(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。水処理システム1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。図1は、第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図2は、硬水軟化装置3の概略断面図である。図3は、制御部10により実行されるプロセスのフローチャートである。図4(a),(b)は、制御部10により実行される基本プロセスを示す説明図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る水処理システム1は、原水ポンプ2と、硬水軟化装置3と、再生液供給手段としての塩水タンク4と、温度検出手段としての温度センサ5と、を備える。また、水処理システム1は、加圧ポンプ6と、インバータ7と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール8と、流量検出手段としての流量センサ9と、制御部10と、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13と、を備える。このうち、加圧ポンプ6、RO膜モジュール8、流量センサ9及び制御部10は、本実施形態における膜分離装置を構成する。また、図1では、電気的な接続の経路を破線で示す。
また、水処理システム1は、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、塩水ラインL3と、排水ラインL4と、を備える。更に、水処理システム1は、透過水ラインL5と、濃縮水ラインL6と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。一方、原水ラインL1の下流側の端部は、硬水軟化装置3のプロセス制御バルブ32に接続されている。
原水ポンプ2は、原水ラインL1に設けられている。原水ポンプ2は、供給源から供給された水道水や地下水等の原水W1を、硬水軟化装置3に向けて圧送する。原水ポンプ2は、制御部10と電気的に接続されている。原水ポンプ2の運転(駆動及び停止)は、制御部10により制御される。
原水ラインL1及び原水ポンプ2は、軟化プロセスST1において、電気伝導率が150mS/m以下、且つ全硬度が500mgCaCO3/L以下の原水W1を、硬水軟化装置3に供給する。
硬水軟化装置3は、原水W1に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を、陽イオン交換樹脂床311においてナトリウムイオン(又はカリウムイオン)に置換して軟水W2を製造する設備である。硬水軟化装置3は、図2に示すように、圧力タンク31と、弁手段としてのプロセス制御バルブ32と、を主体に構成されている。
圧力タンク31は、上部に開口部を有する有底の筒状体である。圧力タンク31は、開口部が蓋部材で密閉されている。圧力タンク31の内部には、陽イオン交換樹脂ビーズからなる陽イオン交換樹脂床311、及び濾過砂利からなる支持床312が収容されている。
陽イオン交換樹脂床311は、原水W1を軟水化する処理材として機能する。陽イオン交換樹脂床311は、圧力タンク31の内部において、支持床312の上部に積層されている。陽イオン交換樹脂床311の深さD1は、300〜1500mmの範囲に設定されている。
支持床312は、陽イオン交換樹脂床311に対する流体の整流部材として機能する。支持床312は、圧力タンク31の底部側に収容されている。
圧力タンク31において、陽イオン交換樹脂床311の頂部には、陽イオン交換樹脂ビーズの流出を防止する頂部スクリーン321が設けられている。頂部スクリーン321は、不図示の第1流路を介してプロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
頂部スクリーン321による配液位置及び集液位置は、陽イオン交換樹脂床311の頂部付近に設定される。頂部スクリーン321は、陽イオン交換樹脂床311の頂部に設けられる頂部配液部及び頂部集液部として機能する。
圧力タンク31において、陽イオン交換樹脂床311の底部には、陽イオン交換樹脂ビーズの流出を防止する底部スクリーン322が設けられている。底部スクリーン322は、不図示の第2流路を介してプロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
底部スクリーン322による配液位置及び集液位置は、陽イオン交換樹脂床311の底部付近に設定される。底部スクリーン322は、陽イオン交換樹脂床311の底部に設けられる底部配液部及び底部集液部として機能する。
圧力タンク31において、硬度リーク防止領域313(後述)より上部であって、陽イオン交換樹脂床311の深さ方向の中間部には、陽イオン交換樹脂ビーズの流出を防止する中間部スクリーン323が設けられている。中間部スクリーン323は、不図示の第3流路を介してプロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
中間部スクリーン323による集液位置は、陽イオン交換樹脂床311の中間部付近に設定される。中間部スクリーン323は、陽イオン交換樹脂床311の中間部に設けられる中間部集液部として機能する。
プロセス制御バルブ32は、その内部に、各種のライン、弁等を備える。プロセス制御バルブ32は、少なくとも、軟化プロセスST1における原水W1の流れと、再生プロセスST3における塩水W3の流れとを切り換え可能に構成されている。軟化プロセスST1では、陽イオン交換樹脂床311に対して、原水W1を下降流で通過させて軟水W2を製造する。一方、再生プロセスST3では、塩水W3を陽イオン交換樹脂床311の頂部及び底部の両側から配液しながら、中間部で集液することにより塩水W3の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311の全体を再生させる。
再生プロセスST3では、硬度リーク防止領域313に対し、再生レベルが1〜6eq/L−Rとなる量の塩水W3を供給する。ここで、再生レベルとは、単位容積のイオン交換樹脂の再生に使用される再生剤量をいう。再生剤として塩化ナトリウムを用いる場合、1eqは、58.5gに相当する。
硬度リーク防止領域313は、軟化プロセスST1での硬度リークを極力防止するために、陽イオン交換樹脂床311において十分に再生する必要のある領域である。硬度リーク防止領域313は、図2に示すように、陽イオン交換樹脂床311の底部(すなわち、底面)をベースとして深さD2が100mmに設定されている。再生プロセスST3では、この限定された領域を1〜6eq/L−Rの再生レベルで再生することにより、硬度リーク量を0.8mgCaCO3/L以下に維持することができる。
