以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成は、あくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<1.第1実施形態>
<1.1.概要>
図1及び図2は、第1実施形態に係るX線管9を示す概略図である。なお、図1(a),(b)及び図2は、図1(c)に示すように、ターゲット面94Sの傾斜面を側方視する視線方向Dから見たX線管9を模式的に示した図である。
図1(a)に示すように、X線発生源であるX線管9は、フィラメントを含む陰極91と、陰極91から離間して配置された陽極92とが備えられている。陽極92の陰極91と対向する面は、陰極91と陽極92とをそれぞれの長手軸中心を通って結ぶ直線93L(電子ビームの出射方向に平行な直線)に対して所定の角度傾斜した傾斜面となっており、この傾斜面には、ターゲット面94S(太線で示す部分)が設けられている。
陰極91から出射された電子ビームBE1がターゲット面94Sに衝突することによって、ターゲット面94Sから電子ビームBE1が進行してきた方向からすると反射方向に向けてX線ビームBXが所定の広がりを持って射出される。すなわち、このターゲット面94Sが、X線を発生させるX線発生面を構成している。
このX線ビームBXの照射範囲内において、電子ビームBE1に平行な線上の位置P1,P2(ただし、位置P2より位置P1の方が陰極91から遠いものとする。)を想定すると、位置P1および位置P2からターゲット面94Sの見かけ上の大きさは、位置P1の方でより小さくなる。
以下、ある要素Xがある要素Yより大きいという場合は、要素Yが要素Xより小さいことを意味し、ある要素Xがある要素Yより小さいという場合は、要素Yが要素Xより大きいことを意味する。
X線発生面であるターゲット面94Sにおいて、陰極91に最も近い地点TG1と陰極91から最も遠い地点TG2があり、地点TG1と地点TG2を結ぶ線分LNを想定する。この直線93Lと線分LNは、共に図1(c)に示す平面PL上にある。
図1(a)に示すX線ビームBXは、視線方向Dから見た照射範囲(広がり)SPを有する。図示の例ではターゲット面94Sは平面であり、上述の平面PLは、ターゲット面94Sに垂直な面である。また、視線方向Dは直線93Lにも線分LNにも垂直な方向であり、地点TG1と地点TG2の間の距離が最も大きく見える方向である。
位置P1から見た地点TG1と地点TG2の間の距離は位置P2から見た地点TG1と地点TG2の間の距離より小さく見える。すなわち、X線ビームBXのうち、陰極91から遠い程(すなわち、陽極92に近い程)、X線発生面の見かけ上の大きさ(焦点サイズ)が小さくなる。
ここでX線発生面であるターゲット面94Sの見かけ上の大きさである焦点サイズについてさらに具体的に説明する。
図1(b)に示すターゲット面94Sを視線方向DR1から見ると、ターゲット面94Sは94S1のように見える。図示の例では、視線方向DR1はターゲット面94Sに垂直な方向である。この視線方向DR1が、ターゲット面94Sが最も大きく見える方向である。
この視線方向DR1から直線93Lとは反対側にθs分傾斜した視線方向DR2から見ると、ターゲット面94Sは94S2のように見える。
視線方向DR1から見た地点TG1と地点TG2の間の距離をFS1とし、視線方向DR2から見た地点TG1と地点TG2の間の距離をFS2とすると、FS1よりFS2の方が小さい。
このように、X線発生面であるターゲット面94の大きさは見る角度、視線方向によって異なる。
ここで、見る角度、視線方向によって変わるX線発生面の大きさを「焦点サイズ」と称することとする。この焦点サイズは、角度θsの大きさが大きくなるほど小さくなる。
また、ターゲット面94から発生するX線ビームBXのX線束の広がりには、視線方向Dから見た図1(a)に示す広がりSPがある。図示の例では、広がりSPは、X線束の最も陰極91に近い端部BXAと最も陰極91から遠い端部BXBの間の広がりである。この広がりSPは直線93LとX線束中心CBの双方に垂直な方向から見た広がりである。
焦点サイズは上記の広がりSPを部分的に規制して照射範囲を規制する場合にいずれの位置で規制を行うかで変わる。
図2(a),(b)のように、X線ビームBXの一部をX線の照射範囲を規制する規制部15で規制し、開口部である開口15Hを通過するX線のみ通過を許容するとする。このX線通過開口15Hの開口幅は図2(a),(b)で同じである。しかしながら、図2(a)では開口15Hが端部BXB寄りの位置としており、図2(b)では開口15Hが端部BXA寄りの位置としている。
また、図2(a)において開口15Hを通過したX線が被写体M1中のある地点OP1を透過するとする。そして、図2(b)において開口15Hを通過したX線が被写体M1中のある地点OP2を透過するとする。
また、地点TG1から発生したX線と地点TG2から発生したX線が、図2(a)の地点OP1を透過して、X線検出器21のX線検出面21Sで結像する。図2(b)の地点OP2を、地点TG1から発生したX線と地点TG2から発生したX線が透過してX線検出器21のX線検出面21Sで結像する。
図2(a)における地点TG1、地点TG2からのX線の結像点間の距離DAは図2(b)における地点TG1、地点TG2からのX線の結像点間の距離DBよりも小さくなっている。このため、図2(a)における地点OP1の結像は図2(b)における地点OP2の結像よりも鮮明である。
ここで、X線撮影に用いるX線の焦点サイズが小さいほど、X線の照射経路上、ある地点を通過するX線がX線検出面で集中し、X線画像を鮮明化すること、つまりぼけを低減することができ、また、画像の解像度を上げることができる。そこで、本実施形態では、以下で詳細に説明する構成を備えることによって、撮影対象領域に照射するX線ビームの焦点サイズをできるだけ小さくし、X線画像を鮮明化して画像の解像度を向上させる。
<1.2.構成および機能>
図3は、第1実施形態に係るX線撮影装置100の概要を示す図である。本実施形態のX線撮影装置100は、医療用のX線撮影装置であり、所定の位置に固定された被写体M1に対し、X線ビームBXを照射する。X線撮影装置100は、オペレータの操作入力に基づいて、X線CT撮影、パノラマ撮影、およびセファロ撮影の各種X線撮影を実行することができるように構成されている。
X線CT撮影装置100は、X線撮影を実行して、投影データを収集する本体部1と、本体部1において収集した投影データを処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。
本体部1は、被写体M1に向けてX線の束で構成されるX線ビームBX1を出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたX線を検出するX線検出部20と、X線発生部10とX線検出部20をそれぞれ支持する支持部300と、鉛直方向に昇降移動可能に構成された昇降部40と、鉛直方向に延びる支柱50と、本体部1の各構成の動作を制御する本体制御部60とを備えている。
支持部300は、図示の例では旋回軸31周りに旋回する旋回アーム30で構成されているが、特にアームに限定されず、様々な構成のものが考えられる。例えば円環の円の中心を回転中心として回転する円環状の部材にX線発生部10とX線検出部20が対向するように設けたものでもよい。
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
旋回アーム30が旋回し、X線発生部10とX線検出部20とが被写体M1を挟んで互いに対向しつつ、被写体M1、さらに具体的には例えば被検者の頭部の周りに旋回してX線撮影が行われる。X線発生部10とX線検出部20は旋回軸31の軸周りに旋回する。
ここで、以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線CT撮影装置100において位置決めされて支柱50に正対した時の被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。
これに対して、旋回する旋回アーム30上の3次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらxおよびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。本実施形態およびそれ以降の実施形態においては、上記のZ軸方向はz軸方向と共通する同一の方向となっている。また本実施形態の旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を軸に回転する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
なお、図3に示すように、各軸方向は次のような方向として説明する。
●y軸方向については、X線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を+の方向(正方向)とし、その逆方向を−の方向(負方向)とする。
●x軸方向については、X線発生部10からX線検出部20へ向かう方向から見て右手方向を+の方向とし、その逆方向を−の方向とする。
●z軸方向については、鉛直方向上向きを+の方向とし、その逆方向を−の方向とする。
昇降部40は、鉛直方向に沿って延びるように立設された支柱50に係合している。昇降部40は、上部フレーム41と下部フレーム42とが、支柱50に係合する側の反対側に突出しており、略U字状の構造を有している。
上部フレーム41には、旋回アーム30の上端部分が取り付けられている。このように旋回アーム30は、昇降部40の上部フレーム41に吊り下げされており、昇降部40が支柱50に沿って移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
下部フレーム42には、被写体M1(ここでは人の頭部)を左右から固定するイヤロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される被写体保持部421が設けられている。旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降されて適当な位置に合わせられ、その状態で被写体M1が被写体保持部421に固定される。
図3に示すように、X線発生部10、X線検出部20、旋回アーム30、昇降部40は、防X線室70内に収容されている。この防X線室70の壁の外側に、操作表示部600が備え付けられている。操作表示部600には、液晶モニタ等で構成される表示部61と、各種ボタンで構成される操作パネル62とが付加されている。操作パネル62は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定することにも用いられる。
情報処理装置8は、通信ケーブルによって本体部1との間で各種データを送受信する。ただし、本体部1と情報処理装置8との間で、無線的にデータのやり取りが行われてもよい。情報処理装置8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部80を備えている。情報処理本体部80は、本体部1で取得された投影データを適宜に加工して、各撮影モードに応じたデータを生成する。例えば、X線CT撮影モードの場合では、投影データからボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。
