以下に、本発明に係るタイヤ加硫成形金型、タイヤ製造方法及び空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[空気入りタイヤ]
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の、回転軸AXを通る子午断面を示している。空気入りタイヤ1は、車両のリムホイールに装着された状態で回転軸AXを中心に回転可能である。空気入りタイヤ1の回転軸AXは、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の中心を示すタイヤ赤道面CLと直交する。
以下の説明においては、回転軸AXと平行な方向を適宜、タイヤ幅方向、と称し、回転軸AXに対する放射方向を適宜、タイヤ径方向、と称し、回転軸AXを中心とする空気入りタイヤ1の回転方向を適宜、タイヤ周方向、と称する。また、以下の説明においては、タイヤ赤道面CLを適宜、タイヤ中心CL、と称する。
本実施形態において、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向に関してタイヤ中心CLから遠い位置又は離れる方向をいう。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ幅方向に関してタイヤ中心CLに近い位置又は近付く方向をいう。タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向に関して回転軸AXから遠い位置又は離れる方向をいう。タイヤ径方向内側とは、タイヤ径方向に関して回転軸AXに近い位置又は近付く方向をいう。タイヤ周方向一側とは、タイヤ周方向に関して指定された方向をいう。タイヤ周方向他側とは、タイヤ周方向に関して指定された方向の逆方向をいう。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤとは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。なお、空気入りタイヤ1は、B章に定められる小型トラック用タイヤでもよいし、C章に定められるトラック及びバス用タイヤでもよい。
空気入りタイヤ1は、カーカス部2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、トレッド部10と、サイド部7とを備えている。トレッド部10は、トレッドゴム6を有して構成され、サイド部7は、サイドゴム8を有して構成されている。
また、本実施形態においては、空気入りタイヤ1が車両のリムホイールに装着された状態において、図1の右側を車両側(車両内側)とし、図1の左側を車両から離れた側(車両外側)とする。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、回転方向が予め指定されている。車両の前進時において、空気入りタイヤ1は、指定された回転方向に回転するように、車両のリムホイールに装着される。空気入りタイヤ1のサイド部7の表面には、回転方向を指定するセリアル記号が設けられている。
空気入りタイヤ1が備えるカーカス部2、ベルト層3、及びベルトカバー4のそれぞれは、コードを含む。コードは、補強材である。コードを、ワイヤと称してもよい。カーカス部2、ベルト層3、及びベルトカバー4のような補強材を含む層をそれぞれ、コード層と称してもよいし、補強材層と称してもよい。
カーカス部2は、空気入りタイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカス部2は、コードを含む。カーカス部2のコードを、カーカスコードと称してもよい。カーカス部2は、空気入りタイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス部2は、ビード部5に支持される。ビード部5は、タイヤ幅方向に関してカーカス部2の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカス部2は、ビード部5において折り返される。カーカス部2は、有機繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを覆うゴムとを含む。なお、カーカス部2は、ポリエステルのカーカスコードを含んでもよいし、ナイロンのカーカスコードを含んでもよいし、アラミドのカーカスコードを含んでもよいし、レーヨンのカーカスコードを含んでもよい。
ベルト層3は、空気入りタイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層3は、コードを含む。ベルト層3のコードを、ベルトコードと称してもよい。ベルト層3は、カーカス部2とトレッドゴム6との間に配置される。ベルト層3は、例えばスチールなどの金属繊維のベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルト層3は、有機繊維のベルトコードを含んでもよい。本実施形態において、ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのコードと第2ベルトプライ3Bのコードとが交差するように積層される。
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー4は、コードを含む。ベルトカバー4のコードを、カバーコードと称してもよい。ベルトカバー4は、空気入りタイヤ1の回転軸AXに対してベルト層3の外側に配置される。ベルトカバー4は、例えばスチールなどの金属繊維のカバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルトカバー4は、有機繊維のカバーコードを含んでもよい。
ビード部5は、カーカス部2の両端を固定する強度部材である。ビード部5は、空気入りタイヤ1をリムホイールのリムに固定させる。ビード部5は、ビードコア5Aと、ビードフィラー5Bと、インナーライナーゴム5Cと、リムクッションゴム5Dとを有する。ビードコア5Aは、ビードワイヤがリング状に巻かれた部材である。ビードワイヤは、スチールワイヤである。ビードフィラー5Bは、カーカス部2のタイヤ幅方向端部がビードコア5Aの位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。インナーライナーゴム5Cは、カーカス部2のタイヤ幅方向内側およびカーカス部2のタイヤ径方向内側に設けられる。リムクッションゴム5Dは、空気入りタイヤ1が装着されるリムと接触する。
トレッドゴム6は、カーカス部2を保護する。トレッドゴム6に、トレッド部10が形成される。トレッドゴム6は、タイヤ径方向外側に設けられる外層トレッドゴム6Aと、外層トレッドゴム6Aよりもタイヤ径方向内側に設けられる内層トレッドゴム6Bとを含む。
サイド部7は、タイヤ幅方向に関してトレッド部10の一側及び他側のそれぞれに設けられる。サイド部7は、タイヤ中心CLに対してトレッド部10の接地端E1,E2よりも外側に配置される。
なお、トレッド部10の接地端E1,E2とは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、平面上に垂直に置いて、正規荷重を加えた負荷状態のときにトレッド部10が接地する部分のタイヤ幅方向の端部をいう。
「正規リム」とは、空気入りタイヤ1が基づく規格を含む規格体系において、その規格が空気入りタイヤ1毎に定めているリムであり、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。但し、空気入りタイヤ1が新車装着タイヤの場合には、この空気入りタイヤ1が組まれる純正ホイールを用いる。
「正規内圧」とは、空気入りタイヤ1が基づく規格を含む規格体系において、その規格が空気入りタイヤ1毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。但し、空気入りタイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両に表示された空気圧とする。
「正規荷重」とは、空気入りタイヤ1が基づく規格を含む規格体系において、その規格が空気入りタイヤ1毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。但し、空気入りタイヤ1が乗用車用タイヤである場合には前記荷重の88[%]に相当する荷重とする。空気入りタイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両の車検証記載の前後軸重をそれぞれタイヤの数で除して求めた輪荷重とする。
本実施形態において、接地端E1は、車両内側に配置され、接地端E2は、車両外側に配置される。また、タイヤ幅方向に関してタイヤ中心CLの一方側のトレッド部10の接地端E1と他方側のトレッド部10の接地端E2との距離は、トレッド接地幅TWになっている。トレッド接地幅TWは、トレッド部10の接地幅を示しており、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、平面上に垂直に置いて、正規荷重を加えた負荷状態のときに測定される、タイヤ幅方向に関する接地幅の最大値をいう。
サイドゴム8は、カーカス部2を保護する。サイドゴム8は、タイヤ幅方向に関してトレッドゴム6の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドゴム8に、サイド部7が形成される。
図2は、図1に示すトレッド部10の一例を示す平面図である。図2に示すように、車両の前進時において、空気入りタイヤ1は、矢印で示す指定された回転方向Rに回転する。以下の説明において、空気入りタイヤ1が回転軸AXを中心に指定された回転方向Rに回転しながら路面を走行する場合において、トレッド部10のうち路面に先に接触する領域を適宜、先着側又は先着部、と称し、路面に後に接触する領域を適宜、後着側又は後着部、と称する。図2においては、図の下側が先着側であり、上側が後着側である。
図1及び図2に示すように、トレッド部10は、タイヤ幅方向に複数設けられ、それぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝30と、周方向主溝30によって区画される複数のリブ50と、リブ50に設けられる複数のラグ溝40とを有する。周方向主溝30及びラグ溝40は、トレッドゴム6に形成される。リブ50は、周方向主溝30によって区画されるトレッドゴム6の陸部である。リブ50は、路面と接触可能な接地面(踏面)20を有する。
