JP2001338807A - スイッチング電源装置 - Google Patents

スイッチング電源装置

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JP2001338807A
JP2001338807A JP2001079543A JP2001079543A JP2001338807A JP 2001338807 A JP2001338807 A JP 2001338807A JP 2001079543 A JP2001079543 A JP 2001079543A JP 2001079543 A JP2001079543 A JP 2001079543A JP 2001338807 A JP2001338807 A JP 2001338807A
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atomic
magnetic core
metallic glass
glass alloy
δtx
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JP2001079543A
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Yutaka Naito
豊 内藤
Takao Mizushima
隆夫 水嶋
Shoji Yoshida
昌二 吉田
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Alps Alpine Co Ltd
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Alps Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発熱量が小さく、小型化が可能なスイッチン
グ電源装置、各種コンバータ回路及びアクティブフィル
タを提供する。 【解決手段】 直流電圧を矩形波電流に変換するスイッ
チング素子2と、この矩形波電圧を変圧するトランス3
と、変圧された矩形波電圧を直流電圧に変換する整流回
路4及び平滑回路5とを具備してなり、トランス3が、
ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgは
ガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の
温度間隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相と
する組織からなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材とが
混合され、成形されてなる磁心を具備していることを特
徴とするスイッチング電源装置1を採用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スイッチング電源
装置、各種コンバータ回路及びアクティブフィルタに関
するものであり、特に、金属ガラス合金からなる磁心を
備えたトランスや磁心付きコイルを有するスイッチング
電源装置、各種コンバータ回路及びアクティブフィルタ
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の利用の拡大に伴い、電
子機器の開発がますます盛んになっている。特に最近で
は、電子機器の小型化や電力損失の低下による発熱量の
低減といった目的に開発の重点を置き、これらの目的を
達成するために、スイッチング電源装置、各種のDC/
DCコンバータ回路またはアクティブフィルタ等の改良
が行われている。従来から、これらのスイッチング電源
装置等に用いられる各種磁気素子の磁心には、主として
フェライト磁心が用いられ、また場合によってはカーボ
ニル鉄圧粉磁心や、FeAlSi合金圧粉磁心若しくは
FeNi合金圧粉磁心が用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、フェライト磁
心の場合においては、磁気飽和を防ぐために通常はギャ
ップ付き磁心が用いられるが、このギャップからの磁束
漏れが周辺の他の回路に悪影響を及ぼすおそれがあっ
た。また、例えばNiZnフェライトはコアロスが大き
いため、装置等の発熱量が高くなるおそれがあった。
【0004】また、カーボニル鉄圧粉磁心は、コアロス
が極めて大きく、フェライト磁心よりも発熱量がかなり
高くなるおそれがあった。更にFeAlSi合金圧粉磁
心やFeNi合金圧粉磁心のコアロスは、カーボニル鉄
圧粉磁心ほど高くないものの、要求されるコアロスより
も大きなコアロスであるため、発熱量を低減するには不
十分であった。
【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であって、発熱量が小さく、小型化が可能なスイッチン
グ電源装置、各種コンバータ回路及びアクティブフィル
タを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は以下の構成を採用した。本発明のスイッ
チング電源装置は、直流電圧を矩形波電圧に変換するス
イッチング素子と、前記矩形波電圧を変圧するトランス
と、変圧された矩形波電圧を直流電圧に変換する整流回
路及び平滑回路とを具備してなり、前記トランスが、Δ
Tx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガ
ラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温
度間隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相とす
る組織からなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材とが混
合され、成形されてなる磁心を具備していることを特徴
とする。
【0007】係るスイッチング電源装置によれば、トラ
ンスに金属ガラス合金粉末からなる磁心が用いられてお
り、この金属ガラス合金は結晶化温度よりも十分低い温
度の熱処理により磁心の内部応力を緩和あるいは除去で
き、このため磁心のコアロスを低減できるので、スイッ
チング電源装置全体のの発熱量を低減することが可能に
なる。また、この磁心は透磁率が低いので、磁気飽和防
止のためのギャップを設ける必要がなく、漏れ磁界が発
生しないので、周辺の他の回路に悪影響を及ぼすことが
ない。
【0008】次に、本発明のスイッチング電源装置は、
直流電圧を矩形波電圧に変換するスイッチング素子と、
前記矩形波電圧を変圧するトランスと、変圧された矩形
波電圧を直流電圧に変換する整流回路及び平滑回路とを
具備してなり、前記平滑回路は、コンデンサと磁心付き
コイルを少なくとも具備してなり、前記磁心が、ΔTx
=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス
遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間
隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相とする組
織からなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材とが混合さ
れ、成形されてなるものであることを特徴とする。
【0009】係るスイッチング電源装置によれば、磁心
付きコイルの磁心に、金属ガラス合金粉末からなる磁心
が用いられており、この金属ガラス合金は結晶化温度よ
りも十分低い温度の熱処理により磁心の内部応力を緩和
あるいは除去でき、このため磁心のコアロスを低減でき
るので、スイッチング電源装置全体の発熱量を低減する
ことが可能になる。また、この磁心は透磁率が低いの
で、磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要がな
く、漏れ磁界が発生しないので、周辺の他の回路に悪影
響を及ぼすことがない。
【0010】次に本発明の降圧型コンバータ回路は、ス
イッチング素子と、該スイッチング素子により直流電流
が遮断されたときに逆起電力が生じる磁心付きコイル
と、前記の逆起電力により生じた電流を平滑化するコン
デンサと、前記磁心付きコイルに対して逆並列に接続さ
れ、前記磁心付きコイルと前記コンデンサとともに環流
路を形成する整流素子とを具備してなり、前記磁心が、
ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgは
ガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の
温度間隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相と
する組織からなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材とが
混合され、成形されてなることを特徴とする。
【0011】また本発明の昇圧型コンバータ回路は、ス
イッチング素子と、該スイッチング素子により直流電流
が遮断されたときに逆起電力が生じる磁心付きコイル
と、前記磁心付きコイルに対して順方向に直列接続され
て前記起電力により発生した電流を整流する整流素子
と、整流された電流を平滑化するコンデンサとを具備し
てなり、前記磁心が、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結
晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で
表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であ
って非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金
の粉末と、絶縁材とが混合され、成形されてなることを
特徴とする。
【0012】また本発明の極性反転型コンバータ回路
は、スイッチング素子と、該スイッチング素子により直
流電流が遮断されたときに逆起電力が生じる磁心付きコ
イルと、前記逆起電力により発生した電流を平滑化する
コンデンサと、前記スイッチング素子に対して逆方向に
直列接続されて前記直流電流を遮断する整流素子とを具
備してなり、前記磁心が、ΔTx=Tx−Tg(ただしTx
は結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の
式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上
であって非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス
合金の粉末と、絶縁材とが混合され、成形されてなるこ
とを特徴とする。
【0013】上記の降圧型、昇圧型及び極性反転型のコ
ンバータ回路によれば、磁心付きコイルに金属ガラス合
金粉末からなる磁心が用いられており、この金属ガラス
合金は結晶化温度よりも十分低い温度の熱処理により磁
心の内部応力を緩和あるいは除去でき、このため磁心の
コアロスを低減できるので、これらのコンバータ回路全
体の発熱量を低減することが可能になる。また、この磁
心は透磁率が低いので、磁気飽和防止のためのギャップ
を設ける必要がなく、漏れ磁界が発生しないので、周辺
の他の回路に悪影響を及ぼすことがない。
【0014】次に、本発明のアクティブフィルタは、先
に記載の昇圧型コンバータ回路と、この昇圧型コンバー
タ回路の前記スイッチング素子のスイッチング間隔を制
御する制御部とを具備してなることを特徴とする。
【0015】上記のアクティブフィルタによれば、コン
バータ回路に用いられる磁心付きコイルの磁心に、金属
ガラス合金粉末からなる磁心が用いられており、この磁
心はコアロスが低いので、これらのアクティブフィルタ
全体の発熱量を低減することが可能になる。また、この
磁心は透磁率が低いので、磁気飽和防止のためのギャッ
プを設ける必要がなく、漏れ磁界が発生しないので、周
辺の他の回路に悪影響を及ぼすことがない。
【0016】上記の金属ガラス合金は比抵抗が1.5μ
Ω・m以上のものが好ましい。また、前記の各磁心を構
成する金属ガラス合金の組成は、下記の組成で表される
ことが好ましい。即ち、Alが1〜10原子%であり、
Gaが0.5〜4原子%であり、Pが15原子%以下で
あり、Cが7原子%以下であり、Bが2〜10原子%で
あり、Siが15原子%以下であり、残部がFeであっ
て、不可避的不純物を含んでも良い金属ガラス合金であ
る。また、別の例として、Alが1〜10原子%であ
り、Gaが0.5〜4原子%であり、Pが15原子%以
下であり、Cが7原子%以下であり、Bが2〜10原子
%であり、残部がFeであり、不可避的不純物を含んで
も良い金属ガラス合金を用いても良い。
【0017】更に別の例として、Alが1〜10原子%
であり、Gaが0.5〜4原子%であり、Pが15原子
%以下であり、Cが7原子%以下であり、Bが2〜10
原子%であり、Siが15原子%以下であり、Ti、Z
r、Hf、Nb、Taのうちの一種以上の元素が0〜4
原子%であり、V、Cr、Mo、Wのうちの一種以上の
元素0〜8原子%であり、Pd、Pt、Auのうちの一
種以上の元素が0〜8原子%であり、残部がFeであっ
て、不可避的不純物を含んでも良い金属ガラス合金であ
る。また、別の例として、Alが1〜10原子%であ
り、Gaが0.5〜4原子%であり、Pが15原子%以
下であり、Cが7原子%以下であり、Bが2〜10原子
%であり、Ti、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一種
以上の元素が0〜4原子%であり、V、Cr、Mo、W
のうちの一種以上の元素0〜8原子%であり、Pd、P
t、Auのうちの一種以上の元素が0〜8原子%であ
り、残部がFeであり、不可避的不純物を含んでも良い
金属ガラス合金を用いても良い。
【0018】上記のPの添加量は、5〜12原子%の範
囲がより好ましく、7〜12原子%の範囲が特に好まし
い。またCの添加量は、2〜7原子%の範囲がより好ま
しく、5〜7原子%の範囲が特に好ましい。そしてSi
の添加量は、0.5〜15原子%の範囲がより好まし
く、0.5〜4原子%の範囲が特に好ましい。
【0019】また、各磁心を構成する金属ガラス合金の
組成は、下記の組成で表されるものであってもよい。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1(P1-b1Sib1)
v1z1w1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、組成比を示すa1、b1、x1、v1、z1、w1は、0
≦a1≦0.15、0<b1≦0.8、x1≦20原子
%、v1≦22原子%、0原子%≦z1≦10原子%、1
原子%≦w1≦20原子%である。
