JP5757197B2 - 制震構造 - Google Patents
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Description
この種の制震構造の最も一般的な形態とその作動原理を図6に模式的に示す。これは、地震時に構面に生じる層間変形をブレースを介してダンパーに伝達して作動させるようにしたものである。
これによれば、地震時に構面に層間変形が生じた際には接合部材4と下側の梁2との間で面内での相対変位が生じ、それにより各ダンパー7が伸縮するように作動して制震効果が得られるのである。
すなわち、一構面内に3台以上のダンパー7を設置する場合には、たとえば図7(a)に示すように各ダンパー7を上下方向に2段にわたって設置する必要が生じ、そのためには接合部材4の高さ寸法を大きくしてその側部に2台のダンパー7(7a、7b)を上下方向に間隔をおいて接続することにならざるを得ないが、その場合には各ダンパー7の作用位置が上下方向にずれることから(b)に示すように接合部材4に偏心曲げ荷重が作用してしまうことになる。つまり、下段に設置したダンパー7bの反力P、偏心距離eとすると、 M=P・e なる偏心曲げモーメントMが生じることになる。
しかし、オイルダンパーと他の形式のダンパー(たとえば慣性質量ダンパーや鋼材ダンパー等の履歴ダンパー)とを併用する場合、特に図7(a)に示しているように上段側のダンパー7をオイルダンパー7aとし下段側のダンパー7を慣性質量ダンパー7bとし、さらにその慣性質量ダンパー7bに対して付加ばね8を直列に接続するような場合には、上下のダンパー7の反力に位相差が生じることから偏心曲げ荷重を完全に回避するような設計は困難であり、したがって一構面内に敢えて多数のダンパー7を多段に設置しても個々のダンパー7の作動効率が低下してしまって所期の制震効果が得られない場合があり、不合理である。
また、本発明によれば各ダンパーを設置するうえで特別な施工技能を必要としないし、さしてコストアップになることもなく、新築の制震建物に適用するのみならず既存建物に対する制震改修工事にも有効に適用可能である。
本実施形態の制震構造は、図6や図7に示した従来の制震構造と同様に、柱1と梁2とによる一構面内に一対2本のブレース部材3aをV形に組み合わせてV型のブレース3を設置して、そのブレース3の下端部(ブレース部材3aどうしの交差部)に接合部材4を一体に接合し、その接合部材4と構面との間に複数のダンパー7を介装することを基本とするが、本実施形態では接合部材4の両側に2台のオイルダンパー7a(第1のダンパー)を設置したうえで、接合部材4の下方にさらに1台の慣性質量ダンパー7b(第2のダンパー)を設置し、特にその慣性質量ダンパー7bを接合部材4に対して相対回転可能にピン接合するとともに、下側の梁2に対してリニアガイド12により面内水平方向(梁の軸方向)にスライド可能かつ鉛直方向に変位不能な状態で支持したことを主眼としている。
一方、下段側の第2のダンパーとしての慣性質量ダンパー7bには、図2に示すようにその胴部に取付部材9を装着して溶接により一体化せしめ、その取付部材9の上部の板部によって接合部材4を両面から挟み込んだ状態でブレース3の頂点Oの位置においてピン10により回転可能な状態で連結することにより、慣性質量ダンパー7bを接合部材4に対してピン10を中心として鉛直面内において回転可能にピン接合している。
また、本実施形態ではその慣性質量ダンパー7bに対して付加ばね8を直列に接続している。付加ばね8としてはたとえば図4に示すような積層ゴムの形態のものが好適に採用可能であり、その付加ばね8の一端側を慣性質量ダンパー7bに対してピン14によるピン接合によって鉛直面内において相対回転可能な状態で接続し、他端側をダンパー取付部材6を介して構面に対して接続すれば良い。
(1)下側の梁2上にT形鋼からなる架台11を現場溶接し、その天端が床コンクリート天端より上になるようにする。
(2)慣性質量ダンパー7bの胴部に取付部材9を装着して一体に溶接するとともに、慣性質量ダンパー7bの底部にリニアガイド12を装着し、リニアガイド12のレール12aを架台11上面にボルト締結する。
(3)リニアガイド12を水平方向に仮固定した状態で、接合部材4を慣性質量ダンパー7bに対してピン10によりピン接合して仮固定する。
(4)付加ばね8およびオイルダンパー7a(第1のダンパー)を設置する。
