JP5766037B2 - ポリアセタールブロックコポリマー - Google Patents

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Description

本発明は、AB型のポリアセタールブロックコポリマーに関する。更に詳しくは、ポリアセタール以外の成分をポリマー主鎖に導入したAB型のポリアセタールブロックコポリマーに関する。
ポリアセタール樹脂は、摺動性に優れた材料であり、歯車、軸受、その他の機械的部品や電気部品などに広く使用されている。これら各種機構部品に使用する際、ポリアセタール樹脂に酸化防止剤やホルムアルデヒド補足剤、離型剤、可塑剤、摺動剤などの各種添加剤を添加し、目的とする特性を付与している。
しかしながら、これら各種添加剤による特性改良方法は、短期間の使用では充分満足のいく特性を維持することができるが、長期間連続使用する場合は、その特性を維持することが難しい。その理由は、ポリアセタール樹脂が高結晶性樹脂であるため、添加した各種添加剤が成形品表面から放出(ブリード)しやすいためである。即ち、ポリアセタール樹脂に添加した安定剤等の各種添加剤の多くは、ポリアセタール樹脂の非晶部に存在するため、各種添加剤の添加量が多いと非晶部が添加剤を保持許容できる範囲を超え、添加した各種添加剤が弾き出される(成形品表面から各種添加剤が放出される)。その結果、各種添加剤が成形品に付与していた特性を維持することが困難となる。
それら問題点を解決するために、近年、ポリアセタール共重合体又はポリアセタール線状重合体のポリマー主鎖中にポリアセタール共重合体又はポリアセタール線状重合体を構成する成分以外の成分を導入し、ポリアセタール共重合体又はポリアセタール線状重合体を変性する試みがなされている。
例えば、ポリアセタール線状重合体の片末端がアルコール又はカルボン酸へのアルキレンオキシド付加物残渣で封鎖されたポリアセタール線状重合体、すなわち、AB型のブロックコポリマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、アルコキシ基の何れかの官能基を含有する化合物の存在下で、ホルムアルデヒド又はトリオキサン等を、ポリメチレンセグメントの片末端或いは両末端に重合させることによって得られる、ポリオキシメチレンセグメント(A)とポリエチレンセグメント(B)とから構成されるAB型又はABA型のポリアセタールブロックコポリマーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第2592737号 特許第3110788号
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されているポリアセタールブロックコポリマーは、各種添加剤のブリード性を解決することはできるが、最適なコモノマーのシークエンスとその挿入量までは規定していないため、不安定末端量が多く、ホルムアルデヒドガス発生量が多くなる場合がある。ホルムアルデヒドガス発生量が多くなると、金型で歯車や軸受を成形する際に、ウエルド部にホルムアルデヒドガスが混入し易くなる。その結果、ウエルド部の密着不良が起こり、ウエルド部から破壊し易くなるという欠点がある。当該欠点を解消するため、従来は、ウエルドが発生する箇所にガス抜きを設け、ウエルド部の樹脂の密着性改良を行っている。しかし、成形品がより高度化(複雑化)してくると、金型構造も複雑になり、ウエルド発生箇所を予測することは困難である。よって、ウエルド部の樹脂の密着性改良を行うためには、ポリアセタールブロックコポリマーのホルムアルデヒドガス発生量を抑制する必要がある。
本発明は、上記問題点を解決しようとするものであって、ホルムアルデヒドガス発生量を抑制でき、ウエルド特性に優れ、且つ、摺動性にも優れるAB型のポリアセタールブロックコポリマーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術を解決するべく鋭意検討した結果、特定のポリアセタールセグメント(A)と片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)とを含むAB型のポリアセタールブロックコポリマーが、ホルムアルデヒドガス発生量を抑制でき、ウエルド特性に優れ、且つ、摺動性に優れることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]
下記一般式(I)で表わされるオキシメチレン単位(i)及び下記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)を含有するポリアセタールセグメント(A)と、片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)とを含み、
ポリアセタールセグメント(A)におけるオキシアルキレン単位(ii)の挿入量が、オキシメチレン単位(i)100molに対して、0.05〜1.0molであり、
下記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)において、y=1の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、y≧2の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の5mol%以下であるAB型のポリアセタールブロックコポリマー。
[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、mは1であり、nは1以上の整数を表し、xは2〜6の整数を表し、yは1以上の整数を表す。]
[2]
片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)が、脂肪族アルコール及びp−アルキル置換フェノールからなる群より選ばれた少なくとも一種の片末端ヒドロキシアルキルに由来するセグメントである[1]記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマー。
[3]
片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)の挿入量が、ポリアセタールセグメント(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部である[1]又は[2]記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマー。
[4]
[1]〜[3]のいずれか記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマーを含むポリアセタール樹脂組成物。
[5]
[1]〜[3]のいずれか記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマー、又は[4]に記載のポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体。
本発明によれば、ホルムアルデヒドガス発生量を抑制でき、ウエルド特性に優れ、且つ、摺動性に優れるAB型のポリアセタールブロックコポリマーを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
<AB型のポリアセタールブロックコポリマー>
まず、本実施形態の、ポリアセタールセグメント(A)(以下、「Aセグメント」と略記する場合がある)と、片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)(以下、「Bセグメント」と略記する場合がある)とを含む新規なAB型のポリアセタールブロックコポリマーについて説明する。
