JP2002003264A - 水硬性組成物 - Google Patents

水硬性組成物

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博 中西
Kumiko Sano
久美子 佐野
Masaki Ishimori
正樹 石森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 モルタルやコンクート硬化体表面の黒色系異
物混入による斑点状や縞状の紋様を、製造時の作業性や
機械的性状の低下を起こすことなく、著しく低減させ
る。 【解決手段】 疎水性黒色系粒子、セメント、分散剤並
びに消泡剤を含有してなる水硬性組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面美観性に優れ
た硬化体となる水硬性組成物に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】モルタルやコンクリートの硬
化体の表面には、黒色若しくは黒みがかった色の斑点や
縞状紋様が怏々にして見られ、表面美観を損っている。
この原因は、水に難溶性の黒色系不純物の混入が考えら
れ、その多くは、モルタルやコンクリートの構成材料に
付随して混入した疎水性黒色系粒子である。昨今では、
骨材や混和材等に多種多様な物質が用いられることが多
く、またセメント原料自体も広範囲な原料源から調達さ
れるケースも増加しているため、黒色系粒子が混入する
可能性が増大している。黒色系粒子が付着や混在した材
料を用いてモルタルやコンクリートを製造すると、水の
添加混合や施工時の加振等により、基体材から低比重の
疎水性黒色系粒子が遊離し、低比重の粒子は液面に浮上
する。更に、系の分散状態が低いと、浮上粒子が液面で
凝集を起こし易い。一方、高比重の黒色系粒子では下部
面に沈積する。このような状態で硬化が起こると、表面
に黒斑や黒縞が存在するコンクリートやモルタル硬化物
となる。また、その程度が顕著になると表面の物理性状
も影響を受け、そこから硬化体が劣化することもある。
【0003】表面の黒色化を防ぐには、その原因物質を
排除する方策がまず挙げられる。例えば、原因物質が未
燃カーボンの場合、これを含む配合材料を加熱し、残存
未燃カーボンを十分燃焼させれば良い。この方法は、黒
色系粒子が加熱分解や気化する物質であって、基材が実
質的に加熱変質しない場合に適応できる。これ以外の場
合では、超音波洗浄等で基材から黒色系粒子の分離がで
きるが、工業的規模での適用は実用的でなく、分離後の
黒色系粒子の回収除去も容易でない。何れの場合も、処
理工程やコストの増加を伴うことは云うまでもない。
【0004】セメントやコンクリート構成材料中に残存
する疎水性黒色系粒子は、概して微粒であり単独では目
立たない量であっても、凝集や沈積すると、硬化後は上
又は下表面での美観を損なうまで目立つ。何れも系全体
の分散性を高めることで凝集化等をかなり防ぐことがで
き、また均一分散した状態を長く維持できるため、その
状態で硬化が進むと硬化体表面の黒斑量も過度に多くな
ることはない。分散状態を強化する方策として、分散剤
の使用が考えられ、例えば、特開平5−132347
は、アミン化合物が主成分のセメント用分散剤を用いて
系の分散状態を高め、黒鉛粒子の凝集化を抑制してい
る。セメント用分散剤は、セメント粒子の分散化には寄
与するが、疎水性黒色系粒子の種類によっては必ずしも
これに直接作用しないため、凝集化の抑制が不十分とな
り易い。このため、特開2000−72510では、石
炭灰配合時に付随混入する大量の未燃カーボンを、陽イ
オン性や非イオン性の界面活性剤を加えることで未燃カ
ーボンの分散性を高め、液表面でのカーボン粒子凝集化
を抑え、しかも施工時の作業性などの低下をもたらさな
い性状を保てることが知られている。
【0005】しかるに、セメント系泥漿中の黒色系粒子
の分散を図っても、配合時の混入空気によって気泡が断
続的に発生し、気泡の表面張力により分散黒色系粒子は
微粒なものほどまた低比重のものほど気泡に付着し易
く、付着粒子は気泡の浮上と共に泥漿液面迄運ばれる。
この際、破泡に時間がかかると、液面で新たに気泡に付
着する粒子も現れ、そこで黒色系粒子が凝集する。この
凝集は上記のような分散剤や界面活性剤では十分抑制し
難いため、破泡性を促進するため消泡剤を導入する必要
があるが、通常、コンクリートやモルタル混練物に使用
される消泡剤は、例えば未燃カーボン等のカルシウム基
