JP2000139432A - 液状物の殺菌方法および殺菌装置 - Google Patents

液状物の殺菌方法および殺菌装置

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JP2000139432A
JP2000139432A JP10314645A JP31464598A JP2000139432A JP 2000139432 A JP2000139432 A JP 2000139432A JP 10314645 A JP10314645 A JP 10314645A JP 31464598 A JP31464598 A JP 31464598A JP 2000139432 A JP2000139432 A JP 2000139432A
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Japan
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electric field
pulse
liquid material
region
sterilizing
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JP10314645A
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English (en)
Inventor
Kouichi Naeshiro
晃一 苗代
Akira Chibayashi
暁 千林
Shigeru Kato
茂 加藤
Tamotsu Kawakita
有 川北
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Publication date
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C02TREATMENT OF WATER, WASTE WATER, SEWAGE, OR SLUDGE
    • C02FTREATMENT OF WATER, WASTE WATER, SEWAGE, OR SLUDGE
    • C02F2303/00Specific treatment goals
    • C02F2303/04Disinfection

Landscapes

  • Food Preservation Except Freezing, Refrigeration, And Drying (AREA)
  • Apparatus For Disinfection Or Sterilisation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 殺菌効果を維持しつつ省エネルギー化および
低温処理を実現することができる殺菌方法および装置を
提供する。 【解決手段】 液状物に、相対的に低電界強度かつ長パ
ルス幅の低電界長パルス領域EL と、相対的に高電界強
度かつ短パルス幅の高電界短パルス領域EH とを併せ持
つパルス電界EP を印加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、飲料(ジュー
ス、牛乳等)、液卵、水、化粧水、液体医薬品、水耕
液、培養液等の液状物(液体を含む)に高電界のパルス
電界を印加して殺菌処理を施す殺菌方法および殺菌装置
に関し、より具体的には、殺菌効果を維持しつつ省エネ
ルギー化および低温処理を可能にする手段に関する。
【0002】
【従来の技術】液状物に、短パルスかつ高電界のパルス
電界(電界パルスとも言える。以下同じ)をある回数印
加して殺菌処理を施す殺菌方法(これは電界殺菌方法と
も呼ばれる)は、原理的には、省エネルギーが可能、
低温殺菌が可能、液状物の変質がない、物理的殺
菌なので有毒化学物質残留の恐れがない、等の利点を有
しており、優れた殺菌技術として注目されている。
【0003】このような殺菌方法を実施する従来の殺菌
装置の一例を図12に示す。この殺菌装置は、相対向す
る二つの電極12、14を有していて両電極12、14
間に被殺菌物である液状物2が満たされる(例えば流さ
れる)殺菌処理部10と、この殺菌処理部10の二つの
電極12、14間にパルス電圧VP を供給して両電極1