【0020】また、各磁心を構成する金属ガラス合金の
組成は、下記の組成で表されるものであってもよい。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1(P1-b1Sib1)
v1z1w1d1e1f1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、LはTi、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一種以
上の元素であり、MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、EはPd、Pt、Auのうちの一種
以上の元素であり、組成比を示すa1、b1、d1、e1、
f1、x1、v1、z1、w1は、0≦a1≦0.15、0<
b1≦0.8、0原子%≦d1≦4原子%、0原子%≦e
1≦8原子%、0原子%≦f1≦8原子%、x1≦20原
子%、v1≦22原子%、0原子%≦z1≦10原子%、
1原子%≦w1≦20原子%である。
【0021】また、金属ガラス合金の組成は、上記の組
成式においてSi量を0とした下記の組成式で表される
ものであっても良い。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1v1z1w1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、組成比を示すa1、x1、v1、z1、w1は、0
≦a1≦0.15、x1≦20原子%、v1≦22原子
%、0原子%≦z1≦10原子%、1原子%≦w1≦2
0原子%である。
【0022】また、金属ガラス合金の組成は、上記の組
成式においてSi量を0とした下記の組成式で表される
ものであっても良い。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1v1z1w1
d1e1f1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、LはTi、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一種以
上の元素であり、MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、EはPd、Pt、Auのうちの一種
以上の元素であり、組成比を示すa1、d1、e1、f
1、x1、v1、z1、w1は、0≦a1≦0.15、
0原子%≦d1≦4原子%、0原子%≦e1≦8原子%、
0原子%≦f1≦8原子%、x1≦20原子%、v1≦
22原子%、0原子%≦z1≦10原子%、1原子%≦
w1≦20原子%である。
【0023】また、各磁心を構成する金属ガラス合金の
組成は、下記の組成で表されるものであってもよい。 (Fe1-a2a2)100-x2-v2-z2-w2Alx2(P1-b2Sib)v2
z2w2 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、組成比を示すa2、b2、x2、v2、z2、w2は、0
≦a2≦0.15、0<b2≦0.8、0原子%<x2≦
20原子%、0原子%<v2≦22原子%、0原子%<
z2≦12原子%、0原子%<w2≦16原子%である。
【0024】また、各磁心を構成する金属ガラス合金の
組成は、下記の組成で表されるものであってもよい。 (Fe1-a2a2)100-x2-v2-z2-w2Alx2(P1-b2Sib)v2
z2w2d2e2f2 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、LはTi、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一種以
上の元素であり、MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、EはPd、Pt、Auのうちの一種
以上の元素であり、組成比を示すa2、b2、d2、e2、
f2、x2、v2、z2、w2は、0≦a2≦0.15、0<
b2≦0.8、0原子%≦d2≦4原子%、0原子%≦e
2≦8原子%、0原子%≦f2≦8原子%、0原子%<x
2≦20原子%、0原子%<v2≦22原子%、0原子%
<z2≦12原子%、0原子%<w2≦16原子%であ
る。
【0025】また、各磁心を構成する金属ガラス合金の
組成は、下記の組成で表されるものであってもよい。 (Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3x3y3 但し、組成比を示すa3、b3、x3、y3は、0≦a3≦
0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20原子
%、10原子%≦y3≦22原子%であり、MはZr、N
b、Ta、Hf、Mo、Ti、V、Cr、Wのうちの1
種又は2種以上からなる元素である。
【0026】上記の各組成の金属ガラス合金からなる磁
心は、いずれもコアロスが小さく、かつ透磁率が低いの
で、発熱量を低減することが可能になるとともに、磁気
飽和防止のためのギャップを設ける必要がなく漏れ磁界
が発生しないので、周辺の他の回路に悪影響を及ぼすこ
とがない。
【0027】また、比抵抗が1.5μΩ・m以上の上記
組成の金属ガラス合金を用いているので、高周波におけ
る金属ガラス合金粒子内の渦電流損失が低減され、より
コアロスが低い磁心を構成することが可能になり、スイ
ッチング電源装置等の発熱量をより低減することが可能
になる。また、絶縁材によって磁心全体の比抵抗を高く
することができ、渦電流損失を低減して磁心のコアロス
をさらに低くすることが可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。 [第1の実施形態]図1に、本発明の第1の実施形態で
あるスイッチング電源装置の一例を示す。このスイッチ
ング電源装置1は、スイッチング素子2と、トランス3
と、整流回路4及び平滑回路5とから構成されている。
【0029】スイッチング素子2は、例えばスイッチン
グ型トランジスタからなり、ベース端子に入力されたド
ライブ信号に対応して、直流電源6からの直流電圧を、
矩形波電流に変換する。トランス3は、本発明に係る金
属ガラス合金粉末からなる磁心を具備してなるもので、
入力側の端子の一方が直流電源6に接続され、他方がス
イッチング素子2に接続されている。このトランス3
は、スイッチング素子2により発生した矩形波電圧を変
圧する。
【0030】整流回路4は、例えばダイオードからな
り、トランス3の出力側の一方の端子に接続されてい
る。また、平滑回路5は、例えばコンデンサからなり、
整流回路4を介してトランスの出力側と並列に接続され
ている。この整流回路4及び平滑回路5によって、トラ
ンス3にて変圧された矩形波電圧を直流電圧に変換し、
出力端子より電圧がVout1の直流電圧を取り出せる。
【0031】トランス3を構成する磁心は、ΔTx=Tx
−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移
温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔Δ
Txが20K以上であって非晶質相を主相とする組織か
らなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材とが混合され、
成形されてなるものである。また金属ガラス合金は、そ
の比抵抗が1.5μΩ・cm以上のものであることが好
ましい。またこの磁心は、コアロスが低く、周波数10
0kHzにおける透磁率が100以上300以下と低い
ものである。
【0032】この磁心は図2に示すように円環状の磁心
10を例示できるが、形状はこれに限られず、長円環状
や楕円環状であっても良い。また平面視略E字状、平面
視略コ字状、平面視略I字状等であっても良い。
【0033】本発明に係る磁心10は、後述する組成か
らなる金属ガラス合金の粉末が絶縁材によって結着され
てなるもので、組織中に金属ガラス合金の粉末が存在し
たいわゆる圧粉磁心であり、金属ガラス合金の粉末が溶
解して均一な組織を構成したものではない。また、金属
ガラス合金の粉末は、粉末を構成する個々の粒子が絶縁
材によって絶縁されていることが好ましい。
【0034】このように、磁心10には金属ガラス合金
の粉末と絶縁材とが混合されて存在するので、絶縁材に
よって磁心10自体の比抵抗が大きくなり、渦電流損失
が低減されてコアロスが低くなる。
【0035】また、金属ガラス合金の過冷却液体の温度
間隔ΔTxが20K未満であると、金属ガラス合金の粉
末と絶縁材とを混合して圧縮成形した後に行う熱処理時
に、結晶化させずに十分に内部応力を緩和させることが
困難になる。ΔTxが20K以上であると、熱処理温度
を下げても十分に内部応力を緩和でき、また絶縁材の分
解を防止し、絶縁材による損失を抑えることができる。
【0036】また、磁心10を構成する金属ガラス合金
は、後述する組成からなり、合金組成によっては60K
以上の大きなΔTxが得られるもので、熱処理によって
内部応力の緩和を十分に行うことができ、磁心10の軟
磁気特性をより向上できるとともに、熱処理温度をより
低下させ、絶縁材による損失を効果的に抑えることがで
きる。また、本発明に係る磁心10は、熱処理による内
部応力の緩和によってコアロスをより小さくできる。
【0037】また、磁心10の透磁率が上記の範囲であ
るので、磁束の飽和防止のためのギャップを設ける必要
がなく、漏れ磁界が発生することがない。
【0038】磁心10を構成する絶縁材は、磁心10の
比抵抗を高めるとともに、金属ガラス合金の粉末を結着
して磁心10の形状を保持するもので、磁気特性に大き
な損失とならない材料からなることが好ましく、例え
ば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンエラス
トマー、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、P
VA(ポリビニルアルコール)等の液状または粉末状の
有機物や、水ガラス(Na2O-SiO2)、酸化物ガラ
ス粉末(Na2O-B23-SiO2、PbO-B23-Si
2、PbO-BaO-SiO2、Na2O-B23-Zn
O、CaO-BaO-SiO2、Al23-B23-Si
2、B23-SiO2)、ゾルゲル法により生成するガ
ラス状物質(SiO2、Al23、ZrO2、TiO2
を主成分とするもの)等を挙げることができる。また、
絶縁とともに潤滑材の役割を果たすステアリン酸塩(ス
テアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン
酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸
アルミニウム等)を同時に用いることもできる。
【0039】金属ガラス合金の粉末は、比抵抗が1.5
μΩ・m以上であって、過冷却液体の温度間隔ΔTx
20K以上である非晶質相を主相とするもので、後述す
る組成からなり、金属ガラス合金の薄帯が粉砕されて得
られたもの、金属ガラス合金の溶湯を回転する冷却ロー
ルに霧状に吹き付けて冷却して得られたもの、金属ガラ
ス合金の溶湯を高圧ガスとともに霧状に吹き出して冷却
して得られたもの、あるいは金属ガラス合金の溶湯を水
中に霧状に吹き出して冷却して得られたものなどであ
り、コアロスが低く、軟磁気特性に優れたものである。
【0040】過冷却液体の温度間隔ΔTxは、溶湯が液
体構造を維持したまま原子振動のみが生じている状態で
あり、この過冷却液体の温度間隔ΔTxの存在が、金属
ガラス合金において原子の移動の起こり難い、即ち結晶
化しにくい性質を表している。過冷却液体の温度間隔Δ
xの大きな金属ガラス合金は溶湯を冷却する際に、原
子の移動が起こり難いので、溶融状態の溶湯が固化され
る際に経る過冷却液体状態が非常に広くなる。従って、
冷却速度が比較的遅くても充分に非晶質相を形成するこ
とが可能であり、例えば、比較的冷却速度が高い単ロー
ル法などの液体急冷法等により得られる金属ガラス合金
の薄帯のほか、鋳造法等によって得られる金属ガラス合
金のバルク体等を粉砕することによっても、非晶質相を
主相とする金属ガラス合金の粉末が得られる。
【0041】このスイッチング電源装置1によれば、ト
ランス3に金属ガラス合金粉末からなる磁心10が用い
られており、この金属ガラス合金は結晶化温度よりも十
分低い温度の熱処理により磁心10の内部応力を緩和あ
るいは除去でき、これにより磁心10のコアロスを低減
できるので、スイッチング電源装置1全体の発熱量を低
減することができる。また、この磁心10は透磁率が低
いので、磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要が
なく、このため漏れ磁界が発生しないので、周辺の他の
回路に悪影響を及ぼすことがない。
【0042】[第2の実施形態]図3に、本発明の第2
の実施形態であるスイッチング電源装置の一例を示す。
このスイッチング電源装置11は、スイッチング素子1
2と、トランス13と、整流回路14及び平滑回路15
とから構成されている。
【0043】スイッチング素子12は、例えばスイッチ
ング型トランジスタからなり、ベース端子に入力された
ドライブ信号に対応して、直流電源16からの直流電圧
を、矩形波電圧に変換する。トランス13は、入力側の
端子の一方が直流電源16に接続され、他方がスイッチ
ング素子12に接続されている。このトランス13は、
スイッチング素子12により発生した矩形波電圧を変圧
する。
【0044】整流回路14は、例えば一対のダイオード
14a、14bからなり、トランス3の出力側に接続さ
れている。一方のダイオード14aは、他方のダイオー
ド14bに対して逆方向に接続されている。平滑回路1
5は、例えばコンデンサ15aと磁心付きコイル15b
とからなり、整流回路14に接続されている。この整流
回路14及び平滑回路15によって、トランス13にて
変圧された矩形波電圧を直流電圧に変換し、出力端子1
7より電圧がVout2の直流電圧を取り出せる。
【0045】磁心付きコイル15bの磁心は、第1の実
施形態で説明した磁心10と同様のものであって、ΔT
x=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラ
ス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度
間隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相とする
組織からなり、後述する組成からなる金属ガラス合金の
粉末と、絶縁材とが混合され、成形されてなるものであ
る。またこの磁心は、第1の実施形態で説明した磁心1
0と同様に、コアロスが小さく、100kHzにおける
