JP5759449B2 - 印刷用塗工紙およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷用塗工紙および印刷用塗工紙の製造方法に関する。特に、本発明はカーテン塗工方式により得られる印刷用塗工紙および印刷用塗工紙の製造方法に関する。
現在、印刷用塗工紙の製造では、接触式の塗工方式であるブレード式塗工方法とロール式塗工方法が一般的に用いられている。
これらの接触式塗工方式の操業面における特徴として、運転効率に限界がある点が挙げられる。すなわち、接触式の塗工方式では、ブレードまたはニップロールが塗料を介して原紙に接触するために、原紙にかかる負荷が大きく、断紙が発生する可能性が高い。この傾向は塗工速度が速くなるほど大きくなり、断紙の頻度は飛躍的に増大する。また、塗工時に接触する設備、つまりブレードやロールは摩耗が避けられず、消耗品として定期的な交換を行なう必要がある。加えて、接触式の塗工方式では塗工設備が塗工液と絶えず接触するため、塗工設備に汚れが付着しやすく、その結果、塗工欠陥が発生する等の問題が発生し、定期的な清掃が必要となる。このように、接触式の塗工方式の運転効率には限界があり、特に塗工速度が高速になるほど効率が悪化する問題がある。
また、接触式塗工方式の品質面における特徴として、以下の点がある。すなわち、ブレード塗工は、塗工液を原紙に塗布した後、ブレードにより過剰な塗工液を掻き落して所望の塗工量に仕上げるレベリング塗工(平滑化塗工)であり、いわゆる後計量方式の塗工方法である。そのため、塗工面の平滑性は良好となるが、塗工量が原紙の凹凸の影響をうけるために、まだら状の塗工面になり易い。酷い場合には、原紙表面をブレードで引き掻くために原紙凸部で繊維が露出してしまう程に塗工液が掻き落されてしまう。このような塗工量のバラツキにより、印刷時のインキの浸透差が発生し、インキ濃度ムラや光沢ムラにより、良好な印刷面が得られ難いという問題が生じる。一方、ロール塗工は、予めロール上にメタリングされた塗料を原紙に転写して塗工する、いわゆる前軽量方式の塗工方法である。そのため、予め所望の量の塗料をロール上に均一に広げる必要があり、複雑な装置、操作を必要とするという問題があった。また、塗工の際に筋状のパターンが生じやすく、塗工ムラのない塗工面を得ることは非常に難しく、使用可能な塗工液の粘度、濃度に制限を受ける。その他、塗工液を転写するロール上に異物が混入した場合、ロール上の塗工液が原紙に転写されない部分が生ずるおそれがあった。
以上のような接触式の塗工方式に対して、カーテン塗工方式やスプレー塗工方式などの非接触式の塗工方法が知られている。カーテン塗工方式は、塗工液の膜を形成させ、その膜に原紙を通すことにより原紙上に塗工層を設ける塗工方式であり、塗工に際しては設備が一切原紙に触れない。そのため、操業面においては、塗工時の断紙が少なくなり、消耗品の発生もない。また、塗工速度が上昇しても、原紙への負荷は変わらないため、超高速塗工が可能となる。また、カーテン塗工は前計量の塗工方式であり、落下した塗料が全て原紙に転移する。そのため、塗工量の管理が容易であり、濃度、流量を管理することで所望の塗工量の塗工紙を得ることができる。一方、品質面においては、均一な塗料のカーテン膜を形成することにより、幅方向、流れ方向の塗工量が均一となる。また、非接触であるために、塗料を原紙へ押し込むことなく転写でき、均一な厚さの塗工層が得られ、原紙への被覆性も良好となる。このようにカーテン塗工方式では均一な塗工層が得られるために、印刷の際に、インキ吸収ムラによるモットリングなどが起こりにくいという利点がある。さらには、透気性も良好となるため、ブリスター適性が良好となる。
以上のように、カーテン塗工方式は非常に優れた塗工法であり、感圧複写紙(特許文献1)、感熱紙(特許文献2)、板紙へのワックス塗布などへの利用が提案されている。また、一般印刷用塗工紙にカーテン塗工方式を導入する方法も提案されている。例えば、塗料面からクレーターの問題を解決するために、塗工液に適当な増粘剤を添加することにより、伸ばされても切れ難い性状(曳糸性)にする方法(特許文献3)が提案されている。
別の方法として、塗料に適当な湿潤剤(界面活性剤)を添加することにより、動的表面張力を低くして、塗料の原紙への濡れ性を向上させる方法(特許文献4)が提案されている。さらに別の方法として、塗工液中に天然多糖類系高分子およびポリアクリルアミド系高分子から選ばれる少なくとも一種を含有するカーテン塗工用の塗工液が提案されている(特許文献5)。ポリアクリルアミド系高分子の分子量は、好ましくは50万〜2000万である。
特開昭54−85811号公報 特開昭54−74761号公報 特開平6−294099号公報 特開2004−315976号公報 特開2005−299068号公報
発明者らは、予備的に上記特許文献に記載の技術について検討した。その結果、特許文献3で提案されている増粘剤は、塗工液に十分な曳糸性を与えられず、クレーターの抑制が十分でないことが明らかとなった。また、この増粘剤により過度の増粘作用が生じるので塗工液を大幅に希釈する必要があり、塗工液が原紙へ過剰に浸透して塗工紙の品質が低下する等が生じることも明らかとなった。特許文献4に記載の方法は、クレーターの発生をある程度抑制できるものの、未だ十分なレベルではなく、かつ塗工液が原紙へ過剰に浸透して塗工紙の品質が低下することが明らかになった。さらに、特許文献5に記載の塗工液は、曳糸性や粘度が低すぎて塗布欠陥が発生しやすいことも明らかになった。
すなわち、特許文献に記載の方法では、未だ満足できるカーテン塗工用塗工液は得られていなかった。上記事情に鑑み、本発明は、高速で塗工しても微少未塗工部(以下「クレーター」ともいう)が発生しにくい、カーテン塗工による印刷用塗工紙の製造技術を提供することを課題とする。
一般印刷用塗工紙に使用する塗工液は、品質、乾燥エネルギー、塗工速度の点から、濃度、粘度を下げることができない。例えば、感熱紙や感圧複写紙の発色層用の塗料は、一般に粘度が100〜400mPa・s程度であるのに対し、一般印刷用塗工紙を製造する際の塗料は、粘度が1000〜4000mPa・s程度である。このような高粘度の塗料をそのままカーテン塗工に用いると、カーテン膜に気泡が取り込まれやすく、泡によるクレーターが塗工面にあばた状に現われることがある。
