発明を実施するための実施形態の昇降圧型コンバータは、コアに巻回された第1の巻線と第2の巻線とを有し、第1の巻線の巻き始め端と第2の巻線の巻き始め端とが接続されて形成されるトランスを備える。また、第1の巻線の巻き終わり端に一方の端子が接続される第1のスイッチ素子と、第1のスイッチ素子に並列に接続される第1のダイオードとを備える。また、第2の巻線の巻き終わり端に一方の端子が接続される第2のスイッチ素子と、第2のスイッチ素子に並列に接続される第2のダイオードとを備える。また、第2のスイッチ素子の他方の端子と第2の巻線の巻き始め端との間に接続されるコンデンサを備える。また、第1のスイッチ素子のオンとオフとを制御する第1の制御信号および第2のスイッチ素子のオンとオフとを制御する第2の制御信号を発生させる出力電圧・回生動作制御部を備える。
そして、第1の実施形態では、第1のスイッチ素子の他方の端子と第2のスイッチ素子の他方の端子との間に負荷を接続し、第1のスイッチ素子の他方の端子と第1の巻線の巻き始め端との間に直流電源を接続する。出力電圧・回生動作制御部は、負荷に対して直流電源からの電力を給電するに際しては、第2のスイッチ素子をオフとし、第1のスイッチ素子の1周期におけるオンとオフの比率を変化させて負荷に給電する直流電圧を制御し、負荷からの電力を直流電源に対して回生するに際しては、第1のスイッチ素子をオフとし、第2のスイッチ素子の1周期におけるオンの比率を変化させて回生電力量を制御する。
また、第2の実施形態では、第1のスイッチ素子の他方の端子と第2のスイッチ素子の他方の端子との間に直流電源を接続し、第1のスイッチ素子の他方の端子と第1の巻線の巻き始め端との間に負荷を接続する。出力電圧・回生動作制御部は、負荷に対して直流電源からの電力を給電するに際しては、第1のスイッチ素子をオフとし、第2のスイッチ素子の1周期におけるオンの比率を変化させて負荷に給電する直流電圧を制御し、負荷からの電力を直流電源に対して回生するに際しては、第2のスイッチ素子をオフとし、第1のスイッチ素子の1周期におけるオンとオフの比率を変化させて回生電力量を制御する。
[第1の実施形態]
実施形態の技術について、図面を参照して以下に説明をする。
図1は、実施形態の昇降圧型コンバータにおける昇圧型コンバータの部分の原理を示す図である。
図1に示す昇圧型コンバータ1は、トランスTを備えている。トランスTのコアCRには、巻数NPの1次巻線NPおよび巻数NSの2次巻線NSが巻回されている。1次巻線NPの巻き始め端と2次巻線NSの巻き始め端とが接続されている。1次巻線NPの巻き終わり端にスイッチ素子S1の一方の端子が接続されている。2次巻線NSの巻き終わり端には、ダイオードD2の一端が接続されている。ダイオードD2の他端と2次巻線NSの巻き始め端との間にコンデンサCが接続されている。スイッチ素子S1の他端と1次巻線NPの巻き始め端との間に直流電源EDが接続されている。このようにして、コンデンサCと直流電源EDとが直列に接続されている。直流電源EDとコンデンサCとの直列回路の両端、すなわち、スイッチ素子S1の他方の端子とスイッチ素子S2の他方の端子との間には負荷LDが接続されている。
直流電圧E1は、トランスTの1次巻線NPとスイッチ素子S1との直列回路に印加される。トランスTの1次巻線NPに1次側電力が供給される。トランスTの1次巻線NPと2次巻線NSとの巻数の比を変えることによって、任意の2次側の直流電圧E2を得ることができる。また、後述するようにスイッチ素子S1の制御によっても任意の2次側の直流電圧E2を得ることができる。直流電圧E1と直流電圧E2とを加算した直流電圧EOは負荷LDに印加され、負荷LDに電力が供給される。ここで、スイッチ素子S1はオン(導通)とオフ(切断)とが交互に繰り返される電子的スイッチであり、ダイオードD2は整流素子、コンデンサCは平滑コンデンサである。トランスTの1次巻線NPと2次巻線NSの巻線の端に付された黒丸は、各々の「巻線の巻き始め端」を示すものである。ここで、「巻線の巻き始め端」の意味するところは、同一のコアに対して巻回される1次巻線NPと2次巻線NSと2つの巻線の各々の黒丸を付した巻線端から電流を流しこんだ場合にはトランスTにおける磁束が加算されるということである。1次巻線NPと2次巻線NSの黒丸が付されていない巻線の端は、「巻線の巻き終わり端」と称される。1次巻線NPと2次巻線NSとの各々の「巻線の巻き終わり端」から電流を流しこんだ場合においてもトランスTにおける磁束が加算される。いずれの端を「巻線の巻き始め端」または「巻線の巻き終わり端」と定義するかについては、任意に定め得るものである。
図1に示す昇圧型コンバータ1では、スイッチ素子S1がオンのときには2次巻線NSの側には電力が供給されず、スイッチ素子S1がオフのときに2次巻線NSの側に電力が供給される。
昇圧型コンバータ1に接続される負荷LDに対して、上述したように、直流電圧EIと直流電圧E2とが加算された直流電圧EOが供給される。数式4、数式5に示すようにして直流電圧EOと直流電圧EIの関係式が求められる。TON1はスイッチ素子S1がオンの時間、TOFF1はスイッチ素子S1がオフの時間である。なお、数式4、数式5は、効率η=1の理想状態の昇圧型コンバータにおける関係式を表わすものである。昇圧型コンバータ1においては、効率ηの値に応じて数式4、数式5におけるTON1/TOFF1の値は、効率η=1の理想状態におけるTON1/TOFF1の値とは異なるものとなる。