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーは、下記一般式(I)で表わされるオキシメチレン単位(i)及び下記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)を含有するポリアセタールセグメント(A)と、片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)とを含み、
ポリアセタールセグメント(A)におけるオキシアルキレン単位(ii)の挿入量が、オキシメチレン単位(i)100molに対して、0.05〜1.0molであり、
下記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)において、y=1の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、y≧2の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の5mol%以下である。
上記式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、mは1である。nは1以上の整数、好ましくは1〜10000の整数、より好ましくは300〜5000の整数を表す。xは2〜6の整数、好ましくは2〜4の整数を表す。yは1以上の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数を表す。
(Aセグメント)
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーにおいて、片末端に存在するAセグメントは、上記オキシメチレン単位(i)と、上記オキシアルキレン単位(ii)とを含有するポリアセタールコポリマーセグメントである。
また、ポリアセタールセグメント(A)におけるオキシアルキレン単位(ii)の挿入量は、オキシメチレン単位(i)100molに対して、0.05〜1.0molであり、0.05〜0.8molであることが好ましく、0.05〜0.6molであることがより好ましい。
上記オキシメチレン単位(i)は、原料であるトリオキサンを開環重合して形成され、上記オキシアルキレン単位(ii)は、環状ホルマール及び/又は環状エーテルを開環重合して形成される。
環状ホルマール及び/又は環状エーテルとしては、例えば、1,3-ジオキソラン、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキオカンが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーにウエルド特性を付与させるためには、上記オキシアルキレン単位(ii)のシークエンスも重要である。即ち、上記オキシアルキレン単位(ii)は、重合体中でブロックとして存在せずにその殆どは単独で重合体中に分散していることが好ましい。すなわち、上記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)において、y=1の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、96〜99mol%であることが好ましく、97〜99mol%であることがより好ましく、y≧2の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の5mol%以下であり、1〜4mol%であることが好ましく、1〜3mol%であることがより好ましい。
例えば、オキシメチレン単位(i)(―CH2O―など)の繰返しよりなる重合体に、下記一般式(III)に示されるようなオキシアルキレン単位が挿入された場合において、z=1(zはシークエンスを表す。)の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上、z≧2の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の5mol%以下である。
式中、zは1以上の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、R0は水素又は分子量15〜2,000の有機基を表し、好ましくは分子量15〜141の有機基を表し、より好ましくは15〜85の有機基を表す。
このようなオキシアルキレン単位のシークエンスとする方法としては、例えば、予め後述のBセグメントを形成する原料を、後述の有機溶媒で希釈混合して混合物(a)を得る第1工程、前記混合物(a)と環状ホルマール及び/又は環状エーテルとを混合して混合物(b)を得る第2工程、前記混合物(b)とトリオキサンを混合して混合物(c)を得る第3工程、ならびに前記混合物(c)と、後述の重合触媒とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行う方法等を挙げることができる。また、上述のオキシアルキレン単位のシークエンスを達成するための混合方法としては、配管内で連続的に混合する方法、更に配管内で連続的にスタティックミキサーで混合する方法、攪拌機付き装置内で混合する方法等が有効である。
本実施形態において、オキシアルキレン単位のシークエンスは、以下の方法で測定することができる。AB型のポリアセタールブロックコポリマーを0.1規定塩酸水溶液と混合して耐圧ビンに仕込み、それを滅菌器により加圧状態で130℃、2時間分解して、オキシメチレン単位(i)をホルムアルデヒドとし、オキシアルキレン単位(ii)をアルキレングリコールとする。得られたアルキレングリコールについて、ガスクロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーを用いて分析することにより、Aセグメントにおけるオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を行うことができる。
(Bセグメント)
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーに含有するBセグメントは、脂肪族アルコール及びp−アルキル置換フェノールからなる群より選ばれた少なくとも一種の片末端ヒドロキシアルキルに由来するセグメントであることが好ましい。このような片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)であると、摺動性が良好となり、好ましい。
脂肪族アルコール及びp−アルキル置換フェノールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、セリルアルコール、ミリシルアルコール、オレイルアルコール、3−エチル−6−ウンデカノール、フェノール、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、ベンジルアルコール、p−ブチルベンジルアルコール、片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンなどが挙げられる。これらの中でも片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンが特に好ましい。
また、Bセグメントは、ウエルド特性及び摺動性の両方の要求特性を満足するという点から、100〜10,000(ポリスチレン換算)の数平均分子量とすることが好ましい。Bセグメントにおける、より好ましい数平均分子量は、300〜5,000(ポリスチレン換算)であり、特に好ましい数平均分子量は、500〜3,000(ポリスチレン換算)である。Bセグメントの数平均分子量の測定方法は、浸透圧法や末端定量法により、又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。