一般印刷用塗工紙にカーテン塗工方式を導入する場合、塗工速度は通常1000m/分以上であり、感熱紙等の上記情報用紙における塗工速度よりも高い。このため、カーテン膜の落下速度と原紙の進行速度(塗工速度)との差が大きく、結果としてクレーターが発生しやすい。また、クレーターの要因として、カーテン膜の落下速度と原紙の進行速度との差により、進行方向に何倍もの速度で塗料が引き延ばされるため、カーテン膜が原紙に接触したとたんに破断することが挙げられる。他の要因としては、原紙の平滑性が粗い場合に、塗料の被覆が原紙の高速進行に間に合わず、原紙と塗料の間に隙間ができてこれが乾燥時に収縮する、あるいは隙間の空気が膨張して塗工液の被膜が破れて、塗工層にクレーターが発生することが挙げられる。
本発明者らは、カーテン塗工した場合の操業性と塗工紙の品質について、塗料処方の面から検討を重ねた結果、クレーターを発生させないためには、塗工液の液状性質が重要であることを見出した。具体的に本発明者らは、重量平均分子量が400万〜5000万の範囲であるポリカルボン酸系共重合体のW/O型エマルションからなる粘性改良剤と、顔料と、水と、場合によってはアニオン性の界面活性剤等を添加して調製した塗工液が、クレーターを抑制するのに十分な曳糸性および原紙への十分な濡れ性を有することを見出した。
すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
(1)重量平均分子量が400万〜5000万のポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒に分散しているW/O型エマルションからなる粘性改良剤と、顔料と、水とを混合して塗工液を調製する工程、および前記塗工液のカーテン膜を形成し、当該カーテン膜に原紙を通して原紙上に塗工層を形成する工程を含む、印刷用塗工紙の製造方法。
(2)重量平均分子量が400万〜5000万のポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒に分散しているW/O型エマルションからなる粘性改良剤と、顔料と、水とを混合する工程を含む方法により調製された、印刷用塗工紙にカーテン塗工するための塗工液。
(3)前記(2)の塗工液をカーテン塗工によって原紙上に塗工した印刷用塗工紙。
本発明により、高速で塗工してもクレーターが発生しにくい、カーテン塗工による印刷用塗工紙の製造技術が提供できる。
本発明の印刷用紙の製造方法は、以下の塗工液調製工程とカーテン塗工工程を含む。
塗工液調製工程:重量平均分子量が400万〜5000万のポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒に分散しているW/O型エマルションからなる粘性改良剤と、顔料と、水とを混合して塗工液を調製する。
カーテン塗工工程:前記塗工液のカーテン膜を形成し、当該カーテン膜に原紙を通して原紙上に塗工層を形成する。
1.塗工液調製工程
本工程では、水と顔料と特定の粘性改良剤とを混合して塗工液を調製する。本工程においては、水と顔料と特定の粘性改良剤を同時に混合してよい。しかしながら作業性を考慮すると、予め水と顔料のスラリーを調製しておき、このスラリーに特定の粘性改良剤を混合することが好ましい。混合には、ミキサー等の通常の混合手段を用いてよい。本発明で用いる塗工液は、この他に、界面活性剤等他の成分を含んでいてもよい。各成分等について以下に説明する。
[粘性改良剤]
本発明では、重量平均分子量400万〜5000万のポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒に分散しているW/O型エマルションからなる粘性改良剤を用いる。以下、この粘性改良剤を「W/O型エマルション粘性改良剤」ともいう。粘性改良剤とは系の粘度を変化させるために用いる薬剤である。
ポリカルボン酸系共重合体とは、カルボキシル基を含有するモノマーまたはその誘導体を重合して得られる重合体をいう。カルボキシル基を含有するモノマーの例には、アクリル酸、マレイン酸、およびメタクリル酸が含まれる。また、カルボキシル基を含有するモノマーの誘導体の例には、これらのモノマーの、モノまたはジアルカリ土類金属塩、モノまたはジエステル、アミド、イミド、および無水物が含まれる。前記モノマーとしてマレイン酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体を用いると、重合体の分子構造に分岐鎖が導入されるので、得られる塗工液の曳糸性が十分でないことがある。一方、前記モノマーとしてアクリル酸またはこの誘導体を用いると重合体の分子構造が直鎖になり、得られる塗工液の曳糸性がより効率よく向上する。このため、本発明においては、前記モノマーとしてアクリル酸またはアクリル酸誘導体を用いることが好ましい。また、本発明においてポリカルボン酸系共重合体はW/O型エマルションの状態で用いられる。よって、W/O型エマルションを生成しやすいという観点から、前記モノマーは、アクリル酸のナトリウム塩およびアクリルアミドが好ましい。これらのモノマーの比率は任意としてよいが、モル比にして、50:50〜5:95であることが好ましい。
本発明で用いる粘性改良剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒中に分散しているW/O型エマルションである。このようなW/O型エマルション粘性改良剤は、例えば以下のようにして製造できる。1)有機溶剤に、界面活性剤を室温にて添加し均一混合する、2)この混合物に水に溶解したモノマーを加えプレエマルションを調製する、3)このプレエマルションに重合開始剤を加え、高温で撹拌してモノマーを重合する。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ケロシン、イソパラフィン等の公知の有機溶媒が使用できる。また、界面活性剤もソルビタンモノステアレート等の公知の界面活性剤が使用できる。W/O型エマルション粘性改良剤における固形分は20〜60重量%が好ましい。