情報処理本体部80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置で構成される表示部81およびキーボード、マウス等の入力装置で構成される操作部82が接続されている。オペレータは、操作部82を介して情報処理装置8に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、操作部82の機能の一部または全部を備えることとなる。
なお、図示を省略するが、昇降部40に固定されたアームの先に、セファロ撮影時に使用されるセファロスタットを設けてもよい。具体的には、例えば特開2003−245277号公報に開示されているセファロスタット等を採用することができる。このようなセファロスタットには、例えば、頭部を定位置に固定する固定具やセファロ撮影用のX線検出器が備えられている。
なお、旋回軸31の軸方向で比較して、必ずしもX線検出部20とX線発生部10とを同じ高さに配置する必要はない。図3に示すX線撮影装置100では、X線検出部20がX線発生部10に対し、旋回軸31の軸方向で比較して若干高い位置に配置される。
この配置により、X線検出部20を被写体M1の肩に当接することなく頭部に接近させることができ、X線検出部20を被写体M1の頭部に接近させて旋回アーム30を旋回させてもX線検出部20が被写体M1の肩部に当接することがない。
図3に示すX線撮影装置100では、図1(a)に示されるX線束中心CBは、X線発生部10よりも若干高い位置のX線検出部20に向けて、前述の旋回軸31の軸方向と平行な方向をz軸方向とするxyz直交座標系で考えると、+y方向のベクトルと+z方向のベクトルを加算したベクトルの方向に打上げるように照射される。
図4は、旋回アーム30及び上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。また図5は、上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。なお図4は、X線CT撮影装置100を側方から見たときの旋回アーム30、上部フレーム41を示す図であり、図5は、上方から見たときの上部フレーム41を示す図である。
上部フレーム41は、旋回アーム30を前後方向(Y軸方向)に移動するYテーブル35Y、及び、Yテーブル35Yに支持されて横方向(X軸方向)に移動するXテーブル35Xで構成されるテーブル35を備えている。また、上部フレーム41は、Yテーブル35Yを駆動するY軸モータ60Yと、Yテーブル35Yに対してXテーブル35XをX方向に移動させるX軸モータ60Xと、Xテーブル35Xと旋回アーム30とを連結する旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータ60Rを備えている。なお、本実施形態では、旋回軸31が鉛直方向に沿って延びるように構成されているが、旋回軸は鉛直方向に対して任意の角度で傾いていてもよい。例えば、旋回軸31を水平に設定し、被写体保持部421を、患者を水平に載置する寝台などで構成するようにしてもよい。テーブル35、Y軸モータ60Y、X軸モータ60Xは、旋回軸31をX軸方向とY軸方向からなる二次元平面内で自在に移動できる二次元移動機構35Mとして機能する。
旋回軸31と旋回アーム30の間にはベアリング37が介在しており、旋回軸31に対する旋回アーム30の回転を容易にしている。旋回用モータ60Rは旋回アーム30の内部に固定されており、ベルト38により旋回軸31に回動力を伝達して、旋回アーム30を旋回させる。旋回軸31、ベアリング37、ベルト38及び旋回用モータ60Rは、旋回アーム30を旋回させる旋回機構の一例であり、旋回アーム30の旋回機構はこのようなものに限定されない。
X線CT撮影装置100では、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y及び旋回用モータ60Rを、予め決められたプログラムに従って駆動することによって、旋回アーム30を旋回させながら、Xテーブル35X及びYテーブル35Yを前後(Y方向)及び左右(X方向)に移動できる。
{X線発生部10}
図6は、X線発生部10を示す縦断面図である。また、図7は、ビーム成形機構16を示す斜視図である。図6に示すように、X線発生部10は、X線発生部10の備える各構成を収納するためのハウジング11を備えている。ハウジング11は、回転機構12を介して、旋回アーム30に連結されている。
回転機構12は、旋回アーム30の内部に固定されている回動用モータ121と、旋回アーム30に固定された垂直軸122と、回動用モータ121と垂直軸122とを連結する歯車機構123と、ハウジング11と垂直軸122に固定された固定部材124とを有する。
ハウジング11は、後述の本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する回動用モータ121の駆動によって、垂直軸122周りに水平面内で回転可能となるように構成されている。
ハウジング11の内部には、X線発生器13が収容されている。X線発生器13は、X線検出部20に対向する部分(図6の(+y)側)を除いて、X線遮断ケース14に覆われている。このX線遮断ケース14はX線検出部20に対向する領域にビーム成形板15を備えている。そしてビーム成形板15は、ビーム成形機構16に取り付けられている。X線遮断ケース14の内部にはX線管9が収容されている。
なお、旋回アーム30のハウジングとX線発生部のハウジング11を一体とし、X線発生部10が回転機構12を介して旋回アーム30に連結された構造として、ハウジング11の内部で回転機構12によってX線発生器13が回動されるようにしてもよい。
図7に示すように、ビーム成形機構16は、複数のガイドローラ161を介して複数の垂直ガイドレール162に沿って昇降自在に支持されたブロック163を有する。ブロック163は、X線発生器13から出射されたX線をX線検出部20に向けて案内するX線通過孔164(図6参照)を備えている。
ブロック163は、ハウジング11に固定された昇降モータ165にネジ機構を介して連結されている。昇降モータ165を駆動することにより、X線発生部10は、X線の照射角度をZ軸方向に移動できる。これにより、X線発生部10を上下動させることなく、X線の照射角度を上下に移動できる。この構成により、例えばX線透過孔164の前面に後述するビーム透過孔151を配置した状態でX線コーンビームの照射角度を上下に移動させ、所望の部位のX線CT撮影をすることが可能である。このとき、X線検出器21の検出面には、例えばX線コーンビームの照射方向が上であっても下であっても該X線コーンビームを検出できる上下の幅を有するものが適宜採用される。
ブロック163の前方(X線通過孔164の外部)には、X線発生器13から出射されたX線ビームを成形する複数のX線を通過させる開口が設けられたビーム成形板15が配置されている。このビーム成形板15は、照射範囲を規制する規制部となっている。ビーム成形板15は、ブロック163の前面に固定された複数の案内ローラ166によって水平方向(X軸方向)に移動可能に支持されている。
ビーム成形板15の一端には、連結アーム167が連結されている。連結アーム167には、ナット168が取り付けられている。ブロック163は、ビーム成形板15の長手方向に伸びるネジ軸169を回転自在に支持する。ナット168はネジ軸169に螺合されており、ネジ軸169がブロック163に固定されたモータ170に連結されている。
ビーム成形板15は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作するモータ170の駆動によって、ブロック163の前部を水平方向の一方向に、すなわちX線ビームと交差する方向に移動する。
本実施形態において、ビーム成形板15は、3種類のX線を通過させる開口部15Hを有する。これら3種類の開口部であるX線通過開口(一次スリット、コリメータ)には、X線ビームをコーン状(角錐状の場合も含む。)に成形するための長方形または正方形のCT撮影用のビーム通過孔151と、X線ビームを細長い帯状に成形して細隙ビームとするための縦長のセファロ撮影用のビーム通過孔152と、同じく縦長のパノラマ撮影用のビーム通過孔153とが含まれる。
例えばCT撮影用のビーム通過孔151をX線発生器13に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線のコーンビームが出射される。なお、CT撮影用のビーム通過孔151の縦長と横長が同じとすると、X線ビームはX線の進行方向と直交する横断面が略正方形を有することとなる。
セファロ撮影用のビーム通過孔152またはパノラマ撮影用のビーム通過孔153をX線発生器13に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて、横断面が縦長の略平坦な板状(ただし、厳密には角錐台)のX線ビームが出射される。
なお、昇降部40に固定したセファロ用のアームの先にセファロ撮影用のセファロスタットを設けたセファロ撮影装置の構造は、従来の構成を含む種々の構成をとり得る。具体的には、本願出願人の出願に係る特開2003−245277号公報の図8に開示する構造のようなものが適宜採用される。
またビーム成形板15の前面には、水平方向に移動して、ビーム通過孔151の開口を部分的に遮断する遮蔽板171が設けられている。遮蔽板171は、水平移動機構(図示せず)に接続されており、ビーム成形板15に対して水平方向に移動可能に構成されている。ビーム成形機構16は、本体制御部60による制御信号に基づいて、遮蔽板171を水平方向に移動させることにより、ビーム通過孔151を通過するX線を部分的に遮断する。これにより、X線ビームの水平方向の広がり(幅)が規制される。なお、このX線の通過を規制する機能は、X線CT撮影であって、比較的小さい範囲を撮影するモードを実行する際に使用される。以上のように、本実施形態では、ビーム成形機構16によって、X線の通過を規制する規制部が構成されている。
X線コーンビームの水平方向の広がりの開度を遮蔽板171で調整してもよいが、ブロック163のX線通過孔164の水平方向の幅を、ビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅とし、モータ170の駆動によるビーム成形板15の移動によりX線コーンビームの水平方向の広がりの開度を調整するように構成してもよい。
ビーム成形板15のビーム通過孔151がX線通過孔164を通過するX線を全く妨げないようX線通過孔164と重なる位置にくるよう、ビーム成形板15をブロック163に対して変位可能である。この場合、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅で照射できる。
ビーム成形板15のビーム通過孔151がX線通過孔164を通過するX線を規制する位置にくるよう、ビーム成形板15をブロック163に対して変位可能である。この場合、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅より限定した幅で照射できる。
