JP5742713B2 - 癌の治療及び/又は予防用医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、CAPRIN−1に対する抗体又はそのフラグメントの、癌の治療及び/又は予防剤等としての新規な医薬用途に関する。
癌は全死亡原因の第一位を占める疾患であり、現在行われている治療は手術療法を主体に放射線療法と化学療法を組み合わせたものである。近年の新しい手術法の開発や新たな抗癌剤の発見にも関わらず、一部の癌を除いて、癌の治療成績はあまり向上していないのが現状である。近年、分子生物学や癌免疫学の進歩によって、癌に特異的に反応する抗体類、細胞障害性T細胞により認識される癌抗原類、癌抗原をコードする遺伝子類などが同定されており、癌抗原類をターゲットにした特異的癌治療法への期待が高まっている(非特許文献1)。
癌治療法においては、副作用を軽減するため、その抗原として認識されるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、正常細胞にはほとんど存在せず、癌細胞に特異的に存在していることが望ましい。1991年、ベルギー国Ludwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8陽性T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献2)。その後、癌患者の生体内で自己の癌に反応して産生される抗体が認識する腫瘍抗原を遺伝子の発現クローニングの手法を取り入れて同定する、SEREX(serological identification of antigens by recombinant expression cloning)法が報告され(非特許文献3及び特許文献1)、この方法により、正常細胞にはほとんど発現がなく、癌に特異的に発現するいくつかの癌抗原が単離されている(非特許文献4〜9)。さらに、その一部をターゲットにして、癌抗原に特異的に反応する免疫細胞を用いた細胞療法や、癌抗原を含むワクチンなどの癌特異的免疫療法の臨床試験が実施されている。
一方、近年、癌細胞上の抗原タンパク質を標的にした、癌を治療するための各種抗体医薬が世の中に台頭してきた。癌特異的治療薬として一定の薬効が得られ注目されているが、標的となる抗原タンパク質の大部分は正常細胞にも発現するものであり、抗体投与の結果、癌細胞だけでなく、抗原が発現する正常細胞も障害されてしまい、その結果生じる副作用が問題になっている。従って、癌細胞表面に特異的に発現する癌抗原を同定し、それを標的とした抗体を医薬品として使用することができれば、より副作用の少ない抗体医薬による治療が可能になると期待される。
Cytoplasmic−and proliferation−associateed protein 1(CAPRIN−1)は、休止期の正常細胞が活性化や細胞分裂を起こす際に発現し、また細胞内でRNAと細胞内ストレス顆粒を形成してmRNAの輸送、翻訳の制御に関与することなどが知られている細胞内タンパク質である。一方で、CAPRIN−1には色々な別名が存在しており、その一例としてGPI−anchored membrane protein 1やMembrane component surface marker 1 protein (M11S1)などがあり、あたかも本タンパク質が細胞膜タンパク質であることが知られていたかのような名称がある。これらの別名は、元々、CAPRIN−1の遺伝子配列が、GPI結合領域を有し、大腸癌細胞に発現する膜タンパク質であるとする報告(非特許文献10)に由来するが、後にこの報告でのCAPRIN−1の遺伝子配列は誤りであり、現在GenBank等に登録されているCAPRIN−1の遺伝子配列が1塩基欠損することによりフレームシフトが起きることでC末端から80アミノ酸が欠損し、その結果生じるartifact(74アミノ酸)が前報告でのGPI結合部分であり、さらに5’側にも遺伝子配列のエラーがあり、N末端から53アミノ酸が欠損していることが報告されている(非特許文献11)。また、現在GenBank等に登録されているCAPRIN−1の遺伝子配列がコードするタンパク質は細胞膜タンパク質ではないことが報告されている(非特許文献11)。
なお、CAPRIN−1が細胞膜タンパク質であるとする非特許文献10の報告に基づき、特許文献2及び3には、M11S1の名称で、CAPRIN−1が細胞膜タンパク質の1つとして抗体医薬の標的として癌治療に使用されうることが記載されている(実施例には本タンパク質に対する抗体を用いた治療に関する記載は一切ない)。しかし、非特許文献11の報告の通り、特許文献2の出願当時から現在まで、CAPRIN−1は細胞表面には発現していないものであることが通説になっており、CAPRIN−1が細胞膜タンパク質であるという誤った情報のみに基づく特許文献2及び3の内容は、当業者の技術常識として理解されるべきものでないことは明らかである。
米国特許第5698396号 US2008/0075722 WO2005/100998
秋吉毅,「癌と化学療法」、1997年、第24巻、p551−519(癌と化学療法社、日本) Bruggen P. et al., Science, 254:1643−1647(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:11810−11813(1995) Int.J.Cancer,72:965−971(1997) Cancer Res., 58:1034−1041(1998) Int.J.Cancer,29:652−658(1998) Int.J.Oncol.,14:703−708(1999) Cancer Res., 56:4766−4772(1996) Hum. Mol. Genet6:33−39, 1997 J. Biol. Chem., 270:20717−20723, 1995 J. Immunol., 172:2389−2400, 2004
本発明の目的は、癌細胞の表面に特異的に発現する癌抗原タンパク質を同定し、それを標的とした抗体の、癌の治療及び/又は予防剤としての用途を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、イヌの精巣組織由来cDNAライブラリーと乳癌患犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、取得した遺伝子及びそのヒト、ウシ、ウマ、マウス、ニワトリ相同性遺伝子を基にして、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で示されるアミノ酸配列を有するCAPRIN−1及びそれらCAPRIN−1に対する抗体を作製した。そしてCAPRIN−1が乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、大腸癌、胃癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び線維肉腫に特異的に発現していること、そしてCAPRIN−1タンパク質の一部がそれら癌細胞の細胞表面に特異的に発現していることを見出した。そして、CAPRIN−1の各癌細胞の細胞表面に発現する部分に対する抗体が、CAPRIN−1を発現する癌細胞を障害することを見出し、本発明を完成させるに至った。
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるCAPRIN−1の部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有する抗体又はそのフラグメントを有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。
その実施形態において、上記癌は、乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、大腸癌、胃癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌もしくは線維肉腫である。
別の実施形態において、上記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。
別の実施形態において、上記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、又は二重特異抗体である。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2010-023453号、2010-183161号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体は、癌細胞を障害する。従って、CAPRIN−1に対する抗体は癌の治療や予防に有用である。
CAPRIN−1タンパク質をコードする遺伝子の、正常組織及び腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;CAPRIN−1タンパクをコードする遺伝子の発現パターン、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現パターンを示す。 癌細胞の細胞表面に反応するCAPRIN−1に対するポリクローナル抗体による、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞株MDA−MB−157に対する細胞障害性を示す図である。参照番号3;#1のCAPRIN−1に対するポリクローナル抗体、参照番号4;抗原が免役されていないウサギ由来のコントロール抗体、参照番号5;抗体の代わりにPBSを添加したときの活性を示す。
本発明で用いられる配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のポリペプチドに対する抗体の抗腫瘍活性は、後述するように、生体内で担癌動物に対する腫瘍増殖の抑制を調べることによって、あるいは、生体外で該ポリペプチドを発現する腫瘍細胞に対して、免疫細胞又は補体を介した細胞障害活性を示すか否かを調べることによって評価することができる。
なお、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号(すなわち、配列番号2,4,6・・28,30)のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列はそれぞれ、配列番号1〜29のうち奇数の配列番号(すなわち、配列番号1,3,5・・27,29)に示されている。
本発明が開示する配列表の配列番号6、8、10、12及び14で示されるアミノ酸配列は、イヌ精巣組織由来cDNAライブラリーと乳癌患犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドとして、また配列番号2及び4で示されるアミノ酸配列は、そのヒト相同因子(ホモログ)として、配列番号16で示されるアミノ酸配列は、そのウシ相同因子として、配列番号18で示されるアミノ酸配列は、そのウマ相同因子として、配列番号20〜28で示されるアミノ酸配列は、そのマウス相同因子として、配列番号30で示されるアミノ酸配列は、そのニワトリ相同因子として単離された、CAPRIN−1のアミノ酸配列である(後述の実施例1参照)。CAPRIN−1は、休止期の正常細胞が活性化や細胞分裂を起こす際に発現することが知られている。
CAPRIN−1は、細胞表面には発現しないことが知られていたが、本検討により、CAPRIN−1タンパク質の一部が各種癌細胞の細胞表面に発現することが明らかになった。そして、配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるCAPRIN−1タンパク質の部分ポリペプチドを認識する抗体が、抗腫瘍活性を示すことが明らかになった。本発明の抗体は、上記CAPRIN−1タンパク質の断片に結合する、かつ、抗腫瘍活性を示すすべての抗体が含まれる。
本発明で用いられる上記CAPRIN−1に対する抗体は、抗腫瘍活性を発揮しうる限りいかなる種類の抗体であってもよく、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、例えば合成抗体、多重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体(scFv)など、ヒト抗体、それらの抗体フラグメント、例えばFabやF(ab’)、Fvなどを含む。これらの抗体及びそのフラグメントは、また当業者に公知の方法により調製することが可能である。本発明においては、CAPRIN−1タンパク質またはその部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有する、すなわち、抗原−抗体反応を介してCAPRIN−1タンパク質と結合する、好ましくはCAPRIN−1タンパク質と特異的に結合することが可能な抗体が望ましいし、モノクローナル抗体であることが好ましいが、均質な抗体を安定に生産できるかぎり、ポリクローナル抗体であっても良い。また、被験者がヒトである場合には、拒絶反応を回避もしくは抑制するためにヒト抗体又はヒト化抗体であることが望ましい。ここで、「CAPRIN−1タンパク質と特異的に結合する」とは、CAPRIN−1タンパク質に特異的に結合し、それ以外のタンパク質と実質的に結合しないことを意味する。
本発明で用いることができる抗体の抗腫瘍活性は、後述するように、生体内で担癌動物に対する腫瘍増殖の抑制を調べることによって、あるいは、生体外で該ポリペプチドを発現する腫瘍細胞に対して、免疫細胞又は補体を介した細胞障害活性を示すか否かを調べることによって評価することができる。
さらにまた、本発明における癌の治療及び/又は予防の対象である被験者は、ヒト、ペット動物、家畜類、競技用動物などの哺乳動物であり、好ましい被験者は、ヒトである。
以下に、本発明に関する抗原の作製、抗体の作製、ならびに医薬組成物について説明する。
<抗体作製用抗原の作製>
本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体を取得するための感作抗原として使用されるタンパク質又はその断片は、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ニワトリなど、その由来となる動物種に制限されない。しかし細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択することが好ましく、一般的には、哺乳動物由来のタンパク質が好ましく、特にヒト由来のタンパク質が好ましい。例えば、CAPRIN−1がヒトCAPRIN−1の場合、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチド、ヒトCAPRIN−1を発現する細胞などを用いることができる。
ヒトCAPRIN−1及びそのホモログの塩基配列及びアミノ酸配列は、例えばGenBank(米国NCBI)にアクセスし、BLAST、FASTAなどのアルゴリズム(Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873−5877,1993; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389−3402, 1997)を利用することによって入手することができる。
本発明では、ヒトCAPRIN−1の塩基配列(配列番号1もしくは3)又はアミノ酸配列(配列番号2もしくは4)を基準とした場合、これらのORF又は成熟部分の塩基配列又はアミノ酸配列と70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、さらに好ましくは95%〜100%、例えば97%〜100%、98%〜100%、99%〜100%又は99.5%〜100%の配列同一性を有する配列からなる核酸又はタンパク質がターゲットになる。ここで、「%配列同一性」は、2つの配列を、ギャップを導入してか又はギャップを導入しないで、最大の類似度となるようにアラインメント(整列)したとき、アミノ酸(又は塩基)の総数に対する同一アミノ酸(又は塩基)のパーセンテージ(%)を意味する。