周方向主溝30は、タイヤ周方向に延在する。周方向主溝30は、タイヤ赤道面CLとトレッド部10とが交差するタイヤ赤道線と実質的に平行である。
周方向主溝30とは、1.0mm以上の溝幅を有し、4.0mm以上の溝深さを有し、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。なお、一般に、周方向主溝30は、6.0mm以上の溝幅を有し、7.0mm以上の溝深さを有する。周方向主溝30は、内部にトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を有する。トレッドウェアインジケータは、摩耗末期を示す。
ラグ溝40は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延在する。ラグ溝40は、周方向主溝30と交差するように、リブ50に設けられる。この場合、ラグ溝40は、タイヤ幅方向に対して平行でなくてもよく、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜していてもよい。ラグ溝40は、タイヤ周方向への傾斜角度に関わらず、少なくともタイヤ幅方向に延びて形成されていればよい。また、ラグ溝40の少なくとも一部は、周方向主溝30と接続される。
ラグ溝40とは、2.0mm以上の溝幅を有し、3.0mm以上の溝深さを有し、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延在する横溝をいう。ラグ溝40は、リブ50をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造でもよいし、一方の端部がリブ50で終端するセミクローズド構造でもよいし、両方の端部がリブ50で終端するクローズド構造でもよい。
周方向主溝30は、タイヤ幅方向に少なくとも3本設けられる。図1及び図2に示すように、本実施形態において、周方向主溝30は、4本設けられる。本実施形態において、周方向主溝30は、最も車両内側に設けられる第1周方向主溝31と、第1周方向主溝31に次いで車両内側に設けられる第2周方向主溝32と、第2周方向主溝32に次いで車両内側に設けられる第3周方向主溝33と、最も車両外側に設けられる第4周方向主溝34とを含む。
また、本実施形態においては、第4周方向主溝34よりも車両外側に、周方向副溝35が設けられる。
リブ50は、タイヤ幅方向に複数設けられる。複数のリブ50のそれぞれは、タイヤ周方向に延在する。リブ50は、タイヤ赤道面CLとトレッド部10とが交差するタイヤ赤道線と実質的に平行である。
リブ50は、タイヤ幅方向に少なくとも2本設けられる。図1及び図2に示すように、本実施形態において、リブ50は、4本設けられる。本実施形態において、リブ50は、最も車両内側に設けられる第1リブ51と、第1リブ51に次いで車両内側に設けられる第2リブ52と、第2リブ52に次いで車両内側に設けられる第3リブ53と、最も車両外側に設けられる第4リブ54とを含む。
第1リブ51は、第1周方向主溝31と第2周方向主溝32との間に設けられ、第1周方向主溝31及び第2周方向主溝32によって区画される。第2リブ52は、第2周方向主溝32と第3周方向主溝33との間に設けられ、第2周方向主溝32及び第3周方向主溝33によって区画される。第3リブ53は、第3周方向主溝33と第4周方向主溝34との間に設けられ、第3周方向主溝33及び第4周方向主溝34によって区画される。第4リブ54は、第4周方向主溝34と周方向副溝35との間に設けられ、第4周方向主溝34及び周方向副溝35によって区画される。
本実施形態において、タイヤ中心CLは、第2リブ52に配置される。第1周方向主溝31、第2周方向主溝32、及び第1リブ51は、タイヤ中心CLよりも車両内側(接地端E1側)に配置される。第3周方向主溝33、第4周方向主溝34、周方向副溝35、第3リブ53、及び第4リブ54は、タイヤ中心CLよりも車両外側(接地端E2側)に配置される。
リブ50の接地面20は、第1リブ51の接地面20である第1接地面21と、第2リブ52の接地面20である第2接地面22と、第3リブ53の接地面20である第3接地面23と、第4リブ54の接地面20である第4接地面24とを含む。
ラグ溝40は、第1リブ51に設けられる第1ラグ溝41と、第2リブ52に設けられる第2ラグ溝42と、第3リブ53に設けられる第3ラグ溝43と、第4リブ54に設けられる第4ラグ溝44とを含む。
第1ラグ溝41は、第1リブ51に複数設けられる。複数の第1ラグ溝41は、互いにタイヤ周方向に離れている。第1ラグ溝41の一方の端部は、第1周方向主溝31と接続され、他方の端部は、第1周方向主溝31及び第2周方向主溝32の両方と接続されない。第1ラグ溝41は、第1周方向主溝31と接続された一方の端部から、第1周方向主溝31及び第2周方向主溝32の両方と接続されない他方の端部に向かって、タイヤ幅方向に延在した後、空気入りタイヤ1の回転方向Rに延在するように形成される。
第2ラグ溝42は、第2リブ52に複数設けられる。複数の第2ラグ溝42は、互いにタイヤ周方向に離れている。第2ラグ溝42の一方の端部は、第2周方向主溝32と接続され、他方の端部は、第2周方向主溝32及び第3周方向主溝33の両方と接続されない。第2ラグ溝42は、第2周方向主溝32と接続された一方の端部から、第2周方向主溝32及び第3周方向主溝33の両方と接続されない他方の端部に向かって、タイヤ幅方向に延在した後、空気入りタイヤ1の回転方向Rに延在するように形成される。
第3ラグ溝43は、第3リブ53に複数設けられる。複数の第3ラグ溝43は、互いにタイヤ周方向に離れている。第3ラグ溝43の一方の端部は、第3周方向主溝33と接続され、他方の端部は、第3周方向主溝33及び第4周方向主溝34の両方と接続されない。第3ラグ溝43は、第3周方向主溝33と接続された一方の端部から、第3周方向主溝33及び第4周方向主溝34の両方と接続されない他方の端部に向かって、空気入りタイヤ1の回転方向Rの反対方向に傾斜するように形成される。
第4ラグ溝44は、第4リブ54に複数設けられる。複数の第4ラグ溝44は、互いにタイヤ周方向に離れている。第4ラグ溝44の一方の端部は、第4周方向主溝34と接続され、他方の端部は、第4周方向主溝34及び周方向副溝35の両方と接続されない。第4ラグ溝44は、第4周方向主溝34と接続された一方の端部から、第4周方向主溝34及び周方向副溝35の両方と接続されない他方の端部に向かって、空気入りタイヤ1の回転方向Rの反対方向に傾斜するように形成される。
[ベルト領域]
次に、リブ50に設定される第1ベルト領域61及び第2ベルト領域62と、リブ50の溝面積比とについて説明する。以下の説明においては、第1リブ51についての第1ベルト領域61及び第2ベルト領域62と溝面積比とについて説明する。第2,第3,第4リブ52,53,54についても同様である。
図3は、図2に示す第1リブ51の拡大図である。第1リブ51は、第1周方向主溝31と第2周方向主溝32との間に設けられる。第1周方向主溝31及び第2周方向主溝32は、タイヤ周方向にそれぞれ延在する。
第1リブ51のタイヤ幅方向の一方の端部は、開口端部K1を境界として、第1周方向主溝31と隣接する。開口端部K1は、第1周方向主溝31の内壁面と接地面20との境界である。第1リブ51のタイヤ幅方向の他方の端部は、開口端部K2を境界として、第2周方向主溝32と隣接する。開口端部K2は、第2周方向主溝32の内壁面と接地面20との境界である。開口端部K1及び開口端部K2はそれぞれ、タイヤ周方向に延在する。
第1リブ51のタイヤ幅方向の寸法を示すリブ幅Lは、第1リブ51の両隣に設けられる第1周方向主溝31及び第2周方向主溝32のうち、第1リブ51の第1接地面21との境界に配置される開口端部K1と開口端部K2とのタイヤ幅方向の距離である。第1周方向主溝31の開口端部K1は、第1周方向主溝31の内壁面と第1リブ51の第1接地面21とで形成される角部の頂点をいう。第2周方向主溝32の開口端部K2は、第2周方向主溝32の内壁面と第1リブ51の第1接地面21とで形成される角部の頂点をいう。なお、第1周方向主溝31の内壁面と第1リブ51の第1接地面21とで形成される角部が面取りされている場合、第1周方向主溝31の開口端部K1は、面取面Cmと第1接地面21との交点をいう。同様に、第2周方向主溝32の内壁面と第1リブ51の第1接地面21とで形成される角部が面取りされている場合、第2周方向主溝32の開口端部K2は、面取面Cmと第1接地面21との交点をいう。
第1リブ51のタイヤ周方向の寸法を示すリブ周長Cは、第1リブ51のタイヤ周方向の寸法を示す。リブ周長Cは、例えば、タイヤ周方向に延在する開口端部K1又は開口端部K2のタイヤ周方向の寸法である。
本実施形態において、開口端部K1及び開口端部K2はそれぞれ、直線状である。開口端部K1と開口端部K2とは実質的に平行である。即ち、第1リブ51は、ストレート状のリブであり、第1リブ51のリブ幅Lは、タイヤ周方向に関して均一(等幅)である。
第1リブ51には第1ラグ溝41が複数設けられる。複数の第1ラグ溝41は、互いにタイヤ周方向に離れている。第1ラグ溝41の一方の端部は、第1周方向主溝31と接続され、第1ラグ溝41の他方の端部は、第1周方向主溝31及び第2周方向主溝32の両方と接続されない。すなわち、第1ラグ溝41は、非貫通ラグ溝の一種である、所謂、セミクローズド構造(片側非貫通ラグ溝)である。
また、第1ラグ溝41は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときにおいて、2.0mm以上の溝幅を有し、3.0mm以上の溝深さを有する。第1ラグ溝41は、第1接地面21が接地した状態においても、閉じられない。
第1ラグ溝41は、開口端部を有する。第1ラグ溝41の開口端部とは、第1ラグ溝41の内壁面と第1ラグ溝41の周囲に配置される第1接地面21との境界部である。本実施形態において、第1リブ51に設けられる複数の第1ラグ溝41の形状及び寸法はそれぞれ等しい。即ち、第1接地面21と実質的に平行な面内において、複数の第1ラグ溝41の開口端部の形状及び大きさは、それぞれ等しい。
本実施形態において、第1接地面21を含む第1リブ51の表面は、第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とに分けられる。第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とは、タイヤ幅方向の第1リブ51の中心RLを境界として分けられる。第1ベルト領域61及び第2ベルト領域62はそれぞれ、タイヤ周方向に延在する領域である。タイヤ幅方向における第1ベルト領域61の幅と、タイヤ幅方向における第2ベルト領域62の幅とは、等しい。