非含有粒子に対しては、この消泡剤成分が該粒子に吸着
し易く、吸着すると未燃カーボン等の疎水作用を強める
ため、泥漿中での分散状態の向上が妨げられることがあ
った。また界面活性剤の選択如何によっては疎水性黒色
系粒子の分散化に有効であってもセメント等の水硬性成
分の分散性が十分向上せず、混練や施工作業上の制約が
増大したり硬化後の機械的性状が低下することがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、混
入した疎水性黒色系粒子の種類を問わず、該粒子によっ
て、表面が黒色〜黒灰色の斑点状又は縞状を呈する硬化
体になることを防ぎ、表面美観に優れ、かつ凝結性や強
度発現性等も良好な硬化体となる水硬性組成物を提供す
ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
解決のため種々検討した結果、特定の分散成分と消泡剤
を併用することで、含有黒色系粒子の種類如何に拘わら
ず、水中で相反する分散挙動を有する親水性物質と疎水
性物質を共に高分散化せしめて特定成分の凝集化や偏在
化を防ぐと共に、破泡性の向上や気泡発生の抑制も行う
ことができ、凝結性や硬化体性状の低下を起こすことな
く表面の美観改善効果が著しく高まったことから本発明
を完成させた。
【0008】即ち、本発明は以下の(1)〜(4)で表
される水硬性組成物である。(1)疎水性黒色系粒子、
セメント、分散剤並びに消泡剤を含有してなる水硬性組
成物。(2)疎水性黒色系粒子が、配合材料に付随して
混入したものであることを特徴とする前記(1)の水硬
性組成物。(3)分散剤が、アセチレン系界面活性剤、
シリコーン系界面活性剤、陰イオン界面活性剤の少なく
とも1種を含む界面活性剤とセメント用分散剤からなる
ことを特徴とする前記(1)又は(2)の水硬性組成
物。(4)消泡剤が極性溶液中でイオン化しないもので
あることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかの水
硬性組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の水硬性組成物が必須含有
する疎水性黒色系粒子とは、水に不溶性の粒子であれば
成分・形状・比重等に限定されず、また色調も純黒色に
限らず黒色に近いものであれば多少彩度的に淡いもので
も、また他の色相が混ざったものでも制限されない。そ
の発生源は単独で混入するもの、骨材や混和材に付着或
いは混在して混入するもの(以下、これらの状態で混入
するものを付随して混入するものと称す)やその構成成
分の一部と成すものの何れでも良く、又、セメント原料
中に含まれるか或いはセメント製造時に入り込んだキル
ン灰分等も挙げることができる。とりわけ、水添加後の
泥漿系では僅かな混練操作などで骨材や混和材の基体か
ら容易に遊離が認められる疎水性黒色系粒子が主たる発
生源となる。このような疎水性黒色系粒子としては、例
えば、セメント焼成クリンカに付随するロータリーキル
ンからの燃料灰分や煤塵などのキルンダスト、排煙脱硫
石膏、フライアッシュやボトムアッシュ等に含まれる未
燃カーボン、石炭灰中の未燃カーボン、天然骨材中の石
墨、シリカヒューム中の未燃カーボン、火山灰などを挙
げることができる。また、水硬性組成物中の疎水性黒色
系粒子の含有量は、必ずしも限定されないが本発明によ
る美観向上処置を施さない従来の水硬性組成物において
硬化後の硬化体表面に黒色系斑紋が明確に感知できる場
合の黒色系粒子の含有量に、概ね相当する量であれば良
い。
【0010】本発明の水硬性組成物に必須含有されるセ
メントは、何れのセメントであっても良く、例えば、普
通、中庸熱、低熱、白色、早強、超早強などの各種ポル
トランドセメント、速硬性セメント、アルミナセメン
ト、各種混合セメントなどの他、水和反応を生じて硬化
する水硬性物質なら限定されない。
【0011】本発明で使用する分散剤は、少なくとも、
セメント等の水硬性物質からなる水和反応性粒子を水中
で分散する作用を有する分散成分と疎水性黒色系粒子を
分散する作用を有する分散成分から構成される。前者分
散成分としては、セメント用分散剤を挙げることがで
き、セメントや水硬性物質の粒子を分散できる限り特に
限定されないが、セメント用分散剤の中でも高性能減水
剤や高性能AE減水剤が好ましく、この種の減水剤であ
れば何れのものでも使用できる。より好ましくは、ポリ
オキシアルキレン重合度が5以上のポリカルボン酸系高