CAPRIN−1タンパク質の断片は、抗体が認識する最小単位であるエピトープ(抗原決定基)のアミノ酸長から、該タンパク質の全長未満の長さを有する。エピトープは、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性を有するポリペプチド断片を指し、その最小単位は、約7〜12アミノ酸、例えば8〜11アミノ酸、からなる。したがって、本発明の抗体は、配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列のうち、連続する約7〜12アミノ酸、例えば連続する8〜11アミノ酸、からなるエピトープを少なくとも含む断片を認識することを特徴としている。
上記した、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドを含むポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる(日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、化学修飾とペプチド合成、東京化学同人(日本)、1981年)。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法(Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sonsなど)を用いて、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製し、該ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でポリペプチドを生産させることにより、目的とするポリペプチドを得ることができる。
上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法や市販の核酸合成機を用いた常法により、容易に調製することができる。例えば、配列番号1の塩基配列を含むDNAは、ヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼなど)及びMg2+含有PCRバッファーを用いて、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。PCRの手法、条件等については、例えばAusubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, A compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons(特に第15章)に記載されている。
また、本明細書中の配列表の配列番号1〜30に示される塩基配列及びアミノ酸配列の情報に基づいて、適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてヒトなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のタンパク質を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。そのような細胞や組織の例は、精巣、白血病、乳癌、リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、大腸癌などの癌又は腫瘍に由来する細胞又は組織である。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、ならびに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, 第2版, Current Protocols in Molecular Biology (1989)、Ausbelら(上記)等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られたDNAから、ヒトCAPRIN−1タンパク質やその部分ペプチドをコードするDNAを得ることができる。
上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物細胞、ヒト胎児腎臓細胞株HEK293、マウス胎仔皮膚細胞株NIH3T3、出芽酵母、分裂酵母等の酵母細胞、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、マルチクローニングサイト、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相補遺伝子、等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pYES2等が例示できる。上記と同様に、上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1等を用いた場合には、Hisタグ(例えば(His)〜(His)10)、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション、ウイルス感染、リポフェクション、細胞膜透過性ペプチドとの結合、等の周知の方法を用いることができる。
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
<抗体の構造>
抗体は通常少なくとも2本の重鎖及び2本の軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質である。IgMは別として、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖で構成される約150kDaのヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的には、それぞれの軽鎖は1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結されているが、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は変動する。それぞれの重鎖及び軽鎖はまた鎖内ジスルフィド結合も有する。それぞれの重鎖は一方の端に可変ドメイン(VH領域)を有し、それにいくつかの定常領域が続く。それぞれ軽鎖は可変ドメイン(VL領域)を有し、その反対の端に1つの定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の最初の定常領域と整列しており、かつ軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。抗体の可変ドメインは特定の領域が相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特定の可変性を示して抗体に結合特異性を付与する。可変領域の相対的に保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれている。完全な重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ3つのCDRにより連結された4つのFRを含む。3つのCDRは重鎖ではそのN末から順にCDRH1,CDRH2,CDRH3、同様に軽鎖ではCDRL1,CDRL2,CDRL3と呼ばれている。抗体の抗原への結合特異性には、CDRH3が最も重要である。また、各鎖のCDRはFR領域によって近接した状態で一緒に保持され、他方の鎖からのCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常領域は抗体が抗原に結合することに直接寄与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)への関与、Fcγ受容体への結合を介した食作用、新生児Fc受容体(FcRn)を介した半減期/クリアランス速度、補体カスケードのC1q構成要素を介した補体依存性細胞障害(CDC)を示す。
<抗体の作製>
本発明における抗CAPRIN−1抗体とは、CAPRIN−1タンパク質の全長又はその断片と免疫学的反応性を有する抗体を意味する。
ここで、「免疫学的反応性」とは、生体内で抗体とCAPRIN−1抗原とが結合する特性を意味し、このような結合を介して腫瘍を障害(例えば、死滅、抑制又は退縮)する機能、が発揮される。すなわち、本発明で使用される抗体は、CAPRIN−1タンパク質と結合して腫瘍、例えば白血病、リンパ腫、乳癌、脳腫瘍、肺癌、食道癌、胃癌、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫などを障害することができるならば、その種類を問わない。
抗体の例は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、抗体フラグメント(例えばFabやF(ab’))などを含む。また、抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス、例えばIgG,IgE,IgM,IgA,IgD及びIgY、又は任意のサブクラス、例えばIgG1,IgG2,IgG3,IgG4,IgA1,IgA2などである。
抗体はさらに、グリコシル化の他に、アセチル化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、またはペグ(PEG)化などによって修飾されていてもよい。
以下に、種々の抗体の作製例を示す。
抗体が、モノクローナル抗体であるときには、例えば、CAPRIN−1を発現する乳癌細胞株SK−BR−3などをマウスに投与して免疫し、同マウスより脾臓を抽出し、細胞を分離の上、該細胞とマウスミエローマ細胞とを融合させ、得られた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、癌細胞増殖抑制作用を持つ抗体を産生するクローンを選択する。癌細胞増殖抑制作用を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを単離し、当該ハイブリドーマを培養し、培養上清から一般的なアフィニティ精製法により抗体を精製することで、調製することが可能である。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、例えば以下のようにしても作製することができる。まず、公知の方法にしたがって、感作抗原を動物に免疫する。一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付すが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3U1(P3−X63Ag8U1)、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol. (1979)123, 1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology (1978)81, 1−7)、NS−1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol. (1976)6, 511−519)、MPC−11(Margulies. D.H. et al., Cell (1976)8, 405−415)、SP2/0(Shulman, M. et al., Nature (1978)276, 269−270)、FO(deSt. Groth, S.F. et al., J. Immunol. Methods (1980)35, 1−21)、S194(Trowbridge, I.S. J.Exp.Med. (1978)148, 313−323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979)277, 131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler, G. and Milstein, C. Methods Enzymol. (1981)73, 3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とするハイブリドーマを形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウイルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでタンパク質、タンパク質発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266(登録番号TIB196)と融合させ、所望の活性(例えば、細胞増殖抑制活性)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。
本発明で使用可能な抗体の別の例がポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、例えば、次のようにして得ることができる。
天然のCAPRIN−1タンパク質、あるいはGSTなどとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させた組換えCAPRIN−1タンパク質、又はその部分ペプチドをマウス、ヒト抗体産生マウス、ウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、CAPRIN−1タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。
ここで、ヒト抗体産生マウスとしては、例えばKMマウス(キリンファーマ/Medarex)及びXenoマウス(Amgen)が知られている(例えば、国際公開第WO02/43478号、同第WO02/092812号など)。このようなマウスをCAPRIN−1タンパク質又はその断片で免疫するときには、完全ヒトポリクローナル抗体を血液から得ることができる。また、免疫後のマウスから脾臓細胞を取出し、ミエローマ細胞との融合法によりヒト型モノクローナル抗体を作製することができる。
抗原の調製は、例えば、動物細胞を用いた方法(特表2007−530068)やバキュロウイルスを用いた方法(例えば、国際公開第WO98/46777号など)などに準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
さらにまた、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A.K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
本発明の抗CAPRIN−1抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。しかし、ポリクローナル抗体、遺伝子改変抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体など)などであってもよい。
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、非ヒト動物モノクローナル抗体(例えばマウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体など)、キメラ型モノクローナル抗体などが含まれる。モノクローナル抗体は、CAPRIN−1タンパク質を免疫した非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ヒト抗体産生マウス、ニワトリ、ウサギなど)からの脾細胞とミエローマ細胞との融合によって得られたハイブリドーマを培養することによって作製されうる。キメラ型抗体は、異なる動物由来の配列を組み合わせて作製される抗体であり、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体などである。キメラ抗体の作製は公知の方法を用いて行うことができ、例えば、抗体V領域をコードするDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとを連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。
