JP5744373B2 - 土質安定化薬液 - Google Patents
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Description
このうち、本出願人は、特許文献1にて、石灰類と石膏類に界面活性剤を添加した硬化剤を提案した。特許文献1の硬化剤における石灰類は消石灰および/または生石灰であり、石膏類は2水石膏、α半水石膏、β半水石膏、II型無水石膏からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、石灰類:石膏類の量比は1:3〜3:1(質量比)の割合であり、界面活性剤はノニオン系またはアニオン系界面活性剤である。
この硬化剤を含む土質安定化薬液では、硬化時間が数秒ないし十数秒である、いわゆる瞬結工法での施工を行った際に、初期強度が高く、硬化剤の水懸濁液が不均質化し難いという効果を奏する。
・硬化剤の粒度は、ブレーン法による比表面積で3000〜9000cm2/gの範囲に粉砕したものを用いるのが好ましい。
・硬化剤の使用量は、薬液の硬化時間を短くする場合は多くし、硬化時間を長くする場合には少なくする。例えば、JIS3号珪酸ソーダ100リットルと水100リットルからなる主剤液200リットルと、これと等容量の硬化剤液200リットルとの混合物からなる薬液400リットルにより地盤を安定化させる場合には、硬化剤液に硬化剤を60〜180kgの範囲で含有させると、薬液は数秒ないし十数秒で硬化する。換言すれば、JIS3号珪酸ソーダ100リットルと水100リットルからなる主剤液200リットルと、これと等容量の硬化剤液200リットルとの混合物からなる薬液400リットルを十数秒で硬化させるには、硬化剤が60kg必要である。
・ノニオン系またはアニオン系界面活性剤の使用量は、通常、硬化剤液200リットル当たり0.4〜1.5kgの範囲で含有させると充分な効果が得られる。
本発明の目的は、アルカリ珪酸塩水溶液と混合した際に少ない使用量で所望の硬化時間や強度が得られ、水懸濁液とした際の均質性が高い土質安定化薬液用硬化剤を提供することにある。また、少ない硬化剤使用量で所望の硬化時間や強度が得られる土質安定化薬液を提供することにある。
(1)薬液の硬化時間及び硬化体強度
アルカリ珪酸塩として日本工業規格(JIS K−1408)に規定されている3号珪酸ソーダを用い、3号珪酸ソーダ100リットルおよび水100リットルを混合して調製した主剤液(A液)200リットルと、硬化剤55kgを水に懸濁して調製した硬化剤液(B液)200リットルとを等容量ずつ混合して得た薬液が温度20℃において;
・硬化時間:12秒以内で硬化(ゲル化)すること。
・硬化体強度:薬液が硬化して60分経過した後、形成された硬化体の一軸圧縮強度値が、0.3N/mm2以上であること。
(2)硬化剤液の均質性
(1)における硬化剤液の50mlをメスシリンダー(容量50ml)に分取し、30分間静置後に硬化剤液上部に生じた硬化剤粒子を含まない透明液体部分を目視により判定し、その高さ(沈降高さ)が10mm以下であること。
本発明者らが、上記の基準の全てを満たす硬化剤について検討した結果、(a)硬化剤の構成成分である石灰類、石膏類、界面活性剤として特定のものを使用すること、(b)従来は、石灰類と石膏類とが組合わされた状態においてブレーン法による比表面積で特定されていた硬化剤の粉末度を、粉末度としてはブレーン法とは別の概念である粒子径で石灰類および石膏類について各々個別に特定すること、(c)石膏類および界面活性剤の含有量を石灰類に対して特定の範囲とすることで、上記基準の全てを同時に満たすことを見出した。そして、その知見により、以下の土質安定化薬液用硬化剤および土質安定化剤を発明した。
[1] 主剤であるアルカリ珪酸塩水溶液と、土質安定化薬液用硬化剤の水懸濁液とを含有する土質安定化薬液であって、
前記土質安定化薬液用硬化剤は、
最大粒子径600μm以下の消石灰((a)成分)と、最大粒子径90μm以下のII型無水石膏((b)成分)と、アニオン系界面活性剤((c)成分)とを含有し、
(a)成分100質量部に対して、(b)成分の含有量が40質量部以上70質量部以下、(c)成分の含有量が0.25質量部以上0.85質量部以下であり、
該土質安定化薬液400リットル中に40〜80kg含まれるものであることを特徴とする土質安定化薬液。
[2] (c)成分がリグニンスルホン酸塩である、[1]に記載の土質安定化薬液。
本発明の土質安定化薬液では、少ない硬化剤使用量で所望の硬化時間や強度が得られる。
本発明の土質安定化薬液に用いる硬化剤は、アルカリ珪酸塩水溶液を主剤とした土質安定化薬液に用いる硬化剤であって、消石灰((a)成分)と、II型無水石膏((b)成分)と、アニオン系界面活性剤((c)成分)とを含有する。