性能減水剤か同系の高性能AE減水剤とする。
【0012】また、後者の分散成分は、公知の界面活性
剤を挙げることができる。該界面活性剤は、シリコーン
系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、陽イオン界面
活性剤、陰イオン界面活性剤などの公知界面活性剤であ
れば、水に可溶性若しくは懸濁できるものである限り特
段限定はされない。好ましくは、ポリオキシアルキレン
基を導入したシリコーン系公知界面活性剤、第2級又は
第3級のアルコールかグリコールであるアセチレン系公
知界面活性剤を挙げることができ、また陽イオン界面活
性剤は、アルキル基を有する第1級〜第4級のアンモニ
ウム塩系公知界面活性剤を挙げることができ、また陰イ
オン界面活性剤は、例えばドデシル硫酸トリエタノール
アミン塩等のアミン塩を主成分とする公知界面活性剤を
挙げることができる。これらの界面活性剤は異種のもの
を併用することができる。より好ましくは、少なくとも
前記のアセチレン系、シリコーン系、又は陰イオン公知
界面活性剤の何れかを使用すると疎水性黒色系粒子の成
分や比重等に拘わらず優れた分散作用を呈することがで
きる。
【0013】本発明に使用する分散剤は、前記の公知界
面活性剤とセメント用分散剤からなるものであって、よ
り好ましくは前記前記の少なくともアセチレン系公知界
面活性剤、シリコーン系公知界面活性剤、又は陰イオン
公知界面活性剤の1種以上とセメント用分散剤からなる
ものである。また、水硬性組成物中への本分散剤の配合
量は、セメント100重量部に対し、概ね0.001〜
3.0重量部(液量)とする。3.0重量部を超えると
凝結性や強度発現性が低下することがあるので好ましく
ない。また0.001重量部未満では水硬性粒子及び/
又は疎水性黒色系粒子の分散性状の向上が不十分となる
ことがある。尚、例えば疎水性黒色系粒子が粒径およそ
10mm以上の如く大きいものが主体の場合、疎水性黒
色系粒子の含有量がかなり少ない場合、又は後述の消泡
剤が前記界面活性剤と類似した化学成分を有する場合、
本分散剤を構成する界面活性剤の含有量を低減させるこ
とができる。本分散剤の使用により、泥漿中に浮遊する
黒色系粒子の凝集化を界面活性成分中の親水基が強力に
阻止し、その分散性を飛躍的に高めると共に、セメント
用分散剤によるセメント系粒子の分散性も高め、また該
成分中の陽イオン基により分散剤のセメント粒子への吸
着を阻止して凝結遅延等を起こすことなく施工時の作業
性や硬化性並びに強度発現性の低下を十分抑制すること
ができる。
【0014】本発明の水硬性組成物に必須含有される消
泡剤は、公知のコンクリート又はモルタル用消泡剤であ
れば特に制限されない。消泡剤の使用により、気泡表面
に付着した疎水性黒色系粒子が気泡と共に液面に運ばれ
ても気泡が容易に且つ短時間で破泡するため、液面での
滞留や凝集が抑えられる。好ましくは、この作用効果が
高いことから、極性溶液中でイオン化しない消泡剤の使
用が推奨される。消泡剤の配合量はセメント100重量
部に対し、概ね0.0005〜1.0重量部(液量)と
する。配合量が0.0005重量部未満では消泡効果が
殆ど現れず、また1.0重量部を超える配合量では、混
練スラリーの性状低下や硬化後の物理的耐久性が劣化す
るので好ましくない。また、極性溶液中でイオン化しな
い消泡剤の中でも、各種のエチレンオキサイド付加物で
あるポリエチレングリコール系消泡剤や多価アルコール
のエステル化物やアルキルエーテル等の多価アルコール
系消泡剤を使用すると、上記の破泡効果に加えて、混練
時の空気の巻き込みが少なくなり、従って泡そのものの
発生を低減できるので最も好ましい。
【0015】本発明の水硬性組成物は、上記以外の成分
が適宜配合されたものでも良い。この様な成分として、
コンクリートやモルタルで一般に使用されている各種の
骨材、混和材などの固型物を挙げることができる。ま
た、特に前記の疎水性黒色系粒子を発生源として含む骨
材や混和材を使用する場合が好適である。この場合、疎
水性黒色系粒子の含有形態は、単に骨材や混和材と混在
したり軽度に付着しているものが良く、また骨材や混和
材の構成成分の一部であっても構わないが、少なくとも
水を加えた後の攪拌・混練等で疎水性黒色系粒子が基体
から遊離できるものが良い。一例を挙げれば、未燃カー
ボンが残存する石炭灰やシリカフューム、石墨が混在し
た砕石、砂利、砂などの天然骨材、黒色系の鉱石粒を含
