以下、本発明の実施形態に係る水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。水処理システム1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
図1は、本実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図2は、給水タンク9における検出水位値と目標流量値との関係を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、原水ポンプ2と、前処理ユニットとしての硬水軟化装置3と、塩水タンク4と、加圧ポンプ5と、インバータ6と、膜分離装置としてのRO膜モジュール7と、透過水弁8と、貯留タンクとしての給水タンク9と、を備える。また、水処理システム1は、駆動制御部及び流量制御部としての制御部10と、第1排水弁11〜第3排水弁13と、水質検知手段としての硬度センサ14と、流量センサ15と、濃縮水還流弁16と、安全弁17と、水位検出手段としての水位センサ18と、を備える。図1では、電気的な接続の経路を破線で示す。
また、水処理システム1は、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、塩水ラインL3と、排水ラインL4と、透過水ラインL5と、濃縮水ラインL6と、濃縮水排出ラインL7と、濃縮水還流ラインL8と、透過水返送ラインL9と、給水ラインL10と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。一方、原水ラインL1の下流側の端部は、硬水軟化装置3のプロセス制御バルブ32(後述)に接続されている。
原水ポンプ2は、原水ラインL1に設けられている。原水ポンプ2は、供給源から供給された水道水や地下水等の原水W1を吸引し、硬水軟化装置3に向けて吐出する装置である。原水ポンプ2は、制御部10と電気的に接続されている。原水ポンプ2の運転(駆動及び停止)は、制御部10により制御される。
硬水軟化装置3は、原水W1に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を、陽イオン交換樹脂床(不図示)においてナトリウムイオン(又はカリウムイオン)に置換して、前処理水としての軟水W2を製造する設備である。硬水軟化装置3は、圧力タンク31と、プロセス制御バルブ32と、を主体に構成されている。
圧力タンク31は、上部に開口部を有する有底の筒状体である。圧力タンク31は、開口部が蓋部材で密閉されている。圧力タンク31の内部には、陽イオン交換樹脂ビーズからなる陽イオン交換樹脂床及び濾過砂利からなる支持床(いずれも不図示)が収容されている。
プロセス制御バルブ32は、その内部に、各種のライン、弁等を備える。制御部10(後述)は、プロセス制御バルブ32の流路を切り換えることにより、一例として、以下に示すような軟化プロセスST1〜補水プロセスST6の運転を実施する。
(ST1)原水W1を陽イオン交換樹脂床の全体に対して上から下へ通過させる軟化プロセス
(ST2)洗浄水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床の全体に対して下から上へ通過させる逆洗浄プロセス
(ST3)再生液としての塩水W3を陽イオン交換樹脂床に対して上から下へ通過させると共に、原水W1を陽イオン交換樹脂床の主に下側領域に対して下から上へ通過させる再生プロセス
(ST4)押出水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床に対して上から下へ通過させると共に、原水W1を陽イオン交換樹脂床の主に下側領域に対して下から上へ通過させる押出プロセス
(ST5)濯ぎ水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床の全体に対して上から下へ通過させるリンス・プロセス
(ST6)補給水としての原水W1を塩水タンク4へ供給する補水プロセス
プロセス制御バルブ32には、排水ラインL4の上流側の端部が接続されている。排水ラインL4からは、再生プロセスST3や押出プロセスST4等において使用された塩水W3や原水W1が排水W4として排出される。
また、プロセス制御バルブ32において、内部に備えられた弁体の駆動部(不図示)は、制御部10と電気的に接続されている。プロセス制御バルブ32における弁体の切り換えは、制御部10により制御される。
塩水タンク4は、圧力タンク31に収容された陽イオン交換樹脂床を再生する塩水W3を貯留する。塩水タンク4には、塩水ラインL3の上流側の端部が接続されている。塩水ラインL3の下流側の端部は、プロセス制御バルブ32と連通し、プロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
また、塩水タンク4は、制御部10と電気的に接続されている。塩水タンク4に貯留された塩水W3の量や塩分濃度は、塩水タンク4に設けられた水位センサや塩分濃度センサ(いずれも不図示)により検知され、制御部10へ検知信号として送信される。