上記ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、400万〜5000万である。重量平均分子量が400万より小さいと、塗工液に十分な曳糸性が与えられない。また重量平均分子量が5000万より大きいと、塗工液への増粘効果が強すぎて塗工液の送液が困難になる。曳糸性と送液性等のバランスを考慮すると、重量平均分子量は1000万〜3000万がより好ましい。重量平均分子量は、重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析し、ポリスチレン換算して求められる。
ポリカルボン酸系共重合体は、印刷用塗工紙の分野において増粘剤あるいは保水剤として一般的に用いられているが、通常用いられている当該共重合体の重量平均分子量は数万〜数十万の範囲である。本発明においては、一般に用いられていない、重量平均分子量が前記のとおり非常に大きいポリカルボン酸系共重合体を用いるため、塗工液の曳糸性を向上させ、カーテン塗工におけるクレーターを抑制できる。
W/O型エマルション粘性改良剤は、それ自体の粘度が高すぎないので取り扱い性に優れる。一般に、粘性改良剤は塗工液の粘度を増加させるために用いられるが、W/O型エマルション粘性改良剤は、塗工液の粘度を過剰に増加させることなく、適度に増加させ、かつ曳糸性も付与する。よって、W/O型エマルション粘性改良剤は、塗工液の取り扱い性を損なうことなく、塗工液の曳糸性を向上できる。この理由は限定されないが、次のように推察される。
W/O型エマルション粘性改良剤においては、共重合体が分散相である水相内に閉じ込められた状態で存在するため、分子鎖が広がらず分子鎖同士の絡み合いが少ない。このため、前述したような非常に高い分子量の共重合体を含んでいても、粘性改良剤自体の粘性は高すぎず、取り扱い性に優れる。しかし、W/O型エマルション粘性改良剤は、水と混合されて塗工液とされると、分散相であった水相が連続相となる転相が生じ、共重合体の分子鎖が広がって絡み合いを起こすために増粘効果を発現する。
一方、O/W型エマルション粘性改良剤は、共重合体が分散相に存在するので分子鎖が絡み合って存在しており、粘性改良剤自体の粘性が高い。特に共重合体の重量平均分子量が100万以上である場合は、粘度がかなり高く取り扱い性が極めて困難となる。さらに、このような粘性改良剤は、均一に塗工液に混合しにくいので、塗工液を均一に増粘させることも困難である。このため、塗工液の送液性等の取り扱い性を著しく損ない、さらには塗工液に十分な曳糸性を付与できない。
クレーターの発生を抑制するという観点から、前記粘性改良剤の添加量は、塗工液中の全顔料100重量部に対して、0.05重量部以上であることが好ましい。添加量が0.05重量部より少ないと、塗工液に十分な曳糸性を付与することができない場合がある。また、添加量が0.5重量部より多いとクレーターの発生は抑制できるものの塗工液の粘度が高くなりすぎ、塗工液の固形分濃度を大幅に下げざるを得ず、塗工液が原紙へ過剰に浸透し塗工紙の品質低下を招くことがある。塗工液の曳糸性と塗工紙の品質のバランスを考えると、前記添加量は0.1〜0.3重量部がより好ましい。
[界面活性剤]
本発明においては界面活性剤を用いて、塗工液の動的表面張力を後述するような範囲に調整できる。界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が存在するが、本発明においてはアニオン性界面活性剤が好ましい。カチオン性界面活性剤は塗工液中の顔料を凝集させやすくなる。また、ノニオン性界面活性剤は塗工液に十分な濡れ性を与えにくい。アニオン性界面活性剤の例には、スルホン酸系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤およびカルボン酸系界面活性剤が含まれる。これらの中でも、塗工液の濡れ性をより良好とできるため、スルホン酸系界面活性剤が好ましく、特にアルキルスルホコハク酸が好ましい。
上記アニオン性界面活性剤の添加量は、塗工液中の全顔料固形分に対して、0.1〜1重量%が好ましい。添加量が0.1重量%より小さいと、塗工液の原紙への濡れ性が不十分となることがある。また前記添加量が1重量%より大きいと、塗工液の原紙への過剰な濡れ性により、塗工液が原紙に過剰に浸透し、塗工紙の品質が悪化することがある。これらの界面活性剤は単独で使用できるが、二種以上を併用してもよい。
[顔料]
本発明に用いる塗工液は顔料を含む。顔料は制限されず、塗工紙用に従来から用いられている顔料を使用できる。例えば、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料、有機・無機複合顔料等を使用することができる。中でも重質炭酸カルシウムまたは軽質炭酸カルシウムが好ましい。これらの顔料は単独で使用できるが、必要に応じて二種以上を混合して使用してもよい。
本発明においては、塗工紙品質や塗工液の脱泡性の点から、板状の形状を有する顔料よりも球状の形状に近い顔料を塗工液に配合することが好ましい。具体的には、以下に定義される扁平率が2.0以下の顔料を使用することが好ましく、1.5以下の顔料を使用することがより好ましい。
扁平率は、BET法で求めた顔料の比表面積を、レーザー回析式で測定した粒度分布から顔料粒子が完全球体であると仮定して算出して求めた比表面積で除した値で定義され、以下の式で表される。
扁平率=BET法で求めた比表面積/レーザー回析式粒度分布から顔料粒子が完全球体であると仮定して算出した比表面積
扁平率の数値が高いほど顔料の扁平度が高く、扁平率の数値が1に近いほど顔料が完全球体に近いことを意味する。扁平率が2.0以下の顔料を用いると塗工紙品質が良好になる理由の詳細は明らかでないが、以下のように推察される。非接触式の塗工方式であるカーテン塗工は、接触式の塗工方式と比較して、扁平な顔料を使用した場合に顔料が原紙の進行方向へ配向しづらい傾向がある。そのため、扁平な顔料を多く使用すると顔料が規則的に配向できず、塗工紙表面の平滑性が低下し、また、塗工層の空隙が多くなり、印刷時におけるインキの浸透が激しくなり、印刷光沢度が低下すると考えられる。ただし、本発明はこの考察に拘束されない。
扁平率が2.0以下の顔料を使用すると、塗工液の脱泡性が向上し、クレーターの発生も抑制される。すなわち、扁平率が2.0を超える扁平な顔料を使用すると、脱泡する際に扁平な顔料によって泡の移動が妨げられるため脱泡性が低下しやすいが、扁平率が2.0以下の球状に近い顔料を使用すると泡の移動が阻害されにくく、脱泡性が低下しにくい。
