以下、実施形態に係るグロメットについて説明する。このグロメットは、ワイヤーハーネス挿通用の貫通孔部における止水を図るためのものである。
<貫通孔部>
まず、説明の便宜上、対象となる貫通孔部12について説明しておく(図1、図2参照)。対象となる貫通孔部12は、自動車の車体における金属パネル等のパネル10に形成されるものであり、筒状の(貫通方向に幅を有する)内周部を有している。ここでは、貫通孔部12は、パネル10に貫通孔を形成した後に、バーリング加工により前記貫通孔の開口縁部を立ち上げて形成される筒状立ち壁部としてのバーリング部14を有する孔部である。より具体的には、バーリング部14は、パネル10に対して略直交する方向に沿って該パネル10の一方側に突出する筒状に形成されている。もっとも、貫通孔部12は、貫通孔の開口縁部に筒状体が溶接されて構成されてもよい。なお、以下の説明において、貫通孔部12の開口縁部のうち貫通方向一方側の部分をバーリング部14の先端部といい、貫通方向他方側の部分を貫通孔部12の開口縁部におけるバーリング部14の反対側の部分という。また、ここでは、貫通孔部12は、略円形に形成されているものとする。すなわち、バーリング部14は、略円筒形状に形成されている。
この貫通孔部12には、ワイヤーハーネス1が貫通配索される。そして、パネル10におけるバーリング部14の先端側と基端側とで止水を図るため、貫通孔部12の内側でワイヤーハーネス1と該貫通孔部12との隙間を、グロメット20により塞ぐ。
もっとも、グロメット20の取り付け対象となる貫通孔部12は、上記の形状に限られるものではなく、貫通方向に幅を有する筒状の内周部を有していればよい。例えば、比較的厚さ寸法が大きいパネルに形成された貫通孔部であってもよい。
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係るグロメット20について説明する(図2〜図5参照)。このグロメット20は、シール部材30と、シール部材30に取り付けられる固定部材50とを備えている。すなわち、グロメット20は、シール部材30によって貫通孔部12の内側でワイヤーハーネス1と貫通孔部12との隙間を塞ぐと共に、固定部材50によってシール部材30を貫通孔部12に対して取り付けられた状態に固定することにより、貫通孔部12における止水を図る部材である。
シール部材30は、全体として略筒状に形成され、基端部から先端部に向けて、筒部32と、被規制部38と、その先端側に内周シール部42及び外周シール部44を有している(図3参照)。このシール部材30は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、エラストマー等の比較的弾性変形しやすい(対象に密着し易い)材料によって形成されている。シール部材30は、全体として略筒状に形成されている。
筒部32は、ワイヤーハーネス1を挿通可能且つ挿通方向において部分的にワイヤーハーネス1の外周部に密着可能に形成されている。この筒部32は、略円筒形状に形成され、小径部33と大径部34とを有している。
小径部33は、シール部材30の基端部に位置する部分であり、その内側に挿通されるワイヤーハーネス1の外周部に密着する部分である。この小径部33は、ワイヤーハーネス1の外径と同じかそれより小さい内径に設定されている。そして、小径部33を拡げてワイヤーハーネス1を通し、小径部33がワイヤーハーネス1の外周部に密着した状態で、小径部33とそこから延出するワイヤーハーネス1との外周部に水密性を有するテープ(図示省略)を巻きつけること等により、このワイヤーハーネス1と小径部33との間の止水をより確実にしておくとよい。また、ワイヤーハーネス1における電線束の外周部と小径部33との間において止水剤又は止水シート等により止水処理が施されることもある。この場合も、電線束に止水剤が塗布又は止水シートが取り付けられたワイヤーハーネス1に対して、小径部33が密着すると言うものとする。
大径部34は、小径部33より大径に形成され、小径部33とそれより先端側の被規制部38とを連結する部分である。ここでは、大径部34は、小径部33側(基端側)から被規制部38側(先端側)に向けて徐々に大径になった後、挿通方向に沿って延在する形状に形成されている。また、大径部34は、先端側部分に一段と拡径された部分を有している。なお、大径部34は、挿通方向の一部分に蛇腹形状の部分を含んでいてもよい。