なお、後述の実施例では、配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるCAPRIN−1の部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有するモノクローナル抗体が作製され、抗腫瘍効果が確認された。これらのモノクローナル抗体は、配列番号43、配列番号47または配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域と、配列番号51または配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域とを含み、ここで、該VH領域に配列番号40、配列番号44または配列番号60のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号41、配列番号45または配列番号61のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号42、配列番号46または配列番号62のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれ、該VL領域に、配列番号48または配列番号64のアミノ酸配列で表されるCDR1、配列番号49または配列番号65のアミノ酸配列で表されるCDR2及び配列番号50または配列番号66のアミノ酸配列で表されるCDR3が含まれる。
ポリクローナル抗体には、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にCAPRIN−1タンパク質を免疫して得られる抗体が含まれる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は、免疫動物由来の抗体のCDRを、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによって構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
具体的には、例えばマウス抗体やニワトリ抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region; FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開第EP239400号、国際公開第WO96/02576号参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K. et al., Cancer Research 1993, 53: 851−856)。また、様々なヒト抗体由来のフレームワーク領域に置換してもよい(国際公開第WO99/51743号参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato K. et al., Cancer Research 1993, 53: 851−856)。
キメラ抗体やヒト化抗体を作製した後に、可変領域(例えば、FR)や定常領域中のアミノ酸を他のアミノ酸で置換等してもよい。
アミノ酸の置換は、例えば15未満、10未満、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下のアミノ酸、好ましくは1〜5アミノ酸、より好ましくは1又は2アミノ酸、の置換であり、置換抗体は、未置換抗体と機能的に同等であるべきである。置換は、保存的アミノ酸置換が望ましく、これは、電荷、側鎖、極性、芳香族性などの性質の類似するアミノ酸間の置換である。性質の類似したアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(トレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)などに分類しうる。
抗体修飾物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を挙げることができる。本発明の抗体修飾物においては、結合される物質は限定されない。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
ここで「機能的に同等」とは、対象となる抗体が本発明の抗体と同様の生物学的あるいは生化学的活性、具体的には腫瘍を障害する機能、を有すること、ヒトへの適用時に拒絶反応を本質的に起こさないことなどを指す。このような活性としては、例えば、細胞増殖抑制活性、あるいは結合活性を例示することができる。
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, T. et al., (1995) Gene 152, 271−275、Zoller, MJ., and Smith, M. (1983) Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer, W. et al., (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer, W. and Fritz, HJ., (1987) Methods Enzymol. 154, 350−367、Kunkel, TA., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488−492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763−2766)などを用いて、本発明の抗体に適宜変異を導入することにより、該抗体と機能的に同等な抗体を調製することができる。
上記抗CAPRIN−1抗体が認識するCAPRIN−1タンパク質のエピトープを認識する抗体は、当業者に公知の方法により得ることが可能である。例えば、抗CAPRIN−1抗体が認識するCAPRIN−1タンパク質のエピトープを通常の方法(例えば、エピトープマッピングなど)により決定し、該エピトープに含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを免疫原として抗体を作製する方法や、通常の方法で作製された抗体のエピトープを決定し、抗CAPRIN−1抗体とエピトープが同じ抗体を選択する方法などにより得ることができる。ここで、「エピトープ」は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性を有するポリペプチド断片を指し、その最小単位は、約7〜12アミノ酸、好ましくは8〜11アミノ酸からなる。
本発明の抗体の親和定数Ka(kon/koff)は、好ましくは、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5×1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5×1011−1、少なくとも1012−1、あるいは、少なくとも1013−1である。
本発明の抗体は、抗腫瘍剤とコンジュゲートすることができる。抗体と抗腫瘍剤との結合は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基などと反応性の基(例えば、コハク酸イミジル基、ホルミル基、2−ピリジルジチオ基、マレイイミジル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基など)をもつスペーサーを介して行うことができる。
抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤、すなわち、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、チオテパ、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン(chloRNAphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン(calicheamicin)、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(adriamycin)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エポチロン(epothilone)、エトグルシド(etoglucid)、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩又は誘導体を包含する。
また、本発明の抗体と、抗腫瘍剤を併用投与することで、より高い治療効果を得ることができる。本手法は、CAPRIN−1が発現している癌患者に対して、外科的手術前後どちらにおいても適応できる。特に手術後に、従来抗腫瘍剤単独で処置されていたCAPRIN−1が発現している癌に対して、より高い癌再発防止や生存期間の延長が得られる。
本発明の抗体との併用投与に用いられる抗腫瘍剤の例は、文献等で公知の下記の抗腫瘍剤、すなわち、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、チオテパ、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethilenethiophosphoramide)、トリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、カンプトセシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、ズオカルマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロランブシル、クロロナファジン(chloRNAphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン(calicheamicin)、ダイネマイシン、クロドロネート、エスペラマイシン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(adriamycin)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)、デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン(amsacrine)、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン(demecolcine)、ジアジコン(diaziquone)、エルフォルニチン (elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エポチロン(epothilone)、エトグルシド(etoglucid)、レンチナン、ロニダミン(lonidamine)、メイタンシン(maytansine)、アンサミトシン(ansamitocine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン(losoxantrone)、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン(razoxane)、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム(spirogermanium)、テニュアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン(triaziquone)、ロリジン(roridine)A、アングイジン(anguidine)、ウレタン、ビンデシン、ダカーバジン、マンノムスチン(mannomustine)、ミトブロニトール、ミトラクトール(mitolactol)、ピポブロマン(pipobroman)、ガシトシン(gacytosine)、ドキセタキセル、クロランブシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、イホスファミド、マイトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、エダトレキセート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、イリノテカン、トポイソメラーゼインヒビター、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン(capecitabine)、並びにそれらの薬学的に許容可能な(公知の)塩又は(公知の)誘導体を包含する。上記の内、特にシクロホスファミド、パクリタキセル、ドキセタキセル、ビノレルビンが好ましく用いられる。
あるいは、本発明の抗体には、文献等で公知の、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153SM、212Bi、32P、175Lu、176Luなどの放射性同位体を結合することも可能である。放射性同位体は、腫瘍の治療や診断のために有効なものが望ましい。
本発明の抗体は、CAPRIN−1と免疫学的反応性を有する抗体、あるいは、CAPRIN−1を特異的に認識する抗体、あるいは、CAPRIN−1と特異的に結合する抗体であって、癌に対する細胞障害活性、又は腫瘍増殖抑制作用、を示す抗体である。該抗体は、それを投与する対象動物において拒絶反応がほとんど又はまったく回避されるような構造をもつ抗体であるべきである。そのよう抗体としては、例えば対象動物がヒトである場合、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体(例えばヒト−マウスキメラ抗体)、単鎖抗体、二重特異性抗体などが挙げられる。これらの抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域がヒト抗体由来のものであるか、あるいは、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来の相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)とヒト抗体由来のフレームワーク領域からなるものであるか、あるいは、重鎖及び軽鎖の可変領域が非ヒト動物抗体由来のものであり、かつ、重鎖及び軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のものである組換え型抗体である。好ましい抗体は、前2つの抗体である。
これらの組換え型抗体は、次のようにして作製することができる。ハイブリドーマなどの抗体産生細胞からヒトCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、ラットモノクローナル抗体、ウサギモノクローナル抗体、ニワトリモノクローナル抗体など)をコードするDNAをクローニングし、これを鋳型にして該抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAをRT−PCR法等により作製し、Kabat EU numbering system(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5thEd. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991))に基づいて軽鎖及び重鎖の各可変領域の配列又は各CDR1、CDR2、CDR3の配列を決定する。
さらに、これらの各可変領域をコードするDNA又は各CDRをコードするDNAを、遺伝子組換え技術(Sambrookら,Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))又はDNA合成機を用いて作製する。ここで、上記ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、ヒト抗体産生動物(例えば、マウス)にヒトCAPRIN−1を免疫したのち、該免疫動物から切除した脾細胞とミエローマ細胞とを融合させることによって作製することができる。これとは別に、必要に応じて、遺伝子組換え技術又はDNA合成機を用いてヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域及び定常領域をコードするDNAを作製する。