2、14間の液状物2にパルス電界EP を印加するパル
ス電源20とを備えている。二つの電極12、14は、
この例では一例として平行平板状をしているが、同軸円
筒状等であっても良い。16は絶縁物である。
【0004】殺菌処理部10において液状物2に印加さ
れるパルス電界EP の印加回数Nは、液状物2の流量を
Q[cc/s]、二つの電極12、14間の電界処理空
間の体積をB[cc]、印加パルス電界EP の繰り返し
数をf[Hz]とした場合、次式で表される。
【0005】
【数1】N=B・f/Q
【0006】このような殺菌方法または装置において、
殺菌処理部10の両電極12、14間の液状物2に印加
するパルス電界EP には、従来は、図13に示すような
指数減衰波形(CR放電波形)、または図14に示すよ
うな矩形波形のものが用いられていた。
【0007】なお、殺菌処理部10の両電極12、14
間に供給される上記パルス電圧VPと、両電極12、1
4間の液状物2に印加される上記パルス電界EP との間
には、両電極12、14間の距離をdとした場合、次式
の関係が成立するので、上記パルス電圧VP とパルス電
界EP の波形は互いに実質的に同じである。
【0008】
【数2】EP =VP /d
【0009】電界殺菌のメカニズムは、次の3段階であ
ると考えられている。
【0010】高電界印加によって、菌細胞の細胞膜に
小孔が発生する。
【0011】高電界印加によって、菌の代謝維持に必
要なイオン類(例えばH+ 、Na+等)が移動し、上記
小孔から流出または流入する。
【0012】上記イオンの流出または流入過程におい
て、細胞内のイオンバランスが乱され、かつ細胞膜の小
孔をイオンが通過することで小孔が拡張され、不可逆的
な孔となることで菌細胞が死滅する。
【0013】このような電界殺菌による殺菌方法または
装置においては、パルス電界EP の電界強度Eを大きく
する、パルス電界EP のパルス幅τを長くする、または
パルス電界EP の印加回数Nを多くすることを個別にま
たは同時に行うことによって、殺菌効果が高まることが
知られている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記のような電界殺菌
による殺菌方法に対しては、省エネルギーおよび低温処
理の要望(ニーズ)がある。これは、省エネルギーは、
ランニングコストの低減、装置(特にパルス電源)の小
型化およびコスト低減に寄与するからである。また、低
温処理は、殺菌処理後の液状物(例えば食品)の風味、
栄養等の性質を変質、劣化させないことに寄与するから
である。
【0015】つまり、過剰な電界強度E、パルス幅τ、
または印加回数Nのパルス電界の印加は、省エネルギー
を妨げるばかりでなく、液状物への通電ジュール熱によ
って液状物の温度上昇が大きくなって液状物の変質、劣
化をもたらすことになる。従って、電界殺菌において
は、殺菌効果を維持できる範囲で、パルス電界の電界強
度E、パルス幅τおよび印加回数Nを最小にする必要が
ある。
【0016】ところが、従来の殺菌方法または装置で
は、上記電界殺菌のメカニズムのの小孔発生過程およ
びのイオン流出または流入過程を上記のような波形の
パルス電界EP で行っていたため、殺菌効果を維持しつ
つ省エネルギー化および低温処理を実現することは困難
であった。
【0017】即ち、電界殺菌メカニズムのの小孔発生
過程を達成するためには、通常は15kV/cm以上、
望ましくは40kV/cm以上の高電界強度が必要であ
るけれども、電界印加時間は例えば0.05μs〜2μ
s程度の短時間で良い。一方、電界殺菌メカニズムの上
記のイオン流出または流入過程を達成するためには、
通常は数kV/cm〜十数kV/cm程度の比較的低電
界強度で良いけれども、電界印加時間は例えば数μs以
上の長時間が必要である。これを従来は上記のような単
一波形のパルス電界EP で満足させていたため、当該パ
ルス電界EP は高電界強度かつ長パルス幅(例えば15
〜40kV/cm以上かつ数μs以上)とならざるを得
ず、そのために過剰な電界エネルギーを液状物に投入す
る結果となっていた。それ故に、殺菌効果を維持しつつ
省エネルギー化および低温処理を実現することは困難で
あった。
【0018】そこでこの発明は、このような点を改善し
て、殺菌効果を維持しつつ省エネルギー化および低温処
理を実現することができる殺菌方法および殺菌装置を提