X線コーンビームの水平方向の広がりの開度はビーム成形板15の位置の制御で決定される。
ビーム通過孔151とX線通過孔164とは、X線の通過を部分的に遮断する開口の例である。
なお、図示を省略するが、ビーム成形板15の前後のいずれかに別の副ビーム成形板を備えるようにしてもよい。この副ビーム成形板は、ビーム成形板15を駆動する駆動モータ170と同様の別の駆動モータでビーム成形板15と同方向に駆動可能である。案内ローラなどのガイド機構は案内ローラ166と同様のものを採用することができる。
具体的には、本願出願人の出願にかかる実公平7−15524号公報の図3、図4に開示のある複数のマスク板4、5の重ね合わせでX線の規制を行うX線絞り装置のような構造のものを用いることができる。
この副ビーム成形板にもビーム通過孔が設けられており、副ビーム成形板のビーム通過孔の水平方向の幅を、ビーム成形板15のビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅またはそれ以上の幅とし、ビーム成形板15に対して、副ビーム成形板が相対的に変位可能とされる。
副ビーム成形板のビーム通過孔がビーム成形板15のビーム通過孔151を通過するX線を全く妨げないようビーム通過孔151と重なる位置にくるよう、副ビーム成形板をビーム成形板15に対して相対的に変位可能である。この場合、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅で照射できる。
副ビーム成形板のビーム通過孔がビーム成形板15のビーム通過孔151を通過するX線を規制する位置にくるよう、副ビーム成形板をビーム成形板15に対して相対的に変位可能である。この場合、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅より限定した幅で照射できる。
X線コーンビームの水平方向の広がりの角度や位置はビーム成形板15と副ビーム成形板の相対的位置の制御で決定される。
CT撮影用のビーム通過孔151は、方形に限定されるものではなく、任意の形状をとり得る。例えば、ビーム通過孔151を円形に形成して、撮影対象領域が球状となるようにしてもよい。
{X線検出部20}
図8は、旋回アーム30を示す正面図である。なお、図8では、X線検出部20の内部構造も一部図示している。X線検出部20は、X線検出部20の各構成を収納するためのハウジング200を備えている。
ハウジング200には、X線を検出するためのX線検出器21と、X線検出器21を内部に保持する検出器ホルダ22と、検出器ホルダ22を水平方向にスライド移動可能に支持するガイドレール23と、ハウジング200に取り付けられた移動モータ24とを備えている。
X線検出器21は、X線を検出する検出素子である半導体撮像素子を縦方向及び横方向に2次元に平面状に配列することによって構成された検出面を有するX線センサを備えている。なお、X線センサとしては、例えばMOSセンサやCCDセンサのようなX線センサが考えられるが、これらに限られず、CMOSセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)やX線蛍光増倍管(XII)、その他の固体撮像素子など、様々なものを用いることができる。
検出器ホルダ22は、移動モータ24の回転軸に取り付けたローラに当接している。検出器ホルダ22は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する移動モータ24により駆動されて、ガイドレール23に沿って水平方向に移動する。
図9は、検出器ホルダ22を示す斜視図である。検出器ホルダ22は、X線発生部10に対向する側に、ビーム通過孔(2次成形用スリットないしコリメータ)221,222を有する。ビーム通過孔221,222は、上述のビーム通過孔151,153のそれぞれの形状に対応しており、例えば、ビーム通過孔151を通過するX線ビームは、ビーム通過孔221でより高い精度で成形されてX線検出器21に投射される。
なお、ビーム通過孔(2次成形用スリットないしコリメータ)221,222を設けた部材は、省略することが可能である。
X線検出器21は、方形のビーム通過孔151に対応して方形に撮像素子が配列されて構成された検出素子群211と、縦長のビーム通過孔153に対応するように縦長に撮像素子が配列されて構成された検出素子群212とを備えている。X線検出器21は、検出器ホルダ22が形成するスロット224の内部に挿入される。
スロット224にX線検出器21がセットされると、略正方形のビーム通過孔221の背後位置に、略正方形の検出素子群211が配置される。また、ビーム通過孔222の背後位置に検出素子群212が配置される。
X線CT撮影時には、検出素子群211がビーム通過孔151を通過したX線に照射される位置に、パノラマ撮影時には、検出素子群212がビーム通過孔153を通過したX線に照射される位置にくるよう、検出器ホルダ22が移動制御される。
なお、本実施形態ではX線検出器21に検出素子群211,212を設けているが、検出素子群211のみを設けて、X線CT撮影においてもパノラマ撮影においてもビーム通過孔151とビーム通過孔153の選択のみを行って同じ検出素子群211でX線を検出するようにしてもよい。その際、X線で照射される範囲のみの素子を読み出すように制御すると、画像信号送信の効率がよくなる。
また、検出素子群211,212をそれぞれ異なるX線検出器21上に設け、複数のX線検出器21を交換して用いるように構成されていてもよい。
図10は、X線CT撮影装置100の構成を示すブロック図である。図10に示すように、旋回用モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Yは、所定位置の被写体M1に対して旋回アーム30を相対的に移動させる駆動源となる駆動部65を構成している。この駆動部65及び被写体保持部421は、X線発生器13を含むX線発生部10及びX線検出器21を含むX線検出部20を、被写体M1に対して相対的に移動させる移動機構として機能する。駆動部65は、旋回アーム30を、旋回用モータ60Rを主要な要素として旋回駆動する旋回駆動機構の一例である。
ここで、X線CT撮影の場合に、X線発生部10とX線検出部20を、被写体M1に対して旋回させる構成について言及する。
X線CT撮影の場合に、X線発生部10とX線検出部20を、被写体M1に対して旋回させる構成は、旋回軸31を特定の位置に固定して旋回アーム30を旋回軸31の軸周りに旋回させるものに限らない。
X線CT撮影においては、Xテーブル35X、Yテーブル35Yによって、旋回軸31を二次元平面(ここでは、水平面)内の特定の位置まで移動させた後、旋回軸31を当該位置に固定し、旋回アーム30を旋回軸31の軸周りに旋回させ、X線発生部10とX線検出部20を回転することができる。この場合、X線発生部10とX線検出部20の回転軸の位置は、旋回軸31の位置と一致することとなる。
さらに、X線CT撮影において、Xテーブル35XとYテーブル35Yとの駆動によって、旋回軸31を2次元平面内で移動させながら、同時に、旋回アーム30を旋回軸31周りに旋回させることができる。このような旋回軸31の移動による旋回アーム30の水平面内の移動と、旋回軸31周りの旋回アーム30の旋回との合成運動によって、X線発生部10とX線検出部20とを、旋回軸31の位置とは別の位置に設定される特定の回転軸の軸周りに回転させることができる。このような、機械的な旋回軸31とは別の箇所にX線発生部10とX線検出部20の回転軸を設定する例としては、特開2007−29168号公報に記載されたX線CT撮影装置の構成を適宜応用することが可能である。
本体制御部60は、駆動部65を制御するための制御プログラムや、X線発生部10及びX線検出部20の動作を制御するため制御プログラムを含むプログラムPG1を実行するCPU601と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG1を記憶する記憶部602と、ROM603と、RAM604とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
CPU601は、記憶部602に記憶されたプログラムPG1をRAM604上で実行することによって、各種の撮影モードに合わせて、X線発生部10を制御するX線発生部制御部601a、X線検出部20を制御するX線検出部制御部601b、撮影モードを選択する撮影モード選択部601cとして機能する。なお、本体制御部60を構成するCPU601と情報処理本体部80を構成するCPU801とは、総合的に1つの制御系を構成している。
本体制御部60に付加されている操作パネル62は、複数の操作ボタン等で構成されている。なお、操作パネル62に代わる、もしくは操作パネル62に併用される入力装置としては、操作ボタンのほか、キーボード、マウス、タッチペン等のデバイスを採用することができる。また、音声による指令をマイク等で受け付けて、これを認識するようにしてもよい。つまり、操作パネル62は操作手段の一例である。したがって、操作手段としては、操作者の操作を受け付けることができるのであればどのようなものでも構わない。また、表示部61をタッチパネルで構成することも可能であり、この場合、表示部61が操作パネル62の機能の一部または全部を備えることとなる。
表示部61には、本体部1の操作に必要な各種情報を文字や画像等で表示される。ただし、情報処理装置8の表示部81に表示されている表示内容を、表示部61にも表示されるようにしてもよい。また、表示部61に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作等を通して本体部1に各種の指令ができるようにしてもよい。
撮影モード選択部601cは、操作パネル62、あるいは情報処理装置8に入力されたオペレータの指令に従って、X線CT撮影モードと、パノラマ撮影モードと、セファロ撮影モードといった、各種撮影モードの中から、指定された撮影モードを実行するように、選択信号を発信し、本体部1の各要素の動作を制御する。
本体制御部60に関する操作及び表示は操作表示部600でも実現できるように構成することができる。ただし、操作及び表示機能は、重複して持たせてもよいが、操作表示部600に特有の操作、表示をさせるように構成してもよい。また、操作表示部600にも制御部を設けて、本体制御部60の制御の一部を分担させてもよいし、操作表示部600に全面的に本体制御60を設けるようにしてもよい。
X線撮影装置100は、X線CT撮影モードでは、被写体M1を挟んでX線発生部10とX線検出部20とを対向させた状態で、被写体M1の撮影対象領域(生体器官等)に角錐状のX線ビームBX1(コーンビーム)を照射しながら、旋回アーム30を旋回軸31周りに旋回させる。また、X線撮影装置100は、パノラマ撮影モードでは、縦長のX線ビームBX1を生体器官(具体的には顎骨等)に照射しながら、旋回軸31周りに旋回させつつ旋回アーム30を所定の軌道上を移動させる。また、X線撮影装置100は、セファロ撮影モードでは、定位置に固定された被写体M1の頭部に対し、所定方向からX線を照射する。
X線撮影装置100は、以上のように各種撮影モードを実行して、本体部1にて取得した投影データを情報処理装置8に送信する。また、本体部1は、撮影モードの指令や撮影位置を示す座標データ等を情報処理装置8から受信して、X線撮影を行う。