第1ベルト領域61は、第1周方向主溝31と隣接し、中心RLと開口端部K1との間の領域である。第2ベルト領域62は、第2周方向主溝32と隣接し、中心RLと開口端部K2との間の領域である。
[溝面積比]
次に、溝面積比について説明する。以下で説明する溝面積比は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときに計測及び算出される値である。
なお、本実施形態において、溝面積比の算出に用いられるラグ溝40とは、2.0mm以上の溝幅を有し、3.0mm以上の溝深さを有する溝であり、ラグ溝40が設けられたトレッドゴム6が接地してもラグ溝40の開口が閉じない溝である。従って、所謂サイプのような、トレッドゴム6が接地したときにその開口が閉じる細溝は、溝面積比の算出に用いられない。
本実施形態においては、溝面積比Sが、第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とで異なる。リブ50の溝面積比Sは、各リブ50の表面積Mと、当該リブ50に設けられるラグ溝40の開口面積mとの比であり、下記の式(1)で表される。
S=m/M・・・(1)
例えば、第1リブ51の溝面積比Sは、第1リブ51の表面積Mと、第1リブ51に設けられる第1ラグ溝41の開口面積mとを用いて、式(1)で表すことができる。第1リブ51の表面積Mとは、第1リブ51のタイヤ幅方向の寸法を示すリブ幅Lと、第1リブ51のタイヤ周方向の寸法を示すリブ周長Cとの積である。即ち、第1リブ51の表面積Mとは、第1リブ51に第1ラグ溝41が設けられていないと仮定したときの、第1リブ51の第1接地面21の面積である。
第1ラグ溝41の開口面積mとは、第1接地面21と実質的に平行な面内における、第1ラグ溝41の開口端部によって囲まれた領域の面積qと、第1リブ51に設けられる第1ラグ溝41の数nとの積である。各第1ラグ溝41の面積qは、第1ラグ溝41の長さlと第1ラグ溝41の溝幅wとの積である。第1ラグ溝41の長さlは、湾曲する第1ラグ溝41における、長辺のペリフェリー長さを用いるのが好ましく、第1ラグ溝41の溝幅wは、第1ラグ溝41の平均の溝幅を用いるのが好ましい。上述のように、第1ラグ溝41はタイヤ周方向に複数設けられ、複数の第1ラグ溝41の開口端部の形状及び大きさは、それぞれ等しい。このため、複数の第1ラグ溝41の面積qはそれぞれ等しい。
これらのように定義されるリブ50の溝面積比Sは、第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とで異なっている。つまり、第1ベルト領域61の溝面積比Sは、リブ50の第1ベルト領域61の表面積Mに対する、ラグ溝40における第1ベルト領域61と第2ベルト領域62との境界よりも第1ベルト領域61側に位置する部分のラグ溝40の開口面積mの比率になっている。また、第2ベルト領域62の溝面積比Sは、リブ50の第2ベルト領域62の表面積Mに対する、ラグ溝40における第1ベルト領域61と第2ベルト領域62との境界よりも第2ベルト領域62側に位置する部分のラグ溝40の開口面積mの比率になっている。リブ50の溝面積比Sは、この第1ベルト領域61の溝面積比Sと、第2ベルト領域62の溝面積比Sとが、互いに異なっている。
また、リブ50の溝面積比Sは、リブ50ごとに異なっている。リブ50の種別をxとし、ベルト領域の種別をyとする場合、各リブ50におけるベルト領域ごとの溝面積比Sは、下記の式(2)で表される。
式(2)におけるリブ50の種別xは、本実施形態においては、第1リブ51ではx=1とし、第2リブ52ではx=2とし、第3リブ53ではx=3とし、第4リブ54ではx=4とする。また、ベルト領域の種別yは、本実施形態においては、第1ベルト領域61ではy=1とし、第2ベルト領域62ではy=2とする。これらの場合、例えば、第1リブ51の第1ベルト領域61の溝面積比S11は、下記の式(3)のように表すことができる。
式(3)における第1ラグ溝41の長さl11は、第1ラグ溝41における、第1ベルト領域61内に位置する部分の長辺のペリフェリー長さになっている。また、式(3)における第1ラグ溝41の溝幅w11は、第1ラグ溝41における、第1ベルト領域61内に位置する部分の平均の溝幅になっている。第1ラグ溝41における、第1ベルト領域61内に位置する部分の長辺のペリフェリー長さl11と、第1ラグ溝41における、第1ベルト領域61内に位置する部分の平均の溝幅w11とを乗算することにより、第1ラグ溝41における第1ベルト領域61内に位置する部分の面積q1を、簡易的に求めることができる。なお、第1ラグ溝41の第1ベルト領域61内に位置する部分の溝幅w11は、簡易的に、第1ラグ溝41における第1ベルト領域61内に位置する部分の、長辺の中間位置での溝幅を用いてもよい。
また、第1リブ51の第2ベルト領域62の溝面積比S12は、下記の式(4)のように表すことができる。
式(4)における第1ラグ溝41の長さl12は、第1ラグ溝41における、第2ベルト領域62内に位置する部分の長辺のペリフェリー長さになっている。また、式(4)における第1ラグ溝41の溝幅w12は、第1ラグ溝41における、第2ベルト領域62内に位置する部分の平均の溝幅になっている。第1ラグ溝41における、第2ベルト領域62内に位置する部分の長辺のペリフェリー長さl12と、第1ラグ溝41における、第2ベルト領域62内に位置する部分の平均の溝幅w12とを乗算することにより、第1ラグ溝41における第2ベルト領域62内に位置する部分の面積q2を、簡易的に求めることができる。なお、第1ラグ溝41の第2ベルト領域62内に位置する部分の溝幅w12は、簡易的に、第1ラグ溝41における第2ベルト領域62内に位置する部分の、長辺の中間位置での溝幅を用いてもよい。本実施形態では、式(3)によって算出する第1ベルト領域61の溝面積比S11と、式(4)によって算出する第2ベルト領域62の溝面積比S12とが異なっている。
図4は、図3に示す第1ラグ溝41の拡大図である。第1ラグ溝41の各値について図4を用いて説明すると、第1ラグ溝41の長さl11とは、第1ラグ溝41における第1ベルト領域61内に位置する部分の第1ラグ溝41の2つの開口端部Ka,Kbのうち、長い方の開口端部の寸法を示す。第1ラグ溝41の長さl12とは、第1ラグ溝41における第2ベルト領域62内に位置する部分の第1ラグ溝41の2つの開口端部Ka,Kbのうち長い方の開口端部の寸法を示す。第1ラグ溝41の開口端部Ka,Kbは、第1接地面21と実質的に平行な面内において、第1ラグ溝41の一方の端部と他方の端部との間において延在する。第1ラグ溝41の開口端部Ka,Kbの寸法とは、第1接地面21と実質的に平行な面内における、開口端部Ka,Kbの一方の端部と他方の端部との間の、開口端部Ka,Kbに沿った寸法をいう。
図4に示す例では、第1ラグ溝41の2つの開口端部Ka,Kbのうち、開口端部Kbの方が開口端部Kaよりも長い。従って、図4に示す例では、第1ラグ溝41の長さl11は、第1ベルト領域61のうち第1接地面21と実質的に平行な面内における開口端部Kbの一方の端部と他方の端部との間の開口端部Kbに沿った寸法である。第1ラグ溝41の長さl12は、第2ベルト領域62のうち第1接地面21と実質的に平行な面内における開口端部Kbの一方の端部と他方の端部との間の開口端部Kbに沿った寸法である。
なお、図4に示すように、第1,第2周方向主溝31,32の内壁面と第1リブ51の第1接地面21で形成される角部が面取りされている場合、第1ラグ溝41の開口端部Kbの寸法は、面取面Cmを除外した寸法である。なお、開口端部Kaの寸法と開口端部Kbの寸法とが等しい場合、第1ラグ溝41の長さl11,l12として、開口端部Kaの寸法及び開口端部Kbの寸法のいずれか一方が採用される。
第1ラグ溝41の溝幅w11は、基本的には、第1ラグ溝41における、第1ベルト領域61内に位置する部分の平均の溝幅を用いる。ただし、簡易的に、第1ラグ溝41における第1ベルト領域61内に位置する部分の、長辺の中間位置での溝幅を第1ラグ溝41の溝幅w11として用いる場合は、図4に示す例では、第1ラグ溝41の開口端部Kbにおける第1ベルト領域61内に位置する部分の中点の位置での、開口端部Kbと開口端部Kaとの距離を、第1ラグ溝41の溝幅w11として用いる。第1ラグ溝41の溝幅w12は、基本的には、第1ラグ溝41における、第2ベルト領域62内に位置する部分の平均の溝幅を用いる。ただし、簡易的に、第1ラグ溝41における第2ベルト領域62内に位置する部分の、長辺の中間位置での溝幅を第1ラグ溝41の溝幅w12として用いる場合は、図4に示す例では、第1ラグ溝41の開口端部Kbにおける第2ベルト領域62内に位置する部分の中点の位置での、開口端部Kbと開口端部Kaとの距離を、第1ラグ溝41の溝幅w12として用いる。
[微小凸部]
次に、微小凸部70について説明する。トレッド部10の接地面20には微小凸部70が複数設けられている。微小凸部70はタイヤ周方向に延在し、各リブ50にそれぞれ設けられている。このうち、一部の微小凸部70は、リブ50のタイヤ周方向の一周に亘って延在している。具体的には、複数の微小凸部70のうち、ラグ溝40によって分断されないものは、全てタイヤ周方向の一周に亘って延在している。また、ラグ溝40によって分断されている微小凸部70も、分断されている部分以外は、タイヤ周方向に延在している。微小凸部70は、リブ50のタイヤ周方向の一周に亘って延在するものを少なくとも1本以上有するのが好ましい。本実施形態では、第2リブ52に、タイヤ周方向の一周に亘って延在する微小凸部70が設けられている。
微小凸部70は、リブ50の第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とのうち、溝面積比が大きい方の領域に少なくとも設けられている。例えば、第1リブ51の第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とのうち、溝面積比が大きい方の領域の第1接地面21に、微小凸部70は少なくとも設けられている。第1リブ51の第1ベルト領域61は、複数の第1ラグ溝41のそれぞれが、タイヤ幅方向における第1ベルト領域61の両端に亘って設けられている。このため、第1リブ51の第1ベルト領域61に配設される微小凸部70は、タイヤ周方向に延在しつつ、第1ラグ溝41と交差する部分は第1ラグ溝41によって分断されている。
