横穴ベントは、前記サイプブレードと前記スリットベントとの交差位置からの前記サイプブレードに沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部が形成されていることを特徴とする。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ製造方法は、上記タイヤ加硫成形金型を用いてタイヤ加硫成形工程を行うことを特徴とする。
本発明に係る空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法は、外観不良の発生を抑制することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内方とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
[空気入りタイヤ]
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド部2が有するトレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30が複数形成されており、この周方向主溝30により、トレッド面3には複数の陸部20が画成されている。本実施形態では、周方向主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の周方向主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド部2が有するトレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30が複数形成されており、この周方向主溝30により、トレッド面3には複数の陸部20が画成されている。本実施形態では、周方向主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の周方向主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。
また、周方向主溝30によって画成される陸部20のうち、タイヤ幅方向における内方側に位置する2本の周方向主溝30同士の間に位置し、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20は、センター陸部21になっている。また、センター陸部21のタイヤ幅方向外方側に位置し、周方向主溝30を介してセンター陸部21に隣り合う陸部20はセカンド陸部22になっている。また、セカンド陸部22のタイヤ幅方向外方側に位置し、周方向主溝30を介してセカンド陸部22に隣り合う陸部20はショルダー陸部23になっている。
また、4本の周方向主溝30のうち、タイヤ幅方向において最も外方側に配設されている周方向主溝30のタイヤ幅方向外方側には、溝幅が周方向主溝30の溝幅よりも狭く、溝深さが周方向主溝30の溝深さよりも浅い深さでタイヤ周方向に延びる溝である周方向細溝31が形成されている。この周方向細溝31は、2本の周方向細溝31が、4本の周方向主溝30のタイヤ幅方向における両方の外方側に1本ずつ配設されており、つまり、周方向細溝31は、2箇所のショルダー陸部23のそれぞれに設けられている。
なお、この場合における周方向主溝30は、溝幅が7mm以上16mm以下の範囲内となり、溝深さが7mm以上9mm以下の範囲内となってタイヤ周方向に延びる溝になっている。また、周方向細溝31は、溝幅が2mm以上3mm以下の範囲内となり、溝深さが4mm以上6mm以下の範囲内となってタイヤ周方向に延びる溝になっている。また、周方向主溝30及び周方向細溝31は、厳密にタイヤ周方向に延びていなくてもよく、タイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に湾曲したり屈曲したりしていてもよい。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内方側には、サイドウォール部8が配設されている。つまり、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内方側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外方にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、複数のビードワイヤを束ねてなる環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外方側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2のタイヤ径方向内方には、複数のベルト層14が設けられている。ベルト層14は、複数の交差ベルト141、142とベルトカバー143とが積層されることによって設けられている。このうち、交差ベルト141、142は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20°以上55°以下のベルト角度を有して構成される。また、複数の交差ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義されるベルトコードが互いに異なっており、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。また、ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチール、或いは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0°以上10°以下のベルト角度を有する。このベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外方側に積層されて配置される。
このベルト層14のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス13が連続して設けられている。このカーカス13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス13は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外方に巻き返されている。また、カーカス13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されており、タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角であるカーカス角度が、絶対値で80°以上95°以下となって形成されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス13の巻き返し部のタイヤ径方向内方側やタイヤ幅方向外方側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス13の内方側、或いは、当該カーカス13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ15がカーカス13に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。トレッド面3には、周方向主溝30及び周方向細溝31の他に、ラグ溝32やサイプ40が形成されている。トレッド面3には、これらの複数の溝により、トレッドパターンが形成されている。本実施形態では、ラグ溝32としては、セカンド陸部22に形成されるセカンドラグ溝33と、ショルダー陸部23に形成されるショルダーラグ溝34とが設けられている。このうち、セカンドラグ溝33は、一端が周方向主溝30に接続されて周方向主溝30に開口し、他端がセカンド陸部22内で終端する、いわゆるセミクローズドタイプのラグ溝32になっている。また、ショルダーラグ溝34は、タイヤ幅方向における外方側の端部がショルダー陸部23のタイヤ幅方向外方側の端部まで延び、タイヤ幅方向における内方側の端部はショルダー陸部23内で終端している。