透磁率が100〜300と低いものである。
【0046】従ってこのスイッチング電源装置11によ
れば、磁心付きコイル15bに金属ガラス合金粉末から
なる磁心が用いられており、この金属ガラス合金は結晶
化温度よりも十分低い温度の熱処理により磁心の内部応
力を緩和あるいは除去でき、このため磁心のコアロスを
低減できるので、スイッチング電源装置11全体の発熱
量を低減することができる。また、この磁心は透磁率が
低いので、磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要
がなく、そのため漏れ磁界が発生しないので、周辺の他
の回路に悪影響を及ぼすことがない。
【0047】[第3の実施形態]図4に、本発明の第3
の実施形態である降圧型コンバータ回路の一例を示す。
この降圧型コンバータ回路21は、スイッチング素子2
2と、磁心付きコイル23と、整流素子24とコンデン
サ25とを主体として構成されている。
【0048】スイッチング素子22は、例えばスイッチ
ング型トランジスタからなり、ベース端子に入力された
外部からのドライブ信号に応じて、入力端子側から入力
された電圧Vin3の直流電圧を断続的に遮断して、断続
した矩形波からなる矩形波電圧に変換する。磁心付きコ
イル23は、スイッチング素子22に直列に接続されて
いる。磁心付きコイル23を構成する磁心は、第1の実
施形態で説明した磁心10と同様のものであって、ΔT
x=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラ
ス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度
間隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相とする
組織からなり、後述する組成からなる金属ガラス合金の
粉末と、絶縁材とが混合され、成形されてなるものであ
る。従ってこの磁心は、第1の実施形態で説明した磁心
10と同様に、コアロスが小さく、100kHzにおけ
る透磁率が100〜300と低いものである。
【0049】整流素子24は、例えばダイオードからな
り、スイッチング素子22に対して逆方向に接続される
とともに、磁心付きコイル23に対して並列に接続され
ている。コンデンサ25は、外部の負荷に対して並列に
接続されている。このようにして、磁心付きコイル23
と整流素子24とコンデンサ25によって環流路が形成
されている。従って整流素子24は、いわゆる環流ダイ
オードとして作用する。
【0050】スイッチング素子22が閉じると、磁心付
きコイル23に電圧(Vin3−Vout3)の直流電圧が生
じる。次にスイッチング素子22が開くと、磁心付きコ
イルに逆起電力が発生し、コンデンサ25及び整流素子
24を通してこの逆起電力による環流電流が流れ出す。
スイッチング素子22の開閉動作を繰り返すと、矩形波
電圧が磁心付きコイル23及びコンデンサ25により平
滑化され、出力端子から電圧Vout3(Vin3>Vout3)
の直流電圧が取り出せる。
【0051】この降圧型コンバータ回路21によれば、
磁心付きコイル23に金属ガラス合金粉末からなる磁心
が用いられており、この金属ガラス合金は結晶化温度よ
りも十分低い温度の熱処理により磁心の内部応力を緩和
あるいは除去でき、これにより磁心のコアロスを低減で
きるので、降圧型コンバータ回路21全体の発熱量を低
減することができる。また、この磁心は透磁率が低いの
で、磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要がな
く、そのため漏れ磁界が発生しないので、周辺の他の回
路に悪影響を及ぼすことがない。
【0052】[第4の実施形態]図5に、本発明の第4
の実施形態である昇圧型コンバータ回路の一例を示す。
この昇圧型コンバータ回路31は、スイッチング素子3
2と、磁心付きコイル33と、整流素子34とコンデン
サ35とから構成されている。
【0053】スイッチング素子32は、例えばスイッチ
ング型トランジスタからなり、ベース端子に入力された
ドライブ信号に応じて、入力端子側から入力された電圧
Vin3の直流電圧を断続的に遮断し、断続した矩形波か
らなる矩形波電圧に変換する。磁心付きコイル33は、
スイッチング素子32に接続されている。磁心付きコイ
ル33を構成する磁心は、第1の実施形態で説明した磁
心10と同様のものであって、ΔTx=Tx−Tg(ただ
しTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示
す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが2
0K以上であって非晶質相を主相とする組織からなり、
後述する組成からなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材
とが混合され、成形されてなるものである。またこの磁
心は、第1の実施形態で説明した磁心10と同様に、コ
アロスが小さく、100kHzにおける透磁率が100
〜300と低いものである。
【0054】整流素子34は、例えばダイオードからな
り、磁心付きコイル33に対して直列に接続され、スイ
ッチング素子32に対して並列に接続されている。コン
デンサ35は、外部の負荷に対して並列に接続されてい
る。
【0055】スイッチング素子32が閉じると、磁心付
きコイル33に電圧Vin4の直流電圧が印加され、電流
が流れる。この状態では、入力側の両端子が短絡した状
態であるので、出力側には電流が流れない。つぎにスイ
ッチング素子32が開くと、磁心付きコイル33に逆起
電力が発生し、整流素子34に電流が流れる。スイッチ
ング素子32の開閉動作を繰り返すと、整流素子34に
逆起電力による電流が断続的に流れ、この断続した電流
がコンデンサ35により平滑化され、出力端子から電圧
Vout4(Vin4<Vout4)の直流電圧が取り出せる。
【0056】従ってこの昇圧型コンバータ回路31によ
れば、磁心付きコイル33に金属ガラス合金粉末からな
る磁心が用いられており、この金属ガラス合金は結晶化
温度よりも十分低い温度の熱処理により磁心の内部応力
を緩和あるいは除去でき、そのため磁心のコアロスを低
減できるので、昇圧型コンバータ回路31全体の発熱量
を低減することができる。また、この磁心は透磁率が低
いので、磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要が
なく、そのため漏れ磁界が発生しないので、周辺の他の
回路に悪影響を及ぼすことがない。
【0057】[第5の実施形態]図6に、本発明の第5
の実施形態である極性反転型コンバータ回路の一例を示
す。この極性反転型コンバータ回路41は、スイッチン
グ素子42と、磁心付きコイル43と、整流素子44と
コンデンサ45とから構成されている。
【0058】スイッチング素子42は、例えばスイッチ
ング型トランジスタからなり、ベース端子に入力された
ドライブ信号に応じて、入力端子側から入力された電圧
Vin5の直流電圧を断続的に遮断し、断続した矩形波か
らなる矩形波電流に変換する。磁心付きコイル43は、
スイッチング素子43に接続されている。磁心付きコイ
ル43を構成する磁心は、第1の実施形態で説明した磁
心10と同様のものであって、ΔTx=Tx−Tg(ただ
しTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示
す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが2
0K以上であって非晶質相を主相とする組織からなり、
後述する組成からなる金属ガラス合金の粉末と、絶縁材
とが混合され、成形されてなるものである。またこの磁
心は、第1の実施形態で説明した磁心10と同様に、コ
アロスが小さく、100kHzにおける透磁率が100
〜300と低いものである。
【0059】整流素子44は、例えばダイオードからな
り、スイッチング素子42に対して逆方向に直列接続さ
れている。またコンデンサ35は、外部の負荷に対して
並列に接続されている。
【0060】スイッチング素子42が閉じると、磁心付
きコイル33に電圧Vin4によって生じた電流i1が流れ
る。整流素子44がスイッチング素子42に対して逆方
向に接続されているので、出力側には電流が流れない。
つぎにスイッチング素子42が開くと、磁心付きコイル
43に逆起電力が発生して電流i2がコンデンサ45に
流れる。スイッチング素子42のスイッチング動作を繰
り返すと、コンデンサ45に逆起電力による電流i2が
断続的に流れ、コンデンサ35の両端に電圧−Vout5の
電圧が発生する。このようにして、正極性の電圧Vin5
の直流電圧が、負極性の電圧Vout5の直流電圧に変換さ
れて、出力端子から取り出される。
【0061】この極性反転型コンバータ回路41によれ
ば、磁心付きコイル43に金属ガラス合金粉末からなる
磁心が用いられており、この金属ガラス合金は結晶化温
度よりも十分低い温度の熱処理により磁心の内部応力を
緩和あるいは除去でき、このため磁心のコアロスを低減
できるので、極性反転型コンバータ回路41全体の発熱
量を低減することができる。また、この磁心は透磁率が
低いので、磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要
がなく、そのため漏れ磁界が発生しないので、周辺の他
の回路に悪影響を及ぼすことがない。
【0062】[第6の実施形態]図7に、本発明の第6
の実施形態であるアクティブフィルタの一例を示す。こ
のアクティブフィルタ51は、昇圧型のPWM方式アク
ティブフィルタと呼ばれるもので、制御部52と、スタ
ート回路53と、整流回路54と、ノイズフィルタ回路
55と、第4の実施形態で説明した昇圧型コンバータ回
路31とを主体として構成されている。
【0063】制御部52は、例えば、発振器と制御アン
プと乗算器と電流検出器とを具備してなるアクティブフ
ィルタモノシリックICであり、昇圧型コンバータ回路
31のスイッチング素子32のスイッチング間隔を制御
する。またスタート回路53は、入力電圧投入時の突入
電流を制御するための回路であり、磁心付きコイル33
に流れる電流を検出し、昇圧コンバータ回路31のスイ
ッチング素子32のスイッチング間隔を制御することで
突入電流を制限する。
【0064】整流回路54は、入力側から入力された交
流電圧を脈流に変換し、ノイズフィルタ回路55は、昇
圧コンバータ31によって生じたノイズを除去する。ま
た、昇圧型コンバータ回路31は、第4の実施形態で説
明した昇圧型コンバータ回路31とほぼ同等のもので、
スイッチング素子32と、磁心付きコイル33と、整流
素子34と、コンデンサ35により構成されている。
【0065】整流回路54により変換された脈流は、ス
イッチング素子32が閉じているときに、磁心付きコイ
ル33に印加され、電流が流れる。つぎにスイッチング
素子32が開くと、磁心付きコイル33に逆起電力が発
生し、整流素子34に電流が流れる。スイッチング素子
32のスイッチングの開閉動作は、制御部52により制
御される。スイッチング素子32のスイッチングの開閉
動作を繰り返すと、整流素子34に逆起電力による電流
が断続的に流れ、この電流がコンデンサ35により平滑
化されて、出力端子から直流電圧が取り出せ、入力側の
平滑回路を付加させずに済むことから、入力電流の高調
波歪みを除去できる。
【0066】磁心付きコイル33の磁心は、第1の実施
形態で説明した磁心10と同様のものであって、ΔTx
=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス
遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間
隔ΔTxが20K以上であって非晶質相を主相とする組
織からなり、後述する組成からなる金属ガラス合金の粉
末と、絶縁材とが混合され、成形されてなるものであ
る。またこの磁心は、第1の実施形態で説明した磁心1
0と同様に、コアロスが小さく、100kHzにおける
透磁率が100〜300と低いものである。
【0067】このアクティブフィルタ51によれば、磁
心付きコイル33に金属ガラス合金粉末からなる磁心が
用いられており、この金属ガラス合金は結晶化温度より
も十分低い温度の熱処理により磁心の内部応力を緩和あ
るいは除去でき、これにより磁心のコアロスを低減でき
るので、アクティブフィルタ51全体の発熱量を低減す
ることができる。また、この磁心は透磁率が低いので、
磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要がなく、そ
のため漏れ磁界が発生しないので、周辺の他の回路に悪
影響を及ぼすことがない。
【0068】つぎに、本発明の係る金属ガラス合金の組
成について詳しく説明する。 「金属ガラス合金の組成の一例」上記の磁心に好適に用
いられる金属ガラス合金の一例として、Feを主成分と
し、他の金属と半金属とを含有したものを挙げることが
できる。このうち半金属元素としては、P、Si、C、
B、Geのうちの少なくとも1種以上の元素が用いられ
る。
【0069】より具体的に例示すると、Al:1〜10
原子%、Ga:0.5〜4原子%、P:15原子%以
下、C:7原子%以下、B:2〜10原子%、Si:1
5原子%以下、Fe:残部であって、不可避不純物が含
有されていても良い金属ガラス合金が挙げられる。ま
た、別の具体例として、Al:1〜10原子%、Ga:
0.5〜4原子%、P:15原子%以下、C:7原子%
以下、B:2〜10原子%、Fe:残部であって、不可
避不純物が含有されていても良い金属ガラス合金を挙げ
ることができる。
【0070】更に別の例として、Alが1〜10原子%
であり、Gaが0.5〜4原子%であり、Pが15原子
%以下であり、Cが7原子%以下であり、Bが2〜10
原子%であり、Siが15原子%以下であり、Ti、Z
r、Hf、Nb、Taのうちの一種以上の元素が0〜4
原子%であり、V、Cr、Mo、Wのうちの一種以上の
元素0〜8原子%であり、Pd、Pt、Auのうちの一
種以上の元素が0〜8原子%であり、残部がFeであっ
て、不可避的不純物を含んでも良い金属ガラス合金を挙
げることもできる。また、別の例として、Alが1〜1
0原子%であり、Gaが0.5〜4原子%であり、Pが
15原子%以下であり、Cが7原子%以下であり、Bが
2〜10原子%であり、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta
のうちの一種以上の元素が0〜4原子%であり、V、C
r、Mo、Wのうちの一種以上の元素0〜8原子%であ
り、Pd、Pt、Auのうちの一種以上の元素が0〜8
原子%であり、残部がFeであり、不可避的不純物を含
んでも良い金属ガラス合金を挙げることもできる。
【0071】SiとPの比率は原子比で、0<Si/
(Si+P)≦0.4を満たしており、好ましくは0.