ヒト化抗体の場合には、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNA中のCDRコーディング配列を、それらに対応する、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体のCDRコーディング配列と置換したDNAを作製し、それによって得られたDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、ヒト化抗体をコードするDNAを作製することができる。
キメラ抗体の場合には、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体の軽鎖又は重鎖の可変領域をコードするDNAをそれぞれ、ヒト抗体由来の軽鎖又は重鎖の定常領域をコードするDNAと連結することによって、キメラ抗体をコードするDNAを作製することができる。
単鎖抗体の場合には、この抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをリンカーを介して直線状に連結された抗体であり、重鎖可変領域をコードするDNA、リンカーをコードするDNA、及び軽鎖可変領域をコードするDNAを結合することによって単鎖抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、CDRのみヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体のCDRによって置換されたヒト抗体由来のものである。また、リンカーは、12〜19アミノ酸からなり、例えば15アミノ酸の(GS)(G. −B. Kimら,Protein Engineering Design and Selection 2007, 20(9): 425−432)が挙げられる。
二重特異性抗体(diabody)の場合には、この抗体は2つの異なるエピトープと特異的に結合可能な抗体であり、例えば重鎖可変領域AをコードするDNA、軽鎖可変領域BをコードするDNA、重鎖可変領域BをコードするDNA、及び軽鎖可変領域AをコードするDNAをこの順序で結合する(ただし、軽鎖可変領域BをコードするDNAと重鎖可変領域BをコードするDNAとは上記のようなリンカーをコードするDNAを介して結合される。)ことによって二重特異性抗体をコードするDNAを作製することができる。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、ヒト抗体由来のものであるか、あるいは、CDRのみヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ニワトリなど)由来の抗体のCDRによって置換されたヒト抗体由来のものである。
上記のようにして作製された組換えDNAを、1つ又は複数の適当なベクターに組み込み、これを宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞など)に導入し、(共)発現させることによって組換え型抗体を作製することができる(P.J. Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P. Shepherd and C. Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS; J.W. Goding., Monoclonal Antibodies: principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。
上記の方法によって作製される本発明の抗体は、例えば後述の実施例で取得された以下の(a)、(b)または(c)の抗体が挙げられる。
(a)配列番号40、41及び42を含む重鎖可変領域と配列番号48、49及び50を含む軽鎖可変領域とを含む抗体(例えば、配列番号43の重鎖可変領域及び配列番号51の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
(b)配列番号44、45及び46を含む重鎖可変領域と配列番号48、49及び50を含む軽鎖可変領域とを含む抗体(例えば、配列番号47の重鎖可変領域及び配列番号51の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
(c)配列番号60、61及び62を含む重鎖可変領域と配列番号64、65及び66を含む軽鎖可変領域とを含む抗体(例えば、配列番号63の重鎖可変領域及び配列番号67の軽鎖可変領域で構成される抗体)。
ここで、配列番号40、41及び42、配列番号44、45及び46、配列番号60、61及び62に示すアミノ酸配列は、マウス抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3であり、また、配列番号48、49及び50、配列番号64、65及び66に示すアミノ酸配列はそれぞれ、マウス抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3である。
また、本発明のヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体は、例えば以下の抗体である(抗体(a)で例示する)。
(i)重鎖の可変領域が配列番号40、41及び42のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の可変領域が配列番号48、49及び50のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含む抗体(好ましくは重鎖可変領域に配列番号43のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖可変領域に配列番号51のアミノ酸配列を含む抗体)。
(ii)重鎖の可変領域が配列番号40、41及び42のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含み、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号48、49及び50のアミノ酸配列及びヒト抗体由来のフレームワーク領域のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体(好ましくは重鎖の可変領域が配列番号43のアミノ酸配列を含み、かつ、重鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含む、並びに、軽鎖の可変領域が配列番号51のアミノ酸配列を含み、かつ、軽鎖の定常領域がヒト抗体由来のアミノ酸配列を含んでなる抗体)。
なお、ヒト抗体重鎖及び軽鎖の定常領域及び可変領域の配列は、例えばNCBI(米国:GenBank、UniGeneなど)から入手可能であり、例えばヒトIgG1重鎖定常領域については登録番号J00228、ヒトIgG2重鎖定常領域については登録番号J00230、ヒトIgG3重鎖定常領域については登録番号X03604、ヒトIgG4重鎖定常領域については登録番号K01316、ヒト軽鎖κ定常領域については登録番号V00557、X64135、X64133など、ヒト軽鎖λ定常領域については登録番号X64132、X64134などの配列を参照することができる。
上記抗体は、好ましくは、細胞障害活性を有しており、これによって抗腫瘍効果を発揮することができる。
また、上記抗体における重鎖及び軽鎖の可変領域やCDRの特定の配列は、単に例示を目的としたものであり、特定の配列に限定されないことは明らかである。ヒトCAPRIN−1に対する別のヒト抗体又は非ヒト動物抗体(例えばマウス抗体)を産生しうるハイブリドーマを作製し、ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を回収し、ヒトCAPRIN−1との免疫学的結合性及び細胞障害活性を指標として目的の抗体であるか否かを判定する。それによって目的のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを識別したのち、上記のとおり、該ハイブリドーマから目的の抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを作製し配列決定し、該DNAを別の抗体の作製のために利用する。
さらに上記抗体は、CAPRIN−1を特異的に認識するという特異性を有する限り、上記(a)から(c)の各抗体の特にフレームワーク領域の配列及び/又は定常領域の配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加があってもよい。ここで数個とは、好ましくは2〜5個、より好ましくは2個又は3個を意味する。
本発明はさらに、本発明の上記抗体をコードするDNA、あるいは、上記抗体の重鎖又は軽鎖をコードするDNA、あるいは、上記抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域をコードするDNAも提供する。そのようなDNAは、例えば抗体(a)の場合、配列番号40、41及び42のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む重鎖可変領域をコードするDNA、配列番号48、49及び50のアミノ酸配列をコードする塩基配列含む軽鎖可変領域をコードするDNA、などを含む。
これらの配列のDNAによってコードされる相補性決定領域(CDR)は、抗体の特異性を決定する領域であるため、抗体のそれ以外の領域(すなわち、定常領域及びフレームワーク領域)をコードする配列は他の抗体由来の配列であってもよい。ここで他の抗体とはヒト以外の生物由来の抗体も含むが、副作用低減の観点からはヒト由来のものが好ましい。すなわち、上記のDNAでは、重鎖及び軽鎖の各フレームワーク領域及び各定常領域をコードする領域がヒト抗体由来の対応アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことが好ましい。
さらに、本発明の抗体をコードするDNAの別の例は、例えば抗体(a)の場合、配列番号43のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む重鎖可変領域をコードするDNA、軽鎖可変領域をコードする領域が配列番号51のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAなどである。ここで、配列番号43のアミノ酸配列をコードする塩基配列の例は、配列番号52の塩基配列である。また、配列番号51のアミノ酸配列をコードする塩基配列の例は、配列番号53の塩基配列である。これらのDNAでも、重鎖及び軽鎖の各定常領域をコードする領域がヒト抗体由来の対応アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことが好ましい。
これら抗体のDNAは、例えば上記の方法又は以下の方法で得ることができる。まず、本発明の抗体に関わるハイブリドーマから、市販のRNA抽出キットを用いて全RNAを調製し、ランダムプライマー等を用いて逆転写酵素によりcDNAを合成する。次いで既知のマウス抗体重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子の各可変領域において、それぞれ保存されている配列のオリゴヌクレオチドをプライマーに用いたPCR法によって、抗体をコードするcDNAを増幅させる。定常領域をコードする配列については、既知の配列をPCR法で増幅することによって得ることができる。DNAの塩基配列は、配列決定用プラスミド又はファージに組み込むなどして、常法により決定することができる。
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体によるCAPRIN−1発現癌細胞に対する抗腫瘍効果は、以下の機序により起こると考えられる。
CAPRIN−1発現細胞のエフェクター細胞抗体依存的細胞障害性(ADCC)、及びCAPRIN−1発現細胞の補体依存的細胞障害性(CDC)。
従って、本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体の活性評価は、以下実施例に具体的に示されるように、生体外でCAPRIN−1を発現する癌細胞に対して上記ADCC活性又はCDC活性を測定することで評価することができる。
本発明で用いられる抗CAPRIN−1抗体は、癌細胞上のCAPRIN−1タンパク質と結合し、上記活性によって、抗腫瘍作用を示すことから、癌の治療あるいは予防に有用であると考えられる。すなわち本発明は、抗CAPRIN−1抗体を有効成分とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。抗CAPRIN−1抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト化抗体にすることが好ましい。
なお、抗CAPRIN−1抗体と癌細胞表面上のCAPRIN−1タンパク質との結合親和性が高い程、抗CAPRIN−1抗体による、より強い抗腫瘍活性が得られる。従って、CAPRIN−1タンパク質と高い結合親和性を有する抗CAPRIN−1抗体を獲得できれば、より強い抗腫瘍効果が期待でき、癌の治療及び/または予防を目的とした医薬組成物として適応することが可能になる。高い結合親和性として、前述したように、結合定数(親和定数)Ka(kon/koff)が、好ましくは、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも10−1、少なくとも5×10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5×1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5×1011−1、少なくとも1012−1、あるいは、少なくとも1013−1であることが望ましい。
<抗原発現細胞への結合>
抗体がCAPRIN−1に結合する能力は、実施例で述べられるようなたとえばELISA、ウエスタンブロット法、免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析などを用いた結合アッセイを利用して特定することができる。
<免疫組織化学染色>
CAPRIN−1を認識する抗体は、当業者に周知の方法での免疫組織化学により、外科手術の間に患者から得た組織や、自然にまたはトランスフェクション後にCAPRIN−1を発現する細胞系を接種した異種移植組織を担持する動物から得た組織から、パラホルムアルデヒドまたはアセトン固定した凍結切片またはパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋した組織切片を使用して、CAPRIN−1との反応性に関して試験することができる。
免疫組織化学染色のため、CAPRIN−1に対して反応性のある抗体を、様々な方法で染色させることができる。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウス抗体やヤギ抗ニワトリ抗体を反応させることにより、可視化することができる。
<医薬組成物>
本発明の癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物の標的は、CAPRIN−1遺伝子を発現する癌(細胞)であれば特に限定されない。
本明細書で使用される「腫瘍」及び「癌」という用語は、悪性新生物を意味し、互換的に使用される。
本発明において対象となる癌としては、配列番号2〜30のうち偶数の配列番号のアミノ酸配列を有するCAPRIN−1タンパク質をコードする遺伝子を発現している癌であり、好ましくは、乳癌、脳腫瘍、白血病、肺癌、リンパ腫、肥満細胞腫、腎癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌及び線維肉腫である。