また、本発明においては、顔料として、紡錘状カルサイト結晶の軽質炭酸カルシウムを湿式粉砕することにより得られる炭酸カルシウムであって、X線透過式粒度分布測定器で測定される平均粒子径(d50:積算50重量%の粒子径)が0.1〜0.5μmであり、BET比表面積が10〜30m/gであり、X線透過式粒度分布測定器で以下のように測定される粒度分布のシャープ度が50以上である炭酸カルシウムを使用することが好ましい。このような炭酸カルシウムを顔料として用いると、裏抜けに優れた印刷用塗工紙が得られる。
シャープ度=(d30/d70)×100
式中、d30は積算30重量%の粒子径であり、d70は積算70重量%の粒子径である。
前記の粉砕前の軽質炭酸カルシウムとしては、紡錘状の一次粒子が凝集してロゼッタ形状の二次粒子を形成したカルサイト結晶を用いることが好ましい。また、粉砕前の軽質炭酸カルシウムのX線透過式粒度分布測定器で測定される平均粒子径(d50)は1.4〜3.0μmであり、BET比表面積は4〜12m/gであることがより好ましい。さらに、湿式粉砕にはマルチパス型粉砕機を使用することが好ましい。このように粉砕して得られる炭酸カルシウムの添加量は、顔料100重量部当たり40〜100重量部が好ましく、60〜90重量部がより好ましい。
[接着剤]
本発明においては、カーテン塗工液に接着剤(バインダー)を配合することが好ましい。接着剤は特に制限されず、塗工紙用に従来から用いられている接着剤を使用できる。接着剤の例には、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、およびアクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤が含まれる。接着剤は、1種類以上を適宜選択して使用できる。好ましい態様において、これらの接着剤は顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは8〜30重量部程度の範囲で使用される。中でも、低重合度(重合度500程度)ポリビニルアルコールは、粘度を大幅に上昇させることなく接着効果も高めることができるので好ましい。
また、後述するとおり、本発明においてはカーテン塗工層を複数の層とできる。特に、カーテン塗工層を、原紙に最も近い最下層と中間層と原紙から最も遠い最上層の三層とする場合において、各層の接着剤の重量比を1:0.5〜0.8:0.7〜1.0とすることが好ましい。このような配合とすることで、使用する接着剤の量を減少でき、製造コストを低減できる。
[助剤]
本発明においては、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
2.カーテン塗工工程
本工程では、前記塗工液のカーテン膜を形成し、当該カーテン膜に原紙を通して原紙上に塗工層を形成する。
[塗工液の特性]
本発明に用いる塗工液は、破断時間が200ms以上であることが好ましい。塗工液の破断時間とは、塗工液の伸びやすさ(曳糸性)の指標である。破断時間の大きい塗工液ほど、曳糸性の高い塗工液となる。破断時間が200msより短いと、カーテン膜の落下速度と原紙の進行速度との差により、カーテン膜が原紙に接触した際に瞬時に起こる伸長に、塗工液が追従しにくくなる。このため、塗膜が破断して、クレーターが発生しやすくなる。また、破断時間の上限は特に限定されないが、500msより長いと、塗工液の流動性が悪化し、塗料の送液が困難になるため好ましくない。この場合、流動性を改善するために塗工液の固形分を下げることも考えられるが、塗工液の原紙への過剰な浸透により塗工紙の品質が悪化するので好ましくない。
本発明における破断時間は、伸長粘度計で測定される。具体的には、破断時間は、1)同軸かつ軸が垂直になるように配置された一対の直径8mmの円形プレートを備える粘度計を用いて、前記プレート間(ギャップ1mm)に液温が30℃の塗工液を封入し、2)上方のプレートを400mm/秒の速度で8mm垂直に引き上げてそのまま保持し、3)前記プレートの引き上げ開始時点から塗工液フィラメントが破断するまでの時間を測定して求められる。フィラメントが破断する前の時間は、レーザーで測定することが好ましく、この際の時間分解能は2ms程度が好ましい。このような測定が可能な粘度計の例には、サーモハーケ社製伸長粘度計(機種名:CaBER1)が含まれる。
本発明に用いる塗工液は、30℃におけるB型粘度が1000〜3000mPa・sの範囲であることが好ましい。塗工液のB型粘度は、No.4のローターを用いて、60rpmの回転速度で測定される。本発明において数値範囲はその端点を含む。
塗工液の破断時間が200ms以上であっても、B型粘度が1000mPa・sより低いと、塗工液が原紙に過剰に浸透し、塗工紙の品質が低下するため好ましくない。またB型粘度が3000mPa・sより大きいと、塗工液の流動性が悪化し、塗工液の送液が困難になるため好ましくない。
本発明に用いる塗工液の破断時間や粘度の特性は、主として粘性改良剤の添加量により調整できる。また、これらの特性は、塗工液の固形分濃度を高くすることによってもある程度は調整できる。固形分濃度を高くすることによって、塗工液中の顔料粒子やその他の配合物の間に相互作用が生じやすくなり、塗工液の破断時間を長くできるためである。塗工液の固形分濃度が高いと塗工紙の印刷品質も向上する。
本発明は、前述のとおり特定の粘性改良剤を用いるので、カーテン塗工液に高すぎない適度な粘度を与えられる。そのため、塗工液の固形分濃度を高くすることができ、塗工紙の印刷品質も向上させることができる。塗工液の固形分濃度は、58重量%以上が好ましく、62重量%以上がより好ましい。固形分が58重量%より低いと、塗工液の原紙への過剰な浸透により塗工紙の品質が低下することがある。一方、固形分濃度の上限は特に制限されないが、送液性等を考慮すると、75重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。
本発明に用いる塗工液は、流動状態における動的な表面張力、すなわち動的表面張力が25〜45mN/mであることが好ましい。動的表面張力とは、液体表面が新たに生じた場合に液体表面と内部が平衡状態に達する途中の表面張力をいい、塗工液の流動状態における濡れ性の指標である。濡れ性とは、塗工液の基材表面への広がりやすさを表す指標である。濡れ性が大きいということは、一般に塗工液が基材の表面に広がりやすいことを示す。すなわち、動的表面張力が前記範囲にある塗工液は、紙と接した直後から良好な濡れ性を示すため、クレーターの発生を抑制しやすい。