(数式4)
E2=(TON1/TOFF1)・(NS/NP)・E1
(数式5)
EO=E1+E2
=E1+(TON1/TOFF1)・(NS/NP)・E1
=E1・{1+(TON1/TOFF1)・(NS/NP)}
直流電源EDの直流電圧EIとコンデンサCの両端の直流電圧E2との極性は同じであるので、直流電圧EO>直流電圧EIの関係が成立する。
図1に示す昇圧型コンバータ1の効率η1(2次側電力PO/1次側電力P1)は、数式6で表わされる。ここで、1次側電力P1は、直流電源EDから供給される総電力であり、1次巻線NPに供給される1次側電力P11と直接に負荷LDに供給される電力P12とからなっている。2次側電力P2は、2次巻線NSを介して負荷LDに供給される電力である。1次巻線NPと2次巻線NSとを有する昇圧型コンバータ自体の効率ηは、背景技術として図10に示す昇圧型コンバータと等しいものである。
(数式6)
η1=PO/P1=PO/(P11+P12)
=(E2・IO+E1・IO)/{(E2・IO)/η+E1・IO}
=EO/(E2/η+E1)
=η/{(EO−E1)/EO+η・E1/EO}
=η/{1−(1−η)・E1/EO}
数式6において(1−η)とE1/EOとは、共に1以下の正値であるので、昇圧型コンバータ1の効率η1は、図10に背景技術として示す昇圧コンバータの効率ηよりも大きなものとなる。例えば、効率η=0.96(96%)、E1/EO=0.5の場合には、数式6によって、効率η1は、約0.98(98%)となり、背景技術に示すものから2%改善される。
数式6に示すように、E1/EOの値が1に近づく程、昇圧型コンバータ1の効率η1は大きくなる。E1/EO=1においては、負荷LDに供給される電力は、すべて直接に直流電源EDから供給されることとなるので、この場合には効率η1=1(100%)となる。一方、数式6に示すように、E1/EOの値が0に近づく程、昇圧型コンバータ1の効率η1は小さくなる。E1/EO=0に限りなく近ずく場合においては、負荷LDに供給される電力は、ほとんどすべて、昇圧型コンバータ1の2次側から供給されることとなるので、この場合には効率η1=効率ηとなる。
図2は、実施形態の昇降圧型コンバータにおける降圧型コンバータの部分の原理を示す図である。
図2に示す降圧型コンバータ2は、トランスTを備えている。トランスTのコアCRには、巻数NPの1次巻線NPおよび巻数NSの2次巻線NSが巻回されている。1次巻線NPの巻き始め端と2次巻線NSの巻き始め端とが接続されている。1次巻線NPの巻き終わり端にダイオードD1の一方の端子が接続されている。2次巻線NSの巻き終わり端には、スイッチ素子S2の一端が接続されている。スイッチ素子S2の他端と2次巻線NSの巻き始め端との間にコンデンサCが接続されている。ダイオードD1の他方の端子と1次巻線NPの巻き始め端との間に直流電源EDが接続されている。このようにして、コンデンサCと直流電源EDとが直列に接続されている。直流電源EDとコンデンサCとの直列回路の両端、すなわち、スイッチ素子S1の他方の端子とスイッチ素子S2の他方の端子との間、には負荷LDが接続されている。図2に示す降圧型コンバータ2は、図1に示す昇圧型コンバータ1におけるスイッチ素子S1をダイオードD1に置換え、スイッチ素子S2をダイオードD2に置換えたものである。その他の部分は図1に示すと同様の構成を有している。
図3は、図2を書き換えた降圧型コンバータ2を示す図である。このような書き換えによって、図3に示す回路と図11に示す回路との対比を容易にした。
図3と図11とを対比すると、コンデンサCについては以下のように接続が異なっている。図11においては、コンデンサCの一端はインダクタLと直流電源の給電側とに接続され、コンデンサCの他端は直流電源のグランド側に接続されている。一方、図3においては、コンデンサCは、直流電源EDと負荷LDとの間に配置されている。コンデンサCを設けた目的は、スイッチ素子S2のオン、オフを交互に繰り返す周期であるスイッチング周期毎に発生するリップルを平滑することにある。ここで、負荷LDに発生する直流電圧EOの変化はスイッチング周期に比べると遅く、スイッチング周期における直流電圧EOの電圧変化はほとんど無いものとみなせる。よって、コンデンサCの一端を負荷LDに接続する場合、コンデンサCの一端を直流電源のグランド側に接続する場合のいずれの場合においても、コンデンサCは平滑コンデンサとして作用し、同様の効果を得ることができる。
また、図3におけるダイオードD1と図11におけるダイオードDとを対比すると以下のように接続が異なっている。図11においては、スイッチ素子SとインダクタLとの接続点にダイオードDの一端が接続され、グランド側にダイオードDの他端が接続されている。一方、図3においては、ダイオードD1は1次巻線NPとグランド側との間に配置されている。ここで、1次巻線NPおよび2次巻線NSの巻き始め端を示す黒丸に注目すると、スイッチ素子S2がオンとなるときにはダイオードD1はオンとなることはない。そして、スイッチ素子S2がオフとなるときには、インダクタとして機能するトランスTに蓄えられた磁気エネルギーの放出に際してダイオードD1がオンとなることが見てとれる。すなわち、1次巻線NPと2次巻線NSとが両方でインダクタL(図11を参照)と同様に作用する。よって、図3におけるダイオードD1と、図11におけるダイオードDとは、両方とも転流ダイオードとして作用し、同様の効果を得ることができる。