塩水ラインL3には、塩水弁(不図示)が設けられている。塩水弁は、塩水ラインL3を開閉する。塩水弁は、プロセス制御バルブ32に組み込まれている。塩水弁において、弁体の駆動部は、制御部10と不図示の電気的に接続されている。塩水弁における弁体の開閉は、制御部10により制御される。塩水タンク4は、上述した再生プロセスST3において、陽イオン交換樹脂床を再生する塩水W3を圧力タンク31へ送出する。
硬度センサ14は、軟水ラインL2を流通する軟水W2のカルシウム硬度(硬度リーク量:炭酸カルシウム換算値)を測定する機器である。硬度センサ14は、接続部J3において軟水ラインL2に接続されている。接続部J3は、硬水軟化装置3と加圧ポンプ5との間(接続部J2と加圧ポンプ5との間)に配置されている。硬度センサ14は、制御部10と電気的に接続されている。硬度センサ14で測定された軟水W2のカルシウム硬度(以下、「測定硬度値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
加圧ポンプ5は、硬水軟化装置3から送出された軟水W2を吸入し、RO膜モジュール7に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ5は、インバータ6(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ5には、インバータ6から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ5は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
インバータ6は、加圧ポンプ5に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ6は、制御部10と電気的に接続されている。インバータ6には、制御部10から電流値信号が入力される。インバータ6は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ5に出力する。
RO膜モジュール7は、硬水軟化装置3により製造された軟水W2を、溶存塩類が除去された透過水W5と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W6とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール7は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール7は、これらRO膜エレメントにより軟水W2を膜分離処理し、透過水W5及び濃縮水W6を製造する。RO膜モジュール7の一次側入口ポートは、軟水ラインL2を介して硬水軟化装置3(プロセス制御バルブ32)の下流側に接続されている。RO膜モジュール7の二次側ポートには、透過水ラインL5の上流側の端部が接続されている。
透過水ラインL5は、RO膜モジュール7で製造された透過水W5を、給水タンク9へ送出するラインである。透過水ラインL5の下流側の端部は、給水タンク9(後述)に接続されている。
流量センサ15は、透過水ラインL5を流通する透過水W5の流量を検出する機器である。流量センサ15は、接続部J4において透過水ラインL5に接続されている。接続部J4は、RO膜モジュール7と透過水弁8との間に配置されている。流量センサ15は、制御部10と電気的に接続されている。流量センサ15で検出された透過水W5の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
透過水弁8は、透過水ラインL5を開閉する装置である。透過水弁8は、制御部10と電気的に接続されている。透過水弁8における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。透過水弁8は、例えば、RO膜モジュール7を高回収率(80%)及び低回収率(60%)で運転する場合には、開状態に制御される。また、透過水弁8は、RO膜モジュール7をフラッシング運転(後述)する場合には、閉状態に制御される。
なお、本実施形態では、後述するように、軟水W2の検知水質が許容水質値未満の場合には高回収率(80%)に設定され、軟水W2の検知水質が許容水質値超過の場合には低回収率(60%)に設定される。
一方、RO膜モジュール7の一次側出口ポートには、濃縮水ラインL6の上流側の端部が接続されている。濃縮水ラインL6は、濃縮水W6をRO膜モジュール7の外に送出するラインである。濃縮水ラインL6の下流側は、分岐部J6において、濃縮水排出ラインL7及び濃縮水還流ラインL8に分岐している。
濃縮水排出ラインL7は、濃縮水ラインL6を流通する濃縮水W6の一部を装置外へ排出するラインである。濃縮水排出ラインL7の下流側は、分岐部J7及びJ8において、第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13に分岐している。
第1排水ラインL11には、第1排水弁11が設けられている。第2排水ラインL12には、第2排水弁12が設けられている。第3排水ラインL13には、第3排水弁13が設けられている。