また、プロセス制御バルブ32は、再生プロセスST3の後に実行される押出プロセスST4における原水W1の流れを切り換え可能に構成されている。押出プロセスST4では、原水W1を陽イオン交換樹脂床311の頂部及び底部の両側から配液しながら、中間部で集液することにより原水W1の対向流を生成して、導入された塩水W3を押し出す。
プロセス制御バルブ32には、排水ラインL4の上流側の端部が接続されている。排水ラインL4からは、再生プロセスや押出プロセス等において使用された塩水W3や原水W1が排水W4として排出される。
更に、プロセス制御バルブ32において、内部に備えられた弁体の駆動部は、制御部10と信号線を介して電気的に接続されている。プロセス制御バルブ32における弁の切り換えは、制御部10により制御される。
ここで、硬水軟化装置3において実施される各プロセスについて説明する。
本実施形態の水処理システム1において、後述する制御部10は、プロセス制御バルブ32の流路を切り換えることにより、図3に示す以下のプロセスST1〜ST6の運転を実施する。
(ST1)原水W1を陽イオン交換樹脂床311の全体に対して上から下へ通過させる軟化プロセス
(ST2)洗浄水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床311の全体に対して下から上へ通過させる逆洗浄プロセス
(ST3)再生液としての塩水W3を陽イオン交換樹脂床311に対して上から下へ通過させると共に、原水W1を陽イオン交換樹脂床311の主に硬度リーク防止領域313に対して下から上へ通過させる再生プロセス
(ST4)押出水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床311に対して上から下へ通過させると共に、原水W1を陽イオン交換樹脂床311の主に硬度リーク防止領域313に対して下から上へ通過させる押出プロセス
(ST5)濯ぎ水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床311の全体に対して上から下へ通過させるリンス・プロセス
(ST6)補給水としての原水W1を塩水タンク4へ供給する補水プロセス
次に、上記プロセスST1〜ST6のうち、主要なプロセスである軟化プロセスST1、再生プロセスST3、及び押出プロセスST4の運転方法について説明する。
軟化プロセスST1では、図4(a)に示すように、原水W1を頂部スクリーン321から配液して、陽イオン交換樹脂床311の全体に対し、原水W1を下降流で通過させて、軟水W2を製造する。製造された軟水W2は、底部スクリーン322から集液される。再生プロセスST3後の軟化プロセスST1では、電気伝導率が150mS/m以下、且つ全硬度が500mgCaCO3/L以下の原水W1を供給する。
再生プロセスST3では、図4(b)に示すように、塩水W3を頂部スクリーン321から配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、塩水W3を下降流で通過させる。同時に、塩水W3を底部スクリーン322からも配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、塩水W3を上昇流で通過させる。これにより、塩水W3の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311を再生する。再生プロセスST3では、塩水W3を、陽イオン交換樹脂床311に対して0.7〜2m/hの線速度で通過させる。また、硬度リーク防止領域313に対しては、再生レベルが1〜6eq/L−Rとなる量の塩水W3を供給する。
陽イオン交換樹脂床311を再生した使用済みの塩水W3は、中間部スクリーン323から集液される。この再生プロセスST3では、塩水W3の対向流を生成するスプリット・フロー再生により、陽イオン交換樹脂床311の全体を再生させる。特に、本発明のスプリット・フロー再生では、硬度リーク防止領域313に対して特定の再生レベルとなる量の塩水W3を供給することから、硬度リーク防止領域313を含む陽イオン交換樹脂床311の下側領域を十分に再生できる。
再生プロセスST3の終了後に実施される押出プロセスST4では、図4(b)に示すように、原水W1を頂部スクリーン321から配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、原水W1を下降流で通過させる。同時に、原水W1を底部スクリーン322からも配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、原水W1を上昇流で通過させる。これにより、原水W1の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311に導入された塩水W3を押し出す。陽イオン交換樹脂床311を通過した原水W1は、中間部スクリーン323から集液される。押出プロセスST4では、原水W1を、陽イオン交換樹脂床311に対して、0.7〜2m/hの線速度、且つ0.4〜2.5BVの押出量で通過させる。
再生プロセスST3では、陽イオン交換樹脂床311の全体に対して、スプリット・フロー再生が行われる。そのため、陽イオン交換樹脂床311の全体がほぼ均等に再生されるが、特に硬度リーク防止領域313を含む下側領域を十分に再生できる。従って、軟化プロセスST1では、純度の高い軟水W2の採水量を最大限にまで高められる。また、スプリット・フロー再生では、再生剤の押し出しに原水を使用しつつも、押出量を制限している。このため、硬度リーク防止領域313の汚染がほとんどなく、目標純度の軟水W2を製造できる。
この再生プロセスST3を実施することにより、後の軟化プロセスST1において、電気伝導率が150mS/m以下、且つ全硬度が500mgCaCO3/L以下の原水W1を供給した場合に、硬度リーク量が0.8mgCaCO3/L以下の高純度の軟水W2を製造できる。
なお、逆洗浄プロセスST2、リンス・プロセスST5、及び補水プロセスST6については、図示による説明を省略する。
再び、図1を参照しながら水処理システム1の構成について説明する。
塩水タンク4は、陽イオン交換樹脂床311を再生する塩水W3を貯留する。塩水タンク4には、塩水ラインL3の上流側の端部が接続されている。塩水ラインL3の下流側の端部は、プロセス制御バルブ32と連通し、プロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