すなわち、図2に示す降圧型コンバータ2では、スイッチ素子S2がオンのときに負荷LDに発生した回生電力がインダクタを構成する2次巻線NSを介して蓄積され、スイッチ素子S2がオフのときには、蓄積され回生電力がインダクタを構成する1次巻線NPを介して直流電源EDに対して供給される。
直流電源EDが接続されていないとした場合において、負荷LDに発生する直流電圧EOと直流電圧E1との関係が数式7によって求められる。TON2はスイッチ素子S2がオンの時間、TOFF2はスイッチ素子S2がオフの時間である。Tは1周期の時間である。なお、数式7は、効率η=1の理想状態の降圧型コンバータにおける関係式を表わすものである。降圧型コンバータ2においては、効率ηの値に応じて数式7におけるTON2/Tの値は、効率η=1の理想状態におけるTON2/Tの値とは異なるものとなる。
(数式7)
E1=TON2/(TON2+TOFF2)・EO
=TON2/T・EO
実際には、直流電源EDが接続されているので電流I1が直流電源EDに対して流れる場合には、数式7の直流電圧E1の値は、直流電源EDの内部インピーダンスに応じて若干高くなる程度である。ここで、直流電源EDがバッテリ、電気2重層コンデンサの場合には電流I1は充電電流である。また、直流電源EDが電力母線の場合には、電流I1は電力母線に流れる回生電流である。このようにして、負荷LDに発生する回生電力は直流電源EDに対して回生される。
図4は、実施形態の昇降圧型コンバータを示す図である。図4に示す昇降圧型コンバータ3は、トランスT、トランジスタTR1、トランジスタTR2、コンデンサC、出力電圧・回生動作制御部30を有している。昇降圧型コンバータ3では、スイッチ素子S1およびダイオードD1は金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transisitor:MOSFET)として1個のトランジスタTR1によって構成されている。スイッチ素子S2およびダイオードD2は金属酸化物半導体電界効果トランジスタとして1個のトランジスタTR2によって構成されている。ダイオードD1、ダイオードD2は金属酸化物半導体電界効果トランジスタのボディダイオードである。
図4に示す実施形態の昇降圧型コンバータ3では、トランスTのコアCRには、巻数NPの1次巻線NPおよび巻数NSの2次巻線NSが巻回されている。1次巻線NPの巻き始め端と2次巻線NSの巻き始め端とが接続されている。1次巻線NPの巻き終わり端にスイッチ素子S1とダイオードD1の並列接続回路(トランジスタTR1)の一方の端子が接続されている。2次巻線NSの巻き終わり端には、スイッチ素子S2とダイオードD2の並列接続回路(トランジスタTR2)の一端が接続されている。スイッチ素子S2とダイオードD2の並列接続回路(トランジスタTR2)の他端と2次巻線NSの巻き始め端との間にコンデンサCが接続されている。スイッチ素子S1とダイオードD1の並列接続回路(トランジスタTR1)の他方の端子と1次巻線NPの巻き始め端との間に直流電源EDが接続されている。このようにして、コンデンサCと直流電源EDとが直列に接続されている。直流電源EDとコンデンサCとの直列回路の両端、すなわち、スイッチ素子S1とダイオードD1の並列接続回路(トランジスタTR1)の他方の端子とスイッチ素子S2とダイオードD2の並列接続回路(トランジスタTR2)の他方の端子との間には、負荷LDが接続されている。また、スイッチ素子S1のオンとオフとスイッチ素子S2のオンとオフとを制御する出力電圧・回生動作制御部30を備えている。
図4と図1とを対比すると、図4では、図1のスイッチ素子S1に対応するのが、トランジスタTR1である。また、図4と図2とを対比すると、図4では、図2のスイッチ素子S2に対応するのが、トランジスタTR2である。トランジスタTR1のスイッチ素子S1、トランジスタTR2のスイッチ素子S2は、いずれも、ゲート端子を制御することによって、オン、オフの制御ができる。一方、トランジスタTR1のダイオードD1、トランジスタTR2のダイオードD2は、いずれも、常時、回路に接続された状態である。図4に示すスイッチ素子S1が金属酸化物半導体電界効果トランジスタであり、スイッチ素子にダイオードが並列に接続される点において、図1に示す回路との相違がある。また、図4に示すスイッチ素子S2が金属酸化物半導体電界効果トランジスタであり、スイッチ素子にダイオードが並列に接続される点において、図2、図3に示す回路との相違があるので、この点について説明をする。
図4に示す昇降圧型コンバータ3が、図1に示す昇圧型コンバータ1として機能する場合について説明をする。トランジスタTR2のスイッチ素子S2はオフとされ、トランジスタTR2のダイオードD2のみが図1に示すように接続される。トランジスタTR1のスイッチ素子S1はオンまたはオフとされ、図1には記載がないトランジスタTR1のダイオードD1が接続される。このダイオードD1は、スイッチ素子S2がオフとなる場合において1次巻線NPの両端の電圧を直流電圧E1にクランプする作用があり、昇圧型コンバータとしての作用に害をなすものではなく、トランジスタTR1をサージ電圧から保護するという利点を有する。