片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)の挿入量は、ポリアセタールセグメント(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.5〜12質量部であることがより好ましく、1〜11質量部でることがさらに好ましい。片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)の挿入量が前記範囲であると、ホルムアルデヒドガス発生量を抑制でき、ウエルド特性が優れ、尚且つ、摺動性も良好となり、好ましい。
(AB型のポリアセタールブロックコポリマーの製法)
次に、上述のBセグメントを用いて、本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーを製造する方法について述べる。
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーは、例えば、Bセグメントを連鎖移動剤として存在させ、トリオキサンと環状ホルマール及び/又は環状エーテルとを共重合させ、更に、得られたポリアセタールブロックコポリマーを末端安定化処理することにより製造することができる。なお、ポリアセタールブロックコポリマーの重合時には、必要に応じ、上記モノマー成分以外に、水、メタノール、メチラール等の分子量調節剤を存在させてもよい。
具体的な製造条件としては、本実施形態に用いるBセグメントを連鎖移動剤として存在させること以外は、例えば、JP−A−9−221579及びUS−A−5,837,781に記載される製造条件とすることができる。
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーを製造する際の重合触媒としては、パーフルオロアルキルスルホン酸、ヘテロポリ酸、ルイス酸、プロトン酸、及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が用いられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸等、及びこれらの無水物が挙げられる。これらの無水物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸無水物、パーフルオロヘプタンスルホン酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
ヘテロポリ酸としては、例えば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。これらの中でも、リンタングステン酸が好ましい。
ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
また、プロトン酸、そのエステル又は無水物としては、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、トリオキサン1モルに対して、好ましくは1×10-8モル〜1×10-3モルの範囲であり、より好ましくは1×10-7モル〜1×10-4モルの範囲であり、さらに好ましくは1×10-7モル〜1×10-5モルの範囲である。重合触媒の重合反応機へのフィード量が前記範囲にある時、ポリマー中に残存する触媒によるポリアセタールブロックコポリマーの熱分解を抑えることができ、熱的に安定なポリアセタールブロックコポリマーを製造することができる傾向にある。
本実施の形態に用いる重合触媒は、例えば、水及び有機溶媒で希釈した混合物(希釈混合物(1))として重合反応機にフィードする。具体的には、まず、重合触媒を、水及び有機溶媒で希釈混合して希釈混合物(1)を調製する。次に、得られた希釈混合物(1)を、トリオキサンと環状ホルマール及び/又は環状エーテルと接触又は混合することなく重合反応機にフィードすることにより添加する。希釈混合物(1)中の重合触媒の濃度は、有機溶媒1リットルに対して、好ましくは1×10-5モル〜100×10-5モルの範囲であり、より好ましくは1×10-5モル〜50×10-5モルの範囲であり、さらに好ましくは1×10-5モル〜30×10-5モルの範囲である。希釈混合物(1)中の重合触媒の濃度が前記範囲にある時、長期耐久性と熱安定性に優れたポリアセタールブロックコポリマーを、高重合収率で且つ安定に連続生産することができる傾向にある。
希釈混合物(1)を構成する有機溶媒は、水酸基を有さない炭化水素化合物であることが好ましい。当該炭化水素化合物の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル化合物が挙げられる。上記炭化水素化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンのような環状エーテル化合物は、本実施形態に用いる有機溶媒としての炭化水素化合物には含まない。
上記炭化水素化合物の中でも、分子量150〜500で、且つ、水酸基を有さない炭化水素化合物であることが好ましい。このような炭化水素化合物としては、例えば、アルキレングリコールのユニット数(n)が1〜10のジアルキルエーテル化合物が挙げられる。具体的には、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルがあり、より好ましいジアルキルエーテル化合物は、トリエチレングリコールジメチルエーテルである。
アルキレングリコールのユニット数(n)が10を超えるジアルキルエーテル化合物を有機溶媒に使用すると、粘性が高くなり、重合触媒を安定的に、且つ、定量的にフィードすることが困難になる。重合安定性を高めるためには、有機溶媒として、分子量が150〜500で、アルキレングリコールのユニット数(n)が1〜10のジアルキルエーテル化合物を用いることが好ましい。上述の有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーを製造する際の重合方法としては、特に制約はないが、好ましくは、塊状重合法を挙げることができる。この塊状重合は、バッチ式、連続式のいずれであってもよい。この塊状重合は、溶融状態にあるモノマー成分を用い、重合の進行とともに固体塊状ポリマーを得る方法である。
重合後、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の触媒中和失活剤の少なくとも一種を含む水溶液又は有機溶剤溶液中に、得られたポリアセタールブロックコポリマーを投入し、スラリー状態で一般的には数分〜数時間攪拌することにより、ポリアセタールブロックコポリマー中に残存する触媒を失活させることができる。
なお、アンモニア、トリエチルアミン等の蒸気とポリアセタールブロックコポリマーとを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン及び水酸化カルシウム等の少なくとも一種の化合物とポリアセタールブロックコポリマーとを混合機で接触させて触媒を失活させる方法を用いることもできる。
次いで、触媒を失活させた後のスラリーを、濾過及び洗浄し、未反応モノマーや触媒中和失活剤、触媒中和失活塩を除去した後、乾燥し、ポリアセタールブロックコポリマーを得る。
次に、重合触媒失活後のポリアセタールブロックコポリマーの末端安定化処理方法について述べる。上述の方法により製造されたポリアセタールブロックコポリマーは、片末端に熱的に不安定なヒドロキシポリオキシメチレン鎖をもつ。本実施形態においては、この熱的に不安定なヒドロキシポリオキシメチレン鎖(不安定末端鎖)を、ポリアセタールブロックコポリマーの融点以上に加熱する方法や更に塩基性物質と接触させる方法により取り除く必要がある。