1<Si/(Si+P)≦0.35であり、より好まし
くは0.11<Si/(Si+P)≦0.28である。
また、他の金属とは、IIIB族及びIVB族の金属元
素のうちの少なくとも1種のものが好適に用いられる。
例えば、Al、Ga、In及びSnのうちの少なくとも
1種以上の元素が用いられる。
【0072】FeAlGaPCB系の金属ガラスにSi
を15原子%以下添加することにより、過冷却液体の温
度間隔ΔTxを向上させ、非晶質相を主相とする金属ガ
ラス合金が得られる。SiのPに対する添加比率が0<
Si/(Si+P)≦0.4を満たすようにすることに
より、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質
相を容易に形成させることができる。その結果、室温で
優れた軟磁気特性を有する金属ガラス合金を得ることが
できる。
【0073】Siの含有量が多すぎると過冷却液体領域
ΔTxが消滅するので15原子%以下が好ましい。ま
た、より大きな過冷却液体の温度間隔ΔTxを得るに
は、Siの 添加量が原子%で0.5%〜15%の範囲
であることが好ましく、0.5〜4%の範囲であること
がより好ましい。なおSiの添加量を0原子%としても
よい。上記Pの添加量は、15原子%以下であることが
好ましいが、5〜12原子%の範囲であることがより好
ましく、7〜12原子%の範囲であることが最も好まし
い。特にSiのPに対する添加比率が0<Si/(Si
+P)≦0.4を満たす場合は、Siの添加量が原子%
で1.5〜3.5%の範囲、Pの添加量が原子%で7〜
9%の範囲であることが好ましい。
【0074】またCの添加量は7原子%以下であること
が好ましく、2〜7原子%の範囲であることがより好ま
しく、5〜7原子%の範囲であることが最も好ましい。
【0075】Ti、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一
種以上の元素は、C、Pと化合物を形成して金属ガラス
合金の融点を向上させる。これらの元素の添加量は0原
子%以上4原子%以下の範囲が好ましく、0原子%以上
3原子%以下の範囲がより好ましく、0原子%以上2原
子%以下の範囲が更に好ましい。添加量が4原子%を越
えると、Fe量が相対的に低下して軟磁気特性が低下す
るとともに、金属ガラス合金が脆くなるので好ましくな
い。
【0076】V、Cr、Mo、Wのうちの一種以上の元
素は、特に金属ガラス合金の耐腐食性を向上させる。こ
れらの元素の中でも特にCrが好ましい。Crを組成比
で8原子%程度添加すると、ハステロイ並の耐腐食性が
得られる。これらの元素の添加量は0原子%以上8原子
%以下の範囲が好ましく、0原子%以上6原子%以下の
範囲がより好ましく、0原子%以上4原子%以下の範囲
が更に好ましい。添加量が8原子%を越えると、Fe量
が相対的に低下して軟磁気特性が低下するので好ましく
ない。またPd、Pt、Auのうちの一種以上の元素
は、極めて耐腐食性が高いと同時に他の合金構成元素に
対して不活性であり、金属ガラス合金中で単相状態で存
在することにより金属ガラス合金の耐腐食性を向上させ
る。こっらの元素の添加量は0原子%以上8原子%以下
の範囲が好ましく、0原子%以上6原子%以下の範囲が
より好ましく、0原子%以上4原子%以下の範囲が更に
好ましい。添加量が8原子%を越えると、Fe量が相対
的に低下して飽和磁束密度が低下するので好ましくな
い。
【0077】また上記の組成に、Geが4原子%以下含
有されていてもよく、0〜10原子%のNiと0〜30
原子%のCoのうち少なくとも一方が含有されていても
よい。これらのいずれの場合の組成においても、本発明
においては、過冷却液体の温度間隔ΔTxは、20K以
上、組成によっては50K以上が得られる。
【0078】「金属ガラス合金の組成の他の例」次に、
磁心に用いられる金属ガラス合金の他の例として、上記
のFeAlGaPCB(Si)系の金属ガラス合金から
Alを除いたものであって、Feを主成分とし、Ga
と、P、B、C、Siのうちの1種以上の元素Qとを含
有したものを挙げることができる。なお元素QにはSi
を加えなくても良い。
【0079】この金属ガラス合金は、例えば次の組成式
で表すことができる。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1(P1-b1Sib1)
v1z1w1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、組成比を示すa1、b1、x1、v1、z1、w1は、0
≦a1≦0.15、0<b1≦0.8、x1≦20原子
%、v1≦22原子%、0原子%≦z1≦10原子%、1
原子%≦w1≦20原子%である。
【0080】また、上記組成比を示すa1、b1、x1、
v1、z1、w1は、0≦a1≦0.15、0.1≦b1≦
0.35、0.5原子%≦x1≦15原子%、7原子%
≦v1≦20原子%、0原子%≦z1≦9.5原子%、2
原子%≦w1≦14原子%であることがより好ましく、
0≦a1≦0.1、0.1≦b1≦0.28、0.5原子
%≦x1≦15原子%、10原子%≦v1≦15.5原子
%、0.5原子%≦z1≦6原子%、4原子%≦w1≦1
1原子%であることが更に好ましい。
【0081】また、この金属ガラス合金は例えば次の組
成式で表すことができる。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1(P1-b1Sib1)
v1z1w1d1e1f1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、LはTi、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一種以
上の元素であり、MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、EはPd、Pt、Auのうちの一種
以上の元素であり、組成比を示すa1、b1、d1、e1、
f1、x1、v1、z1、w1は、0≦a1≦0.15、0<
b1≦0.8、0原子%≦d1≦4原子%、0原子%≦e
1≦8原子%、0原子%≦f1≦8原子%、x1≦20原
子%、v1≦22原子%、0原子%≦z1≦10原子%、
1原子%≦w1≦20原子%である。
【0082】また、上記組成比を示すa1、b1、d1、
e1、f1、x1、v1、z1、w1は、0≦a1≦0.1
5、0.1≦b1≦0.35、0原子%≦d1≦3原子
%、0原子%≦e1≦6原子%、0原子%≦f1≦6原子
%、0.5原子%≦x1≦15原子%、7原子%≦v1≦
20原子%、0原子%≦z1≦9.5原子%、2原子%
≦w1≦14原子%であることがより好ましく、0≦a1
≦0.1、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦d1≦2
原子%、0原子%≦e1≦4原子%、0原子%≦f1≦4
原子%、0.5原子%≦x1≦15原子%、10原子%
≦v1≦15.5原子%、0.5原子%≦z1≦6原子
%、4原子%≦w1≦11原子%であることが更に好ま
しい。
【0083】また、この金属ガラス合金は、以下の組成
式で表すこともできる。 (Fe1-a1a1100-x1-v1-z1-w1Gax1v1z1w1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、組成比を示すa1、x1、v1、z1、w1は、0≦a1
≦0.15、x1≦20原子%、v1≦22原子%、0原
子%≦z1≦10原子%、1原子%≦w1≦20原子%で
ある。
【0084】組成比を示すa1、x1、v1、z1、w1
は、0≦a1≦0.15、0.5原子%≦x1≦15原子
%、7原子%≦v1≦20原子%、0原子%≦z1≦9.
5原子%、2原子%≦w1≦14原子%であることがよ
り好ましく、0≦a1≦0.1、0.5原子%≦x1≦1
5原子%、10原子%≦v1≦15.5原子%、0.5
原子%≦z1≦6原子%、4原子%≦w1≦11原子%で
あることが更に好ましい。
【0085】更にまた、この金属ガラス合金は、以下の
組成式で表すこともできる。 (Fe1-a1a1)100-x1-v1-z1-w1Gax1v1z1w1
d1e1f1 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、LはTi、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一種以
上の元素であり、MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、EはPd、Pt、Auのうちの一種
以上の元素であり、組成比を示すa1、d1、e1、f
1、x1、v1、z1、w1は、0≦a1≦0.15、
0原子%≦d1≦4原子%、0原子%≦e1≦8原子%、
0原子%≦f1≦8原子%、x1≦20原子%、v1≦
22原子%、0原子%≦z1≦10原子%、1原子%≦
w1≦20原子%である。
【0086】組成比を示すa1、d1、e1、f1、x1、
v1、z1、w1は、0≦a1≦0.15、0原子%≦d1
≦3原子%、0原子%≦e1≦6原子%、0原子%≦f1
≦6原子%、0.5原子%≦x1≦15原子%、7原子
%≦v1≦20原子%、0原子%≦z1≦9.5原子%、
2原子%≦w1≦14原子%であることがより好まし
く、0≦a1≦0.1、0原子%≦d1≦2原子%、0原
子%≦e1≦4原子%、0原子%≦f1≦4原子%、0.
5原子%≦x1≦15原子%、10原子%≦v1≦15.
5原子%、0.5原子%≦z1≦6原子%、4原子%≦
w1≦11原子%であることが更に好ましい。
【0087】この金属ガラス合金は、FeとGaと元素
Qとを含有したもので、上記のFeAlGaPCB(S
i)系の金属ガラス合金からAlを除去し、Fe量を増
量させることなくこのAlの代わりにGaを増量させた
ものであり、非晶質相が形成されやすく、大きな過冷却
液体の温度間隔ΔTxを示す。
【0088】Gaは、この金属ガラス合金に必須の元素
であり、特にGaの組成比x1を20原子%以下とする
ことにより、金属ガラス合金の過冷却液体の温度間隔Δ
Txを20K以上にすることができる。またGaは、F
eとの間での混合エンタルピーが負であり、Feよりも
原子半径が大きく、更にFeよりも原子半径が小さい
P、B、Siとともに用いることにより、結晶化し難
く、非晶質構造の熱的に安定化した状態となる。更にG
aは金属ガラス合金のキュリー温度を高め、各種磁気特
性の熱安定性を向上させることができる。Gaの組成比
x1は、20原子%以下であることが好ましく、0.5
原子%以上15原子%以下であることがより好ましい。
組成比x1が20原子%を越えると、Fe量が相対的に
低下して飽和磁化が低下し、また過冷却液体の温度間隔
ΔTxが消失するので好ましくない。
【0089】Feは磁性を担う元素であって、Gaと同
様にこの金属ガラス合金に必須の元素である。また、F
eの一部をCo、Niのいずれか一方または両方の元素
Tで置換しても良い。
【0090】元素Qは非晶質形成能を有する元素であ
り、FeとGaに元素Qを添加して多元系とすることに
より、FeとGaのみの2元系の場合と異なり安定して
非晶質相が形成される。元素Qの合計の組成比は、50
原子%以下であることが好ましく、7原子%以上35原
子%以下であることがより好ましい。合計の組成比が5
0原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して飽和磁
化が低下するので好ましくない。
【0091】元素QのなかでもPは特に非晶質形成能が
高いので、このPを必ず含み、それ以外のB、C、Si
のうちのいずれか1種以上を含むようにすると、組織の
全体が非晶質相になるとともに過冷却液体の温度間隔Δ
Txが発現しやすくなる。またPとSiを同時に添加す
ると、過冷却液体の温度間隔ΔTxをより向上させて非
晶質単相となるバルクの大きさを増大できる。
【0092】PとSiを同時に添加する場合は、PとS
iの合計量を示す組成比v1を22原子%以下とするこ
とが好ましく、7原子%以上20原子%以下とすること
がより好ましく、10原子%以上15.5原子%以下と
することが最も好ましい。PとSiの合計量を示す組成
比v1が上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔Δ
Txを向上させることができる。
【0093】PとSiを同時に添加した場合のSiとP
との比を表す組成比b1は、組成比v1が22原子%以下
のときに0<b1≦0.8とすることが好ましく、組成
比v1が7原子%以上20原子%以下のときに0.1≦
b1≦0.35とすることが好ましく、組成比v1が10
原子%以上15.5原子%以下のときに0.1≦b1≦
0.28とすることが好ましい。組成比b1が0.8を
越えるとSiが過剰になり、過冷却液体領域ΔTxが消
滅するおそれがあるので好ましくない。なお、このとき
の金属ガラス合金におけるSiの濃度を示すと、好まし
い場合に16原子%以下、より好ましい場合に0.8原
子%以上6.65原子%以下、最も好ましい場合に0.