供することを主たる目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】この発明に係る殺菌方法
の一つは、液状物に、相対的に低電界強度かつ長パルス
幅の低電界長パルス領域と、相対的に高電界強度かつ短
パルス幅の高電界短パルス領域とを併せ持つパルス電界
を印加することを特徴としている。
【0020】この発明に係る殺菌装置の一つは、相対向
する二つの電極を有していて両電極間に液状物が満たさ
れる殺菌処理部と、この殺菌処理部の二つの電極間にパ
ルス電圧を供給して両電極間の液状物にパルス電界を印
加するパルス電源とを備える殺菌装置において、前記液
状物に印加するパルス電界が、相対的に低電界強度かつ
長パルス幅の低電界長パルス領域と、相対的に高電界強
度かつ短パルス幅の高電界短パルス領域とを併せ持つこ
とを特徴としている。
【0021】このような低電界長パルス領域と高電界短
パルス領域とを併せ持つパルス電界を液状物に印加する
と、前述した電界殺菌メカニズムのの小孔発生過程を
高電界短パルス領域で、同メカニズムののイオン流出
または流入過程を低電界長パルス領域で、それぞれ分担
させることができる。その結果、液状物に対して余分な
エネルギー投入を防止しつつ効果的な殺菌処理を行うこ
とができるので、殺菌効果を維持しつつ省エネルギー化
および低温処理を実現することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る殺菌装置
の一例を示す概略図である。図12の従来例と同一また
は相当する部分には同一符号を付し、以下においては当
該従来例との相違点を主に説明する。
【0023】この殺菌装置では、パルス電源20aか
ら、前述したような殺菌処理部10の二つの電極12、
14間にパルス電圧VP を印加して、両電極12、14
間の液状物2に、例えば図2に示す例のような波形のパ
ルス電界EP を印加するようにしている。この例の場合
も、前述した数2の関係が成立するので、パルス電圧V
P とパルス電界EP の波形とは互いに実質的に同じであ
る。
【0024】図2に示すパルス電界EP は、相対的に低
電界かつ長パルス幅の低電界長パルス領域EL に、相対
的に高電界かつ短パルス幅の高電界短パルス領域EH
重畳した波形をしている。低電界長パルス領域EL は、
この例では矩形波状をしており、その電界強度はこの例
では10kV/cm、パルス幅は13μsである。高電
界短パルス領域EH は、この例では矩形波状をしてお
り、その電界強度はこの例では50kV/cm、パルス
幅は0.5μsである。また、この例では、高電界短パ
ルス領域EH の開始時点(例えば立上り半値点。以下同
じ)は低電界長パルス領域EL の開始時点よりも7.5
μs遅れており、高電界短パルス領域EHの終了時点
(例えば立下り半値点。以下同じ)は低電界長パルス領
域EL の終了時点よりも5μs進んでいる。
【0025】なお、この明細書において、パルス幅は、
図8のパルス幅τ1 を除いて、通常の意味で、即ち立上
り半値点から立下り半値点までの時間(即ち半値幅)の
意味で用いている。
【0026】この図2に示すような波形のパルス電界E
P を、殺菌処理部10内の液状物2に印加したときの液
状物2中の菌細胞死滅のメカニズムを図3を参照して説
明する。
【0027】(1)ステップ1(10kV/cm、7.
5μs印加。図3A、B参照) この過程で、パルス電界EP の電界によって、菌細胞4
0内のイオン44、45が細胞膜42近傍まで移動す
る。イオン44、45の移動速度M[μm/μs]は、
印加電界強度E[kV/cm]に比例し、M=aEと表
される。ここでaは、比例定数であり、通常は0.00
5〜0.03μm・μs-1・cm・kV-1程度である。
E=10[kV/cm]とすると、イオン44、45の
移動速度Mは0.05〜0.3μm/μsであり、菌細
胞40の代表的半径0.5μmを移動するのに、約2〜
10μs必要となる。
【0028】即ち、このステップ1では、10kV/c
m、7.5μsの低電界長パルス領域EL の電界印加
で、菌細胞40内の正イオン44はパルス電界EP の方
向と同じ方向に、負イオン45はパルス電界EP の方向
と逆方向に、それぞれ移動して、イオンが細胞膜42近
傍に集まり分極状態となる(図3B参照)。
【0029】(2)ステップ2(50kV/cm、0.