図4に示す昇降圧型コンバータ3が、図2、図3に示す降圧型コンバータ2として機能する場合について説明をする。トランジスタTR1のスイッチ素子S1はオフとされ、トランジスタTR1のダイオードD1のみが図2、図3に示すように接続される。トランジスタTR2のスイッチ素子S2はオンまたはオフとされ、図2、図3には記載がないトランジスタTR2のダイオードD2が接続される。このダイオードD2は、スイッチ素子S2がオフとなる場合において2次巻線NSの両端の電圧を直流電圧E2にクランプする作用があり、降圧型コンバータとしての作用に害をなすものではなく、トランジスタTR2をサージ電圧から保護するという利点を有する。
出力電圧・回生動作制御部30は、トランジスタTR1、トランジスタTR2を制御する。出力電圧・回生動作制御部30は昇降圧型コンバータ3の外部に設けられたシステム制御部40と接続されて、システム制御部40からの指令に応じて昇降圧型コンバータ3が所期の動作をする。
出力電圧・回生動作制御部30は、いずれも図示しない、中央演算装置(CPU)とラム(RAM)とロム(ROM)と周辺機器であるアナログデジタル変換器(A/D Converter)とを有して構成されている。アナログデジタル変換器には、アナログ信号である電流I1、直流電圧EO、直流電圧E1が入力され、デジタル信号に変換されて中央演算装置に入力される。また、中央演算装置からは、トランジスタTR1のオン/オフを制御する制御信号CS1とトランジスタTR2のオン/オフを制御する制御信号CS2とが出力され、トランジスタTR1とトランジスタTR2とに供給される。
図5、図6は、実施形態の昇降圧型コンバータ3の動作を示すタイムチャートである。
図5は、実施形態の昇降圧型コンバータ3が昇圧型コンバータとして機能する場合(図1を参照)の動作を示すタイムチャートである。図6は、実施形態の昇降圧型コンバータ3が降圧型コンバータとして機能する場合(図2を参照)の動作を示すタイムチャートである。
出力電圧・回生動作制御部30は、実施形態の昇降圧型コンバータ3を昇圧型コンバータとして機能させるか、降圧型コンバータとして機能させるかを制御する。出力電圧・回生動作制御部30は、直流電圧EO、直流電圧E1、電流I1を検出した中央演算装置が自ら昇圧型コンバータとして機能させるか、降圧型コンバータとして機能させるかを決めることができるようになされている。また、システム制御部40からの指令によって、出力電圧・回生動作制御部30は、昇圧型コンバータとしての制御をおこなうか、または、降圧型コンバータとしての制御をおこなうようにしても良い。
図5(A)は、直流電圧E1を示す。図5(B)は、制御信号CS1の状態とトランジスタTR1のスイッチ素子S1のオン/オフの状態を示す。制御信号CS1の状態がオンであれば、トランジスタTR1のスイッチ素子S1をオンとし、制御信号CS1の状態がオフであれば、トランジスタTR1のスイッチ素子S1をオフとする。オンの時間はTON1、オフの時間はTOFF1である。また、T=TON1+TOFF1は1周期である。図5(C)は、制御信号CS2の状態とトランジスタTR2のスイッチ素子S2のオン/オフの状態を示す。スイッチ素子S2はオフ状態である。図5(D)は直流電圧EOを示す。図5(A)〜図5(D)において横軸は時間tである。
図5(A)〜図5(D)を参照して、昇降圧型コンバータ3の動作を説明する。出力電圧・回生動作制御部30は、直流電圧E1に応じて(図5(A)を参照)、(TON1/TOFF1)を変化させて(図5(B)を参照)直流電圧EO(図5(D)を参照)が所定の値ER(図示せず)となるように制御をする。ここで、所定の値ERは出力電圧・回生動作制御部30の内部で発生される。出力電圧・回生動作制御部30は、所定の値ERと直流電圧EOとの誤差を検出して、この誤差が0となるような(TON1/TOFF1)をフィードバック制御によって発生させて直流電圧EOを所定の値ERと一致させる。具体的には、直流電圧EOが値ERよりも小さいときには(TON1/TOFF1)をより大きくし、直流電圧EOが値ERよりも大きいときには(TON1/TOFF1)をより小さくする(数式5を参照)。
負荷LDが電気自動車のモータである場合には、所定の値ERは、例えば、システム制御部40に設けられたアクセルペダル(図示せず)によって変化させられ、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、直流電圧EOを変化させモータの回転駆動力を制御する。
図6(A)は、電流I1を示す。図6(B)は、制御信号CS2の状態とトランジスタTR2のスイッチ素子S2のオン/オフの状態を示す。制御信号CS2の状態がオンであれば、トランジスタTR2のスイッチ素子S2をオンとし、制御信号CS2の状態がオフであれば、トランジスタTR2のスイッチ素子S2をオフとする。オンの時間はTON2、オフの時間はTOFF2である。また、T=TON2+TOFF2は1周期である。図6(C)は、制御信号CS1の状態とトランジスタTR1のスイッチ素子S1のオン/オフの状態を示す。スイッチ素子S1はオフ状態である。図6(D)は直流電圧EOを示す。図6(A)〜図6(D)において横軸は時間tである。