塩水ラインL3には、塩水弁(不図示)が設けられている。塩水弁は、塩水ラインL3を開閉する。塩水弁は、プロセス制御バルブ32に組み込まれている。塩水弁において、弁体の駆動部は、制御部10と不図示の信号線を介して電気的に接続されている。塩水弁における弁の開閉は、制御部10により制御される。塩水タンク4は、再生プロセスST3において、陽イオン交換樹脂床311を再生する塩水W3を圧力タンク31へ送出する。
温度センサ5は、軟水ラインL2を流通する軟水W2の温度を検出する機器である。温度センサ5は、接続部J1において軟水ラインL2に接続されている。また、温度センサ5は、制御部10と電気的に接続されている。温度センサ5で検出された軟水W2の温度(以下、「検出温度値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
加圧ポンプ6は、硬水軟化装置3から送出された軟水W2を吸入し、RO膜モジュール8に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ6は、インバータ7(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ6には、インバータ7から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ6は、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
インバータ7は、加圧ポンプ6に周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ7は、制御部10と電気的に接続されている。インバータ7には、制御部10から電流値信号が入力される。インバータ7は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数を加圧ポンプ6に出力する。
RO膜モジュール8は、硬水軟化装置3により製造された軟水W2を、溶存塩類が除去された透過水W5と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W6とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール8は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール8は、これらRO膜エレメントにより軟水W2を膜分離処理し、透過水W5及び濃縮水W6を製造する。RO膜モジュール8の一次側入口ポートは、軟水ラインL2を介して硬水軟化装置3(プロセス制御バルブ32)の下流側に接続されている。
RO膜モジュール8の二次側ポートには、透過水ラインL5の上流側の端部が接続されている。RO膜モジュール8で得られた透過水W5は、透過水ラインL5を介して需要箇所等に送出される。また、RO膜モジュール8の一次側出口ポートには、濃縮水ラインL6の上流側の端部が接続されている。RO膜モジュール8で得られた濃縮水W6は、濃縮水ラインL6を介して、RO膜モジュール8の外に排出される。濃縮水ラインL6の下流側には、第1排水バルブ11、第2排水バルブ12及び第3排水バルブ13(後述)が接続されている。
なお、濃縮水ラインL6から排出された濃縮水W6の一部を、加圧ポンプ6の上流側における軟水ラインL2に還流させてもよい。濃縮水W6の一部を軟水ラインL2に還流させることにより、RO膜モジュール8の表面での水流速を所定範囲に保つことができる。
本実施形態におけるRO膜モジュール8は、膜表面に架橋全芳香族ポリアミドからなる負荷電性のスキン層が形成された逆浸透膜(不図示)を有する。この逆浸透膜は、濃度500mg/L、pH7.0、温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力0.7MPa、回収率15%で供給したときの水透過係数が、1.5×10−11m3・m−2・s−1・Pa−1以上、且つ塩除去率が99%以上となる性能を有する。
このような性能に設定された逆浸透膜は、淡水の脱塩処理において、供給水の硬度が低いほど、電気伝導率(EC)で評価したときの塩除去率(すなわち、(供給水EC−透過水EC)/供給水EC×100)が高くなる。そのため、スプリット・フロー再生を行う硬水軟化装置3で製造された高純度の軟水W2(実力値として、0.8mgCaCO3以下)を恒常的に供給することで、高い塩除去率(通常、98.5%以上)を維持できる。
操作圧力とは、JIS K3802−1995「膜用語」で定義される平均操作圧力である。操作圧力は、RO膜モジュール8の一次側の入口圧力と一次側の出口圧力との平均値を指す。回収率とは、RO膜モジュール8への供給水(ここでは塩化ナトリウム水溶液)の流量Qfに対する透過水の流量Qpの割合(すなわち、Qp/Qf×100)をいう。
水透過係数は、透過水の流量[m3/s]を膜面積[m2]及び有効圧力[Pa]で除した値である(後述の式(3)を参照)。水透過係数は、逆浸透膜の水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、JIS K3802−1995「膜用語」で定義される。有効圧力は、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力(背圧)を差し引いた圧力である(後述の式(4)を参照)。
塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度(ここでは塩化ナトリウム濃度)から計算される値である。塩除去率は、逆浸透膜の溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率は、供給水の濃度Cf及び透過水の濃度Cpから、(1−Cp/Cf)×100により求められる。
本実施形態の水透過係数及び塩除去率の条件を満たす逆浸透膜は、逆浸透膜エレメントとして市販されている。逆浸透膜エレメントとしては、例えば、東レ社製:型式名「TMG20−400」、ウンジン・ケミカル社製:型式名「RE8040−BLF」、日東電工社製:型式名「ESPA1」等を用いることができる。
流量センサ9は、透過水ラインL5を流通する透過水W5の流量を検出する機器である。流量センサ9は、接続部J2において透過水ラインL5に接続されている。流量センサ9は、制御部10と電気的に接続されている。流量センサ9で検出された透過水W5の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13は、濃縮水ラインL6から排出された濃縮水W6の排水流量を調節する弁である。上述した濃縮水ラインL6の下流側は、分岐部J3及びJ4において、第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13に分岐している。