被規制部38は、グロメット20が貫通孔部12に取り付けられる際に、バーリング部14の先端部に対向して配置される環状の部分である。ここでは、被規制部38は、大径部34の先端部から内周側に張り出すに形成され、シール部材30における先端側にバーリング部14の先端部に対向する円環状の面を有している。また、被規制部38は、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け状態においては、バーリング部14の先端部に接触して、補助的に止水機能を果たす。また、この被規制部38は、固定部材50の後述する第1押え部56とバーリング部14の先端部との間に挟まれて、貫通孔部12の貫通方向に位置決めされる部分である。
また、大径部34のうち一段と拡径された先端側部分と被規制部38とにより、内周側に開口する凹部36が形成されている。この凹部36は、後述する固定部材50の第1押え部56を収容可能な内部空間を有している。もっとも、この凹部36は省略されてもよく、その場合には、大径部34は一段と拡径された部分が省略されて挿通方向に沿って直線状に延びる形状となる。
内周シール部42は、バーリング部14の内周部に対して内周側から密着可能な環状(ここでは円筒形状)に形成され、主として止水を行う部分である。また、外周シール部44は、バーリング部14の外周部に対して外周側から密着可能な環状(ここでは円筒形状)の部分である。内周シール部42及び外周シール部44は、それぞれ、間隔をあけて被規制部38からシール部材30の先端側に向けて立設されている。より具体的には、内周シール部42は、被規制部38の先端部(内周側端部)に立設され、外周シール部44は、被規制部38の基端部(外周側端部)に立設されている。そして、被規制部38、内周シール部42及び外周シール部44によって、シール部材30の先端側に開口する環状の溝部が形成される。グロメット20が貫通孔部12に取り付けられる際には、この被規制部38、内周シール部42及び外周シール部44によって形成される溝内に、バーリング部14が配設される(図2参照)。
また、内周シール部42は、その立設方向(シール部材30の挿通方向)一部分において、外周側に突起し且つ周方向に沿って延在する内周凸部43を有している。この内周凸部43は、先端部の径がバーリング部14の内周部より大きく(ここでは僅かに大きく)設定されている。一方、外周シール部44は、立設方向一部分において、内周側に突起し且つ周方向に沿って延在する外周凸部45を有している。この外周凸部45は、先端部の径がバーリング部14の外周部より小さく(ここでは僅かに小さく)設定されている。すなわち、内周凸部43と外周凸部45との先端部同士の間隔は、バーリング部14の厚さ寸法より小さく設定されている。また、ここでは、内周凸部43及び外周凸部45は、内周シール部42及び外周シール部44の立設方向において中間部に設けられている。そして、内周凸部43及び外周凸部45は、それぞれの先端部がバーリング部14の内周部又は外周部に密着することにより止水機能を果たす。
もっとも、内周シール部及び外周シール部において、内周凸部43及び外周凸部45は省略されてもよく、この場合、内周シール部の外周面及び外周シール部の内周面がバーリング部14の内周部又は外周部に密着するように構成されていればよい。また、ここでは、主として止水を行うのは内周シール部42であり、外周シール部44は止水性能を向上させるための補助的な止水用部分である。このため、外周シール部44は、省略されてもよい。
固定部材50は、シール部材30の内周シール部42におけるバーリング部14に対する密着度を向上させると共に、貫通孔部12に対してシール部材30の挿通方向における位置を固定する部材である(図4、図5参照)。この固定部材50は、PP(ポリプロピレン)、PU(ポリウレタン)樹脂等の樹脂材料により成型される比較的剛性の高い(少なくともシール部材30より弾性変形し難い)樹脂成型品である。固定部材50は、シール押付部54と、第1押え部56と、第2押え部66とを有する。シール押付部54は、内周シール部42をバーリング部14の内周部に押し付ける部分である。また、第1押え部56は、被規制部38を介してバーリング部14の先端部に間接的に係止する部分である。第2押え部66は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から直接的又は間接的に係止する部分である。