第1排水弁11〜第3排水弁13は、濃縮水ラインL6から送出された濃縮水W6の排水流量を調節する弁である。第1排水弁11は、第1排水ラインL11を開閉することができる。第2排水弁12は、第2排水ラインL12を開閉することができる。第3排水弁13は、第3排水ラインL13を開閉することができる。
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ定流量弁機構(不図示)を備える。定流量弁機構は、第1排水弁11〜第3排水弁13において、それぞれ異なる流量値に設定されている。例えば、第1排水弁11は、開状態において、RO膜モジュール7の回収率が80%となるように排水流量が設定されている。第2排水弁12は、開状態において、RO膜モジュール7の回収率が75%となるように排水流量が設定されている。第3排水弁13は、開状態において、RO膜モジュール7の回収率が70%となるように排水流量が設定されている。
濃縮水ラインL6から排出される濃縮水W6の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、段階的に調節できる。例えば、第2排水弁12のみを開状態とし、第1排水弁11及び第3排水弁13を閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール7の回収率を75%とすることができる。また、第1排水弁11及び第2排水弁12を開状態とし、第3排水弁13のみを閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール7の回収率を70%とすることができる。従って、本実施形態において、濃縮水W6の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、RO膜モジュール7の回収率を50%〜80%までの間で、5%毎に段階的に調節することができる。
なお、本実施形態において、RO膜モジュール7の回収率は、高回収率(80%)又は低回収率(60%)のいずれかに設定される。上述したように、濃縮水W6の排水流量は、段階的に調節できる。このため、高回収率及び低回収率における回収率は、50%〜80%までの間で適宜に選択することができる。例えば、高回収率を75%、低回収率を55%に設定してもよい。
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ制御部10と電気的に接続されている。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。
濃縮水還流ラインL8は、濃縮水ラインL6を流通する濃縮水W6の残部を、軟水ラインL2における加圧ポンプ5よりも上流側に還流させるラインである。濃縮水還流ラインL8の上流側の端部は、分岐部J6において濃縮水ラインL6に接続されている。分岐部J6は、RO膜モジュール7の一次側出口ポートと分岐部J7との間に配置されている。また、濃縮水還流ラインL8の下流側の端部は、接続部J1において、軟水ラインL2に接続されている。接続部J1は、硬水軟化装置3と加圧ポンプ5との間(硬水軟化装置3と接続部J2との間)に配置されている。
濃縮水還流弁16は、濃縮水還流ラインL8の流通量を調節する装置である。濃縮水還流弁16は、制御部10と電気的に接続されている。濃縮水還流弁16における弁体の開度は、制御部10からの駆動信号により制御される。濃縮水還流弁16は、RO膜モジュール7を高回収率(80%)で運転する場合には、所定の開度に制御される。また、濃縮水還流弁16の弁体は、RO膜モジュール7を低回収率(60%)で運転する場合及びフラッシング運転(後述)する場合は、閉状態(開度0%)に制御される。
透過水返送ラインL9は、RO膜モジュール7をフラッシング運転する場合において、透過水ラインL5に送出された透過水W5を、原水ラインL1における加圧ポンプ5よりも上流側に返送させるラインである。透過水返送ラインL9の上流側の端部は、接続部J5において透過水ラインL5に接続されている。接続部J5は、RO膜モジュール7の二次側ポートと透過水弁8との間に配置されている。また、透過水返送ラインL9の下流側の端部は、接続部J2において軟水ラインL2に接続されている。接続部J2は、硬水軟化装置3と加圧ポンプ5との間(接続部J1と接続部J3との間)に配置されている。また、透過水返送ラインL9には、安全弁17が設けられている。
安全弁17は、フラッシング運転において、透過水ラインL5の管内圧力が予め設定された圧力以上となった場合に開弁して、透過水W5を透過水返送ラインL9に流通させる弁である。すなわち、安全弁17は、予め設定された圧力以上の透過水W5を、透過水返送ラインL9を介して軟水ラインL2に戻すことにより、RO膜モジュール7の二次側に過剰な背圧が発生するのを防止する。
なお、RO膜モジュール7を高回収率及び低回収率で運転する場合には、透過水弁8が開状態に制御されるため、透過水ラインL5の管内圧力は、予め設定された圧力未満となる。そのため、高回収率及び低回収率で運転する場合は、安全弁17が閉弁した状態で、透過水W5が給水タンク9へ送出される。