図5は、図4のB−B断面図である。図6は、図5のD部詳細図である。各微小凸部70は、小さな大きさで接地面20から突出して形成されており、接地面20からの高さと、微小凸部70の平面視における幅は、高さと幅との比がほぼ1対2になっている。具体的には、微小凸部70は、幅Wcが0.2mm以上1.0mm以下の範囲内になっており、高さHcが0.1mm以上0.5mm以下の範囲内になっている。また、微小凸部70は、微小凸部70の延在方向に直交する方向における断面形状が、半円状の形状で形成されている。
図7は、図4のC部詳細図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、スリットベントT(図8参照)を有する、後述するタイヤ加硫成形金型100(図9参照)によって製造する。スリットベントTは、タイヤ加硫成形金型100におけるトレッド成形面135(図8参照)に設けられるため、空気入りタイヤ1の接地面20には、トレッド成形面135のスリットベントTが設けられている位置に該当する位置に、スリットベントTの跡であるベント跡80が形成される。ベント跡80は、後述するタイヤ加硫成形工程にて、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントTの開口部により形成され、微細、且つ、線状の凸部として接地面20に備えられている。ベント跡80は、例えば、0.005mm以上0.008mm以下の幅で接地面20に現れる。
このように、スリットベントTの跡として接地面20に現れるベント跡80は、タイヤ幅方向に並ぶ全てのリブ50の接地面20に、1本以上現れている。各リブ50のベント跡80は、タイヤ周方向に延在して現れ、ラグ溝40が配置される位置では、ラグ溝40によって分断されつつ、タイヤ周方向に延在している。
リブ50の接地面20に形成されるベント跡80のうち、一部のベント跡80は、微小凸部70上に形成される。微小凸部70上に形成されるベント跡80は、微小凸部70の頂部71に位置して形成される。即ち、微小凸部70上に形成されるベント跡80は、微小凸部70において接地面20から最も離れる部分である頂部71に位置して形成され、微小凸部70に沿って延在する。
[タイヤ加硫成形金型]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造に用いるタイヤ加硫成形金型100について説明する。図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1を製造するタイヤ加硫成形金型100の説明図である。図9は、図8に示すタイヤ加硫成形金型100を構成する複数のセクター101の連結構造の説明図である。タイヤ加硫成形金型100は、図9に示すように、分割型のタイヤ加硫成形金型100である、いわゆるセクターモールドとして構成されており、複数のセクター101を相互に連結して成る環状構造を有している。なお、図9では、タイヤ加硫成形金型100が8つのセクター101から成る8分割構造の形態を図示しているが、タイヤ加硫成形金型100の分割数は、これに限定されない。
1つのセクター101は、図8に示すように、製品となる空気入りタイヤ1のトレッドプロファイルに対応する凹凸部102をもつ複数のピース103と、これらのピース103を相互に隣接させて装着するバックブロック104とを備える。なお、図8はセクター101の一例であり、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッドパターンとは異なるトレッド成形面135を備えている。
1つのピース103は、一定のピッチまたは任意のピッチで分割されたトレッドパターンの一部分に対応し、このトレッドパターンの部分を形成するための凹凸部102をトレッド成形面135に有している。また、複数のピース103が集合して、1つのセクター101のトレッド成形面135が構成される。例えば、図8に示すセクター101では、1つのセクター101のトレッド成形面135が、タイヤ加硫成形金型100で加硫成形を行う空気入りタイヤ1の幅方向に相当するタイヤ軸方向に2分割され、且つ、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に相当する方向に4分割されて、8つのピース103に分割されている。
また、各ピース103は、第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとからなり、これらの第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとを、ダイカスト鋳造により複数回のショットに分けて積層して製造される。
具体的には、各ピース103は、まず第1ショット鋳造工程にて、第1ピースブロック103a用の分割金型に、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料を鋳込んで、第1ピースブロック103aを鋳造する。この第1ピースブロック103aには、1つのピース103に割り当てられたトレッドパターンの部分の一部と、第2ピースブロック103bを積層するための領域とが形成される。また、必要に応じて、鋳造後の第1ピースブロック103aに機械加工が行われる。次に、第2ショット鋳造工程にて、第2ピースブロック103b用の分割金型に第1ピースブロック103aを配置し、第1ピースブロック103aと同種の金属材料を鋳込んで、第1ピースブロック103aと第2ピースブロック103bとの積層体を鋳造する。このとき、第2ピースブロック103bには、トレッドパターンの部分の残りが形成される。これにより、1つのピース103が鋳造される。また、必要に応じて、鋳造後のピース103に機械加工が行われる。
バックブロック104は、U字断面形状の円弧状部材からなり、複数のピース103をU字断面形状の凹部に所定の配列で装着して保持する。これにより、1つのセクター101が構成される。
タイヤ加硫成形金型100は、これらのように構成されるセクター101が複数用いられ、複数のセクター101が環状に連結されることにより構成される(図9参照)。タイヤ加硫成形金型100は、このように複数のセクター101が環状に連結されることにより、各セクター101のトレッド成形面135が集合し、トレッドパターン全体のトレッド成形面135が構成される。
[トレッド成形面]
図10は、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面135の平面図である。複数のセクター101が連結されることにより構成されるトレッド成形面135には、空気入りタイヤ1の周方向主溝30を成形する複数の周方向主溝成形骨120と、空気入りタイヤ1の周方向副溝35を成形する周方向副溝成形骨125と、空気入りタイヤ1のラグ溝40を成形する複数のラグ溝成形骨130と、空気入りタイヤ1のリブ50を成形する複数のリブ成形部140と、が設けられている。
周方向主溝成形骨120と周方向副溝成形骨125とは、トレッド成形面135から突出して各セクター101(図9参照)のピース103(図9参照)に設けられると共に、複数のセクター101を環状に連結することにより、空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に相当する方向である金型周方向に、タイヤ加硫成形金型100の全周に亘って延在している。周方向主溝成形骨120は、空気入りタイヤ1の周方向主溝30に対応して設けられている。
このため、周方向主溝成形骨120は、空気入りタイヤ1の第1周方向主溝31に対応する第1周方向主溝成形骨121と、第2周方向主溝32に対応する第2周方向主溝成形骨122と、第3周方向主溝33に対応する第3周方向主溝成形骨123と、第4周方向主溝34に対応する第4周方向主溝成形骨124と、を有している。これらの第1周方向主溝成形骨121と、第2周方向主溝成形骨122と、第3周方向主溝成形骨123と、第4周方向主溝成形骨124とは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向に相当する方向である金型幅方向に並んで配置されている。また、周方向副溝成形骨125は、第4周方向主溝成形骨124に対して、金型幅方向において第3周方向主溝成形骨123が位置する側の反対側に第4周方向主溝成形骨124に並んで配置されている。
なお、以下の説明では、タイヤ加硫成形金型100によって加硫成形を行う空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に相当する方向を、タイヤ加硫成形金型100の金型周方向として説明する。タイヤ加硫成形金型100の金型周方向は、タイヤ加硫成形金型100の複数のセクター101を環状に連結する場合における環状の円周方向である。また、以下の説明では、タイヤ加硫成形金型100によって加硫成形を行う空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向に相当する方向を、タイヤ加硫成形金型100の金型幅方向として説明する。タイヤ加硫成形金型100の金型幅方向は、タイヤ加硫成形金型100の複数のセクター101を環状に連結する場合における環状の軸方向である。
ラグ溝成形骨130は、周方向主溝成形骨120と同様にトレッド成形面135から突出して配設され、目的とするラグ溝40の形状に沿った方向に延在している。即ち、ラグ溝40は、主にタイヤ幅方向に延びる溝であるため、ラグ溝成形骨130は、主にタイヤ加硫成形金型100の金型幅方向に延びる形状で形成される。ラグ溝成形骨130は、空気入りタイヤ1のラグ溝40に対応して設けられている。このため、ラグ溝成形骨130は、空気入りタイヤ1の第1ラグ溝41に対応する第1ラグ溝成形骨131と、第2ラグ溝42に対応する第2ラグ溝成形骨132と、第3ラグ溝43に対応する第3ラグ溝成形骨133と、第4ラグ溝44に対応する第4ラグ溝成形骨134と、を有している。
第1ラグ溝成形骨131は、第1周方向主溝成形骨121と第2周方向主溝成形骨122との間に複数が配置され、複数の第1ラグ溝成形骨131は、互いに金型周方向に離間して配置されている。第2ラグ溝成形骨132は、第2周方向主溝成形骨122と第3周方向主溝成形骨123との間に複数が配置され、複数の第2ラグ溝成形骨132は、互いに金型周方向に離間して配置されている。第3ラグ溝成形骨133は、第3周方向主溝成形骨123と第4周方向主溝成形骨124との間に複数が配置され、複数の第3ラグ溝成形骨133は、互いに金型周方向に離間して配置されている。第4ラグ溝成形骨134は、第4周方向主溝成形骨124と周方向副溝成形骨125との間に複数が配置され、複数の第4ラグ溝成形骨134は、互いに金型周方向に離間して配置されている。