これらの特定の癌には、例えば、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、肺腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、神経上皮組織性腫瘍である神経膠腫、脳室上衣腫、神経細胞性腫瘍、胎児型の神経外胚葉性腫瘍、神経鞘腫、神経線維腫、髄膜腫、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、盲腸癌、上行結腸癌、下行結腸癌、横行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌、卵巣上皮癌、胚細胞腫瘍、間質細胞腫瘍が包含されるが、これらに限定されない。
また、対象となる好ましい被験者は、哺乳動物であり、例えば霊長類、ペット動物、家畜類、競技用動物などを含む哺乳動物であり、特にヒト、イヌ及びネコが好ましい。
本発明で用いられる抗体を医薬組成物として用いる場合には、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−60と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
投与は、経口又は非経口であり、好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身又は局部的に投与することができる。
また、患者の年齢、体重、性別、症状などにより適宜投与方法を選択することができる。抗体又は抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重、年齢、性別、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
本発明の抗体又はそのフラグメントを含む上記の医薬組成物を被験者に投与することによって癌、好ましくは、乳癌、脳腫瘍、白血病、肺癌、リンパ腫、肥満細胞腫、腎癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、胃癌及び大腸癌を治療及び/又は予防することができる。
さらに、本発明の医薬組成物を、上で例示したような抗腫瘍剤または抗腫瘍剤を含む医薬組成物と組み合わせて、被験者に併用投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法も本発明に包含される。本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤は、同時に、あるいは、別々に被験者に投与されうる。別々に投与する場合には、いずれの医薬組成物が先であっても又は後であってもよく、それらの投与間隔、投与量、投与経路及び投与回数は、専門医によって適宜選択されうる。同時に投与する別の医薬剤型には、例えば、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤を、薬理学上許容される担体(もしくは媒体)中で混合し製剤化して得られる医薬組成物も包含されるものとする。また、抗腫瘍剤を含有する上記医薬組成物及び剤型のいずれに対しても、本発明の抗体を含有する医薬組成物及び剤型についての処方、製剤化、投与経路、用量、癌などの説明を適用しうる。
したがって、本発明は、本発明の医薬組成物と、上で例示したような抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含む、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品も提供する。また、本発明は、本発明の抗体又はそのフラグメントと抗腫瘍剤とを、薬理学上許容される担体とともに含む、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物も提供する。
<ポリペプチド及びDNA>
本発明は更に、上記抗体(a)、(b)または(c)に関わる以下のポリペプチド及びDNAも提供する。
(i)配列番号43、配列番号47及び配列番号63のアミノ酸配列を含むポリペプチド、並びに該ポリペプチドをコードするDNAであって配列番号52、配列番号70及び配列番号68の塩基配列を含むDNA。
(ii)配列番号51及び配列番号67のアミノ酸配列を含むポリペプチド、並びに該ポリペプチドをコードするDNAであって配列番号53及び配列番号69の塩基配列を含むDNA。
(iii)配列番号40、41及び42、配列番号44、45及び46、配列番号60、61及び62に示すアミノ酸配列からなる群から選択される、重鎖CDRポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA。
(iv)配列番号48、49及び50、配列番号64、65及び66に示すアミノ酸配列から選択される、軽鎖CDRポリペプチド、及び該ポリペプチドをコードするDNA。
これらのポリペプチド及びDNAは、上記のとおり、遺伝子組換え技術を用いて作製することができる。
<本発明の要約>
上で説明した本発明を以下に要約する。
(1)配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、を有する配列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるCAPRIN−1の部分ポリペプチドと免疫学的反応性を有する抗体又はそのフラグメントを有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
(2)前記癌が乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、肥満細胞腫、腎癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、胃癌もしくは大腸癌である、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)前記抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、上記(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)配列番号37で表されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、を有するポリペプチドと免疫学的反応性を有する抗体。
(6)CAPRIN−1タンパク質を発現する癌細胞に対し細胞障害活性を有する、上記(5)に記載の抗体。
(7)配列番号40、41及び42を含む重鎖可変領域と配列番号48、49及び50を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体。
(8)配列番号44、45及び46を含む重鎖可変領域と配列番号48、49及び50を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体。
(9)配列番号60、61及び62を含む重鎖可変領域と配列番号64、65及び66を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体。
(10)ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体である、上記(5)〜(9)のいずれかに記載の抗体。
(11)上記(5)〜(10)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメントを有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
(12)前記癌が乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、肥満細胞腫、腎癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、胃癌もしくは大腸癌である、上記(11)に記載の医薬組成物。
(13)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物あるいは上記(11)又は(12)に記載の医薬組成物と、抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含んでなる、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品。
(14)上記(5)〜(10)のいずれかに記載の抗体又はそのフラグメント、あるいは上記(11)又は(12)に記載の医薬組成物を、被験者に投与することを含む、癌の治療及び/又は予防方法。
(15)被験者において上記(13)に記載の組み合わせ医薬品の各医薬組成物を併用することを含む、癌の治療及び/又は予防方法。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例によって制限されないものとする。
実施例1 SEREX法による新規癌抗原タンパクの同定
(1)cDNAライブラリーの作製
健常な犬の精巣組織から酸グアニジウム−フェノール−クロロホルム法(Acid guanidium−Phenol−Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex−dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリーを合成した。cDNAファージライブラリーの作製にはcDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA Synthesis Kit, ZAP−cDNA GigapackIII Gold Clonig Kit (STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリーを作製した。作製したcDNAファージライブラリーのサイズは7.73×10pfu/mlであった。
(2)血清によるcDNAライブラリーのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣cDNAファージライブラリーを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2210クローンとなるように宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthcare Bio−Scinece社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris−HCl, 150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Expressファージを宿主大腸菌(XL1−Blure MRF’)に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCOpH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS−カラム(GE Healthcare Bio−Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌及びファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS−T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG−h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO、50mM Tris−HCl、0.01%ゼラチン、pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、5個の陽性クローンを単離した。
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した5個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1−Blue MRF’)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液250μlさらにExAssist helper phage(STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心分離を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
精製したプラスミドは、配列番号31に記載のT3プライマーと配列番号32に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号5,7,9,11,13に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列(配列番号6,8,10,12,14)を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた5個の遺伝子全てがCAPRIN−1をコードする遺伝子であることが判明した。5個の遺伝子間の配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において塩基配列100%、アミノ酸配列99%であった。この遺伝子のヒト相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列98%であった。ヒト相同因子の塩基配列を配列番号1,3に、アミノ酸配列を配列番号2,4に示す。また、取得したイヌ遺伝子のウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列97%であった。ウシ相同因子の塩基配列を配列番号15に、アミノ酸配列を配列番号16に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウシ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列94%、アミノ酸配列93〜97%であった。また、取得したイヌ遺伝子のウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列97%であった。ウマ相同因子の塩基配列を配列番号17に、アミノ酸配列を配列番号18に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とウマ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列93%、アミノ酸配列96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列87〜89%、アミノ酸配列95〜97%であった。マウス相同因子の塩基配列を配列番号19,21,23,25,27に、アミノ酸配列を配列番号20,22,24,26,28に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とマウス相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列89〜91%、アミノ酸配列95〜96%であった。また、取得したイヌ遺伝子のニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列82%、アミノ酸配列87%であった。ニワトリ相同因子の塩基配列を配列番号29に、アミノ酸配列を配列番号30に示す。なお、ヒト相同因子をコードする遺伝子とニワトリ相同因子をコードする遺伝子との配列同一性は、タンパク質に翻訳される領域において、塩基配列81〜82%、アミノ酸配列86%であった。