ここでは、固定部材50は、第1固定部52と第2固定部62との2部材が組み合わされて構成されている。概略的には、第1固定部52はシール部材30に予め取り付けられる部材であり、シール部材30に取り付けられた第1固定部52と第2固定部62とを、貫通孔部12を挟んで組み合わせることにより、シール部材30が固定部材50により貫通孔部12に対して固定され、貫通孔部12にグロメット20が取り付けられた状態を得ることができる。
第1固定部52は、全体として環状に形成され、上記シール押付部54と、上記第1押え部56と、第1係合部58とを有している。この第1固定部52は、シール部材30の内周側に配設され、その内側にワイヤーハーネス1が通される部材である。
シール押付部54は、内周シール部42の内周側に配置される筒状に形成された部分である(図2参照)。このシール押付部54は、内周シール部42の内周側に配置された状態で、バーリング部14の内周部に対して内周シール部42を押付可能に形成されている。より具体的には、シール押付部54は、バーリング部14の内周部に対して、全周に亘って、内周シール部42の厚さ寸法(ここでは、内周凸部43の位置におけるその突起方向の寸法)より小さい間隔をあけて内在可能な外形状に設定されている。すなわち、シール押付部54の外周部は、バーリング部14の内周部の半径に対して、内周シール部42の厚さ寸法より小さい寸法分小さい半径に設定されている。そして、内周シール部42がバーリング部14の内周側に配設されると共に、シール押付部54が内周シール部42の内周側に配置された状態で、内周凸部43がバーリング部14の内周部に当接して内周側に移動しようとする内周シール部42を、シール押付部54が移動規制する。これにより、内周シール部42(ここでは主として内周凸部43)は、厚さ方向に圧縮弾性変形して、バーリング部14の内周部に押し付けられて密着する。
第1押え部56は、シール押付部54の外周部から外周側に張り出す形状に形成された部分である。より具体的には、第1押え部56は、シール押付部54の基端部に設けられ、円環鍔状に形成されている。この第1押え部56は、バーリング部14の内径より大きく外周側に張り出すサイズに設定されている。すなわち、円環鍔状の第1押え部56の外径が、バーリング部14の内径より大きく(ここでは、バーリング部14の外径と略同じに)設定されている。
また、この第1押え部56は、シール部材30の凹部36内に配設される部分である(図2参照)。すなわち、第1押え部56は、シール部材30の挿通方向において、被規制部38に対して基端側に隣接して配設され、グロメット20が貫通孔部12に取り付けられた状態で、被規制部38を挟んでバーリング部14の先端部に対向する。これにより、第1押え部56は、被規制部38を介してバーリング部14の先端部に対して係止可能となっている。また、第1押え部56は、被規制部38を介してバーリング部14の先端部に係止した状態で、被規制部38を貫通孔部12の貫通方向に位置規制する。
第1係合部58は、シール押付部54に設けられ、後述する第2固定部62の第2係合部68と係合する部分である。この第1係合部58の形状及び係合態様については、第2係合部68の説明と併せて後で説明する。
第2固定部62は、全体として環状に形成され、本体部64と、上記第2押え部66と、第2係合部68と、防音部72とを有している。
本体部64は、環状に延在して第2押え部66と第2係合部68とを結合する部分であり、ここでは、円筒状に形成されている。
第2押え部66は、本体部64の外周部から外周側に張り出す形状に形成された部分である。より具体的には、第2押え部66は、本体部64の基端部に設けられ、円環鍔状に形成されている。この第2押え部66は、バーリング部14の内径より大きく外周側に張り出すサイズに設定されている(図2参照)。すなわち、円環鍔状の第2押え部66の外径が、バーリング部14の内径より大きく(ここでは、バーリング部14の外径より大きく)設定されている。そして、本体部64が貫通孔部12内に挿入された状態で、第2押え部66は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から直接的に係止可能となっている。