また、サイプ40は、セカンド陸部22に形成されるセカンドサイプ41と、ショルダー陸部23に形成されるショルダーサイプ42とが設けられている。このうち、セカンドサイプ41のうちの一部は、セカンドラグ溝33におけるセカンド陸部22内で終端している端部同士の間に亘ってタイヤ周方向に延びて形成されている。また、他の一部のセカンドサイプ41は、タイヤ周方向において隣り合うセカンドラグ溝33同士の間に配設され、一端が周方向主溝30に接続されて周方向主溝30に開口し、他端がセカンド陸部22内で終端している。
また、ショルダーサイプ42は、全てタイヤ幅方向に延びてショルダー陸部23に形成されており、周方向細溝31に接続されて周方向細溝31に開口している。ショルダーサイプ42は、タイヤ幅方向における両側に位置するショルダー陸部23のそれぞれにおいて、複数がタイヤ周方向に並んで形成されている。
なお、ここでいうサイプ40は、トレッド面3に切り込み状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して、規定内圧、例えば、規定荷重に対応した空気圧の内圧条件、及び規定荷重の条件で、平板上に垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に、当該切り込みが位置する際に、切り込みを構成する壁面同士の少なくとも一部が、トレッド部2の変形によって互いに接触するものをいう。
この場合における規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1に形成されるサイプ40は、切り込みを構成する壁面であるサイプ壁44(図4参照)同士の間隔、即ちサイプ幅が、無負荷時には、0.6mm以上1.5mm以下の範囲内になっており、トレッド面3からサイプ40の底までの深さが4mm以上6mm以下の範囲内になっている。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、スリットベントS(図9参照)を有する、後述するタイヤ加硫成形金型100(図10参照)によって製造する。スリットベントSは、タイヤ加硫成形金型100におけるトレッド成形面130(図9参照)に設けられるため、空気入りタイヤ1のトレッド面3には、トレッド成形面130のスリットベントSが設けられている位置に該当する位置に、スリットベントSの跡であるベント跡50が形成される。ベント跡50は、後述するタイヤ加硫成形工程にて、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの開口部により形成され、微細、且つ、線状の凸部としてトレッド面3に備えられている。ベント跡50は、例えば、0.005mm以上0.008mm以下の幅でトレッド面3に現れる。
このように、スリットベントSの跡としてトレッド面3に現れるベント跡50は、タイヤ幅方向に並ぶ全ての陸部20のトレッド面3に現れている。詳しくは、各陸部20のベント跡50は、少なくとも陸部20における周方向主溝30側のエッジ部付近に現れ、周方向主溝30に沿ってタイヤ周方向における全周に亘って延在している。
また、ショルダー陸部23には、周方向主溝30側のエッジ部付近以外の位置にもベント跡50が形成されており、例えば、ショルダー陸部23のタイヤ幅方向における中央付近の位置に、ベント跡50がタイヤ周方向に延在して現れている。ショルダー陸部23には、複数のショルダーサイプ42がタイヤ幅方向に延びてタイヤ周方向に並んで形成されているため、ショルダー陸部23のタイヤ幅方向における中央付近の位置でタイヤ周方向に延在するベント跡50は、これらのショルダーサイプ42と交差する。
図3は、図2のB部詳細図である。タイヤ幅方向の両側2箇所に位置するショルダー陸部23のうち、一方のショルダー陸部23には、ショルダーサイプ42として複数の形態のショルダーサイプ42が配設されている。具体的には、一方のショルダー陸部23には、一端がショルダーラグ溝34のショルダー陸部23内で終端する側の端部に接続されて他端側が周方向細溝31に交差する第1ショルダーサイプ42aと、周方向主溝30と周方向細溝31との間に亘って配設されて両端が周方向主溝30と周方向細溝31とに接続される第2ショルダーサイプ42bと、周方向細溝31よりもタイヤ幅方向外方側に位置し、一端が周方向細溝31に接続されて他端がショルダー陸部23内で終端する第3ショルダーサイプ42cとが配設されている。
また、ショルダー陸部23に現れるベント跡50は、ショルダー陸部23における周方向主溝30側のエッジ部付近に現れる第1ベント跡50aと、ショルダー陸部23における周方向細溝31とショルダーラグ溝34との間の位置に現れる第2ベント跡50bとを有している。このようにショルダー陸部23に現れるベント跡50は、第1ベント跡50aが第2ショルダーサイプ42bと交差し、第2ベント跡50bが、第1ショルダーサイプ42a及び第3ショルダーサイプ42cと交差している。
図4は、図3のC部詳細図である。図5は、図4のD−D断面図である。ショルダーサイプ42は、ショルダーサイプ42が有する一対のサイプ壁44に両端が接続されるスピュー46を有しており、スピュー46は、外径dが0.5mm≦d≦3.0mmの範囲内となる、略円柱状の形状で形成されている。即ち、スピュー46は、円柱の軸方向における両側の端部47が、それぞれサイプ壁44に接続されている。例えば、第1ショルダーサイプ42aにスピュー46が形成されており、第1ショルダーサイプ42aのスピュー46は、第1ショルダーサイプ42aを構成する一対のサイプ壁44に、両端部47が接続されており、サイプ壁44と一体に形成されている。
スピュー46は、ショルダーサイプ42における、ベント跡50との交差位置Pの近傍に位置しており、ショルダーサイプ42とベント跡50との交差位置Pからのショルダーサイプ42に沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部47が配置されている。つまり、スピュー46は、ショルダーサイプ42とベント跡50との交差位置Pから、ショルダーサイプ42に沿ったペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に、少なくとも一方の端部47が位置してショルダーサイプ42のサイプ壁44同士の間に形成されている。
第1ショルダーサイプ42aは、第2ベント跡50bと交差するため、第1ショルダーサイプ42aに形成されるスピュー46は、第1ショルダーサイプ42aと第2ベント跡50bとの交差位置Pから、第1ショルダーサイプ42aに沿ったペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に、少なくとも一方の端部47が位置している。
また、第1ショルダーサイプ42aに形成されるスピュー46は、第1ショルダーサイプ42aと第2ベント跡50bとの交差位置Pからのペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる領域に複数が配置されている。具体的には、第1ショルダーサイプ42aには、第1ショルダーサイプ42aと第2ベント跡50bとの交差位置Pを中心とする第1ショルダーサイプ42aの延在方向における両側に、2つのスピュー46が設けられている。第1ショルダーサイプ42aが有する2つのスピュー46は、共に第1ショルダーサイプ42aと第2ベント跡50bとの交差位置Pからのペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる領域に配置されている。なお、2つのスピュー46は、間隔が5mm以上離れて配置されるのが好ましい。