情報処理本体部80は、各種プログラムを実行するCPU801と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG2を記憶する記憶部802とROM803と、RAM804とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
CPU801は、記憶部802に記憶されたプログラムPG2をRAM804上で実行することによって、操作部82で指定した領域の座標を算出して、撮影対象領域R1を特定する撮影領域特定部801aと、投影データから三次元データを再構成する等の演算処理を行う演算処理部801bとして機能する。
なお、プログラムPG1,PG2は、所定のネットワーク回線等を介して本体制御部60または情報処理本体部80が取得するようにしてもよいし、あるいは可搬性のメディア(CD−ROM等)に保存されたプログラムPG1,PG2を、所定の読取装置にて読み取ることで取得するように構成してもよい。
本実施形態では、オペレータが操作パネル62または操作部82を操作することによって、撮影対象領域が指定される。具体的には、生体の一部または全体を表示する画面(イラストやパノラマ画像等)が表示部61または表示部81に表示され、オペレータが撮影したい領域を操作パネル62または操作部82を介して指定することで、特定の撮影対象領域が指定される。なお、操作パネル62もしくは操作部82を介した部位の名称の入力やコード入力等に基づいて、撮影対象領域の指定が直接的に行われるように構成してもよい。
<1.3.X線撮影装置の動作>
次にX線撮影装置100の動作について説明する。なお、以下に説明するX線撮影装置100の動作は、特に断らない限り、本体制御部60または情報処理本体部80によって制御されるものとする。
図11は、X線撮影装置100の動作を示す流れ図である。X線撮影装置100では、まず撮影モードの選択が実行される(ステップS1)。上述したように、X線撮影装置100は、X線CT撮影、パノラマ撮影、セファロ撮影を実行することが可能となっており、ステップS1において、いずれかの撮影モードが選択される。ステップS1において選択された撮影モードに応じて、X線撮影装置100は、X線CT撮影モード(ステップS10)、パノラマ撮影モード(ステップS20)、セファロ撮影モード(ステップS30)のそれぞれの撮影モードに入る。
X線CT撮影モードに入った場合(ステップS10)、X線撮影装置100は、撮影範囲の選択を実行する(ステップS11)。具体的には、撮影範囲を指定するための指定画面が表示部61または表示部81に表示され、オペレータが、画面を確認しながら、操作手段(操作パネル62または操作部82)を介して撮影対象範囲を指定する。X線撮影装置100は、この指定に基づいて撮影範囲を選択する。
ステップS11にて、撮影対象領域として、比較的広い領域を選択した場合、X線撮影装置100は、大きいFOV撮影モードの動作を開始する(ステップS12)。一方、狭い撮影対象領域を選択した場合、X線撮影装置100は、小さいFOV撮影モードの動作を開始する(ステップS13)。
ステップS12またはステップS13に進むと、X線撮影装置100は、それぞれに応じた撮影動作を実行する。具体的には、まず、旋回アーム30が所定の撮影開始位置に移動される(ステップS14)。ここでは、被写体M1の撮影対象領域と、X線発生部10とX線検出部20との相対的な位置関係が、あらかじめ定められたX線CT撮影用の位置関係となるように合わせられる。
そして次に、焦点サイズの調整が行われる(ステップS15)。具体的には、小さいFOV撮影モードの場合に、X線発生器13から射出されるX線ビームBXのうち、焦点サイズがより小さい部分のX線ビームを撮影対象領域に向けて照射するように、X線の規制部からなるビーム成形機構16を駆動制御する。この詳細については後述する。
焦点サイズの調整が完了すると、X線撮影装置100は、駆動部65を制御することによって、旋回アーム30を被写体M1周りに旋回させながら、X線ビームを撮影対象領域に照射する(ステップS16)。そして、撮影対象領域を透過したX線をX線検出器21(具体的には、検出素子群211)で検出して、X線の投影データを収集する。
また、ステップS1での選択によって、X線撮影装置100がパノラマ撮影モードに入った場合には(ステップS20)、旋回アーム30が所定のパノラマ撮影開始位置に移動される(ステップS21)。これにより、被写体M1の撮影対象領域と、X線発生部10と、X線検出部20との間の相対的な位置関係が、パノラマ撮影用にあらかじめ定められた位置関係となるように合わせられる。
そして次に、焦点サイズの調整が行われる(ステップS22)。具体的には、X線発生器13から射出されるX線ビームBX1のうち、焦点サイズのより小さい部分のX線がビーム成形板15のビーム通過孔152を通過するように、ビーム成形板15が変位される。この詳細については後述する。
焦点サイズの調整が完了すると、駆動部65を制御することによって、旋回アーム30を被写体M1周りに旋回させながら、パノラマ撮影用の軌道上を移動させ、ステップS22で調整した焦点サイズのX線ビームを撮影対象領域に照射する(ステップS23)。そして、撮影対象領域を透過したX線をX線検出器21(具体的には、検出素子群212)で検出し、X線の投影データを収集する。
また、ステップS1の選択によって、X線撮影装置100がセファロ撮影モードに入った場合には(ステップS30)、X線発生部10の回動用モータ121が駆動される(ステップS31)。これによって、X線発生部10が、規定された方向を向くように変位される(ステップS31)。具体的には、例えば特開2003−245277号公報に記載されているように、セファロスタットに固定された被写体M1の頭部に向けて、X線発生部10からX線が照射可能な位置に変位される。
そして次に、焦点サイズの調整が行われる(ステップS32)。ここでは、X線発生器から射出されるX線ビームBX1のうち、焦点サイズがより小さい部分のX線がビーム成形板15の通過孔152を通過するように、ビーム成形板15が変位される。
そして回動用モータ121を駆動することによって、X線発生部10を垂直軸122周りに回動させながら、セファロ撮影用のX線ビームを撮影対象領域に照射する。そして、撮影対象領域を透過したX線をセファロスタットのX線検出器にて検出して、X線の投影データを収集する。
なお、必ずしも回動用モータ121を回動させつつX線ビームを照射させる構造にしなくとも、X線発生部が規定された方向を向いた後は回動を止め、X線発生器13の前面のビーム成形板15を移動させてビーム通過孔152を移動させつつX線ビームで被写体M1を走査するようにしてもよい。すなわち、本願出願人の出願にかかる特開2003−245277号公報に記載された構造を採用することも可能である。
また、回動用モータ121を駆動するのではなく、旋回用モータ60Rを駆動することによって、旋回アーム30を旋回させつつ、セファロ撮影が行われてもよい。
ステップS16,ステップS23,ステップS33において収集されたX線の投影データは、本体部1から情報処理装置8に送信される(ステップS2)。これらの投影データは、情報処理装置8において加工され、各種撮影モードに対応したX線画像が生成される。生成されたX線画像は、適宜表示部81に表示される。
次に、ステップS15,ステップS22、ステップS32における焦点サイズの調整について、図12を参照しつつ説明する。図12は、第1実施形態に係るX線撮影を実行する様子を示すX線撮影装置100の概略上面図である。なお、同図中、(a)は、大きいFOV撮影モードを実行する様子を示すものであり、(b)は、小さいFOV撮影モードを実行する様子を示すものであり、(c)は、パノラマ撮影モードを実行する様子を示すものである。なお、本願においては、大きいFOV撮影モードを大照射野X線CT撮影モード、小さいFOV撮影モードを小照射野X線CT撮影モードと呼ぶこともある。また、図12(a)〜(c)では、それぞれの撮影モードにおける開口部15Hの部分を円で囲まれた拡大図で示している。
図12に示すそれぞれの撮影モードの例では、図1(a)に示した広がりSPに関する照射範囲を以下のとおりとしている。すなわち、
図12(a)の大照射野X線CT撮影モードの照射範囲をSP1とし、開口部15Hの開口幅を15H1とし、
図12(b)の小照射野X線CT撮影モードの照射範囲をSP2とし、開口部15Hの開口幅を15H2とし、
図12(c)のパノラマ撮影モードの照射範囲をSP3とし、開口部15Hの開口幅を15H3とする。
また、図12に示した例では、X線ビームBX1,BX2,BX3はいずれも単一のX線検出器21の検出面で受光されるが、受光される範囲がそれぞれで異なっている。X線検出器21の検出面の上下幅(旋回軸31の軸方向と同じ方向の幅)は、少なくともパノラマ撮影を行うX線ビームBX3を充分受光できる大きさに設定される。
照射範囲SP1、SP2、SP3は、図1(c)の視線方向Dから見たX線ビームBXの照射範囲(広がり)SPと同様のX線ビームBX1,BX2,BX3の照射範囲である。
SP1、SP2、SP3は照射範囲の大きさが異なる。照射範囲については、SP1が最も大きく、SP2、SP3の順に小さくなっている。また、開口部15Hの開口幅は、15H1>15H2>15H3の広狭関係にある。
また、図1(a)に示した広がりSPに関する照射範囲に関し、X線ビームの陰極91に近い側の出射範囲の規制量を以下のとおりとしている。すなわち、
図12(a)の大照射野X線CT撮影モードの規制量をCR1とし、
図12(b)の小照射野X線CT撮影モードの規制量をCR2とし、
図12(c)のパノラマ撮影モードの規制量をCR3とする。
ここで、規制量CR1,CR2,CR3は、図12(a)の拡大図で示すように、開口部15Hの陰極側の端部15HCの位置を基準位置POS1として、各撮影モードにおける端部15HCの基準位置POS1に対する距離で表される(図12(a)〜(c)の拡大図参照)。図12に示すように、X線の照射範囲が狭くするほど、この規制量は大きくなっており、規制量CR1,CR2,CR3の大小関係は、以下のように表される。
CR1(=ゼロ)<CR2<CR3
また、図12(d)は、X線発生源であるX線発生器13の陰極91及び陽極92を結ぶ直線93Lと、各々の撮影モードにおいて、X線発生部10から出射されるX線ビームBX1,BX2,BX3の中心軸L1,L2,L3とが成す角度θ1,θ2,θ3を示している。
中心軸L1,L2,L3は、図1(c)の視線方向Dから見たX線ビームBXの照射範囲(広がり)SPと同様の照射範囲SP1、SP2、SP3の広がりの中央部分を通る。
中心軸L1,L2,L3のそれぞれの軸方向はX線ビームが照射されていく方から逆にターゲット面94Sを見るときの視線方向と考えることもできる。中心軸L1,L2,L3のそれぞれの視線方向ごとに焦点サイズが異なる。
まず、図12(a)に示すように、大きいFOV撮影モードが実行される場合、X線発生部からは、比較的大きい撮影対象領域R1全体に対して、X線ビームBX1が出射される。このX線ビームBX1は、X線発生器13で発生したX線ビームBXが、ビーム通過孔151で成形したものである。また、X線撮影装置100は、旋回アーム30を旋回することによって、撮影対象領域R1の中心点C1を中心にして、X線発生部10及びX線検出部20を180度以上回転させる。このようにX線発生部10を回転させながら、撮影対象領域R1にX線ビームBX1が照射される。