95原子%以上4.34原子%以下となる。
【0094】PとSiの組成比を示すb1、v1を上記の
範囲とすれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ
ることができる。
【0095】なおSiの組成比b1を0としてもよい。
即ち、元素Qを、P、B、Cのうちのいずれか1種以上
の元素としてもよい。この場合のPの組成比v1は、2
2原子%以下とすることが好ましく、7原子%以上20
原子%以下とすることがより好ましく、10原子%以上
15.5原子%以下とすることが最も好ましい。Pの組
成比v1が上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔
ΔTxを向上させ、非晶質単相となるバルクの大きさを
増大させることができる。
【0096】またCの組成比z1は、0原子%以上10
原子%以下であることが好ましく、0原子%以上9.5
原子%以下であることがより好ましく、0.5原子%以
上6原子%以下であることが最も好ましい。更にBの組
成比w1は、1原子%以上20原子%以下であることが
好ましく、2原子%以上14原子%以下であることがよ
り好ましく、4原子%以上11原子%以下であることが
最も好ましい。
【0097】また、上記の金属ガラス合金の組成に元素
L、元素M及び元素Eを添加することにより、金属ガラ
ス合金の表面に不動態被膜を形成させて、金属ガラス合
金の耐腐食性を向上させても良い。元素LはTi、Z
r、Hf、Nb、Taのうちの一種以上の元素であり、
C、Pと化合物を形成して金属ガラス合金の融点を向上
させる。元素Lの組成比を示すd1は0原子%以上4原
子%以下の範囲が好ましく、0原子%以上3原子%以下
の範囲がより好ましく、0原子%以上2原子%以下の範
囲が更に好ましい。組成比d1が4原子%を越えると、
Fe量が相対的に低下して軟磁気特性が低下するととも
に、金属ガラス合金が脆くなるので好ましくない。
【0098】元素MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、これらの元素が特に金属ガラス合金
の耐腐食性を向上させる。元素Mの中でも特にCrが好
ましい。Crを組成比で8原子%程度添加すると、ハス
テロイ並の耐腐食性が得られる。 元素Mの組成比を示
すe1は0原子%以上8原子%以下の範囲が好ましく、
0原子%以上6原子%以下の範囲がより好ましく、0原
子%以上4原子%以下の範囲が更に好ましい。組成比e
1が8原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して軟
磁気特性が低下するので好ましくない。また元素EはP
d、Pt、Auのうちの一種以上の元素であり、この元
素Eは極めて耐腐食性が高いと同時に他の合金構成元素
に対して不活性であり、金属ガラス合金中で単相状態で
存在することにより金属ガラス合金の耐腐食性を向上さ
せる。元素Eの組成比を示すf1は0原子%以上8原子
%以下の範囲が好ましく、0原子%以上6原子%以下の
範囲がより好ましく、0原子%以上4原子%以下の範囲
が更に好ましい。組成比f1が8原子%を越えると、F
e量が相対的に低下して飽和磁束密度が低下するので好
ましくない。
【0099】また、上記の組成に、Geが4原子%以下
含有されていてもよい。これらのいずれの場合の組成に
おいても、この金属ガラス合金においては、35K以
上、組成によっては50K以上の過冷却液体の温度間隔
ΔTxが得られる。また上記の組成で示される元素の他
に不可避的不純物が含まれていても良い。
【0100】「金属ガラス合金の組成の別の例」次に、
磁心に用いられる金属ガラス合金の別の例として、上記
のFeAlGaPCB(Si)系の金属ガラス合金から
Gaを除いたものであって、Feを主成分とし、Al
と、前記元素Qとを含有したものを挙げることができ
る。なお元素QからSiを除いても良い。
【0101】この金属ガラス合金は、例えば次の組成式
で表すことができる。 (Fe1-a2a2100-x2-v2-z2-w2Alx2(P1-b2Si
b2v2z2w2 ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であ
り、組成比を示すa2、b2、x2、v2、z2、w2は、0
≦a2≦0.15、0<b2≦0.8、0原子%<x2≦
20原子%、0原子%<v2≦22原子%、0原子%<
z2≦12原子%、0原子%<w2≦16原子%である。
金属ガラス合金が上記の組成である場合には、20K以
上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを示す。
【0102】また組成比を示すa2、b2、x2、v2、z
2、w2が、0≦a2≦0.15、0.1≦b2≦0.3
5、0原子%<x2≦15原子%、8原子%≦v2≦18
原子%、0.5原子%≦z2≦7.4原子%、3原子%
≦w2≦14原子%であることがより好ましい。金属ガ
ラス合金が上記の組成である場合には、40K以上の過
冷却液体の温度間隔ΔTxを示す。
【0103】また、組成比を示すa2、b2、x2、v2、
z2、w2が、0≦a2≦0.15、0.1≦b2≦0.2
8、0原子%<x2≦10原子%、11.3原子%≦v2
≦14原子%、1.8原子%≦z2≦4.6原子%、
5.3原子%≦w2≦8.6原子%であることが最も好
ましい。金属ガラス合金が上記の組成である場合には、
60K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを示す。
【0104】またこの金属ガラス合金は、例えば次の組
成式で表すこともできる。(Fe1-a2a2)
100-x2-v2-z2-w2Alx2(P1-b2Sib)v2z2w2d2
e2f2ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方
であり、LはTi、Zr、Hf、Nb、Taのうちの一
種以上の元素であり、MはV、Cr、Mo、Wのうちの
一種以上の元素であり、EはPd、Pt、Auのうちの
一種以上の元素であり、組成比を示すa2、b2、d2、
e2、f2、x2、v2、z2、w2は、0≦a2≦0.1
5、0<b2≦0.8、0原子%≦d2≦4原子%、0原
子%≦e2≦8原子%、0原子%≦f2≦8原子%、0原
子%<x2≦20原子%、0原子%<v2≦22原子%、
0原子%<z2≦12原子%、0原子%<w2≦16原子
%である。金属ガラス合金が上記の組成である場合に
は、20K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを示す。
【0105】また組成比を示すa2、b2、d2、e2、f
2、x2、v2、z2、w2が、0≦a2≦0.15、0.1
≦b2≦0.35、0原子%≦d2≦3原子%、0原子%
≦e2≦6原子%、0原子%≦f2≦6原子%、0原子%
<x2≦15原子%、8原子%≦v2≦18原子%、0.
5原子%≦z2≦7.4原子%、3原子%≦w2≦14原
子%であることがより好ましい。金属ガラス合金が上記
の組成である場合には、40K以上の過冷却液体の温度
間隔ΔTxを示す。
【0106】また、組成比を示すa2、b2、d2、e2、
f2、x2、v2、z2、w2が、0≦a2≦0.15、0.
1≦b2≦0.28、0原子%≦d2≦2原子%、0原子
%≦e2≦4原子%、0原子%≦f2≦4原子%、0原子
%<x2≦10原子%、11.3原子%≦v2≦14原子
%、1.8原子%≦z2≦4.6原子%、5.3原子%
≦w2≦8.6原子%であることが最も好ましい。金属
ガラス合金が上記の組成である場合には、60K以上の
過冷却液体の温度間隔ΔTxを示す。
【0107】この金属ガラス合金は、FeとAlと元素
Qとを含有したもので、上記のFeAlGaPCB(S
i)系の金属ガラス合金からGaを除去し、Fe量を増
量させることなくこのGaの代わりにAlを増量させた
ものであり、大きな過冷却液体の温度間隔ΔTxを示
し、更に極めて高い非晶質形成能を示す。上記の金属ガ
ラス合金は非晶質形成能が高いことから、組織全体を完
全な非晶質相とすることができ、透磁率及び飽和磁化が
格段に向上し、優れた軟磁気特性を示す。また組織全体
が完全な非晶質相であることから、適度な条件で熱処理
した場合に結晶質相が析出させることなく内部応力を緩
和でき、軟磁気特性をより向上させることができる。
【0108】Alは、この金属ガラス合金に必須の元素
であり、特にAlの組成比x2を20原子%以下とする
ことにより、合金の非晶質形成能を格段に向上させて組
織全体を完全な非晶質相とすることができ、また過冷却
液体の温度間隔ΔTxを20K以上にすることができ
る。またAlは、Feとの間での混合エンタルピーが負
であり、Feよりも原子半径が大きく、更にFeよりも
原子半径が小さいP、B、Siとともに用いることによ
り、結晶化し難く、非晶質構造が熱的に安定化した状態
となる。更にAlは金属ガラス合金のキュリー温度を高
め、各種磁気特性の熱安定性を向上させることができ
る。Alの組成比x2は、20原子%以下であることが
好ましく、0原子%を越えて15原子%以下であること
がさらに好ましく、0原子%を越えて10原子%以下で
あることが最も好ましい。組成比x2が20原子%を越
えると、Fe量が相対的に低下して飽和磁化が低下し、
また過冷却液体の温度間隔ΔTxが消失するので好まし
くない。
【0109】Feは磁性を担う元素であって、Alと同
様にこの金属ガラス合金に必須の元素である。また、F
eの一部をCo、Niのいずれか一方または両方の元素
Tで置換しても良い。磁性を担う元素であるFeの組成
比が向上すると、金属ガラス合金の飽和磁化を向上させ
ることができる。
【0110】元素QであるC、P、Si及びBは、先に
説明したFeとGaと元素Qからなる金属ガラス合金の
元素Qと同じ作用を示す。PとSiを同時に添加する場
合は、PとSiの合計量を示す組成比v2を0原子%を
越えて22原子%以下とすることが好ましく、8原子%
以上18原子%以下とすることがより好ましく、11.
3原子%以上14原子%以下とすることが最も好まし
い。PとSiの合計量を示す組成比v2が上記の範囲で
あれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させること
ができる。
【0111】PとSiを同時に添加した場合のSiとP
との比を表す組成比b2は、組成比v2が0原子%を越え
て22原子%以下のときに0<b2≦0.8とすること
が好ましく、組成比v2が8原子%以上18原子%以下
のときに0.1≦b2≦0.35とすることが好まし
く、組成比v2が11.3原子%以上14原子%以下の
ときに0.1≦b2≦0.28とすることが好ましい。
組成比b2が0.8を越えるとSiの量が過剰になり、
過冷却液体領域ΔTxが消滅するおそれがあるので好ま
しくない。なお、このときの金属ガラス合金におけるS
iの濃度を示すと、好ましい場合に17.6原子%以
下、より好ましい場合に0.8原子%以上6.3原子%
以下、最も好ましい場合に1.13原子%以上3.92
原子%以下となる。
【0112】PとSiの組成比を示すb2、v2を上記の
範囲とすれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ
ることができる。
【0113】またCの組成比z2は、0原子%を越えて
12原子%以下であることが好ましく、0.5原子%以
上7.4原子%以下であることがより好ましく、1.8
原子%以上4.6原子%以下であることが最も好まし
い。更にBの組成比w2は、0原子%を越えて16原子
%以下であることが好ましく、3原子%以上14原子%
以下であることがより好ましく、5.3原子%以上8.
6原子%以下であることが最も好ましい。
【0114】また、上記の金属ガラス合金の組成に元素
L、元素M及び元素Eを添加することにより、金属ガラ
ス合金の表面に不動態被膜を形成させて、金属ガラス合
金の耐腐食性を向上させても良い。元素LはTi、Z
r、Hf、Nb、Taのうちの一種以上の元素であり、
C、Pと化合物を形成して金属ガラス合金の融点を向上
させる。元素Lの組成比を示すd2は0原子%以上4原
子%以下の範囲が好ましく、0原子%以上3原子%以下
の範囲がより好ましく、0原子%以上2原子%以下の範
囲が更に好ましい。組成比d2が4原子%を越えると、
Fe量が相対的に低下して軟磁気特性が低下するととも
に、金属ガラス合金が脆くなるので好ましくない。
【0115】元素MはV、Cr、Mo、Wのうちの一種
以上の元素であり、これらの元素が特に金属ガラス合金
の耐腐食性を向上させる。元素Mの中でも特にCrが好
ましい。Crを組成比で8原子%程度添加すると、ハス
テロイ並の耐腐食性が得られる。元素Mの組成比を示す
e2は0原子%以上8原子%以下の範囲が好ましく、0
原子%以上6原子%以下の範囲がより好ましく、0原子
%以上4原子%以下の範囲が更に好ましい。組成比e2
が8原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して軟磁
気特性が低下するので好ましくない。また元素EはP
d、Pt、Auのうちの一種以上の元素であり、この元
素Eは極めて耐腐食性が高いと同時に他の合金構成元素
に対して不活性であり、金属ガラス合金中で単相状態で
存在することにより金属ガラス合金の耐腐食性を向上さ
せる。元素Eの組成比を示すf2は0原子%以上8原子
%以下の範囲が好ましく、0原子%以上6原子%以下の
範囲がより好ましく、0原子%以上4原子%以下の範囲
が更に好ましい。組成比f2が8原子%を越えると、F
e量が相対的に低下して飽和磁束密度が低下するので好
ましくない。
【0116】また、上記の組成に、Geが4原子%以下
含有されていてもよい。これらのいずれの場合の組成に
おいても、本発明においては、35K以上、組成によっ
ては50K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxが得られ
る。また上記の組成で示される元素の他に不可避的不純
物が含まれていても良い。
【0117】「金属ガラス合金の組成のその他の例」次
に、磁心に好適に用いられる金属ガラス合金のその他の
例として、Fe、Co、Niのうちの1種又は2種以上
の元素を主成分とし、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、
Ti、V、Cr、Wのうちの1種又は2種以上の元素M
とBを含んでなるものを例示できる。
【0118】この金属ガラス合金の組成式は次の通りで
ある。 (Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3x3y3 なお、組成比を示すa3、b3、x3、y3は、0≦a3≦
0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20原子
%、10原子%≦y3≦22原子%である。また、前記の
組成式において、Zrを必ず含み、ΔTxが25K以上
であることが好ましい。また、この金属ガラス合金のΔ
Txが60K以上であることがより好ましい。更に、組
成比を示すa3、b3が、0.042≦a3≦0.29、0.