5μs印加。図3C参照) この過程で、パルス電界EP の電界によって、細胞膜4
2に小孔46が開けられる。この小孔46が開くメカニ
ズムは、細胞膜42の内外に強い電界が印加されること
による細胞膜42の電気的絶縁破壊によるものと考えら
れ、電界印加時間は短くても良いが、ステップ1のイオ
ン移動過程の場合よりも高電界が必要である。
【0030】上記ステップ1において、菌細胞40内の
イオンは分極状態にされており、このイオンの細胞膜4
2付近における空間電界ES は、細胞膜42の外側が通
常は電気的に中性と考えられるから、図3Cに示すよう
に、印加パルス電界EP を強める方向であり、これは細
胞膜42の電気絶縁破壊による小孔46の形成を助長す
ることになる。
【0031】(3)ステップ3(10kV/cm、5μ
s印加。図3D参照) この過程で、パルス電界EP の電界によって、菌細胞4
0内のイオン44、45は細胞外へと流出する。即ち、
菌細胞40内のイオン44、45はステップ1と同様の
作用によって細胞外へと流出するが、ステップ1におい
て既に菌細胞40内のイオン44、45は細胞膜42の
小孔46近傍に移動しているため、イオン44、45の
移動距離は菌細胞40の代表的半径の1/2程度で良
い。従って、電界印加時間はステップ1の場合よりも短
くて良く、例えば半分程度で良い。
【0032】このイオン流出過程において、菌細胞40
内のイオンバランスが乱れ、かつ細胞膜42の小孔46
をイオンが通過して小孔46が拡張され、不可逆的な孔
となることで菌細胞40が死滅する。
【0033】このように、低電界長パルス領域EL と高
電界短パルス領域EH とを併せ持つパルス電界EP を印
加することにより、菌細胞中のイオン移動のための電界
印加(上記ステップ1および3)と、細胞膜破壊のため
の電界印加(上記ステップ2)との役割を分担させるこ
とができる。
【0034】即ち、パルス電界EP の印加によるイオン
の移動距離Lは、次式で表され、Eτに比例する。ここ
でEはパルス電界EP の上記電界強度、τはパルス幅、
aは前述した比例定数である。
【0035】
【数3】L=aEτ
【0036】一方、パルス電界EP の印加による液状物
2への単位体積当たりのエネルギー投入量Pは、次式で
表され、E2τに比例する。Eの自乗に比例することに
注目されたい。ここでρは液状物2の比抵抗である。
【0037】
【数4】P=E2τ/ρ
【0038】従って、この数3および数4から分かるよ
うに、Eτをある値にして殺菌に必要なイオン移動距離
Lを確保した上で、Eを小さくかつτを大きくすること
により、液状物2へのエネルギー投入量Pを減少させる
ことができる。これを、この発明のように低電界長パル
ス領域EL と高電界短パルス領域EH とを併せ持つパル
ス電界EP を用いることによって実現することができ
る。その結果、殺菌効果を維持しつつ、省エネルギー化
および低温処理を実現することができる。
【0039】この場合、単に省エネルギーの観点から
は、低電界長パルス領域EL のパルス幅を長くすれば良
いことになるが、パルス幅が100μsより大になる
と、殺菌処理部10の電極12、14付近の液状物2中
で電気分解が生じ、液状物2に電極構成物質のイオンが
混入し、液状物2が変質、劣化する等の別の問題が生じ
る。従って、低電界長パルス領域EL のパルス幅は10
0μs以下にするのが好ましい。
【0040】このパルス幅のときに必要な電界強度E
は、イオンの移動距離Lを細胞の代表的半径の1.5倍
(上記ステップ1および3の移動距離の総和)である
0.75μmとすると、上記数3から次式のようにな
り、約1kV/cm以上は必要である。
【0041】
【数5】 E≧(L/aτ)≒0.7〜1.5[kV/cm]
【0042】但し、低電界長パルス領域EL の電界強度
Eは、高くなり過ぎると上記省エネルギーの効果が低下
するため、上記ステップ2の細胞膜破壊のための高電界
短パルス領域EH の電界強度E(これは後述するように
15kV/cm以上)よりも低い電界強度にするのが好
ましい。
【0043】以上を総合すると、パルス電界EP の低電