リブ成形部140は、周方向主溝成形骨120に隣接して金型周方向に延在している。また、リブ成形部140は、周方向主溝成形骨120やラグ溝成形骨130とは異なり、トレッド成形面135から突出しておらず、セクター101を環状に連結した際におけるトレッド成形面135の内周面を構成する。即ち、リブ成形部140は、トレッド成形面135における基準となる面を構成し、空気入りタイヤ1のリブ50の接地面20を成形する。リブ成形部140は、空気入りタイヤ1のリブ50に対応して設けられている。
このため、リブ成形部140は、空気入りタイヤ1の第1リブ51に対応する第1リブ成形部141と、第2リブ52に対応する第2リブ成形部142と、第3リブ53に対応する第3リブ成形部143と、第4リブ54に対応する第4リブ成形部144と、を有している。このうち、第1リブ成形部141は、第1周方向主溝成形骨121と第2周方向主溝成形骨122との間に位置している。第2リブ成形部142は、第2周方向主溝成形骨122と第3周方向主溝成形骨123との間に位置している。第3リブ成形部143は、第3周方向主溝成形骨123と第4周方向主溝成形骨124との間に位置している。第4リブ成形部144は、第4周方向主溝成形骨124と周方向副溝成形骨125との間に位置している。
図11は、図10に示す第1リブ成形部141の拡大図である。リブ成形部140は、空気入りタイヤ1のリブ50と同様に、リブ成形部140の表面積と、ラグ溝成形骨130の断面積との比である溝成形骨断面積比が、第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とで異なっている。
例えば、第1リブ成形部141を用いて説明すると、第1リブ成形部141の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とは、金型幅方向における第1リブ成形部141の中心RLを境界として分けられる。この場合における第1リブ成形部141の中心RLは、金型幅方向における第1リブ成形部141の幅MLの中心位置になっている。なお、第1リブ成形部141と周方向主溝成形骨120とで形成される角部が面取りされている場合、第1リブ成形部141の幅MLは、面取面Cmを含まない幅になっている。第1リブ成形部141の中心RLを境界として分けられる第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とは、それぞれ金型周方向に延在している。
また、第1リブ成形部141の表面積は、第1リブ成形部141の金型幅方向の幅MLと、第1リブ成形部141の金型周方向の長さであるリブ成形部周長MCとの積になっている。第1リブ成形部141に隣接するラグ溝成形骨130である第1ラグ溝成形骨131の断面積は、空気入りタイヤ1の第1ラグ溝41の開口面積に相当する位置の断面積を用いる。
図12は、図11のE−E断面図であり、第1ラグ溝成形骨131の断面積の算出位置についての説明図である。第1ラグ溝成形骨131における、空気入りタイヤ1の第1ラグ溝41の開口面積に相当する位置の断面積は、第1ラグ溝成形骨131における、第1リブ成形部141との接合面Jの面積になっている。つまり、溝成形骨断面積比の算出に用いる第1ラグ溝成形骨131の断面積は、第1ラグ溝成形骨131の第1リブ成形部141と同一平面上の断面積になっている。
第1リブ成形部141は、第1リブ成形部141における第1ベルト領域146の表面積と、第1ラグ溝成形骨131における第1ベルト領域146内に位置する部分の断面積との比と、第1リブ成形部141における第2ベルト領域147の表面積と、第1ラグ溝成形骨131における第2ベルト領域147内に位置する部分の断面積との比とが、互いに異なっている。
第1リブ成形部141を用いて説明したように、リブ成形部140の溝成形骨断面積比MSは、第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とで異なっている。つまり、第1ベルト領域146の溝成形骨断面積比MSは、リブ成形部140の第1ベルト領域146の表面積に対する、ラグ溝成形骨130における第1ベルト領域146と第2ベルト領域147との境界よりも第1ベルト領域146側に位置する部分のラグ溝成形骨130の断面積の比率になっている。また、第2ベルト領域147の溝成形骨断面積比MSは、リブ成形部140の第2ベルト領域147の表面積に対する、ラグ溝成形骨130における第1ベルト領域146と第2ベルト領域147との境界よりも第2ベルト領域147側に位置する部分のラグ溝成形骨130の断面積の比率になっている。リブ成形部140の溝成形骨断面積比MSは、この第1ベルト領域146の溝成形骨断面積比MSと、第2ベルト領域147の溝成形骨断面積比MSとが、互いに異なっている。
また、リブ成形部140の溝成形骨断面積比MSは、リブ成形部140ごとに異なっている。ラグ溝成形骨130の長さをmlとし、ラグ溝成形骨130の幅をmwとし、1つのリブ成形部140に設けられるラグ溝成形骨130の個数をmnとし、リブ成形部140の種別をxとし、ベルト領域の種別をyとする場合、各リブ成形部140におけるベルト領域ごとの溝成形骨断面積比MSは、下記の式(5)で表される。
なお、ラグ溝成形骨130の長さmlと幅mwとは、それぞれラグ溝成形骨130における、リブ成形部140に対する接合面Jの長さや幅になっている。また、湾曲するラグ溝40を成形するためにラグ溝成形骨130が湾曲している場合は、式(5)におけるラグ溝成形骨130の長さmlは、湾曲するラグ溝成形骨130の接合面Jにおける、長辺のペリフェリー長さを用いるのが好ましく、ラグ溝成形骨130の接合面Jの幅mwは、ラグ溝成形骨130の接合面Jの平均の幅を用いるのが好ましい。
式(5)におけるリブ成形部140の種別xは、第1リブ成形部141ではx=1とし、第2リブ成形部142ではx=2とし、第3リブ成形部143ではx=3とし、第4リブ成形部144ではx=4とする。また、ベルト領域の種別yは、第1ベルト領域146ではy=1とし、第2ベルト領域147ではy=2とする。これらの場合、例えば、第1リブ成形部141の第1ベルト領域146の溝成形骨断面積比MS11は、下記の式(6)のように表すことができる。
式(6)における第1ラグ溝成形骨131の長さml11は、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける、第1ベルト領域146内に位置する部分の長辺のペリフェリー長さになっている。また、式(6)における第1ラグ溝成形骨131の幅mw11は、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける、第1ベルト領域146内に位置する部分の平均の幅になっている。なお、第1ラグ溝成形骨131の第1ベルト領域146内に位置する部分の幅mw11は、簡易的に、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける第1ベルト領域146内に位置する部分の、長辺の中間位置での幅を用いてもよい。
また、第1リブ成形部141の第2ベルト領域147の溝成形骨断面積比MS12は、下記の式(7)のように表すことができる。
式(7)における第1ラグ溝成形骨131の長さml12は、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける、第2ベルト領域147内に位置する部分の長辺のペリフェリー長さになっている。また、式(7)における第1ラグ溝成形骨131の幅mw12は、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける、第2ベルト領域147内に位置する部分の平均の幅になっている。なお、第1ラグ溝成形骨131の第2ベルト領域147内に位置する部分の幅mw12は、簡易的に、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける第2ベルト領域147内に位置する部分の、長辺の中間位置での幅を用いてもよい。本実施形態では、式(6)によって算出する第1ベルト領域146の溝成形骨断面積比MS11と、式(7)によって算出する第2ベルト領域147の溝成形骨断面積比MS12とが異なっている。
図13は、図11に示す第1ラグ溝成形骨131の接合面Jの拡大図である。図13は、第1リブ成形部141から突出する第1ラグ溝成形骨131を除去し、第1リブ成形部141に対する第1ラグ溝成形骨131の接合面Jを図示したものになっている。第1ラグ溝成形骨131の各値について図13を用いて説明すると、第1ラグ溝成形骨131の長さml11とは、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける第1ベルト領域146内に位置する部分の2つの接合面端部Ea,Ebのうち、長い方の接合面端部の寸法を示す。第1ラグ溝成形骨131の長さml12とは、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける第2ベルト領域147内に位置する部分の2つの接合面端部Ea,Ebのうち、長い方の接合面端部の寸法を示す。第1ラグ溝成形骨131の接合面端部Ea,Ebは、第1ラグ溝成形骨131の長さ方向における一方の端部と他方の端部との間において延在する。第1ラグ溝成形骨131の接合面端部Ea,Ebの長さとは、接合面端部Ea,Ebの一方の端部と他方の端部との間の、接合面端部Ea,Ebに沿った寸法をいう。
図13に示す例では、第1ラグ溝成形骨131の2つの接合面端部Ea,Ebのうち、接合面端部Ebの方が接合面端部Eaよりも長い。従って、図13に示す例では、第1ラグ溝成形骨131の長さml11は、第1ベルト領域146のうち接合面端部Ebの一方の端部と他方の端部との間の接合面端部Ebに沿った寸法である。第1ラグ溝成形骨131の長さml12は、第2ベルト領域147のうち接合面端部Ebの一方の端部と他方の端部との間の接合面端部Ebに沿った寸法である。
なお、図13に示すように、第1,第2周方向主溝成形骨121,122と第1リブ成形部141とで形成される角部が面取りされている場合、第1ラグ溝成形骨131の接合面端部Ebの寸法は、面取面Cmを除外した寸法である。なお、接合面端部Eaの寸法と接合面端部Ebの寸法とが等しい場合、第1ラグ溝成形骨131の長さml11,ml12として、接合面端部Eaの寸法及び接合面端部Ebの寸法のいずれか一方が採用される。