なお、一般的にバーリング部14の基端部は、バーリング加工により曲線状を成している(図2参照)。第2押え部66が貫通孔部12の開口縁部に係止する部分としては、貫通孔部12の貫通方向に直交する平面部分が好ましい。このことから、第2押え部66は、前記平面部分に接触可能な程度に大きいサイズに設定されているとよい。
また、第2押え部66には、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触可能な環状の防音部72が設けられている。この防音部72は、第2押え部66とパネル10との接触状態における自動車の振動等により発生する異音を抑制するための部分である。ここでは、防音部72は、第2押え部66の基端面に両面粘着テープ等により貼り付けられると共に、第2押え部66の外周側で貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触するように設けられている。すなわち、防音部72は、第2押え部66の形状に対応して円環状に形成され、その周方向において略L字形状を成す。この防音部72のうち第2押え部66の外周側に位置する部位は、第2押え部66の先端側面と面一かそれより先端側に突出した接触面を有している。
防音部72としては、ゴム材料、不織布又はその他の防音に用いられる種々の材料を採用することができる。
もっとも、防音部72は、第2押え部66の先端側面に貼り付けられてもよい。この場合、第2押え部66は、貫通孔部12の開口縁部に対して防音部72を介して間接的に係止する構成となる。また、防音部72は、第2押え部66に対して、接着剤又はネジ止め等によって固定されてもよい。さらに、防音部72は、省略されてもよい。
第2係合部68は、本体部64に設けられ、第1固定部52の第1係合部58と係合する部分である。第1係合部58と第2係合部68とは、第1固定部52と第2固定部62とを、先端部同士を向かい合わせた姿勢で中心軸方向(換言するとシール押付部54及び本体部64の中心軸方向)に近接させることにより離反不能に係合可能に構成されている。概略的には、第2係合部68は、本体部64の先端部から周方向部分的に延出するアーム状に形成され、先端部に爪部69を有している。一方、第1係合部58は、第2係合部68を挿入可能な枠状に形成され、爪部69が係止可能な被係止面を有している。
第2係合部68は、本体部の先端部において、周方向に間隔をあけて複数箇所(ここでは等間隔に3箇所)から延出している。より具体的には、第2係合部68は、アーム状に形成されたうちの先端部の内周部から爪部69が内周側に張り出す形状に形成されている。爪部69は、先端部から基端側に向けて徐々に突出寸法が大きくなる形状に形成されている。そして、爪部69の基端面が、第1係合部58の被係止面に当接する係止面である。
第1係合部58は、シール押付部54の内周部に、周方向に間隔をあけて第2係合部68に対応して複数(ここでは等間隔に3つ)設けられている。より具体的には、第1係合部58は、シール押付部54の内周部に間隔をあけて設けられる壁部59の両側端部が側壁部によって支持された形状に形成されている。そして、壁部59の基端面が被係止面である。この壁部59は、シール押付部54の内周部に対して、第2係合部68の基端側部分(アーム状部分)の厚さ寸法より大きい(ここでは、さらに爪部69における厚さ寸法と同じかそれより僅かに小さい)間隔をあけて支持されている。また、壁部59は、第2固定部62の本体部64の内周部と同じかそれより小さい(ここでは僅かに小さい)径の周上にシール押付部54側の面が位置するように設定されている。
そして、第1固定部52と第2固定部62とが中心軸方向に近接されると、第2係合部68が第1係合部58の内側に挿入される。この際、第2係合部68は、爪部69が第1係合部58の壁部59に当接して外周側に弾性変形しつつ挿入される。また、壁部59も、爪部69に押されてシール押付部54から離間するように内周側に弾性変形する。爪部69が壁部59を乗り越えると、第2係合部68が元の形状に復帰して、爪部69が壁部59の基端側に位置する(図2参照)。すなわち、爪部69の係止面が壁部59の被係止面に対向し、爪部69が壁部59に係止した状態となる。これにより、第1係合部58と第2係合部68とが離反不能に係合し、第1固定部52と第2固定部62とは合体状態に維持される。
