本発明は、特に処理チャンバ中において、組成物を1つ又は複数のパルス電界(PEF)による処理にかけるステップを含む方法に関する。
本明細書の目的上、用語「含む」は「等を含む」ことを意味する。用語「含む」は「のみから成る」ことを意味することを意図しない。
組成物は、好ましくはヒトの消費又は動物による消費を対象とする消耗品及び食用組成物である。組成物は経口投与及び/又は消費を対象とする。この点に関して、組成物は食用成分及び/又は物質を含み、及びから好ましくは成る。従って、組成物は、ヒト又は動物への経口投与を対象としていない、又は該経口投与に適していない、任意の有毒な及び/又は健康に悪い物質を好ましくは含まない。本発明の組成物は栄養学的に及び/又は微生物学的に安全であり、特に本発明に基づくPEF処理後に栄養的に及び/又は微生物学的に安全である。
PEF処理にかけられる組成物は、好ましくは液状又は粘性の組成物である。特に、組成物は粘度等の液体の特性を好ましくは有する。従って、組成物は懸濁液、スラリー、溶液等であることができる。組成物は該組成物中に固形物を含むことができ、例えば組成物中に懸濁した及び/又は溶解した固形物を含むことができる。
本発明の前記方法の前に、組成物が、室温(25℃)で測定した場合に10パスカル秒(Pas)未満(<)であり、好ましくは<5Pasであり、更により好ましくは<3Pas、<1Pas、<0.5Pas、<0.3Pasであり、更により好ましくは<0.1Pas、<0.05Pasであり、最も好ましくは<0.01Pasである粘度を有することが好ましい。本発明は乳(0.0017Pas)及びクリームの粘度を包含する0.0001〜0.5Pas、特に0.001〜0.1Pasの粘度で特に有用であることが留意される。(ビール及び麦芽汁、乳、ヨーグルト飲料等用の)温度制御ジャケットを備えていない基本型を用いる会社Rheotest Messgerate Medingen GmbH、Ottendorf−Okrilla、ドイツ)のレオテスト(Rheotest)(登録商標)LK毛細管粘度計を用いて、粘度、特に1〜10’000mPasの範囲の粘度を有する低粘度液体の粘度を測定することができる。様々な粘度範囲をカバーするために様々な毛細管が用いられる。試料体積は約25mlである。
一実施形態によれば、組成物の粘度は、乳及びヨーグルト(0.5〜3Pas)等の乳ベースの製品を包含する0.0005〜3.5Pasの範囲内であり、好ましくは0.001〜3Pasの範囲内である。一実施形態によれば、組成物の粘度は0.001〜1Pasの範囲内である。
一実施形態によれば、組成物は栄養素を含む。そのため、組成物は好ましくは栄養組成物及び/又は食品組成物である。
一実施形態によれば、組成物は1種又は複数の乳成分を含み、それから本質的に成り、又はそれから成る。例えば、組成物は、乳に含まれるビタミン及び別の栄養素に加えて、乳タンパク質、乳脂肪、乳脂肪球膜、乳糖から選択される1つ又は複数を含むことができる。例えば、組成物はカゼイン及び/又はホエータンパク質を含むことができる。ホエータンパク質はスイート又は酸ホエーであることができる。乳成分は粉末化した再構成成分、例えば水で戻る粉ミルクの形態で存在することができる。
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、生乳において天然に存在する生物活性分子を含む。
一実施形態によれば、組成物は乳又は乳の成分を含み、それから本質的に成り、又はそれから成る。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、乳製品及び/又は乳ベースの製品を含み、それから本質的に成り、又はそれから成る。
本発明の方法の前及び/又は後の組成物は、全乳、セミスキムミルク、スキムミルク、初乳、部分脱脂乳、低脂肪乳、無脂肪乳、スイートホエー又は酸ホエー等のホエー(乳清)、乳ベースの飲料、ヨーグルト、フローズンヨーグルト、ヨーグルト飲料、アイスクリーム、クリーム、バター、フレッシュチーズ、凝乳及びチーズ、前述したもののうちのいずれか1つの粉末又は別の乾燥形態、並びに前述したもののうちの2つ以上の組み合わせを含む組成物の群から選択される1つ又は複数を含むことができ、それから本質的に成ることができ、又はそれから成ることができる。
一実施形態によれば、本発明の方法前の組成物は、生乳、全乳、セミスキムミルク、スキムミルク、初乳、部分脱脂乳、低脂肪乳、無脂肪乳、スイートホエー又は酸ホエー等のホエー(乳清)、及び前述したものの組み合わせの群から選択される1つ又は複数を含むことができ、それから本質的に成ることができ、又はそれから成ることができる。
組成物は、全乳、部分脱脂乳、低脂肪乳及び無脂肪乳、及び/又は前述したもののうちのいずれか1つの粉末の群から選択される1つ又は複数を含むことができ、それから本質的に成ることができ、又は成ることができる。全乳は約3〜3.8重量%の乳脂肪分、2〜3重量%の部分脱脂乳、0.5〜2重量%の低脂肪乳、0.5重量%以下の無脂肪乳を一般的に有する。
セミスキムミルクとして、全ての乳脂肪が除去されてその後に所要又は所望の量の乳脂肪が戻されている乳が挙げられる。一般的には、無脂肪乳はスキムミルクであり、部分脱脂乳及び低脂肪乳は一般的にセミスキムミルクである。しかしながら、本発明の目的上、部分脱脂乳、低脂肪乳及び無脂肪乳が全乳の脱脂以外により得られることを除外しない。
一実施形態によれば、組成物は生乳又は生乳の成分を含み、それから本質的に成り、又はそれから成る。例えば、組成物は全脂生乳(whole raw milk)を含む。本明細書の目的上、「生乳」は、ヒト又は動物、特に本明細書の別の箇所で開示したヒト以外の哺乳類の乳腺の分泌により作られる乳であり、乳は40℃を超えて加熱されておらず、又は同等の効果を有する任意の処理を受けていない。生乳が任意の均質化処理にかけられなかった乳であることが好ましい。生乳が任意の加熱低温殺菌及び/又は超高温処理(UHT)にかけられなかった乳であることが好ましい。
生乳及び/又は全乳は約11〜13.5重量%、例えば約12.8重量%の乾燥物質含量を有する。乾燥物質含量から、本明細書の別の箇所で示した量に基づいて乾燥物質当たりの活性分子の量を求めることができる。
本明細書の目的上、生乳は1.030kg/Lの密度を有すると仮定する。本発明に基づくPEF処理の前後の組成物は同じ比重1.030kg/Lを有すると仮定する。この値により、体積当たりの重量(例えばmg/L、μg/L及びng/L等)で示される値から組成物のkg当たりの生物活性分子の量を求めることができる。更に、乾燥組成物、例えば噴霧乾燥組成物、粉末状組成物中の生物活性分子の量を求めることができる(乳において存在する乾燥物質の前記量を参照)。本明細書の目的上、乳成分に基づく又は乳成分を含む噴霧乾燥組成物(例えば噴霧乾燥全乳)は約3重量%の残留水分量を有すると見なす。そのような組成物の水分活性(Aw)は0.2〜0.3であると見なす。
「生乳」が細菌負荷の低減又は組成物の貯蔵安定性の向上を目的とする任意の処理に事前にかけられていなかったことが好ましく、任意の処理として、例えば高圧処理又は精密ろ過から選択される1つ又は複数が挙げられる。
「新鮮な乳」と称されることもある語句「生乳」は、本明細書の目的上、等価であると見なし、及び等価として用いる。
本明細書の目的上、「乳」は、ウシ科の動物(cattle)から得られる乳、例えばウシ、バッファロー、ヒツジ及びヤギの乳等であることができるが、例えばウマ及びラクダから得られる乳であることもできる。本発明はまた、組成物がヒト母乳において天然に存在する生物活性分子を含むことも想定する。本発明に従ってヒト母乳を処理することも可能である。
本発明は、本明細書の別の箇所で述べるように乳において天然に生じるもの等の生物活性分子を含む組成物の処理方法に関する。
本発明の方法は、PEF処理組成物又は第2の組成物と称することもできる本発明の組成物を得るのに適している。本明細書の別の箇所で詳述したように、本発明の組成物は液状若しくは粘性のままであることができ、又は本発明の組成物を例えば乾燥、特に噴霧乾燥等の追加プロセス後に得ることができる。
本発明に基づくPEF処理前の組成物を第1の組成物又は「未処理のコントロール」(組成物)と称することができる。例えば、未処理のコントロールは生乳である。一実施形態によれば、「第1の組成物」は細菌負荷の低減を目的とする任意の加熱処理又は別の処理にかけられていない。「未処理のコントロール」又は第1の組成物中の任意の特異的生物活性分子の量を、組成物中の前記特異的分子の総量(100重量%又はmol%)であると見なす。生物活性タンパク質の場合、前記第1の組成物中の天然タンパク質の量を前記特異的タンパク質の総量(100%)であると好ましくは見なす。
一実施形態によれば、前記PEF処理前の組成物は第1の組成物及び/又は未処理のコントロールであり、前記PEF処理後の前記組成物は第2の組成物及び/又はPEF処理組成物であり、前記PEF処理組成物は、前記未処理のコントロールと比較すると少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の前記生物活性分子を活性型及び/又は天然型で含む。活性型及び/又は天然型での好ましい生物活性分子及び前記分子の好ましい量が本発明の別の箇所で詳述されている。
一実施形態によれば、前記PEF処理前の組成物は第1の組成物及び/又は未処理のコントロールであり、前記PEF処理後の前記組成物は第2の組成物及び/又はPEF処理組成物であり、前記PEF処理組成物は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の特異的タンパク質を天然型で含む。論理的帰結として、組成物は、前記特異的タンパク質の総含有量に対して70%未満、好ましくは60%未満の前記タンパク質を変性した形及び/又は分解した形で好ましくはそれぞれ含む。
一実施形態によれば、本発明の方法は、生乳において存在する可能性がある、細菌、抗酸菌及び酵母等の菌類等の微生物の数を低減することを目的とする。語句「微生物の数を低減する」とは、例えばペトリ皿中において適切な培地で培養することができる微生物の場合にコロニー形成単位(cfu)の低減を一般的に指す。特に、本方法は、好ましくは乳において存在することができるものである増殖性の及び/又は栄養性の微生物の数の低減に適している。従って、本発明は、例えば微生物のライフサイクルにおける有糸分裂及び/又は増殖による栄養成長期である微生物の数の低減に適している。
組成物に存在する微生物の数の低減は、組成物の安定性及び/又は貯蔵安定性を一般的に向上させる。そのため、本発明はまた、組成物の安定性及び/又は組成物の貯蔵安定性の向上方法に関する。
微生物の数の低減として病原性微生物の低減が挙げられ、そのため、本発明はまた、組成物の安全性及び/又は健全性の向上方法に関する。
本発明の方法は、組成物の微生物安全性を確実にすることを目的として細菌負荷及び別の微生物の負荷を低減させるという目的を有する。更に、本発明の方法は、生物活性分子と関連する栄養面での効果を確実にすること又は高めることを目的として、乳において天然に含有される健康によい生物活性分子の活性を維持することを目的とする。そのため、本発明はPET低温殺菌法に更に関し、換言すれば、そのような生物活性分子を少なくともある程度は、好ましくは別の公知の低温殺菌法ほどに大部分を無傷に及び/又は活性にする。
一般的に、用語「低温殺菌」は液状又は粘性食品中の栄養性微生物、特に病原菌を不活性化する様々なプロセスを指すことができる。従って、本発明を低温殺菌のプロセスとして理解することができる。但し、本発明は、特に加熱処理のみにより液状食品中の微生物の数を低減する工業技術方法の1つの状態である「加熱低温殺菌」に関するものではない。
本発明の方法は栄養性微生物、特に病原菌を不活性化するパルス電界(PEF)処理に関し、従って、本発明の方法をPEF低温殺菌と称することもできる。従って、本発明の方法は、液状又は粘性の組成物をPEF処理にかけるステップを含む。
PEF処理において、組成物は処理チャンバ中で一定の継続時間(パルス持続時間)にわたって維持される1つ又は複数の電界に曝される。電界は、本明細書の別の箇所で詳述するように特定の周波数で一般的に繰り返される。PEF処理が微生物を不活性化させることが報告されている。理論に拘束されることを望むものではないが、電界に曝すことにより微生物の膜構造が変化し、更に細孔の形成及び/又は膜の透過性の増加に至ると考えられる。高強度パルスの電界は微生物の不可逆的破壊をもたらすことができる。
組成物は処理チャンバ中でPEFに一般的に曝される。一般的には処理チャンバの一部である又は処置チャンバに隣接する電極によりPEFが生成される。
例えば固定式又は連続式処理チャンバ等の様々な種類の処理チャンバ中でPEF処理を行うことができる。一実施形態によれば、本発明の方法は処理の連続的方法に関する。特に、本発明は食品組成物中の微生物を低減する連続的方法に関する。本明細書の目的上、「連続的方法」はバッチ式プロセスと異なる。「連続的方法」において、組成物は連続してPEF処理に曝される。換言すれば、組成物が前記PEF処理に連続的にかけられる。特に、組成物がPEF処理チャンバに連続的に導かれてPEF処理チャンバから除去される。本発明の連続的方法において、処理する組成物が特定の方向へ連続的に移動し、例えば1つ又は複数の処理チャンバ中を通って連続的に圧送される。
本発明のプロセス全体が連続的であることができ、場合によっては、加熱及び/又は冷却によって組成物の温度を特定の温度に調整すること、及び/又は噴霧乾燥若しくは凍結乾燥の任意のステップを含むことができる。また、PEF処理は連続的であるが、加熱、冷却及び噴霧乾燥等の別のステップがある場合にはそれらを連続的に又はバッチ式の方法で独立して行うことができる。
いくつかの種類の処理チャンバの設計が連続的PEF処理に適しており、チャンバは、電極の配置又は位置、結果として処理チャンバ中の電界強度分布により一般的に区別される。直線状の連続式処理チャンバ、同軸の連続式処理チャンバ及び共線形の連続式処理チャンバがある。
一実施形態によれば、本発明の前記PEF処理は、1つ又は複数の共線形処理チャンバ中で施される。