また、スピュー46は、トレッド面3を基準とするサイプ40の深さ方向における配置深さHが、0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内に配置されている。さらに、スピュー46は、トレッド面3を基準とするサイプ40の深さ方向におけるスピュー46の配置深さHと、サイプ40の深さHgとの関係が、0.10≦(H/Hg)≦0.60の範囲内となる位置に配置されている。つまり、1つの第1ショルダーサイプ42aと第2ベント跡50bとの交差位置Pの両側に位置する2つのスピュー46は、共にトレッド面3を基準とする第1ショルダーサイプ42aの深さ方向における配置深さHが0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内で、且つ、スピュー46の配置深さHと第1ショルダーサイプ42aの深さHgとの関係が0.10≦(H/Hg)≦0.60の範囲内となる位置に配置されている。なお、スピュー46は、1.0mm≦H≦2.5mmの範囲内に配置されるのが、より好ましい。また、スピュー46は、サイプ40の深さHgに対する配置深さHが、0.20≦(H/Hg)≦0.50の範囲内となる位置に配置されるのが、より好ましい。
なお、スピュー46は、第1ショルダーサイプ42a以外のサイプ40にも形成されていてよい。スピュー46は、例えば、第3ショルダーサイプ42cと第2ベント跡50bとの交差位置Pからのペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に、第3ショルダーサイプ42cに形成されていてもよく、第2ショルダーサイプ42bと第1ベント跡50aの交差位置Pからのペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に、第2ショルダーサイプ42bに形成されていてもよい。スピュー46は、タイヤ周方向に亘って延在するベント跡50と交差するサイプ40のサイプ壁44に両端が接続され、交差位置Pからのペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に配置されていれば、スピュー46が設けられるサイプ40は問わない。また、スピュー46は、タイヤ周方向に沿って形成されていてもよく、サイプ40の幅方向に沿って形成されていてもよい。
さらに、スピュー46は、1つのベント跡50に交差するサイプ40と当該ベント跡50との複数の交差位置Pの総数Naと、交差位置Pでベント跡50に交差するサイプ40に設けられるスピュー46の総数N1とが、0.20≦(N1/Na)の関係を有するように設けられている。つまり、1つのベント跡50に交差する複数のサイプ40との複数の交差位置Pの総数Naと、これらの交差位置Pからのペリフェリ長さLが10mm以下の範囲内に設けられるスピュー46の総数N1とが、0.20≦(N1/Na)の関係になっている。
なお、この(N1/Na)は、ベント跡50に交差する全てのサイプ40における、交差位置Pからのペリフェリ長さLが10mm以下の範囲内にスピュー46が設けられる場合には、(N1/Na)=1.00となる。また、(N1/Na)は、0.50≦(N1/Na)の関係であるのが好ましく、0.60≦(N1/Na)の関係を有するのが、より好ましい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、第1ショルダーサイプ42aに設けられるスピュー46は、第1ショルダーサイプ42aと第2ベント跡50bとの交差位置Pを中心とする両側に2つが設けられているが、スピュー46は、これ以外の形態で設けられていてもよい。図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、スピューが3つ設けられる場合の説明図である。スピュー46は、例えば、図6に示すように、サイプ40におけるベント跡50との交差位置Pからのサイプ40に沿ったペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に、3つが配置されていてもよい。
図7、図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、複数のスピューがサイプの深さ方向における異なる位置に設けられる場合の説明図である。また、スピュー46は、サイプ40における深さが異なる位置に複数が配置されていてもよい。スピュー46は、例えば、図7に示すように、サイプ40の延在方向における位置は同じ位置で、サイプ40の深さ方向における位置が異なる位置に2つが配置されていてもよく、また、図8に示すように、サイプ40の延在方向における位置と深さ方向における位置とがそれぞれ異なる位置に、3つが配置されていてもよい。このように、サイプ40の深さ方向における位置が異なる位置に複数のスピュー46を配置する場合には、それぞれのスピュー46が、サイプ40の深さ方向における配置深さHが0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内で、且つ、スピュー46の配置深さHとサイプ40の深さHgとの関係が0.10≦(H/Hg)≦0.60の範囲内となる位置に配置するのが好ましい。また、スピュー46が3つ以上配置されていたり、サイプ40の深さ方向における異なる位置に複数が設けられていたりする場合でも、スピュー46同士の間隔は、5mm以上離れて配置されるのが好ましい。
これらのように、サイプ40とベント跡50との交差位置Pの近傍に複数のスピュー46を配置する場合には、各スピュー46が、交差位置Pからのペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる領域に配置されていれば、配置の形態は問わない。また、スピュー46は、円柱以外の形状で形成されていてもよく、例えば、角柱状の形状で形成されていたり、楕円柱状の形状で形成されていたりしてもよい。
[タイヤ加硫成形金型]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造に用いるタイヤ加硫成形金型100について説明する。図9は、実施形態に係る空気入りタイヤを製造するタイヤ加硫成形金型の説明図である。図10は、図9に示すタイヤ加硫成形金型を構成する複数のセクターの連結構造の説明図である。タイヤ加硫成形金型100は、図10に示すように、分割型のタイヤ加硫成形金型100である、いわゆるセクターモールドとして構成されており、複数のセクター101を相互に連結して成る環状構造を有している。なお、図10では、タイヤ加硫成形金型100が8つのセクター101から成る8分割構造の形態を図示しているが、タイヤ加硫成形金型100の分割数は、これに限定されない。
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造に用いるタイヤ加硫成形金型100について説明する。図9は、実施形態に係る空気入りタイヤを製造するタイヤ加硫成形金型の説明図である。図10は、図9に示すタイヤ加硫成形金型を構成する複数のセクターの連結構造の説明図である。タイヤ加硫成形金型100は、図10に示すように、分割型のタイヤ加硫成形金型100である、いわゆるセクターモールドとして構成されており、複数のセクター101を相互に連結して成る環状構造を有している。なお、図10では、タイヤ加硫成形金型100が8つのセクター101から成る8分割構造の形態を図示しているが、タイヤ加硫成形金型100の分割数は、これに限定されない。
1つのセクター101は、図9に示すように、製品となる空気入りタイヤ1のトレッドプロファイルに対応する凹凸部102をもつ複数のピース103と、これらのピース103を相互に隣接させて装着するバックブロック104とを備える。なお、図9はセクター101の一例であり、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッドパターンとは異なるトレッド成形面130を備えている。