042≦b3≦0.43の関係にされてなることがより好
ましい。
【0119】また、この金属ガラス合金は、下記の組成
式で表されるものであっても良い。 (Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3-z3x3y3
z3 なお、組成比を示すa3、b3、x3、y3、z3は、0≦
a3≦0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20
原子%、10原子%≦y3≦22原子%、0原子%≦z3≦
5原子%であり、TはRu、Rh、Pd、Os、Ir、
Pt、Al、Si、Ge、C、Pのうちの1種又は2種
以上の元素である。また、この金属ガラス合金のΔTx
が60K以上であることがより好ましい。更に、組成比
を示すa3、b3が、0.042≦a3≦0.29、0.04
2≦b3≦0.43の関係にされてなることがより好まし
い。
【0120】また、上記の各組成式における元素Mが
(M'1-cM''c)で表され、M'がZrまたはHfのうち
の1種または2種、M''がNb、Ta、Mo、Ti、
V、Cr、Wのうちの1種または2種以上からなる元素
であり、組成比cが0≦c≦0.6であってもよい。更
に、前記組成において組成比cが0.2≦c≦0.4の範
囲であってもよく、0≦c≦0.2の範囲であってもよ
い。更に前記の各組成式において、組成比a3、b3が、
0.042≦a3≦0.25、0.042≦b3≦0.1であ
ってもよい。
【0121】この金属ガラス合金の主成分であるFeと
CoとNiは磁性を担う元素であり、高い飽和磁束密度
と優れた軟磁気特性を得るために重要である。また、F
eを多く含む成分系においてΔTxが大きくなり易く、
Feを多く含む成分系においてCoの組成比とNiの組
成比を適正な値とすることで、ΔTxの値を60K以上
にすることができる。具体的には、50K〜60KのΔ
Txを確実に得るためには、Coの組成比a3を0≦a3
≦0.29とし、Niの組成比b3を0≦b3≦0.43の
範囲とすることが好ましく、また60K以上のΔTxを
確実に得るためには、Coの組成比a3を0.042≦a
3≦0.29とし、Niの組成比b3を0.042≦b3≦
0.43の範囲とすることが好ましい。また、前記の範
囲内において、良好な軟磁気特性を得るためには、Co
の組成比a3を0.042≦a3≦0.25の範囲とするこ
とが好ましく、高い飽和磁束密度を得るためには、Ni
の組成比b3を0.042≦b3≦0.1の範囲とすること
がより好ましい。
【0122】元素Mは、非晶質相を生成させるために有
効な元素であり、元素Mの組成比x3は5原子%以上2
0原子%以下の範囲が好ましい。更に、高い磁気特性を
得るために組成比x3を5原子%以上15原子%以下と
しても良い。これら元素Mのうち、特にZrまたはHf
が有効である。ZrまたはHfは、その一部をNb等の
元素に置換できるが、置換する場合の組成比cを、0≦
c≦0.6の範囲とすると高いΔTxを得ることができ、
特に0.2≦c≦0.4の範囲とするとΔTxを80以上
とすることができる。
【0123】Bは、高い非晶質形成能があり、本発明で
はBの組成比y3を10原子%以上22原子%以下の範
囲としている。組成比y3が10原子%未満であると、
ΔTxが消滅するために好ましくなく、22原子%を越
えると非晶質相が形成できなくなるために好ましくな
い。より高い非晶質形成能と良好な磁気特性を得るため
には、組成比y3を16原子%以上20原子%以下とす
ることがより好ましい。
【0124】この金属ガラス合金に更に、元素Tで示さ
れるRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Al、S
i、Ge、C、Pのうちの1種又は2種以上の元素を添
加することもできる。本発明ではこれらの元素Tの組成
比z3を0原子%以上5原子%以下の範囲とすることが
できる。これらの元素Tは主に耐食性を向上させる目的
で添加するもので、この範囲を外れると軟磁気特性が低
下する。また、この範囲を外れると非晶質形成能が劣化
するために好ましくない。
【0125】また、上記の組成において原子Bの50%
以下をCで置換しても良い。上記のいずれの場合の組成
においても本発明に係る金属ガラス合金では、20K以
上、組成によっては60K以上の過冷却液体の温度間隔
ΔTxが得られる。
【0126】「磁心の製造方法」本発明に係る磁心は、
例えば次のようにして製造できる。まず、上述のいずれ
かの組成の金属ガラス合金の溶湯を回転する冷却ロール
の冷却面に噴出させて急冷するいわゆるロール急冷法に
より、金属ガラス合金薄帯を製造する。次に、得られた
金属ガラス合金薄帯を粉砕して粉末とする。粉砕には、
ロータミル、ボールミル、ジェットミル、アトマイザ
ー、摩砕機等を用いる。
【0127】次に、粉砕体を分級して所定の平均粒径を
有する粉末とする。粉砕により粉末を作成する場合は、
粉末の平均粒径を30μm以上、より好ましくは45μ
m以上300μm以下とするのがよい。平均粒径が30
μm未満であると、粉砕の際にロータミル等からのコン
タミネーションが起こる可能性もあるので好ましくな
い。平均粒径が300μmを越えると、絶縁材を混合し
て圧縮成形した際に圧粉磁心の組織中に空隙が残存し
て、磁心のコアロスが大きくなるので好ましくない。分
級には、ふるい、振動ふるい、音波ふるい、気流式分級
機等を用いることができる。
【0128】また、上記組成の金属ガラス合金の溶湯
を、冷却ロールに霧状に吹き付けることによっても金属
ガラス合金の粉末を得ることができる。また、上記組成
の金属ガラス合金の溶湯を高圧ガスとともに霧状に吹き
出して冷却したり、あるいは上記組成の金属ガラス合金
の溶湯を水中に霧状に吹き出して冷却することによって
も粉末を得ることができる。特に、上記組成からなる金
属ガラス合金の溶湯を、高圧の不活性ガスとともに不活
性ガスで満たされたチャンバ内部に霧状に噴霧し、該不
活性ガス雰囲気中で急冷して合金粉末を製造するガスア
トマイズ法を用いることが好ましい。
【0129】上記のように、合金溶湯を霧状に噴霧させ
て急冷した場合は、粒状あるいは略球状の粒子からなる
金属ガラス合金金粉末を得ることができる。この球状の
粒子からなる粉末を用いて圧粉磁心を形成した場合は、
圧粉磁心の充填密度を高くすることができ、粉末間の絶
縁を確保しやすくなるので、磁気特性が劣化せず、優れ
たコアロスを発現させることができる。
【0130】次に、金属ガラス合金の粉末に絶縁材を加
えて混合し、この混合物を圧縮成形して磁心前駆体を形
成する。混合物中の絶縁材の混合率は、0.2重量%以
上5重量%以下であることが好ましい。絶縁材が0.2
重量%未満では、金属ガラス合金の粉末をこの絶縁材と
とともに所定の形状に成形できなくなるので好ましくな
い。また、絶縁材が5重量%を越えると、磁心における
金属ガラス合金の含有率が低下し、磁心の軟磁気特性が
低下するので好ましくない。また、圧縮成形する前に混
合物に含まれる溶剤、水分等を蒸発させ、金属ガラス合
金粉末の表面に絶縁材層を形成させることが望ましい。
【0131】次にこの混合物を圧縮成形して磁心前駆体
を製造する。まず、所定の金型に混合物を充填し、次
に、金型に成形圧力を印加しつつ所定の成形温度まで加
熱して混合物を圧縮成形する。この圧縮成形には、例え
ば金型を所定の成形圧力で加圧しつつ、パルス電流を印
加して加熱しつつ圧縮成形する放電プラズマ焼結処理を
行うことが好ましい。この放電プラズマ焼結処理は、通
電電流により混合物を所定の速度で素早く昇温すること
ができ、圧縮成形の時間を短くすることができるので、
金属ガラス合金の非晶質相を維持したまま圧縮成形する
のに適している。
【0132】本発明において、混合物を圧縮成形する際
の成形温度は、絶縁材の種類と金属ガラス合金の組成に
よって異なるが、絶縁材として水ガラス、金属ガラス合
金としてFe70Al5Ga29.655.754.6Si3なる
組成のものを用いた場合には、絶縁材によって金属ガラ
ス合金を結着させるために373K以上とすることが必
要であり、また絶縁材が溶融して金型からしみ出さない
ようにするには573K以下とすることが必要である。
絶縁材がしみ出ると、磁心2中の絶縁材の含有量が低下
して磁心2の比抵抗が低下し、高周波帯域における透磁
率が低下してしまう。従って373K以上573K以下
の温度範囲で混合物を圧縮成形すれば、絶縁材が適度に
軟化するので、金属ガラス合金の粉末を結着させて混合
物を所定の形状に成形することができる。
【0133】また混合物に印加する成形圧力(一軸圧
力)については、圧力が低すぎると磁心2の密度を高く
することができず、緻密な磁心2を形成できなくなる。
また、圧力が高すぎると絶縁材がしみ出し、磁心2中の
絶縁材の含有量が低下して磁心2の比抵抗が低下し、高
周波帯域における透磁率が低下してしまう。従って成形
圧力は、絶縁材の種類と金属ガラス合金の組成によって
異なるが、絶縁材として水ガラス、金属ガラス合金とし
てFe70Al5Ga29.655.754.6Si3なる組成の
ものを用いた場合には、600MPa以上1500MP
a以下とするのが好ましく、600MPa以上900M
Pa以下とするのがより好ましい。このようにして円環
状の磁心前駆体が得られる。
【0134】次に磁心前駆体を熱処理して内部応力を除
去する熱処理工程を行う。磁心前駆体を所定の温度範囲
で熱処理すると、粉末製造工程や成形工程にて生じた磁
心前駆体自体の内部応力や、磁心前駆体に含まれる金属
ガラス合金粉末の内部応力を除去することができ、コア
ロスが低い磁心を製造することができる。熱処理温度
は、金属ガラス合金としてFe70Al5Ga29.65
5.754.6Si3なる組成のものを用いた場合には、ガラ
ス遷移温度をとすると、(Tg−170)K以上Tg以下
の範囲が好ましく、(Tg−150)K以上(Tg−5
0)K以下の範囲がより好ましく、(Tg−120)K
以上(Tg−60)K以下の範囲がさらに好ましい。
【0135】熱処理温度が(Tg−170)K未満で
は、磁心前駆体の内部応力を十分に除去することができ
ないので好ましくなく、Tgを越えると、金属ガラス合
金が結晶化してしまうので好ましくない。
【0136】上記の各組成の金属ガラス合金からなる磁
心は、いずれもコアロスが小さく、かつ透磁率が低いの
で、発熱量を低減することができるとともに、磁気飽和
防止のためのギャップを設ける必要がなく漏れ磁界が発
生しないので、周辺の他の回路に悪影響を及ぼすことが
ない。
【0137】また、比抵抗が1.5μΩ・m以上の上記
組成の金属ガラス合金を用いているので、高周波におけ
る金属ガラス合金粒子内の渦電流損失が低減され、より
コアロスが低い磁心を構成することが可能になり、発熱
量をより低減することができる。また、絶縁材によって
磁心全体の比抵抗を高くすることができ、渦電流損失を
低減して磁心のコアロスをさらに低くすることができ
る。
【0138】尚、上記説明では、金属ガラス合金の粉末
と絶縁材を含む混合物を放電プラズマ焼結処理により圧
縮成形する方法を説明したが、これに限らず、通常の粉
末成形法、ホットプレス法、押し出し法などの方法によ
り圧縮成形することによっても磁心を得ることができ
る。更に、絶縁材の種類と添加量、成形圧力を選択する
ことにより室温で成形することも可能になる。
【0139】
【実施例】(実験例1:FeAlGaPCBSi系合金
の物性)Fe、Al及びGaと、Fe-C合金、Fe-P
合金、B及びSiを原料としてそれぞれ所定量秤量し、
減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波誘導加
熱装置で溶解し、Fe70Al5Ga29.655.754.6
Si3なる組成のインゴットを作製した。このインゴッ
トをるつぼ内に入れて溶解し、減圧Ar雰囲気下でるつ
ぼのノズルから回転しているロールに溶湯を吹き出して
急冷する単ロール法により、幅15mm、厚さ20μm
の非晶質相組織の金属ガラス合金の薄帯を得た。これを
ローターミルを用いて大気中で粉砕し、45〜300μ
mの範囲の粒径のものをふるいで分級し、これを金属ガ
ラス合金の粉末とした。
【0140】図8には、Fe70Al5Ga29.655.75
4.6Si3なる組成の実施例1の金属ガラス合金の粉末
のX線回折測定の結果を示す。図8から明らかなよう
に、実施例1のX線回折パターンは、ブロードなパター
ンを示しており、非晶質相を主体とする組織を有してい
ることがわかる。
【0141】図9には、実施例1の金属ガラス合金の粉
末のDSC曲線(Differential scanning caloriemete
r:示差走査熱量測定による曲線(測定時の昇温速度:
40K/分))を示す。図9から、実施例1の金属ガラ
ス合金の粉末については、Tx=805K(532
℃)、Tg=745K(472℃)、ΔTx=60Kが求
められる。このように、Fe70Al5Ga29.655.75
4.6Si3なる組成の金属ガラス合金粉末には結晶化温
度Tx以下の広い温度領域で過冷却液体域が存在し、Δ
x=Tx−Tgで示される値が大きく、この系の組成の
合金が高いアモルファス形成能と高い熱的安定性を有す
ることがわかる。
【0142】(実験例2:FeAlPCBSi系合金の
物性)Fe及びAlと、Fe-C合金、Fe-P合金、B
及びSiを原料としたこと以外は実験例1と同様にし
て、種々の組成の実施例2〜実施例15の金属ガラス合
金の薄帯を得た。
【0143】実施例2〜15の金属ガラス合金の薄帯の
組成を表1に示す。実施例2〜15の組成は、Fe70
7(P0.76Si0.24v1z1w1(但し、v1は10.