典型的な共線形処理チャンバの一般的な構造を図1に模式的に示す。この種のチャンバでは、電極は、実質的に中空円柱状である内部管状空間(inner lumen:以下、管状空間を「ルーメン」と称する)を有しており、中空円柱状のルーメンを同様に有する絶縁体により分離されている。そのため、組成物がPEF処理に曝される際に組成物が流れる又は通る管が形成される。図1において、処理チャンバ1は、製品が処理チャンバ1中を通って流れることを示す矢印3で示すように、製品が通る内部ルーメン2を備える。処理チャンバは、図示の場合には正極である中心電極4と、正極電極4の上流及び下流にそれぞれ配置されている接地電極5及び6とを備える。全ての電極が絶縁材8で分離されている。製品と接触する電極4、5、6及び絶縁体8は中空円柱状の内壁を好ましくは有しており、処理チャンバ1の中空円柱状の内部ルーメンを形成する。線7は電界を示す。
一般的には、処理チャンバは2つ以上の電極と2つ以上の電極を分離する絶縁体とを備え、それから実質的に成り、又はそれから成る。共線形処理チャンバは一般的に中空円柱状、中空円錐状及び/又は管状であり、1対の環状、中空円錐状及び/又は管状の電極を備え、電極は、一般的には絶縁体で形成される中空円柱状、中空円錐状及び/又は管状の中心ルーメンの上流及び下流に配置される。
電極は好ましくは金属製であり、ステンレス鋼若しくはチタン、又は不活性である及び/又は食品と接触することが可能である別の材料で好ましくは形成されており、金属の電気化学析出又は溶出等の電極表面での任意の電気化学反応を低減する、又は避けるのに適している。電極材料は、電極で電気分解又は酸化還元反応が一般的には実質的に起きないにように一般的に選択される。
PEF処理される組成物が電極に接触することが留意される。
2つの電極は絶縁材により一般的に分離されている。一般的に、電極間の処理チャンバのルーメンを前記絶縁材で形成することができ、絶縁材はまた、PEF処理中に組成物に好ましくは接触する。換言すれば、電極間には絶縁体を備える間隙が一般的にあり、組成物がPEF処理の電界に曝される際に間隙の中を通って移動する。絶縁体の存在は、一方の電極から始まって逆に帯電した(又は非帯電若しくは帯電が小さい)電極へ延びている、処理チャンバのルーメン中において正確に配向された効果的な電界を維持するのに必要である。
その結果、電界が2つの電極間を延びる。絶縁体を絶縁材で形成することができ、好ましくはセラミック、若しくはポリエチレン、PTFE等のポリマー、又は別の絶縁材等の不活性材料で形成することができる。
電極及び絶縁体を備える処理チャンバは、様々な部品(処理チャンバの電極、絶縁体)に構造的に接続し且つ様々な部品をまとめるために、処理チャンバの別の部品を少なくとも部分的にまとめる又は固定するケージング構造体を備えることができる。ケーシング構造体の少なくとも一部も絶縁材で好ましくは形成されている。
その結果、電極を含む共線形処理チャンバは、PEFによる連続処理に特に適している管状ルーメンを備え、又は形成する。従って、処理チャンバは、好ましくは円形状である製品注入口と、好ましくは円形状である製品排出口とを備える。
本発明に基づくPEF処理が少なくとも1つの、より好ましくは少なくとも2つの処理チャンバを含み、好ましくは更に多くの、例えば3つ、4つ、5つ、6つ以上の処理チャンバを含むことが好ましい。複数の処理チャンバの場合、処理チャンバは好ましくは連続して接続され、そのため、組成物が前記処理チャンバ中を次々と流れ、又は通る。4つの処理チャンバが用いられるのが最も好ましい。
一般的に、1つの処理チャンバは、少なくとも2つの電極、即ち帯電電極及び対電極(対電極は任意選択で帯電することができ、接地することができ、又は帯電電極と同じ電荷を帯びることができるが、より低い程度に、例えば半分(1/2)に帯電した電極であることができる)により特徴付けられる。
例えば電極対、3重電極システム又は4重電極システムである多極電極が可能であり、特に共線形処理チャンバで可能である。3重電極システムの場合、例えば接地−正−接地(図1参照)、接地−負−接地、正−接地−正、負−接地−負、正−1/2(半分)正−正、負−1/2(半分)負−負、1/2負−負−1/2負、1/2正−正−1/2正のように電極を配置することができる。4つの電極システムの場合、2つの独立した電極(例えば2つの正電極)を機械的に接続することができ、又は該電極が機械的に接続されていなくてもよい。機械的に接続されている場合、一般的には電気的結合でもあるが、2つの電極はまだ2つの分離した機械部品であり2つの電極として認識されるであろう。前記に準じて、接地−正−正−接地、接地−負−負−接地、正−接地−接地−正等を3重電極システムで前述したように用いることができる。
前述したような3重電極システム及び4重電極システムの両方において、例えば、電極と各対電極との間に2つの処理チャンバがあるだろう。
語句「上流」及び「下流」は、前記処理チャンバ中を通る及び/又はPEF処理中の組成物の流れを指し、上流は組成物の流れ(又は組成物の流れに逆らう方向)の起源により近い領域を指し、下流は組成物の流れの方向において更に離れた領域を指す。本明細書の目的上、語句「上流」及び「下流」は従来通りに用いられる。
2つの共線形処理チャンバの場合、(例えば、好ましくはほぼ同じ電圧で正又は負に帯電している)中心電極としての2つの帯電電極を組み合わせるのに2つの共線形処理チャンバは一般的に有利であり、2つの対電極が、絶縁体で分離されている中心電極の上流に1つ及び下流に1つ配置されている。逆も可能である(中心の接地又は半帯電した対電極)。
一実施形態によれば、2つの(ほぼ同じ電圧レベルで)正に帯電した電極が、2つの処理チャンバの間に1つ又は2つの対電極が中心的に設けられている2つの連結式処理チャンバの上流及び下流の端部に設けられている。
2つの処理チャンバの場合、このように3つ又は4つの電極が好ましく、その理由は、1つ又は2つの中心電極(単数又は複数)が2つの分離した電極用、即ち上流及び下流の電極用の対電極として機能するからである。
処理チャンバ及び/又は電極の数は、所望のPEF処理及び/又は処理チャンバ中での所望の滞留時間に基づいて選択される。
一実施形態によれば、2つの処理チャンバ中の3つ若しくは4つの電極により、又は4つの処理チャンバ中の6つ若しくは8つの電極によりPEF処理が施される。
本発明の方法についての一実施形態によれば、1つ又は複数の共線形処理チャンバ中でPEF処理が施され、若しくは行われ、及び/又は前記処理チャンバが内側若しくは内部要素を好ましくは備える。内側要素は好ましくは不活性であり且つ導電性ではない。内側又は内部要素が、PEF処理で生成された電界に影響を与えないこと、若しくは該電界を阻害しないこと、又は該電界に実質的に影響を与えないこと、若しくは該電界を実質的に阻害しないことが好ましい。内側要素がPE、PTFE又はセラミック材料等の絶縁材で形成されていることが好ましい。内側要素が内側に、換言すれば処理チャンバのルーメン内に配置されることから内側要素は内側要素と称される。従って、内側要素は処理チャンバ中を通る組成物に接触し、組成物の流れ、特に組成物の流れの方向及び流れの種類に影響を与える。
内側又は内部要素を剛性の及び分離不能の要素の形態で設けることができ、内側又は内部要素は、処理チャンバの1つ又は複数の別の構造要素と、例えば複数の電極を分離する及び/又は電極間に処理チャンバの内壁を設ける絶縁体と1つの部品を形成することができる。
また、内側要素が挿入部の形態で設けられる独立した部品であり、挿入部を処理チャンバ中に配置すること及び例えば洗浄目的で処理チャンバを分解する際に処理チャンバから取り外すことができることが好ましい。内側要素が独立した部品である場合、内側要素を挿入部の形態で設けることができ、挿入部は処理チャンバ中に挿入することができる構造要素であり、挿入部は使用(PEF処理)中に処理チャンバ内の特定の位置を占める。
驚いたことに、処理チャンバ中で内側要素を使用することが、流れのパターンに影響を与えることに及び/又は処理チャンバ中で組成物が曝される電界の不均一性を低減する若しくは防止することに適していることが見出されている。不均一な電界は、組成物の温度に敏感な成分を損なう可能性がある温度ピークを生じるかもしれないことが留意される。例えば、局所的な温度ピークが、組成物の物理的特性及び化学的特性の変化をもたらす特定のタンパク質の変性につながる可能性がある。そのため、好ましくは処理チャンバ内において、内側要素は組成物の温度ピークを好ましくは低減する。
層流を低減すること及び処理チャンバ中の液体又は組成物の混濁を増加させることに内側要素が適しているとも考えられる。このようにして、同質の及び/又は規則的な処理及び/又はPEF処理中での電界への同質の及び/又は規則的な暴露の確率が改善される。層流には流速等の差異が伴われることから処理チャンバ内の層流特性は好ましくないと考えられることが留意される。
特定の実施形態によれば、実質的に中空円柱状又は中空円錐状のルーメンを有する1つ又は複数の処理チャンバ中で前記PEF処理が施され、前記処理チャンバは内側要素を備え、前記内側要素は縦長の、及び円柱状又は円錐状の部分を備え、並びに前記挿入部は前記処理チャンバの前記中空ルーメンの空間を占める。
一実施形態によれば、ルーメンを有する1つ又は複数の処理チャンバ中で前記PEF処理が施され、前記組成物は前記処理チャンバの前記ルーメン中を通って連続的に導かれ、及び/又は前記ルーメン中に内側要素が設けられており、その結果、前記処理チャンバ中において前記組成物が前記内部要素の周囲で導かれる。
一実施形態によれば、注入口及び排出口を有する1つ又は複数の処理チャンバ中で前記PEF処理が施され、前記組成物は前記チャンバの注入口内へ連続的に挿入され、及び前記排出口を通って前記処理チャンバから連続的に除去され、並びに1つ又は複数の前記処理チャンバは内側要素を備え、前記内部要素は前記チャンバ中に設置され、そのため製品は前記チャンバの一部において内壁に近接して導かれ、及び/又は前記内側要素は前記組成物が前記チャンバの一部分内又は一部内で軸方向の位置を占めることを防ぐ。
従って、内部要素は、中空円柱状の電極及び絶縁体の内壁と円柱状の内部要素の外壁とによって規定される、環状又は管状の開口又は空間に沿って組成物を好ましくは流させる。この状態は、1つの電極が処理チャンバの内側に設けられている同軸型処理チャンバの状態を連想させることができたが、本発明の内側要素は、内側要素が電極ではなく処理チャンバ内の製品の流れに影響を与えるだけであるという点で同軸型処理チャンバと異なる。
一実施形態によれば、内側要素を備える1つ又は複数の処理チャンバ中で前記PEF処理が施され、前記内側要素は、前記組成物中に存在する乱流の数を増加させること及び/又は前記処理チャンバ内での前記組成物の層流を低減することに適している。
内側要素は縦長構造を好ましくは有し、及び/又は円錐部若しくは円柱部を好ましくは備える。
内側要素が独立した部品(挿入部)である場合、内部要素は、処理チャンバ中に内側要素を安定化させる固着構造体を好ましくは更に備える。固着構造体は処理チャンバの外側に事実上生じることができるが、処理チャンバ内で挿入部を固定させて堅固に位置決めさせる。
挿入部は、処理チャンバの中空円柱状又は中空円錐状のルーメン中の軸方向の位置の少なくとも一部を好ましくは占める。挿入部が縦長であり且つ軸を有し、挿入部が処理チャンバ内の軸方向の空間の軸及び/又は一部を占めることが好ましい。処理チャンバの中空円柱状又は中空円錐状のルーメンと同軸であるように縦長の挿入部が置かれることが好ましい。
挿入部が第1及び第2の端部、並びに前記第1の端部と第2の端部との間の中間部を備えることが好ましい。前記第1及び第2の端部の少なくとも一方が、処理チャンバ中での挿入部の取り付けを補助する固着構造体を備えることが好ましい。第1及び第2の端部のうちの一方のみが前記固着構造体を備える場合、他方の端部は単に平面であることができ、又は好ましくは半分だけ丸みを帯びた若しくは先の尖った端部であることができる。例えば、一方の端部が半球の形状又は外形を実質的に有することができる。
内側要素の前記端部の間の実質的に縦長の部分は、好ましくは円柱状及び/又は円錐状であり、及び/又は様々な円錐部分の組み合わせ若しくは円錐部分と円柱部分との組み合わせを備えることができる。全体として、中心の中間部は処理チャンバの内部ルーメンの直径よりも小さい直径を有し、そのため内側要素を前記処理チャンバのルーメン中に配置することができる。
固着部は、半径方向に、特に中間部の一端部(上流端部又は後端部)から半径方向に延びており且つ処理チャンバ又は導管の内壁面にいくつかの位置で接触する部分を好ましくは備えており、導管内の組成物が処理チャンバに導かれ若しくは処理チャンバから除去される。例えば、内側要素は、処理チャンバの上流又は下流の先端方向に設けられた当接面に当接する突起又は突出部を備えることができる。
内部要素は、魚雷の全体像を有することができる。挿入部の形態で内部要素を含む好ましい処理チャンバの設計は、2011年1月27日に出願された国際出願PCT/EP2011/051149の国際特許出願に開示されている。共線形処理チャンバ中でのそのような挿入部の使用により、微生物負荷の低減及び組成物の生物活性成分の維持に関して最良の結果がもたらされた。
処理チャンバの中空円柱状の内部ルーメンの内径が5〜35mmであり、好ましくは6〜30mmであり、より好ましくは7〜25mmであり、最も好ましくは9〜20mm、9〜17mm、9〜15mm又は9〜13mmであり、例えば9.5〜11mmであることが好ましい。
処理チャンバの内部ルーメンが中空円柱状でない場合、例えば、処理チャンバが非円形の断面、例えば楕円形の断面を有する場合、前述の直径の値は処理チャンバ中の任意の特定の位置で見られる最大直径に当てはまる。処理チャンバ中の複数の直径が(例えば中空円錐状の処理チャンバルーメンの場合ように)長手方向又は軸方向に変化するように配置されている場合、前述の値及び範囲は、処理チャンバの任意のある位置で見ることができる値を指す。本明細書の目的上、この直径が処理チャンバのルーメン全体に適用されることが必須ではないが好ましい。処理チャンバの内部ルーメンが実質的に又は全体的に中空円柱状であり、そのため実質的に処理チャンバの全長にわたって処理チャンバの断面が処理チャンバの円形の内径を示すことが好ましい。