第1係合部58と第2係合部68との係合状態における第1押え部56と第2押え部66との間隔は、その間に介在するバーリング部14及び被規制部38が重ねられた際の貫通孔部12の中心軸方向の寸法と同じか僅かに小さい寸法に設定されている。
次に、グロメット20を貫通孔部12に取り付ける作業について説明する。
まず、第1固定部52をシール部材30に対して取り付ける(図6参照)。すなわち、シール部材30の先端側部分を拡げて、第1固定部52をシール部材30の内側に(ここでは全体的に)嵌め込む。より具体的には、第1押え部56を凹部36内に配設すると共に、シール押付部54(及び第1係合部58)を内周シール部42の内周側に配設する。
次に、第1固定部52が取り付けられたシール部材30を貫通孔部12に取り付ける。より具体的には、バーリング部14が、被規制部38、内周シール部42及び外周シール部44によって形成される溝内に配設されるように、シール部材30を貫通孔部12に対してバーリング部14の先端側から押し付ける。この際、内周シール部42の内周凸部43及び外周シール部44の外周凸部45は、それぞれバーリング部14の内周部又は外周部に対して押し付けられて弾性変形し、密着している。さらに内周シール部42は、その内周側に位置するシール押付部54により、バーリング部14の内周部に押し付けられて、より大きく圧縮弾性変形している。また、第1押え部56は、被規制部38を挟んでバーリング部14の先端部に対向する位置に配設されている。
さらに、第2固定部62を、第1固定部52に組み合わせる(図7参照)。すなわち、第2固定部62を、第2係合部68を第1係合部68に係合させるように、第1固定部52に押し付ける。この際、第2係合部68は、第1係合部58に対して挿入されて係合する。また、第2押え部66及び防音部72は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から押し付けられる(図2参照)。第1係合部58と第2係合部68とが係合した状態で、第1固定部52と第2固定部62とは離反不能な状態となる。そして、第1押え部56は、被規制部38に対してバーリング部14の先端部に向けて押し付けられ、被規制部38を介して間接的にバーリング部14の先端部に係止した状態となる。また、第2押え部66は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から押し付けられて係止した状態となる。
以上により、グロメット20が貫通孔部12に対して取り付けられる。なお、ワイヤーハーネス1は、グロメット20が貫通孔部12に取り付けられた後に挿通されてもよいし、第1固定部52が取り付けられたシール部材30及び第2固定部62の組み合わせ前に、各部材及び貫通孔部12に対して予め挿通されていてもよい。
これまで、グロメット220が、円形の貫通孔部12に対応して全体として円環状に形成されている例で説明したが、貫通孔部12が楕円形又は多角形に形成されている場合にはその形状に対応して楕円環状又は多角形の環状に形成されていてもよい。
また、第1押え部56及び第2押え部66について、円環鍔状に形成されている例で説明したが、これに限られるものではない。例えば、第1押え部56及び第2押え部66は、シール押付部54又は本体部64の外周部から周方向において断続的に外周側に張り出す形状に形成されていてもよい。
また、これまで、第1係合部58がシール押付部54の内周側で枠状に形成され、第2係合部68が本体部64の先端部からアーム状に延出する形状に形成された例で説明したが、この形状に限られるものではない。例えば、第1係合部がシール押付部54の先端部からアーム状に延出する形状に形成され、第2係合部が本体部64の内周側で枠状に形成されていてもよい。すなわち、第1係合部58及び第2係合部68は、第1固定部52及び第2固定部62の中心軸方向において近接することにより離反不能に係合可能に構成されていれば、その他種々の形状を採用することができる。
また、第2押え部66には、防音部72の他にも、貫通孔部12に対してバーリング部14の基端側の空間に配設される部材が固定されてもよい。すなわち、第2押え部66に予め固定しておくことにより、対象部材をパネル10に固定しつつ前記空間に配設することができ、パネル10或いはその付近の周辺部材に固定する手間を省くことができる。防音部72の他の対象部材としては、例えば、コネクタ、ジャンクションボックス及びリレーボックス等が挙げられる。