給水タンク9は、透過水W5を貯留するタンクである。給水タンク9には、透過水ラインL5の下流側の端部が接続されている。RO膜モジュール7の二次側ポートから送出された透過水W5は、透過水ラインL5を介して給水タンク9に補給される。また、給水タンク9は、給水ラインL10を介して需要箇所等に接続されている。給水タンク9に貯留された透過水W5は、給水ラインL10を介して、純水W7として需要箇所等に供給される。
水位センサ18は、給水タンク9に貯留された透過水W5の水位を検出する機器である。水位センサ18は、検出ライン(符号略)を介して給水タンク9に接続されている。また、水位センサ18は、制御部10と電気的に接続されている。水位センサ18で検出された給水タンク9の水位(以下、「検出水位値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
制御部10は、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10は、軟水流量センサ及び塩水流量センサ(いずれも不図示)から入力された検出信号等に基づいて、プロセス制御バルブ32の動作を制御する。制御部10のメモリには、硬水軟化装置3の運転を実施する制御プログラムが予め記憶されている。制御部10のCPUは、メモリに記憶された制御プログラムに従って、上述した軟化プロセスST1〜補水プロセスST6を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ32を制御する。
また、駆動制御部としての制御部10は、流量フィードバック水量制御として、流量センサ15の検出流量値が、予め設定された第1目標流量値、第2目標流量値又は第3目標流量値(いずれも後述)となるように、系内の物理量を用いて速度形デジタルPIDアルゴリズムにより、加圧ポンプ5を駆動するための駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ6に出力する。制御部10による流量フィードバック水量制御については後述する。
また、流量制御部としての制御部10は、硬度センサ14の測定硬度値が予め設定された許容硬度値超過の場合に、(i)水位センサ18の検出水位値が予め設定された水位M(後述する基準水位)未満であれば、透過水W5の流量を第1目標流量値に設定すると共に、濃縮水W6の実際排水流量が第1排水流量値(後述)となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御し、(ii)水位センサ18の検出水位値が予め設定された水位M以上〜水位H(後述する基準貯留水位)未満の範囲であれば、透過水W5の流量を第2目標流量値に設定すると共に、濃縮水W6の実際排水流量が第2排水流量(後述)となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
ここで、給水タンク9における基準水位と目標流量値及び排水流量との関係を、図2を用いて説明する。図2に示すように、本実施形態において、給水タンク9の水位は、低い方から高い方に向けて順に、L、M、Hの3段階に区分される。水位Lは、透過水W5の供給開始水位である。水位Mは、透過水W5の基準水位である。水位Hは、透過水W5の基準貯留水位である。
流量制御部としての制御部10は、水位センサ18の検出水位値が水位M(基準水位)未満の範囲であれば、透過水W5の流量を第1目標流量値に設定する。この第1目標流量値を、予め設定された目標流量値の100%流量とする。
また、流量制御部としての制御部10は、水位センサ18の検出水位値が水位M(基準水位)未満であると判定した場合には、透過水W5の回収率を80%に設定すると共に、設定した回収率に基づいて濃縮水W6の排水流量(第1排水流量)を演算する。そして、制御部10は、RO膜モジュール7における濃縮水W6の実際排水流量が第1排水流量となるように、第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
流量制御部としての制御部10は、水位センサ18の検出水位値が水位M以上〜水位H未満の範囲であれば、透過水W5の流量を第2目標流量値に設定する。第2目標流量値は、第1目標流量値よりも少ない流量である。この第2目標流量値は、第1目標流量値の50%流量である。
また、流量制御部としての制御部10は、水位センサ18の検出水位値が水位M以上〜水位H未満の範囲であると判定した場合には、透過水W5の回収率を60%に設定すると共に、設定した回収率に基づいて濃縮水W6の排水流量(第2排水流量)を演算する。そして、制御部10は、RO膜モジュール7における濃縮水W6の実際排水流量が第2排水流量となるように、第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
なお、流量制御部としての制御部10は、設定された回収率R及び目標流量値Qp´(第1目標流量値又は第2目標流量値)に基づいて、濃縮水W6の排水流量Qcを、下記の式(1)により演算する。
Qc=Qp´/R−Qp´ (1)