第1排水ラインL11には、第1排水バルブ11が設けられている。第2排水ラインL12には、第2排水バルブ12が設けられている。第3排水ラインL13には、第3排水バルブ13が設けられている。
第1排水バルブ11は、第1排水ラインL11を開閉することができる。第2排水バルブ12は、第2排水ラインL12を開閉することができる。第3排水バルブ13は、第3排水ラインL13を開閉することができる。
第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13は、それぞれ定流量弁機構(不図示)を備える。定流量弁機構は、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13において、それぞれ異なる流量値に設定されている。例えば、第1排水バルブ11は、開状態において、RO膜モジュール8の回収率が95%となるように排水流量が設定されている。第2排水バルブ12は、開状態において、RO膜モジュール8の回収率が90%となるように排水流量が設定されている。第3排水バルブ13は、開状態において、RO膜モジュール8の回収率が80%となるように排水流量が設定されている。
濃縮水ラインL6から排出される濃縮水W6の排水流量は、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13を選択的に開閉することにより、段階的に調節できる。例えば、第2排水バルブ12のみを開状態とし、第1排水バルブ11及び第3排水バルブ13を閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール8の回収率を90%とすることができる。また、第1排水バルブ11及び第2排水バルブ12を開状態とし、第3排水バルブ13のみを閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール8の回収率を85%とすることができる。従って、本実施形態において、濃縮水W6の排水流量は、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13を選択的に開閉することにより、回収率を65%〜95%までの間で、5%毎に段階的に調節できる。
第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13は、それぞれ制御部10と電気的に接続されている。第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。
制御部10は、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10は、不図示の軟水流量センサ、塩水流量センサから入力された検出信号等に基づいて、プロセス制御バルブ32の動作を制御する。制御部10のメモリには、第1実施形態における硬水軟化装置3の運転を実施する制御プログラムが予め記憶されている。制御部10のCPUは、メモリに記憶された制御プログラムに従って、上述した軟化プロセスST1〜補水プロセスST6を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ32を制御する。
また、制御部10は、透過水W5の流量が予め設定された目標流量値となるように、透過水W5の検出流量値をフィードバック値として、加圧ポンプ6の駆動周波数を演算する。そして、制御部10は、演算した駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ7に出力する(以下、「流量フィードバック水量制御」ともいう)。この流量フィードバック制御は、流量センサ9により透過水W5の流量が正常に検出されているときに実行される制御モードである。
ここで、制御部10による流量フィードバック水量制御について説明する。図5は、制御部10が流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図5に示すステップST101において、制御部10は、透過水W5の目標流量値Qp´を取得する。この目標流量値Qp´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
ステップST102において、制御部10は、内部のタイマ(不図示)による計時tが制御周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST102において、制御部10により、タイマによる計時が100msに達したと(YES)判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、制御部10により、タイマによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST102へ戻る。
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、制御部10は、流量センサ9で検出された透過水W5の検出流量値Qpを取得する。
ステップST104において、制御部10は、ステップST103で取得した検出流量値(フィードバック値)QpとステップST101で取得した目標流量値Qp´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
ステップST105において、制御部10は、操作量U、目標流量値Qp´及び加圧ポンプ6の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、加圧ポンプ6の駆動周波数Fを演算する。
ステップST106において、制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
ステップST107において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ7に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
また、制御部10は、軟水W2の温度に基づいて、透過水W5の回収率制御を行う(以下、「温度フィードフォワード回収率制御」ともいう)。この温度フィードフォワード回収率制御は、上述した流量フィードバック水量制御と並行して実行される。