界長パルス領域EL は、その電界強度Eを1kV/cm
以上15kV/cm未満にし、かつパルス幅τを2μs
以上100μs以下にするのが好ましい。
【0044】一方、細胞膜破壊のための印加電界強度
は、即ち高電界短パルス領域EH の電界強度Eは、殺菌
効果を得るためには最低で15kV/cmは必要である
ことが発明者達の実験で確認されている。望ましくは4
0kV/cm以上が良い。但し、当該電界強度Eが高い
ほど細胞膜破壊効果は増加するけれども、殺菌処理部1
0における電極12、14間の絶縁等が難しくなるの
で、100kV/cm以下にするのが好ましい。
【0045】また、高電界短パルス領域EH のパルス幅
τは、液状物2にパルス電界EP が印加されてから細胞
膜に電界が印加される時定数(通常は0.05μs程
度)より長ければ良いが、省エネルギー化のためには2
μs未満が好ましく、0.5μs以下がより好ましい。
【0046】以上を総合すると、パルス電界EP の高電
界短パルス領域EH は、その電界強度Eを15kV/c
m以上100kV/cm以下にし、かつパルス幅τを
0.05μs以上2μs未満にするのが好ましい。パル
ス幅τは0.05μs以上0.5μs以下にするのがよ
り好ましい。
【0047】ちなみに、図2の例のパルス電界EP と、
従来の電界強度50kV/cm、パルス幅3μsの矩形
波状のパルス電界EP (図14参照)とを比較すると、
図2のパルス電界EP では電界強度の時間積Eτは15
0kV・cm-1・μsであり、電界強度の自乗の時間積
2τは、2500kV2 ・cm-2・μsである。一
方、従来の矩形波状のパルス電界EP では、Eτはやは
り150kV・cm-1・μsであるけれども、E2τは
7500kV2 ・cm-2・μsにもなる。両者は、殺菌
作用に寄与するEτの値は等しいけれども、即ち同等の
殺菌効果を奏するけれども、消費エネルギーE2τは図
2の例の方が従来例に比べて1/3に低下しており、大
幅な省エネルギー化が可能である。
【0048】また、パルス電界EP における高電界短パ
ルス領域EH の位置は、上記ステップ1〜3の殺菌メカ
ニズムからも分かるように、上記ステップ1〜3の過程
を順次効果的に行わせる観点からは、例えば図2に示す
例のように、高電界短パルス領域EH の前および後に低
電界長パルス領域EL をそれぞれ設けるのが好ましい。
その場合、高電界短パルス領域EH の前後の低電界長パ
ルス領域EL のパルス幅は、必ずしも図2の例のように
7.5μsおよび5μsにする必要はないが、少なくと
も前述したステップ1およびステップ3でのイオン移動
に要する時間程度以上にするのが好ましい。これらは、
菌細胞の代表的半径を0.5μmとすれば、前述したよ
うにそれぞれ約2μsおよび約1μsであるから、この
ような値以上にするのが好ましい。即ち、高電界短パル
ス領域EH の開始時点が低電界長パルス領域EL の開始
時点よりも2μs以上遅れており、かつ高電界短パルス
領域EH の終了時点が低電界長パルス領域EL の終了時
点よりも1μs以上進んでいる波形にするのが好まし
い。そのようにすれば、イオンの移動による殺菌効果を
より確実なものにすることができる。
【0049】上記パルス電界EP の波形は、図2に示し
た矩形波形の組み合わせに限られるものではなく、その
他の波形、例えば指数減衰波形(CR放電波形)、正弦
波形等の組み合わせによっても、上記と同様の殺菌効果
および省エネルギー効果が得られる。パルス電界EP
波形の他の例を図4〜図7にそれぞれ示す。
【0050】図4のパルス電界EP は、指数減衰波形の
低電界長パルス領域EL に、指数減衰波形の高電界短パ
ルス領域EH を重畳した例を示す。この例の場合は、こ
のようなパルス電界EP を印加するパルス電圧VP を発
生させるパルス電源20aの構成が矩形波の場合に比べ
て容易になる。
【0051】図5のパルス電界EP は、正弦波形の低電
界長パルス領域EL に、正弦波形の高電界短パルス領域
H を重畳した例を示す。
【0052】図6のパルス電界EP は、矩形波形の低電
界長パルス領域EL に、指数減衰波形の高電界短パルス