1つのピース103は、一定のピッチまたは任意のピッチで分割されたトレッドパターンの一部分に対応し、このトレッドパターンの部分を形成するための凹凸部102をトレッド成形面130に有している。また、複数のピース103が集合して、1つのセクター101のトレッド成形面130が構成される。例えば、図9に示すセクター101では、1つのセクター101のトレッド成形面130が、タイヤ軸方向に2分割され、且つ、タイヤ周方向に4分割されて、8つのピース103に分割されている。
また、各ピース103は、第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとからなり、これらの第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとを、ダイカスト鋳造により複数回のショットに分けて積層して製造される。
具体的には、各ピース103は、まず第1ショット鋳造工程にて、第1ピースブロック103a用の分割金型に、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料を鋳込んで、第1ピースブロック103aを鋳造する。この第1ピースブロック103aには、1つのピース103に割り当てられたトレッドパターンの部分の一部と、第2ピースブロック103bを積層するための領域とが形成される。また、必要に応じて、鋳造後の第1ピースブロック103aに機械加工が行われる。次に、第2ショット鋳造工程にて、第2ピースブロック103b用の分割金型に第1ピースブロック103aを配置し、第1ピースブロック103aと同種の金属材料を鋳込んで、第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとの積層体を鋳造する。このとき、第2ピースブロック103bには、トレッドパターンの部分の残りが形成される。これにより、1つのピース103が鋳造される。また、必要に応じて、鋳造後のピース103に機械加工が行われる。
バックブロック104は、U字断面形状の円弧状部材からなり、複数のピース103をU字断面形状の凹部に所定の配列で装着して保持する。これにより、1つのセクター101が構成される。
タイヤ加硫成形金型100は、これらのように構成されるセクター101が複数用いられ、複数のセクター101が環状に連結されることにより構成される(図10参照)。タイヤ加硫成形金型100は、このように複数のセクター101が環状に連結されることにより、各セクター101のトレッド成形面130が集合し、トレッドパターン全体のトレッド成形面130が構成される。
[タイヤ製造方法]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。図11は、図10に示すタイヤ加硫成形金型を用いたタイヤ製造方法を示す説明図である。図11は、図10に示すタイヤ加硫成形金型100を備える金型支持装置105の軸方向断面図を示している。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、以下の製造工程により製造される。
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。図11は、図10に示すタイヤ加硫成形金型を用いたタイヤ製造方法を示す説明図である。図11は、図10に示すタイヤ加硫成形金型100を備える金型支持装置105の軸方向断面図を示している。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、以下の製造工程により製造される。
まず、ビードコア11を構成するビードワイヤ、カーカス13を構成するカーカスプライ、ベルト層14を構成するベルトプライ141〜143、トレッド部2を構成するゴム、サイドウォール部8を構成するゴム、リムクッションゴム17などの各部材(図1参照)が成形機にかけられて、グリーンタイヤWが成形される。次に、このグリーンタイヤWが、金型支持装置105に装着される(図11参照)。
図11において、金型支持装置105は、支持プレート106と、外部リング107と、セグメント109と、上部プレート110及びベースプレート112と、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113と、タイヤ加硫成形金型100とを備える。支持プレート106は、円盤形状を有し、平面を水平にして配置される。外部リング107は、径方向内側のテーパ面108を有する環状構造体であり、支持プレート106の外周縁下部に吊り下げられて設置される。セグメント109は、タイヤ加硫成形金型100の各セクター101に対応する分割可能な環状構造体であり、外部リング107に挿入されて外部リング107のテーパ面108に対して軸方向に摺動可能に配置される。上部プレート110は、外部リング107の内側で、且つ、セグメント109と支持プレート106との間にて、軸方向に昇降可能に設置される。ベースプレート112は、支持プレート106の下方で、且つ、軸方向における支持プレート106の反対側の位置に配置される。
上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における両側面の形状であるサイドプロファイルの成形面を有する。また、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113とは、上型サイドモールド111が上部プレート110の下面側に取り付けられ、下型サイドモールド113がベースプレート112の上面側に取り付けられると共に、それぞれの成形面を相互に対向させて配置される。タイヤ加硫成形金型100は、上記のように、トレッドプロファイルを成形可能なトレッド成形面130をもつ分割可能な環状構造(図10参照)を有する。また、タイヤ加硫成形金型100は、各セクター101が、対応するセグメント109の内周面に取り付けられ、トレッド成形面130を、上型サイドモールド111や下型サイドモールド113の成形面が位置する側に向けて配置される。
次に、グリーンタイヤWが、タイヤ加硫成形金型100の成形面と上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113の成形面との間に装着される。このとき、支持プレート106が軸方向下方に移動することにより、外部リング107が支持プレート106と共に軸方向下方に移動し、外部リング107のテーパ面108がセグメント109を径方向内側に押し出す。すると、タイヤ加硫成形金型100が縮径して、タイヤ加硫成形金型100の各セクター101の成形面(図9参照)が環状に接続し、また、タイヤ加硫成形金型100の成形面全体と下型サイドモールド113の成形面とが接続する。また、上部プレート110が軸方向下方に移動することにより、上型サイドモールド111が下降して、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113との間隔が狭まる。すると、タイヤ加硫成形金型100の成形面全体と上型サイドモールド111の成形面とが接続する。これにより、グリーンタイヤWが、タイヤ加硫成形金型100の成形面、上型サイドモールド111の成形面及び下型サイドモールド113の成形面に囲まれて保持される。
次に、加硫前のタイヤであるグリーンタイヤWが加硫成形される。具体的には、タイヤ加硫成形金型100が加熱され、加圧装置(図示省略)によりグリーンタイヤWが径方向外方に拡張されてタイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130に押圧される。そして、グリーンタイヤWが加熱されることにより、トレッド部2のゴム分子と硫黄分子とが結合して加硫が行われる。すると、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130がグリーンタイヤWに転写されて、トレッド部2にトレッドパターンが成形される。