次に、制御部10による温度フィードフォワード回収率制御について説明する。図6は、制御部10が温度フィードフォワード回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図6に示すステップST201において、制御部10は、透過水W5の目標流量値Qp´を取得する。この目標流量値Qp´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
ステップST202において、制御部10は、軟水W2のシリカ(SiO2)濃度Csを取得する。このシリカ濃度Csは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。軟水W2のシリカ濃度は、事前に軟水W2を水質分析することにより得ることができる。なお、軟水ラインL2において、不図示のセンサにより軟水W2のシリカ濃度を計測してもよい。
ステップST203において、制御部10は、温度センサ5から軟水W2の検出温度値Tを取得する。
ステップST204において、制御部10は、取得した検出温度値Tに基づいて、水に対するシリカ溶解度Ssを決定する。
ステップST205において、制御部10は、前のステップで取得又は決定したシリカ濃度Cs、及びシリカ溶解度Ssに基づいて、濃縮水W6におけるシリカの許容濃縮倍率Nsを演算する。シリカの許容濃縮倍率Nsは、下記の式(1)により求めることができる。
Ns=Ss/Cs (1)
例えば、シリカ濃度Csが20mgSiO2/L、25℃におけるシリカ溶解度Ssが100mgSiO2/Lであれば、許容濃縮倍率Nsは“5”となる。
ステップST206において、制御部10は、前のステップで取得又は演算した目標流量値Qp´、及び許容濃縮倍率Nsに基づいて、回収率が最大となる排水流量(目標排水流量Qd´)を演算する。目標排水流量Qd´は、下記の式(2)により求めることができる。
Qd´=Qp´/(Ns−1) (2)
ステップST207において、制御部10は、濃縮水W6の実際排水流量QdがステップST206で演算した目標排水流量Qd´となるように、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13の開閉を制御する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。
上述した第1実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
第1実施形態に係る水処理システム1において、硬水軟化装置3の陽イオン交換樹脂床311は、再生プロセスST3を含んで運転される。再生プロセスST3では、図4(b)に示すように、塩水W3が陽イオン交換樹脂床311の頂部スクリーン321及び底部スクリーン322へそれぞれ配液され、且つ中間部スクリーン323で集液される。これにより、塩水W3の対向流が生成され、陽イオン交換樹脂床311の全体が再生される。そのため、水処理システム1においては、硬度リーク量が十分に低減された高純度の軟水W2を実用的な採水量の範囲で最大限に得ることができる。
また、第1実施形態に係る水処理システム1において、再生プロセスST3では、陽イオン交換樹脂床311の底部をベースとして深さD2(図2参照)が100mmに設定された硬度リーク防止領域313に対し、再生レベルが1〜6eq/L−Rとなる量の塩水W3を供給する。そのため、陽イオン交換樹脂床311において、硬度リークの防止に重要な出口領域である硬度リーク防止領域313をほぼ完全に再生することができる。これによれば、軟化プロセスST1において、原水W1として硬度レベルの高い劣悪な水質の硬水を用いた場合でも、硬度リーク量を極限にまで抑制した高純度の軟水W2を得ることができる。
従って、第1実施形態に係る水処理システム1によれば、RO膜モジュール8に対して高純度の軟水W2を恒常的に供給することができる。このため、水処理システム1においては、RO膜モジュール8におけるシリカ系スケールの析出やファウリングの発生を抑制することができる。また、水処理システム1においては、劣悪な水質の硬水を用いた場合においても、炭酸カルシウム系スケールの析出を安定して抑制できる。
また、第1実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、流量フィードバック水量制御と並行して温度フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、水処理システム1においては、透過水W5の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール8におけるシリカ系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aについて、図7を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
図7に示すように、第2実施形態に係る水処理システム1Aは、原水ポンプ2と、硬水軟化装置3と、塩水タンク4と、温度センサ5と、加圧ポンプ6と、インバータ7と、RO膜モジュール8と、を備える。また、水処理システム1Aは、制御部10Aと、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13と、硬度測定手段としての硬度センサ14と、圧力検出手段としての圧力センサ15と、を備える。
硬度センサ14は、軟水ラインL2を流通する軟水W2のカルシウム硬度(硬度リーク量:炭酸カルシウム換算値)を測定する機器である。硬度センサ14は、接続部J2において軟水ラインL2に接続されている。硬度センサ14は、制御部10Aと電気的に接続されている。硬度センサ14で測定された軟水W2のカルシウム硬度(以下、「測定硬度値」ともいう)は、制御部10Aへ検出信号として送信される。
圧力センサ15は、加圧ポンプ6の吐出圧力(運転圧力)を検出する機器である。圧力センサ15は、加圧ポンプ6の吐出側近傍に設けられた接続部J5において、軟水ラインL2に接続されている。本実施形態では、加圧ポンプ6から吐出された直後の軟水W2の圧力を、加圧ポンプ6の吐出圧力とする。圧力センサ15は、制御部10Aと電気的に接続されている。圧力センサ15で検出された軟水W2の圧力(以下、「検出圧力値」ともいう)は、制御部10Aへ検出信号として送信される。
