JP4889941B2 - 光ディスク用摺動部品 - Google Patents

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本発明は、ポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品に関する。更に詳しくは、光ディスクと直接接触或いは摺動させる際のディスク傷つき性を低減するポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品に関する。
近年、CDやDVDを始めとする光ディスクは、オーディオ、カーナビゲーションシステム、パソコン関連機器など多岐に亘って利用されています。これら光ディスク機器の機構部は、高強度と高摺動性が必要であり、その多くはポリアセタール樹脂が使用されている。
しかしながらこれら機構部に従来のポリアセタール樹脂を使用した場合、光ディスクと直接接触或いは摺動させるとディスク表面に傷がついてしまい、音声や映像が乱れるなどの不具合が発生する。この問題を改善する方法としてディスク表面をハードコートする方法が提案されているが、この方法ではディスク作成コストが高く、またディスク傷つき性も十分とは言えない。その為、ポリアセタール樹脂の改質による光ディスク表面傷つき性の改善が切に望まれている。
一方、ポリアセタール樹脂とポリアルキレングリコールから構成される部品が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、ポリアセタール樹脂に芳香族モノカルボン酸とポリエチレングリコールとの縮合物を添加配合した樹脂組成物を磁気記録容器に使用する事で、磁気記録媒体の破損やエラーの発生を低減するものであり、本発明とはその使用される用途において相違し、その効果も全く異なるものである。
特開平06−124563号公報
本発明は上記の問題点を解決する為に、ポリアセタール樹脂のコモノマー挿入量と特定のポリアルキレングリコールに着目し検討した結果、光ディスク表面に傷が付き難い成形品を見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、光ディスクと接触した際に発生するディスク表面の傷つき性を改善するポリアセタール樹脂製摺動部品を提供する事を目的とする。
本発明者らはこの様な状況の下、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
1.メルトフローレート値が9〜60g/10minのポリアセタール樹脂と数平均分子量が1000〜20000のポリアルキレングリコールで構成され、ポリアセタール樹脂が、下記一般式で表されるオキシアルキレン単位をオキシメチレン単位に対して0.1〜1.2モル%含有してなる事を特徴とする、光ディスクと直接接触あるいは摺動させるポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品、
Figure 0004889941
.ポリアルキレングリコールの添加量が、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部であること特徴とする1に記載のポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品、
.ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする1又は2に記載のポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品、
に関する。
4.ディスクガイド部品、クランパー部品及びレンズプロテクター部品のいずれかであることを特徴とする、1から3のいずれかに記載のポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品。
メルトフローレート値が9〜60g/10minのポリアセタール樹脂と数平均分子量が1000〜20000のポリアルキレングリコールで構成され、ポリアセタール樹脂が、下記一般式で表されるオキシアルキレン単位をオキシメチレン単位に対して0.1〜1.2モル%含有してなるポリアセタール樹脂成形品は、光ディスクと直接接触あるいは摺動させる機構部品に有効である。
Figure 0004889941
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いるポリアセタール樹脂とは、メルトフローレート値(MFR値)が9〜60g/10minのポリアセタール樹脂であり、更に好ましくは、20〜50g/10minである。ポリアセタール樹脂のメルトフローレート値(MFR値)が9g/10min未満である場合、ポリアセタール樹脂製摺動部品の表面(光ディスクとの摺動部)の平滑性が不足し、光ディスク表面を傷つけやすくなる。一方、メルトフローレート値(MFR値)が60g/10minを超える場合は、材料自身の靭性が低下する事で磨耗し、ポリアセタール樹脂製摺動部品の表面平滑性が失われ、光ディスク表面を傷つけてしまう。
下記一般式に示すオキシアルキレン単位挿入量は、オキシメチレン単位に対して0.1〜1.2モル%含有する。オキシアルキレン単位挿入量が0.1モル%未満の場合、光ディスク摺動部品の表面硬度が硬すぎる為、光ディスク表面を傷つけやすくなる。一方、オキシアルキレン単位挿入量が1.2モル%を超える場合は、ポリアルキレングリコールとの相溶性が向上する為に光ディスク用摺動部品の製品内部にポリアルキレングリコールが多く介在(光ディスク摺動面の摺動性が不足)し、光ディスク表面を傷つけてしまう。
Figure 0004889941
本発明で用いるポリアルキレングリコールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの単独物或いは共重合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンのグリセリンエーテルを言う。これらポリアルキレングリコールは、1種又は2種以上を組合わせて用いても良い。中でも好ましくはポリエチレングリコールである。