具体的な末端安定化処理方法としては、2軸押出機等で溶融させたポリアセタールブロックコポリマーにアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の塩基物質(必要に応じ水を共存させる)を接触させ、次いで混練し、接触させた塩基物質の蒸気及びホルムアルデヒドを除去させる方法が好ましい。
(AB型のポリアセタールブロックコポリマーの数平均分子量)
次に、AB型のポリアセタールブロックコポリマーの数平均分子量について述べる。
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーに要求される特性を満たすためには、AB型のポリアセタールブロックコポリマーの数平均分子量は10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。
AB型のポリアセタールブロックコポリマーの数平均分子量は、GPC法(ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算)を用いて、求めることができる。
(AB型のポリアセタールブロックコポリマーの同定方法)
本実施形態のAB型のポリアセタールブロックコポリマーの同定方法について述べる。
まず第1に、連鎖移動していないBセグメントを定量するには、重合されたAB型のポリアセタールブロックコポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)或いはジメチルホルムアミドなどの良溶媒に一旦溶解させ(なお、溶解のために、場合によりAB型のポリアセタールブロックコポリマーの融点以下に加熱してもよい)、次いで、水又はアルコールなどの貧溶媒を添加してAB型のポリアセタールブロックコポリマーだけを再沈殿させることにより、連鎖移動していないBセグメントを取り除き、その取り除いた量を定量する。詳細な条件設定を行う際には、予めBセグメントとAセグメントとを別々に製造し、それぞれを溶融混練した試料を作製しておき、その試料からBセグメントが全て取り除けるか否かを確認する必要がある。
第2に、重合されたAB型のポリアセタールブロックコポリマーを構成するモノマー組成の分析について述べる。上記の方法で、連鎖移動をしていないBセグメントを取り除いたAB型のポリアセタールブロックコポリマーを、塩酸などの酸性水溶液中で加水分解させると、Aセグメントのうち、オキシメチレン単位(i)の繰り返しよりなる部分はホルムアルデヒドとなり、ポリオキシメチレン中にランダムに挿入されたオキシアルキレン単位(ii)の部分はアルキレングリコールとなる。また、Bセグメントは、Aセグメントに挿入される前の、Bセグメントを形成する原料の片末端ヒドロキシアルキルとなる。ホルムアルデヒド及びアルキレングリコールは、水で抽出分離されGPC分析で定量される。定量されたホルムアルデヒド及びアルキレングリコールの量から、オキシメチレン単位(i)及びオキシアルキレン単位(ii)の量を求めることができる。Bセグメントを形成する原料の片末端ヒドロキシアルキルの量は、ホルムアルデヒド及びアルキレングリコールを抽出分離した後の残渣を、GPC分析或いは重量分析することにより、測定することができる。得られた測定値から、Bセグメントの量を求めることができる。
第3に、得られたポリアセタールブロックコポリマーが、ABA型であるかAB型であるかの確認法について述べる。
重合後に触媒を失活させたAB型のポリアセタールブロックコポリマーは、上述の通り、ポリマーの片末端に熱的に不安定なヒドロキシポリオキシメチレン鎖(不安定末端鎖)を有しており、この不安定末端鎖は加熱等により、ホルムアルデヒドとなって除去される。
一方、もし、ポリアセタールブロックコポリマーが、ABA型のポリアセタールブロックコポリマーであるならば、加熱等により発生する不安定末端鎖由来のホルムアルデヒドの量は、AB型のポリアセタールブロックコポリマーに比べて倍となる筈である。
したがって、ポリアセタールブロックコポリマーの加熱により発生するホルムアルデヒド量を定量することで、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであるかABA型のポリアセタールブロックコポリマーであるかを確認することができる。
具体的には、まず、Bセグメントが重合時に連鎖移動した場合と同等の不安定末端鎖を有するポリアセタールブロックコポリマーを、Bセグメントの代わりに等モルのメタノールを連鎖移動剤として用いることで準備する。
次に、このメタノールで連鎖移動させて重合したポリアセタールブロックコポリマーの加熱により発生するホルムアルデヒド量を定量し、Bセグメントの存在下で重合したポリアセタールブロックコポリマーの加熱により発生するホルムアルデヒド量と比較する。
メタノールで連鎖移動させて重合したポリアセタールブロックコポリマーの加熱により発生するホルムアルデヒド量と同量のアルデヒドが、Bセグメントの存在下で重合したポリアセタールブロックコポリマーの加熱により発生していれば、得られたポリアセタールブロックコポリマーがAB型のポリアセタールブロックコポリマーであることが確認できる(なお、モノマー中の不純物、重合収率等を考慮し、実験精度誤差範囲内で同量であればよい)。一方、もし、得られたポリアセタールブロックコポリマーが、ABA型のポリアセタールブロックコポリマーであるならば、加熱等により発生するホルムアルデヒドの量は、メタノールで連鎖移動させて重合したポリアセタールブロックコポリマーの加熱により発生するホルムアルデヒド量の2倍量となる(なお、モノマー中の不純物、重合収率等を考慮し、実験精度誤差範囲内で2倍量であればよい)。
<ポリアセタール樹脂組成物>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述のAB型のポリアセタールブロックコポリマーを含む。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、従来のポリアセタール樹脂に使用されている安定剤、例えば熱安定剤の1種を単独又は2種以上を組み合わせて添加してもよい。
熱安定剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒドや蟻酸の補足剤及びこれらの組合せが好適である。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
また、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
これらヒンダードフェノール系酸化防止剤のなかでも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
前記ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩;及びカルボン酸ヒドラジド化合物が挙げられる。前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
カルボン酸ヒドラジド化合物としては、脂肪族カルボン酸モノヒドラジド及び脂肪族カルボン酸ジヒドラジドが挙げられる。
