JP5767017B2 - 麺類のほぐれ改良剤とその使用方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、ほぐれ改良剤に由来する析出物が噴霧装置のノズルを目詰まりさせて操作性や生産性を低下させるという問題があった。
上記の先行技術には、油脂および乳化剤が個別に記載されているものの、これらを特定の比率で用いることおよびそれによる効果については記載も示唆もない。
また、本発明によれば、上記の麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良することを特徴とする麺類のほぐれ改良方法が提供される。
すなわち、本発明の麺類のほぐれ改良剤は、優れた乳化安定性および耐候性を有し、麺類に噴霧する際に装置のノズルを目詰まりさせることがなく、優れた操作性および生産性を発揮する。
また、本発明の麺類のほぐれ改良剤は、酢酸、酢酸ナトリウムおよびエタノールから選択される少なくとも1種をさらに含むことにより、上記の効果に加えて、静菌および防腐などの保存料としての効果が発揮される。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)などが挙げられる。括弧内の表記は(炭素数:二重結合数)を示す。
植物性油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、落花生油、なたね油、パーム油、コーン油(トウモロコシ油)、米ぬか油、パーム核油、サフラワー油、ごま油、綿実油、アマニ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ヒマシ油などが挙げられる。これらの中でも、麺類に余計な香りを付加し難いこと、入手し易いことなどから、大豆油、ヤシ油、落花生油およびコーン油から選択される少なくとも1種が好ましい。
本発明において用いられる乳化剤は、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1種である。
ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンエステル)は、甘味料のソルビトールの脱水物のソルビタンと脂肪酸がエステル結合したもので、ソルビトールエステルおよびソルバイトエステルとの混合物である。
プロピレングリコール脂肪酸エステル(ピージーエステル)は、プロピレングリコールと脂肪酸がエステル結合したもので、エステル交換反応で製造されたものはモノエステルとジエステルの混合物である。
上記の脂肪酸は、炭素数8〜24であり、油脂の脂肪酸として例示したものが挙げられる。
主となる脂肪酸がそれぞれラウリン酸、ステアリン酸およびオレイン酸で、ソルビタン1モルに対して脂肪酸が1モルでかつエチレンオキシドを約20分子縮合させたものを、ポリソルベート20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、ポリソルベート60(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)およびポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)という。また、主となる脂肪酸がステアリン酸でソルビタン1モルに対して脂肪酸が3モルでかつエチレンオキシドを約20分子縮合させたものをポリソルベート65(トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)という。これらの中でも、目詰まり防止の観点より親水性が高く、HLB値が高いポリソルベート60およびポリソルベート80が好ましい。
各成分の配合割合が上記範囲の未満やそれを超える場合には、本発明の効果が十分に得られないことがあり、各成分については次のような傾向がある。
増粘剤の配合割合が0.5重量部未満では、ほぐれ効果が十分に得られないことがある。一方、増粘剤の配合割合が30重量部を超えると、高粘度となり作業性が低下することがある。
油脂の配合割合が0.05重量部未満では、低温で乳化剤が固化し、目詰まりすることがある。一方、油脂の配合割合が5重量部を超えると、油の酸化などによる風味に悪影響を及ぼすことがある。
乳化剤の配合割合が0.05重量部未満では、ほぐれ効果が十分に得られないことがある。一方、乳化剤の配合割合が7重量部を超えると、乳化剤自体の固化あるいは麺類の食感を軟化させることがある。