本明細書の目的上、処理チャンバは、1対の電極の間に電界が見られる空間全体を包含する。
処理チャンバの内部ルーメンの直径に関する前述の値及び範囲は、内側要素/構造、又は本明細書の別の箇所で定義したように処理チャンバ内に設けられた剛性構造要素の存在の影響を決して受けないが、内側及び/又は剛性要素は、処理チャンバのルーメン全体を処理チャンバ内の製品の流れ又は組成物の流れで占めることができないという効果を有する。内側要素が処理チャンバ内の容積の一部を占めるという事実は、直径についての前記値で考慮されない。
本明細書の文脈において、本発明の方法についての値、例えばプロセスパラメータを範囲で示すことができる。本明細書における範囲の表示は、特定のパラメータ(例えばチャンバの内径、比エネルギー、電界強度、パルス長等)が各範囲の示された端点の値のうちのいずれかをとることができること、又は範囲内にある任意の値をとることができることを意味する。必ずしも全ての場合においてではないが一般的に、パラメータは範囲の実質的に一体の値をとる。どのような場合に値が一定であるか及びどのような場合に値が変動することができるかを当業者は理解するであろう。例えば、処理チャンバの内部ルーメンの直径の場合、この直径は構造的に一般的に不変である構成要素に関するものであることから、そのような直径は処理チャンバ中の特定の位置では一定のままである。パラメータの値が変動する場合には、そのような変動は大部分が実質的に、示した範囲内のままであることが好ましい。
本発明の方法において、電界のパルスは電極で生成され、前記処理チャンバ内を電界が延びる。
当業者は処理チャンバ中にパルス電界を生成する方法を知っている。一般的に、電源、1つ又は複数のコンデンサ、1つ又は複数のトランジスタ(例えばIGBT−絶縁ゲート双極性トランジスタ)及び少なくとも1つの変圧器(例えばDILハイボルテージトランスフォマーエルクラック(DIL High Voltage Transformer Elcrack)(登録商標))を備える、高エネルギー電気パルスの製造システムが好ましい。一実施形態によれば、本発明のPEF処理用システムは、PEF処理前後の組成物の温度を調整するのに適した1つ又は複数の冷却器及び/又は1つ又は複数の加熱器を備える。基本的に、高出力率を出すことができるように電源によってコンデンサに電気エネルギーを蓄えることによりパルスが生成される。トランジスタ又は別の半導体スイッチは、エネルギーを周期的に放出し且つエネルギーを処理チャンバに移すために用いられる。最大出力電流及び電圧並びに極性は、パルス変調器の設定により典型的には規定される。
一般的に、PEFシステムを冷却する必要があり、この冷却は例えばオイルポンプによりシステムの循環を通って圧送されるオイルにより行うことができる。
本発明の方法において、液状及び/又は粘性組成物が1つ又は複数の処理チャンバ中を通って圧送される。組成物が逆圧に抵抗して圧送されることが好ましい。気泡の発生のリスクを低減するため及び/又は組成物の均一な流れを維持するために逆圧は好ましい。逆圧は、好ましくは1.1〜4barであり、より好ましくは1.3〜3barであり、更により好ましくは1.5〜2.5であり、例えば1.7〜2.3barであり、最も好ましくは1.8〜2.2barである。一実施形態によれば、逆圧は1.5〜3barである。逆圧が実質的に一定の値を有することが好ましい。
図2は、本発明の方法に用いることができるパルス変圧器を備えるPEFシステムを示す。
本発明の方法の目的に貢献することができるプロセス因子又はパラメータは、印加される電界の強度、パルス持続時間、比エネルギー、パルスの数、パルスの種類又は形状、パルス極性、PEF処理の前、間及び/又は後の組成物の温度、並びにパルス周波数から選択される1つ又は複数である。
本発明は、これらのプロセスパラメータのうちの1つ又は複数を特定の値に調整することにより本発明の目的が達成されるという驚くべき発見に基づいている。特に、微生物負荷を大幅に減少させることができると同時に組成物中に存在する生物活性分子、特にタンパク質の相当な量又は割合をそのまま保つことができる。
本発明の方法に関連するプロセスパラメータは、次の式1で示す比エネルギー(Ws又はW
比)である。
式1において、W
パルスは1パルスの電界により印加される比エネルギー(kJ、キロジュール)であり、fはパルスの周波数(秒
−1)であり、m(上に点を有するm)は質量移動(kg/秒)である。W
比の単位はkJ/kgであり、エネルギーは電界により印加されるエネルギーであり、質量はエネルギーが印加される組成物の質量である。
一般的に、もたらされるエネルギーを2つの方法、即ち(a)U(t)×(It)dt(Uは電圧であり、Iは電流であり、tは時間である)の計算により。多重パルスの場合、n×パルス幅が時間である、及び/又は(b)E(t)2×kdtの計算(Eは電界強度であり、kは導電率であり、tは時間である)の計算により求めることができる。式1から明らかになるように、比エネルギーの投入量(kJ/l又はkJ/kg)を算出するために、もたらされるエネルギーを体積流量又は質量流量で割る必要があるだろう。
本発明に従って、本発明の方法で印加される比エネルギー(W比)は、本発明の組成物のkg当たり好ましくは800kJ以下であり、好ましくは700kJ/kg以下、600kJ/kg以下、550kJ/kg以下、500kJ/kg以下、450kJ/kg以下、400kJ/kg以下、350kJ/kg以下、350kJ/kg以下、350kJ/kg以下、300kJ/kg以下、350kJ/kg以下、340kJ/kg以下、330kJ/kg以下、320kJ/kg以下、310kJ/kg以下、300kJ/kg以下、290kJ/kg以下、280kJ/kg以下、270kJ/kg以下、260kJ/kg以下、又は250kJ/kg以下である。
比エネルギーが100kJ/kg以上、120kJ/kg以上、160kJ/kg以上、180kJ/kg以上、200kJ/kg以上、210kJ/kg以上、又は220kJ/kg以上であることが好ましい。
従って、比エネルギーは、前記量で求められる任意の範囲内であることができるが、比エネルギーが150〜350kJ/kg、180kJ/kg、及び320kJ/kgであり、好ましくは200〜300kJ/kgであり、より好ましくは220〜280kJ/kgであり、更により好ましくは240〜260kJ/kgであり、例えば約250kJ/kgであることが好ましい。
各パルスの比エネルギーは次の式2で示される。
式2において、tは処理時間(秒、s)であり、Uは電極での電圧(V)であり、Iは電流(A)であり、τはパルス持続時間である。
PEF処理における別のパラメータは、kV/cmで求めることができ且つ処理チャンバ中の組成物に作用する電界の強度のことである電界強度である。電界強度は、非導電性材料で分離された2つの任意の電極の間の距離(d)で間隔を空けて分離されている2つの任意の電極に関する電位差(U)として定義される(Zhang他,J.Food Ing.25(1995)261〜81)。
本発明の一実施形態によれば、5〜40kV/cm、例えば6〜30kV/cm、好ましくは7〜25kV/cm、例えば8〜20kV/cm、より好ましくは9〜15kV/cm、例えば9.5〜14.5kV/cm、最も好ましくは10〜14kV/cm、特に11〜13kV/cm、例えば約12kV/cmの電界強度を有する電界に前記組成物が曝される。一実施形態によれば、前記PEF処理において、10〜15kV/cmの電界強度を有する電界に前記組成物が曝される。別の実施形態によれば、電界強度は<17、<16、<15であり、好ましくは<14であり、最も好ましくは<13kV/cmである。電界強度は好ましくは>10、>11であり、より好ましくは>12kV/cmであり、最も好ましくは12〜13kV/cmである。
語句「臨界電界強度」は微生物の不活性化を達成するのに必要な電界強度のことであるが留意される。微生物を不活性化するために、1Vを超える膜内外電位差を一般的に誘起しなくてはならない。従って、臨界電界強度は細胞型、即ち微生物の形、微生物細胞の寸法、及び微生物の細胞壁の種類に一般的に依存する。
より長いパルス持続時間によって微生物の不活性化を達成するための電界強度が比較的低くなることからパルス持続時間は臨界電界強度のパラメータに影響を与えることが留意される。
本発明の一実施形態によれば、前記PEF処理におけるパルス持続時間は10μ秒以上であり、好ましくは15μ秒以上が適用される。
本発明の一実施形態によれば、パルス長又はパルス持続時間は40μ秒以下であり、35μ秒以下であり、30μ秒以下であり、27μ秒以下であり、25μ秒以下であり、24μ秒以下であり、40μ秒以下であり、好ましくは15μ秒以上が適用される。
本発明の一実施形態によれば、パルス長又はパルス持続時間は5〜35μ秒であり、例えば10μ秒〜30μ秒であり、好ましくは12μ秒〜28μ秒であり、例えば14〜26μ秒であり、より好ましくは16〜24μ秒であり、例えば17〜23μ秒であり、最も好ましくは18〜22μ秒であり、例えば19〜21μ秒であり、例えば約20μ秒である。
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、組成物中に存在する生物活性成分の活性を保持しつつ組成物中に存在する可能性がある微生物の不活性化をもたらすという点において著しい、本発明の目的のために用いられる比エネルギー、電界強度、及びパルス持続時間により、本発明の有利な効果を少なくとも部分的に説明することができると考える。
一実施形態によれば、本発明のPEF処理において、前記比エネルギー(W比)、電界強度、及びパルス持続時間はそれぞれ100〜400kJ/kg、6〜30kV/cm及び10μ秒〜30μ秒であり、好ましくはそれぞれ150〜350kJ/kg、7〜25kV/cm及び12μ秒〜28μ秒であり、より好ましくはそれぞれ180〜320kJ/kg、8〜20kVkV/cm及び14〜26μ秒であり、更により好ましくはそれぞれ200〜300kJ/kg、9.5〜14.5kV/cm及び17〜23μ秒であり、最も好ましくはそれぞれ220及び280kJ/kg、11〜13kV/cm及び18〜22μ秒である。
前記式1から推定することができるように、例えばパルス周波数を変えることにより、組成物の流量又は質量移動に応じてW比の値を調整することができることが留意される。
一実施形態によれば、周波数(f)は50〜1000Hzであり、例えば約100hzである。
パルス特性に関して、電気パルスが異なる種類及び極性であることができることが留意される。パルスは、指数関数的に減衰する型、矩形波型、及び振動性減衰パルスであることができる。好ましい実施形態によれば、本発明に係るPEF処理のパルスは、パルスにより(又はパルス長中に)加えられる電圧がパルス持続時間全体にわたって実質的に一定のままであることを特徴とする矩形波パルスである。
更に、パルスは両極性又は単極性であることができる。単極性パルスの場合、一方の特定の極性の電荷のみ(例えば正電荷のみ)が印加される。好ましい実施形態によれば、本発明のPEF処理において、両極性電気パルスが印加され、そのため正極性のパルス及び負極性のパルスが交互に印加される。両極性矩形波パルスが印加されることが最も好ましい。
理論に拘束されることを望むものではないが、組成物中に存在する可能性がある微生物の細胞膜上又は細胞膜中に誘起されると考えられる付加応力のために両極性パルスの印加がより効果的であると仮定される。更に、両極性パルスの印加により、電極表面での塩の析出のリスク又は発生、及び結果として生じるチャンバ内の電界の均一性への悪影響が最小化される。
本発明の方法についての好ましい実施形態によれば、前記PEF処理において、矩形波の電気パルス及び/又は双極性パルスが印加される。
本発明の方法にかけられる前、特にPEF処理にかけられる前の組成物の温度は特定の値に好ましくは調整される。PEF処理によって印加されるエネルギーに起因して組成物の温度が一般的に上昇することが留意される。組成物又はより一般的には媒質はPEF処理の結果として一般的に加熱され、そのためPEF処理の終了時の組成物の温度はPEF処理前の温度よりも一般的に高い。以下で及び本明細書の別の箇所で更に詳細に論じるように、組成物の温度はPEF処理直前に好ましくは調整される。
組成物の温度は、微生物の不活性化及び生物活性分子の活性の両方に対して一般的に影響を与える。加熱低温殺菌プロセスにおいて、乳が曝される高温は、例えば乳の生物活性成分の生物活性の喪失の原因となる。一方、本明細書の文脈中のPEF処理に関しては、組成物の開始温度を選択することができ、そのため例えば乳において天然に存在する生物活性分子の生物活性が加熱低温殺菌プロセスの場合に比べて高い程度に保たれつつPEF処理による微生物の不活性化が最適される。本発明に基づくPEF処理を「加熱低温殺菌」プロセスとは見なさないが、印加されたエネルギーに起因してPEF処理の過程で組成物の温度が僅かに上昇することが留意される。特定の実験と文献(本明細書では示さない)をベースとする数学的演繹とに基づいて、発明者らは、本発明の方法ではPEF処理の高強度電気パルスに起因して微生物の不活性化が主要部分になることを示すことができた。プロセスパラメータに応じて、>80%、特に>90%、>95%、>97%、更に>99%のcfuの減少は高強度電気パルスに起因するものであり、主要でない部分(例えば約<20%、更に<10%等)が熱による不活性化に起因するだけである。本明細書の文脈の中で、電気パルスによる不活性化を最大化し且つ熱による不活性化を最小化するプロセスパラメータが好ましい。
本発明の方法において、組成物は開始温度及び終了温度を有することができる。組成物の開始温度はPEF処理直前の、特に最初の処理チャンバに入る前の組成物の温度として一般的に定義される。終了温度はPEF処理の終了時の温度、特に最後の処理チャンバから出る際の組成物の温度である。終了温度はまた、PEF処理中に組成物がとる最高温度に一般的に相当し、その理由は、PEF処理自体が組成物の温度の上昇のみをもたらして低下をもたらさないからである。連続したPEF処理チャンバの場合、又は複数対の処理チャンバでも、中間温度、例えば2つの連続した処理チャンバ又は複数対の処理チャンバの間の温度を区別することもできる。