流量制御部としての制御部10は、水位センサ18の検出水位値が水位H(基準貯留水位)以上であると判定した場合には、透過水W5の流量を第3目標流量値に設定する。この第3目標流量値は、第1目標流量値の0%流量である。この場合、制御部10は、加圧ポンプ5の運転を停止して、給水タンク9への透過水W5の補給を停止させる。また、制御部10が透過水W5の流量を第3目標流量値に設定した場合、第1排水弁11〜第3排水弁13の制御は行われない。
また、流量制御部としての制御部10は、硬度センサ14の測定硬度値について、許容硬度値超過となる状態が予め設定された時間Td以上継続する場合に、水位センサ18の検出水位値が基準貯留水位(水位H)以上であれば、RO膜モジュール7への軟水W2の供給を停止するように加圧ポンプ5を制御した後、RO膜モジュール7の一次側を洗浄するためのフラッシング運転を実行する。
なお、図2において、水位L未満は、警戒水位である。制御部10は、給水タンク9の水位が水位L未満の水位LL(不図示)に到達した場合には、透過水W5の流量を第1目標流量値に設定すると共に、警報器(不図示)を介して警報を発したり、ユーザインターフェース(不図示)を介してシステム管理者に警戒メッセージ等を通知したりする。
次に、制御部10による目標流量値及び回収率の設定について説明する。図3は、制御部10において目標流量値及び回収率を設定する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図3に示すステップST101において、制御部10は、硬度センサ14で測定された軟水W2の測定硬度値Ccを取得する。
ステップST102において、制御部10は、測定硬度値Ccが予め設定された許容硬度値Csを超過しているか否かを判定する。このステップST102において、制御部10により、測定硬度値Cc>許容硬度値Csである(YES)と判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、制御部10により、測定硬度値Cc≦許容硬度値Csである(NO)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、制御部10は、内部タイマ(不図示)による計時Tcのカウントがスタートしていなければ、計時Tcをスタートさせる。
ステップST104において、制御部10は、水位センサ18で検出された検出水位値Wを取得する。
ステップST105において、制御部10は、検出水位値Wが水位M(基準水位)未満か否かを判定する。このステップST105において、制御部10により、検出水位値W<水位Mである(YES)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。また、ステップST105において、制御部10により、検出水位値W≧水位Mである(NO)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。
ステップST106(ステップST105:YES判定)において、制御部10は、透過水W5の流量を第1目標流量値に設定する。検出水位値Wが水位M(基準水位)未満の場合には、給水タンク9の貯水量を上げるためである。
ステップST107において、制御部10は、RO膜モジュール7の回収率を80%に設定する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
ステップST108(ステップST102:NO判定)において、制御部10は、内部タイマによる計時Tcのカウントがスタートとしている場合には、計時Tcをリセットする。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。軟水W2の測定硬度値Ccが許容硬度値Cs以下であれば、計時Tcのカウントは不要であり、また回収率を下げる必要がないためである。
一方、ステップST109(ステップST105:NO判定)において、制御部10は、検出水位値Wが水位M(基準水位)以上且つ水位H(基準貯留水位)未満か否かを判定する。このステップST109において、制御部10により、水位H>検出水位値W≧水位Mである(YES)と判定された場合に、処理はステップST110へ移行する。また、ステップST109において、制御部10により、水位H>検出水位値W≧水位Mでない(NO)と判定された場合に、処理はステップST112へ移行する。
ステップST110(ステップST109:YES判定)において、制御部10は、透過水W5の流量を第2目標流量値に設定する。検出水位値Wが水位M(基準水位)以上且つ水位H(基準貯留水位)未満であれば、純水W7の貯水量がある程度確保されているため、回収率を下げて、RO膜モジュール7の膜面へのスケールの析出やファウリングを抑制するためである。
ステップST111において、制御部10は、RO膜モジュール7の回収率を60%に設定する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
一方、ステップST112(ステップST109:NO判定)へ移行した場合において、制御部10は、検出水位値Wが水位H(基準貯留水位)以上であると判定し、透過水W5の流量を第3目標流量値に設定する。純水W7が基準貯留水位以上あれば、十分な貯水量が確保されているため、透過水W5の供給を停止するためである。