その後に、加硫成形後のタイヤが、製品となる空気入りタイヤ1である製品タイヤとして取得される。このとき、支持プレート106及び上部プレート110が軸方向上方に移動することにより、タイヤ加硫成形金型100、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113が離間して、金型支持装置105が開く。その後に、加硫成形後のタイヤが金型支持装置105から取り出される。
[スリットベント及び横穴ベント]
図12、図13は、タイヤ加硫成形金型のスリットベント及び横穴ベントを示す説明図である。これらの図において、図12は、図9に記載したセクター101の径方向断面図を示し、図13は、図12に記載したセクター101の拡大図を示している。
図12、図13は、タイヤ加硫成形金型のスリットベント及び横穴ベントを示す説明図である。これらの図において、図12は、図9に記載したセクター101の径方向断面図を示し、図13は、図12に記載したセクター101の拡大図を示している。
図12、図13に示すように、タイヤ加硫成形金型100は、複数のスリットベントSをトレッド成形面130に備える。スリットベントSは、0.005mm以上0.008mm以下の開口幅Wsを有する、微細な線状の排気口であり、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130に開口する。また、スリットベントSは、ピース103の内部に形成された排気孔114に連通する。
タイヤ加硫成形時には、グリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間に発生した残留ガスが、スリットベントSを介して排気孔114に吸引されて金型の外部に排出される。これにより、残留ガスに起因する製品タイヤの成形不良が抑制される。また、このとき、複数のスリットベントSのベント跡50(図2参照)が、製品タイヤのトレッド面3に形成される。
かかる微細なスリットベントSは、金属材料の凝固収縮により形成される。即ち、タイヤ加硫成形金型100のピース103は、第1ピースブロック103a及び第2ピースブロック103bから成る積層構造を備える(図9参照)。また、ピース103は、上述した第1ピースブロック103aを成形する第1ショット鋳造工程と、第1ピースブロック103aに第2ピースブロック103bを成形する第2ショット鋳造工程とが順次行われて、ピース103の積層構造が形成される。そして、第2ショット鋳造工程における第2ピースブロック103bの金属材料の凝固収縮を利用して、スリットベントSの微細な開口幅Wsが形成される。なお、これらのようにして形成されるスリットベントSの形成工程は、特許第3733271号公報などに詳しい。
また、本実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100のセクター101では、複数のスリットベントSが、セクター101を周方向にそれぞれ貫通し、また、セクター101の軸方向に所定間隔をあけて配置される(図9参照)。また、複数のセクター101を環状に連結して成るタイヤ加硫成形金型100では、各セクター101のスリットベントSが相互に連通して、タイヤ加硫成形金型100の全周に渡って延在する。これにより、複数のスリットベントSが、トレッド成形面130の全域に分散して配置される。
また、ピース103のトレッド成形面130には、周方向主溝30の成形骨103cが形成されている。周方向主溝30の成形骨103cは、各セクター101のピース103に設けられると共に、複数のセクター101を環状に連結することにより、タイヤ加硫成形金型100の全周に渡って延在している。
さらに、ピース103のトレッド成形面130には、サイプ40を成形するサイプブレード120が配設されている。サイプブレード120は、ピース103とは異なりスチール材からなり、厚さが0.6mm以上1.5mm以下の範囲内となる薄い板状の形状でトレッド成形面130から突出して配設され、目的とするサイプ40の形状に沿った方向に延在している。例えば、タイヤ幅方向に延びるサイプ40をサイプブレード120によって形成する場合には、サイプブレード120は軸方向に延びる形状にする。
ここで、スリットベントSはセクター101を周方向に貫通するため、サイプブレード120が軸方向に延びて形成される場合は、サイプブレード120はスリットベントSに交差する。具体的には、トレッド成形面130から突出してトレッド成形面130上に形成されるサイプブレード120は、トレッド成形面130に開口するスリットベントSに対してトレッド成形面130上において延びる方向が異なるため、サイプブレード120は、トレッド成形面130におけるスリットベントSの開口部の一部を塞いで配置される。このため、スリットベントSは、開口部がセクター101の周方向に分断されて不連続となる。この場合において、周方向において隣り合うサイプブレード120同士の間の領域でスリットベントSに詰まりが発生した場合、このサイプブレード120同士の間の領域に残留ガスが溜まって、製品タイヤの外観不良が生じる可能性がある。
これに対し、本実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100では、サイプブレード120が、サイプブレード120を貫通する横穴ベント125を有する。サイプブレード120に形成される横穴ベント125は、内径が0.5mm以上3.0mm以下の範囲内となる略円形の穴として形成されており、サイプブレード120の頂部から離間すると共に、セクター101の周方向にサイプブレード120を貫通している。また、横穴ベント125は、サイプブレード120とスリットベントSとの交差位置の近傍に配置される。
図14は、図13のE−E矢視図である。サイプブレード120に形成される横穴ベント125は、横穴ベント125の両端部126のうち、サイプブレード120とスリットベントSとの交差位置からのサイプブレード120に沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部126が形成されている。例えば、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1が有するサイプ40を形成するサイプブレード120では、サイプブレード120におけるスリットベントSとの交差位置の近傍に2つの横穴ベント125が形成されている。さらに、この2つの横穴ベント125は、共にスリットベントSとサイプブレード120との交差位置から、サイプブレード120に沿ったペリフェリ長さLが10mm以下となる範囲内に形成されている。なお、2つの横穴ベント125同士の間隔は、5mm以上離れているのが好ましい。
これらのように横穴ベント125が形成されるサイプブレード120によって区画された、サイプブレード120を介して隣り合う領域同士は、横穴ベント125を介して連通する。また、横穴ベント125は、空気入りタイヤ1におけるサイプ40のスピュー46を形成する。換言すると、スピュー46は、サイプブレード120を介して隣り合う領域同士を連通する横穴ベント125に、トレッド部2を構成するゴムが入り込むことにより形成される。
タイヤ加硫成形金型100は、このように構成されることにより、タイヤ加硫成形工程にてスリットベントSの詰まりがサイプブレード120に区画された一方の領域で発生したときに、この領域の残留ガスが、横穴ベント125を通って他方の領域に移動することができる。そして、この他方の領域に位置するスリットベントSが残留ガスを吸引することにより、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130とグリーンタイヤWとの間の残留ガスが適正に排出される。これにより、製品タイヤの外観不良の発生が抑制される。
タイヤ加硫成形金型100を用いた加硫成形が完了したら、タイヤ加硫成形金型100は空気入りタイヤ1から取り外されるが、その際に、横穴ベント125にゴムが入り込むことにより形成されたスピュー46は、サイプブレード120をサイプ40から引き抜く際に切れる。つまり、タイヤ加硫成形金型100を空気入りタイヤ1から取り外す際には、サイプブレード120はサイプ40から引き抜かれるが、サイプブレード120を引き抜く際の力により、サイプ40における一方のサイプ壁44側に接続される部分と他方のサイプ壁44側に接続される部分とに分離する。横穴ベント125が形成されるサイプブレード120は、横穴ベント125に入り込むスピュー46がこのように切れることにより、サイプ40から引く抜くことができる。