興味深いことに、組成物の開始温度は微生物の不活性化に影響を与える。理論に拘束されることを望むものではないが、微生物の膜が高温でより流動性になっていると仮定される。低温では膜は一般的に結晶質であり、このことは、PEF処理による不活性化率がより低いことを説明することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、より高い開始温度の好ましい効果はこのようにしてリン脂質二重層の構造を変化させることに一般的に起因する。
本発明は、実質的な微生物の不活性化を得ることを可能にする開始温度があるという発見に少なくとも部分的に基づいており、それにより、組成物のこの開始温度は、組成物中に存在する所望の生物活性分子の不活性化を伴わない温度である。
組成物の開始温度が20〜45℃であり、好ましくは24〜36℃であり、例えば25〜35℃であり、より好ましくは26〜34℃、27〜33℃、28〜32℃、29〜31℃であり、好ましくは約30℃であることが好ましい。開始温度は、PEF処理の最初の処理チャンバに入る前の組成物の温度である。適切な加熱システムを用いて、例えば加熱タンク中で、又は熱交換器、例えばプレート式熱交換器を用いる等の連続的方法で温度を調整することができる。組成物の温度調整をバッチ式で、又は連続して行うことができる。
本明細書の別の箇所で述べたように、PEF処理はPEF処理組成物の温度を僅かに上昇させる。PEF処理に起因する温度の僅かな上昇にもかかわらず、組成物の温度が、加熱低温殺菌プロセスで用いられる温度よりも好ましくは大幅に低いままであることが留意される。このため、生物活性分子の活性を相当な程度で保つことができる。
PEF処理後の、例えば最後の処理チャンバを出た後の組成物の終了温度が64℃以下であり、好ましくは63℃以下であり、より好ましくは62℃以下であり、最も好ましくは61℃以下であり、より好ましくは更に低く、例えば60℃、59℃、58℃、57℃、56℃、55℃、54℃、53℃、50℃以下であるPEF処理が好ましい。これらの温度はまた、本明細書に開示したように制御することができる、PEF処理全体中の組成物の最高温度にも相当することが好ましい。
例えば処理チャンバの設計、比エネルギー、パルスエネルギー、電界強度、その他等のPEF処理のパラメータを選択することにより終了温度を調整することができる。例えば、本明細書の別の箇所で論じたように内側要素を含む共線形処理チャンバの使用により、そのような内側要素が存在しない場合のプロセスと比較すると低い終了温度が意外にももたらされる。理論に拘束されることを望むものではないが、前記内側要素は、組成物が曝される電界の均一性を向上させ、そのためPEF処理に起因する温度上昇を最小化すると仮定される。
一実施形態によれば、本発明の方法は、最終的に冷却して、特に冷蔵して組成物を最終的に安定化させるステップを含むことができる。冷蔵は、不活性化されていない可能性がある微生物の成長を阻害し、又は組成物中に存在する可能性がある微生物の胞子に由来する成長を阻害する。最終の冷蔵は、0〜10℃、1〜8℃、2〜7℃、3〜6℃、例えば約3.5〜5℃の温度になることができる。加熱低温殺菌製品を含む低温殺菌製品が低温殺菌の終了時に冷却を一般的に必要とすることが留意される。従って、PEF処理の終了時の冷却は、本発明の方法についての特定の実施形態である。
一実施形態によれば、本発明の方法は、組成物を乾燥するステップ、好ましくは組成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥するステップを含む。前述したように組成物を最初に冷却することができ、又はPEF処理後に直接的に乾燥させることができる。例えば、従来のように組成物を噴霧乾燥にかけることができるが、好ましくは低温で噴霧乾燥にかけることができる。必要に応じて、追加の乾燥物質(マルトデキストリン又は別の炭水化物、タンパク質等)を(噴霧)乾燥前に組成物に添加することができる。噴霧乾燥用の噴霧乾燥塔に組成物を導くことができる。興味深いことに、(噴霧)乾燥プロセスは、特に低温が用いられる場合には、組成物中に存在する生物活性分子の不活性化又は変性を必ずしももたらすわけではない。例えば、欧州特許第0818529号に開示されている噴霧乾燥プロセスを用いることができ、又は該噴霧乾燥プロセスはこの特許文献中で参照された文献内であることができる。欧州特許第0818529号で引用された文献は、噴霧乾燥プロセスにおいて100〜180℃の範囲又は更に60〜165℃と低い範囲で入ってくる空気の温度を開示する。米国特許第5,116,953号において、噴霧乾燥したラクトフェリン粉末を得るためのラクトフェリン水溶液の噴霧乾燥が開示されており(例えば140℃の入口空気温度)、噴霧乾燥ラクトフェリンはラクトフェリンの鉄結合活性を保持した。
従って、PEF処理後に、組成物を冷却すること及び/又は乾燥すること、例えば噴霧乾燥することができる。
本発明の方法は、少なくとも4logであり、好ましくは少なくとも4.5logであり、より好ましくは少なくとも5logであり、更により好ましくは少なくとも5.5logであり、最も好ましくは6log以上である、組成物中の微生物数(cfu)の減少を好ましくはもたらす。これらの値は、組成物中に存在する微生物の複数の種のうちのいずれか1つに適用され、全ての種により好ましくは適用される。これらの値が、乳において見出す可能性がある病原性微生物に適用されることがより好ましい。
一実施形態において、本発明の方法により得られるPEF処理組成物は、任意の検出可能な栄養性微生物を含有しない。
本発明はまた、本発明の方法により得られる組成物に関する。
従って、本発明の組成物は、特に本発明の方法に係る処理後の組成物は、液状又は乾燥組成物であることができる。
組成物は、生乳において天然に存在する生物活性分子を好ましくは含む。組成物は生乳自体若しくはその画分を含むことができ、又は生物活性分子を生乳から単離及び/又は分離して組成物に添加し、本発明の方法及び/又は本発明に基づくPEF処理にかけられる組成物を得ることができる。本発明の処理にかけられる組成物を得るために、生物活性分子を含む、乳画分又は単離した乳成分を別の組成物に添加することによって生物活性分子を添加することができる。本発明はまた、乳の画分又は成分がそのままで本発明の方法にかけられる可能性も包含する。本発明に従って、追加の成分、例えばフレーバー、甘味料、繊維、機能性食品等が一般的に添加される、生乳、生乳の画分、例えばスキムミルク、セミスキムミルク又はホエーを組成物が含むことも包含される。この場合、組成物は乳成分及び追加の成分を含み、追加の成分は乳において生じず、又は同じ量で生じない。
代替実施形態によれば、組成物は、本明細書に開示したもの等の乳又は乳画分、好ましくは全乳及び脂肪の含有量を低減した(部分脱脂、低脂肪、無脂肪)乳、ホエー並びに乳タンパク質から選択されるものを実質的にベースとしており、並びに任意の別の微量栄養素及び/又は主要栄養素を実質的に含まない。
代替実施形態によれば、組成物は、本明細書に開示したもの等の乳又は乳画分、好ましくは前記段落で述べたものを実質的にベースとしており、組成物は、追加のフレーバー及び/又は甘味料を含むことができるが、乳において天然に生じる任意の別の生物活性分子を好ましくは実質的に含まず、及び/又は乳において天然に生じる任意の別の生物活性タンパク質を実質的に含まない。
本明細書の目的上、「実質的に含まない」は≦5%を、好ましくは≦3%を、より好ましくは≦1%を、更により好ましくは≦0.5%を、最も好ましくは完全に含まないことを意味しており、割合は組成物の乾燥物質の重量の百分率として示される。
本明細書の目的上、生物活性分子がその本来の機能を発揮することができる場合には、生物活性分子はまだ活性である。生物活性タンパク質に関して、生物活性タンパク質が変性している場合には、生物活性タンパク質は一般的にもはや活性ではない。本明細書の目的上、タンパク質がその天然型、即ち未変性型で存在する場合、タンパク質は「生物活性」であると見なす。
一実施形態によれば、組成物は1種又は複数のタンパク質若しくはペプチドを天然型で含む。本発明の目的上、「タンパク質」は約9個以上、好ましくは約25個以上、最も好ましくは約40個以上のアミノ酸の配列を含むポリペプチドである。一般的に、タンパク質の生物学的機能を発揮することが可能であるように、タンパク質は1つ又は複数の特異的立体配座に折り畳まれる。一般的に、例えば、抗体が特異的である抗原に抗体が結合することがまだ可能である場合、抗体は活性である。酵素がその酵素反応を触媒することができる場合、酵素は活性である。タンパク質が、その結合能力及び好ましくはレセプタを活性化させる能力を保有する場合、レセプタに結合することができるタンパク質は一般的に活性である。天然タンパク質に対して特異的である抗体を用いることにより、タンパク質が変性している(活性ではない)かどうかを一般的に評価することができる。
一般的に、抗体は、変性した不活性のタンパク質に結合せず、又は親和性が大幅に低下した状態で変性タンパク質に結合する。
本明細書の目的上、語句「活性分子」は生物活性分子を指す。「生物活性分子」の代わりに、用語「生物活性物質(a bioactive)」(複数形「生物活性物質(bioactives)」)を用いることができ、本明細書において等価であると見なす。
本発明の目的上、組成物に特異的タンパク質、例えば抗体を添加し、本発明の方法に基づく処理後に、組成物中の抗体の抗原に結合する能力を確認することにより、生物活性分子の活性の保持への本発明の方法の適性を試験することができる。結合能力を、抗体が同じ量で添加された、組成物についての未処理のコントロール中に存在する抗体の結合能力と比較することができる。
タンパク質がその天然型で存在しているかどうかを評価するために、以下の実施例で説明するELISAが好ましくは用いられる。それに応じて、天然タンパク質(該タンパク質は抗体であることもできる)に特異的に結合する複数対の抗体が用いられる。例えば、PEF処理の前(未処理のコントロール)及び後の組成物中におけるELISA検出可能な生物活性分子の量を比較することにより、PEF処理後にどれくらいのタンパク質が完全性を保持しているかを求めることができ、この保持された完全性は、ELISAで用いられる、タンパク質特異的な抗体による保存された結合によって検出される。
より一般的には、本発明の組成物又はコントロール組成物における生物活性分子の量を、生物活性の測定用の認められた方法を用いて求めることができ、認められている方法として、HPLC、細胞ベース分析、酵素ベース分析、ELISA分析、フローサイトメトリー分析(ELISAの認められた代替になりつつある)、放射免疫分析、及び動物モデルを用いるインビボ分析が挙げられるがそれらに限定されない。
例えば、天然ラクトフェリンの量の評価用の認められた方法として、クロマトグラフ法(Palmano他、Journal of Chromatography、947、307〜311、2002)、ELISAを含む免疫学的技法(Desmazeaud,Bulletin of International Dairy Federation 第284巻、Lactoferrin(29〜42ページ)1993)及びバイオセンサ免疫分析(Indyk他、International Dairy Journal、15(5)、:429〜438、2005)が挙げられるがそれらに限定されない。ラクトフェリン、免疫グロブリン、成長因子及び別のタンパク質の完全性を、以下の実施例で説明したように測定することができる。
カゼイングリコマクロペプチド(CGMP又はグリコマクロペプチドGMPと称することもできる)が(キモシンの作用による)レンネット介在型カゼイン凝固ステップ(rennet mediated casein coagulation step)を介してカッパーカゼインから放出される。CGMPはスイートホエー又はチーズホエーとして知られているホエー画分中に見出される。CGMPを回収して陰イオン交換により定量化することができる。CGMPは骨の健康促進物質である。
変性した及び/又は天然型の特異的タンパク質の量を含む、本発明に基づく特異的タンパク質の総量、絶対量を求める好ましい方法が更に以下で開示されている。
本明細書中で言及した生物活性分子を、天然タンパク質、生物活性脂質、シアル酸、ヌクレオチド、オリゴ糖、アミノ酸、タウリン及びビタミンから独立して選択することができる。
前記生物活性分子が、例えば乳において天然に存在する1種又は複数のタンパク質、乳において天然に存在する1種又は複数の脂質、乳において天然に存在する1種又は複数のビタミン、シアル酸、ヌクレオチド、オリゴ糖、アミノ酸及びタウリンから成る群のうちの1つ又は複数から独立して選択されることが好ましい。
本発明によれば、本発明の組成物はタンパク質をベースとする乳の生物活性物質(protein−based milk bioactives)を含む。同時に、本発明の方法は、温度に敏感であるもの等の別の生物活性分子の活性に好ましくは影響を与えず、特に部分的に又は完全に低下させない。特に、本発明の組成物は、乳において天然に生じる活性ビタミンを含む。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記1種又は複数の生物活性分子は生物活性タンパク質から選択される。前記タンパク質は、抗微生物因子、免疫グロブリン、成長因子、サイトカイン及び/又は前/抗炎症性因子、ケモカイン、消化酵素を含む酵素、タンパク質ホルモン、トランスポーター、グリコマクロペプチド、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、乳脂肪球膜のタンパク質、並びに前述したもののうちの2つ以上の組み合わせから好ましくは選択され、各タンパク質の少なくとも30%が天然型である。
本明細書の別の箇所で述べたように、この天然タンパク質が相対量又は絶対量でPEF処理組成物中に存在することが好ましい。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、免疫グロブリン、ラクトフェリン、リゾチーム、β−デフェンシン等の抗微生物ペプチド、補体C3及び前述したもののうちの2つ以上の組み合わせから成る群から選択することができる天然抗微生物因子を含む。