む石砂や火山灰等である。また、本発明の水硬性組成物
では配合使用する分散剤以外の成分からなる公知セメン
ト用混和剤を分散性状に支障を及ぼさないものである限
り配合しても良い。
【0016】また、本発明の水硬性組成物に関する水の
配合量は、円滑な水和反応と作業性に支障を及ぼさない
混練物の流動性を確保するために、セメント分に固形混
和材料を加えたもの100重量部に対し、10〜200
重量部とする。尚、上記各配合成分並びに水の配合順序
や配合操作方法は特に限定されず、例えば、全配合材料
の一括投入か固型配合材を混合投入した後液体配合材を
添加し、混練を行えば良い。混練後の混練物はモルタ
ル、コンクリート、充填材などの用途で通常行われてい
る方法と同様に施工や成形を行うことができる。
【0017】
【実施例】[実施例1〜11] 何れも表1記載の成分
を主成分とする市販の界面活性剤と市販のセメント用減
水剤からなる分散剤、市販の消泡剤、セメント、骨材、
混和材から選択された材料を水と共に表2記載の配合割
合となるよう100リットルの強制練りミキサーへ一括
投入した。尚、固体系の配合材料のうち黒色系の粒子の
存在が明確に認められるものについては表1にその状況
を記した。存在確認はセメント以外の各材料を温水を用
いて湿式粉砕し、静置後の上澄みと沈降物を採取して調
べ、セメントについては乾粉のまま直接肉眼で調べた。
配合材料はミキサーに投入後約90秒間混練を行った。
次いで、混練物を直径10cmで高さ20cmの円筒形
型枠に流し込み、約24時間後に脱型し、28日間水中
養生してコンクリート硬化体を得た。該硬化体上下面で
の黒色系の斑状痕や縞状模様発生の有無を調べたが、何
れの場合も肉眼では存在が確認できないか微細な黒色系
斑点が僅かに確認されただけのものであって、目立った
斑紋等は全く見られなかった。また、該硬化体の圧縮強
度をJIS A 1108に準じた方法で測定した。そ
の結果も表2に併せて記す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】[比較例1〜4] 表1記載の成分を主成
分とする市販の界面活性剤と市販のセメント用減水剤か
らなる分散剤、市販の消泡剤、セメント、骨材、混和材
から選択された材料を表2記載の配合割合となるよう水
と共に100リットルの強制練りミキサーへ一括投入
し、約90秒間混練を行った。尚、固体系の配合材料の
うち黒色系の粒子の存在が明確に認められるものについ
ては表1にその状況を記した。存在確認は前記実施例と
同様の方法で調べた。次いで、混練物を直径10cmで
高さ20cmの円筒形型枠に流し込み、約24時間後に
脱型し、28日間水中養生してコンクリート硬化体を得
た。該硬化体上下面での黒色系の斑状痕や縞状模様発生
の有無を肉眼で調べたが、何れも上面に黒色系斑点が明
確に目立つ表面状態であった。尚、該硬化体の圧縮強度
をJIS A 1108に準じた方法で測定した。その
結果も表2に併せて記す。
【0021】
【発明の効果】本発明の水硬性組成物は、目立った黒斑
や黒縞が表面に生じることが無く、美観を損なうことの
ない硬化体と成すことができ、その性状も良好で、例え
ば施工時の作業性の低下や凝結性や強度発現性の低下を
起こさない。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C04B 24:32) C04B 24:32) 103:40 103:40 103:50 103:50

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 疎水性黒色系粒子、セメント、分散剤並
    びに消泡剤を含有してなる水硬性組成物。
  2. 【請求項2】 疎水性黒色系粒子が、配合材料に付随し
    て混入したものであることを特徴とする請求項1記載の
    水硬性組成物。
  3. 【請求項3】 分散剤が、アセチレン系界面活性剤、シ
    リコーン系界面活性剤、陰イオン界面活性剤の少なくと
    も1種を含む界面活性剤とセメント用分散剤からなるこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の水硬性組成物。
  4. 【請求項4】 消泡剤が極性溶液中でイオン化しないも
    のであることを特徴とする請求項1〜3の何れか記載の
    水硬性組成物。
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