ポリアルキレングリコールについては、数平均分子量10000〜20000の範囲であり、更に好ましくは2000〜10000である。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が1000未満である場合、光ディスク用摺動部品の表層部にポリアルキレングリコールが存在し十分な摺動性が付与されるが、低分子量である為に長期間安定した摺動性を保持する事ができない。一方、ポリアルキレングリコールの数平均分子量が20000を超える場合は、光ディスク用摺動部品の表層部にポリアルキレングリコールが多く存在しない為に光ディスクとの摺動性が不足し、光ディスク表面を傷つけてしまう。
ポリアルキレングリコールの添加量については、特に制限するものではないが、その目的に応じて適宜選択すれば良いが、好ましくは、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1重量部〜10重量部である。
ポリアセタール樹脂中に含まれるオキシアルキレン単位挿入量は、以下の方法によって定量される。ポリオキシメチレン共重合樹脂を1N塩酸で120℃、3時間かけて加水分解させ、オキシメチレン単位はホルムアルデヒドとなり、オキシアルキレン単位は、下記一般式で表されるアルキレングリコールになる。このアルキレングリコールをガスクロマトグラフィーで分析、定量する事でオキシアルキレン単位挿入量を定量する事ができる。
Figure 0004889941
次にポリオキシメチレン共重合樹脂の製法について説明する。ポリオキシメチレン共重合樹脂は、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主モノマーと環状エーテル或いは環状ホルマールから選ばれるコモノマーを、カチオン触媒の存在下で反応させて得られるポリオキシメチレン共重合樹脂である。
このポリオキシメチレン共重合樹脂を合成する為に用いる環状エーテル、環状ホルマールとしては、例えばエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エチレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−へキサンジオールホルマール等を挙げる事ができる。
重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性な触媒が用いられる。ルイス酸として、例えばホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物があり、具体的例としては、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体的例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
重合に用いられる重合装置は、バッチ式、連続式のいずれでも良く、バッチ式重合装置としては、一般式に用いられる攪拌機付きの反応槽が使用できる。連続式重合装置としては、コニーダー、二軸スクリュー式連続押出混練機、二軸のパドル型連続混合機等のセルフクリーニング型混合機が使用可能である。重合温度は60〜200℃、好ましくは80〜170℃の温度範囲である。また、重合時間は特に制限はないが、一般に10秒以上100分以下が選ばれる。
この様にして得られた重合体は、重合体中に含有する触媒により解重合を起こすため、触媒を失活する必要がある。失活方法としてはまず、塩基性中和剤を含む水溶液中又は有機溶媒中で失活する方法が挙げられる。塩基性中和剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、水酸化カルシウム等が挙げられ、又有機溶媒としては、n−ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
失活温度は20〜90℃、好ましくは30〜60℃である。又失活時間は5分〜200分である。又、触媒をより完全に失活するために、重合体を粉砕する事も可能である。重合触媒が失活された後、重合体を含有する失活液は、濾過、洗浄され、さらに乾燥される。
上記の失活方法により得られた重合体が不安定な末端水酸基を有する場合には、従来公知の方法で、例えばトリエチルアミン水溶液などの塩基性物質と加熱処理をする事によって不安定部分を分解除去する。以上の方法により、ポリオキシメチレン共重合樹脂が得られる。更に必要に応じて従来公知の添加剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、脂肪酸金属塩や含窒素化合物などの熱安定剤及び窒化ホウ素や炭酸カルシウムに代表される核剤、グリセリンステアレートに代表される帯電防止剤、エチレンビスステアリン酸アミドに代表される潤滑剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤、顔料等、従来からポリアセタール樹脂に添加されている各種添加剤を溶融混練する事も可能である。
本発明で言う光ディスク用摺動部品とは、特にその名称、部品名を指定するものではないが、光ディスクを挿入する際のガイド部品であるディスクガイド部品や、光ディスクを押さえるクランパー部品、ディスクローダーやレンズプロテクター部品など、光ディスクを挿入時や作動時或いは取出し時に直接接触する、或いは光ディスクと摺動する機構部品を言う。
上記光ディスク用摺動部品の成形方法は特に指定するものではなく、一般に用いられている射出成形によって得る事ができ、得られた摺動部品は摺動性に優れ、光ディスク表面の傷つき性を大幅に改善する事ができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明を限定するものではない。尚、実施例中の各種測定方法は、次の通りである。