制御部10Aは、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10Aは、不図示の軟水流量センサ、塩水流量センサから入力された検出信号等に基づいて、プロセス制御バルブ32(図2参照)の動作を制御する。制御部10Aのメモリには、第2実施形態における硬水軟化装置3の運転を実施する制御プログラムが予め記憶されている。CPUは、メモリに記憶された制御プログラムに従って、軟化プロセスST1〜補水プロセスST6を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ32を制御する(図3参照)。
また、制御部10Aは、透過水W5の流量が予め設定された目標流量値となるように、加圧ポンプ6の検出圧力値をフィードバック値として、加圧ポンプ6の駆動周波数を演算する。そして、制御部10Aは、演算した駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ7に出力する(以下、「圧力フィードバック水量制御」ともいう)。
ここで、制御部10Aによる圧力水量フィードバック制御について説明する。図8は、制御部10Aが圧力フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図8に示すステップST301において、制御部10Aは、透過水W5の目標流量値Qp´を取得する。この目標流量値Qp´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
ステップST302において、制御部10Aは、RO膜モジュール8の基準温度(25℃)における水透過係数Lpを取得する。この水透過係数Lpは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
なお、この圧力フィードバック水量制御を、第1実施形態における流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行することができる。その場合、水透過係数Lpは、流量センサ9(図1参照)の故障が発生する直前の演算値でもよい。
基準温度における水透過係数Lpの演算値は、下記の式(3)及び(4)に基づいて求めることができる。
Lp=Qp/(K・A・Pe) (3)
(但し、K:温度補正係数、A:RO膜モジュール8の膜面積、Pe:有効圧力)
Pe=Pd−(ΔP1/2)−P2−Δπ+Ps (4)
(但し、Pd:加圧ポンプ6の吐出圧力、ΔP1:RO膜モジュール8の一次側における差圧、P2:RO膜モジュール8の二次側における背圧、Δπ:RO膜モジュール8の浸透圧差、Ps:加圧ポンプ6の吸入側における圧力)
式(3)において、温度補正係数Kは、温度センサ5の検出温度値Tの関数である。膜面積Aは、逆浸透膜エレメントの使用本数により定まるので、予め設定した値を使用することができる。式(4)による有効圧力Peの計算において、ΔP1、P2、Δπ、及びPsの各値は、定常運転中は、ほぼ一定と看做せるため、予め設定した値を使用することができる。従って、膜分離装置の運転中に、温度センサ5の検出温度値T、流量センサ9の検出流量値Qp、及び圧力センサ15の検出圧力値Pdからなる少なくとも3つのパラメータを取得すれば、基準温度における水透過係数Lpを演算することができる。
ステップST303において、制御部10Aは、温度センサ5で検出された軟水W2の検出温度値Tを取得する。
ステップST304において、制御部10Aは、ステップST303で取得した検出温度値Tに基づいて、温度補正係数Kを演算する。
ステップST305において、制御部10Aは、前のステップで取得又は演算した目標流量値Qp´、水透過係数Lp、温度補正係数K、及び所要の設定値(A、ΔP1、P2、Δπ、Ps)を用いて、上記の式(3)及び(4)に基づいて、加圧ポンプ6の吐出圧力Pd´を演算する。そして、この吐出圧力Pd´の演算値を目標圧力値として設定する。
ステップST306において、制御部10Aは、内部のタイマ(不図示)による計時が制御周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST306において、制御部10Aにより、タイマによる計時が100msに達したと(YES)判定された場合に、処理はステップST307へ移行する。また、ステップST306において、制御部10Aにより、タイマによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST306へ戻る。
ステップST307(ステップST306:YES判定)において、制御部10Aは、圧力センサ15で検出された加圧ポンプ6の検出圧力値Pdを取得する。
ステップST308において、制御部10Aは、ステップST307で取得した検出圧力値(フィードバック値)PdとステップST305で設定した目標圧力値Pd´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
ステップST309において、制御部10Aは、操作量U、目標圧力値Pd´及び加圧ポンプ6の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、加圧ポンプ6の駆動周波数Fを演算する。
ステップST310において、制御部10Aは、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
ステップST311において、制御部10Aは、変換した電流値信号をインバータ7に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST301へリターンする)。
また、制御部10Aは、軟水W2の硬度に基づいて、透過水W5の回収率制御を行う(以下、「水質フィードフォワード回収率制御」ともいう)。この水質フィードフォワード回収率制御は、上述した圧力フィードバック水量制御と並行して実行される。
次に、制御部10Aによる水質フィードフォワード回収率制御について説明する。図9は、制御部10Aが水質フィードフォワード回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図9に示すステップST401において、制御部10Aは、透過水W5の目標流量値Qp´を取得する。この目標流量値Qp´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
ステップST402において、制御部10Aは、硬度センサ14で測定された軟水W2の測定硬度値Ccを取得する。
ステップST403において、制御部10Aは、水に対する炭酸カルシウム溶解度Scを取得する。この炭酸カルシウム溶解度Scは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。尚、水に対する炭酸カルシウム溶解度は、通常の運転温度(5〜35℃)では、ほぼ一定値と看做せる。