領域EH を重畳した例を示す。
【0053】パルス電界EP は、上記例以外にも、正弦
波、矩形波、指数減衰波形、その他の任意の波形を組み
合わせた波形でも良い。
【0054】また、パルス電界EP は、例えば図7に示
す例のように、低電界長パルス領域EL と高電界短パル
ス領域EH とが分離している波形でも良い。このような
波形でも、パルス電界EP は、低電界長パルス領域EL
と高電界短パルス領域EH とを併せ持っている。
【0055】なお、前述した電界強度の時間積Eτおよ
び電界強度の自乗の時間積E2τは、矩形波以外の波形
の場合は、一般的に、電界強度の時間積分値∫Edtお
よび電界強度の自乗の時間積分値∫E2dtでそれぞれ
表すことができる。
【0056】ところで、前述したように、電界強度の時
間積Eτ(または積分値∫Edt)を確保しつつ、電界
強度の自乗の時間積E2τ(または積分値∫E2dt)を
小さくすることによって、殺菌効果と省エネルギー化と
を両立させることができるので、パルス電界EP は必ず
しも上述したように明瞭に区分された低電界長パルス領
域EL と高電界短パルス領域EH とを併せ持つ必要はな
く、任意の波形でも良い。その一例を図8に示す。
【0057】但しこの場合のパルス電界EP は、高電界
による小孔発生過程(前記ステップ2)を確実に行う観
点から、最高電界強度部分の電界強度EM を40kV/
cm以上にし、イオンの移動流出過程(前記ステップ1
および3)を確実に行う観点から、1kV/cm以上の
電界強度部分のパルス幅τ1 を10μs以上にするのが
好ましく、かつ省エネルギー化の観点から、電界強度の
自乗の時間積分値∫E 2dtを4000kV2 ・cm-2
・μs以下にするのが好ましい。
【0058】このような波形のパルス電界EP を用いて
も、従来の単なる矩形波形や指数減衰波形のパルス電界
P を用いる場合と違って、殺菌効果を維持しつつ省エ
ネルギー化および低温処理を実現することができる。
【0059】なお、殺菌の最適条件は、菌種等によって
多少は異なるけれども、大半の菌においてその細胞半径
は0.3μm〜1μm程度であるから、上記のような仕
様範囲のパルス電界EP の印加によって、前述した効
果、即ち殺菌効果を維持しつつ省エネルギー化および低
温処理を実現することができる。
【0060】また、液状物2を予備的に加熱しておくこ
とで、電界殺菌の効果を高める手法は既に知られてお
り、これを本発明と併用しても良く、そのようにすれ
ば、より殺菌効果を高めることができる。
【0061】上記のようなパルス電界EP の印加を実現
することのできるパルス電源20aの構成例を図9〜図
11に示す。
【0062】図9のパルス電源20aは、2台のパルス
電圧発生回路24、25から所定のタイミング差で、前
述したパルス電界EP の低電界長パルス領域EL および
高電界短パルス領域EH にそれぞれ対応するパルス電圧
L およびVH をそれぞれ発生させ、これらを保護回路
26、27を介して重畳してパルス電圧VP として殺菌
処理部10に供給する構成をしている。両パルス電圧発
生回路24、25内のコンデンサは、2台の充電電源2
2、23によってそれぞれ充電される。
【0063】図10のパルス電源20aは、上記パルス
電圧発生回路25の代わりに昇圧回路を含むパルス電圧
発生回路28を用いて、1台の充電電源22を共用した
例である。このようにすれば、充電電源が1台で済むた
め、その分、パルス電源20aの低コスト化を図ること
ができる。
【0064】図11のパルス電源20aは、1台の充電
電源22と、2種類のパルス電圧を発生する1台のパル
ス電圧発生回路29とを用いて、一方のパルス電圧を上
記パルス電圧VL とし、他方のパルス電圧を昇圧回路3
0および遅延回路31を通して上記パルス電圧VH とす
る例である。このようにすれば、充電電源が1台で済む
のでその分パルス電源20aの低コスト化を図ることが
できると共に、パルス電圧発生回路29内のスイッチを
1台で済ませることができるのでタイミング制御が容易
になる。
【0065】なお、上記パルス電圧発生回路24、2