脂肪族カルボン酸モノヒドラジドとしては、例えば、ラウリン酸ヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ヒドラジド、コハク酸モノヒドラジド、グルタル酸モノヒドラジド、アジピン酸モノヒドラジド、ピメリン酸モノヒドラジド、スベリン酸モノヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸モノヒドラジド、ドデカン二酸モノヒドラジド、ヘキサデカン二酸モノヒドラジド、エイコサン二酸モノヒドラジドなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸ジヒドラジドとしては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサデカン二酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジドが挙げられる。また、上記カルボン酸ヒドラジド化合物を2種以上用いることもできる。
上述した安定剤の好ましい組合せは、特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特にポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、特に脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。それぞれの安定剤の添加量は、AB型のポリアセタールブロックコポリマー100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部の範囲であると好ましく、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部の範囲であると好ましく、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
<成形体>
本実施形態の成形体は、上述のAB型のポリアセタールブロックコポリマー、又はポリアセタール樹脂組成物から得られる。
本実施形態の成形体は、例えば、射出成形法、ホットランナー射出成形法、アウトサート成形法、インサート成形法、中空射出成形法、金型の高周波加熱射出成形法、圧縮成形法、インフレーション成形、ブロー成形、押出成形或いは押出成形品の切削加工等の成形法で、上述のAB型のポリアセタールブロックコポリマー、又はポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得ることができる。本実施形態の成形体は、後述の具体的な用途に要求される性能(ウエルド特性及び摺動性)を考慮すると、射出成形法で成形された成形体であることが好ましい。
また、本実施形態の成形体は、例えば、ウエルド部を有する歯車又は軸受部品などとして用いることができる。
本実施形態の成形体は、必要に応じレーザーマーキング、ホットスタンピング、塗装、印刷、メッキ等の装飾や溶着、接着、アニーリング等の後処理を施すことができる。
本実施形態の成形体は、ウエルド部を有する歯車又は軸受部品以外にも、ポリアセタール樹脂からなる成形体として一般的に用いられる摺動部材に使用することができる。例えば、プリンター、複写機に代表されるOA機器;VTR、ビデオムービーに代表されるビデオ機器;カセットプレイヤー、LD、MD、CD(含CD−ROM、CD−R、CD−RW)、DVD(含DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−Audio)、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピューターに代表される音楽、映像又は情報機器;携帯電話、ファクシミリに代表される通信機器;自動車用内外装機構部品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、コンベア、チェーン、バックル、事務機具及び住設機器に代表される工業雑貨などに使用される各種摺動部材などである。
具体的な部品名としては、大口径以外のギア、カム、ギアカム、スライダー、レバー、キーステム、キートップ、ラチェット、ローラー、アーム、ハンドル、ボタン、フライホイル、クラッチ、関節、軸、軸受け、ガイドローラー、側板、アウトシャーシの樹脂部品、シャーシ、トレー部材、インナーハンドル、アウターハンドル、スイッチ、スルーアンカー、タング、文字車などである。
以下、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例中の測定法及び評価法は以下の通りである。
1.AB型のポリアセタールブロックコポリマーの同定
(1)AB型のポリアセタールブロックコポリマーの構成成分の定量
(1−1)連鎖移動していないBセグメントの定量
連鎖移動していないBセグメントの定量を以下のとおり行った。
得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマーを、HFIPに一旦溶解させ、次いで、シクロヘキサンを添加してAB型のポリアセタールブロックコポリマーだけを再沈殿させて、連鎖移動していないBセグメントを取り除き、その取り除いた量を、連鎖移動していないBセグメントの量として定量した。
(1−2)AB型のポリアセタールブロックコポリマー中のAセグメントのオキシメチレン単位(i)及びオキシアルキレン単位(ii)並びにBセグメントの定量
AB型のポリアセタールブロックコポリマー中のAセグメントのオキシメチレン単位(i)及びオキシアルキレン単位(ii)並びにBセグメントの定量を、以下のとおり行った。
まず、上記(1−1)の方法で、連鎖移動をしていないBセグメントを取り除いたAB型のポリアセタールブロックコポリマーと1Nの塩酸とを耐圧ビンに仕込み130℃で2時間加熱し、AB型のポリアセタールブロックコポリマーを加水分解し、オキシメチレン単位(i)の部分をホルムアルデヒドとし、オキシアルキレン単位(ii)の部分をアルキレングリコールとした。また、当該加水分解により、AB型のポリアセタールブロックコポリマー中のBセグメントは、原料の片末端ヒドロキシアルキルとなった。
なお、AB型のポリアセタールブロックコポリマーの加水分解後に、生成する片末端ヒドロキシアルキルは水溶液から相分離して存在していた。
そして、加水分解後の水溶液中に存在するホルムアルデヒド及びアルキレングリコールの量をガスクロマトグラフィーで測定し、得られた測定値よりAセグメントのオキシメチレン単位(i)及びオキシアルキレン単位(ii)の量を求めた。また、ホルムアルデヒド及びアルキレングリコールを抽出分離した後の残渣の量をガスクロマトグラフィーで測定し、得られた測定値よりBセグメントの量を求めた。
(2)Bセグメントに由来する片末端ヒドロキシアルキルの数平均分子量
AB型のポリアセタールブロックコポリマーの加水分解後に水溶液から相分離して存在する片末端ヒドロキシアルキルを、上記の加水分解後の水溶液から抽出分離し、抽出分離後の片末端ヒドロキシアルキルの数平均分子量を、ウォーターズ社製のGPC装置(150c)を用いて測定した。
(3)AB型のポリアセタールブロックコポリマーの数平均分子量
AB型のポリアセタールブロックコポリマーの数平均分子量を、東ソー(株)社製のGPC装置(HLC−8120)を用い、カラムとして昭和電工(株)製のHFIP806(30cmカラム2本)、キャリアとしてHFIP、標準試料としてポリマーラボラトリー社製PMMAを用いて、温度40℃、流量0.5ml/minの条件で測定した。
(4)AB型のポリアセタールブロックコポリマーを構成するモノマー組成の同定
上記(1)、(2)及び(3)から、AB型のポリアセタールブロックコポリマーを構成するモノマー組成を同定した。
2.Aセグメントにおけるオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定