なお、サイプブレード120は、厚さが薄い板状の形状で形成されているが、スチール材により形成されているため、剛性を有している。このため、サイプ40からサイプブレード120を引き抜く際には、厚さが薄いサイプブレード120が破損することなく、スピュー46が切れることにより引き抜くことができる。
図15は、スピューの詳細図である。スピュー46はゴムからなり、弾力性を有しているため、サイプブレード120を引く抜くことによって切れた後も、弾力性によって切れる前の形状に戻り、円柱状の形状になるが、厳密には、スピュー46は分離した状態になる。つまり、スピュー46は、端部47同士の間に切断部48を有し、切断部48よりも一方のサイプ壁44側の部分と、切断部48よりも他方のサイプ壁44側の部分とに分離した状態になる。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1におけるスピュー46やサイプ40の構成及び変形例(例えば、スピュー46の数や配置、外径d、深さH、Hgなど)は、当業者自明の範囲内にて、タイヤ加硫成形金型100における横穴ベント125に転用できる。
上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、これらのように構成されるタイヤ加硫成形金型100を用いて製造される。つまり、空気入りタイヤ1は、トレッド面3にサイプ40を形成するため、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130とグリーンタイヤWとの間の空間は、サイプ40を形成するためのサイプブレード120によって区切られた状態になる。一方で、サイプ40にはスピュー46が形成されるため、空気入りタイヤ1の製造時には、サイプブレード120を介して隣り合う領域同士は、タイヤ加硫成形金型100のサイプブレード120における、スピュー46を形成するための横穴ベント125によって繋がった状態になる。このため、空気入りタイヤ1の製造時には、トレッド部2を形成するためのゴムや、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130との間の残留ガスは、サイプブレード120に形成される横穴ベント125を通ることにより、サイプブレード120を介して隣り合う領域間で移動することができる。
さらに、スピュー46は、サイプ40とベント跡50との交差位置Pからのペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に形成されるため、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの一部に詰まりが発生した場合でも、詰まりが発生している部分から排出されるべき残留ガスが、スピュー46を形成するための横穴ベント125を通って隣りの領域に流れるようにすることができる。つまり、スピュー46が、サイプ40とベント跡50との交差位置Pからのペリフェリ長さLが10mmを超える位置に配置される場合、タイヤ加硫成形金型100の横穴ベント125とスリットベントSとの距離が大きくなるため、スリットベントSと横穴ベント125との間での残留ガスの流れ易さが低下する。このため、スリットベントSの一部に詰まりが発生した場合でも、詰まりが発生している部分から排出されるべき残留ガスが、横穴ベント125の方向に流れ難くなったり、残留ガスが横穴ベント125まで流れたとしても、横穴ベント125から、隣りの領域のスリットベントSまで流れ難くなったりする。この場合、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130と空気入りタイヤ1のトレッド部2との間に残留ガスが滞留し続けるため、タイヤ成形時にトレッド部2を構成するゴムが流れ難くなり、トレッド面3の一部がトレッド成形面130に沿った形状にならなくなる可能性がある。
これに対し、サイプ40とベント跡50との交差位置Pからのペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置にスピュー46を配置する場合には、横穴ベント125がスリットベントSの近くに形成されるようにできるため、スリットベントSと横穴ベント125との間での残留ガスの流れ易さを確保することができる。これにより、スリットベントSの一部に詰まりが発生した場合に、詰まりが発生している部分から排出されるべき残留ガスが、スピュー46を形成するための横穴ベント125を通って隣りの領域に流れるようにすることができる。従って、空気入りタイヤ1の製造時に、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの一部に詰まりが発生した場合でも、スリットベントSにおける、詰まった位置とは異なる位置から残留ガスを排出することができ、トレッド面3の形状を、より確実にトレッド成形面130に沿った形状にすることができる。この結果、外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー46は、サイプ40とベント跡50との交差位置Pからのペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる領域に複数が配置されるため、横穴ベント125の数が増加することになり、サイプブレード120を介して隣り合う領域同士の間でのゴムや残留ガスの流通量を増加させることができる。これにより、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの一部に詰まりが発生した場合でも、詰まりが発生した領域の残留ガスを、複数のスピュー46を形成するための複数の横穴ベント125によって、隣りの領域に流すことができる。つまり、サイプブレード120を介して隣り合う領域同士の間で、複数の横穴ベント125によってより多くの残留ガスを流すことができるため、一部の領域のスリットベントSに詰まりが発生した場合でも、当該領域に位置する残留ガスを他の領域に流し、他の領域のスリットベントSから排出することができる。この結果、トレッド面3の形状を、より確実にトレッド成形面130に沿った形状にすることができ、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー46は、トレッド面3を基準とするサイプ40の深さ方向における配置深さHが、0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内に配置されるため、トレッド面3にクラックを発生させることなく、より確実に残留ガスを排出することができる。つまり、スピュー46が配設される位置の深さHが0.5mm未満である場合には、サイプ40に形成されるスピュー46がトレッド面3に近過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時においてタイヤ加硫成形金型100のサイプブレード120をサイプ40から引き抜く際に、スピュー46と共にトレッド面3が変形し易くなる。この場合、変形によってトレッド面3にクラックが発生し、外観不良が発生する可能性がある。また、スピュー46が配設される位置の深さHが5.0mmよりも深い場合には、サイプ40に形成されるスピュー46がトレッド面3から離れ過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時に、スピュー46を形成する横穴ベント125とタイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面130との距離が大きくなり過ぎる可能性がある。この場合、トレッド成形面130とグリーンタイヤWとの間の残留ガスが横穴ベント125まで流れ難くなるため、一部の領域のスリットベントSに詰まりが発生した際に、残留ガスが横穴ベント125を通って隣りの領域に流れ難くなり、トレッド面3の一部の形状が、トレッド成形面130に沿った形状にならない可能性がある。