これに対して、図12(b)に示すように、小さいFOV撮影モードが実行される場合、X線発生部10からは、比較的小さい撮影対象領域R2全体に対して、X線ビームBX2が照射される。このX線ビームBX2の照射範囲は、X線ビームBX1よりも狭くなるが、これは、ビーム成形板15のビーム通過孔151の開口が、遮蔽板171によって部分的に遮断されることによって実現される。
図示を省略するが、ビーム成形板15にCT撮影用に複数の大きさのビーム通過孔を設け、ビーム成形板15を移動してX線発生器13のX線通過孔164の前に選択的にビーム通過孔が来るようにしてもよい。
また、複数の大きさのビーム通過孔は、例えば複数の大きさの異なる正方形のビーム通過孔で構成してもよい。
撮影対象領域R1の中心点C1に対して、撮影対象領域R2の中心点C2は偏心した位置にあるが、前述のX軸モータ60X、Y軸モータ60Y、旋回用モータ60Rの制御によって、旋回軸31と旋回アーム30を駆動して、X線発生器13とX線検出器21が中心点C2を中心に旋回するように駆動制御できる。
ここで、図1,2で説明したように、X線ビームBX1のうち、陽極92側(−x側)のX線は、陰極91側(+x側)のX線よりも、見かけ上のX線発生面の大きさが小さくなっている。本実施形態では、このような焦点サイズの小さい部分のX線をCT撮影に用いるために、遮蔽板171が陰極91側のX線の通過を遮断して、X線ビームBX2を成形している。
このようにして成形したX線ビームBX2の焦点サイズ(X線ビームBX2の中心軸L2上から見たX線発生面の見かけ上の大きさ)は、X線ビームBX1の焦点サイズ(X線ビームBX1の中心軸L1上から見たX線発生面の見かけ上の大きさ)よりも小さくなることはもちろん、陽極92側(−x側)のX線の通過を遮断した場合に比べて小さくなる。
また図12(d)に示すように、直線93LとX線ビームBX2の中心軸L2との成す角度θ2は、直線93LとX線ビームBX1の中心軸L1との成す角度θ1よりも大きくなる。
このように、撮影対象領域が比較的狭く、照射するX線ビームBX2の照射範囲がX線ビームBX1よりも狭い場合に、焦点サイズの小さいX線を用いたX線CT撮影を行うことによって、X線画像にぼけ(いわゆるピンぼけ)が生じることを抑制し、画像の解像度を向上することができる。
また、図12(c)に示すように、パノラマ撮影モードが実行される場合、X線発生部10からは、非常に狭いX線ビームBX3が撮影対象領域R3に照射される。なお、撮影対象領域R3は、CT撮影領域ではなくパノラマ撮影領域を含む被写体M1(例えば、人体頭部)に相当する。このX線ビームBX3は、ビーム成形板15のビーム通過孔152によって成形される。ここで、上述の小さいFOV撮影モードの場合と同様に、X線撮影装置100は、X線ビームBX1のうち、焦点サイズの小さい陽極92側のX線のみを、ビーム通過孔152を通過させる。
頭部全体が撮影できる程度の広さの検出面を有するX線検出器21の検出面の全域で大きいFOV撮影モードのX線CT撮影を、一部の領域で小さいFOV撮影モードのX線CT撮影を、さらに限定された領域でパノラマ撮影モードでのパノラマ撮影を行うようにしてもよいし、図9に示すX線検出器21のように、X線CT撮影用の検出素子群211とパノラマ撮影用の検出素子群212とを個別に備えるX線検出器で、検出素子群211の全域で大きいFOV撮影モードのX線CT撮影を、一部の領域で小さいFOV撮影モードのX線CT撮影を、検出素子群212でパノラマ撮影モードでのパノラマ撮影を行うようにしてもよい。
なお、図9に示すX線検出器21を用いる場合、CT撮影とパノラマ撮影とでX線ビームが選択された検出素子群に照射されるように、検出器ホルダ22が駆動制御される。
また、各撮影モードに対応する専用の検出面を個別に備えていてもよい。
また、共通の検出面を異なるモードで用いる場合、X線が照射される範囲のみ検出面領域を読み出すようにすると、信号の転送処理が効率的である。
以上のようにX線を通過させた場合、X線ビームBX3の焦点サイズ(X線ビームBX3の中心軸L3上から見たX線ビームBX3のX線発生面の見かけ上の大きさ)は、X線ビームBX1またはBX2の焦点サイズよりも小さくなる。また図12(d)に示すように、直線93LとX線ビームBX3の中心軸L3との成す角度θ3は、角度θ1,θ2よりも大きくなる。
すなわち、直線93LとX線ビームBX1、BX2、BX3の各中心軸L1、L2、L3との成す角度をセンタービーム照射角と称するとして、それぞれのセンタービーム照射角θ1、θ2、θ3は、次の大小関係にある。
θ1<θ2<θ3
ここでは、X線ビームの照射範囲が小さい撮影モードほど、直線93LとX線ビームの中心軸とがなす角度が大きくなるよう設定されている。
直線93Lと中心軸L1、L2、L3は旋回軸31に垂直であり、同一平面上に設定される。
X線発生器13とX線検出器21はパノラマ撮影軌道をとりつつX線ビームBX3を照射する必要があるが、前述のX軸モータ60X、Y軸モータ60Y、旋回用モータ60Rの制御によって、旋回軸31と旋回アーム30を駆動して、X線発生器13とX線検出器21がパノラマ撮影軌道をとるように駆動制御できる。
ここで、X線CT撮影の場合に、X線発生部10とX線検出部20を、被写体M1に対して旋回させる構成についての前述の説明と重複する部分はあるが、X線発生部10とX線検出部20の移動制御について言及する。
旋回軸31はXテーブル35XとYテーブル35Yで2次元に移動制御可能であるので、Xテーブル35XとYテーブル35Yによる旋回軸31の2次元の移動と旋回アーム30の旋回軸31の軸周りの旋回を同時に行う合成運動によって、X線発生部10とX線検出部20を移動させることが可能である。
旋回軸31と別の位置に設定した回転軸の軸周りにX線発生部10とX線検出部20を真円の軌道を描くように旋回させることも可能であるし、真円を描かない旋回移動をさせることも可能である。
また、旋回軸31の2次元の移動は停止して、旋回アーム30の旋回軸31の軸周りの旋回運動のみを行い、X線発生部10とX線検出部20の旋回中心を旋回軸31の軸と同じ位置に置いてX線発生部10とX線検出部20を旋回させることも可能であるし、旋回アーム30の旋回軸31の軸周りの旋回運動は停止して、旋回軸31の2次元の移動のみを行うことでX線発生部10とX線検出部20を同じ方向に平行移動させることも可能である。
この移動制御により、パノラマ撮影において従来の旋回アーム30ないしX線発生部10とX線検出部20の移動の軌道を修正し、Xテーブル35XとYテーブル35Yによる旋回軸31の2次元の移動と旋回アーム30の旋回軸31の軸周りの旋回を同時に行う合成運動によって、図12(c)に示すようにX線検出部20に対して斜めに入射するX線ビームBX3が従来の旋回アーム30ないしX線発生部10とX線検出部20の移動によって形成する移動軌跡と同じ軌跡を描く制御を行うことができる。
このように、本実施形態では、X線ビームの中心軸方向から見た焦点サイズが、X線CT撮影の場合よりも小さいX線ビームBX3を用いてパノラマ撮影を行うことによって、X線画像におけるぼけの発生を低減し、画像の解像度を向上することができる。
焦点サイズを変更するビーム成形機構16はX線発生部制御部601aで駆動制御される。CPU601はX線発生部制御部601aを中心とした照射制御部として機能する。X線発生部制御部601a自体を照射制御部と考えてもよい。
また、本実施形態では、X線発生部10内部で移動しないX線発生器13に対してビーム成形板15のビーム通過孔を移動させる構成を説明したが、図示しないX線発生器13の移動機構を設けて、X線発生部10内部で移動しないビーム成形板15のビーム通過孔に対してX線発生器13が移動(例えばX線発生器13がx軸方向に移動)する構成により、相対的に上記のX線発生器13に対するビーム成形板15のビーム通過孔の移動を実現してもよい。これはX線発生器13内部のX線管を変位させることによって、前記X線ビームの焦点サイズを変更する構成の例である。この場合、ビーム成形板15はビーム通過孔の開度のみ上述と同様に各撮影モードに応じて切換すればよい。
また、本実施形態では、大照射野X線CT撮影モードと小照射野X線CT撮影モードでCT撮影を行うものとするが、いずれの照射野でも旋回アーム30の旋回を止めて単純透視画像の撮影をすることも可能である。
大照射野X線CT撮影モードの照射範囲SP1、小照射野X線CT撮影モードの照射範囲SP2、パノラマ撮影モードの照射範囲P3、それぞれにおける前述の視線方向Dから見た広がりの角度や、大きいFOV撮影モードの撮影対象領域R1のサイズ、小さいFOV撮影モードの撮影対象領域R2のサイズ等は任意に設定できる。一例として、以下のような例を挙げる。
例えば、X線発生部10、X線検出部20の配置、旋回アーム30の長さの設定などにより、ターゲット面94SからX線検出器21までの距離を500〜550mm程度、好ましくは515mmまたはほぼ515mmとする。これは、パノラマ撮影を行うのに、従来より適切とされる範囲である。
以下は大照射野X線CT撮影モードの例である。撮影対象領域R1の直径を70mmから100mm、好ましくは80mmまたはほぼ80mmとする。照射範囲SP1の視線方向Dから見た広がりの角度は11〜16.5度、好ましくは13度またはほぼ13度に設定する。X線検出器21のX線検出面におけるX線ビームBX1の幅は103〜150mm、好ましくは120mmまたはほぼ120mmに設定する。これは、歯列弓の全域またはほぼ全域を含む程度の領域であり、価格が比較的低額にとどまる範囲のX線検出器のX線検出面に対応する。
以下は小照射野X線CT撮影モードの例である。撮影対象領域R2の直径を15mmから50mm、好ましくは40mmまたはほぼ40mmとする。照射範囲SP1の視線方向Dから見た広がりの角度は3〜8度、好ましくは7度またはほぼ7度に設定する。X線検出器21のX線検出面におけるX線ビームBX2の幅は25〜83mm、好ましくは67mmまたはほぼ67mmに設定する。これは、1〜5本の歯牙を、好ましい例では3、4本の歯牙を含む程度の領域であり、部分的な歯牙を観察すれば充分である場合に低いX線量で局所CT撮影を可能とするものである。
以下はパノラマ撮影モードの例である。パノラマ撮影モードの照射範囲SP3の視線方向Dから見た広がりの角度を0.45〜0.67度、好ましくは0.51度またはほぼ0.51度に設定する。X線検出器21のX線検出面におけるX線ビームBX3の幅は4〜6mm、好ましくは4.6mmまたはほぼ4.6mmに設定する。歯牙を透過する領域のX線ビームBX3の幅は部位によって異なり、3〜4mm程度であり、これにより鮮明なパノラマ画像が撮影できる。
無論以上は一例に過ぎないので、例えば、大照射野X線CT撮影モードの撮影対象領域R1の直径を、人間の頭部全体またはほぼ頭部全体が含まれるように、直径170mmまたはほぼ170mmに設定してもよい。
既に述べたように、X線撮影装置100は、特開2007−29168号公報に記載されたX線CT撮影装置と同様に、機械的な旋回軸31とは別の箇所にX線発生部10とX線検出部20の回転軸を設定することができる。X線撮影装置100は、旋回軸31の移動による旋回アーム30の水平面内での移動と、旋回軸31周りの旋回アーム30の旋回との合成運動によって、X線発生部10とX線検出部20とを、旋回軸31の位置とは別の位置に設定される特定の回転軸の軸周りに回転させる。この点について、図12(e)〜(h)を用いて具体的に説明する。なお、図12(e)〜図12(h)では、人間の頭部を被写体M1とし、また、歯列弓Sを図示している。