油脂Oと乳化剤Eとの重量比O/Eが0.03未満もしくは80を超えると、乳化のバランスが崩れ、乳化剤が固化あるいは風味に悪影響を及ぼすことがある。
油脂の配合割合は、好ましくは0.1〜4重量部であり、より好ましくは0.3〜3重量部である。
乳化剤の配合割合は、好ましくは0.1〜7重量部であり、より好ましくは0.5〜5重量部である。
油脂Oと乳化剤Eとの重量比O/Eは、好ましくは0.05〜70であり、より好ましくは0.1〜60である。
エタノール、酢酸および酢酸ナトリウムは、広範囲の微生物に対して殺菌力を発揮し、本発明の麺類の改良剤の殺菌および防腐を目的とする保存料として機能する。
また、酢酸および酢酸ナトリウムは、pH調整剤としても機能する。
エタノールの配合割合は、好ましくは水性媒体100重量部中にエタノールとして1〜7重量部、より好ましくは2〜6重量部である。
エタノールの配合割合が1重量部未満では、十分な防腐効果が得られず、またエタノールの配合割合が7重量部を超えると、経済性および風味の面であまり好ましくない。
酢酸の配合割合は、好ましくは水性媒体100重量部中に酢酸として0.03〜3重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部である。
酢酸の配合割合が0.03重量部未満では、十分な静菌・防腐効果が得られず、また酢酸の配合割合が3重量部を超えると、本発明のほぐれ改良剤で処理された麺類に酢酸臭が付着する点および経済性の面であまり好ましくない。
酢酸ナトリウムの配合割合は、好ましくは水性媒体100重量部中に酢酸ナトリウムとして0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜4重量部である。
酢酸ナトリウムの配合割合が0.1重量部未満では、十分な静菌・防腐効果が得られず、また酢酸ナトリウムの配合割合が5重量部を超えると、低温での沈殿析出などの製剤安定性が低下する点、麺類に酢酸臭が付着する点および経済性の面であまり好ましくない。
酢酸および酢酸ナトリウムは、水溶液の形態で乳化溶液に加えるのが好ましい。
また、乳化剤および油脂を加えた後の乳化に際しては、液温20〜70℃程度に加熱し、例えば、ホモミキサーなどの公知の装置を用いて混合溶液を攪拌するのが好ましい。
エタノール、酢酸および酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1種の混合に際しては、液温50℃以下に冷却し、例えば、撹拌混合装置、ホモミキサー、高圧ホモジナイザーなどの公知の装置を用いて乳化溶液を攪拌するのが好ましい。
上記の溶解、乳化および混合における条件は、製剤容量、装置の能力などに応じて適宜設定すればよい。
麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させる方法としては、例えば、水で1〜10倍に希釈した麺類のほぐれ改良剤を麺類に噴霧し、それが絡まるように麺類を混ぜ合わせる方法が挙げられるが、これに限定されない。
麺類に付着させるほぐれ改良剤の量は、麺類100重量部に対して0.1〜7重量部であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜6重量部である。
ほぐれ改良剤の量が麺類100重量部に対して0.1重量部未満では、本発明の効果が十分に得られないことがある。一方、ほぐれ改良剤の量が7重量部を超えると、麺類に付着する水分量が多くなり、麺類のライフや食感面で好ましくないことがある。
(A)増粘剤
アラビアガム(伊那食品工業株式会社製、製品名:アラビアガムA)
(B)油脂
大豆油(加藤製油株式会社製、製品名:大豆白絞油、C16−20)
ヤシ油(植田製油株式会社製、製品名:精製ヤシ油、C6−18)
落花生油(太田製油株式会社製、製品名:精製落花製油、C12−24)
コーン油(加藤製油株式会社製、製品名:コーンサラダ油、C16−24)
グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(脂肪酸:炭素数16〜20、主として炭素数18、クエン酸モノグリセライド、理研ビタミン株式会社製、製品名:ポエムK−37V)
グリセリン乳酸脂肪酸エステル(乳酸モノステアリン酸グリセリン、太陽化学株式会社製、製品名:サンソフトNo.661AS)
ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸:炭素数16〜20、主として炭素数18、理研ビタミン株式会社製、製品名:ポエムO−80V)
プロピレングリコール脂肪酸エステル(脂肪酸:炭素数16〜20、主として炭素数18、理研ビタミン株式会社製、製品名:リケマールPO−100V)
ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、花王株式会社製、製品名:エマゾールS−120V)
ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、花王株式会社製、製品名:エマゾールO−120V)
反応モノグリセライド(脂肪酸:炭素数16〜20、理研ビタミン株式会社製、製品名:ポエムOL−200V)
モノカプリン酸グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸:炭素数8〜12、主として炭素数10、理研ビタミン株式会社製、製品名:ポエムM−200)
モノラウリン酸グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸:炭素数10〜14、主として炭素数12、理研ビタミン株式会社製、製品名:ポエムM−300)
酢酸(日和合精株式会社製、90%純良酢酸)
酢酸ナトリウム(南海化学工業株式会社製、無水物)
乳酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)
クエン酸(扶桑化学工業株式会社製、製品名:精製クエン酸(無水))
クエン酸ナトリウム(扶桑化学工業株式会社製、製品名:精製クエン酸ナトリウム)
エタノール(57.2%水溶液、キリン協和フーズ株式会社製、製品名:メイオールW65)
水(大阪市水道水)
容量1000ミリリットルのビーカーに、温度約60〜70℃に加温した水400g(80.00重量%)を入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、型式:ホモミキサーM型)を用いて回転数4000〜5000rpmで攪拌しながら、アラビアガム42.5g(8.50重量%)を約10分間かけて少量ずつ投入した。その後、混合溶液をさらに45分間攪拌してアラビアガムを完全に溶解させた。
次いで、得られた混合溶液に、乳化剤としてグリセリンクエン酸脂肪酸エステル25g(5.00重量%)を加え、上記のホモミキサーを用いて回転数5000〜6000rpmで2分間攪拌した後、油脂として大豆油7.5g(1.50重量%)を約3分間かけて少量ずつ投入した。その後、混合溶液をさらに回転数9000〜10000回転で10分間攪拌して乳化溶液を得た。
pH調整剤水溶液を、酢酸ナトリウム1.5g(0.30重量%)および酢酸4.72g(正味量4.25g、0.85重量%)を水19.25g(3.85重量%)に溶解させることにより得た。
表1〜3に記載の化合物をその配合量で用いること以外は製剤例1と同様にして、製剤例2〜55のほぐれ改良剤(製剤No.2〜55)を得た。
製剤例1〜55で調製したほぐれ改良剤(製剤No.1〜55)を、製麺したうどんに付着させて、それらの麺のほぐれ性(ほぐれ適性)を評価した。
以下の試験例において、製剤No.1〜48および製剤No.49〜55を用いた試験を、それぞれ実施例1〜48および比較例1〜7とする。
中力小麦粉100重量部と、それに対して予め調製しておいた食塩水41重量部(食塩3重量部+水道水38重量)とを縦型ミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK−25)を用いて約15分間混練し、回転ローラー式製麺機で粗麺帯(厚さ:4.0mm)を製造した。
次いで、複合、圧延および12番角刃での切り出し工程を経て、総重量500gの生うどん生地を製造した。
得られた生うどん生地を、容量約5リットルの煮沸水中で約10分間茹で、氷水中での冷却、水洗、水切りを行い、冷やしうどんを得た。
得られた冷やしうどん100重量部に対してほぐれ改良剤の付着量が4重量部になるように、スプレーボトルを用いてほぐれ改良剤を冷やしうどんにそれぞれ噴霧し、それらが適度に絡まるように冷やしうどんを混ぜ合わせた。
得られた冷やしうどんを、それぞれ80mm×70mm×高さ45mmのプラスチック製容器に入れて蓋をし、温度10℃の冷蔵庫に静置した。静置開始から24時間後および48時間後の冷やしうどんのほぐれ性を、熟練した6名のパネラーが箸を用いて、次の6段階の基準で官能評価した。それらの評価点の平均値(少数点第2位以下を切り捨て)をほぐれ性とした。
4:ほぐれ易い
3:少しほぐれ易い
2:ほぐれ難い
1:かなりほぐれ難い
0:全くほぐれない
得られた結果を表1〜3に示す。