35〜14.95原子%、z1は1.15〜8.05原
子%、w1は2.3〜9.2原子%である)のものであ
った。また、実施例2〜15の金属ガラス合金につい
て、X線回折により結晶構造の解析を行った。結果を図
10に示す。更に、実施例5及び実施例15の金属ガラ
ス合金について、DSC測定を行った。DSC測定の際
の昇温速度は0.67K/秒であった。結果を図11及
び表2に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】図10から明らかなように、実施例2〜1
5のX線回折パターンはブロードなパターンを示してお
り、非晶質相を主体とする組織を有していることがわか
る。また、図11及び表2から明らかなように、実施例
5のDSC曲線には、758Kにガラス遷移温度Tgが
認められ、821Kに結晶化開始温度Txが観察され、
ΔTx=Tx−Tgで示される過冷却液体の温度間隔ΔTx
は63Kであった。また、実施例15の金属ガラス合金
のDSC曲線には、760Kにガラス遷移温度Tgが認
められ、821Kに結晶化開始温度Txが観察され、過
冷却液体の温度間隔ΔTxは61Kであった。
【0147】以上のことから、実施例2〜15の金属ガ
ラス合金には、結晶化温度Tx以下の広い温度領域で過
冷却液体域が存在し、ΔTx=Tx−Tgで示される値が
大きいことが分かる。従ってFe、Ga、P、C、Bお
よびSiからなる合金であっても、20K以上の広い過
冷却液体の温度間隔ΔTxを示すことがわかる。
【0148】次に、実施例2〜15の全ての金属ガラス
合金薄帯についてDSC測定を行い、ガラス遷移温度T
g、結晶化開始温度Txをそれそれ測定するとともに、過
冷却液体の温度間隔ΔTxを求めた。なお、DSC測定
の際の昇温速度は0.67K/秒であった。図12にガ
ラス遷移温度Tgの組成依存性、図13に結晶化開始温
度Txの組成依存性、図14に過冷却液体の温度間隔Δ
Txの組成依存性をそれぞれ示す。
【0149】なお、図12〜図14の三角組成図中のプ
ロットの添え数字は、ガラス遷移温度Tg、結晶化開始
温度Tx、過冷却液体の温度間隔ΔTxの値をそれぞれ示
す。また、図12〜図14の三角組成図には、等温線を
記入しており、等温線近傍に付した数字はこれらの等温
線の値を示す。
【0150】図12よりガラス遷移温度Tgは、B量の
増加及びC量の減少伴って上昇しており、Tgの760
Kの等温線がBの組成比w1の4.1〜8.05原子%
の範囲、かつCの組成比z1の2.3〜5.1原子%の
範囲にある。また図13より結晶化開始温度Txは、Tg
と同様にB量の増加及びC量の減少に伴って上昇し、T
xの815Kの等温線がBの組成比w1の4〜8.4原子
%の範囲、かつCの組成比z1の0.3〜5原子%の範
囲にある。そして図14に示すように、図12に示すT
gの760Kの等温線と、図11に示すTxの815Kの
等温線とに囲まれた範囲が、ΔTxの60Kの等温線の
範囲に相当し、この範囲内で過冷却液体の温度間隔ΔT
xが60Kを越えており、特にFe70Al7(P0.76Si
0.2412.653.456.9なる組成の実施例5の金属ガラ
ス合金のΔTxが63Kと最大であることがわかる。
【0151】(実験例3:FeGaPCBSi系合金の
物性)Fe及びGaと、Fe-C合金、Fe-P合金、B
及びSiを原料としたこと以外は実験例1と同様にし
て、種々の組成の実施例16〜実施例32の金属ガラス
合金の薄帯を得た。
【0152】実施例16〜実施例32の金属ガラス合金
薄帯の組成を表3に示す。また、実施例16〜32につ
いて、X線回折法により結晶構造の解析を行った。結果
を図15及び図16に示す。更に、実施例29の金属ガ
ラス合金について、DSC測定を行った。DSC測定の
昇温速度は0.67K/秒とした。結果を図17及び表
3に示す。
【0153】
【表3】
【0154】図15及び図16から明らかなように、実
施例16〜32のX線回折パターンはいずれもブロード
なパターンを示しており、非晶質相を主体とする組織を
有していることがわかる。
【0155】また、図17及び表3から明らかなよう
に、実施例29のDSC曲線には、740Kにガラス遷
移温度Tgが認められ、800Kに結晶化開始温度Txが
観察される。また、ΔTx=Tx−Tgで示される過冷却
液体の温度間隔ΔTxは60Kであった。更にガラス遷
移温度Tgと融点Tmの比であるTg/Tmは0.58であ
った。また、Fe70Al5Ga29.655.754.6Si3
なる組成の実施例1の金属ガラス合金についてもTg/
Tmを求めたところ、0.59の値を示した。
【0156】以上のことから、実施例29の金属ガラス
合金は、Alが添加されていないにもかかわらず、結晶
化温度Tx以下の広い温度領域で過冷却液体域が存在
し、ΔTx=Tx−Tgで示される値が大きく、金属ガラ
スであることが分かる。また実施例29の金属ガラス合
金のTg/Tmは実施例1の金属ガラス合金のTg/Tmと
ほぼ同等な値を示しており、このTg/Tmの値は合金の
非晶質形成能を示す指標であることから、実施例29の
金属ガラス合金はAlが添加されていないにもかかわら
ず、実施例1の金属ガラス合金とほぼ同等の高い非晶質
形成能を有していることが分かる。従ってFe、Ga、
P、C、BおよびSiからなる合金であっても、非晶質
形成能が高く、20K以上の広い過冷却液体の温度間隔
ΔTxを示すことがわかる。
【0157】次に、得られた全ての金属ガラス合金につ
いて、DSC測定を行い、ガラス遷移温度Tg、結晶化
開始温度Txを測定するとともに、過冷却液体の温度間
隔ΔTxを求めた。DSC測定の昇温速度は0.67K
/秒とした。図18にガラス遷移温度Tgの組成依存
性、図19に結晶化開始温度Txの組成依存性、図20
に過冷却液体の温度間隔ΔTxの組成依存性をそれぞれ
示す。また、表3に、各実施例の金属ガラス合金のガラ
ス遷移温度Tg、結晶化開始温度Tx、過冷却液体の温度
間隔ΔTxを示す。
【0158】なお、図18〜図20の三角組成図中のプ
ロットの添え数字は、ガラス遷移温度Tg、結晶化開始
温度Tx、過冷却液体の温度間隔ΔTxの値をそれぞれ示
す。また、図18〜図20の三角組成図には、等温線を
記入しており、この等温線の近傍に付した数字はこれら
の等温線の値を示す。
【0159】図18よりガラス遷移温度Tgは、Bの増
加に伴って上昇しており、Tgの750Kの等温線がB
の組成比w2の1.5〜10.5原子%の範囲にある。
また図19より結晶化開始温度Txは、Tgの場合と同様
にBの増加に伴って上昇しており、Txの800Kの等
温線がBの組成比w2の4.5〜10.5原子%の範囲
にある。そして図20に示すように、図18に示すTg
の750Kの等温線と、図19に示すTxの800Kの
等温線とに囲まれた範囲が、ΔTxの50Kの等温線の
範囲に相当し、この範囲内で過冷却液体の温度間隔ΔT
xが50Kを越えていることがわかる。
【0160】(実験例4:FeNiCoMB系合金の物
性)Fe、Co、Ni、Hf及びNbと、Bを原料とし
たこと以外は実験例1とほぼ同様にして、実施例33〜
実施例36の(Fe1-a3-b3Coa3Nib370Zr1 0
20なる組成の金属ガラス合金の薄帯を得た。また、上記
と同様にしてFe56Co7Ni7Hf8Nb220なる組成
の金属ガラス合金薄帯を得た。この薄帯をローターミル
により大気中で粉砕し、45〜150μmの粒径のもの
を分級し、これを実施例37の金属ガラス合金粉末とし
た。
【0161】図21には、実施例37の金属ガラス合金
粉末のX線回折の結果を示す。図21から明らかなよう
に、この金属ガラス合金粉末のX線回折パターンはブロ
ードなパターンを示し、非晶質相を主体とする組織であ
ることがわかる。また図22には、実施例37の金属ガ
ラス合金粉末のDSC曲線(測定時の昇温速度:40K
/分)を示す。図22から明らかなように、この組成の
金属ガラス合金においては、Tx=868K、Tg=80
3K、ΔTx=65Kとなっている。
【0162】また図23には、実施例33〜36の(F
1-a3-b3Coa3Nib370Zr1020なる組成の金属
ガラス合金のTgに対するFeとCoとNiの組成依存
性を示し、図24には同組成系におけるΔTx(=Tx−
Tg)の値に対するFeとCoとNiの組成依存性を示
す。また表4に、実施例33〜36のΔTxを示す。
【0163】
【表4】
【0164】図24から明らかなように、(Fe
1-a3-b3Coa3Nib370Zr1020なる組成の全ての
範囲においてΔTxの値は25Kを超えている。また、
図23からわかるようにTgの値に関し、Coを7原子
%程度から50原子%程度の範囲 で増加させることで
Tgが単調に増加することも明らかになった。一方、Δ
Txに関し、図22に示すようにFeを多く含む組成系
において大きな値になっていることがわかり、ΔTxを
60K以上にするには、Co含有量を3原子%以上、2
0原子%以下、Ni含有量を3原子%以上、30原子%
以下にすることが好ましいことがわかる。また表4から
明らかなように、実施例33〜36の金属ガラス合金
は、いずれもΔTxが68Kであり、60Kを越えてい
ることが判る。
【0165】なお、(Fe1-a3-b3Coa3Nib370
1020なる組成式においてCo含有量を3原子%以上
にするには、(Fe1-a3-b3Coa3Nib3)を70原子
%とするので、Coの組成比a3が0.042以上、Co
含有量を20原子%以下にするには、Coの組成比a3
が0.29以下となる。また、同様にNi含有量を3原
子%以上にするにはNiの組成比b3が0.042以上、
30原子%以下にするには、Niの組成比b3が0.43
以下となる。
【0166】このように、上記組成の金属ガラス合金
は、非晶質相を主相とするとともに結晶化温度Tx以下
の広い温度領域で過冷却液体域が存在し、ΔTx=Tx−
Tgで示される値が大きく、この系の組成の合金が高い
アモルファス形成能と高い熱的安定性を有することがわ
かる。
【0167】以上、実験例1〜実験例4の結果より、本
発明に係る金属ガラス合金は、いずれも非晶質相を主相
とする組織からなり、20K以上、組成によっては60
K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを有することが分
かる。
【0168】(実験例5:金属ガラス合金の磁気特性)
実験例1とほぼ同様にして、種々の組成の金属ガラス合
金薄帯を得た。次にこれらの薄帯を、ローターミルを用
いて大気中で粉砕し、45〜150μmの範囲の粒径の
ものをふるいで分級し、これを実施例38〜41の金属
ガラス合金の粉末とした。
【0169】また、Fe及びAlと、Fe-C合金、F
e-P合金、B及びSiを原料としてそれぞれ所定量秤
量し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波
誘導加熱装置で溶解し、種々の組成のインゴットを作製
した。次に溶湯るつぼ及びチャンバを主体として構成さ
れる高圧ガス噴霧装置を用意し、前記のインゴットをこ
の高圧ガス噴霧装置の溶湯るつぼ内に入れて溶解し、溶
湯るつぼ先端の溶湯ノズルからチャンバに向けて、るつ
ぼ内の合金溶湯を高圧アルゴンガスと共に噴射して霧状
にし、チャンバ内でこの霧状の合金溶湯を急冷させるこ
とにより、粒径が1〜150μmの範囲の金属ガラス合
金粉末を得た。これを実施例42の金属ガラス合金の粉
末とした。
【0170】実施例38〜41の金属ガラス合金粉末9
7重量部に対し、絶縁材としてステアリン酸カルシウム
1重量部と水ガラス2重量部とを混合して混合物とし
た。この混合物を大気中200℃で1時間乾燥して解砕
した。この混合物をWC製の金型に充填した後、放電プ
ラズマ焼結装置を用い、6.6×10-3Paの減圧雰囲
気中で、混合物を成形圧力Ps600MPaまたは15
00MPaまで加圧するとともに、通電装置からパルス
電流を通電して混合物を室温(298K(25℃))か
ら373K(100℃)、473K(200℃)または
573K(300℃)の成形温度Tsまで加熱した。そ
して、混合物に前記の成形圧力Psを印加したままで前
記の成形温度Tsを約8分間保持することにより圧縮成
形を行った。そして、昇温速度5K/分で673Kまた
は703Kの熱処理温度まで加熱して60分間熱処理す
ることにより、実施例38〜41の磁心を製造した。こ
れらの磁心の形状は外径12mm、内径6mm、厚さ2
mmの円環状であった。
【0171】また、実施例42の金属ガラス合金粉末9
8重量部に2重量部のシリコーンエラストマーを混合し
て混合物とし、この混合物に対して、成形圧力Psを1
500MPa、成形温度Tsを室温(298K(25
℃))、昇温速度40K/分で(683K(410
℃))まで加熱して60分間熱処理する条件としたこと
以外は上記実施例38〜41と同様にして、実施例42
の磁心を製造した。この磁心の形状は外径12mm、内
径6mm、厚さ2mmの円環状であった。
【0172】表5に、実施例38〜42の圧粉磁心の合
金組成及び製造条件を示す。また表6に、実施例42の
圧粉磁心に使用した金属ガラス合金のガラス遷移温度T
g、結晶化開始温度Tx及び過冷却液体の温度間隔ΔTx
を示す。測定はDSCで行い、昇温速度は0.67K/
秒であった。また、これらの圧粉磁心のコアロス(W)
を測定し、コアロス(W)の周波数特性を調査した。結
果を図25及び図26に示す。尚、コアロス(W)は磁
束密度Bm0.1Tの条件で測定した。
【0173】また、比較例1として、カーボニル鉄圧粉
磁心のコアロスを測定した。結果を図25に併せて示
す。
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】まず、表6に示すように、FeAlPCB
Siからなる実施例42の合金は、Tgが497K、Tx
が535K、ΔTxが38Kを示しており、金属ガラス
合金であることがわかる。次に図25に示すように、実
施例38〜41の磁心は、周波数10kHzにおいて3
〜25kWm-3程度の比較的小さなコアロスを示してお
り、特に実施例38の磁心は、10kHzにおいて3k
Wm-3という極めて低いコアロスを示している。また周
波数100kHzでは、実施例38〜41のいずれの磁
心も500〜800kWm-3程度のコアロス(W)を示