図6(A)〜図6(D)を参照して、昇降圧型コンバータ3の動作を説明する。出力電圧・回生動作制御部30は、電流I1を検出して(図5(A)を参照)、(TON2/T)を変化させて(図6(B)を参照)電流I1が所定の値IR(図示せず)となるように制御する。ここで、所定の値IRは出力電圧・回生動作制御部30の内部で発生される。出力電圧・回生動作制御部30は、所定の値IRと電流I1との誤差を検出して、この誤差が0となるような(TON2/T)をフィードバック制御により発生させて電流I1を所定の値IRと一致させる。具体的には、電流I1が値IRよりも小さいときには(TON2/T)をより大きくし、直流電圧EOが値ERよりも大きいときには(TON2/T)をより小さくする(数式7を参照)。
負荷LDが電気自動車のモータである場合には、負荷LDであるモータの両端に発生する直流電圧EOはモータの回転数に応じて変化する。従って電流I1の大きさを制御しない場合には、過大な電流I1がバッテリに流されることとなる。しかしながら、このようにして、電流I1の大きさを制御する場合においては、直流電圧EOの大小にかかわらず電流I1を一定の値とできるのでバッテリの破壊を引き起こすような過大な電流がバッテリに流されることはない。
実施形態の昇降圧型コンバータ3の利点を以下にまとめる。
実施形態の昇降圧型コンバータ3と背景技術である図10に示す昇圧型コンバータとを比較する。実施形態の昇降圧型コンバータ3は、以下の、第1の利点から第3の利点までを有する。
第1の利点は、上述したように、昇降圧型コンバータ3の効率は、図10に示す昇圧型コンバータの効率よりも高い。昇降圧型コンバータ3においては直接に直流電源EDから負荷LDに供給される電力についての効率は1であるのに対して、図10に示す昇圧型コンバータではすべての電力が昇圧コンバータを経由して負荷に供給されるからである。
第2の利点は、上述したように、実施形態の昇降圧型コンバータ3のトランジスタTR2の耐圧は、直流電圧E2で足りるのに対して、図11に示す降圧型コンバータを用いる場合にはスイッチ素子Sの耐圧は直流電圧EOが必要とされる。実施形態の昇降圧型コンバータ3では、トランジスタTR2の低耐圧化が可能となることから、トランジスタTR2の小型化、低価格化、発熱の減少、装置の小型化を図ることができる。
第3の利点は、上述したように、実施形態の昇降圧型コンバータ3のトランスTが伝送する電力は負荷LDに伝送される電力の一部であるのに対して、図10に示す昇圧型コンバータのトランスTが伝送する電力はより大きく、負荷LDに伝送される電力のすべてである。よって、実施形態の昇降圧型コンバータ3では、トランスTの小型化が可能となるのみならず、トランスの低価格化、トランスにおける発熱の減少、装置の小型化を図ることができる。
実施形態の昇降圧型コンバータ3と、これと同じ機能を有するものの例として背景技術である図10に示す昇圧型コンバータと背景技術である図11に示す降圧型コンバータとを組み合わせた昇降圧型コンバータについて比較をする。第4の利点は、構造が簡単であることである。上述したように、図10に示す昇圧型コンバータと図11に示す降圧型コンバータとの組み合わせた場合には、トランスTとインダクタLとを用いなければならない。一方、実施形態の昇降圧型コンバータ3では、トランスTのみを用いて同じ作用効果を得ながら、装置の低価格化、装置の小型化を図ることができる。また、同一装置においては、同時に昇圧と降圧とをおこなう必要がない用途が多い。よって、昇圧型コンバータと降圧型コンバータとを両方同時に動作させる目的で2つの独立コンバータを備えなくとも装置としての汎用性は高い。
[第1の実施形態の変形]
実施形態の変形の技術について以下に説明をする。これらの変形例においても、上述した、種々の利点が損なわれることはない。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、トランジスタTR1、トランジスタTR2として金属酸化物半導体電界効果トランジスタを用いたが、金属酸化物半導体電界効果トランジスタに替えて、その一方のトランジスタ、または、その両方のトランジスタを接合型トランジスタ(Bipolar Transistor:バイポーラトランジス)とダイオードの並列接続回路とすることができる。また、金属酸化物半導体電界効果トランジスタに替えて、その一方のトランジスタ、または、その両方のトランジスタを絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)とダイオードの並列接続回路とすることもできる。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、昇圧の動作において出力電圧・回生動作制御部30はフィードバック制御によって直流電圧EOを一定に保つような制御をおこなったが、フィードバック制御を採用せず、(TON1/TOFF1)を直接に変化させて、所望の直流電圧EOを得るようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、電力を直流電源に回生するための降圧の動作において出力電圧・回生動作制御部30は、フィードバック制御によって電流I1を一定に保つような制御をおこなった。