(5)ブレース3をHTB接合により組み立てて構面内に設置した後、慣性質量ダンパー7bに対する接合部材4およびリニアガイド12の仮固定を解除し、以上により施工完了となる。
特に、慣性質量ダンパー7bを従来のように単に接合部材4に対して固定的に連結するのではなく、接合部材4に対して回転可能にピン接合するとともにリニアガイド12によりスライド可能かつ鉛直方向に拘束した状態で支持して設置しているので、従来のように接合部材4に対して偏心曲げ荷重が作用することはなく、したがって従来のように接合部材4の回転による変位ロスが生じることがなく、オイルダンパー7aおよび慣性質量ダンパー7bの双方をいずれも効率的に作動させることが可能である。
この場合、たとえば図5(b)に示すように、慣性質量ダンパー7bの反力P=2000kN、偏心距離e=500mm、リニアガイド12の支持間隔L=2000mmとすると、リニアガイド12の鉛直反力Rは R=P・e/L=500kN となるから、リニアガイド12としてはそのような鉛直荷重を支持し得るものを用いれば十分である。
従来においては図6に示したように一構面に支障なく設置し得るダンパーの台数は2台が限界であったが、本発明によればダンパー7を2段にわたって支障なく配置することが可能であるから、一構面内に多数のダンパーを設置することが可能となる。
特に、従来において図7に示したようにダンパーを2段配置する場合には接合部材4に偏心曲げ荷重が作用してそれに起因するダンパー効率低下が不可避であったが、本発明によればそのような偏心曲げ荷重が生じることを有効に回避でき、その結果、接合部材4に回転が生じることがないから各ダンパー7の変位ロスが生じることがなく、それ故に各ダンパー7を効率的に作動させ得てその性能を十分に発揮させることができ、優れた制震効果を得ることができる。
勿論、本発明は各ダンパー7を設置するうえで特別な施工技能を必要としないし、従来に比べてさしてコストアップになるものでもなく、また新築の制震建物に適用するのみならず既存建物に対する制震改修工事にも有効に適用可能である。
さらに、第2のダンパーを構面に対して水平方向にスライド可能かつ鉛直方向に変位不能に支持するための機構としては、上記実施形態のようにリニアガイド12が好適に採用可能であるが、それに限るものでもなく、第2のダンパーの鉛直方向の移動を拘束しつつ水平方向にスライドさせるように構成し得るものであれば適宜の機構を採用可能である。
2 梁
3 ブレース
3a ブレース部材
4 接合部材
5 面外移動拘束ガイド
6 ダンパー取付治具
7 ダンパー
7a オイルダンパー(第1のダンパー)
7b 慣性質量ダンパー(第2のダンパー)
8 付加ばね
9 取付部材
10 ピン
11 架台
12 リニアガイド
12a レール
12b スライダ
13 アングル材
14 ピン
O ブレースの頂点
Claims (2)
- 建物における柱と梁とにより構成される構面内にダンパーを設置して、前記構面に生じる層間変形をブレースおよび接合部材を介して前記ダンパーに伝達して制震効果を得る制震構造であって、
前記ダンパーとして第1のダンパーと第2のダンパーとを上下2段に配置して、前記第1のダンパーおよび前記第2のダンパーをそれぞれ前記接合部材と前記構面との間に介装してなり、
前記ブレースを一対2本のブレース部材をV形ないしΛ形に組み合わせてそれらブレース部材の軸線の交差点を仮想の頂点とするV型ないしΛ形のブレースとして構成して、前記接合部材を前記ブレース部材の交差部に対して一体に接合し、
前記第1のダンパーをその軸線が前記ブレースの頂点を通る状態で前記接合部材に対して接続し、
前記第2のダンパーを前記接合部材に対して前記頂点の位置で鉛直面内において相対回転可能にピン接合するとともに、該第2のダンパーを前記構面に対して面内水平方向にスライド可能かつ鉛直方向に変位不能に支持した状態で、該第2のダンパーを前記接合部材と前記構面との間に介装してなることを特徴とする制震構造。 - 請求項1記載の制震構造であって、
前記第1のダンパーをオイルダンパーとし、前記第2のダンパーを慣性質量ダンパーとして、該第2のダンパーに対して付加ばねを直列にかつ鉛直面内において相対回転可能にピン接続してなることを特徴とする制震構造。
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