第1ラグ溝成形骨131の幅mw11は、基本的には、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける、第1ベルト領域146内に位置する部分の平均の幅を用いる。ただし、簡易的に、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける第1ベルト領域146内に位置する部分の、長辺の中間位置での幅を第1ラグ溝成形骨131の幅mw11として用いる場合は、図13に示す例では、第1ラグ溝成形骨131の接合面端部Ebにおける第1ベルト領域146内に位置する部分の中点の位置での、接合面端部Ebと接合面端部Eaとの距離を、第1ラグ溝成形骨131の幅mw11として用いる。第1ラグ溝成形骨131の幅mw12は、基本的には、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける、第2ベルト領域147内に位置する部分の平均の幅を用いる。ただし、簡易的に、第1ラグ溝成形骨131の接合面Jにおける第2ベルト領域147内に位置する部分の、長辺の中間位置での幅を第1ラグ溝成形骨131の幅mw12として用いる場合は、図13に示す例では、第1ラグ溝成形骨131の接合面端部Ebにおける第2ベルト領域147内に位置する部分の中点の位置での、接合面端部Ebと接合面端部Eaとの距離を、第1ラグ溝成形骨131の幅mw12として用いる。
[タイヤ製造方法]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。図14は、図9に示すタイヤ加硫成形金型100を用いたタイヤ製造方法を示す説明図である。図14は、図9に示すタイヤ加硫成形金型100を備える金型支持装置105の軸方向断面図を示している。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、以下の製造工程により製造される。
まず、ビードコア5Aを構成するビードワイヤ、カーカス部2を構成するカーカスプライ、ベルト層3を構成するベルトプライ3A,3B、トレッド部10を構成するトレッドゴム6、サイド部7を構成するサイドゴム8、ビードフィラー5B、インナーライナーゴム5C、リムクッションゴム5Dなどの各部材(図1参照)が成形機にかけられて、グリーンタイヤWが成形される。次に、このグリーンタイヤWが、金型支持装置105に装着される(図14参照)。
図14において、金型支持装置105は、支持プレート106と、外部リング107と、セグメント109と、上部プレート110及びベースプレート112と、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113と、タイヤ加硫成形金型100とを備える。支持プレート106は、円盤形状を有し、平面を水平にして配置される。外部リング107は、径方向内側のテーパ面108を有する環状構造体であり、支持プレート106の外周縁下部に吊り下げられて設置される。セグメント109は、タイヤ加硫成形金型100の各セクター101に対応する分割可能な環状構造体であり、外部リング107に挿入されて外部リング107のテーパ面108に対して軸方向に摺動可能に配置される。上部プレート110は、外部リング107の内側で、且つ、セグメント109と支持プレート106との間にて、軸方向に昇降可能に設置される。ベースプレート112は、支持プレート106の下方で、且つ、軸方向における支持プレート106の反対側の位置に配置される。
上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における両側面の形状であるサイドプロファイルの成形面を有する。また、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113とは、上型サイドモールド111が上部プレート110の下面側に取り付けられ、下型サイドモールド113がベースプレート112の上面側に取り付けられると共に、それぞれの成形面を相互に対向させて配置される。タイヤ加硫成形金型100は、上記のように、トレッドプロファイルを成形可能なトレッド成形面135をもつ分割可能な環状構造(図9参照)を有する。また、タイヤ加硫成形金型100は、各セクター101が、対応するセグメント109の内周面に取り付けられ、トレッド成形面135を、上型サイドモールド111や下型サイドモールド113の成形面が位置する側に向けて配置される。
次に、グリーンタイヤWが、タイヤ加硫成形金型100の成形面と上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113の成形面との間に装着される。このとき、支持プレート106が軸方向下方に移動することにより、外部リング107が支持プレート106と共に軸方向下方に移動し、外部リング107のテーパ面108がセグメント109を径方向内側に押し出す。すると、タイヤ加硫成形金型100が縮径して、タイヤ加硫成形金型100の各セクター101の成形面(図8参照)が環状に接続し、また、タイヤ加硫成形金型100の成形面全体と下型サイドモールド113の成形面とが接続する。また、上部プレート110が軸方向下方に移動することにより、上型サイドモールド111が下降して、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113との間隔が狭まる。すると、タイヤ加硫成形金型100の成形面全体と上型サイドモールド111の成形面とが接続する。これにより、グリーンタイヤWが、タイヤ加硫成形金型100の成形面、上型サイドモールド111の成形面及び下型サイドモールド113の成形面に囲まれて保持される。
次に、加硫前のタイヤであるグリーンタイヤWが加硫成形される。具体的には、タイヤ加硫成形金型100が加熱され、加圧装置(図示省略)によりグリーンタイヤWが径方向外方に拡張されてタイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面135に押圧される。そして、グリーンタイヤWが加熱されることにより、トレッド部10のゴム分子と硫黄分子とが結合して加硫が行われる。すると、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面135がグリーンタイヤWに転写されて、トレッド部10にトレッドパターンが成形される。
その後に、加硫成形後のタイヤが、製品となる空気入りタイヤ1である製品タイヤとして取得される。このとき、支持プレート106及び上部プレート110が軸方向上方に移動することにより、タイヤ加硫成形金型100、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113が離間して、金型支持装置105が開く。その後に、加硫成形後のタイヤが金型支持装置105から取り出される。
[スリットベント]
図15は、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントTを示す説明図である。図16は、図15の第1リブ成形部141の詳細図である。図15は、図8に記載したセクター101の径方向断面図を示している。図15、図16に示すように、タイヤ加硫成形金型100は、複数のスリットベントTをトレッド成形面135に備える。スリットベントTは、0.005mm以上0.008mm以下の開口幅Wsを有する、微細な線状の排気口であり、タイヤ加硫成形金型100のトレッド成形面135に開口する。また、スリットベントTは、ピース103の内部に形成された排気孔114に連通する。
タイヤ加硫成形時には、グリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間に発生した残留ガス等のエアが、スリットベントTを介して排気孔114に吸引されてタイヤ加硫成形金型100の外部に排出される。これにより、エアがグリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間に留まることに起因する製品タイヤの成形不良が抑制される。また、このとき、複数のスリットベントTのベント跡80(図7参照)が、製品タイヤのリブ50の接地面20に形成される。
かかる微細なスリットベントTは、例えば、金属材料の凝固収縮により形成される。スリットベントTを金属材料の凝固収縮により形成するための構成として、タイヤ加硫成形金型100のピース103は、第1ピースブロック103a及び第2ピースブロック103bから成る積層構造を備える(図8参照)。また、ピース103は、上述した第1ピースブロック103aを成形する第1ショット鋳造工程と、第1ピースブロック103aに第2ピースブロック103bを成形する第2ショット鋳造工程とが順次行われて、ピース103の積層構造が形成される。そして、第2ショット鋳造工程における第2ピースブロック103bの金属材料の凝固収縮を利用して、スリットベントTの微細な開口幅Wsが形成される。なお、これらのようにして形成されるスリットベントTの形成工程は、特許第3733271号公報などに詳しい。また、スリットベントTは、これ以外の手法によって形成してもよい。
複数のスリットベントTは、それぞれセクター101を金型周方向に延びて形成されており、環状に連結されるセクター101を金型周方向に貫通している。セクター101を金型周方向に貫通する複数のスリットベントTは、金型幅方向に所定間隔をあけて配置されており、金型幅方向に並ぶ全てのリブ成形部140に、1本以上形成されている(図8参照)。
また、複数のセクター101を環状に連結して成るタイヤ加硫成形金型100では、各セクター101の金型周方向に貫通するスリットベントTが相互に連通して、タイヤ加硫成形金型100の一周、即ち、トレッド成形面135の一周に亘って延在する。その際に、スリットベントTは、スリットベントTが延在する方向上にラグ溝成形骨130が配置される位置では、スリットベントTはラグ溝成形骨130によって分断され、当該スリットベントTは、ラグ溝成形骨130によって分断されつつ、金型周方向に延在する。一方、スリットベントTの延在方向上にラグ溝成形骨130が配置されないスリットベントTは、ラグ溝成形骨130によって分断されることなく、トレッド成形面135の一周に亘って延在する。スリットベントTは、トレッド成形面135の金型周方向の一周に亘って延在するものを、少なくとも1本以上有している。スリットベントTは、これらのように形成されることにより、複数のスリットベントTが、トレッド成形面135の全域に分散して配置される。
[拡幅部]