ステップST113において、制御部10は、内部タイマがカウントする計時Tcが予め設定された時間Tdに達したか否かを判定する。軟水W2の測定硬度値Ccが許容硬度値Csを超過する状態が継続する場合、回収率を下げて運転しても、RO膜モジュール7の膜面へのスケールの析出やファウリングが懸念される。このため、内部タイマがカウントする計時Tcが時間Tdに達した場合には、フラッシング運転を実行するためである。
このステップST113において、制御部10により、計時Tcが時間Tdに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST114へ移行する。また、ステップST113において、制御部10により、計時Tcが時間Tdに達していない(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
ステップST114(ステップST113:YES判定)において、制御部10は、内部タイマによる計時Tcをリセットする。
ステップST115において、制御部10は、フラッシング運転を実行する。フラッシング運転については後述する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
次に、制御部10による流量フィードバック水量制御について説明する。図4は、制御部10において流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図4に示すステップST201において、制御部10は、透過水W5の目標流量値Qp´を取得する。この目標流量値Qp´は、図3に示すフローチャートのステップST106、ステップST110又はステップST112において設定された目標流量値である。
ステップST202において、制御部10は、内部タイマ(不図示)による計時Tsが制御周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST202において、制御部10により、タイマによる計時Tsが100msに達したと(YES)判定された場合に、処理はステップST203へ移行する。また、ステップST202において、制御部10により、内部タイマによる計時Tsが100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST202へ戻る。
ステップST203(ステップST202:YES判定)において、制御部10は、流量センサ15で検出された透過水W5の検出流量値Qpを取得する。
ステップST204において、制御部10は、ステップST203で取得した検出流量値(フィードバック値)QpとステップST201で取得した目標流量値Qp´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
ステップST205において、制御部10は、操作量U、目標流量値Qp´及び加圧ポンプ5の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、加圧ポンプ5の駆動周波数Fを演算する。
ステップST206において、制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
ステップST207において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ6に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。
次に、制御部10によるRO膜モジュール7の回収率制御について説明する。図5は、制御部10においてRO膜モジュール7の回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図5に示すステップST301において、制御部10は、透過水W5の目標流量値Qp´を設定する。この目標流量値Qp´は、図3に示すフローチャートのステップST106、ステップST110又はステップST112において設定された目標流量値である。
ステップST302において、制御部10は、RO膜モジュール7の回収率Rを設定する。この回収率Rは、図3に示すフローチャートのステップST107又はステップST111において設定された回収率である。
ステップST303において、制御部10は、ステップST301で設定した目標流量値Qp´及びステップST302で設定した回収率Rに基づいて、濃縮水W6の排水流量Qcを、式(1)により演算する。
ステップST304において、制御部10は、濃縮水W6の実際排水流量QdがステップST303で演算した排水流量Qcとなるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST301へリターンする)。
次に、制御部10によるフラッシング運転について説明する。図6は、制御部10においてフラッシング運転を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理は、図3に示すフローチャート(ステップST115)のサブルーチンとして実行される。