これは、回生電力量を制御する方法の一つである。回生電力量を制御する他の方法としては、直流電圧E1を一定に保つような制御、または、直流電圧EOを一定に保つような制御、または、電流I1を一定に保つような制御、または、電流IOを一定に保つような制御、さらには、電流I1と直流電圧E1の積、電流IOと直流電圧EOの積を出力電圧・回生動作制御部30で演算してこれらの積を一定に保つような制御をおこなうようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、降圧の動作において出力電圧・回生動作制御部30はフィードバック制御によって電流I1を一定に保つような制御をおこなったが、フィードバック制御を採用せず、(TON2/T)を直接に変化させて、所望の電流I1、または、所望の電流IO、または、所望の直流電圧E1、または、所望の直流電圧EO、さらには、電流I1と直流電圧E1の積、または、電流IOと直流電圧EOの積を出力電圧・回生動作制御部30で演算して、所望の電力を得るようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、直流電源EDを昇降圧型コンバータ3の外部に配置したが、直流電源EDを昇降圧型コンバータの内部に含むようにしても良い。この場合に、直流電源EDは、バッテリ、電気2重層コンデンサ、直流系統電源のいずれであっても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、トランジスタTR2と、1次巻線NPと2次巻線NSと、の間に接続されるコンデンサCを含むものとしたが、コンデンサCを昇降圧型コンバータの内部に含むことなく、昇降圧型コンバータの外部に設けるようにしても良い。さらには、負荷LDが容量性負荷である場合には、この容量性負荷をコンデンサCに替えて用いることができる。
実施形態の昇降圧型コンバータ3では、コンデンサCは、トランジスタTR2の2次巻線NSに接続されない端子(トランジスタTR2の他の端子)と、1次巻線NPと2次巻線NSの接続点と、の間に接続されるものとした。しかしながら、コンデンサCは、トランジスタTR2の他の端子と、トランジスタTR1の1次巻線NPに接続されない端子(トランジスタTR1の他の端子)と、の間に接続されるものとしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ3における、直流電源EDの極性の正負を入れ替え、ダイオードの極性も含んだトランジスタTR1、トランジスタTR2の極性を入れ替えて、負荷LDに印加され、負荷LDから出力される直流電圧EOの極性の正負を入れ替えることもできる。
[第2の実施形態]
図7は、別の実施形態の昇降圧型コンバータを示す図である。図7に示す昇降圧型コンバータ4は、昇降圧型コンバータ4に接続される直流電源EDと負荷LDとの配置については、第1の実施形態とは異なり両者が入れ替わっている。それに伴い、電流I1、直流電圧EO、直流電圧E1の検出位置が異なっている。また、出力電圧・回生動作制御部30から発生する制御信号CS1、制御信号CS2の内容も異なるものとなっている。昇降圧型コンバータ4において、昇降圧型コンバータ3と同一構成部については同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示す実施形態の昇降圧型コンバータ4は、トランスTのコアCRには、巻数NPの1次巻線NPおよび巻数NSの2次巻線NSが巻回されている。1次巻線NPの巻き始め端と2次巻線NSの巻き始め端とが接続されている。1次巻線NPの巻き終わり端にスイッチ素子S1とダイオードD1の並列接続回路(トランジスタTR1)の一方の端子が接続されている。2次巻線NSの巻き終わり端には、スイッチ素子S2とダイオードD2の並列接続回路(トランジスタTR2)の一端が接続されている。スイッチ素子S2とダイオードD2の並列接続回路(トランジスタTR2)の他端と2次巻線NSの巻き始め端との間にコンデンサCが接続されている。スイッチ素子S1とダイオードD1の並列接続回路(トランジスタTR1)の他方の端子と1次巻線NPの巻き始め端との間に負荷LDが接続されている。このようにして、コンデンサCと直流電源EDとが直列に接続されている。直流電源EDとコンデンサCとの直列回路の両端、すなわち、スイッチ素子S1とダイオードD1の並列接続回路(トランジスタTR1)の他方の端子とスイッチ素子S2とダイオードD2の並列接続回路(トランジスタTR2)の他方の端子との間には、直流電源EDが接続されている。また、スイッチ素子S1のオンとオフとスイッチ素子S2のオンとオフとを制御する出力電圧・回生動作制御部30を備えている。
実施形態の昇降圧型コンバータ4では、直流電源EDから負荷LDに対して電力を供給するときには降圧型コンバータとして機能し、負荷LDからの電力を直流電源EDに回生するときには昇圧型コンバータとして機能する。