AB型のポリアセタールブロックコポリマーを0.1規定塩酸水溶液と混合して耐圧ビンに仕込み、それを滅菌器により加圧状態で130℃、2時間分解し、オキシメチレン単位(i)をホルムアルデヒドとし、オキシアルキレン単位(ii)をアルキレングリコールとした。得られたアルキレングリコールについて、ガスクロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィーを用いて分析することにより、Aセグメントにおけるオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を行った。
3.評価方法
(1)ウエルド特性
実施例及び比較例で得られたペレットを、80℃で3時間乾燥した。その後、シリンダー温度200℃に設定された射出成形機(東芝機械(株)製、商品名「IS−100GN」)を用いて、金型温度70℃、射出時間15秒、冷却時間15秒の条件で、ウエルド部にガス抜きを設置していないASTMダンベル試験片金型(1個取り)により、前記乾燥後のペレットから、ASTMダンベル試験片を成形した。この試験片をオートグラフ(島津製作所(株)製、商品名「AG−IS 10KN」)に固定して、引張速度5mm/min、チャック間距離114mmの条件にて測定を行い、該測定時にウエルド部が破断するまでのウエルド伸度(%)を求めた。ウエルド伸度(%)が大きい程、ウエルド特性に優れると評価した。
(2)摺動性
実施例及び比較例で得られたペレットを、80℃で3時間乾燥した。その後、シリンダー温度200℃に設定された射出成形機(東洋機械金属(株)製、商品名「TI−30G2」)を用いて、金型温度70℃、射出時間10秒、冷却時間10秒の条件で、前記乾燥後のペレットから、6mmf×17mmの軸穴(3箇所にウエルド部)を有するギヤプーリーを成形した。このギヤプーリーをSUS製シャフトにセットして、樹脂製小型軸受摩擦摩耗試験機(神鋼造機(株)製)を用い、荷重500g、回転数600rpmで間欠運転(ON:9秒間/OFF:1秒間)を行った。5000回転後のSUS製シャフトの傷付き性(摩耗)を目視して、下記の基準に従って摺動性についてランク付けした。
◎:傷がない(線状の傷が0本である)
○:傷が殆どない(線状の傷が1〜2本である)
△:線状の傷あり(線状の傷が3本〜10本である)
×:多数線状の傷あり(線状の傷が10本以上である)
(3)ホルムアルデヒドガス発生量(ppm)
実施例及び比較例で得られたペレットを、80℃で3時間乾燥した。更に140℃で1時間乾燥処理を施したペレットを、窒素気流下(50NL/hr)、220℃で加熱溶融し、ペレットから発生するホルムアルデヒドガスを水に吸収させ、亜硫酸ソーダ法により滴定し、ホルムアルデヒドガス発生量を測定した。加熱時間は90分とした。
《AB型のポリアセタールブロックコポリマー》
(実施例1)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の製造]
(重合方法)
重合反応機として、80℃に設定した同方向回転の2軸パドル型連続重合反応機(径2B、L/D=10)を用いた。
当該重合反応機に、
(イ)Bセグメントを形成する原料として、片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエン(以下、「B−1」とも記す。数平均分子量2400)を0.4mol/hrでフィードし、同時に有機溶媒としてトリエチレングリコールジメチルエーテル(分子量178)を1リットル/hrでフィードした。
なお、片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンは、両末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンとヨウ素化メチル(アルキル化剤)とから、触媒としてトリエチルボランを用いて合成した。
(ロ)次に、1,3−ジオキソラン(分子量74)を0.2mol/hrでフィードした。
(ハ)更に、トリオキサン(分子量90)を100mol/hrでフィードした。
(ニ)上記(イ)〜(ハ)とは異なる配管より、当該重合反応機にトリエチレングリコールジメチルエーテルに溶解させたトリフルオロメタンスルホン酸を1×10-4mol/hrでフィードして、重合を行った。
前記重合反応機から排出されたポリマーを、トリエチルアミン1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を完全に行った。その後、ポリマーをろ取し、アセトンで洗浄後、60℃に設定された真空乾燥機で乾燥させてポリマー1を得た(以下、この重合方法を「重合方法1」と略記する。)。
(ポリマー構造の分析)
乾燥後のポリマー1をHFIPに溶解させ、次いでシクロヘキサンを添加し、ポリマー1を再沈殿させた。
再沈殿させたポリマー1及び分離されたろ液を全て蒸留した後の残渣について、GPC装置(ウォーターズ社製:150c、キャリアとして1,2,4−トリクロロベンゼンを使用)を用い、140℃の温度で分析したが、片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンは検出されなかった。即ち、全ての片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンが、重合中において連鎖移動剤として作用していることが確認された。
次に、この乾燥後のポリマー1を、窒素雰囲気下で190℃で30分加熱し、ポリマー1の不安定末端鎖の除去に伴い発生するホルムアルデヒドの量を定量した。
また、比較のため、片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンの代わりに、等モルのメタノールを使用した以外は、上記重合方法1と同様の方法でポリマーを製造し、得られたポリマーの不安定末端鎖の除去を同様に行って、ホルムアルデヒド発生量を定量した。
片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンを用いて重合を行ったポリマー1は、等モルのメタノールを用いて重合して得られたポリマーに比べ、0.99倍のホルムアルデヒドが発生していた。これにより、上記重合方法1によって得られたポリマー1は、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。
(AB型のポリアセタールブロックコポリマーの末端安定化処理)
次に、上記で得られたポリマー1(100質量部)に対し、末端安定化処理剤として水(2質量部)及び塩基性物質としてトリエチルアミン(1質量部)を接触させ溶融混練することで、不安定末端鎖であるヒドロキシオキシメチレン鎖を加水分解し安定化した。末端安定化に当たっては、まず200℃に設定したベント付きの二軸押出機に、上記で得られたポリマー1を供給し、溶融混練した。次いで、押出機の末端安定化ゾーンの手前に水/トリエチルアミンを連続的に供給した。続いて、脱気ゾーンでホルムアルデヒド、水、トリエチルアミンを減圧除去し、末端安定化処理を行った。この際、脱気ゾーンのベント部の真空度は4kPaに設定した。押出機のダイスより得られたブロックコポリマーは、ストランドとして押出され、ペレタイズされ、AB型のポリアセタールブロックコポリマー1のペレットを得た(以下、この末端安定化処理の方法を「末端安定化処理1」と略記する。)。得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー1の同定を上記のとおり行った。結果を表1に示す。また、
(実施例2)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー2の製造]