第1実施形態に係るグロメットによると、シール部材30とシール部材30に取り付けられる固定部材50とを備え、シール部材30は、ワイヤーハーネス1を挿通可能且つ挿通方向において部分的にワイヤーハーネス1の外周部に密着可能な筒部32と、筒部32の先端側に設けられ、バーリング部14の内周部に対して内周側から密着可能な円筒状の内周シール部42と、バーリング部14の先端部に対向して配置される円環状の被規制部38とを有し、固定部材50は、内周シール部42の内周側に配置されて内周シール部42をバーリング部14の内周部に押し付け可能な筒状のシール押付部54と、シール押付部54の外周部から外周側に張り出す形状に形成されて被規制部38を介してバーリング部14の先端部に間接的に係止可能な第1押え部56と、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から係止可能な第2押え部66とを有する。このため、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け態様により取り付け方向における誤差が生じたとしても、止水性能は影響されず、より安定して止水性能を確保することができる。
また、シール部材42が、バーリング部14の外周部に対して外周側から密着可能な環状の外周シール部44をさらに有している構成によると、バーリング部14の内周部及び外周部の両方で止水を行うことができ、より止水性能を向上させることができる。
また、内周シール部42及び外周シール部44が、それぞれ、外周側又は内周側に突起し且つ周方向に沿って延在する内周凸部43又は外周凸部45を有している構成によると、バーリング部14の内周部又は外周部に対する密着度を向上させて、止水性能を向上させることができる。
また、固定部材50は、第1固定部52と第2固定部62とが組み合わされて構成され、第1固定部52は、シール部材42の内周側に配設され、シール押付部54と、第1押え部56と、シール押付部54に設けられた第1係合部58とを有し、第2固定部62は、環状の本体部64と、本体部64から外周側に張り出す形状に形成された第2押え部66と、本体部64に設けられ、第1係合部58に対してシール押付部54及び本体部64の中心軸方向において近接することにより離反不能に係合可能な第2係合部68とを有する。そして、第2固定部62を、シール部材30の内周側に配設された第1固定部52に対して貫通孔部12を挟んで組み合わされることによりグロメット20が貫通孔部12に取り付けられる。このため、第2固定部62に対して付属部材を取り付けておくことにより、貫通孔部12のシール部材30とは反対側において、貫通孔部12に対するグロメット20の取り付けを行う作業によって付属部材を貫通孔部12の近傍に固定しておくことができる。
また、第2固定部62が、第2押え部66に固定され、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触可能な環状の防音部72を有する構成によると、シール部材30及び第2固定部62と貫通孔部12の開口縁部との接触部分における異音を抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るグロメット220について説明する(図8〜図10参照)。なお、グロメット220のうち、第1実施形態に係るグロメット20について説明した内容に共通する内容については説明を省略する。このグロメット220は、シール部材230と、固定部材250とを備えている。
シール部材230は、全体として略筒状に形成され、筒部232と、係止用接触部237を有する接続部236と、内周シール部242と、外周シール部244と、被規制部246とを有している(図9参照)。
筒部232は、ワイヤーハーネス1を挿通可能且つ挿通方向において部分的にワイヤーハーネス1の外周部に密着可能に形成されている。この筒部232は、シール部材230の基端部から先端部に亘って延在する部分である。ここでは、筒部232は、略円筒形状に形成され、小径部233と大径部234とを有している。
小径部233は、挿通されるワイヤーハーネス1の外周部に密着する部分であり、第1実施形態に係るシール部材30における筒部32の小径部33と同様の構成部分である。