5、28および29は、コンデンサの放電を利用して指
数減衰波形のパルス電圧を発生するものの他に、パルス
成形ライン(PFL)、パルス成形ネットワーク(PF
N)、ブルームライン等を利用して矩形波形のパルス電
圧を発生させるもの等でも良い。
【0066】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されてい
るので、次のような効果を奏する。
【0067】請求項1、2、6または7記載の発明によ
れば、電界殺菌メカニズムの小孔発生過程を高電界短パ
ルス領域で、同メカニズムのイオン移動・流出過程を低
電界長パルス領域で、それぞれ分担させることができる
ので、液状物に対して余分なエネルギー投入を防止しつ
つ効果的な殺菌処理を行うことができる。従って、殺菌
効果を維持しつつ省エネルギー化および低温処理を実現
することができる。
【0068】その結果、省エネルギー化によって、コス
トの低減、装置(特にパルス電源)の小型化およびコス
ト低減を図ることができる。また、低温処理によって、
殺菌処理後の液状物の変質、劣化等を防止することがで
きる。
【0069】請求項3または8記載の発明によれば、殺
菌効果を維持しつつ省エネルギー化および低温処理の実
現をより確実なものにすることができると共に、液状物
中への電極構成物質イオンの混入防止および殺菌処理部
における絶縁設計の容易化を図ることができる。
【0070】請求項4または9記載の発明によれば、菌
細胞膜内外におけるイオンの移動をより確実にして、イ
オンの移動による殺菌効果をより確実なものにすること
ができる。
【0071】請求項5または10記載の発明によれば、
従来の単なる矩形波形や指数減衰波形のパルス電界を用
いる場合と違って、殺菌効果を維持しつつ省エネルギー
化および低温処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る殺菌装置の一例を示す概略図で
ある。
【図2】この発明で用いるパルス電界の波形の一例を示
す図である。
【図3】電界殺菌のメカニズムを模式的に示す図であ
る。
【図4】この発明で用いるパルス電界の波形の他の例を
示す図である。
【図5】この発明で用いるパルス電界の波形の更に他の
例を示す図である。
【図6】この発明で用いるパルス電界の波形の更に他の
例を示す図である。
【図7】この発明で用いるパルス電界の波形の更に他の
例を示す図である。
【図8】この発明で用いるパルス電界の波形の更に他の
例を示す図である。
【図9】この発明で用いるパルス電源の一例を示すブロ
ック図である。
【図10】この発明で用いるパルス電源の他の例を示す
ブロック図である。
【図11】この発明で用いるパルス電源の更に他の例を
示すブロック図である。
【図12】従来の殺菌装置の一例を示す概略図である。
【図13】従来の殺菌方法に用いられるパルス電界の波
形の一例を示す図である。
【図14】従来の殺菌方法に用いられるパルス電界の波
形の他の例を示す図である。
【符号の説明】
2 液状物 10 殺菌処理部 12、14 電極 20a パルス電源 VP パルス電圧 EP パルス電界 EL 低電界長パルス領域 EH 高電界短パルス領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 茂 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 (72)発明者 川北 有 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 Fターム(参考) 4B021 LA42 LP10 LT03 LW06 4C058 AA20 AA21 AA22 AA30 BB02 DD03 EE30

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液状物に、相対的に低電界強度かつ長パ
    ルス幅の低電界長パルス領域と、相対的に高電界強度か
    つ短パルス幅の高電界短パルス領域とを併せ持つパルス
    電界を印加することを特徴とする液状物の殺菌方法。