免疫ブロブリンは、天然型のIgA、IgE、IgG及びIgM、並びにそれらのうちの2つ以上の組み合わせから選択される1つ又は複数を含むことができる。この免疫グロブリンはウシの乳において生じることが報告されている。免疫グロブリンはIgDを更に含むことができる。免疫グロブリンがIgA及びIgGであることが好ましい。
いくつかの免疫グロブリンは様々なサブタイプを有する。本発明の組成物は、乳において天然に生じる任意の免疫グロブリンの1つのサブタイプ、いくつかのサブタイプの組み合わせ、又は全てのサブタイプを含むことができる。IgAのサブタイプはIgA1及び/又はIgA2である。IgGのサブタイプはIgG1サブタイプ、IgG2aサブタイプ、IgG2bサブタイプ、IgG2cサブタイプ、IgG3サブタイプ、IgG4サブタイプである。組成物は、IgA、IgG及び場合によって別のIgGのうちの1つのサブタイプ、2つ以上のサブタイプの組み合わせ、又は全てのサブタイプを含むことができ、特に天然型で含むことができる。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、例えば表皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、インスリン様成長因子(IGF)、形質転換成長因子(TGF)、ウシ初乳成長因子(BCGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、成長ホルモン(GH)、乳房由来成長因子(MDFG)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)及び前述したもののうちの2つ以上の組み合わせから選択することができる成長因子を天然型で含む。
TGFとして特にTGF−βが挙げられる。例えば、本発明の組成物は天然TGF−β1及び/又はTGF−β2を含む。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、腫瘍壊死因子(TNF)、IL−1、−2、−4、−5、−6、−8、−10等のインターロイキン(IL)、インターフェロン(INF)−γ、TGF、α1−アンチトリプシン、α1−アンチキモトリプシン、プロスタグランジン、血小板活性化因子、単球走化性タンパク質(MCP)−1、RANTES(発現した及び分泌した正常なT細胞の活性化での調整)及び前述したもののうちの2つ以上の組み合わせから選択することができるもの等の、サイトカイン、ケモカインを天然型で含み、及び/又は前/抗炎症性因子を天然型で含む。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、天然酵素、例えばアミラーゼ、胆汁酸刺激エステラーゼ、胆汁酸刺激リパーゼ、リポタンパク質リパーゼ、プラスミン等のプロテアーゼの群から選択されるもの等の活性消化酵素、又はアルカリホスファターゼ、ラクトペルオキシダーゼ、リゾチームから選択されるもの等の活性非消化酵素、及び前述したもののうちの2つ以上の組み合わせを含む。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、活性/天然ホルモン、例えばインスリン、プロラクチン、オキシトシン、泌乳のフィードバック阻害因子(FIL)、甲状腺ホルモン、ステロイドホルモン、コルチコステロイド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ボンベシン、コレシストキニン、エストロゲン、ガストリン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、テストステロン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、血管活性腸管ペプチド(VIP)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン及び前述したもののうちの2つ以上の組み合わせの群から選択されるものを含む。組成物がタンパク質ベースの1種又は複数のホルモンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、活性トランスポータータンパク質、例えばラクトフェリン、葉酸塩バインダ、IGFバインダ、コバラミンバインダ、チロキシンバインダ、コルチコステロイドバインダ、ビタミンバインダ及び前述したもののうちの2つ以上の組み合わせの群から選択されるものを含む。
好適な実施形態によれば、組成物は、天然免疫グロブリン、天然ラクトフェリン、天然β−ラクトグロブリン、天然α−ラクトアルブミン及び天然TGF−βから選択される1つ又は複数の天然タンパク質を含む。
一実施形態によれば、本発明の組成物は活性ビタミンを含む。特に、組成物のPEF処理が乳において天然に生じるビタミンのいくつかに、ほとんどに、又は全てに与える影響は小さい。そのため、本発明の組成物は水溶性及び/又は脂溶性のビタミンを含む。組成物は、ビタミンA、D、E、K、B1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6(ピリドキシン)、B7(ビオチン)、B9(葉酸塩)、B12(コバラミン)及びC(L−アスコルビン酸塩)の群(包括的でないリスト)から選択される1つ又は複数のビタミンを好ましくは含む。組成物が乳において天然に存在する水溶性ビタミンを含み、水溶性ビタミンがビタミンA及びEを除く前記のものであることが好ましい。
前述したビタミンは、吸着することができヒトの代謝に利用することができるようなビタミンの全ての形態を含む。ビタミンEへの言及はα−トコフェロール及びγ−トコフェロールを含み、及びから好ましくは成り、ビタミンCへの言及はアスコルビン酸及びデヒドロアスコルビン酸を含み、ビタミンAはレチノール当量(RE)を指す。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、乳において天然に生じる生物活性タンパク質のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する少なくとも1種のタンパク質を含み、前記タンパク質の少なくとも30%が天然型で存在する。特異的な生物活性タンパク質に関して本明細書の別の箇所で示した好ましい量及び割合も本実施形態に適用される。
変性タンパク質は、生乳において生じるような折り畳みタンパク質本来の生物活性を一般的にもはや有していないことが留意される。変性タンパク質は未変性で活性のタンパク質と同じアミノ酸配列をまだ有しているが、活性タンパク質に特異的である抗体は、変性した不活性タンパク質と一般的に結合せず、又は親和性が大幅に低下した状態で一般的に結合している。そのため、タンパク質は、例えば加熱低温殺菌した組成物中にまだ存在することができるが、タンパク質はもはや天然/活性ではない。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、前記組成物中の特異的タンパク質の総量と比較して30%以上、好ましくは40%、より好ましくは50%以上、特に60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くの特異的タンパク質を天然型で含む。
本明細書の目的上、割合はモル百分率又は重量百分率に当てはまり、その理由は、割合は任意の分子量の特異的タンパク質を指すからである。本明細書の別の箇所で明示した方法により割合を求めることができる。
組成物中の変性した及び/又は分解した、並びに天然のタンパク質を含む、任意の特異的タンパク質の総量又は絶対量を分析によって求めることができる。本発明に従って用いられる好ましい方法は、液体クロマトグラフィー高分解能選択反応モニタリング質量分析(LC−HSRM−MS)に基づく。この方法は、B.Y.Fong及びC.S.Norris”Quantification of Milk Fat Globule Membrane Proteins Using Selected Reaction Monitoring Mass Spectrometry”J.Agric.Food Chem.2009、57、6021〜6028で乳脂肪球膜タンパク質用に開示されている。プロテアーゼを用いて形成することができる特異的切断ペプチド配列を同定し、その後、質量分析によりこのペプチドを定量化して特異的タンパク質の総量を測定する/算出することにより、この方法を任意のタンパク質に適合させることができる。
そのため、ELISAにより天然タンパク質を定量化し、LC−HSRM−MSを用いて全てのタンパク質を定量化することにより、任意の組成物中に天然型で存在する任意の特異的タンパク質(例えばラクトフェリン)の割合を求めることができる。
従って、試料中の特異的タンパク質の量を求めるのにELISA及びLC−HSRM−MSを両方とも用いることができるが、ELISAは天然型のタンパク質の定量化にのみ適している。そのため、組成物の試料が任意の変性タンパク質を含有しない場合(例えば未処理の生乳)、両方の方法では良好に一致する同じ結果が生じる。
各タンパク質を天然型のみで含有する試料に基づいて一方の方法(例えばELISA)を他方(例えばLC−HSRM−MS)に統一することもできる。このことは、変性タンパク質も含有する試料中の天然タンパク質の量を求める際に許容誤差を小さくする役立つことができる。
本明細書の目的上、本明細書に示した割合は≦15%、好ましくは≦10%、より好ましくは≦5%、更により好ましくは≦3%、最も好ましくは≦2%の許容誤差を含むことができる。用語「約」及び/又は「実質的」は、別途定義しない限り、及び任意の特定の値を指している場合を除き、各値の±15%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±3%、最も好ましくは±2%を意味することを意図する。
本明細書の目的上、語句「特異的タンパク質」は、任意のアミノ酸配列のタンパク質、又はほぼ同一の配列及び類似の機能を有するタンパク質の群に属するタンパク質を指す。例えば、試料又は組成物に含有される全てのIgAは一般的に特異的タンパク質と見なされるが、同様にIgAの任意の特異的サブタイプについてのIgAの総和を特異的タンパク質と見なすことができる。語句「特異的タンパク質」は本明細書に包含される方法により一単位として又は実体として定量化可能であるタンパク質を指すことが好ましい。このことを説明するために、試料中に存在する全ての天然IgAを定量化すべくELISAが好ましくは用いられる。一方で、任意のタンパク質ファミリーのサブタイプ、例えばIgAのサブタイプを同定することができる、より特異的なELISA試験がある。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、本明細書の別の箇所で示した1種又は複数のサブタイプを含む活性IgAを含む。組成物が、組成物中のIgAの総量と比較すると30%以上、好ましくは35%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのIgAを活性型で含むことが好ましい。
IgA又は任意の別の特異的タンパク質(例えばIgG、ラクトフェリン等)の「総量」は、組成物又は試料中に存在する天然IgAと変性IgAとの合計を意味する。
未処理の生乳についての特定の試料におけるIgAの濃度が135μg/mLであることが分かった。本発明の組成物は、135μg/mLというほぼ前記割合の量で天然IgAを好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物は、本明細書の別の箇所で示した1種又は複数のサブタイプを含む天然IgGを含む。組成物が、組成物中のIgGの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのIgGを天然型で含むことが好ましい。
生乳についての特定の試料におけるIgGの濃度が約860μg/mLであることが分かった。本発明の組成物は、860μg/mLというほぼ前記割合の量でIgGを好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物は天然IgEを含む。組成物が、組成物中のIgEの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのIgEを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然IgMを含む。組成物が、組成物中のIgMの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのIgMを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然ラクトフェリンを好ましくは含む。ラクトフェリンは抗微生物性、抗酸化性、抗発癌性及び抗炎症性を有する。組成物が、組成物中のラクトフェリンの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、70%、75%、77%、80%、82%、85%、90%、95%又はより多くのラクトフェリンを天然型で含むことが好ましい。一実施形態によれば、組成物はラクトフェリンを含み、前記組成物中のラクトフェリンの総量の少なくとも75%は天然型で存在する。