A) ポリアセタール樹脂中のオキシアルキレン単位の定量方法
ポリアセタール樹脂5gを1規定塩酸15mlで加水分解させた。この時の条件は、125℃で3時間とした。加水分解させた後、苛性ソーダにて中和し水で希釈・濾過する。この処理液をGC−MS、GC(FID)にて定量した。GC−MS及びGC(FID)の条件は下記の通りとした。
a)GC−MS
・カラム:TC−WAX(30m)
・INJ温度:230℃ DET温度:250℃
b)GC(FID)
・カラム:TENAX(1.1m) カラム温度:150℃
・INJ温度:230℃
B)メルトフローレート(MFR)値測定方法
ASTM D1238 E条件(2.16kg、190℃)に準じて測定した。
C)光ディスク傷つき性評価方法
a)POM製ピン型成形品の成形条件
成形機:80トン射出成形機
金型:先端5φで高さ12mmの円柱型成形品
樹脂温度:195℃(ノズル出の温度)
金型温度:40℃(固定側、移動側とも)
成形サイクル:射出時間/冷却時間=5秒/12秒
b)傷つき性試験
図1に示したように、上記先端5φの円柱型成形品をCD−Rの記録面上に載せ、その状態で先端5φの円柱成形品の上から100grの荷重を加え、円柱成形品を往復回数100回まで動かした。その後、摺動面を変えて合計10回試験し、CD−R記録面上に付いている傷の本数を光学顕微鏡(×25倍)で観察した。この時のディスク往復動速度を10mm/sec、往復動距離を10mmとした。
c)傷つき性評価基準
記号◎:傷発生本数が0〜1本。記録面上に傷は全く発生していない。
記号○:傷発生本数が2〜4本。
記号△:傷発生本数が5〜7本
記号×:傷発生本数が7〜10本
(実施例1)
高純度トリオキサン(トリオキサン中の水≦5ppm、蟻酸10ppm)と1,3−ジオキソラン、分子量調節剤としてメチラールを2枚のΣ羽根を有するニーダーに入れ、70℃に昇温した。次に、三弗化ホウ素ジブチルエーテルを加え重合反応を開始させた。重合反応開始30分後にトリエチルアミン5%を含む水をモノマーに対して100重量部加え1時間攪拌し触媒を失活させ、内容物を取出し微粉砕した。微粉砕したポリマーは濾過し、アセトン洗浄後、乾燥した。得られたポリマー100重量部に対して、水5重量部、トリエチルアミン1重量部、ペンタエリスリチルーテトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(Irganox1010、チバガイギー社製)0.3重量部添加し、ベント付2軸押出し機を用いて200℃、50Torrで溶融混練し、不安定末端部を除去・安定化した。
その後、安定化したポリアセタール樹脂100重量部に対して、数平均分子量が6000のポリエチレングリコールを1重量部添加し、30φのベント付き短軸押出し機で溶融混練した。得られたポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)値を測定し、更に射出成形機を用いてピン型成形品を成形し、光ディスク傷つき性を評価した。結果を表1に示した。
(実施例2〜5、比較例1〜2)
オキシアルキレン単位挿入量が異なるポリアセタール樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
(実施例6〜9、比較例4〜5)
数平均分子量が異なるポリエチレングリコールに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
(実施例10〜12、比較例3)
メルトフローレート値(MFR)が異なるポリアセタール樹脂に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。
(比較例6)
ホルムアルデヒド単独重合によって得られるポリアセタール樹脂(商品名;旭化成製テナック3010)を用いて、ディスク傷つき性試験を行った。結果を表1に示した。
Figure 0004889941
ポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品に関し、光ディスクと直接接触或いは摺動させる際のディスク傷つき性を低減するポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品を提供する。CDやDVDを始めとする光ディスクは、オーディオ、カーナビゲーションシステム、パソコン関連機器など多岐に亘って利用される。
実施例記載の光ディスク傷つき性評価方法を示す概念図である。

Claims (4)

  1. メルトフローレート値が9〜60g/10minのポリアセタール樹脂と数平均分子量が1000〜20000のポリアルキレングリコールで構成され、ポリアセタール樹脂が、下記一般式で表されるオキシアルキレン単位をオキシメチレン単位に対して0.1〜1.2モル%含有してなる事を特徴とする、光ディスクと直接接触あるいは摺動させるポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品。
    Figure 0004889941
  2. ポリアルキレングリコールの添加量が、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部であること特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品。
  3. ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品。
  4. ディスクガイド部品、クランパー部品及びレンズプロテクター部品のいずれかであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のポリアセタール樹脂製光ディスク用摺動部品。
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