  2. 【請求項2】 液状物に、相対的に低電界強度かつ長パ
    ルス幅の低電界長パルス領域に、相対的に高電界強度か
    つ短パルス幅の高電界短パルス領域を重畳した波形のパ
    ルス電界を印加することを特徴とする液状物の殺菌方
    法。
  3. 【請求項3】 前記パルス電界の低電界長パルス領域の
    電界強度が1kV/cm以上15kV/cm未満、パル
    ス幅が2μs以上100μs以下であり、高電界短パル
    ス領域の電界強度が15kV/cm以上100kV/c
    m以下、パルス幅が0.05μs以上2μs未満である
    請求項1または2記載の液状物の殺菌方法。
  4. 【請求項4】 前記パルス電界の高電界短パルス領域の
    開始時点が、低電界長パルス領域の開始時点よりも2μ
    s以上遅れており、かつ高電界短パルス領域の終了時点
    が、低電界長パルス領域の終了時点よりも1μs以上進
    んでいることを特徴とする請求項1、2または3記載の
    液状物の殺菌方法。
  5. 【請求項5】 液状物に、最高電界強度部分の電界強度
    が40kV/cm以上、1kV/cm以上の電界強度部
    分のパルス幅が10μs以上、かつ電界強度の自乗の時
    間積分値が4000kV2 ・cm-2・μs以下のパルス
    電界を印加することを特徴とする液状物の殺菌方法。
  6. 【請求項6】 相対向する二つの電極を有していて両電
    極間に液状物が満たされる殺菌処理部と、この殺菌処理
    部の二つの電極間にパルス電圧を供給して両電極間の液
    状物にパルス電界を印加するパルス電源とを備える殺菌
    装置において、前記液状物に印加するパルス電界が、相
    対的に低電界強度かつ長パルス幅の低電界長パルス領域
    と、相対的に高電界強度かつ短パルス幅の高電界短パル
    ス領域とを併せ持つことを特徴とする液状物の殺菌装
    置。
  7. 【請求項7】 相対向する二つの電極を有していて両電
    極間に液状物が満たされる殺菌処理部と、この殺菌処理
    部の二つの電極間にパルス電圧を供給して両電極間の液
    状物にパルス電界を印加するパルス電源とを備える殺菌
    装置において、前記液状物に印加するパルス電界が、相
    対的に低電界強度かつ長パルス幅の低電界長パルス領域
    に、相対的に高電界強度かつ短パルス幅の高電界短パル
    ス領域を重畳した波形をしていることを特徴とする液状
    物の殺菌装置。
  8. 【請求項8】 前記液状物に印加するパルス電界の低電
    界長パルス領域の電界強度が1kV/cm以上15kV
    /cm未満、パルス幅が2μs以上100μs以下であ
    り、高電界短パルス領域の電界強度が15kV/cm以
    上100kV/cm以下、パルス幅が0.05μs以上
    2μs未満である請求項6または7記載の液状物の殺菌
    装置。
  9. 【請求項9】 前記液状物に印加するパルス電界の高電
    界短パルス領域の開始時点が、低電界長パルス領域の開
    始時点よりも2μs以上遅れており、かつ高電界短パル
    ス領域の終了時点が、低電界長パルス領域の終了時点よ
    りも1μs以上進んでいることを特徴とする請求項6、
    7または8記載の液状物の殺菌装置。
  10. 【請求項10】 相対向する二つの電極を有していて両
    電極間に液状物が満たされる殺菌処理部と、この殺菌処
    理部の二つの電極間にパルス電圧を供給して両電極間の
    液状物にパルス電界を印加するパルス電源とを備える殺
    菌装置において、前記液状物に印加するパルス電界の最
    高電界強度部分の電界強度が40kV/cm以上、1k
    V/cm以上の電界強度部分のパルス幅が10μs以
    上、かつ電界強度の自乗の時間積分値が4000kV2
    ・cm-2・μs以下であることを特徴とする液状物の殺
    菌装置。
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