未処理の生乳についての特定の試料におけるラクトフェリンの濃度が約150〜200mg/Lであることが分かった。本発明の組成物は、150mg/Lという前記割合の量で天然ラクトフェリンを好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物は天然リゾチームを含む。組成物が、組成物中のリゾチームの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのリゾチームを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然EGFを含む。組成物が、組成物中のEGFの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又より多くのEGFを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然NGFを含む。組成物が、組成物中のNGFの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのNGFを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然IGFを含む。組成物が、組成物中のIGFの総量と比較すると約30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのIGFを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然TGFを含む。組成物が、組成物中のTGFの総量、特にTGF−β1及び/又はTGF−βの総量と比較すると約30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのTGF、特にTGF−β1及び/又はTGF−β2を天然型で含むことが好ましい。
未処理の生乳についての特定の試料におけるTGF−β1の濃度が約0.35ng/mLであることが分かった。本発明の組成物は、0.35ng/mLというほぼ前記割合の量で天然TGF−β1を好ましくは含む。
未処理の生乳についての特定の試料におけるTGF−β2の濃度が約40ng/mLであることが分かった。本発明の組成物は、40ng/mLというほぼ前記割合の量で天然TGF−β2を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物は天然インターロイキンを含む。組成物が、組成物中のインターロイキンの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのインターロイキンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然INF−γを含む。組成物が、組成物中のINF−γの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのINF−γを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然α1−アンチトリプシンを含む。組成物が、組成物中のα1−アンチトリプシンの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのα1−アンチトリプシンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然アミラーゼを含む。組成物が、組成物中のアミラーゼの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのアミラーゼを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然の胆汁酸刺激エステラーゼを含む。組成物が、組成物中の胆汁酸刺激エステラーゼの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くの胆汁酸刺激エステラーゼを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然の胆汁酸刺激リパーゼを含む。組成物が、組成物中の胆汁酸刺激リパーゼの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くの胆汁酸刺激リパーゼを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然リポタンパク質リパーゼを含む。組成物が、組成物中のリポタンパク質リパーゼの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのリポタンパク質リパーゼを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然プロラクチンを含む。組成物が、組成物中のプロラクチンの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのプロラクチンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然オキシトシンを含む。組成物が、組成物中のオキシトシンの総量と比較すると30%以上、好ましくは50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のオキシトシンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然の葉酸塩バインダを含む。組成物が、組成物中の葉酸塩バインダの総量と比較すると50%以上、好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くの葉酸塩バインダを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然IGFバインダを含む。組成物が、組成物中のIGFバインダの総量と比較すると50%以上、好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのIGFバインダを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然α−ラクトアルブミンを含む。組成物が、組成物中のα−ラクトアルブミンの総量と比較すると50%以上、好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのα−ラクトアルブミンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は天然β−ラクトアルブリンを含む。組成物が、組成物中のβ−ラクトアルブリンの総量と比較すると50%以上、好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより多くのβ−ラクトアルブリンを天然型で含むことが好ましい。
一実施形態によれば、組成物は、天然ラクトフェリン、天然IgA、天然IgG、天然TGF−β1、天然TGF−β2及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数を含む。
一実施形態によれば、本発明のPEF処理組成物は、組成物中の各タンパク質の総量に対して、少なくとも50%のラクトフェリン、少なくとも30%のIgA、少なくとも50%のIgG、少なくとも50%のTGF−β1及び少なくとも50%の天然型のTGF−β2に相当する量でラクトフェリン、IgA、IgG、TGF−β1及びTGF−β2を天然型で含む。
組成物が、少なくとも60%、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上の天然ラクトフェリン、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、56%以上の天然IgA、60%以上、65%以上、70%以上、77%以上、80%以上の天然IgG、55%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上の天然TGF−β1、及び/又は60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上の天然TGF−β2を含むこと好ましく、前記割合は組成物中の各タンパク質の総量を指す。
一実施形態によれば、PEF処理組成物は、少なくとも38mg/Lの天然ラクトフェリン、少なくとも40.5μg/mLのIgA、少なくとも434μg/mLのIgG、少なくとも0.19ng/mLの天然TGF−β1及び少なくとも20.7ng/mLの天然TGF−β2から選択される1つ又は複数を含む。
一実施形態によれば、PEF処理組成物は、少なくとも50mg/Lの天然ラクトフェリン、少なくとも60μg/mLのIgA、少なくとも600μg/mLのIgG、少なくとも0.25ng/mLの天然TGF−β1及び少なくとも30ng/mLの天然TGF−β2から選択される1つ又は複数を含む。
一実施形態によれば、PEF処理組成物は、少なくとも60mg/Lの天然ラクトフェリン、少なくとも70μg/mLのIgA、少なくとも700μg/mLのIgG、少なくとも0.30ng/mLの天然TGF−β1及び少なくとも35ng/mLの天然TGF−β2から選択される1つ又は複数を含む。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、A、D、E、K、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12及びCの群から選択される、より多くの生物活性ビタミンを含む。
一実施形態によれば、本発明の組成物はビタミンAを含む。ビタミンAは一般的に、加熱低温殺菌により完全に分解される。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンAを活性型で含むことが好ましい。
未処理の生乳についての試料において、kg当たり(生乳のkg当たり)300μgのビタミンAがあった。本発明の組成物は、特に組成物が全乳である場合、前記割合に相当する全乳中のビタミンAの少なくとも絶対量を好ましくは含む。換言すれば、組成物は、組成物のkg当たり150μg(50%)以上、180μg(60%)以上、210μg(70%)以上、240μg(80%)以上、255μg(85%)以上、270μg(90%)又は285μg(95%)以上のビタミンAを含む。
一実施形態によれば、組成物はビタミンKを含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上のビタミンKを活性型で含むことが好ましい。全乳において、kg当たり約45μgのビタミンKがあった。本発明の組成物は、特に組成物が全乳である場合、(ビタミンAに関して説明したように)前記割合に相当する全乳中のビタミンKの少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はビタミンDを含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上のビタミンDを活性型で含むことが好ましい。全乳がkg当たり約10μgのビタミンDを含むことが分かった。本発明の組成物は、特に組成物が全乳である場合、前記割合に相当する全乳中のビタミンDの少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はビタミンEを含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上のビタミンEを活性型で含むことが好ましい。
ビタミンK、D及びEが温度に対してより安定であることから、本発明の組成物中のビタミンK、D及びEの濃度の変化は加熱低温殺菌と比較して小さい。
全乳において存在する水溶性ビタミンの量は、セミスキムミルク、スキムミルク、部分脱脂乳、低脂肪乳又は無脂肪乳において存在する量と実質的に一致し、その理由は、水溶性ビタミンは全乳の無脂肪画分中に実質的に存在するからである。
一実施形態によれば、組成物はB1(チアミン)を含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB1を活性型で含むことが好ましい。
未処理の全脂生乳についての試料において、kg当たり約400μgのビタミンB1を検出した。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳で見られるビタミンB1の少なくとも絶対量を好ましくは含む。換言すれば、本発明の組成物は、250μg(50%)以上、300μg(60%)以上等のビタミンB1を含む。