図6に示すステップST401において、制御部10は、透過水弁8を閉状態に制御する。
ステップST402において、制御部10は、濃縮水還流弁16を閉状態に制御する。
ステップST403において、制御部10は、第1排水弁11〜第3排水弁13のうち、所定の弁を開状態に制御する。開状態に制御する排水弁の数は、効果的なフラッシングを行うのに必要な軟水W2の流量に基づいて、予め決定される。
ステップST404において、制御部10は、フラッシング運転における駆動周波数Ffを取得する。この駆動周波数Ffは、例えば、予めメモリに記憶された設定値である。
ステップST405において、制御部10は、駆動周波数Ffの値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
ステップST406において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ6に出力する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。なお、インバータ6は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を加圧ポンプ5に供給する。その結果、加圧ポンプ5は、インバータ6から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
上述した透過水弁8、濃縮水還流弁16、第1排水弁11〜第3排水弁13及び加圧ポンプ5の制御により、RO膜モジュール7の一次側に供給された軟水W2は、RO膜の表面を流れ、フラッシング洗浄排水として濃縮水排出ラインL7から排出される。また、RO膜モジュール7の二次側ポートから送出された透過水W5は、安全弁17の開弁動作により透過水返送ラインL9を流通して軟水ラインL2に返送される。
なお、フラッシング運転は、濃縮水排出ラインL7から排出される洗浄排水の電気伝導率又はシリカ濃度が、軟水W2の1.1倍以下となるまで継続する。
上述した実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
本実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、軟水W2の測定硬度値Cc(検知水質)が許容硬度値Cs(許容水質値)超過の場合に、給水タンク9が基準水位M以上〜基準貯留水位H未満の範囲であれば、透過水W5の流量を第2目標流量値(<第1目標流量値)に設定すると共に、濃縮水W6が第2排水流量(>第1排水流量)となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
これによれば、軟水W2の水質が悪化した場合に、透過水W5の流量を減らしても、給水タンク9から需要箇所への純水W7の供給を維持することができる。このため、透過水W5の流量を減らすと共に、RO膜モジュール7の回収率を下げた状態で運転することができる。従って、前処理ユニットとしての硬水軟化装置3の負荷を増大させることなしに、RO膜モジュール7の膜面へのスケールの析出やファウリングを抑制することができる。
また、制御部10は、軟水W2の測定硬度値Ccが許容硬度値Cs超過の場合であっても、給水タンク9が基準水位M未満でなければ、透過水W5の流量を減らすことがない。このため、需要箇所において純水W7の消費量が多い場合に、給水タンク9から需要箇所へ純水W7をより確実に供給することができる。
また、制御部10は、軟水W2の測定硬度値Ccが許容硬度値Cs超過の状態が、予め設定された時間Td以上継続する場合に、給水タンク9が基準貯留水位H以上あれば、RO膜モジュール7への軟水W2の供給を停止した後、フラッシング運転を実行する。フラッシング運転では、RO膜モジュール7内における濃縮水W6が軟水W2で置換されながら、膜表面が洗浄される。従って、需要箇所への純水W7の供給を維持しつつ、膜表面を清浄な状態に復帰させることができる。
また、制御部10は、RO膜モジュール7の運転中において、流量フィードバック水量制御を実行する。このため、回収率を下げた状態でも、安定した流量の透過水W5を給水タンク9へ補給することができる。
また、本実施形態に係る水処理システム1において、透過水返送ラインL9には、安全弁17が設けられている。このため、フラッシング運転において、透過水返送ラインL9の管内圧力が設定された圧力以上となった場合に、安全弁17を介して高圧の透過水W5を低圧側(加圧ポンプ5の一次側)に逃がすことができる。従って、過剰な背圧によるRO膜の破損を防止することができる。