次に、スリットベントTの拡幅部150について説明する。複数のスリットベントTのうち、少なくとも一部のスリットベントTは、リブ成形部140への開口部の開口幅が拡幅された拡幅部150を有している。拡幅部150は、金型周方向に延在するスリットベントTに沿って金型周方向に延在し、各リブ成形部140のスリットベントTの少なくとも1つ以上に形成されている。拡幅部150は、スリットベントTと同様に、拡幅部150の延在方向上にラグ溝成形骨130が配置されている位置では、ラグ溝成形骨130によって分断されつつ金型周方向に延在する。一方、拡幅部150の延在方向上にラグ溝成形骨130が配置されない拡幅部150は、ラグ溝成形骨130によって分断されることなく、トレッド成形面135の一周に亘って延在する。拡幅部150は、スリットベントTと同様に、トレッド成形面135の金型周方向の一周に亘って延在するものを、少なくとも1本以上有している。本実施形態では、第2リブ成形部142に、金型周方向の一周に亘って延在する拡幅部150が設けられている。
拡幅部150は、空気入りタイヤ1の微小凸部70に対応する位置に形成されている。換言すると、空気入りタイヤ1の微小凸部70は、タイヤ加硫成形金型100に設けられるスリットベントTの拡幅部150によって形成される。拡幅部150は、空気入りタイヤ1の微小凸部70と同様に、リブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、溝成形骨断面積比MSが大きい方の領域に設けられるスリットベントTに、少なくとも形成されている。
例えば、第1リブ成形部141の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、溝成形骨断面積比MSが大きい方の領域に配設されるスリットベントTに、拡幅部150は少なくとも形成されている。第1リブ成形部141の第1ベルト領域146は、複数の第1ラグ溝成形骨131のそれぞれが、金型幅方向における第1ベルト領域146の両端に亘って設けられている。このため、第1リブ成形部141の第1ベルト領域146に形成されるスリットベントTは、金型周方向に延在しつつ、第1ラグ溝成形骨131と交差する部分は第1ラグ溝成形骨131によって分断されている。これに伴い、当該スリットベントTに形成される拡幅部150も、金型周方向に延在しつつ、第1ラグ溝成形骨131と交差する部分は第1ラグ溝成形骨131によって分断されている。
図17は、図16のF部詳細図である。図18は、図16のG−G矢視図である。各拡幅部150は、小さな大きさでトレッド成形面135から凹んでおり、トレッド成形面135からの深さと、各拡幅部150の平面視における幅は、深さと幅との比がほぼ1対2になっている。具体的には、拡幅部150は、幅Wrが0.2mm以上1.0mm以下の範囲内になっており、深さDrが0.1mm以上0.5mm以下の範囲内になっている。また、拡幅部150は、拡幅部150の延在方向に直交する方向における断面形状が、半円状の形状で形成されている。即ち、拡幅部150は、空気入りタイヤ1に形成される微小凸部70とほぼ同じ形状、及びほぼ同じ大きさで、トレッド成形面135から凹んで形成されている。
拡幅部150を有するスリットベントTは、拡幅部150以外の部分の開口幅Wsが、0.005mm以上0.008mm以下の範囲内になっている。即ち、拡幅部150を有するスリットベントTは、拡幅部150以外の形状は、拡幅部150を有さないスリットベントTと同等の形状になっている。換言すると、拡幅部150を有するスリットベントTは、拡幅部150の底部151にスリットベントTが配置され、拡幅部150の底部151に開口している。このように、スリットベントTは、拡幅部150においてトレッド成形面135から拡幅部150の深さ方向に最も離れる部分である底部151に開口し、拡幅部150に沿って延在する。また、スリットベントTが有する拡幅部150の開口幅Wrは、スリットベントTの開口幅Wsに対する拡幅量が、0.1mm以上1.5mm以下の範囲内であるのが好ましい。
上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、これらのように構成されるタイヤ加硫成形金型100を用いてタイヤ加硫成形工程を行うことにより成形する。タイヤ加硫成形時には、グリーンタイヤWの外表面とタイヤ加硫成形金型100との間に発生した残留ガス等のエアが、スリットベントTを介して排気孔114に吸引されてタイヤ加硫成形金型100の外部に排出されながら加硫成形が行われる。
ここで、従来のタイヤ加硫成形金型を用いてタイヤ加硫成形工程を行う場合において、排出すべきエアに対してスリットベントTの間隔が狭いと、エアはスリットベントTから適切に排出されずにグリーンタイヤWとタイヤ加硫成形金型との間に残り、加硫成形後のタイヤの表面に窪みが発生するなどの外観不良が生じる可能性がある。この場合、次回以降に加硫成形を行うグリーンタイヤWにおける、キャップトレッドの部分のゴムの厚さを厚くし、多量のゴムによってエアを十分に押し出すことを可能にすることにより、次回以降に加硫成形を行うタイヤで外観不良が発生しないように手直しをする。
しかし、このように従来のタイヤ加硫成形金型を用いてタイヤ加硫成形工程を行い、空気入りタイヤの製造を行った場合、不良品が発生する可能性がある上、トレッド部10のトレッドゴム6の厚さを厚くすることにより、製造された空気入りタイヤは重量が重くなり、転がり抵抗が大きくなり易くなる。また、トレッドゴム6の厚さを厚くすることは、使用するゴムの量が増加するため、製造コストの上昇にもつながる。
これに対し、本実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100では、リブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、少なくとも溝成形骨断面積比MSが大きい方の領域に配置されるスリットベントTは、リブ成形部140への開口部の開口幅が拡幅された拡幅部150を有している。これにより、グリーンタイヤWとタイヤ加硫成形金型100との間から適切にエアを排出させることができる。つまり、タイヤの加硫成形時は、グリーンタイヤWは、トレッド成形面135における、周方向主溝成形骨120等のトレッド成形面135から突出している部分から徐々にトレッド成形面135に接触し、グリーンタイヤWとタイヤ加硫成形金型100との間のエアは、グリーンタイヤWの外表面とトレッド成形面135とが接触した部分から押し出される。この場合、押し出されたエアは、その時点でグリーンタイヤWとトレッド成形面135とが接触していない部分に流れる。
タイヤの加硫成形時は、このように、グリーンタイヤWとトレッド成形面135とが接触していない部分にエアが移動しながら、グリーンタイヤWの外表面がトレッド成形面135に押し付けられるため、エアは、グリーンタイヤWとトレッド成形面135とが接触し難い部分に移動する。グリーンタイヤWとトレッド成形面135とが接触し難い部分としては、例えば、リブ成形部140に対する周方向主溝成形骨120の付け根部分や、リブ成形部140に対するラグ溝成形骨130の付け根部分が挙げられ、これらの部分は、加硫成形時にエアが溜まり易くなっている。このため、リブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、溝成形骨断面積比MSが大きい方の領域、即ち、リブ成形部140に対するラグ溝成形骨130の割合が多く、エアが溜まり易い側の領域に配置されるスリットベントTに拡幅部150を設けることにより、ラグ溝成形骨130の付け根部分付近に溜まるエアを、スリットベントTで吸引し易くすることができる。
つまり、加硫成形時のエアは、その時点でグリーンタイヤWとトレッド成形面135とが接触していない部分に流れるため、エアは、トレッド成形面135から凹んで形成されることによりグリーンタイヤWとトレッド成形面135とが接触し難い拡幅部150に流れ易くなっている。このため、リブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、溝成形骨断面積比MSが大きくエアが溜まり易い側の領域のエアは、当該領域に設けられるスリットベントTの拡幅部150に流れることができるため、ラグ溝成形骨130の付け根部分付近等のエアは、効率よくスリットベントTによって吸引されてタイヤ加硫成形金型100の外部に排出されることができる。
換言すると、本実施形態に係るタイヤ加硫成形金型100は、リブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、少なくとも溝成形骨断面積比MSが大きい方の領域に配置されるスリットベントTに拡幅部150を設けるため、スリットベントTを、トレッド成形面135における他の部分よりも一段凹んだ部分に開口させることができる。これにより、リブ成形部140の表面積に対するラグ溝成形骨130の断面積の比率が大きいことに起因して加硫成形時にエアが溜まり易い側の領域のエアを、当該領域内のスリットベントTの位置に誘導できるようにし、スリットベントTによって適切にエアを排出することを可能としている。これにより、タイヤの加硫成形時における外観不良を抑制することができる。
また、スリットベントTに拡幅部150を設けることにより、グリーンタイヤWには、拡幅部150に対応する分のゴムが必要となるが、拡幅部150は非常に小さいため、追加するゴムの量は僅かである。このため、グリーンタイヤWにおける、トレッドゴム6の厚さを必要以上に厚くしなくても、局所的にゴムの量を増やすことによりエアを効率的に排出することができるため、トレッドゴム6の厚さを厚くすることに伴う転がり抵抗の増加や、製造コストの上昇を抑えることができる。即ち、スリットベントTに拡幅部150を設けることにより、グリーンタイヤWに追加するゴムの量を抑えつつ、エアを効率的に排出することができ、転がり抵抗の増加や、製造コストの上昇を抑えることができる。これらの結果、転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。
また、スリットベントTの拡幅部150は、リブ成形部140における第1ベルト領域146の表面積に対する、ラグ溝成形骨130における第1ベルト領域146側に位置する部分の断面積の比率と、リブ成形部140における第2ベルト領域147の表面積に対する、ラグ溝成形骨130における第2ベルト領域147側に位置する部分の断面積の比率とを比較し、比率が大きい方の領域に少なくとも設けるため、より確実に、エアが溜まり易い側の領域に拡幅部150を設けることができる。この結果、より確実に転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。