一実施形態によれば、組成物はB2(リボフラビン)を含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB2を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳がkg当たり約1600μgのビタミンB2を有することが分かった。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳で見られるビタミンB2の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はB3(ナイアシン)を含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB3を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳がkg当たり約800μgのビタミンB3を有することが分かった。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳で見られるビタミンB3の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はB5(ピリドキシン)を含む。組成物が、未処理のコントールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB5を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳はkg当たり約3000μgのビタミンB6を含む。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳で見られるビタミンB5の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はB6(ピリドキシン)を含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB6を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳がkg当たり約400μgのビタミンB6を含有することが分かった。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳で見られるビタミンB6の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はB7(ビオチン)を含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB7を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳がkg当たり約20μgのビタミンB7を含有することが分かった。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳で見られるビタミンB6の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はB9(葉酸塩)を含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB9を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳がkg当たり約50μgのビタミンB9を含有することが分かった。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳中のビタミンB9の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はB12(コバラミン)を含む。組成物が、未処理のコントールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンB9を活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳はkg当たり約4μgのビタミンB12を含む。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳中で見られるビタミンB12の少なくとも絶対量を好ましくは含む。
一実施形態によれば、組成物はビタミンCを含む。組成物が、未処理のコントロールと比較して50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%以上のビタミンCを活性型で含むことが好ましい。未処理の全乳がkg当たり約10mgのビタミンCを含有することが分かった。本発明の組成物は、前記割合に相当する全乳において見られるビタミンCの少なくとも絶対量を好ましくは含む。
いくつかのビタミン、特にビタミンA、B1、B6、B9、B12、C及びチアミンのうちの1つ又は複数は熱に敏感である。一般的に、例えばビタミンA、B1、B6、B9、B12、C及びチアミンの少なくとも10%は、例えば、標準的なUHT処理の過程での、例えば乳又は生乳の破壊に起因してそれらの活性を失う。ビタミンAはUHT又は加熱低温殺菌に対して特に敏感であり、ビタミンAの100%以下がUHT又は加熱低温殺菌のプロセスで失われる。
そのため、本発明の組成物は、これらのビタミン(A、B1、B6、B9、B12、C)のうちの1つ又は複数を未処理のコントールと比較すると少なくとも30%含み、未処理のコントールと比較すると好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、より好ましくは少なくとも96%、97%及び98%含む。前記値をビタミンAに適用しなくてもよく、特に、組成物が無脂肪であり、又は組成物の脂肪含有量が低減している場合には適用しなくてもよい。
標準的な加熱低温殺菌の過程において、ビタミンA、B12、C及びチアミンのうちの1つ又は複数は例えば破壊に起因してそれらの活性を少なくとも部分的に失う。一般的に、加熱低温殺菌により、ビタミンA、B12、C及びチアミンの少なくとも10%が減少する。本発明の組成物は、ビタミンA、B12、C及びチアミンのうちの1つ又は複数を未処理のコントロールと比較すると少なくとも30%含み、未処理のコントールと比較すると好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、より好ましくは少なくとも96%、97%及び98%含む。
組成物が乳、例えば生乳である場合、特に未処理のコントロールが乳、例えば生乳である場合、未処理の生乳における各分子に関する本明細書に記載の絶対量に基づいて、ビタミン及び別の生物活性分子の割合を、組成物中の分子の絶対量を求めるのに用いることができる。
一実施形態によれば、たとえ組成物が乳又は生乳ではないが本明細書に記載の1種又は複数の生物活性分子を含むとしても、組成物は、本明細書に示された又は本明細書から導き出される絶対量で前記分子を好ましくは含む。絶対量を、特に生乳で見られる分子の量及び/又は本明細書に示した活性/天然分子の割合から導き出すことができる。
本発明の組成物は、組成物のグラム当たり105cfu未満である生微生物数を好ましくは有する。許容可能であると考えられる微生物負荷又は逸脱することができない微生物負荷に関して、「Verordnung uber Hygiene− und Qualitatsanforderungen an Milch und Erzeugnisse auf Milchbasis (Milchverordnung)」、vom 20.Juli 2000、Bundesgesetzblatt Jahrgang 2000 Teil I Nr.26、S.1178 vom Juli 2000、zuletzt geandert durch Bundesgesetzblatt Jahrgang 2004 Teil I Nr.58、S.2794 vom12.11月2004年も参照される。特に「Anlage6」、特に低温殺菌乳に対する要件に関する章3.1.1.参照。
組成物が本発明に基づくPEF処理の2、4、6、8、10、12、14、16日以上後に組成物のグラム当たり105cfu未満であるcfu数を有することが好ましい。これらの時間間隔中、組成物は4℃に保たれる。生菌数はペトリ皿上における30℃でのインキュベーション及びコロニー形成単位の計数により求められる。
組成物が本発明の基づくPEF処理の2、4、6、8、10、12、14、16日以上後に組成物のグラム当たり5×104cfu未満であるcfu数を有することが好ましい。これらの時間間隔中、組成物は4℃に保たれる。
組成物が本発明に基づくPEF処理の2、4、6、8、10、12、14、16日以上後に組成物のグラム当たり104cfu未満であるcfu数を有することが好ましい。これらの時間間隔中、組成物は4℃に保たれる。
組成物が本発明に基づくPEF処理の2、4、6、8、10、12、14、16日以上後に組成物のグラム当たり5×103cfu未満であるcfu数を有することが好ましい。これらの時間間隔中、組成物は4℃に保たれる。
一実施形態によれば、本発明の組成物は、加熱低温殺菌で処理された別の比較組成物の貯蔵安定性としての安定性と実質的に一致する貯蔵安定性及び/又は安定性を有する。特に、4℃に保たれた場合の数日間における組成物の貯蔵安定性は、加熱低温殺菌した比較組成物の貯蔵安定性と実質的に同じである。
本明細書の目的上、組成物が、組成物のg当たり105cfu未満、好ましくは5×104cfu未満、更により好ましくは5×104cfu未満、例えば104cfu未満、最も好ましくは5×103cfu未満の微生物数(cfu)を有する場合に、組成物は「栄養学的に安全」及び/又は「微生物学的に安全」であると見なす。栄養学的に及び/又は微生物学的に安全であるために、本発明に基づくPEF処理後に組成物が4℃で保存される場合、この微生物数は、少なくとも4日、好ましくは少なくも6、8、10、最も好ましくは10日の期間にわたって、示した値を好ましくは超えない。4℃で10日にわたる保存後に、微生物数が104cfu/gを超えない場合に組成物が栄養学的に安全であることが好ましい。
特に25mlの試料中において、組成物が任意の検出可能な栄養性の病原性微生物を含有しない場合に組成物が微生物学的に安全であることが最も好ましい(前記「Milchverordnung」参照)。一実施形態によれば、組成物は任意の検出可能な病原性の栄養性微生物を含有しない。
本発明の組成物の導電率は2〜10mS/cmであり、好ましくは2.5〜7.0ms/cmであり、より好ましくは3〜5mS/cmであり、例えば3.5〜4.5mS/cmであり、最も好ましくは3.7〜4.3mS/cmであり、例えば約4mS/cmである。
本明細書に包含される生物活性分子の有益な特性は文献に多く報告されている。例えば、ラクトフェリンは抗酸化性、抗発癌性及び抗炎症性を有する。例えば、IgA及びIgG等の抗体は、ウイルス又は細菌等の病原体に対する受動感染防御をもたらす。例えば、TGF−βは幼児における成長及び適切な免疫応答の維持に不可欠であり、アレルギーの発生又は慢性の炎症性疾患等の有害な免疫学的転帰に対する防御を提供することができる。例えば、ビタミンは触媒として作用し、従って様々な身体プロセスに不可欠である。例えば、成長因子は細胞成長、増殖及び細胞分化を刺激することによって様々な細胞プロセスを調節するのに重要である。例えば、サイトカイン、ケモカイン及び前/抗炎症性因子は、効率的な免疫にとって不可欠の免疫調節物質である。例えば、消化酵素は、新生児が乳を最適に消化するのに不可欠である。例えば、ホルモンは、生物全体にわたって1つの細胞から別のものへ信号を送るメッセンジャーであり、そのために免疫、代謝、身体の発育及び生物の周囲の環境への応答に影響を与える。例えば、トランスポータータンパク質は、上皮による主要栄養素又は微量栄養素の吸収に役立つ。
前記のうちのいずれか1つ若しくは複数に関係する若しくは相当する任意の疾患若しくは状態の治療及び/又は予防に本発明の組成物を用いることができ、又は前述した生物学的活性のうちのいずれか1つ若しくは複数に基づく健康促進に本発明の組成物を用いることができる。本発明はまた、必要とする個体に効果的な及び/又は十分な量の本発明の組成物を投与するステップを含む治療方法に関する。
以下の実施例は、本発明の範囲に属するいくつかの製品及びその製造方法を説明する。実施例は本発明を決して限定するものではない。本発明に関して変更又は修正を行うことができる。この実施例において、様々な用途のために本発明の栄養素及び別の成分を合理的に調整すべく広範囲の配合物、成分、処理及び混合物をカバーするための多様なバリエーションを当業者は認識するであろう。
実施例1:PEFシステム
図2に示すように、電源11(DILパワーサプライエルクラック(DIL Power Supply ELCRACK)(登録商標)HVP5)、コンデンサ12、トランジスタ13(IGBT絶縁ゲート双極性トランジスタ)及び変圧器14(DILハイボルテージトランスフォマーエルクラック(登録商標)HVP5)を備えるPEFシステム10を構築した。電源11は、コンデンサを充電するために中間電圧レベルで交流を直流に変換することができる。トランジスタ13はコンデンサを周期的に放電させ、最大出力電流を規定するパルス電流を生成することができる。複数のトランジスタを利用して、装置により正又は負のパルスの放出が可能になる。正パルスを放出するために、斜めに配置された配線における2つのトランジスタ13のスイッチが入る。パルス変圧器により、ピーク電流を低下させつつ放電パルスの電圧レベルが高められる。装置により、処理チャンバ1において24kVの最大電圧及び200Aの最大電流が可能になる。両極性パルスを得るために、各パルス後に極性が変化する。そのため、2つ目のパルス毎に、斜めに配置されたトランジスタのスイッチが入るであろう。
システムは4つの処理チャンバ、特に2対の処理チャンバを備えた。1対の共線形処理チャンバを図4に見ることができ、4は帯電電極への電力の供給部であり、6及び5は、図1の略図に従って中心電極の上流及び下流にそれぞれ位置する接地ストラップを示す。図5は、処理チャンバ1の構造をより詳細に示す。チタン製の電極4及び6、並びに処理チャンバを機能単位としてまとめるためにクランプ9で固定することができる、絶縁材料製のケーシング構造体、カバー又は筐体16を見ることができる。これにより、例えば洗浄目的でクランプ9を取り外すことによって処理チャンバを分解することができる。処理チャンバ1の底部に、図6でより詳細に見ることができることができる挿入要素30の上流の端部を見ることができる。
図6は、同じ構成要素を参照する図5に用いた参照番号により共線形処理チャンバ1の詳細を示す。2つのOリング17が2つの電極4,6と絶縁コネクタ8との間を密閉する。また、魚雷を連想させる形を有する内側要素30を示すことができ、内側要素30は処理チャンバ内の軸方向の中心の位置を占めており、「Vorrichtung und Verfahren zur Hochspannungsimpulsbehandlung im Ringspalt」という表題の国際出願PCT/EP2011/051149及び独国特許出願第102010001279.3号に開示されているように、処理チャンバの内壁近くに液体を移動させることにより層流を低減する。図6の共線形処理チャンバは10mmの直径を有する。図6に見られるように、ケーシング16は、クランプ9により一体に保持される2つの分離した絶縁片から成る。クランプ9を緩めることにより、処理チャンバの全ての個片を互いに分離することができる。処理チャンバのルーメン2中において、絶縁コネクタ8により2つの電極4,6の接続及び分離が行われている。
試験した別の処理チャンバの設計として、図6の共線形処理チャンバのような共線形処理チャンバであるが、「魚雷型」挿入部を備えておらず、7mmのより小さい直径を有する共線形処理チャンバが挙げられる。また、いわゆる電界集中設計の処理チャンバを用いた(図示せず)。
実施例2:生乳のPEF処理