製剤例1〜55で調製したほぐれ改良剤(製剤No.1〜55)のそれぞれ100gを、容量100ミリリットルの広口蓋付きポリエチレン製容器に入れて蓋をし、温度40℃の恒温室で1カ月静置した。静置開始から1ヶ月後の各製剤の性状(安定性)を目視観察し、次の6段階の基準で温度40℃での安定性を評価した。
B:乳化相と水相の2相に分離しているが、再分散が容易で可能な状態
C:乳化相と中間相と水相の3相に分離しているが、再分散が容易で可能な状態
D:分離はないが、再分散が困難な状態
E:乳化相と水相の2相に分離し、再分散が困難な状態
F:乳化相と中間相と水相の3相に分離し、再分散が困難な状態
得られた結果を表1〜3に示す。
製剤例1〜55で調製したほぐれ改良剤(製剤No.1〜55)のそれぞれ100gを、容量100ミリリットルの広口蓋付きポリエチレン製容器に入れて蓋をし、温度−3℃の恒温室で1カ月静置した。静置開始から1ヶ月後の各製剤の性状(安定性)を目視観察し、次の6段階の基準で温度−3℃での安定性を評価した。
B:乳化相と水相の2相に分離しているが、固化物が見られず、再分散が容易で可
能な状態
C:乳化相と中間相と水相の3相に分離しているが、固化物が見られず、再分散が
容易で可能な状態
D:分離はないが、固形物が見られるかもしくは再分散再溶解が困難な状態
E:乳化相と水相の2相に分離し、固化物が見られ、再分散再溶解が困難な状態
F:乳化相と中間相と水相の3相に分離し、固化物が見られ、再分散再溶解が困難な状態
得られた結果を表1〜3に示す。
予め容量500ミリリットル調理用ステンレス製ボウル(外径195mm×高さ70mm)をデシケーター中に静置して恒量とした後、その重量を測定しておいた。
また、予め製剤例1〜55で調製したほぐれ改良剤(製剤No.1〜55)をそれぞれ水道水で希釈倍率1〜6倍に希釈しておいた。
スプレーボトルを用いて希釈製剤10gをそれぞれ秤量したボウルの底面に噴霧し、常温(25℃)で24時間放置し、希釈製剤の水分を揮散させ、ボウルの底面に製剤の塗膜を形成させた。その後、ボウルをデシケーター中に静置して恒量とした後、その重量を測定し、予め測定しておいたボウルのみの重量との差から塗膜重量A(g)を求めた。
塗膜残留率(%)=B/A×100
B:1%以上2%未満
C:2%以上4%未満
D:4%以上6%未満
E:6%以上8%未満
F:8%以上
得られた結果を表1〜3に示す。
一方、本発明の範囲から外れる麺類のほぐれ改良剤は、麺類のほぐれ性、温度40℃および−3℃での安定性ならびに洗浄性において、少なくとも1つに劣ることがわかる(比較例1〜7参照)。
Claims (7)
- 水性媒体100重量部中に、増粘剤としてのアラビアガム0.5〜30重量部、油脂としての高級脂肪酸のグリセライド0.05〜5重量部、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1種の乳化剤0.05〜7重量部を含み、前記油脂Oと前記乳化剤Eとの重量比O/Eが0.03〜80であることを特徴とする麺類のほぐれ改良剤。
- 前記油脂が、炭素数が6〜24である脂肪酸のグリセライドから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の麺類のほぐれ改良剤。
- 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類が、ポリソルベート60およびポリソルベート80から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の麺類のほぐれ改良剤。
- 前記麺類のほぐれ改良剤が、酢酸、酢酸ナトリウムおよびエタノールから選択される少なくとも1種をさらに含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の麺類のほぐれ改良剤。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させて、麺類のほぐれを改良することを特徴とする麺類のほぐれ改良方法。
- 水で1〜10倍に希釈した前記麺類のほぐれ改良剤を前記麺類に噴霧し、それが絡まるように麺類を混ぜ合わせて、麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させる請求項5に記載の麺類のほぐれ改良方法。
- 前記麺類100重量部に対して0.1〜7重量部の前記麺類のほぐれ改良剤を麺類の表面に付着させる請求項5または6に記載の麺類のほぐれ改良方法。
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