ステップST404において、制御部10Aは、前のステップで取得した測定硬度値Cc、及び炭酸カルシウム溶解度Scに基づいて、濃縮水W6における炭酸カルシウムの許容濃縮倍率Ncを演算する。炭酸カルシウムの許容濃縮倍率Ncは、下記の式(5)により求めることができる。
Nc=Sc/Cc (5)
例えば、測定硬度値Ccが3mgCaCO3/L、25℃における炭酸カルシウム溶解度Scが15mgCaCO3/Lであれば、許容濃縮倍率Ncは“5”となる。
ステップST405において、制御部10Aは、前のステップで取得又は演算した目標流量値Qp´、及び許容濃縮倍率Ncに基づいて、回収率が最大となる排水流量(目標排水流量Qd´)を演算する。目標排水流量Qd´は、下記の式(6)により求めることができる。
Qd´=Qp´/(Nc−1) (6)
ステップST406において、制御部10Aは、濃縮水W6の実際排水流量QdがステップST405で演算した目標排水流量Qd´となるように第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13の開閉を制御する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST401へリターンする)。
上述した第2実施形態に係る水処理システム1Aによれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。特に、第2実施形態に係る水処理システム1Aにおいて、制御部10Aは、圧力フィードバック水量制御により透過水W5の流量を制御する。この圧力フィードバック水量制御は、第1実施形態における流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行することができる。このため、第1実施形態の流量フィードバック水量制御の実行中において、流量センサ9(図1参照)に故障が発生した場合でも、第2実施形態の圧力フィードバック水量制御に切り換えることにより、安定した水量の透過水W5を製造することができる。
また、第2実施形態に係る水処理システム1Aにおいて、制御部10Aは、水質フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、水処理システム1Aにおいては、硬水軟化装置3の再生不良等により硬度リーク量が増加した場合でも、透過水W5の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール8における炭酸カルシウム系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る水処理システム1Bについて、図10を参照しながら説明する。図10は、第3実施形態に係る水処理システム1Bの全体構成図である。第3実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
図10に示すように、第3実施形態に係る水処理システム1Bは、原水ポンプ2と、硬水軟化装置3と、塩水タンク4と、温度センサ5と、加圧ポンプ6と、インバータ7と、RO膜モジュール8と、を備える。また、水処理システム1Bは、制御部10Bと、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13と、電気伝導率測定手段としての電気伝導率センサ16と、を備える。
電気伝導率センサ16は、透過水ラインL5を流通する透過水W5の電気伝導率を測定する機器である。電気伝導率センサ16は、接続部J2において透過水ラインL5に接続されている。電気伝導率センサ16は、制御部10Bと電気的に接続されている。電気伝導率センサ16で測定された透過水W5の電気伝導率(以下、「測定電気伝導率値」ともいう)は、制御部10Bへ検出信号として送信される。
制御部10Bは、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10Bは、不図示の軟水流量センサ、塩水流量センサから入力された検出信号等に基づいて、プロセス制御バルブ32(図2参照)の動作を制御する。制御部10Bのメモリには、第3実施形態における硬水軟化装置3の運転を実施する制御プログラムが予め記憶されている。CPUは、メモリに記憶された制御プログラムに従って、軟化プロセスST1〜補水プロセスST6を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ32を制御する(図3参照)。
また、制御部10Bは、透過水W5の流量が予め設定された目標流量値となるように、温度センサ5の検出温度値をフィードフォワード値として、加圧ポンプ6の駆動周波数を演算する。そして、制御部10Bは、演算した駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ7に出力する(以下、「温度フィードフォワード水量制御」ともいう)。
ここで、制御部10Bによる温度フィードフォワード水量制御について説明する。図11は、制御部10Bが温度フィードフォワード水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図11に示すステップST501において、制御部10Bは、透過水W5の目標流量値Qp´を取得する。この目標流量値Qp´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
ステップST502において、制御部10Bは、RO膜モジュール8の基準温度(25℃)における水透過係数Lpを取得する。この水透過係数Lpは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
なお、この温度フィードフォワード水量制御を、第1実施形態における流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行することができる。その場合、水透過係数Lpは、流量センサ9(図1参照)の故障が発生する直前の演算値でもよい。基準温度における水透過係数Lpは、第2実施形態で説明した手法により演算することができる。
ステップST503において、制御部10Bは、温度センサ5で検出された軟水W2の検出温度値Tを取得する。
ステップST504において、制御部10Bは、ステップST503で取得した検出温度値Tに基づいて、温度補正係数Kを演算する。
ステップST505において、制御部10Bは、前のステップで取得又は演算した目標流量値Qp´、水透過係数Lp、温度補正係数K、及び所要の設定値(A、ΔP1、P2、Δπ、Ps)を用いて、第2実施形態で説明した式(3)及び(4)に基づいて、加圧ポンプ6の吐出圧力Pd´を演算する。