本発明において動的表面張力は、最大泡圧法により求められる。最大泡圧法とは、液体中に挿した半径rのプローブから気泡(界面)を連続的に発生させ、気泡の半径がプローブの半径rと同じになったときの気泡にかかる圧力(最大泡圧)から、以下の式により表面張力を求める方法をいう。
表面張力γ=△P×r/2 (△Pは、最大泡圧と最小泡圧(大気圧)との差)
具体的に動的表面張力は、プローブ先端内で新しい界面が生成した時点から最大泡圧となるまでの時間(ライフタイム)を変化させながら、各ライフタイムにおける動的表面張力を測定する。このように短時間における動的表面張力を測定することで、流動または撹拌状態にある液体の濡れ性が評価できる。つまり、ライフタイムが短いほどより流動状態に近い、ごく初期の状態における動的表面張力が測定できる。本発明においては、測定精度の観点から、ライフタイムを100msとした場合における表面張力の値を動的表面張力とすることが好ましい。この動的表面張力は自動動的表面張力計(「BP−D5」協和界面化学株式会社製)等用いて測定することができる。
本発明に用いる塗工液の動的表面張力は、界面活性剤の添加により調整できる。クレーターの発生を抑制するという観点から、本発明に用いる塗工液の動的表面張力は、45mN/m以下であることが好ましい。動的表面張力が45mN/mより大きいと、塗工液の原紙への濡れ性が不十分となるため、クレーター発生を十分に抑制できないことがある。一方、動的表面張力が25mN/mより小さいと、クレーターの抑制はできるものの、塗工液の原紙への過剰な濡れ性により、塗工液が原紙に過剰に浸透し、塗工紙の品質が低下することがある。以上から、本発明に用いる塗工液の動的表面張力は、25〜45mN/mが好ましく、25〜35mN/mがより好ましい。
[原紙]
本発明で使用される原紙は特に制限されず、一般に使用される上質紙、中質紙、更紙、マシンコート紙、アート紙、キャストコート紙、合成紙、レジンコーテッド紙、プラスチックフィルム等を例外なく使用できる。
また、本発明においては、原紙の平滑性が低くても所望の効果が奏されるため、平滑性の低い原紙を用いてもよいが、カーテン塗工時のパドリングと呼ばれる塗料溜まりが発生しない範囲で、平滑性の高い原紙を使用できる。原紙の平滑性を高めるために、カーテン塗工前にプレカレンダー等の処理を行なってもよい。さらに、原紙の平滑性を改善する手段として、カーテン塗工前に、澱粉を主成分としたクリア塗料または顔料を含んだ塗料を原紙に塗工することができる。このプレ塗工された原紙は、乾燥工程を経ないまま、すなわち原紙上の塗料が濡れた状態で、カーテン塗工に供してもよい。このように、カーテン塗工に供される前のプレ塗工後の原紙の状態は制限されない。
[カーテン塗工]
本発明においてカーテン塗工とは、塗工液をカーテン状に流下させて膜を形成し、その膜に原紙を通すことにより原紙上に塗工層を設ける塗工方式である。カーテン塗工は、原紙に沿って塗工層が形成される輪郭塗工であり、また、いわゆる前計量方式であるため塗工量の制御が容易であるという特徴を有する。
本発明の塗工紙は、原紙の両面ないし片面に、カーテン塗工で単層ないし多層塗工することによって製造される。多層塗工においていずれかの層の塗工には、カーテン塗工装置以外の塗工装置の使用も可能であり、例えば、カーテン塗工装置による顔料塗工液の塗工をおこなった後、ブレード塗工装置による顔料塗工液の塗工を行ったり、ブレード塗工をおこなった後にカーテン塗工を行ったりしてもよい。また、下層塗工部を乾燥せずに上層塗工を行なうウェットオンウェット塗工をおこなってもよい。特に前述のとおり、カーテン塗工により三層を設ける場合、各層の接着剤の配合比を前記のとおりとし、最下層を塗工した後に、最下層を乾燥せずに中間層を形成し、かつ中間層を乾燥せずに最上層を形成することが好ましい。このように三層を形成すると、接着剤の配合量を低減させながらも、良好なカーテン塗工膜を形成できる。
本発明において塗工層の塗工量は、片面あたり乾燥重量で3〜30g/mが適当である。塗工量が3g/m未満では、紙基材表面の凹凸を十分に覆うことができないため、印刷インクの受理性が著しく低下することがある。一方、一つの層の塗工量が30g/mを越えると、塗工時の乾燥性が悪くなるなど操業性が低下したり、バインダーマイグレーションによる印刷ムラの原因になったりするので好ましくない。塗工層が多層で構成されている場合も、片面あたり30g/m以下の塗工量とすることが好適である。塗工層が複数である場合は、総ての層の合計の塗工量が前記範囲となることが好ましい。
また、本発明においては、カーテン塗工に用いられる公知の装置を使用することができる。例えば、塗工液を送液するためのポンプ、塗工液を脱気するための脱泡装置等を用いることができる。
本発明は特定の塗工液を用いるため、カーテン塗工を高速で塗工する場合に、より顕著な効果が得られる。特に、カーテンの塗工速度が1000m/分より速い場合に、より効果的にクレーターの発生を抑制することができる。
本発明の塗工紙は、原紙上に塗工層を設けた後、通常の乾燥工程を経て製造されるが、必要に応じて表面処理工程等で平滑化処理してもよい。好ましい態様において、製造後の塗工紙水分が3〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%程度となるように調整して仕上げられる。平滑化処理には、通常のスーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ、熱キャレンダ、シューキャレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。
本発明の印刷用塗工紙の製造方法は、白板紙などの板紙にも適用できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されない。
[評価方法]
(1)破断時間:サーモハーケ社製伸長粘度計(機種名:CaBER1)を用い、1)前記粘度計の同軸かつ軸が垂直になるように配置された一対の直径8mmの円形プレート間(ギャップ1mm)に液温が30℃の塗工液を封入し、2)上方のプレートを400mm/秒の速度で8mm垂直に引き上げてそのまま保持し、3)前記プレートの引き上げ開始時点から塗工液フィラメントが破断するまでの時間を測定した。