Bセグメントを形成する原料として、片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンの代わりに、ステアリルアルコール(以下「B−2」とも記す。日油株式会社製 NAA−45、数平均分子量270)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー2のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー2の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー3の製造]
1,3−ジオキソランのフィード量を0.2mol/hrから3.0mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー3のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー3の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー4の製造]
1,3−ジオキソランのフィード量を0.2mol/hrから1.5mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー4のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー4の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー5の製造]
Bセグメントを形成する原料である片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンのフィード量を0.4mol/hrから0.1mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー5のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー5の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー6の製造]
Bセグメントを形成する原料である片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンのフィード量を0.4mol/hrから0.05mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー6のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー6の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー7の製造]
Bセグメントを形成する原料である片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンのフィード量を0.4mol/hrから0.2mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー7のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー7の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー8の製造]
トリエチレングリコールジメチルエーテルに溶解させたトリフルオロメタンスルホン酸の代わりに、シクロヘキサンに溶解させた三フッ化硼素ジブチルエーテルを用いた以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー8のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー8の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー9の製造]
1,3−ジオキソランの代わりに、エチレンオキシド(分子量44)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー9のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー9の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー10の製造]
Bセグメントを形成する原料である片末端ヒドロキシエチル化水素添加ポリブタジエンのフィード量を0.4mol/hrから0.75mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー10のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー10の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー11の製造]
1,3−ジオキソランのフィード量を0.2mol/hrから6.0mol/hrに変更した以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー11のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー11の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
[AB型のポリアセタールブロックコポリマー12の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1を製造する際に用いた原料は同じで、全原料を同時にフィードした以外は、実施例1と同様にしてAB型のポリアセタールブロックコポリマー12のペレットを得た。なお、実施例1と同様にしてポリマー構造の分析を行い、得られたポリマーは、ABA型ではなく、AB型のポリアセタールブロックコポリマーであることを確認した。また、得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー12の同定及びオキシアルキレン単位(ii)のシークエンスの測定を上記記載のとおり行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
[ポリアセタール樹脂組成物1の製造]
上記実施例1で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー1(100質量部)に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(0.3質量部)、及び平均粒子径4μmに粉砕されたナイロン6−6(0.05質量部)を添加し、再度、上記した二軸押出機で溶融混練し、ポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物1」という)を得た。
(実施例10)
[ポリアセタール樹脂組成物2の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例2で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー2を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物2」という)を得た。
(実施例11)
[ポリアセタール樹脂組成物3の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例3で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー3を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物3」という)を得た。
(実施例12)