図12(e)、図12(f)は、図12(a)に示す旋回アーム30の駆動の一例である。なお、図12(f)は、旋回アーム30が図12(e)の状態から平面視で90°時計周りに旋回し、旋回軸31(旋回軸心31c)を、中心点C1を中心にして90°旋回(回動)した様子を示している。
旋回アーム30、旋回軸31の構造上、旋回アーム30は旋回軸31(厳密には旋回軸31の旋回軸心31c)周りに旋回する。一方、旋回軸31は二次元移動機構35Mにより、撮影対象領域R1の中心点C1を中心にして旋回(回動)する。旋回アーム30が旋回軸31(旋回軸心31c)の軸周りに旋回する旋回角度分だけ、旋回軸31(旋回軸心31c)が図示の矢印のように中心点C1を中心にして同方向に旋回(回動)し、位置PL1から位置PL2まで移動する。このとき、旋回軸31は、半径r1の円弧を描きながら移動する。この旋回アーム30の旋回は、CT撮影に必要な旋回角度分行われる。このような駆動制御により、X線発生部10とX線検出部20とを、旋回軸31(旋回軸心31c)の位置とは別の位置に設定される中心点C1を中心(すなわち回転軸)として、回転させることができる。
図12(g)、図12(h)は、図12(b)に示す旋回アーム30の駆動の一例である。なお、図12(h)は、旋回アーム30が図12(g)の状態から平面視で90°時計周りに旋回し、旋回軸31(旋回軸心31c)を、中心点C1を中心にして90°旋回(回動)した様子を示している。
図12(g)、図12(h)に示したX線撮影では、撮影対象領域R2、中心点C2の位置が、撮影対象領域R1、中心点C1とは異なっている。また、旋回軸31(旋回軸心31c)が、位置PLから位置PL2まで移動するのではなく、中心点C2を中心にして半径r2の円弧を描くように、位置PL21から位置PL22まで移動する。このような駆動制御により、X線発生部10とX線検出部20とを、旋回軸31(旋回軸心31c)の位置とは別の位置に設定される中心点C2(すなわち回転軸)を中心として、回転させることができる。
図12(e)、図12(f)に示すX線撮影では、撮影対象領域R1に顎骨を含む歯列弓の全域が含まれている。また、図12(g)、図12(h)に示すX線撮影では、歯列弓の一部が撮影対象領域R2に含まれている。図12(e)〜図12(h)に示したように、撮影対象領域として、歯列弓の全域、部分領域の使い分けができれば、歯列弓の全体像を観察したい場合と、部分像のみ観察したい場合にそれぞれ対応できる。もちろん、撮影対象領域の大きさは、図12(e)〜(h)に示すものに限られるものではない。撮影対象領域の大きさは、X線検出器21の検出面域の大きさ等に依存して設定される。
また、上述の旋回アーム30の移動は、被写体(または撮影対象領域)に対する相対的な運動である。つまり、中心点C1,C2に対する旋回軸31の運動の一部または全部を、被写体の運動に置き換えてもよい。例えば、被写体保持部421を、前述のX軸及びY軸方向で構成される2次元平面内で被写体保持部421を二次元移動する被写体二次元移動機構(図示せず。)を設けてもよい。被写体二次元移動機構により被写体M1の方を動かすことで、中心点C1を移動させることができる。
図12(i)は、旋回軸31の移動による旋回アーム30の水平面内の移動と、旋回軸31周りの旋回アーム30の旋回との合成運動によるパノラマ撮影を示す図である。このパノラマ撮影では、X線発生器13とX線検出器21(厳密にはX線検出器21の検出面)とが、歯列弓Sを挟んで旋回し、X線ビームBX3が、例えば左顎にX線照射する位置から前歯中央を通じて右顎にX線照射する位置まで移動する。つまり、X線発生器13は、位置Lt1、Lt2、Lt3、Lt4の順に移動し、位置Lt5まで移動する。一方で、X線検出器21は、位置Lr1、Lr2、Lr3、Lr4に順次移動し、位置Lr5まで移動する。図中の曲線Laは、X線ビームBX3の軌跡によって描かれる包絡線を示している。パノラマ撮影では好ましくはX線ビームBX3がこの包絡線を形成するように、旋回アーム30の旋回移動が制御される。
旋回アーム30は機械的な旋回軸31に枢支されるが、旋回アーム30と旋回軸31の位置関係は固定であり、互いに変位し合う関係にはない。一方、パノラマ撮影とCT撮影のように、撮影の種類が異なると、旋回アーム30の移動の軌道が異なり、撮影の種類に適合した軌道を設定する必要がある。本実施形態では、二次元移動機構35Mの旋回軸31の移動による旋回アーム30の水平面内の移動と、旋回軸31周りの旋回アーム30の旋回との合成運動によって、旋回アーム30を各撮影に適合する軌道上にて移動させることができる。
また、単に旋回アーム30を旋回軸31の軸周りに旋回させるだけでは一定の広さの撮影対象領域のCT撮影しかできない。しかしながら、上記のように二次元移動機構35Mの旋回軸31の移動により、旋回アーム30を水平面内で移動させることによって、異なる広さの撮影対象領域のCT撮影を同じ旋回アーム30で行うことができる。
図12に示したようにX線発生器13がX線検出部10に対して回転しない構成の場合、図12(b)、(c)に示したように、X線ビームBX1のうち、焦点サイズが小さい部分に偏ったX線ビームBX2,BX3が被写体M1に照射される。この場合に、二次元移動機構35Mの旋回軸31の移動による旋回アーム30の水平面内の移動と、旋回軸31周りの旋回アーム30の旋回とを組み合わせる駆動制御は、特に有効である。
<2.第2実施形態>
上記実施形態では、図12に示すように、焦点サイズの小さい部分から射出されるX線を撮影対象領域に照射するため、X線ビームBX1のうち、陽極92側のX線ビームBX2、BX3を撮影対象領域R2,R3に対して照射している。そのため、X線検出部20では、陽極92側に偏った位置で、X線を検出しているが、X線を検出する位置は、このようなものに限られるものではない。本実施形態は、X線発生器13A内部のX線管を変位させることによって、前記X線ビームの焦点サイズを変更する構成の例である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の機能を有する要素については適宜同一符号を付して、その説明を省略する。
図13は、第2実施形態に係るX線発生器13Aを示す斜視図である。図13に示すように、本実施形態に係るX線発生部10は、X線発生器13Aを鉛直方向に延びる回動軸95を軸にして、X線発生器13Aを回動させる回動用モータ96を備えている。回動用モータ96は、モータ固定板10Aに固定され、X線発生部制御部601aによって、その動作が制御される。モータ固定板10Aは、図示の例ではX線発生部10内部でX線発生部10に固定されている。
CPU601はX線発生部制御部601aを中心とした照射制御部として機能する。X線発生部制御部601a自体を照射制御部と考えてもよい。X線発生器13Aは回転軸95の軸周りに回転(回動)することでX線発生部10に対して回転する。回動軸95の軸(回転軸)AC1の軸方向は、例えば旋回軸31の軸方向と平行な方向に定めることができる。図示の例では、X線管9はX線管9を収容するX線発生器13Aと一体に回転している。
また、回動軸95の軸(回転軸)AC1の軸方向を、図1について述べた視線方向Dと同じ方向に定めることができる。X線発生器13Aの変位の制御は回動用モータ96の駆動によるX線発生器13AのX線発生部10に対する回転角度の変更の制御で行われる。
図14は、X線撮影を実行する様子を示すX線撮影装置100の概略上面図である。なお、同図中、(a)は、比較的小さい領域をCT撮影する小さいFOV撮影モードを実行する様子を示しており、(b)は、パノラマ撮影モードを実行する様子を示している。比較的大きな領域をCT撮影する大きいFOV撮影モードの実行の様子は図12(a)と同じであるので図示を省略する。
本実施形態では、小さいFOV撮影モードが実行された場合、図14(a)に示すように、X線発生器13Aが図13に示す回動軸95周りに所定の角度回転した状態で、X線ビームBX2が射出される。このとき、ビーム成形機構16を制御することによって、図7で示したビーム通過孔151の開口が図7で示した遮蔽板171によってされ、X線ビームBX2が成形される。
また、パノラマ撮影モードが実行された場合には、図14(b)に示すように、小さいFOV撮影モードのときよりもさらにX線発生器13Aがさらに回転して、細いX線ビームBX3が撮影対象領域R3に照射される。このX線ビームBX3は、図7で示したビーム通過孔153によって成形される。なお、撮影対象領域R3は、CT撮影領域ではなくパノラマ撮影領域を含む被写体M1(例えば、人体頭部)に相当する。
図12(a)におけるX線管9を基準の回転位置とした場合に、X線管9が、各モードで基準に回転位置に対してどの程度の角度分回転したかで把握することができる。
図12(a)における直線93Lの図12(a)における直線93Lに対する回転角度をθR1(=ゼロ)、図14(a)における直線93Lの図12(a)における直線93Lに対する回転角度をθR2、図14(b)における直線93Lの図12(a)における直線93Lに対する回転量をθR3とすると、3者は次の関係にある。
θR1(=ゼロ)<θR2<θR3
すなわち、X線ビームの照射範囲の小さい撮影モードほど、直線93LとX線ビームの中心軸とがなす角度が大きくなるようにX線発生器13Aが変移するよう設定されている。
図12(a)の大きいFOV撮影モードにおいて直線93LとX線ビームBX1の中心軸L1との成す角度であるセンタービーム照射角θ1、図14(a)の小さいFOV撮影モードにおいて直線93LとX線ビームBX2の中心軸L2との成す角度であるセンタービーム照射角θ2、図14(b)のパノラマ撮影モードにおいて直線93LとX線ビームBX3の中心軸L3との成す角度であるセンタービーム照射角θ3の大小関係は図12(d)に示したのと同様であるので、図示と説明を省略する。
また、モードごとの検出面の利用の仕方については図12に示すと同様であるので、詳述は省略する。大きいFOV撮影モード、小さいFOV撮影モード、パノラマ撮影モードのそれぞれにおける照射範囲および開口部15Hの開口幅の大小関係ないし広狭関係、図1(a)の広がりSPに関する照射範囲に関するX線ビームの陰極91に近い側の出射範囲の規制量は、図12の場合と同様なので詳述を略する。
なお、図14においても、直線93Lと中心軸L1、L2、L3は旋回軸31に垂直であり、同一平面上に設定される。
以上のように、X線発生器13AをX線検出部20に対して、回転した状態でX線ビームBX2,BX3が射出されることによって、X線検出部20の中央付近MPにX線が入射することとなる。このようにX線を照射することによって、X線検出部20の中央付近MPで検出できる。例えばパノラマ撮影用の検出面が、中央付近MPに設けられている場合、このような構成によって、有効にX線を検出することができる。
<3.第3実施形態>
第1実施形態では、図12(c)に示すように、パノラマ撮影モードが実行される場合に、X線ビームBX3がX線検出器21に対して斜めに入射しているが、検出器21を回転することで、X線ビームBX3が略直交するようにX線検出器21に入射させてもよい。