(2)動的表面張力:自動動的表面張力計(「BP−D5」協和界面化学株式会社製)を用いて、塗工液中に挿したプローブ(細管)から気泡を連続的に発生させたときの最大圧力(最大泡圧)を最大泡圧法により測定し、表面張力を求めた。具体的には、ライフタイム(プローブ先端内で新しい界面が生成した時点から最大泡圧となるまでの時間)が100msである場合の表面張力の値を動的表面張力とした。
(3)クレーター発生の程度:塩化アンモニウムを2.5重量%、イソプロピルアルコールを47.5重量%含む水溶液に塗工紙を浸し、過剰な溶液をウェスでふき取った後に自然乾燥させ、200℃に熱した乾燥機に入れて30分間燃焼させた。その後、画像解析装置により白く残った塗工層と、黒く炭化した原紙(パルプ繊維)の割合よりクレーターの発生状況を確認し、印刷用塗工紙としての品質を備えているかを判断した。なお、塗工液の泡が原因となるマシン進行方向に長く伸びた楕円上の欠陥は、被覆率の計算より除外した。評価は目視により行い、その基準は以下のとおりとした。
◎:クレーターが全くない、○:クレーターがほとんどない(1個〜2個/cm)、△:クレーターが少ない(3〜10個/cm)、×:クレーターが多い(11個〜100個/cm
(4)操業安定性:カーテン膜が落下して原紙に接触するまでの間に、膜が不安定になって膜切れが発生する頻度を判断した。評価基準は以下の通りである。
◎:膜切れが全く発生ない、○:まれに膜切れが発生する(1時間に1回程度)、△:しばしば膜切れが発生する(1分間に1回程度)、×:膜を形成できない
(5)印刷光沢度:ローランド社製オフセット平判印刷機(4色)にて、平判印刷用インキ(東洋インキ株式会社製ハイユニティーM)を用いて、印刷速度8000枚/時で印刷用紙に印刷を行なった。その後、藍ベタ部の印刷光沢度をJIS P8142「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。
以下の実施例1〜10は、界面活性剤を用いずに行なった。
(塗工液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−97、株式会社ファイマテック製)と水からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(商品名:PA7082、日本エイアンドエル株式会社製)12重量部、粘性改良剤(商品名:ソマレックス530、ソマール株式会社製、重量平均分子量2000万、W/O型エマルション、アクリル系)0.2重量部、印刷適性向上剤(商品名:SPI−106N、住化ケムテックス株式会社製)0.25重量部を添加した。さらに水を添加して、粘度が1500mPa・sになるよう調整し、固形分濃度が62重量%の塗工液を得た。前述の方法により、得られた塗工液を評価した。
(印刷用塗工紙の作製)
上質原紙(坪量66.5g/m)に前記塗工液を片面あたり12g/mの塗工量となるようにカーテン塗工装置にて塗工速度1000m/分で塗工し、乾燥して印刷用工紙を得た。前述の方法により、得られた印刷用塗工紙を評価した。
本実施例で調製した塗工液中の固形分におけるラテックスの濃度は11重量%であったので、片面当たりの塗工層にしめるラテックスの量は1.3g/mであった。
重量平均分子量2000万の共重合体を含む粘性改良剤を、重量平均分子量1000万の共重合体を含む粘性改良剤(商品名:ビスツール300、サンノプコ株式会社製、W/O型エマルション、アクリル系)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は63重量%であった。
粘性改良剤の添加量を0.2重量部から0.3重量部に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は60重量%であった。
粘性改良剤の添加量を0.2重量部から0.05重量部に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は66重量%であった。
粘性改良剤の添加量を0.2重量部から0.5重量部に変更し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は56重量%であった。
塗工速度を1000m/分から1500m/分に変更した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。
塗工速度を1000m/分から1600m/分に変更した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。
塗工速度を1000m/分から800m/分に変更した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。
塗工液に澱粉(Ethylex2005、Tate&Lyle社製)を顔料100重量部に対して5重量部追加し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は58重量%であった。
塗工液の固形分濃度を58重量%とした以外、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得た。塗工液の粘度は200mPa・sであった。
以下の実施例11〜23は、界面活性剤を用いて行なった。
(塗工液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−97、株式会社ファイマテック製)と水からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(商品名:PA7082、日本エイアンドエル株式会社製)12重量部、粘性改良剤(商品名:ソマレックス530、ソマール株式会社製、重量平均分子量2000万、W/O型エマルション、アクリル系)0.2重量部、界面活性剤(商品名:Newco291PG、日本乳化剤株式会社製、アニオン性、アルキルスルホコハク酸)0.2重量部、印刷適性向上剤(商品名:SPI−106N、住化ケムテックス株式会社製)0.25重量部を添加した。水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整し、固形分濃度62重量%の塗工液を得た。前述の方法により、得られた塗工液を評価した。