(4)各組織での遺伝子発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌ及びヒトの正常組織及び各種細胞株における発現をRT−PCR法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50〜100mg及び各細胞株5〜10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号33及び34に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、94℃−30秒、60℃−30秒、72℃−30秒のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号5の塩基配列(イヌCAPRIN−1遺伝子)中の206番〜632番及び配列番号1の塩基配列(ヒトCAPRIN−1遺伝子)中の698番〜1124番塩基の領域を増幅するものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号35及び36に記載)も同時に用いた。その結果、図1に示すように、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌及び腺癌組織で発現が見られた。さらに、取得した遺伝子のヒト相同因子の発現を併せて確認したところ、イヌCAPRIN−1遺伝子と同様、正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、癌細胞では乳癌、脳腫瘍、白血病、肺癌、食道癌細胞株など、多種類の癌細胞株で発現が検出され、特に多くの乳癌細胞株で発現が確認された。この結果から、CAPRIN−1は精巣以外の正常組織では発現が見られず、一方、多くの癌細胞で発現しており、特に乳癌細胞株に発現していることが確認された。
なお、図1中、縦軸の参照番号1は、上記で同定した遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
(5)CAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体の作製
CAPRIN−1に結合する抗体を得るために、配列番号37で示されるCAPRIN−1由来ペプチドを合成した。このペプチド1mgを抗原として、等容量の不完全フロイントアジュバント(IFA)溶液と混合し、これを2週間毎に4回、ウサギの皮下に投与を行った。その後血液を採取し、ポリクローナル抗体を含む抗血清を得た。さらにこの抗血清をプロテインG担体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて精製し、CAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体を得た。また、抗原を投与していないウサギの血清を上記と同様にしてプロテインG担体を用いて精製したものをコントロール抗体とした。
(6)癌細胞上での抗原タンパクの発現解析
次にCAPRIN−1遺伝子の発現が多く確認された乳癌細胞株7種(MDA−MB−157,T47D,MRK−nu−1,MDA−MB−231V,BT20,SK−BR−3,MDA−MB−231T)について、その細胞表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現しているかどうかを調べた。上記で遺伝子発現が認められた各ヒト乳癌細胞株それぞれ10細胞を1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心分離した。これに上記(5)で調製したCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体2μg(5μl)を添加し、さらに95μlの0.1%牛胎児血清を含むPBSで懸濁後、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、5μlのFITC標識ヤギ抗ラビットIgG抗体(サンタクルズ社製)及び95μlの0.1%牛胎児血清(FBS)を含むPBSで懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、CAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体の代わりに上記(5)で調製したコントロール抗体を用いて行い、コントロールとした。その結果、抗ヒトCAPRIN−1抗体を添加された細胞は、コントロールに比べて、いずれも蛍光強度が30%以上増強した。具体的には、MDA−MB−231Vが187%、SK−BR−3が124%の蛍光強度の増強を示した。このことから、上記ヒト癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパクが発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗ヒトCAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
また、同様の上記手法を用いて、腎癌細胞株3種(Caki−1,Caki−2,A498)、卵巣癌細胞株(SKOV3)、肺癌細胞株(QG56)、前立腺癌細胞株(PC3)、子宮頸癌細胞株(Hela)、線維肉腫細胞株(HT1080)、脳腫瘍細胞株2種(T98G,U87MG)、マウス大腸癌細胞株2種(CT26,colon26)、マウス乳癌細胞株1種(4T1)、マウスメラノーマ細胞株1種(B16)、マウス神経芽腫細胞株2種(N1E−115,Neuro2a)についてもCAPRIN−1の発現を解析したところ、いずれの細胞株においてもCAPRIN−1の発現が確認された。なお、本結果は、実施例3で取得された配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体#1)または配列番号47の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体#2)または配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体#3)を用いた場合も同様であった。
(7)免疫組織化学染色
(7)−1 マウス及びイヌ正常組織におけるCAPRIN−1の発現
マウス(Balb/c、雌)及びイヌ(ビーグル犬、雌)をエーテル麻酔下及びケタミン/イソフルラン麻酔下で放血させ、開腹後、各臓器(胃、肝臓、眼球、胸腺、筋肉、骨髄、子宮、小腸、食道、心臓、腎臓、唾液腺、大腸、乳腺、脳、肺、皮膚、副腎、卵巣、膵臓、脾臓、膀胱)をそれぞれPBSの入った10cmディッシュに移した。PBS中で各臓器を切り開き、4%paraformaldehyde(PFA)を含む0.1M リン酸緩衝液(pH7.4)で一晩還流固定した。還流液を捨て、PBSで各臓器の組織表面をすすぎ、10%ショ糖を含むPBS溶液を50ml容の遠心チューブに入れ、その中に各組織を入れて4℃で2時間ローターを用いて振とうした。20%ショ糖を含むPBS溶液に入れ替え、4℃で組織が沈むまで静置後、30%ショ糖を含むPBS溶液に入れ替え、4℃で組織が沈むまで静置した。組織を取り出し、必要な部分を手術用メスで切りだした。次に、OCTコンパウンド(Tissue Tek社製)をかけて組織表面になじませた後、クライオモルドに組織を配置した。ドライアイスの上にクライオモルドをおいて急速凍結させた後、クライオスタット(LEICA社製)を用いて10〜20μmに薄切し、スライドガラスごとヘアードライアーで30分間風乾し、薄切組織がのったスライドガラス作製した。次にPBS−T(0.05% Tween20を含む生理食塩水)を満たした染色瓶に入れて5分ごとにPBS−Tを入れ替える操作を3回行った。切片周囲の余分な水分をキムワイプでふき取り、DAKOPEN(DAKO社製)で囲んだ後、ブロッキング液として、マウス組織はMOMマウスIgブロッキング試薬(VECTASTAIN社製)を、イヌ組織は10%FBSを含むPBS−T溶液をそれぞれのせ、モイストチャンバー上で室温で1時間静置した。次に、上記(5)で作製した癌細胞表面に反応する、CAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体をブロッキング液で10μg/mlに調製した溶液をのせ、モイストチャンバー内で4℃下で一晩静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、ブロッキング液で250倍に希釈したMOMビオチン標識抗IgG抗体(VECTASTAIN社製)をのせ、モイストチャンバー内で室温で1時間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、アビジンービオチンABC試薬(VECTASTAIN社製)をのせ、モイストチャンバー内で室温で5分間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、DAB発色液(DAB 10mg+30%H10μl/0.05M Tris−HCl(pH7.6)50ml)をのせ、モイストチャンバー内で室温で30分間静置した。蒸留水でリンスし、ヘマトキシリン試薬(DAKO社製)を載せて室温で1分間静置後、蒸留水でリンスした。70%、80%、90%、95%、100%の各エタノール溶液に順番に1分間ずつ入れた後、キシレン中で一晩静置した。スライドガラスを取り出し、Glycergel Mounting Medium(DAKO社製)で封入後、観察を行った。その結果、CAPRIN−1は、唾液腺、腎臓、結腸、胃の各組織において細胞内で僅かに発現が認められたが、細胞表面での発現は認められず、また、その他の臓器由来の組織では全く発現が認められなかった。なお、本結果は、実施例3で取得された配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体#1)または配列番号47の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体#2)または配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域を有するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体#3)を用いた場合も同様であった。
(7)−2 イヌ乳癌組織におけるCAPRIN−1の発現
病理診断で悪性乳癌と診断されたイヌの凍結された乳癌組織108検体を用いて、上述と同様の方法で凍結切片スライド作製及び上記(5)で作製したCAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は108検体中100検体(92.5%)で発現が確認され、特に異型度の高い癌細胞表面に強く発現していた。なお、本結果は、実施例3で取得されたモノクローナル抗体#1、#2または#3を用いた場合も同様であった。
(7)−3 ヒト乳癌組織におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト乳癌組織アレイ(BIOMAX社製)の乳癌組織188検体を用いて、免疫組織化学染色を行った。ヒト乳癌組織アレイを60℃で3時間処理後、キシレンを満たした染色瓶に入れて5分ごとにキシレンを入れ替える操作を3回行った。次にキシレンの代わりにエタノール及びPBS−Tで同様の操作を行った。0.05% Tween20を含む10mM クエン酸緩衝液(pH6.0)を満たした染色瓶にヒト乳癌組織アレイを入れ、125℃で5分間処理後、室温で40分以上静置した。切片周囲の余分な水分をキムワイプでふき取り、DAKOPENで囲み、Peroxidase Block(DAKO社製)を適量滴下した。室温で5分間静置後、PBS−Tを満たした染色瓶に入れて5分ごとにPBS−Tを入れ替える操作を3回行った。ブロッキング液として、10%FBSを含むPBS−T溶液をのせ、モイストチャンバー内で室温で1時間静置した。次に上記(5)で作製したCAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体を5%FBSを含むPBS−T溶液で10μg/mlに調製した溶液をのせ、モイストチャンバー内で4℃で一晩静置し、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、Peroxidase Labelled Polymer Conjugated(DAKO社製)適量滴下し、モイストチャンバー内で室温で30分間静置した。PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、DAB発色液(DAKO社製)をのせ、室温で10分程度静置した後、発色液を捨て、PBS−Tで10分間3回洗浄を行った後、蒸留水でリンスし、70%、80%、90%、95%、100%の各エタノール溶液に順番に1分間ずつ入れた後、キシレン中で一晩静置した。スライドガラスを取り出し、Glycergel Mounting Medium(DAKO社製)で封入後、観察を行った。その結果、CAPRIN−1は全乳癌組織188検体の内、138検体(73%)で強い発現が認められた。なお、本結果は、実施例3で取得されたモノクローナル抗体#1、#2または#3を用いた場合も同様であった。
(7)−4 ヒト悪性脳腫瘍におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト悪性脳腫瘍組織アレイ(BIOMAX社製)の悪性脳腫瘍組織247検体を用いて、上述(7)−3と同様の方法で上記(5)で作製したCAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は全悪性脳腫瘍組織247検体の内、227検体(92%)で強い発現が認められた。なお、本結果は、実施例3で取得されたモノクローナル抗体#1、#2または#3を用いた場合も同様であった。
(7)−5 ヒト乳癌転移リンパ節におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト乳癌転移リンパ節組織アレイ(BIOMAX社製)の乳癌転移リンパ節組織150検体を用いて、上述(7)−3と同様の方法で上記(5)で作製したCAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は全乳癌転移リンパ節組織150検体の内、136検体(90%)で強い発現が認められた。すなわち、乳癌から転移した癌組織においてもCAPRIN−1は強く発現することが判った。なお、本結果は、実施例3で取得されたモノクローナル抗体#1、#2または#3を用いた場合も同様であった。
(7)−6 ヒト各種癌組織におけるCAPRIN−1の発現
パラフィン包埋されたヒト各種癌組織アレイ(BIOMAX社製)の検体を用いて、上述と同様の方法で上記(5)で作製したCAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、CAPRIN−1は食道癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、腎癌、膀胱癌及び子宮頸癌で強い発現が認められた。なお、本結果は、実施例3で取得されたモノクローナル抗体#1、#2または#3を用いた場合も同様であった。
実施例2 ヒトCAPRIN−1の作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例1で取得した配列番号1の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT−PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、SacI及びXhoI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号38及び39に記載)を各0.4μM, 0.2mM dNTP, 1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、98℃−10秒、68℃−2.5分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号2のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて約2.1kbpのDNA断片を精製した。