これに対し、スピュー46が配設される位置の深さHを、0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内にした場合には、トレッド面3にクラックが発生しない程度にスピュー46をサイプ40の浅い位置に配設し、サイプブレード120によって区切られる領域同士の間で、残留ガスを横穴ベント125によって流通させて排出することができる。これにより、トレッド面3にクラックを発生させることなく、トレッド面3の形状をトレッド成形面130に沿った形状にすることができ、この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー46は、外径dが0.5mm≦d≦3.0mmの範囲内であるため、スピュー46の強度が高くなり過ぎて、サイプブレード120の引き抜き時にスピュー46が切断し難くなることを抑制しつつ、横穴ベント125で流すことのできる残留ガスの流量を確保することができる。つまり、スピュー46の外径dが0.5mm未満の場合には、スピュー46を形成するための横穴ベント125の開口面積が小さ過ぎるため、横穴ベント125を通ってサイプブレード120によって区切られる領域同士の間で流れる残留ガスの流量を確保することが困難になる可能性がある。この場合、空気入りタイヤ1の製造時にスリットベントSの一部で詰まりが発生した場合に、詰まりが発生した領域の残留ガスは、当該領域に隣り合う領域に対して横穴ベント125を通って流れ難くなり、詰まりが発生した領域の残留ガスを排出し難くなる可能性がある。また、スピュー46の外径dが5.0mmより大きい場合には、スピュー46の外径dが大き過ぎてスピュー46の強度が高くなり過ぎるため、空気入りタイヤ1の製造時にサイプ40からサイプブレード120を引き抜く際に、スピュー46が適切に切断されずに、スピュー46がサイプブレード120に追従し続けてトレッド面3に欠け等の故障が発生する可能性がある。
これに対し、スピュー46の外径dを、0.5mm≦d≦3.0mmの範囲内にした場合は、残留ガスが横穴ベント125を流れる際における、横穴ベント125によって流すことのできる流量を確保することができ、サイプブレード120を引き抜く際に、スピュー46が適切に切断されるようにすることができる。この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、サイプ40に形成されるスピュー46は、1つのベント跡50がサイプ40と交差する交差位置Pの総数Naと、当該ベント跡50に交差するサイプ40に設けられるスピュー46の総数N1とが、0.20≦(N1/Na)の関係を有するため、スリットベントSに詰まりが発生した際に、残留ガス隣りの領域に流して隣りの領域に位置するスリットベントSから排出することができる領域を適切に確保することができる。つまり、(N1/Na)が0.20未満である場合には、ベント跡50の近傍においてサイプ40に形成されるスピュー46の数が少なく、即ち、サイプブレード120の近傍においてサイプブレード120に形成される横穴ベント125の数が少ないため、サイプブレード120によって区切られた領域同士の間で、横穴ベント125によって残留ガスを流すことのできる領域が少なくなる可能性がある。この場合、スリットベントSの一部に詰まりが発生した際に、その領域によっては、横穴ベント125によって残留ガスを隣りの領域に流すことができなくなり、トレッド面3の形状がトレッド成形面130に沿った形状になり難くなる可能性が高くなる。
これに対し、1つのベント跡50がサイプ40と交差する交差位置Pの総数Naと、当該ベント跡50に交差するサイプ40に設けられるスピュー46の総数N1とが、0.20≦(N1/Na)の関係を有する場合には、スリットベントSに詰まりが発生した際に、この領域の残留ガスを横穴ベント125によって隣りの領域に流すことができる領域を適切に確保することができる。これにより、トレッド面3の形状を、より確実にトレッド成形面130に沿った形状にすることができる。この結果、より確実に外観不良の発生を抑制することができる。
また、スピュー46を、サイプ40における深さが異なる位置に複数配置した場合には、見栄えが悪化することなく、横穴ベント125で残留ガスを流す際の流量を確保することができる。つまり、スピュー46を、サイプ40における深さが異なる位置に複数配置した場合には、同じ数のスピュー46をサイプ40の延在方向に並べた場合と比較して、スピュー46がトレッド面3側から視認できる割合が少なくなる。この結果、外観不良の発生を抑制する場合における美観を向上させることができる。
また、上述した実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100は、サイプブレード120に交差するスリットベントSを有し、サイプブレード120には、スリットベントSとの交差位置からのサイプブレード120に沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に横穴ベント125が形成されている。これにより、サイプブレード120によって区切られた領域のうち、空気入りタイヤ1の加硫成形時にスリットベントSに詰まりが発生した領域がある場合でも、この領域の残留ガスを、横穴ベント125によって隣りの領域に流し、隣りの領域に位置するスリットベントSから排出することができる。これにより、加硫成形後の空気入りタイヤ1のトレッド面3の形状を、より確実にトレッド成形面130に沿った形状にすることができ、この結果、空気入りタイヤ1の外観不良の発生を抑制することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ製造方法は、上述した実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100を用いてタイヤ加硫成形工程を行うため、スリットベントSを有するタイヤ加硫成形金型100を用いて空気入りタイヤ1の外観の向上を図る場合でも、加硫成形時にスリットベントSに詰まりが発生して残留ガスを排出できなくなることを抑制することができる。この結果、空気入りタイヤ1の外観不良の発生を抑制することができる。
[実施例]
図16A〜図16Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤ1の製造時における、外観不良発生時の加硫回転数についての試験を行った。
図16A〜図16Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤ1の製造時における、外観不良発生時の加硫回転数についての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤ1を複数製造することにより行った。外観不良発生時の加硫回転数の評価は、従来例、比較例、本発明の実施例ごとに異なるタイヤ加硫成形金型100を用いてそれぞれ空気入りタイヤ1の加硫成形を行い、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントSの詰まりに起因する空気入りタイヤ1の外観不良が発生した時点での加硫を行った回数、即ち加硫回転数を計測することにより行った。外観不良発生時の加硫回転数が大きいほど、スリットベントSの詰まりに起因して発生する空気入りタイヤ1の外観不良が生じ難いことを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入り入りタイヤ1である実施例1〜12と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例との14種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1は、全てトレッド面3にサイプ40が形成されている。