(印刷用紙の作製)
上質原紙(坪量66.5g/m)に前記塗工液を片面あたり12g/mの塗工量となるようにカーテン塗工装置にて塗工速度1000m/分で塗工し、乾燥して印刷用工紙を得た。前述の方法により、得られた印刷用塗工紙を評価した。
本実施例で調製した塗工液中の固形分におけるラテックスの濃度は11重量%であったので、片面当たりの塗工層にしめるラテックスの量は1.3g/mであった。
重量平均分子量2000万の共重合体を含む粘性改良剤を、重量平均分子量1000万の共重合体を含む粘性改良剤(商品名:ビスツール300、サンノプコ株式会社製、W/O型エマルション、アクリル系)に変更し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は63重量%であった。
粘性改良剤の添加量を0.2重量部から0.3重量部に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は60重量%であった。
粘性改良剤の添加量を0.2重量部から0.05重量部に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は66重量%であった。
粘性改良剤の添加量を0.2重量部から0.5重量部に変更し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は56重量%であった。
界面活性剤の添加量を0.2重量部から0.5重量部に変更し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
界面活性剤の添加量を0.2重量部から0.05重量部に変更し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
界面活性剤の添加量を0.2重量部から2.0重量部に変更し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
塗工速度を1000m/分から1500m/分に変更した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。
塗工速度を1000m/分から1600m/分に変更した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。
塗工速度を1000m/分から800m/分に変更した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。
塗工液に澱粉(Ethylex2005、Tate&Lyle社製)を顔料100重量部に対して5重量部追加し、水を添加して、粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は58重量%であった。
塗工液の固形分濃度を58重量%とした以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得た。塗工液の粘度は200mPa・sであった。
アルキルスルホコハク酸系界面活性剤を、非アルキルスルホコハク酸系界面活性剤(商品名:Newcol 1305−SN、日本乳化剤株式会社製、アニオン性)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得た。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
アニオン型界面活性剤を、ノニオン型界面活性剤(商品名:Newcol 2308−Y、日本乳化剤株式会社製)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得た。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
(三層のカーテン塗工層を備えた塗工紙)
(塗工液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−97、株式会社ファイマテック製)と水とからなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(商品名:PA7082、日本エイアンドエル株式会社製)13重量部、粘性改良剤(商品名:ソマレックス530、ソマール株式会社製、重量平均分子量2000万、W/O型エマルション、アクリル系)0.2重量部、界面活性剤(商品名:Newco291PG、日本乳化剤株式会社製、アニオン性、アルキルスルホコハク酸)0.2重量部、印刷適性向上剤(商品名:SPI−106N、住化ケムテックス株式会社製)0.25重量部を添加した。さらに水を添加して、粘度が1000mPa・sになるよう調整し、固形分濃度が60重量%の最下層用塗工液を得た。前述の方法により、得られた塗工液を評価した。
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−97、株式会社ファイマテック製)と水からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(商品名:PA7082、日本エイアンドエル株式会社製)8重量部、粘性改良剤(商品名:ソマレックス530、ソマール株式会社製、重量平均分子量2000万、W/O型エマルション、アクリル系)0.2重量部、印刷適性向上剤(商品名:SPI−106N、住化ケムテックス株式会社製)0.25重量部を添加した。さらに水を添加して、粘度が1500mPa・sになるよう調整し、固形分濃度が62重量%の中間層用塗工液を得た。前述の方法により、得られた塗工液を評価した。
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−97、株式会社ファイマテック製)と水からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100重量部に対して、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(商品名:PA7082、日本エイアンドエル株式会社製)10重量部、粘性改良剤(商品名:ソマレックス530、ソマール株式会社製、重量平均分子量2000万、W/O型エマルション、アクリル系)0.2重量部、界面活性剤(商品名:Newco291PG、日本乳化剤株式会社製、アニオン性、アルキルスルホコハク酸)0.2重量部、印刷適性向上剤(商品名:SPI−106N、住化ケムテックス株式会社製)0.25重量部を添加した。さらに水を添加して、粘度が1300mPa・sになるよう調整し、固形分濃度が61重量%の最上層用塗工液を得た。前述の方法により、得られた塗工液を評価した。