本発明における消石灰は、最大粒子径が600μm以下、好ましくは150μm以下のものである。消石灰の最大粒子径が前記上限値以上であると、硬化時間が長くなる。このような消石灰は、例えば、工業用消石灰等の市販品を、最大粒子径が600μm以下、好ましくは150μm以下になるように粉砕・分級することにより得られる。
消石灰の最大粒子径の下限値には特に制限はないが、最大粒子径が10μm未満の消石灰を用いた場合には、粉砕・分級に長時間を要し不経済であるから、10μm以上であることが好ましい。
II型無水石膏としては、例えば、2水石膏や半水石膏等を400℃以上の温度で焼成して得られるものが挙げられ、安価で入手容易であることから、湿式リン酸製造時や排煙脱硫操作時等に副生する2水石膏や半水石膏等を400℃以上で焼成して得られるものが好適である。
また、天然に産出するII型無水石膏等を用いることもできる。
II型無水石膏の最大粒子径の下限値には特に制限はないが、最大粒子径が5μm未満のII型無水石膏を用いた場合には、粉砕・分級に長時間を要し不経済であるから、5μm以上であることが好ましい。
アニオン系界面活性剤としては公知のものを使用できるが、通常コンクリート用減水剤として市販されているもの、例えば、リグニンスルホン酸塩系界面活性剤、オキシポリカルボン酸塩系界面活性剤、メラミンスルホン酸塩系界面活性剤、ナフタレンスルホン酸塩系界面活性剤等が好適である。
リグニンスルホン酸塩系界面活性剤は、リグニンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩またはこれらのホルマリン縮合物等の各種誘導体であり、市販品としては、例えば、サンエキスP252(日本製紙ケミカル(株)製)が挙げられる。
オキシポリカルボン酸塩系界面活性剤は、カルボキシ基を有する化合物のアルカリ(土類)金属塩の付加または縮合重合物等の各種誘導体であり、市販品としては、例えば、フローリックSF((株)フローリック製)が挙げられる。
メラミンスルホン酸塩系界面活性剤は、メラミンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩またはこれらのホルマリン縮合物等の各種誘導体であり、市販品としては、例えば、SMF−PD(日産化学工業(株)製)が挙げられる。
ナフタレンスルホン酸塩系界面活性剤は、ナフタレンスルホン酸やアルキルアリルスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩またはこれらのホルマリン縮合物等の各種誘導体であり、市販品としては、例えば、マイティ100(花王(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、硬化剤液の均質性により優れることから、リグニンスルホン酸塩系界面活性剤が特に好ましい。
本発明の硬化剤は、必要に応じて、通常セメント混和剤として用いられる消泡剤を含有することができる。
消泡剤としては、高級アルコール系、アルキルフェノール系、ジエチレングリコール系、ジブチルフタレート系、非水溶性アルコール系、トリブチルホスフェート系、ポリグリコール系、シリコーン系、酸化エチレン−酸化プロピレン共重合体系などの各種の消泡剤が挙げられる。
本発明者らが調べた結果、上記の土質安定化薬液用硬化剤は、硬化時間が12秒以内、硬化体の一軸圧縮強度値が0.3N/mm2以上、硬化剤液の沈降高さが10mm以下になることが判明した。よって、本発明の土質安定化薬液用硬化剤は、アルカリ珪酸塩水溶液と混合した際に少ない使用量で所望の硬化時間や強度が得られ、水懸濁液とした際の均質性が高いものである。
本発明の土質安定化薬液は、上述した硬化剤と、主剤液(A液)であるアルカリ珪酸塩水溶液とを含有する。
アルカリ珪酸塩としては、例えば、SiO2/Na2Oモル比が2〜4の珪酸ソーダ、SiO2/Na2Oモル比が4〜6の範囲であるシリカゾル等を用いることができる。中でも、日本工業規格(JIS K−1408)に規定されている1〜3号珪酸ソーダが好ましく、3号珪酸ソーダがより好ましい。
日本工業規格(JIS K−1408)に規定されている3号珪酸ソーダ100リットルと水100リットルからなる主剤液(200リットル)と、これと等容量の本発明の硬化剤を含む水懸濁液からなる硬化剤液(200リットル)との混合物からなる薬液(400リットル)により地盤を安定化させる場合には、硬化剤液中に本発明の硬化剤を40kg〜80kg含有させることが好ましい。