図15は、第3実施形態に係るX線検出部20Bを示す斜視図である。X線検出部20Bは、X線検出器21を回動させる回動機構26を備えている。回動機構26は、円弧状の端部を有する平板状の扇形部材261と、鉛直方向に延びる切替軸262を備えている。さらに回動機構26は、扇形部材261の円弧状の端部に接触しながら回転する回転部材263と、回転部材263を回転移動させる回転駆動モータ264とをさらに備えている。
図示を省略するが、切替軸262と回転駆動モータ264はX線検出部20内部で定位置に固定されており、切替軸262は、扇形部材261を回動可能に軸支している。回転駆動モータ264は、X線検出部制御部601bからの制御信号に基づいて扇形部材261の円弧状の端部に接する回転部材263を回転させることによって、扇形部材261を切替軸262の軸回りに回動させる。X線検出器21は扇形部材261に固定されており、扇形部材261と共に回動する。
回動機構26が扇形部材261を旋回軸31に平行な切替軸262の周りに回動させることでX線検出器21が所定範囲内(例えば、切替軸262を中心に回転角が90度の範囲内)で回動される。
以上の構成により、X線検出器21の検出面の向きをある程度調整することが可能となっている。なお、回動機構26は、X線検出器21を回動させる手段の一例であり、このような構成に限定されるものではない。
図16は、X線検出部20Bを用いたパノラマ撮影モードの様子を示す概略図である。本実施形態では、図16に示すように、本実施形態では、パノラマ撮影の間、回動機構26がX線検出器21を陽極92側に向けて所定角度回動した位置に配置することによって、X線ビームBX3をX線検出器21に対して略垂直に入射させる。したがって、X線検出器21に対して略垂直に入射するX線を検出することができるため、焦点サイズの小さいX線を用いたパノラマ撮影を有効に行うことができる。
<4.第4実施形態>
第1実施形態では、パノラマ撮影モード等において、図12(c)に示すように、X線検出部20のうち陽極92側に偏った位置で検出している。例えば、パノラマ撮影用の検出面が、X線検出器21の端側以外に設定されている場合、撮影対象領域R3を透過したX線を有効に検出できないおそれがある。そこで、本実施形態では、X線検出器21を移動させることによって、この点を解消する。
図17は、第4実施形態に係るX線撮影装置100において、パノラマ撮影を実行する様子を示す概略上面図である。図17に示すように、本実施形態では、移動モータ24を駆動して検出器ホルダ22をガイドレール23に沿って移動させることによって(図8参照)、X線検出器21の中央付近でX線を受光するようにしている。このように、X線検出面が端に設けられていない場合であっても、X線検出器21を移動させることで、X線を有効に検出することが可能である。
図示を省略するが、ガイドレール23を円弧状に形成し、X線検出器21がX線発生器13のX線の焦点を中心に円弧移動するようにしてもよい。これにより、パノラマ撮影の間、X線検出器21を陽極92側に向けて所定角度回動した位置に配置することができ、X線ビームBX3をX線検出器21に対して略垂直に入射させることができる。
<5.第5実施形態>
上記実施形態では、X線発生器13の陽極92のターゲット面94Sが、鉛直方向に平行であって、Y軸方向に対して傾斜するように配置して、X線CT撮影モードを実行するように構成されているが、ターゲット面の配置方法は、このようなものに限られるものではない。
図18は、第5実施形態に係るX線発生部10が備えるX線発生器13A及び転倒機構97を示す概略斜視図である。なお、図18(a),(b)は、転倒機構97を斜めから見た斜視図であり、図18(c),(d)は、それぞれ(a),(b)に示すX線発生器13Aを、x方向から側方視した側面図である。
本実施形態のX線発生部10は、第2実施形態で説明したX線発生器13Aと、X線発生部10とX線検出部20を結ぶ直線、例えばX線発生器13Aから射出されるX線ビームの中心、またはX線管9のターゲット面94Sの中央とX線検出器21のX線検出面の中央を結ぶ直線GDを軸にして、その軸周りにX線発生器13Aを90度転倒させる転倒機構97を備えている。
図18(b)、(d)は、X線発生器13Aを、図18(a)、(c)に示す状態からX線ビームの照射中心軸の軸周りに90度転倒させた状態を図示している。なお、転倒の角度は正確に90度でなくとも、有効に焦点サイズの変更ができればよく、その目的が達成できる程度にほぼ90度に転倒できればよい。
また、図3に示すX線撮影装置100では、X線検出部20がX線発生部10に対し、旋回軸31の軸方向で比較して若干高い位置に配置されるので、直線GDはX線発生器13Aから若干高い位置のX線検出器21のX線検出面の中央に向けて設定される。
転倒機構97は、円弧状の端部を有する平板状の扇状部材971と、扇状部材971の円弧状の端部上に沿って回転する回転部材972と、回転部材972を回転させる転倒用モータ973と、扇状部材971、回転部材972及び転倒用モータ973を一体的に保持する保持部材974とを備えている。
扇状部材971は、水平に延びる円筒状のリンク部98を有しており、リンク部98は、保持部材974に対して回転可能に接続されている。このリンク部98を介して、扇状部材971とX線発生器13Aを回動可能に支持する図13に示したと同様のモータ固定板10Aとが連結されている。
なお、リンク部98は、その中央にX線を通過させるX線通過孔981が形成されており、X線発生器13Aから射出されたX線を通過させるように構成されている。
図18(a)に示したモータ固定板10Aは、リンク部98と連結するためにX線発生器13Aの前面まで延びる壁部を備え、壁部はX線発生器13AからのX線ビームの通過を許容するための、X線通過孔981と連通する孔が設けられている。
X線発生器13Aが回動用モータ96で回動駆動されて回動軸95を軸にして回動することは図13の場合と同様なので詳細は繰り返さないが、図18に示した例ではモータ96の駆動機構をピニオンギア同士の噛み合せ、または、ピニオン形状のローラ同士の摺り合せで駆動するようにしている。
回転部材972は、図示を省略するボールねじのねじ軸等を介して転倒用モータ973に連結されている。転倒用モータ973は、X線発生部制御部601aからの制御信号に基づいて駆動される。転倒用モータ973が駆動すると、回転部材972が回転し、扇状部材971がリンク部98を軸にして回転する。このようにして扇状部材971が回転することにより、X線発生器13Aが、モータ固定板10Aと共にリンク部98を軸にして90度回転することとなる(図18(b))。なお、転倒機構97の上記構成は一例であり、X線発生器13Aを転倒させる構成は、これに限定されるものではない。
図示のAC1はX線発生器13Aが回動軸95を軸にして回動するときの回動軸95と位置的に一致する回転軸であり、図13に図示したものと同様である。AC2はX線発生部10とX線検出部20を結ぶ直線である、リンク部98の回転軸である。
図19は、X線撮影装置100がX線CT撮影モードを実行する様子を示す概略側面図である。同図中、(a)は、比較的大きな領域をCT撮影する大きいFOV撮影モードを実行する様子を示しており、(b)は、比較的小さい領域をCT撮影する小さいFOV撮影モードを実行する様子を示している。
本実施形態では、パノラマ撮影モードが選択された場合は、上記実施形態(例えば第1実施形態)と同様に、X線発生器13Aを転倒させることなく、X線発生器13Aが図18(a)に示すような姿勢の状態でX線撮影が行われる。X線発生器13Aは回動用モータ96の駆動により回動され、図14(b)に示すような角度でX線ビームを照射する。
これに対して、X線CT撮影モードが選択された場合、X線発生部制御部601aが、転倒用モータ973を駆動することによって、X線発生器13Aを90度転倒させる。
X線発生器13Aが転倒されると、図19(a)に示すように、電子ビームが下方(−Z側)の陰極91から上方(+Z側)の陽極92に向けて出射されることとなる。また、陽極92のターゲット面94Sは、X方向に平行に広がり、かつ、鉛直方向(Z軸方向)に対してY方向に傾斜する面となる。このような、ターゲット面94Sで発生したX線が、X線検出器21に向けて射出される。
ここで、転倒させたX線発生部13Aから射出されるX線ビームBX1Aのうち、陰極91側(ここでは−Z側)の部分よりも、陽極92側(ここでは+Z側)の部分で、X線発生面の見かけ上の大きさ(焦点サイズ)が小さくなる。すなわち、陽極92側(+Z側)のX線を撮影に用いることで、X線画像の解像度を向上することとなる。
そこで本実施形態では、X線CT撮影モードにおいて、比較的小さい領域をCT撮影する小さいFOV撮影モードを実行する場合には、図19(b)に示すように、回動用モータ96を駆動して、X線発生器13AをX軸周りに回転させて傾けることによって、X線ビームBX1Aのうち、焦点サイズの小さい陽極92側のX線ビームBX2Aを、撮影対象領域に照射する。
X線CT撮影モードの場合、パノラマ撮影の場合よりも水平方向の比較的広い範囲にX線を照射することとなる。例えば図12(a)に示すX線ビームBX1では、X線検出器21上の各点からX線発生面(ターゲット面94S)見た場合、水平方向において見かけ上の大きさ(焦点サイズ)にバラツキが生じることとなる。詳細には、+X側の位置において、焦点サイズが小さくなる。すなわち、−X側において、X線画像におけるぼけの発生頻度が高くなる。
これに対して本実施形態では、X線発生器13Aを90度転倒させることによって、このような焦点サイズのバラツキを鉛直方向において生じるように変更することができる。すなわち、X線検出器21上の各点からX線発生面を見た場合、その見かけ上の大きさ(焦点サイズ)が、水平方向の各点で同一となる。したがって、水平方向において、解像力が均一なX線ビームBX1Aを生成することができる。
また、歯列弓の撮影などのパノラマ撮影では、一般的に断面が鉛直方向に長いX線ビームBX3を用いて撮影が行われる。したがって、この場合は、X線検出器21側から鉛直方向に沿う複数の地点から見たX線発生面の見かけ上の大きさが、それぞれで同一であることが好ましい。すなわち、パノラマ撮影モードでは、X線発生器21を転倒させずにすることが好ましい。このように、本実施形態では、X線発生器13Aを90度転倒させることで、焦点サイズの影響する方向を制御することができ、各撮影モードに適したX線ビームにて撮影を実行することができる。
<6.第6実施形態>
X線撮影装置100は、オフセットスキャンX線CT撮影にも適用可能である。
図20は、オフセットスキャンX線CT撮影を説明するための図である。図20(a)に示す図は、図12(b)と同じX線照射状況のX線撮影装置100の概略上面図である。しかしながら、図20(a)では、図12(b)に示すX線検出器21よりもX線検出範囲の狭いX線検出器21が用いられている。
図12(b)でも説明したように、中心点C2を旋回中心として、X線発生器13とX線検出器21とが旋回させ、図12(b)に示すと同様の撮影対象領域R2のX線CT撮影を行うことができる。しかしながら、オフセットスキャンX線CT撮影によれば、X線ビームBX2を使って、撮影対象領域R2よりも広い撮影対象領域R1をX線CT撮影することが可能である。