出力電圧・回生動作制御部30は、実施形態の昇降圧型コンバータ4を降圧型コンバータとして機能させるか、昇圧型コンバータとして機能させるかを制御する。出力電圧・回生動作制御部30は、直流電圧EO、直流電圧E1、電流I1を検出した中央演算装置が自ら降圧型コンバータとして機能させるか、昇圧型コンバータとして機能させるかを決めることができるようになされている。また、システム制御部40からの指令によって、出力電圧・回生動作制御部30は、昇圧型コンバータとしての制御をおこなうか、または、降圧型コンバータとしての制御をおこなうようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ4が降圧型コンバータとして機能する場合には、直流電源EDからの直流電圧E1と負荷LDに印加される直流電圧EOとの関係は、数式8で表わされる。TON2はトランジスタTR2のスイッチ素子S2がオンとなる時間である。なお、数式8は、効率η=1の理想状態の昇降圧型コンバータにおける関係式を表わすものである。実施形態の昇降圧型コンバータ4においては、効率ηの値に応じて数式8におけるTON2/Tの値は、効率η=1の理想状態におけるTON2/Tの値とは異なるものとなる。
(数式8)
EO=(TON2/T)・E1
図8は、第2の実施形態の昇降圧型コンバータ4が降圧型コンバータとして機能する場合の動作を示すタイムチャートである。図8(A)は、直流電圧E1を示す。図8(B)は、制御信号CS2の状態とトランジスタTR2のスイッチ素子S2のオンの状態を示す。制御信号CS2の状態がオンであれば、トランジスタTR2のスイッチ素子S2をオンとし、制御信号CS2の状態がオフであれば、トランジスタTR2のスイッチ素子S2をオフとする。オンの時間はTON2、Tは1周期の時間である。図8(C)は、制御信号CS1の状態とトランジスタTR1のスイッチ素子S1のオン/オフの状態を示す。スイッチ素子S1はオフ状態である。図8(D)は負荷LDに印加される直流電圧EOを示す。図8(A)〜図8(D)において横軸は時間tである。
図8(A)〜図8(D)を参照して、昇降圧型コンバータ4の動作を説明する。出力電圧・回生動作制御部30は、直流電圧E1(図8(A)を参照)に応じて、(TON2/T)を変化させて直流電圧EO(図8(D)を参照)が所定の値ER(図示せず)となるように制御をする。ここで、所定の値ERは出力電圧・回生動作制御部30の内部で発生される。出力電圧・回生動作制御部30は、所定の値ERと直流電圧EOとの誤差を検出して、この誤差が0となるような(TON2/T)をフィードバック制御によって発生させて直流電圧EOを所定の値ERと一致させる。具体的には、直流電圧EOが値ERよりも小さいときには(TON2/T)をより大きくし、直流電圧EOが値ERよりも大きいときには(TON2/T)をより小さくする(数式8を参照)。
負荷LDが電気自動車のモータである場合には、所定の値ERは、例えば、システム制御部40に設けられたアクセルペダル(図示せず)によって変化させられ、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、直流電圧EOを変化させモータの回転駆動力を制御する。
実施形態の昇降圧型コンバータ4が昇圧型コンバータとして機能する場合には、数式9、数式10に示すようにして、直流電圧E1と負荷LDに発生する直流電圧EOとの関係が導かれる。TON1はスイッチ素子S1がオンの時間、TOFF1はスイッチ素子S1がオフの時間である。なお、数式9、数式10は、効率η=1の理想状態の昇降圧型コンバータにおける関係式を表わすものである。実施形態の昇降圧型コンバータ4においては、効率ηの値に応じて数式9、数式10におけるTON1/TOFF1の値は、効率η=1の理想状態におけるTON1/TOFF1の値とは異なるものとなる。
(数式9)
E2=(TON1/TOFF1)・(NS/NP)・EO
(数式10)
E1=EO+E2
=EO+(TON1/TOFF1)・(NS/NP)・EO
=EO・{1+(TON1/TOFF1)・(NS/NP)}
直流電源EDの直流電圧EIとコンデンサCの両端の直流電圧E2との極性は同じであるので、直流電圧E1>直流電圧EOの関係が成立する。数式10に示す関係は、直流電源EDが接続されていない場合に成立する式である。実際に直流電源EDが接続され、電流I1が直流電源EDに対して流れる場合には、直流電圧E1の値は、直流電源EDの内部インピーダンスに応じて若干、高くなる程度である。
昇降圧型コンバータ4が昇圧型コンバータとして機能する場合の効率η2(2次側電力PO/1次側電力P1)は、数式11で表わされる。ここで、1次側電力P1は、負荷LDから供給される総電力であり、1次巻線NPに供給される1次側電力P11と直接に直流電源EDに供給される電力P12とからなっている。2次側電力P2は、2次巻線NSを介して直流電源EDに供給される電力である。1次巻線NPと2次巻線NSとを有する昇圧型コンバータ自体の効率ηは、背景技術として図10に示す昇圧型コンバータと等しいものである。
(数式11)
η2=PO/P1=PO/(P11+P12)
=(E2・I1+EO・I1)/{(E2・I1)/η+EO・I1}
=η/{1−(1−η)・EO/E1}