また、土質安定化薬液の注入方法としては、A液とB液を予め混合して注入管に導く方法、A液とB液とを注入管の基部に設けた混合部、例えば、Y字管において混合して注入管に導く方法、A液とB液とをそれぞれ独立に注入管に導いて注入管内で混合する方法、A液とB液とをそれぞれ独立に注入管に導いて、注入管から地盤内に注入しながら地盤内にて合流・混合させる方法等が挙げられる。これらの方法は、薬液の硬化時間や施工性に応じて適宜採用することができる。
上記土質安定化薬液用を含む本発明の土質安定化薬液では、いずれの注入方法においても、硬化剤使用量が少なくても、地盤に注入した後に所望の硬化時間や強度が得られる。
<実施例および比較例(試験番号1〜29)>
下記の主剤液(A液)と硬化剤液(B液)を用い、硬化時間、硬化体の強度、硬化剤液の均質性を以下のように評価した。その評価結果を表2に示す。
主剤液:日本工業規格(JIS K−1408)に規定されている3号珪酸ソーダ100リットルと水100リットルの割合で混合して調製した。
硬化剤液:表1に示す条件(石灰および石膏の種類・最大粒子径・含有量、界面活性剤の種類・含有量)で調製した硬化剤55kgを容量が200リットルになるように水に懸濁して調製した。
なお、硬化剤成分として使用した石灰(消石灰、生石灰)と石膏(2水石膏、半水石膏、II型無水石膏)は、いずれも工業用市販品を用い、種々の最大粒子径になるように粉砕と篩による分級を行って調製した。
界面活性剤としては以下のものを用いた。
・アニオン系界面活性剤:
リグニンスルホン酸塩:サンエキスP252(日本製紙ケミカル(株)製)
オキシポリカルボン酸塩:フローリックSF((株)フローリック製)
メラミンスルホン酸塩:SMF−PD(日産化学工業(株)製)
ナフタレンスルホン酸塩:マイティ100(花王(株)製)
・ノニオン系界面活性剤:
ポリオキシエチレンノニフェニルエーテル系:NIKKOL(日光ケミカルズ(株)製)
評価○:硬化時間が、12秒以内であった。
評価×:硬化時間が、12秒を超えて長かった。
(2)硬化体強度:液温20℃において、主剤液と硬化剤液の当容量混合液を円柱型の型枠(径5cm×高さ10cm)内に流し込み、形成された硬化体の材令60分の一軸圧縮強度を測定した。
評価○:硬化体の一軸圧縮強度値が、0.30N/mm2以上であった。
評価×:硬化体の一軸圧縮強度値が、0.30N/mm2未満であった。
(3)硬化剤液の均質性:液温20℃において、硬化剤液の50mlをメスシリンダー(容量50ml)に分取し、30分間静置した後、B液上部に生じた硬化剤粒子を含まない透明液体部分を目視により判定し、その高さ(沈降高さ)を測定した。この沈降高さが低い程、均質性に優れる。
評価○:沈降高さが、10mm以下であった。
評価×:沈降高さが、10mmを超えて長かった。
(4)総合評価:
総合評価○:硬化時間、硬化体強度、B液の均質性の評価がいずれも○であった。
総合評価×:評価項目の少なくとも一つが×であった。
これに対し、石灰類として生石灰を用いた試験番号2の例では、硬化時間が長かった。
消石灰の最大粒子径が600μmを超えていた試験番号3の例では、硬化時間が長かった。
石膏として2水石膏を用いた試験番号9の例では、硬化時間が長かった。
石膏として半水石膏を用いた試験番号10の例では、硬化剤液の均質性が低かった。
II型無水石膏の最大粒子径が90μmを超えていた試験番号11の例では、硬化時間が長かった。
II型無水石膏の含有量が40質量部未満であった試験番号16の例では、硬化体の強度が低かった。
II型無水石膏の含有量が70質量部を超えていた試験番号21の例では、硬化時間が長く、しかも硬化体の強度が低かった。
界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を用いた試験番号23の例では、硬化剤液の均質性が低かった。
界面活性剤の含有量が0.25質量部未満であった試験番号24の例では、硬化剤液の均質性が低かった。
界面活性剤の含有量が0.85質量部を超えていた試験番号29の例では、硬化剤液の均質性が低かった。
Claims (2)
- 主剤であるアルカリ珪酸塩水溶液と、土質安定化薬液用硬化剤の水懸濁液とを含有する土質安定化薬液であって、
前記土質安定化薬液用硬化剤は、
最大粒子径600μm以下の消石灰((a)成分)と、最大粒子径90μm以下のII型無水石膏((b)成分)と、アニオン系界面活性剤((c)成分)とを含有し、
(a)成分100質量部に対して、(b)成分の含有量が40質量部以上70質量部以下、(c)成分の含有量が0.25質量部以上0.85質量部以下であり、
該土質安定化薬液400リットル中に40〜80kg含まれるものであることを特徴とする土質安定化薬液。 - (c)成分がリグニンスルホン酸塩である、請求項1に記載の土質安定化薬液。
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