また、タイヤ加硫成形金型100は、拡幅部150がトレッド成形面135の金型周方向の一周に亘って延在するスリットベントTを少なくとも1本以上有するため、グリーンタイヤWとトレッド成形面135との一周に亘って、エアを拡幅部150に誘導することができる。これにより、グリーンタイヤWとトレッド成形面135との間の広範囲に亘って、エアをスリットベントTの拡幅部150に誘導することができ、エアをより確実にスリットベントTから排出することができる。この結果、より確実に転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。
また、拡幅部150は、拡幅部150の延在方向に直交する方向における断面形状が半円状であるため、グリーンタイヤWとトレッド成形面135との間のエアが拡幅部150に入り込んだ際に、エアを拡幅部150の底部151に向かわせることができる。これにより、拡幅部150は、底部151に開口するスリットベントTに対してエアをより確実に誘導することができる。この結果、より確実に転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。
また、拡幅部150は、幅Wrが0.2mm以上1.0mm以下の範囲内で、深さDrが0.1mm以上0.5mm以下の範囲内であるため、追加するゴムの量を抑えつつ、エアをより確実に拡幅部150に誘導することができる。つまり、拡幅部150の幅Wrが0.2mm未満であったり、深さDrが0.1mm未満であったりする場合は、拡幅部150が小さ過ぎるため、グリーンタイヤWとトレッド成形面135との間のエアが拡幅部150に流れる際の流れ易さが低減する可能性がある。この場合、エアを、スリットベントTによって効果的に排出し難くなる可能性がある。また、拡幅部150の幅Wrが1.0mmを超えていたり、深さDrが0.5mmを超えていたりする場合は、拡幅部150が大き過ぎるため、加硫成形時に拡幅部150を満たすのに必要なゴムの量が多くなり過ぎる可能性がある。この場合、転がり抵抗の増加や、製造コストの上昇を、効果的に抑えることが困難になる可能性がある。
これに対し、拡幅部150の幅Wrが0.2mm以上1.0mm以下の範囲内で、深さDrが0.1mm以上0.5mm以下の範囲内である場合は、加硫成形時に拡幅部150を満たすために追加するゴムの量を抑えつつ、エアをより確実に拡幅部150に誘導し、スリットベントTから排出することができる。この結果、より確実に転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。
また、タイヤ加硫成形金型100は、拡幅部150を有するスリットベントTを備えることにより、加硫成形を行ったタイヤの外観不良を抑制することができ、次回以降に加硫成形を行うタイヤのための手直しを極力不要とすることができるため、これらの作業に費やす時間を短縮することができる。この結果、タイヤの開発期間の短縮を図ることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、リブ50の第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とのうち、少なくとも溝面積比Sが大きい方の領域に、頂部71にスリットベントTのベント跡80が位置する微小凸部70が設けられている。このため、タイヤ加硫成形時に、エアが溜まり易い側の領域のグリーンタイヤWの外表面とトレッド成形面135との間のエアを、当該領域側において微小凸部70が形成されるべき部分に誘導することができる。これにより、タイヤ加硫成形時にエアが溜まり易い側の領域のエアを、スリットベントTによって効率よく排出することを可能とし、タイヤの加硫成形時における外観不良を抑制することができる。また、グリーンタイヤWにおける、トレッドゴム6の厚さを必要以上に厚くしなくても、微小凸部70の分、局所的にゴムの量を増やすことによりエアを効率よく排出することができるため、トレッドゴム6の厚さを厚くすることに伴う、転がり抵抗の増加や、製造コストの上昇を抑えることができる。これらの結果、転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。
なお、上述した実施形態では、タイヤ加硫成形金型100の拡幅部150は、スリットベントTに沿ってスリットベントTと同じ長さで形成されているが、拡幅部150は、スリットベントTとは異なる長さで形成されていてもよい。例えば、スリットベントTよりも拡幅部150の方が長く形成され、スリットベントTは、拡幅部150に対して断続的に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントT及び拡幅部150は、ラグ溝成形骨130によって分断される部分以外は、連続的に形成されているが、スリットベントTや拡幅部150は、これ以外の部分でも分断されていてもよい。つまり、空気入りタイヤ1の微小凸部70は、ラグ溝40によって分断される部分以外は、連続的に形成されているが、微小凸部70は、これ以外の部分でも分断されていてもよい。スリットベントTや拡幅部150や微小凸部70は、トレッドパターンとの兼ね合いや、タイヤ加硫成形金型100のピース103の構成等に応じて、断続的に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントTの拡幅部150や、空気入りタイヤ1の微小凸部70は、それぞれ延在方向に直交する方向における断面形状が半円状になっているが、拡幅部150や微小凸部70の断面形状は、半円状以外でもよい。つまり、リブ成形部140への開口幅が、スリットベントTの開口幅Wsよりも大きくなるように拡幅部150が形成されていれば、拡幅部150や微小凸部70の形状は問わない。拡幅部150は、例えば、延在方向に直交する方向における断面形状が、矩形状であったり、1辺がリブ成形部140に開口し、その対角が底部151となってスリットベントTが開口する三角形状であったりしてもよい。
また、上述した実施形態では、タイヤ加硫成形金型100のスリットベントTや拡幅部150、空気入りタイヤ1の微小凸部70は、第1ベルト領域61、146や第2ベルト領域62、147に1つずつが設けられているが、スリットベントT、拡幅部150、微小凸部70は、各領域に複数が配置されていてもよい。また、上述した実施形態では、タイヤ加硫成形金型100が有するリブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、溝成形骨断面積比MSが小さい方の領域にもスリットベントTが設けられているが、溝成形骨断面積比MSが小さい方の領域には、スリットベントTは設けられていなくてもよい。
また、空気入りタイヤ1の溝面積比Sは、上記の式(2)以外の式を用いて算出してもよい。リブ50の第1ベルト領域61と第2ベルト領域62とのうち、少なくとも溝面積比Sが大きい方の領域に微小凸部70を設けるようにすることができれば、溝面積比Sを算出するための式は、上述した実施形態で用いた式以外であってもよい。同様に、タイヤ加硫成形金型100の溝成形骨断面積比MSは、上記の式(5)以外の式を用いて算出してもよい。リブ成形部140の第1ベルト領域146と第2ベルト領域147とのうち、少なくとも溝成形骨断面積比MSが大きい方の領域に配置されるスリットベントTは拡幅部150を有するようにできれば、溝成形骨断面積比MSを算出するための式は、上述した実施形態で用いた式以外であってもよい。
また、空気入りタイヤ1の周方向主溝30やラグ溝40は、上述した実施形態以外の構成でもよく、即ち、空気入りタイヤ1のトレッドパターンは、上述した実施形態以外のパターンでもよい。例えば、周方向主溝30やラグ溝40の本数や形状、配置の形態は、上述した実施形態以外の本数、形状、形態であってもよい。
[実施例]
図19は、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤ1の転がり抵抗と、空気入りタイヤ1の製造時における製造コストとについて行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/70R14サイズの空気入りタイヤ1を200本、加硫成形することによって行った。転がり抵抗については、各試験タイヤをリム(サイズ:14×6J)に組み込み、空気圧210kPaを充填して、室内のドラム試験機(ドラム径:1707mm)を使用し、ISO28580に準拠し荷重4.82kN、速度80km/時の条件における転がり抵抗係数を算出した。その結果を、後述する従来例の転がり抵抗係数の逆数を100とする指数で示した。この指数が大きいほど転がり抵抗が低いことを意味する。製造コストについては、加硫成形を行った際における外観不良の発生の有無と外観不良の度合い、外観不良が発生することに伴いグリーンタイヤWのゴムの量を調整する作業に要する時間、外観不良が発生しないように使用するゴムの量に基づき評価し、後述する従来例を100とする指数で示した。指数の数値が大きいほど製造コストが高くなり難く、製造コストに関して良好であることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜3と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例との5種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、リブ50に微小凸部70が設けられていない。また、比較例の空気入りタイヤは、リブ50に微小凸部70は設けられているものの、微小凸部70は、リブ50における溝面積比Sが大きい側の領域に設けられていない。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜3は、全てリブ50に微小凸部70が設けられており、微小凸部70は、リブ50における溝面積比Sが大きい側の領域に配置されている。さらに、実施例1〜3に係る空気入りタイヤ1は、一周に亘って形成される微小凸部70の有無、微小凸部70の大きさが、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図19に示すように、実施例1〜3に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例と比較して、転がり抵抗を低減したり製造コストを低減したりすることができることが分かった。つまり、実施例1〜3に係る空気入りタイヤ1や、これらの加硫成形に用いたタイヤ加硫成形金型100及び当該タイヤ加硫成形金型100を用いたタイヤ製造方法は、転がり抵抗及び製造コストの低減を図ることができる。