全ての実験に関して、ドイツ、Quakenbruck近郊の農場主から生乳を得た。生乳を二重壁タンク22(図3)内に充填し、加熱器23で制御する加熱槽を用いて20℃、25℃又は30℃の所望の温度に加熱した。実験用に、図1に記載のPEFシステムを用いた。2barの逆圧に抵抗して生乳の流量を30L/時に調整し、パルス持続時間を20μ秒で一定に保った。パルス周波数(前記式1参照)を設定することにより比エネルギーを変化させた。50Hzの周波数で試験を開始し、PEFシステムの最大能力まで周波数を段階的に上げた。
図3は、本発明の方法を行うのに適しており、本実施例に用いた設備20全体を示す。PEFシステム10は、前記実施例1で説明したエルクラックHVP5システムである。製品は、製品経路24を通って矢印で示した方向に流れる。2つの処理チャンバ1の下流に排出口25が設けられている。PEF処理システム10の下流に冷却器26が設けられており、これにより保存温度を例えば4℃に下げることができる。
PEF処理に起因する温度上昇を温度センサ(テスト735(test735)、Testo AG Sales、Lenzkirch、ドイツ)で測定した。
実施例3:PEF処理による微生物不活性化
大腸菌(Escherichia coli、ATCC35218)及びリステリア・イノキュア(Listeria innocua、DSM20649)の異なるグラム電荷特性(gram charge properties)を有する2つの微生物菌株を試験のために選択した。
37℃で24時間にわたり振とうしつつ、200mLのトリプトンソーヤブロス(Tryptone Soja Broth)(CM、Oxoid limited、Hampshire、イギリス)中で大腸菌を培養した。増菌後、予熱した乳及び実施例2で説明したPEF処理に微生物の懸濁液を添加した。
試験した試料を選択寒天(フルロカルトMacコンキーアガー(Flurocult MacCONKEY agar)、Merck、Darmstadt、ドイツ)上で広げた。37℃での24時間にわたるインキュベーション後、生乳のグラム当たりのコロニー形成単位(cfu/g)を計数した。
37℃で24時間にわたり、200mLのワンブイヨンベイシス(One Bouillon Basis)(CM1066B;Oxoid Limited;Hampshire;イギリス)中でグラム陽性のL.イノキュアを培養した。接種及び処理後、試料をマキシマムリカバリーディルーエントソルーション(Maximum Recovery Diluent solution)(CM0733;Oxoid Limited;Hampshire;イギリス)で希釈し、パルカムアガーベイシス(Palcam Agar Basis)(CM0877B;Oxoid Limited;Hampshire;イギリス)上で広げた。グラム当たりのコロニー形成単位の計数前に、接種したペトリ皿を37℃で48時間にわたり保存した。
貯蔵安定性試験のために、全生菌数を分析した。そのため、生乳に任意の微生物を接種しなかった。冷却した試料(4℃)をマキシマムリカバリーディルーエント(Maximum Recovery Diluent)(CM0733、Oxoid Limited、Hampshire;イギリス)で希釈し、プレートカウントアガー(Plate Count Agar)(CM0463B、Oxoid Limited、Hampshire、イギリス)上で広げた。30℃で3日間保存した後、グラム当たりのコロニー形成単位(cfu/g)における全生菌数を測定することができた。
結果を図7〜10に示すことができる。図7A及び7Bは、印加された比エネルギーに応じた大腸菌及びL.イノキュアの微生物不活性化への生乳の開始温度の効果をそれぞれ比較する。図7A及びBに関して、10mmの直径であり、挿入部を備えていない共線形処理チャンバを用いた。不活性化をlog(N/N0)で示し、N及びN0はそれぞれ処理の後及び前の微生物数(cfu/g)である。生乳の開始温度は不活性化の程度又は効率に影響を与えており、30℃の開始温度が最も顕著な微生物不活性化をもたらすことが分かる。その結果、全ての更なる実験に関して、生乳の開始温度を30℃に設定した。
図8は、生乳の開始温度が30℃であり、10mmの直径及び魚雷型の挿入部の2つの共線形処理チャンバ(図4及び6)を用いた、比エネルギーに応じた大腸菌及びL.イノキュアの不活性化を示す。244kg/kJの比エネルギーでの縦線は、244kg/kJの比エネルギーで微生物が検出限界未満に不活性化されることを示す。更なる実施例から分かるように、244kg/kJの比エネルギーで相当量の生物活性タンパク質が天然のままである。
図9A及び9Bは、比エネルギーに応じた大腸菌及びL.イノキュアの微生物不活性化への処理チャンバの設計の効果をそれぞれ比較する。内側要素を備える共線形処理チャンバが最も効果的な不活性化をもたらしたことが分かる。換言すれば、内側要素を備える共線形処理チャンバでは、任意の不活性化を達成するために必要なエネルギー投入量が最低であった。最大の不活性化は5.5logの低減である。グラフにおける−5.5logでの横線は、横線の下では生菌数がもはや検出されないことを意味する検出限界を示す。
図10A及び10Bは、PEF処理後の乳の終了温度に応じた(それぞれ大腸菌及びL.イノキュアの)微生物不活性化の効果を示す。温度上昇は、印加された比エネルギーの増加に起因する。処理チャンバの設計の終了温度に対する影響が明確に明らかになる。結果は、終了温度が、印加された比エネルギーに依存するだけでなく処理チャンバの設計にも依存することを示しており、有意な不活性化を得るのにより低い終了温度で十分であることができることを示す。電界集中型処理チャンバが最も高い終了温度をもたらすことが、本発明はこの種の処理チャンバを好ましくは用いない理由である。一方、内側要素を備える共線形処理チャンバを用いた場合に最も低い終了温度を測定した。
表1は、挿入部の形態で内部要素を用いる共線形処理チャンバ中におけるPEF処理の終了温度を比エネルギーとともに以下に示す。
NはPEF処理後の細胞数(cfu)であり、N0は処理前の細胞数であることが留意される。分かるように、本発明に基づくPEF処理は5log以上の微生物不活性化を達成する。
実施例2〜3で行った試験に基づいて、PEF処理に関する最も有利な条件を確立した。処理チャンバの設計、印加された比エネルギー及び開始温度がPEF処理の結果に影響を与えることが分かる。
これらの結果に基づいて、10mm及び「魚雷型」挿入部の共線形処理チャンバを用い、開始温度を一般的に30℃に設定し、パルス持続時間を20μ秒とし、電界強度12kV/cm、及び2barの逆圧に抵抗して生乳の流量を30kg/時とした。これらは好ましいPEF処理パラメータである。
実施例3:生乳のpH値、導電率及び色彩へのPEF処理の効果
生乳のpH値(6.9)は、70〜373kJ/kgの範囲の比エネルギーにわたってPEF処理の影響を受けなかった。生乳の導電率(3.9)は、約309〜310kJ/kgの比エネルギーまでPEF処理により変化しなかった。高い比エネルギーでは、導電率の減少を観測した(344kJ/kgで約3.75及び373kJ/kgで3.25)。
L*因子(明るさ/暗さ)を測定する実験は、約250〜350kJ/kgの範囲である比エネルギーでのPEF処理に起因する生乳の色彩変化が知覚できないことを明らかにする。
実施例4:生乳中の生物活性物質へのPEF処理の影響
4.1 材料及び方法
ELISA試験キットを用いて、生乳中の5つの生物活性物質を分析した。ELISAリーダー(ELISA reader)(EL800、Bio−Tek Instruments;Winooski;アメリカ)及びソフトウェアKCジュニア(Software KCjunior)(KCjunior;Bio−Tek Instruments;Winooski;アメリカ)を用いて結果を得た。
PEF処理後、試料を凍結した(凍結は活性タンパク質の含有量への影響を示さなかった)。分析前、10分にわたり4℃及び10000U/分(10621×g)で試料を遠心分離した。脂肪の大部分を含有する上清を廃棄し、液相を更なる研究に用いた。使用説明書に従ってELISA分析を行った。
Bethyl Laboratories(ラクトフェリンELISAクオンティテイションセット(Lactoferrin ELISA Quantitation Set);Cat.No.E10−126;Bethyl Laboratories Inc.;Montgomery;アメリカ)からのELISA試験を用いて活性ラクトフェリンを定量化し、必要な溶液(ELISAストップソルーション(ELISA stop solution)、Cat.No.E115;TMBペルオキシダーゼサブストレート(ソルーションA+B)(TMB Peroxidase Substrate(Solution A+B))、Cat.No.E102;マイクロタイタープレート(Microtiter Plate)、Cat.No.C3041;Bethyl Laboratories,Inc.;Montgomery;アメリカ)を用いた。分析は指示キットに記載された通りであり、指示キットに記載されたように分析を行った。
別の生物活性物質の分析のために、以下のELISAキットを用いた。
IgA:ボルビンIgA ELISAキットE11−121(Bovine IgA ELISA kit E11−121);Bethyl laboratories Inc.;Montgomery;アメリカ
IgG:ボルビンIgG ELISAキットE11−118(Bovine IgG ELISA kit E11−118);Bethyl laboratories Inc.;Montgomery;アメリカ
TGF−ベータ1:マルチスピーシーズTGF−ベータ1 ELISA(Multispecies TGF−beta1 ELISA);ibt−immunological & biochemical test systems GmbH;Reutlingen;ドイツ
TGF−ベータ2:マルチスピーシーズTGF−ベータ2 ELISA(Multispecies TGF−beta2 ELISA);ibt−immunological & biochemical test systems GmbH;Reutlingen;ドイツ
全ての分析をキットの指示書に従って行った。
4.2 ラクトフェリン含有量へのPEF処理の効果
実施例3で確立した好ましいPEF処理パラメータを用いて、ラクトフェリンの存在に対するPEF処理の効果を評価するために試験を行った。この試験に関して、全てのプロセスパラメータは比エネルギーを除いて一定であった。
図11に見られるように、ラクトフェリンはPEF処理に敏感であり、比エネルギーの増加に伴い量が減少する。しかしながら、大腸菌及びL.イノキュアの不活性化に必要なエネルギーに相当する244kJ/kg(グラフ中の縦線)の比エネルギーにおいて、最初(76mg/L)の約85%(64mg/L)を超えるラクトフェリンがELISAによりまだ検出可能であり、そのため天然で存在しており、従って本発明の目的上、活性型で存在する。ラクトフェリンの量は、約280〜300kJ/kgを超える比エネルギーでより有意に減少し始める。
4.3 IgA含有量へのPEF処理の効果
図12に示すように、大腸菌及びL.イノキュアの両方の不活性化に必要なエネルギーに相当する244kJ/kg(グラフ中の縦線)の比エネルギーでのPEF処理後に、最初(136.3μm/mL)の約56%(77.4μg/mL)を超えるIgAがELISAによりまだ検出可能であり、そのため天然型で存在しており、従って活性型で存在する。
4.4 IgG含有量へのPEF処理の効果
図13に示すように、大腸菌及びL.イノキュアの両方の不活性化に必要なエネルギーに相当する244kJ/kg(グラフ中の縦線)の比エネルギーでのPEF処理後に、生乳において存在する最初(868μg/mL)の約80%(703μg/mL)を超えるIgGがELISAによりまだ検出可能であり、そのため天然型で存在しており、従って活性型で存在する。
4.5 TGF−β1含有量へのPEF処理の効果
図14に示すように、大腸菌及びL.イノキュアの両方の不活性化に必要なエネルギーに相当する244kJ/kg(グラフ中の縦線)の比エネルギーでのPEF処理後に、生乳において存在する最初(0.38ng/mL)の約89%(0.34ng/mL)を超えるTGF−β1がELISAによりまだ検出可能であり、そのため天然型で存在しており、従って活性型で存在する。一般的に、比エネルギーの全範囲にわたって、TGF−β1含有量は0.35ng/mLの平均値近くを上下する。TGF−β1含有量は、PEF処理による影響を実質的に受けない。
4.6 TGF−β2含有量へのPEF処理の効果
図15に示すように、TGF−β2含有量はPEF処理による影響を実質的に受けない。大腸菌及びL.イノキュアの両方の不活性化に必要なエネルギーに対応する244kJ/kg(グラフ中の縦線)の比エネルギーでのPEF処理後、生乳において存在する最初のTGFーβ2(41.4ng/mL)の有意な減少はELISAにより検出されなかった。
結論として、本発明に基づくPEF処理は、液状又は粘性組成物における微生物負荷を効果的に低減するのに適している。同時に、処理は、生乳において天然に存在する生物活性タンパク質又は別の分子を実質的に破壊しない、又は完全に破壊しない。本発明に基づくPEF処理にもかかわらず、生乳において天然に存在する生物活性タンパク質又は別の分子の有意な量が天然/活性のままである。
図16は、様々な生物活性分子の含有量に関して微生物負荷を有意に減少させるのに適しているPEF処理の効果を示すことにより、この実験の結果をまとめる。
実施例5:PEF処理組成物の貯蔵安定性
生乳及びPEF処理生乳の貯蔵安定性を分析して比較した(実施例3の手順参照)。
様々な比エネルギー、即ち0(生乳)、65、210、244及び314kJ/kgをそれぞれ印加した。結果を図17に示す。分かるように、未処理の生乳及び65kJ/kgでの乳PEF処理を除く全ての試料は、4℃で14日の貯蔵安定性にわたって105cfu/g未満の生存細胞数を示した。未処理の生乳及び65kJ/kgでの乳PEF処理の2つの試料は4日後に高い細胞数を示し、微生物の高成長に起因してこれらの試料に関して実験を停止し、更なるデータを報告しない。従って、未処理の乳及び65kJ/kgで処理した乳の貯蔵安定性は4℃では4日未満である。別に試験した試料に関しては、4℃で14日以上の貯蔵安定性を得た。