また、本実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、フラッシング運転を実行する際に、濃縮水還流ラインL8を濃縮水W6が流通しないように濃縮水還流弁16を閉状態に制御し、且つ透過水ラインL5を透過水W5が流通しないように透過水弁8を閉状態に制御する。このため、軟水W2の濃縮を抑制しながら、軟水W2を洗浄水として有効利用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、本実施形態では、前処理ユニットとして硬水軟化装置3を用い、製造された前処理水の水質を硬度により判定する例について説明した。これに限らず、前処理ユニットは、砂濾過装置、除鉄除マンガン装置、活性炭濾過装置、硬水軟化装置等を単独で、或いはこれらの装置を組み合せて用いることができる。砂濾過装置、除鉄除マンガン装置、活性炭濾過装置で製造される前処理水の水質項目としては、それぞれ濁度、鉄分濃度、残留塩素濃度を例示することができ、これらの水質項目に基づいて前処理水の水質を判定することができる。また、前処理水の水質は、上述した複数の項目のうちの1つの項目だけでなく、複数の項目を組み合わせて判定してもよい。
本実施形態では、給水タンク9の水位を、L、M、Hの3段階に区分した例について説明した。しかし、給水タンク9の水位は、少なくとも2段階に区分されていればよい。また、給水タンク9の水位は、4段階以上に区分されていてもよい。いずれの場合でも、上位区分に対する透過水W5の目標流量が、下位区分に対する透過水W5の目標流量よりも小さくなるように設定することで、前処理水の水質が悪化した場合に、前処理水の負荷を増加させることなく、回収率を下げて運転することができる。
本実施形態では、前処理水における水質の悪化を、硬度センサ14により直接的に検知する例について説明した。これに限らず、制御部10を水質検知手段として機能させることにより、前処理水における水質の悪化を間接的に検知することもできる。
例えば、硬水軟化装置3のプロセス制御バルブ32が故障して、再生プロセスの実行ができなくなった場合には、軟水W2の水質が悪化することが予想される。また、塩水タンク4に貯留された塩水W3の量が規定量未満の場合や、塩水W3の塩分濃度が規定値未満となった場合には、再生プロセスST3において再生不良となり、早期に硬度成分のリークが発生することが予想される。このため、制御部10において、プロセス制御バルブ32の故障や塩水W3の異常を検知した場合には、前処理水の水質が悪化したと判定することができる。また、前処理水における水質の悪化は、上述した間接的な検知と、センサによる直接的な検知とを組み合わせて判定してもよい。
本実施形態に係る水処理システム1において、軟水W2にアルカリ剤(NaOH,KOH等)を添加して、軟水W2がpH8以上となるように構成してもよい。これにより、軟水W2に含まれる遊離炭酸がイオン化し、炭酸水素イオンや炭酸イオンに変化する。このため、後段に設けられたRO膜モジュール7において、イオン化した遊離炭酸(炭酸水素イオンや炭酸イオン)を除去することができる。従って、更に純度の高い純水W7を製造することができる。
また、軟水W2にアルカリ剤を添加する構成において、更に、給水タンク9の下流側に電気再生式イオン交換装置(EDI)を設けた構成としてもよい。軟水W2へのアルカリ剤の添加不良が発生した場合に、RO膜モジュール7で除去できない遊離炭酸がリークするおそれがある。しかし、電気再生式イオン交換装置において、(i)EDIモジュールに通電する電流値を上げる、及び/又は、(ii)脱塩室への通水流量を減少させることにより、リークした遊離炭酸を除去することができる。
また、軟水W2にアルカリ剤を添加する構成において、アルカリ剤を添加した軟水W2のpH値を測定するpH測定センサを設けた構成としてもよい。この場合、制御部10は、軟水W2のpH値を監視して、pH8未満となった場合には、アルカリ剤の添加不良が発生したと判断して、上記(i)及び/又は(ii)を実行する。また、制御部10は、pH8以上となった場合には、EDIモジュールに通電する電流値や脱塩室への通水流量を通常値に戻すように制御する。
また、軟水W2にアルカリ剤を添加する構成において、軟水ラインL2(図1参照)にアルカリ剤を送出する薬剤供給ライン(不図示)に、フローチェッカを設けた構成としてもよい。フローチェッカは、薬剤供給ラインにおける薬剤(アルカリ剤)の流通を検知する装置である。この場合、制御部10は、フローチェッカにおいて薬剤の流通が検知されない場合には、アルカリ剤の添加不良が発生したと判断して、上記(i)及び/又は(ii)を実行する。また、制御部10は、フローチェッカにおいて薬剤の流通が検知された場合には、EDIモジュールに通電する電流値や脱塩室への通水流量を通常値に戻すように制御する。
また、本実施形態に係る水処理システム1では、回収率制御において、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、濃縮水W6の排水流量を段階的に調節する例について説明した。これに限らず、濃縮水排出ラインL7を分岐させずに、当該濃縮水排出ラインL7に比例制御弁を設けた構成としてもよい。この場合、制御部10から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御弁に送信して弁開度を制御することにより、濃縮水W6の排水流量を調節することができる。
また、比例制御弁を設けた構成において、濃縮水排出ラインL7に流量センサを設けた構成としてもよい。この場合は、流量センサで検出された流量値を、制御部10にフィードバック値として入力する。これにより、濃縮水W6の実際排水流量をより正確に制御することができる。