精製したDNA断片をクローニングベクターPCR−Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをSacI及びXhoI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、SacI、XhoI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30a(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号1の遺伝子を発現するそれぞれの組換え大腸菌を30μg/ml カナマイシン含有LB培地にて600nmでの吸光度が0.7付近になるまで37℃で培養後、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド終濃度が1mMとなるよう添加し、37℃で4時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体ペレットをリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
この菌体をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を6000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
可溶性画分を、定法に従って調整したニッケルキレートカラム(担体:Chelating Sepharose(商標)Fast Flow(GE HealthCare社)、カラム容量5ml、平衡化緩衝液50mM塩酸緩衝液(pH8.0))に添加した。未吸着画分をカラム容量の10倍量の50mM塩酸緩衝液(pH8.0)と20mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、100mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて6ベッド溶出した。クマシー染色によって目的タンパク質の溶出を確認した100mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)溶出画分を強陰イオン交換カラム(担体:Q Sepharose(商標)Fast Flow(GE HealthCare社)、カラム容量5ml、平衡化緩衝液としての20mM リン酸緩衝液(pH8.0))に添加した。未吸着画分をカラム容量の10倍量の20mMリン酸緩衝液(pH7.0)と200mM塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、400mM塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて5ベッド溶出を行い、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する各タンパク質の精製画分を得た。
上記方法によって得られた各精製標品のうち、200μlを1mlの反応用緩衝液(20mM Tris−Hcl, 50mM NaCl, 2mM CaClpH7.4)に分注を行った後、エンテロキナーゼ(Novagen社製)2μl添加した後、室温にて一晩静置、反応を行い、Hisタグを切断し、Enterokinase Cleavage Capture Kit(Novagen社製)を用いて添付プロトコールに従って精製を行った。次に、上記方法によって得られた精製標品1.2mlを、限外ろ過NANOSEP 10K OMEGA(PALL社製)を用いて、生理用リン酸緩衝液(日水製薬社製)置換した後、HTタフリンアクロディスク0.22μm(PALL社製)にて無菌ろ過を行い、これを以下の実験に用いた。
実施例3 CAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体の作製
実施例2で調製した配列番号2に示される、抗原タンパク質(ヒトCAPRIN−1)100μgを等量のMPL+TDMアジュバント(シグマ社製)と混合し、これをマウス1匹当たりの抗原溶液とした。抗原溶液を6週齢のBalb/ccマウス(日本SLC社製)の腹腔内に投与後、1週間毎に7回投与を行い免疫を完了した。最後の免疫から3日後に摘出したそれぞれの脾臓を滅菌した2枚のスライドガラスに挟んで擦り潰し、PBS(−)(日水社製)を用いて洗浄し1500rpmで10分間遠心して上清を除去する操作を3回繰り返して脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞とマウスミエローマ細胞SP2/0(ATCCから購入)とを10:1の比率にて混和し、そこに37℃に加温した10%FBSを含むRPMI1640培地200μlとPEG1500(ベーリンガー社製)800μlを混和して調製したPEG溶液を加えて5分間静置して細胞融合を行った。1700rpmで5分間遠心し、上清を除去後、Gibco社製のHAT溶液を2%当量加えた15%FBSを含むRPMI1640培地(HAT選択培地)150mlで細胞を懸濁し、96穴プレート(ヌンク社製)の1ウェル当たり100μlずつ、プレート15枚に播種した。7日間、37℃、5% COの条件で培養することで、脾臓細胞とミエローマ細胞が融合したハイブリドーマを得た。
作製したハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例2で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% Bovine Serum Albumin(BSA)溶液(シグマ社製)を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(Invitrogen社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、吸光度値が高かった抗体を産生するハイブリドーマを複数個選抜した。
選抜したハイブリドーマを96穴プレート1ウェル当たりに0.5個となるようにプレートに添加し培養した。1週間後、ウェル中に単一のコロニーを形成しているハイブリドーマが観察された。それらウェルの細胞をさらに培養して、クローニングされたハイブリドーマが産生する抗体のCAPRIN−1タンパクに対する結合親和性を指標にハイブリドーマを選抜した。実施例3で調製したCAPRIN−1タンパク溶液1μg/mlを96穴プレート1ウェル当たりに100μl添加し、4℃にて18時間静置した。各ウェルをPBS−Tで3回洗浄後、0.5% BSA溶液を1ウェル当たり400μl添加して室温にて3時間静置した。溶液を除いて、1ウェル当たり400μlのPBS−Tでウェルを3回洗浄後、上記で得られたハイブリドーマの各培養上清を1ウェル当たり100μl添加し、室温にて2時間静置した。PBS−Tで各ウェルを3回洗浄後、PBSで5000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG(H+L)抗体(インビトロジェン社製)を1ウェル当たり100μl添加して室温にて1時間静置した。PBS−Tでウェルを3回洗浄した後、TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、CAPRIN−1タンパクに反応性を示すモノクローナル抗体を産生する50個のハイブリドーマ株を得た。
次にそれらモノクローナル抗体の内、CAPRIN−1が発現する乳癌細胞の細胞表面に反応性を示すものを選抜した。具体的には、10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−231Vを1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離し、これに上記各ハイブリドーマの培養上清100μlを添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG抗体(インビトロジェン社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。一方、上記と同様の操作を、抗体の代わりに何も処理していない6週齢のBalb/cマウスの血清をハイブリドーマ培養用培地で500倍希釈したものを用いて行い、コントロールとした。その結果、コントロールに比べて蛍光強度が強い、すなわち、乳癌細胞の細胞表面に反応するモノクローナル抗体3個(#1、#2、#3)を選抜した。
実施例4 選抜した抗体の特徴付け
(1)抗CAPRIN−1マウスモノクローナル抗体の可変領域遺伝子のクローニング
実施例3で選抜した3個のモノクローナル抗体をそれぞれ産生する各ハイブリドーマ株から、mRNAを抽出し、マウスFR1由来配列及びマウスFR4由来の配列に特異的なプライマーを使用したRT−PCR法により、全ての抗CAPRIN−1モノクローナル抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域の遺伝子を取得した。配列決定のために、それら遺伝子をpCR2.1ベクター(インビトロジェン社製)にクローニングした。
(2) RT−PCR
10個の各ハイブリドーマ株から、mRNA micro purification kit(GEヘルスケア社製)を用いてmRNAを調製し、SuperScriptII 1st strand synthesis kit(インビトロジェン社製)を用いて、得られたmRNAを逆転写してcDNAを合成した。これら操作は各キットの添付プロトコールに従って行った。
得られたcDNAを用いて、PCR法により抗体遺伝子の増幅を行った。VH領域の遺伝子取得のために、マウス重鎖FR1配列に特異的なプライマー(配列番号54)及びマウス重鎖FR4配列に特異的なプライマー(配列番号55)を使用した。またVL領域の遺伝子取得のために、マウス軽鎖FR1配列に特異的なプライマー(配列番号56)及びマウス軽鎖FR4に特異的なプライマー(配列番号57)を使用した。これらプライマーはJones, S.T. and Bending, M.M. Bio/Technology 9, 88−89 (1991)を参考に設計した。PCRは、Ex−taq(タカラバイオ社製)を用いた。10×EX Taq Buffer 5μl、dNTP Mixture(2.5mM)4μl、プライマー(1.0μM)各2μl、Ex Taq(5U/μl)0.25μlにcDNAサンプルを加え、滅菌水により総量50μlとした。94℃で2分処理後、変性94℃1分、アニーリング58℃30秒、伸長反応72℃1分の組み合わせで30サイクルの条件で行った。
(3) クローニング
上記で得られた各PCR産物を用いてアガロースゲルにて電気泳動を行い、VH領域及びVL領域それぞれのDNAバンドを切り出した。DNA断片はQIAquick Gel purification kit(キアゲン社製)を用いてその添付プロトコールに従って行った。精製した各DNAはTAクローニングキット(インビトロジェン社製)を用いてpCR2.1ベクターにクローニングした。連結したベクターをDH5aコンピテントセル(TOYOBO社製)に定法に従い形質転換を行った。各形質転換体それぞれ10クローンを培地(100μg/mlアンピシリン)で37℃一晩培養後、各プラスミドDNAをQiaspin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて精製した。
(4) 配列決定
上記で得られた各プラスミド中のVH領域及びVL領域の遺伝子配列解析は、M13フォワードプライマー(配列番号58)及びM13リバースプライマー(配列番号59)を用いて、蛍光シーケンサー(ABI社製DNAシーケンサー3130XL)により、ABI社製のビッグダイターミネーターVer3.1サイクルシーケンシングキットを用いて、その添付プロトコールに従い行った。その結果、各々の遺伝子配列が決定された(各々10クローンで一致)。
得られたモノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号52、配列番号70及び配列番号68に、並びにそのアミノ酸配列を配列番号43、配列番号47及び配列番号51に、軽鎖可変領域をコードする遺伝子配列を配列番号53及び配列番号69に、並びにそのアミノ酸配列を配列番号51及び配列番号67に示す。すなわち、モノクローナル抗体#1は配列番号43の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域から成り、#2は配列番号47の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域から成り、モノクローナル抗体#3は配列番号63の重鎖可変領域と配列番号67の軽鎖可変領域から成るものであった。
実施例5 抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1、#2及び#3が認識するCAPRIN−1エピトープの同定
実施例3で取得した、癌細胞の細胞表面に反応するCAPRIN−1に対するモノクローナル抗体#1ならびに#2を用いて、それらが認識するCAPRIN−1エピトープ領域の同定を行った。
ヒトCAPRIN−1タンパク質のアミノ酸配列中、12〜16アミノ酸から成る、93個の候補ペプチドを合成し、それぞれ1mg/mlの濃度になるようにDMSOで溶解した。各ペプチドを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中に30μg/mlの濃度になるように溶解し、96穴プレート(Nunc社製、製品番号:436006)の1穴あたり100μlずつ添加して4℃で一晩静置した。液を捨て、10mMエタノールアミン/0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(PH9.6)を1穴あたり200μlずつ添加し、室温で1時間静置した後、液を捨て、0.5% Tween20を含むPBS(PBST)にて2回洗浄することによって、各ペプチドが固相化されたプレートを作製した。
これに、実施例3で得られたマウスモノクローナル抗体(#1、#2、#3)を含む細胞培養上清を1穴あたり50μl添加し、室温で1時間振とうした後、液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。次に、マウスモノクローナル抗体にHRPが標識された抗マウスIgG(Invitrogen社製)抗体をPBSTにて3000〜4000倍希釈した2次抗体溶液を、それぞれ50μlずつ添加した後、液を除去し、PBSTにて6回洗浄を行った。
TMB基質溶液(Thermo社製)を1ウェル当たり100μl添加して15〜30分間静置して発色反応を行った。発色後、1規定硫酸を1ウェル当たり100μl添加して反応を停止させ吸光度計を用いて450nmと595nmの吸光度値を測定した。その結果、抗CAPRIN−1モノクローナル抗体#1、#2及び#3がいずれも認識するCAPRIN−1の部分配列として、配列番号37のアミノ酸配列を含むポリペプチドが同定された。
従って配列番号37のポリペプチドが抗CAPRIN−1抗体#1、#2ならびに#3のエピトープ領域を含んでいることが判った。
実施例6 抗CAPRIN−1抗体#1、#2及び#3を用いた各種癌細胞表面でのCAPRIN−1の発現
次にCAPRIN−1遺伝子の発現が確認された乳癌細胞株7種(MDA−MB−157,T47D,MRK−nu−1,MDA−MB−231V,BT20,SK−BR−3,DA−MB−231T)及びその他の乳癌細胞株3種(MDA−MB−231C,MCF−7,ZR75−1)、グリオーマ細胞株5種(T98G,SNB19,U251,U87MG,U373)、腎臓癌細胞株4種(Caki−1,Caki−2,A498,ACHN)、胃癌細胞株2種(MKN28,MKN45)、大腸癌細胞株5種(HT29,LoVo,Caco2,SW480,HCT116)、肺癌細胞株3種(A549、QG56、PC8)、白血病細胞株4種(AML5,Namalwa、BDCM、RPI1788)、子宮頸癌細胞株1種(SW756)、膀胱癌細胞株1種(T24)、食道癌細胞株1種(KYSE180)及びリンパ腫細胞株1種(Ramos)について、実施例3で得られた#1、#2及び3を含む培養上清を用いて、各細胞の細胞表面上でのCAPRIN−1タンパク質の発現を調べた。各細胞株それぞれ10細胞を1.5ml容のミクロ遠心チューブにて遠心分離した。抗体#1、#2及び#3をそれぞれ含む各細胞培養上清(100μl)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄した後、0.1%FBSを含むPBSで500倍希釈したFITC標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(SouthernBiotech社製)を添加し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン株式会社のFACSキャリバーにて蛍光強度を測定した。陰性コントロールには二次抗体のみを反応したものを用いた。その結果、抗体#1、#2及び#3を添加した細胞は、陰性コントロールに比べて、いずれも蛍光強度が20%以上強かった。このことから、上記ヒト癌細胞株の細胞膜表面上にCAPRIN−1タンパク質が発現していることが確認された。なお、上記蛍光強度の増強率は、各細胞における平均蛍光強度(MFI値)の増加率にて表され、以下の計算式により算出した。