数式11に示すように、昇降圧型コンバータ4が昇圧型コンバータとして機能し、電力回生をする場合には負荷LDからトランスTを介せずに直接に直流電源EDに回生される電力があるので、電力回生に際する効率は良好なものとなる。数式11において(1−η)とEO/E1とは、共に1以下の正値であるので、昇圧型コンバータ1の効率η1は、図10に背景技術として示す昇圧コンバータの効率ηよりも大きなものとなる。例えば、効率η=0.96(96%)、EO/E1=0.5の場合には、数式11によって、効率η1は、約0.98(98%)となり、背景技術に示すものから2%改善される。
図9は、第2の実施形態の昇降圧型コンバータ4が昇圧型コンバータとして機能する場合の動作を示すタイムチャートである。
図9(A)は、電流I1を示す。図9(B)は、制御信号CS1の状態とトランジスタTR1のスイッチ素子S12のオン/オフの状態を示す。制御信号CS1の状態がオンであれば、トランジスタTR1のスイッチ素子S1をオンとし、制御信号CS1の状態がオフであれば、トランジスタTR1のスイッチ素子S1をオフとする。オンの時間はTON1、オフの時間はTOFF1である。また、T=TON1+TOFF1は1周期である。図9(C)は、制御信号CS2の状態とトランジスタTR2のスイッチ素子S2のオン/オフの状態を示す。スイッチ素子S2はオフ状態である。図9(D)は直流電圧EOを示す。図9(A)〜図9(D)において横軸は時間tである。
出力電圧・回生動作制御部30は、直流電圧EOに応じて(図9(D)を参照)、(TON1/TOFF1)を変化させて(図9(B)を参照)回生電流である電流I1(図9(A)を参照)が所定の値IR(図示せず)となるように制御をする。ここで、所定の値IRは出力電圧・回生動作制御部30の内部で発生される。出力電圧・回生動作制御部30は、所定の値IRと電流I1との誤差を検出して、この誤差が0となるような(TON1/TOFF1)をフィードバック制御によって発生させて電流I1を所定の値IRと一致させる。具体的には、電流I1が値IRよりも小さいときには(TON1/TOFF1)をより大きくし、電流I1が値IRよりも大きいときには(TON1/TOFF1)をより小さくする。つまり、数式10によれば、(TON1/TOFF1)の値を変化させれば直流電圧E1の大きさを変化させることが可能になるが、直流電圧E1の発生源がバッテリまたは電力母線の場合には、上述したように電流I1が変化することとなる。
負荷LDが電気自動車のモータである場合には、負荷LDであるモータの両端に発生する直流電圧EOはモータの回転数に応じて変化する。このようにして、電流I1の大きさを制御する場合においては、直流電圧EOの大小にかかわらず電流I1を一定の値とできるので破壊を引き起こすような過大な電流がバッテリに流されることはない。
実施形態の昇降圧型コンバータ4は、電力回生の動作時において、背景技術である図10に示す昇圧型コンバータよりも効率が高い。昇降圧型コンバータ4においては直接に負荷LDから直流電源EDに供給される回生電力についての効率は1であるのに対して、図10に示す昇圧型コンバータではすべての電力が昇圧コンバータを経由して負荷に供給されるからである。その他、第1の実施形態の昇降圧型コンバータ3の有する種々の利点を有する。
[第2の実施形態の変形]
第2の実施形態の変形の技術について以下に説明をする。これらの変形例においても、上述した、種々の利点が損なわれることはない。
実施形態の昇降圧型コンバータ4では、降圧の動作において出力電圧・回生動作制御部30はフィードバック制御によって直流電圧EOを一定に保つような制御をおこなったが、フィードバック制御を採用せず、(TON2/T)を直接に変化させて、所望の直流電圧EOを得るようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ4では、電力を直流電源に回生するための昇圧の動作において出力電圧・回生動作制御部30は、フィードバック制御によって電流I1を一定に保つような制御をおこなった。これは、回生電力量を制御する方法の一つである。回生電力量を制御する他の方法としては、直流電圧E1を一定に保つような制御、または、直流電圧EOを一定に保つような制御、または、電流I1を一定に保つような制御、または、電流IOを一定に保つような制御、さらには、電流I1と直流電圧E1の積、電流IOと直流電圧EOの積を出力電圧・回生動作制御部30で演算してこれらの積を一定に保つような制御をおこなうようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ4では、昇圧の動作において出力電圧・回生動作制御部30はフィードバック制御によって電流I1を一定に保つような制御をおこなったが、フィードバック制御を採用せず、(TON1/TOFF1)を直接に変化させて、所望の電流I1、または、所望の電流IO、または、所望の直流電圧E1、または、所望の直流電圧EO、さらには、電流I1と直流電圧E1の積、電流IOと直流電圧EOの積を出力電圧・回生動作制御部30で演算して、所望の電力を得るようにしても良い。
実施形態の昇降圧型コンバータ4において、直流電源EDの極性の正負を入れ替えること、直流電源EDを昇降圧型コンバータ4の内部に備えること、コンデンサCの位置を負荷LDの両端に設けること等、上述した、第1の実施形態の変形を応用することもできる。
上述した種々の実施形態に開示された個々の技術を組み合わせた、新たな実施形態も実施可能である。また、本発明は上述した実施形態およびこれらを組み合わせた実施形態の範囲に限られるものではない。