[ポリアセタール樹脂組成物4の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例4で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー4を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物4」という)を得た。
(実施例13)
[ポリアセタール樹脂組成物5の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例5で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー5を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物5」という)を得た。
(実施例14)
[ポリアセタール樹脂組成物6の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例6で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー6を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物6」という)を得た。
(実施例15)
[ポリアセタール樹脂組成物7の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例7で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー7を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物7」という)を得た。
(実施例16)
[ポリアセタール樹脂組成物8の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記実施例8で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー8を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物8」という)を得た。
(比較例5)
[ポリアセタール樹脂組成物9の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記比較例1で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー9を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物9」という)を得た。
(比較例6)
[ポリアセタール樹脂組成物10の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記比較例2で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー10を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物10」という)を得た。
(比較例7)
[ポリアセタール樹脂組成物11の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記比較例3で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー11を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物11」という)を得た。
(比較例8)
[ポリアセタール樹脂組成物12の製造]
AB型のポリアセタールブロックコポリマー1の代わりに、上記比較例4で得られたAB型のポリアセタールブロックコポリマー12を用いた以外は実施例9と同様にしてポリアセタールブロックコポリマー組成物(「ポリアセタール樹脂組成物12」という)を得た。
実施例9〜16及び比較例5〜8で得られたポリアセタール樹脂組成物1〜12のウエルド特性、摺動性及びホルムアルデヒドガス発生量を上記記載の評価方法にて測定した。測定結果を表2に示す。
本発明の、ポリアセタールセグメント(A)と、片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)とを含むAB型のポリアセタールブロックコポリマー及び該AB型のポリアセタールブロックコポリマーを含む樹脂組成物は、ウエルド部を有する歯車又は軸受部品等に必要である(1)ウエルド特性及び(2)摺動性(自己潤滑性)を同時に満足させることができる。
したがって、本発明のAB型のポリアセタールブロックコポリマー及び該AB型のポリアセタールブロックコポリマーを含む樹脂組成物は、ウエルド部を有する歯車又は軸受部品等の材料として非常に有用なものである。

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表わされるオキシメチレン単位(i)及び下記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)を含有するポリアセタールセグメント(A)と、片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)とを含み、
    ポリアセタールセグメント(A)におけるオキシアルキレン単位(ii)の挿入量が、オキシメチレン単位(i)100molに対して、0.05〜1.0molであり、
    下記一般式(II)で表わされるオキシアルキレン単位(ii)において、y=1の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、y≧2の場合のオキシアルキレン単位の割合がオキシアルキレン単位全体の5mol%以下であるAB型のポリアセタールブロックコポリマーであって、
    片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)の数平均分子量が100〜10,000である、ポリアセタールブロックコポリマー。
    [式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、mは1であり、nは1以上の整数を表し、xは2〜6の整数を表し、yは1以上の整数を表す。]
  2. 片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)が、脂肪族アルコール及びp−アルキル置換フェノールからなる群より選ばれた少なくとも一種の片末端ヒドロキシアルキルに由来するセグメントである請求項1記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマー。
  3. 片末端ヒドロキシアルキルセグメント(B)の挿入量が、ポリアセタールセグメント(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部である請求項1又は2記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマー。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマーを含むポリアセタール樹脂組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項記載のAB型のポリアセタールブロックコポリマー、又は請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体。
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