平均蛍光強度の増加率(蛍光強度の増強率)(%)=((抗ヒトCAPRIN−1抗体を反応させた細胞のMFI値)−(コントロールMFI値))÷(コントロールMFI値)×100。
実施例7 CAPRIN−1に対する抗体の癌細胞に対する抗腫瘍効果(ADCC活性およびCDC活性)
CAPRIN−1に対する抗体が、CAPRIN−1を発現する癌細胞を障害することができるかどうかを、先ずADCC活性を測定することによって検討した。実施例1で調製したヒトCAPRIN−1由来ペプチド(配列番号37)に対するポリクローナル抗体を用いて評価を行った。CAPRIN−1の発現が確認されているヒト乳癌細胞株、MDA−MB−157を10個50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10% 牛胎児血清を含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり10個ずつ添加した。これに、上記ヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体を1μg添加し、さらにウサギの末梢血から分離したリンパ球を2×10個ずつ添加して、37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた癌細胞から放出される培養上清中のクロミウム(Cr)51の量を測定し、ヒトCAPRIN−1由来ペプチドに対するポリクローナル抗体による癌細胞に対するADCC活性を算出した。その結果、MDA−MB−157に対して17.8%の細胞障害活性が確認された(図2参照)。一方、抗原が免疫されていないウサギの末梢血から調製したコントロール抗体(実施例1(5))を用いて同様の操作を行った場合、及び抗体を添加しなかった場合には、活性はほとんど認められなかった(図2参照)。従って、CAPRIN−1に対する抗体により、CAPRIN−1を発現する癌細胞を障害することができることが明らかになった。
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体、ウサギリンパ球及びクロミウム51を取り込ませた10個の各癌細胞株を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出した癌細胞株に対する細胞障害活性を示した結果である。
式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及びウサギリンパ球を加えた際の癌細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
さらに、実施例3で得た、CAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体#1、#2ならびに#3の癌細胞に対する細胞障害活性を評価した。#1、#2ならびに#3を産生する各細胞培養上清をHitrap ProteinA SepharoseFF(GEヘルスケア社製)を用いて精製し、PBS(−)に置換して0.22μmのフィルター(ミリポア社製)で濾過したものを活性測定用の抗体として用いた。10個のヒト乳癌細胞株MDA−MB−157を50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした。その後10%FBSを含むRPMI1640培地で3回洗浄し、96穴V底プレート1穴あたり10個ずつ添加して標的細胞とした。これに、上記精製抗体をそれぞれ1μg添加し、さらに6週齢のBALB/Cマウス(日本SLC社製)の脾臓から定法に従って単離したマウス脾臓細胞を5×10個添加して、37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、抗CAPRIN−1抗体による癌細胞に対する細胞障害活性を算出した。陰性コントロールには抗体の代わりにPBSを添加したもの、アイソタイプコントロール抗体を添加したものを用いた。その結果、#1、#2及び#3抗体は、MDA−MB−157に対して、いずれの抗体も26%以上の細胞障害活性を示した。一方、陰性コントロールであるPBSを添加したもの、アイソタイプコントロール抗体を添加したものの活性は、それぞれ2.0%、2.8%であった。同様にして、他の癌細胞、グリオーマ細胞株T98G、U373、肺癌細胞株A549、QG56、腎臓癌細胞株Caki−1、ACHN、子宮頸癌細胞株SW756、膀胱癌細胞株T24、食道癌細胞株KYSE180、胃癌細胞株MKN28、MKN45、大腸癌細胞株SW480、白血病細胞株AML5及びリンパ腫細胞株Ramosに対する抗体#1、#2及び#3の細胞障害活性を調べたところ、抗体#1の活性は、T98Gは11.2%(アイソタイプコントロールは2.5%)、U373は13.3%(アイソタイプコントロールは4.3%)、A549は20.8%(アイソタイプコントロールは4.5%)、QG56は21.3%(アイソタイプコントロールは5.3%)、Caki−1は15.9%(アイソタイプコントロールは4.5%)、ACHNは14.7%(アイソタイプコントロールは3.8%)、SW756は13.5%(アイソタイプコントロールは5.1%)、T24は11.6%(アイソタイプコントロールは3.8%)、KYSE180は16.2%(アイソタイプコントロールは3.7%)、MKN28は12.8%(アイソタイプコントロールは4.2%)、MKN45は13.4%(アイソタイプコントロールは4.6%)、SW480は12.4%(アイソタイプコントロールは6.4%)、AML5は10.3%(アイソタイプコントロールは4.7%)、Ramosは7.8%(アイソタイプコントロールは2.6%)の活性を示した。また、抗体#2及び#3においても同様の結果を示した。以上の結果より、取得した抗CAPRIN−1抗体#1、#2及び#3は、ADCC活性によってCAPRIN−1を発現する癌細胞を障害することが示された。
以上の結果より、取得したCAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体#1、#2ならびに#3は、ADCC活性によってCAPRIN−1を発現する癌細胞を障害することが示された。
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体、マウス脾臓細胞及びクロミウム51を取り込ませた10個の各癌細胞株を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出した癌細胞株に対する細胞障害活性を示した結果である。
式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及びマウス脾臓細胞を加えた際の癌細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
次に、取得したCAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体#1ならびに#2の癌細胞に対する細胞障害活性(CDC活性)を評価した。ウサギから採血した血液をエッペンドルフチューブに入れ、室温で60分間、静置した後3000rpmで5分間、遠心分離することで、CDC活性測定用の血清を調製した。ヒト乳癌細胞であるMDA−MB−231Vを10個を50ml容の遠心チューブに集め、100μCiのクロミウム51を加え37℃で2時間インキュベートした後、10%FBSを含むRPMI培地で3回洗浄した。その後上記で調製したウサギ血清を50%含むRPMI培地で懸濁し、96穴V底プレート1穴あたり10個ずつ添加した。これにマウスモノクローナル抗体#1ならびに#2をそれぞれ1μgずつ添加して、37℃、5%COの条件下で4時間培養した。培養後、障害を受けた腫瘍細胞から放出される培養上清中のクロミウム51の量を測定し、各抗体のMDA−MB−231Vに対するCDC活性を算出した。その結果、#1ならびに#2の抗体はともに、21%以上のCDC活性を示した。また、抗体を添加していない陰性コントロールの群では細胞障害活性はみられなかった。従って、#1ならびに#2の抗体はCDC活性によってもCAPRIN−1を発現する腫瘍細胞を障害することができることが明らかになった。
なお、細胞障害活性は、上記のように、本発明で用いられるCAPRIN−1に対する抗体、血清及びクロミウム51を取り込ませた10個の各癌細胞株を混合して4時間培養し、培養後培地に放出されたクロミウム51の量を測定して、以下計算式により算出した癌細胞株に対する細胞障害活性を示した結果である。
式:細胞障害活性(%)=CAPRIN−1に対する抗体及び血清を加えた際の癌細胞からのクロミウム51遊離量÷1N塩酸を加えた標的細胞からのクロミウム51遊離量×100。
次に、取得したCAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体#1及び#2の担癌マウス生体内における抗腫瘍効果を評価した。使用した抗体は前記と同様に、#1及び#2を産生する各細胞の培養上清をカラム精製したものを用いた。
CAPRIN−1を発現するマウス由来の癌細胞株を移植した担癌マウスを用いて、#1及び#2の抗体の抗腫瘍効果を検討した。30匹のBalb/cマウス(日本SLC社製)の背部皮下に、1匹あたり5×10個の4T1細胞(ATCCより購入)を移植し、腫瘍が直径5mm程度の大きさになるまで成長させた。その内、20匹の担癌マウスに対して、#1ならびに#2の抗体を1匹あたり200μg(200μl)ずつ、1抗体につき10匹に腹腔内投与した。その後、2日間計3回、同量の各抗体を各担癌マウスの腹腔に投与し、毎日腫瘍の大きさを計測し、抗腫瘍効果を観察した。一方、残り10匹の担癌マウスに対して、抗体の代わりにPBS(−)を投与し、これをコントロール群とした。なお、腫瘍の大きさは、長径×短径×短径×0.5の計算式を用いて、体積を算出した。
抗腫瘍効果の観察の結果、CAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体#1及び#2を投与した検討群は、抗体投与後16日目までには腫瘍はほぼ完全に退縮した。一方、PBS(−)を投与したコントロール群では、12日目にはおよそ820%にまで腫瘍が増大した。この結果から、取得したCAPRIN−1に対するマウスモノクローナル抗体#1ならびに#2は、CAPRIN−1を発現する癌細胞に対して、生体内で強い抗腫瘍効果を発揮することが示された。
本発明の抗体は、癌の治療及び/又は予防のため有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
配列番号31: T3プライマー
配列番号32: T7プライマー
配列番号33、34: プライマー
配列番号35、36: GAPDHプライマー
配列番号38、39: プライマー

Claims (13)

  1. 列番号2〜30のうち偶数の配列番号で表されるCAPRIN−1の部分ポリペプチドであって配列番号37で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドと免疫学的反応性を有する抗体を有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
  2. 前記癌が乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、肥満細胞腫、腎癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、胃癌もしくは大腸癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. 前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. 配列番号37で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドと免疫学的反応性を有する抗体。
  6. CAPRIN−1タンパク質を発現する癌細胞に対し細胞障害活性を有する、請求項5に記載の抗体。
  7. 配列番号40で表されるアミノ酸配列からなるCDR1配列番号41で表されるアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と配列番号48で表されるアミノ酸配列からなるCDR1配列番号49で表されるアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号50で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体。
  8. 配列番号44で表されるアミノ酸配列からなるCDR1配列番号45で表されるアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号46で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と配列番号48で表されるアミノ酸配列からなるCDR1配列番号49で表されるアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号50で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体。
  9. 配列番号60で表されるアミノ酸配列からなるCDR1配列番号61で表されるアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号62で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域と配列番号64で表されるアミノ酸配列からなるCDR1配列番号65で表されるアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号66で表されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域とを含み、かつ、CAPRIN−1タンパク質と免疫学的反応性を有する抗体。
  10. ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体又は二重特異性抗体である、請求項5〜9のいずれか1項に記載の抗体。
  11. 請求項5〜10のいずれか1項に記載の抗体を有効成分として含むことを特徴とする、癌の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
  12. 前記癌が乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫、肺癌、肥満細胞腫、腎癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、胃癌もしくは大腸癌である、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物あるいは請求項11又は12に記載の医薬組成物と、抗腫瘍剤を含む医薬組成物とを含んでなる、癌の治療及び/又は予防のための組み合わせ医薬品。
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