ステップST506において、制御部10Bは、吐出圧力Pd´の演算値を用いて、下記の式(7)に基づいて、加圧ポンプ6の駆動周波数Fを演算する。
F=a・Pd´2+b・Pd´+c (7)
(但し、a,b,c:加圧ポンプ6の仕様により定まる係数)
ステップST507において、制御部10Bは、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
ステップST508において、制御部10Bは、変換した電流値信号をインバータ7に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST501へリターンする)。
また、制御部10Bは、透過水W5の電気伝導率に基づいて、透過水W5の回収率制御を行う(以下、「水質フィードバック回収率制御」ともいう)。この水質フィードバック回収率制御は、上述した温度フィードフォワード水量制御と並行して実行される。
次に、制御部10Bによる水質フィードバック回収率制御について説明する。図12は、制御部10Bが水質フィードバック回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図12に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
図12に示すステップST601において、制御部10Bは、透過水W5の目標電気伝導率値Ep´を取得する。目標電気伝導率値Ep´は、透過水W5に要求される純度の指標である。目標電気伝導率値Ep´は、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
ステップST602において、制御部10Bは、電気伝導率センサ16で測定された透過水W5の測定電気伝導率値Epを取得する。
ステップST603において、制御部10Bは、ステップST602で取得した測定電気伝導率値(フィードバック値)EpとステップST301で取得した目標電気伝導率値Ep´との偏差がゼロとなるように、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13の開閉を制御する。すなわち、濃縮水W6の排水流量を段階的に増減させることにより、要求純度の透過水W5が得られるように、膜表面の溶存塩類の濃度を変化させる。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST601へリターンする)。
上述した第3実施形態に係る水処理システム1Bによれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。特に、第3実施形態に係る水処理システム1Bでは、温度フィードフォワード水量制御により透過水W5の流量を制御する。この温度フィードフォワード水量制御は、第1実施形態における流量フィードバック水量制御のバックアップとして実行することができる。このため、第1実施形態の流量フィードバック水量制御の実行中において、流量センサ9(図1参照)に故障が発生した場合でも、第3実施形態の温度フィードフォワード水量制御に切り換えることにより、安定した水量の透過水W5を製造することができる。
また、第3実施形態に係る水処理システム1Bにおいて、制御部10Bは、水質フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、水処理システム1Bにおいては、透過水W5に要求される水質を満たしつつ、透過水W5の回収率を最大限にまで高めることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、第1実施形態では、温度フィードフォワード回収率制御において、軟水W2のシリカ濃度を取得する例について説明した。これに限らず、原水W1のシリカ濃度を取得してもよい。
第2実施形態では、水質フィードフォワード回収率制御において、炭酸カルシウムの許容濃縮倍率及び透過水W5の目標流量値に基づいて、回収率が最大となる排水流量を算出する例について説明した。これに限らず、次のような手法を採用してもよい。すなわち、炭酸カルシウムの許容濃縮倍率Ncとシリカの許容濃縮倍率Nsとを比較し、小さい側の許容濃縮倍率を選択する。そして、選択した許容濃縮倍率及び透過水W5の目標流量値に基づいて、回収率が最大となる排水流量を算出する。
第1〜第3実施形態では、RO膜モジュール8に供給される軟水W2の温度を検出する例について説明した。これに限らず、RO膜モジュール8で得られた透過水W5の温度を検出してもよい。また、RO膜モジュール8で得られた濃縮水W6の温度を検出してもよい。
第1〜第3実施形態では、各回収率制御において、第1排水バルブ11〜第3排水バルブ13を選択的に開閉することにより、濃縮水W6の排水流量を段階的に調節する例について説明した。これに限らず、濃縮水ラインL6に比例制御バルブを設けた構成としてもよい。制御部から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御バルブに送信して弁開度を制御することにより、濃縮水W6の排水流量を調節することができる。
また、比例制御バルブを設けた構成において、濃縮水ラインL6に流量センサを設けた構成としてもよい。流量センサで検出された流量値を、制御部にフィードバック値として入力する。これにより、濃縮水W6の実際排水流量をより正確に制御することができる。
第1実施形態では、流量フィードバック水量制御と温度フィードフォワード回収率制御とを組み合わせた例について説明した。これに限らず、第2実施形態の圧力フィードバック水量制御と温度フィードフォワード回収率制御とを組み合わせてもよい。また、第3実施形態の温度フィードフォワード水量制御と温度フィードフォワード回収率制御とを組み合わせた構成としてもよい。
第2実施形態では、圧力フィードバック水量制御と水質フィードフォワード回収率制御とを組み合わせた例について説明した。これに限らず、第1実施形態の流量フィードバック水量制御と水質フィードフォワード回収率制御とを組み合わせてもよい。また、第3実施形態の温度フィードフォワード水量制御と水質フィードフォワード回収率制御とを組み合わせてもよい。
第3実施形態では、温度フィードフォワード水量制御と水質フィードバック回収率制御とを組み合わせた例について説明した。これに限らず、第1実施形態の流量フィードバック水量制御と水質フィードバック回収率制御とを組み合わせてもよい。また、第2実施形態の圧力フィードバック水量制御と水質フィードバック回収率制御とを組み合わせた構成としてもよい。