このうち、従来例の空気入りタイヤは、サイプ40にスピュー46が設けられていない。また、比較例の空気入りタイヤは、サイプ40にスピュー46が設けられているものの、スピュー46はサイプ40とベント跡50との交差位置Pから10mmの範囲内に配置されておらず、ベント跡50からの距離が10mmを超える位置に配置されている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜12は、全てサイプ40に設けられるスピュー46が、サイプ40とベント跡50との交差位置Pから10mmの範囲内に配置されている。さらに、実施例1〜12に係る空気入りタイヤ1は、スピュー46の数や配置形態、スピュー46の径d、スピュー46とトレッド面3との距離H、サイプ40の深さHgに対するスピュー46の配置深さHの割合、サイプ40とベント跡50との交差位置Pの総数Naに対するスピュー46の総数N1の割合が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図16A〜図16Cに示すように、実施例1〜12に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例と比較して、外観不良発生時の加硫回転数が多くなることが分かった。つまり、実施例1〜12に係る空気入りタイヤ1や、これらの加硫成形に用いたタイヤ加硫成形金型100及び当該タイヤ加硫成形金型100を用いたタイヤ製造方法は、空気入りタイヤ1の外観不良の発生を抑制することができる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド面
8 サイドウォール部
10 ビード部
13 カーカス
14 ベルト層
20 陸部
30 周方向主溝
31 周方向細溝
32 ラグ溝
40 サイプ
44 サイプ壁
46 スピュー
47 端部
50 ベント跡
100 タイヤ加硫成形金型
103 ピース
104 バックブロック
105 金型支持装置
120 サイプブレード
125 横穴ベント
126 端部
130 トレッド成形面
CL タイヤ赤道面
P 交差位置
S スリットベント
2 トレッド部
3 トレッド面
8 サイドウォール部
10 ビード部
13 カーカス
14 ベルト層
20 陸部
30 周方向主溝
31 周方向細溝
32 ラグ溝
40 サイプ
44 サイプ壁
46 スピュー
47 端部
50 ベント跡
100 タイヤ加硫成形金型
103 ピース
104 バックブロック
105 金型支持装置
120 サイプブレード
125 横穴ベント
126 端部
130 トレッド成形面
CL タイヤ赤道面
P 交差位置
S スリットベント
Claims (9)
- スリットベントを有するタイヤ加硫成形金型を用いて製造された空気入りタイヤであって、
サイプと、前記サイプに交差する前記スリットベントのベント跡とをトレッド面に備え、
前記サイプは、前記サイプが有する一対のサイプ壁に両端が接続されるスピューを有し、
前記スピューは、前記サイプと前記ベント跡との交差位置からの前記サイプに沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部が配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記スピューは、前記サイプと前記ベント跡との交差位置からの前記ペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる領域に複数が配置されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スピューは、前記サイプにおける深さが異なる位置に複数が配置される請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スピューは、前記トレッド面を基準とする前記サイプの深さ方向における配置深さHが、0.5mm≦H≦5.0mmの範囲内に配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スピューは、前記トレッド面を基準とする前記サイプの深さ方向における前記スピューの配置深さHと、前記サイプの深さHgとの関係が、0.10≦(H/Hg)≦0.60の範囲内となる位置に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記スピューは、外径dが0.5mm≦d≦3.0mmの範囲内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ベント跡は、タイヤ周方向に亘って延在しており、
前記サイプは、複数が前記ベント跡に交差しており、
1つの前記ベント跡に交差する前記サイプと当該ベント跡との複数の交差位置の総数Naと、前記交差位置で前記ベント跡に交差する前記サイプに設けられる前記スピューの総数N1とが、0.20≦(N1/Na)の関係を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 - サイプを成形するサイプブレードと、前記サイプブレードに交差するスリットベントと、をトレッド成形面に備えるタイヤ加硫成形金型において、
前記サイプブレードは、前記サイプブレードを貫通する横穴ベントを有し、
前記横穴ベントは、前記サイプブレードと前記スリットベントとの交差位置からの前記サイプブレードに沿ったペリフェリ長さLが、L≦10mmの範囲内となる位置に、少なくとも一方の端部が形成されていることを特徴とするタイヤ加硫成形金型。 - 請求項8に記載のタイヤ加硫成形金型を用いてタイヤ加硫成形工程を行うことを特徴とするタイヤ製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016118126A JP2017222242A (ja) | 2016-06-14 | 2016-06-14 | 空気入りタイヤ、タイヤ加硫成形金型及びタイヤ製造方法 |
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Family Applications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019235397A1 (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ並びにタイヤ加硫方法および装置 |
CN112055640A (zh) * | 2018-04-30 | 2020-12-08 | 米其林集团总公司 | 带有排气槽和微型模制部分的模制元件 |
-
2016
- 2016-06-14 JP JP2016118126A patent/JP2017222242A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112055640A (zh) * | 2018-04-30 | 2020-12-08 | 米其林集团总公司 | 带有排气槽和微型模制部分的模制元件 |
WO2019235397A1 (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ並びにタイヤ加硫方法および装置 |
JP2019209831A (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 株式会社ブリヂストン | タイヤ並びにタイヤ加硫方法および装置 |
CN112236315A (zh) * | 2018-06-04 | 2021-01-15 | 株式会社普利司通 | 轮胎和轮胎硫化方法以及轮胎硫化装置 |
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