図20(b)、(c)は、具体的なオフセットスキャンX線CT撮影の様子を示す図である。図20(b)はオフセットスキャンX線CT撮影開始時における旋回アーム30の状態を示し、図20(c)は図20(b)から旋回アーム30が180°旋回した状態を示している。なお、オフセットスキャンX線CT撮影では、旋回アーム30は、図20(c)に示す状態からさらに旋回して、図20(b)に示す初期の位置に戻る。この間、X線発生器13とX線検出器21の旋回中心は中心点C1に設定される。
X線ビームBX2は撮影中、撮影対象領域R1の一部のみしか照射していないが、X線発生器13とX線検出器21の旋回中心を中心点C1において旋回アーム30を360°旋回させることで撮影対象領域R1内のいずれの地点についても180°以上の各方向からX線を照射した投影データが得られ、撮影対象領域R1についてのオフセットスキャンX線CT撮影ができる。
本願においては、オフセットスキャンX線CT撮影の手法によって、通常のX線CT撮影よりもX線検出器21の検出面を小さくすることができるため、装置コストを抑制できる。つまり、X線撮影装置100でオフセットスキャンX線CT撮影を行うことで、同じ検出面であっても、解像度の高い小さな焦点サイズのX線ビームで、より大きな撮影対象領域のX線CT撮影ができる。
図21は、図20(b)、図20(c)に示したオフセットスキャンX線CT撮影の状態を幾何学的に説明するための図である。オフセットスキャンX線CT撮影の特徴を、図21(a)、図21(b)を用いてさらに説明する。
撮影対象領域R1は旋回軸31に直交する平面内において所定の広がりを有しており、旋回軸31の軸方向から見て輪郭RC1を有している。図21(a)に示す例では、輪郭RC1は円形状である。また、図21(a)、図21(b)では、図1に示したターゲット面94Sを焦点94Fとして示している。ターゲット面94Sは、厳密には面であって点ではないが、ターゲット面94Sは現実には微小な面であり、オフセットスキャンX線CT撮影の原理を幾何学的に説明する上では点と見なすことができる。
焦点94Fを通り、かつ、輪郭RC1に接する接線は、平面視において撮影対象領域R1の左右に2本存在する。ここでは、一方を接線94T1、他方を接線94T2とする。また、輪郭RC1と接線94T1との接点を94P1とし、輪郭RC1と接線94T2との接点を94P2とする。また、接線94T1,94T2のなす角を角θaとし、角θaを等分する角(すなわち角度がθa/2の角)を角θbとする。
オフセットスキャンX線CT撮影は、接線94T1から接線94T2に向けて広がる、広がり角θc(<角θa)のX線ビームCB1が使用される。X線ビームCB1が被写体M1に連続的に照射されることで、撮影対象領域R1内のいずれの地点についても、連続する180°以上の範囲の各方向からX線照射して、投影データを取得することができる。
なお、図21(b)に示すように、接線94T2から接線94T1に向けて広がる、広がり角θd(<角θa)のX線ビームCB2で、オフセットスキャンX線CT撮影が行われてもよい。また、X線ビームCB1によるX線照射とX線ビームCB2によるX線照射を組合せて実行し、撮影対象領域R1の全地点について、連続する180°以上の範囲の各方向からX線照射して、投影データを取得してもよい。この場合、例えばX線ビームCB1を照射しながら旋回アーム30を被写体M1周りに半周させ、その後、X線ビームCB2に切り替えて、旋回アーム30を逆方向に半周させればよい。もちろん、旋回アーム30の移動制御はこれに限定されるものではない。
好適には、オフセットスキャンX線CT撮影中のX線ビームCB1,CB2の角θc、角θdは、それぞれ角θa未満で角θb以上とされる。したがって、仮にX線ビームの広がりがCT撮影中に変化する場合でも、X線検出器21のX線検出面の広さを、広がり角θaのX線ビームに合わせればよい。
さらに好適には、CT撮影中、X線ビームCB1,CB2の広がり角θc,θdは一定とされる。また、X線ビームCB1によるX線照射とX線ビームCB2によるX線照射とを組合せる場合、好適には、CT撮影中の広がり角θcと広がり角θdとが、同一、かつ、一定とされる。これによれば、X線検出器21のX線検出面の広さを、一定の広がり角であるX線ビームに適合するものとすることで、適切にオフセットスキャンX線CT撮影を行うことができる。
なお、本願では、上記のようにCT撮影中、撮影対象領域の一部領域のみをX線照射し続けて全域について180°以上の投影データを得るCT撮影をオフセットスキャンX線CT撮影とする。このオフセットスキャンX線CT撮影に対して、CT撮影中に撮影対象領域の全域をX線照射し続けて行うX線CT撮影をノーマルスキャンX線CT撮影とも称する。
X線CT撮影モードのうち、オフセットスキャンX線CT撮影を行うモードがオフセットスキャンX線CT撮影モードである。ノーマルスキャンX線CT撮影を行うモードを、オフセットスキャンX線CT撮影モードに対する区別を要する場合、ノーマルスキャンX線CT撮影モードとする。
オフセットスキャンX線CT撮影モードとノーマルスキャンX線CT撮影モードとは、例えば撮影モード選択部601cによって選択可能にすることができる。オフセットスキャンX線CT撮影モードが選択された場合には、図20(b)、(c)のような撮影軌道によるX線CT撮影が行われる。
<7.第7実施形態>
図22は、第7実施形態に係る旋回アーム30Bを説明するための図である。図22(a)は、旋回アーム30Bの全体斜視図である。本実施形態の旋回アーム30Bは、旋回アーム30BのX線検出部20Bが、旋回軸31の軸方向と同方向に延びる検出部回転軸20Cを回転軸として回転するように構成されている。X線検出部20Bは、旋回軸31の軸方向と同方向に細長く延びる細隙ビーム検出用の検出面を有するX線検出器21Nを備える。また、X線検出部20Bは、X線検出器21Nが取り付けられている面とは反対側の面に、X線コーンビーム検出用の検出面を有するX線検出器21Wを備えている。X線検出部20Bでは、撮影モードに応じてこれらの検出面の中から1の検出面を選択して使用できるように構成されている。
具体的に、X線検出器21Nはパノラマ撮影に使用され、X線検出器21WはX線CT撮影に使用される。パノラマ撮影時には、X線検出部20が回動することにより、X線検出器21NがX線発生器13Bと対面して細隙ビームを検出するように配置される。また、X線CT撮影時には、X線検出部20が回動することにより、X線検出器21WがX線発生器13Bと対面してX線コーンビームを検出するように配置される。
X線発生器13Bには、図14に示したX線発生器13Aと同様に、X線発生部10に対して回転する構成のものを利用できる。図22に示した例では、X線検出器21Wは、図12(a)に示す大きさのX線検出器21よりも幅が狭く、最大で図12(b)に示すX線ビームBX2のビーム幅のX線ビームを検出できる程度の検出面を有するものである。もちろん、X線検出器21Wは、図12(a)に示したX線検出器21と同程度の大きさの検出面を有していてもよい。
X線検出部20Bの検出部回転軸20Cの軸周りの回転は、図示しないモータ等の駆動源の駆動により行うことができる。本体制御部60における撮影モード切換に応じて自動的にX線検出部20が回転するようにしてもよいし、また、X線検出部20Bの回転に連動して本体制御部60における撮影モードが切り換わるようにしてもよい。また、X線検出部20Bは、手動により取り外されて、反転させて再装着される構成としてもよい。
図22(b)はパノラマ撮影時の様子を示す図である。パノラマ撮影の場合、X線検出器21Nが、X線発生器13と対面し、細隙ビームを検出するように配置されている。パノラマ撮影時におけるX線撮影装置100の動作は、図14(b)の場合とほぼ同様である。
図22(c)はX線CT撮影時の様子を示す図である。X線CT撮影の場合、X線検出器21Wが、X線発生器13と対面し、X線コーンビームを検出するように配置される。具体的なX線CT撮影については、図12(b)の場合とほぼ同様である。
図22(d)はオフセットスキャンX線CT撮影時の様子を示す図である。オフセットスキャンX線CT撮影の場合、X線検出器21Wが、X線発生器13と対面し、X線コーンビームを検出するように配意される。オフセットスキャンX線CT撮影については、図20(b)、(c)等の場合と同様である。
図22(e)は第7実施形態の変形例によるパノラマ撮影時の様子を示す図である。この例では、細隙ビーム検出用のX線検出器21Nが、図12(c)に示したX線ビームBX3を検出するように偏在している。このようにX線検出器21Nを設けることにより、X線発生器13BをX線発生部10に対して回転する構造でない場合にも、パノラマ撮影が可能となる。
X線検出部20Bでは、撮影モードに応じたX線検出器21W,21Nを備えている。このため、X線検出器21Wの検出面の高さ方向の幅(旋回軸31の延びる方向と同方向の幅)は、パノラマ撮影用のX線検出器21Nのものとは異なる大きさであってもよく、撮影対象(例えば、歯顎部)の幅に合わせたものを採用することができる。
例えば、パノラマ撮影に用いるX線センサには検出面が高さ方向の幅が150mm程度であることが多い。しかしながら、歯顎部分のCT撮影には120mm程度以下のもので足りることが多く、また、2〜4本程度の歯牙であれば60mm程度のものでも足りる場合がある。本実施形態では、X線検出器21Wの検出面の高さ方向の幅を必要最小限のものに合わせることができる。したがって、X線検出部20Bの構成を採用することで、X線撮影装置100の装置コストを抑制することが可能となる。
また、オフセットスキャンX線CTを行う場合には、X線検出器21Wの旋回軸31と交差する方向の広がり幅を小さくしても、通常のX線CT撮影で撮影するよりも広い領域のX線CT撮影を実施することができる。
<8.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
例えば上記実施形態では、X線CT撮影において、矩形状に開口したビーム通過孔151を通過させることによって、角錐状のX線ビームを撮影対象領域に照射しているが、ビーム通過孔151を円形に形成することによって、円錐状のX線ビームを照射するように構成してもよい。
また、上実施形態では、上記実施形態では、被写体保持部421が被写体M1である被検者を立位姿勢で所定位置に固定させるように構成されているが、例えば被写体M1を坐位姿勢で固定できる椅子等で構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、XYテーブル35で構成される水平移動機構に旋回軸31を取り付けることによって、旋回アーム30を被写体M1に対して水平方向に移動させているが、例えば、被写体保持部421を椅子等で構成し、これを水平移動機構に接続することによって、旋回アーム30に対して被写体M1を相対的に移動させてもよい。また、旋回軸31及び被写体保持部421のそれぞれに、水平移動機構を設けて、それぞれを水平方向に移動可能に構成してもよい。
また、上記実施形態のX線CT撮影装置100は、床に垂直に立設する構造を有しているが、被写体M1である被検者が寝た姿勢でX線CT撮影が行われる構造に応用することが可能であることは言うまでもない。
さらに、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。