(印刷用紙の作製)
上質原紙(坪量66.5g/m)にスライド式のカーテン塗工装置にて、前記塗工液を片面あたり12g/mの塗工量(最下層:2g/m、中間層:8g/m、最上層:2g/m)となるようにカーテン塗工装置にて塗工速度1500m/分で塗工し、乾燥して印刷用工紙を得た。前述の方法により、得られた印刷用塗工紙を評価した。
本実施例で調製した塗工液中の固形分におけるラテックスの濃度は、最下層用、中層用、最上層用、それぞれ11重量%、7.4重量%、9.0重量%であった。よって、片面当たりの塗工層にしめるラテックスの量は2g/m×0.11+8g/m×0.074+2g/m×0.09=1.0g/mであった。
[比較例1]
W/O型エマルションの粘性改良剤を、O/Wエマルションの粘性改良剤(商品名:A−20P、東亞合成株式会社製、重量平均分子量500万)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
[比較例2]
アクリル系の粘性改良剤を、非アクリル系であってO/Wエマルションの粘性改良剤(商品名:A−7255、東亞合成株式会社製、重量平均分子量50万)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
[比較例3]
W/O型エマルションの粘性改良剤を、O/Wエマルションの粘性改良剤(商品名:A−20P、東亞合成株式会社製、重量平均分子量500万)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
[比較例4]
アクリル系の粘性改良剤を、非アクリル系であってO/Wエマルションの粘性改良剤(商品名:A−7255、東亞合成社製、重量平均分子量50万)に変更し、水を添加して粘度を1500mPa・sに調整した以外は、実施例11と同様に印刷用塗工紙を得て評価した。塗工液の固形分濃度は62重量%であった。
Figure 0005759449
Figure 0005759449
Figure 0005759449
表1から、塗工液中の粘性改良剤の添加量が同じである実施例1と、比較例1および2とを比較すると、実施例1の塗工液は、比較例1、2に比べ破断時間が長く、クレーターの抑制に効果的であることが分かる。
実施例1における粘性改良剤よりも低い分子量の粘性改良剤を用いた実施例2、および添加量を変更した実施例3、4、5においても、これらの実施例で使用した塗工液は、破断時間が十分に長く、クレーターの抑制に効果的であることが分かる。
実施例1における塗工速度を変更した実施例6、7、8においても、クレーターは十分に抑制できていることが分かる。
実施例1における固形分と粘度のバランスを変更した実施例9、10においても、これらの実施例で使用した塗工液は、破断時間が十分に長く保たれており、クレーターの抑制に効果的であることが分かる。
界面活性剤を添加した実施例11〜23についても上記と同様の傾向が見られる。
また、実施例1と実施例11を比較すると、界面活性剤を添加した場合は、クレーターの発生がさらに抑制される傾向にあるといえる。さらに、界面活性剤を添加した場合は、塗工液の流量が少ない、すなわち塗工量が少ないか塗工速度が遅い条件でも操業安定性がよくなることが明らかである。ただし、界面活性剤の添加により塗工液の原紙への浸透が僅かに促進されるので、原紙被覆性が劣る傾向にあり、印刷光沢度は若干下がる傾向にある。
また、カーテン塗工により3層を設けた実施例26の場合、塗工層全体の接着剤量を低減させながらも、良好な操業安定性と印刷光沢度を得ることができる。
以上のとおり、本発明により、高速で塗工してもクレーターが発生しにくい、カーテン塗工による印刷用紙の製造方法が提供できる。この方法により得られた塗工紙は印刷品質にも優れる。

Claims (8)

  1. 重量平均分子量が400万〜5000万のポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒に分散しているW/O型エマルションからなる粘性改良剤と、顔料と、水とを混合して塗工液を調製する工程、および
    前記塗工液のカーテン膜を形成し、当該カーテン膜に原紙を通して原紙上に塗工層を形成する工程、を含
    前記塗工液の破断時間が200ms以上であり、かつ30℃におけるB型粘度が1000〜3000mPa・sである、印刷用塗工紙の製造方法。
  2. 前記塗工液がアニオン性の界面活性剤を含む、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記界面活性剤がアルキルスルホコハク酸系界面活性剤である、請求項に記載の製造方法。
  4. 前記塗工液の、最大泡圧法によって測定される、ライフタイム100msにおける動的表面張力が25〜45mN/mである、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記ポリカルボン酸系共重合体がアクリル酸系共重合体である、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  6. 重量平均分子量が400万〜5000万のポリカルボン酸系共重合体の水溶液が有機溶媒に分散しているW/O型エマルションからなる粘性改良剤と、顔料と、水とを混合する工程を含む方法により調製された、
    前記塗工液の破断時間が200ms以上であり、かつ30℃におけるB型粘度が1000〜3000mPa・sである、印刷用塗工紙にカーテン塗工するための塗工液。
  7. 請求項に記載の塗工液をカーテン塗工によって原紙上に塗工した印刷用塗工紙。
  8. 前記塗工液が、前記顔料100重量部に対して、前記粘性改良剤を0.1〜0.3重量部含む、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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