している。また図26に示すように、実施例42の磁心
は、周波数20kHzにおいて9kWm-3程度のコアロ
スを示しており、周波数100kHzにおいて約300
kWm-3程度、200kHzにおいて約580kWm-3
程度のコアロス(W)を示している。一方、図25及び
図26に示すように、比較例1のカーボニル鉄圧粉磁心
のコアロス(W)は、周波数10kHzで250kWm
-3、周波数100kHzで2000kWm-3であり、実
施例38〜41及び実施例42と比較してコアロス
(W)がかなり高くなっている。
【0177】従って、本発明に係る金属ガラス合金から
なる磁心は、従来のカーボニル鉄圧粉磁心よりもコアロ
スが小さいことが分かる。従って本発明に係る磁心を、
スイッチング電源装置、各種コンバータ回路、アクティ
ブフィルタのトランスや磁心付きコイルの磁心として用
いた場合は、これらの装置若しくは回路の発熱量を低減
することができる。
【0178】(実験例6:降圧型コンバータ回路の発熱
量)金属ガラス合金の組成を、Fe70Al5Ga29.65
5.754.6Si3とし、成形温度を室温(25℃(29
8K))とし、成形圧力を1500MPaとしたこと以
外は実験例5と同様にして、外径18mm、内径12m
m、厚さ5mmの円環状の実施例43の圧粉磁心を製造
した。次に、実施例43の圧粉磁心にコイルを7ターン
巻回してインダクタンスが2.9μHのチョークコイル
を製造した。また、実施例42の圧粉磁心にコイルを7
ターン巻回してインダクタンスが2.9μHのチョーク
コイルを製造した。
【0179】そして、このチョークコイルを磁心付きコ
イルとして用い、図5に示すような降圧型コンバータ回
路を製造した。このコンバータ回路のスイッチング素子
はトランジスタとし、整流素子は整流用ダイオードと
し、コンデンサは静電容量が33μFの電解型コンデン
サとした。また、入力電圧は12Vの直流とし、出力電
圧は電圧5V、電流25Aの直流とし、スイッチング素
子のスイッチング周波数は100kHzとした。このと
きのチョークコイルの発熱量を測定した。結果を表7に
示す。
【0180】また、比較例2のカーボニル鉄圧粉磁心か
らなるチョークコイル、比較例3のFeAlSi合金圧
粉磁心からなるチョークコイルについても、実施例42
及び実施例43の場合と同様にして降圧型コンバータ回
路を製造し、チョークコイルの発熱量を測定した。結果
を表7に併せて示す。
【0181】
【表7】
【0182】表7に示すように、本発明に係る金属ガラ
ス合金から構成された実施例42及び実施例43のチョ
ークコイルは、比較例2、3のチョークコイルよりも発
熱量が低くなっていることがわかる。特に、実施例42
のFeAlPCB系合金からなるチョークコイルは0.
28Wの発熱量を示しており、発熱量が極めて小さいこ
とがわかる。従って、本発明に係る金属ガラス合金から
なる磁心を用いた降圧型コンバータ回路によれば、発熱
量が小さく、低損失で変換効率の高いコンバータ回路を
構成できることがわかる。
【0183】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
スイッチング電源装置では、トランスの磁心に金属ガラ
ス合金粉末からなる磁心が用いられており、この金属ガ
ラス合金は結晶化温度よりも十分低い温度の熱処理によ
り磁心の内部応力を緩和あるいは除去でき、磁心のコア
ロスを低減できるので、スイッチング電源装置全体の発
熱量を低減することができる。
【0184】また、本発明のスイッチング電源装置で
は、磁心付きコイルの磁心に金属ガラス合金粉末からな
る磁心が用いられており、この金属ガラス合金は結晶化
温度よりも十分低い温度の熱処理により磁心の内部応力
を緩和あるいは除去でき、磁心のコアロスを低減できる
ので、スイッチング電源装置全体の発熱量を低減するこ
とができる。
【0185】また、本発明の降圧型、昇圧型及び極性反
転型のコンバータ回路によれば、磁心付きコイルの磁心
に、金属ガラス合金粉末からなる磁心が用いられてお
り、この金属ガラス合金は結晶化温度よりも十分低い温
度の熱処理により磁心の内部応力を緩和あるいは除去で
き、磁心のコアロスを低減できるので、これらのコンバ
ータ回路全体の発熱量を低減することができる。
【0186】また本発明のアクティブフィルタによれ
ば、コンバータ回路に用いられる磁心付きコイルの磁心
に、金属ガラス合金粉末からなる磁心が用いられてお
り、この磁心はコアロスが低いので、これらのアクティ
ブフィルタ全体の発熱量を低減することができる。
【0187】また、上記の各磁心は透磁率が低いので、
磁気飽和防止のためのギャップを設ける必要がなく、漏
れ磁界が発生しないので、周辺の他の回路に悪影響を及
ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態であるスイッチン
グ電源措置の回路図である。
【図2】 図1に示すスイッチング電源装置のトラン
スの磁心を示す斜視図である。
【図3】 本発明の第2の実施形態であるスイッチン
グ電源措置の回路図である。
【図4】 本発明の第3の実施形態である降圧型コン
バータ回路の回路図である。
【図5】 本発明の第4の実施形態である昇圧型コン
バータ回路の回路図である。
【図6】 本発明の第5の実施形態である極性反転型
コンバータ回路の回路図である。
【図7】 本発明の第6の実施形態であるアクティブ
フィルタの回路図である。
【図8】 Fe70Al5Ga29.655.754.6Si3
なる組成の実施例1の金属ガラス合金の粉末のX線回折
結果を示す図である。
【図9】 実施例1の金属ガラス合金の粉末のDSC
曲線を示す図である。
【図10】 Fe70Al7(P0.76Si0.24v1z1
w1なる組成の実施例2〜15の金属ガラス合金薄帯のX
線回折測定の結果を示す図である。
【図11】 実施例5及び実施例15の金属ガラス合
金薄帯のDSC曲線を示す図である。
【図12】 実施例2〜15の金属ガラス合金薄帯のガ
ラス遷移温度Tgの組成依存性を示す図である。
【図13】 実施例2〜15の金属ガラス合金薄帯の結
晶化開始温度Txの組成依存性を示す図である。
【図14】 実施例2〜15の金属ガラス合金薄帯の過
冷却液体の温度間隔ΔTxの組成依存性を示す図であ
る。
【図15】 実施例16〜23の金属ガラス合金薄帯
のX線回折測定の結果を示す図である。
【図16】 実施例24〜32金属ガラス合金薄帯の
X線回折測定の結果を示す図である。
【図17】 実施例29の金属ガラス合金薄帯のDS
C曲線を示す図である。
【図18】 実施例16〜32の金属ガラス合金薄帯
のガラス遷移温度Tgの組成依存性を示す図である。
【図19】 実施例16〜32の金属ガラス合金薄帯
の結晶化開始温度Txの組成依存性を示す図である。
【図20】 実施例16〜32の金属ガラス合金薄帯
の過冷却液体の温度間隔ΔTxの組成依存性を示す図で
ある。
【図21】 Fe56Co7Ni7Hf8Nb220なる組
成の実施例37の金属ガラス合金粉末のX線回折測定の
結果を示す図である。
【図22】 実施例37の金属ガラス合金粉末のDS
C曲線を示す図である。
【図23】 実施例33〜36の金属ガラス合金薄帯
のガラス遷移温度Tgの組成依存性を示す図である。
【図24】 実施例33〜36の金属ガラス合金薄帯
の過冷却液体の温度間隔ΔTxの組成依存性を示す図で
ある。
【図25】 実施例38〜41及び比較例1の圧粉磁
心のコアロス(W)の周波数依存性を示す図である。
【図26】 実施例42及び比較例1の圧粉磁心のコ
アロス(W)の周波数依存性を示す図である。
【符号の説明】
1、11 スイッチング電源装置 2、12、22、32、42 スイッチング素子(トラ
ンジスタ) 3、13 トランス 4、14 整流回路 5、15 平滑回路 6、16 直流電源 7、17 出力端子 10 磁心 21 降圧型コンバータ回路 23、33、43 磁心付きコイル 24、34、44 整流素子(ダイオード) 25、35、45 コンデンサ 31 昇圧型コンバータ回路 41 極性反転型コンバータ回路 51 アクティブフィルタ 52 制御部(アクティブフィルタモノシリックIC)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直流電圧を矩形波電圧に変換するスイ
    ッチング素子と、前記矩形波電圧を変圧するトランス
    と、変圧された矩形波電圧を直流電圧に変換する整流回
    路及び平滑回路とを具備してなり、 前記トランスが、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化
    開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表さ
    れる過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって
    非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉
    末と、絶縁材とが混合され、成形されてなる磁心を具備
    してなることを特徴とするスイッチング電源装置。
  2. 【請求項2】 直流電圧を矩形波電圧に変換するスイ
    ッチング素子と、前記矩形波電圧を変圧するトランス
    と、変圧された矩形波電圧を直流電圧に変換する整流回
    路及び平滑回路とを具備してなり、 前記平滑回路は、コンデンサと磁心付きコイルを少なく
    とも具備してなり、 前記磁心が、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始
    温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される
    過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって非晶
    質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末
    と、絶縁材とが混合され、成形されてなることを特徴と
    するスイッチング電源装置。
  3. 【請求項3】 スイッチング素子と、該スイッチング
    素子により直流電流が遮断されたときに逆起電力が生じ
    る磁心付きコイルと、前記の逆起電力により生じた電流
    を平滑化するコンデンサと、前記磁心付きコイルに対し
    て逆並列に接続され、前記磁心付きコイルと前記コンデ
    ンサとともに環流路を形成する整流素子とを具備してな
    り、 前記磁心が、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始
    温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される
    過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって非晶
    質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末
    と、絶縁材とが混合され、成形されてなることを特徴と
    する降圧型コンバータ回路。
  4. 【請求項4】 スイッチング素子と、該スイッチング
    素子により直流電流が遮断されたときに逆起電力が生じ
    る磁心付きコイルと、前記磁心付きコイルに対して順方
    向に直列接続されて前記起電力により発生した電流を整
    流する整流素子と、整流された電流を平滑化するコンデ
    ンサとを具備してなり、 前記磁心が、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始
    温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される
    過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって非晶
    質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末
    と、絶縁材とが混合され、成形されてなることを特徴と
    する昇圧型コンバータ回路。
  5. 【請求項5】 スイッチング素子と、該スイッチング
    素子により直流電流が遮断されたときに逆起電力が生じ
    る磁心付きコイルと、前記逆起電力により発生した電流
    を平滑化するコンデンサと、前記スイッチング素子に対
    して逆方向に直列接続されて前記直流電流を遮断する整
    流素子とを具備してなり、 前記磁心が、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始
    温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される
    過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって非晶
    質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末
    と、絶縁材とが混合され、成形されてなることを特徴と
    する極性反転型コンバータ回路。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載の昇圧型コンバータ回
    路と、この昇圧型コンバータ回路の前記スイッチング素
    子のスイッチング間隔を制御する制御部とを具備してな
    ることを特徴とするアクティブフィルタ。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008010442A (ja) * 2006-06-27 2008-01-17 Nissan Motor Co Ltd 非晶質軟磁性材料の焼結方法
JP2013021820A (ja) * 2011-07-11 2013-01-31 Fuji Electric Co Ltd 昇降圧型コンバータ

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