大径部234は、小径部233の先端部からグロメット220の先端部に亘って延在する部分であり、小径部233より大径に形成されている。ここでは、大径部234は、小径部233から先端側に向けて徐々に大径になった後、挿通方向に沿って延在する形状に形成されている。
また、筒部232の大径部234の外周側には円筒形状の内周シール部242が設けられている。大径部234と内周シール部242とは、シール部材230の先端側における端部同士で接続部236により間隔をあけて接続されている。そして、大径部234、内周シール部242及び接続部236の内側には、シール部材230の基端側に向けて開口する環状の凹部238が形成されている。この凹部238は、後述する固定部材250のシール押付部254及び第2押付部256を収容可能な内部空間を有している。より具体的には、凹部238の内部空間は、上記固定部材250のシール押付部254及び第2押付部256の外形と同じかそれより僅かに大きい大きさに設定されている。
また、内周シール部242の外周側には円筒形状の外周シール部244が設けられている。内周シール部242と外周シール部244とは、シール部材230の基端側における端部同士で被規制部246により間隔をあけて接続されている。そして、内周シール部242、外周シール部244及び被規制部246の内側には、シール部材230の先端側に向けて開口する環状の溝が形成されている。グロメット220が貫通孔部12に取り付けられる際には、この内周シール部242、外周シール部244及び被規制部246によって形成される溝内に、バーリング部14が配設される(図8参照)。
内周シール部242は、バーリング部14の内周部に対して内周側から密着可能に形成され、主として止水を行う部分である。この内周シール部242は、シール部材230の挿通方向一部分において、外周側に突起し且つ周方向に沿って延在する内周凸部243を有している。この内周凸部243は、先端部(外周側端部)の径がバーリング部14の内周部より大きく(ここでは僅かに大きく)設定されている。ここでは、内周凸部243は、内周シール部242の立設方向において中間部に設けられている。
また、外周シール部244は、バーリング部14の外周部に対して外周側から密着可能に形成された部分である。この外周シール部244は、内周シール部242の内周凸部243の先端部に対してバーリング部14の厚さ寸法より小さい間隔をあけて設けられている。
そして、内周シール部242は主として内周凸部43が、外周シール部244は内周部が、バーリング部14の内周部又は外周部に密着することにより止水機能を果たす。
もっとも、内周シール部242において内周凸部243が省略されても、外周シール部において内周側に突起する外周凸部が形成されてもよい。また、ここでは、主として止水を行うのは内周シール部242であり、外周シール部244は止水性能を向上させるための補助的な止水用部分である。このため、外周シール部244は、省略されてもよい。
被規制部246は、グロメット220が貫通孔部12に取り付けられる際に、バーリング部14の先端部に対向して配置される環状の部分である(図8参照)。この被規制部246は、シール部材230における先端側にバーリング部14の先端部に対向する円環状の面を有している。また、被規制部246は、グロメット220の貫通孔部12に対する取り付け状態においては、バーリング部14の先端部に接触して、補助的に止水機能を果たす。
接続部236は、筒部232の大径部234と内周シール部242とを接続する部分であり、大径部234の外周側且つ内周シール部242の先端側に設けられている。この接続部236は、大径部234の先端側部分との内側に後述する固定部材250の第2押え部256を配設可能な内部空間(凹部238の内部空間における奥側部分)を有する。凹部238の奥側部分は、開口側部分より幅広に(シール部材230の内外方向の寸法が大きく)設定されている。この接続部236は、係止用接触部237を有している。
係止用接触部237は、グロメット220の貫通孔部12に対する取り付け状態において、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触可能に形成された部分である(図8参照)。この係止用接触部237は、前記開口縁部に沿った接触面を有し、貫通孔部12の内周部から開口縁部に沿った形態で配置される。より具体的には、係止用接触部237は、内周シール部242より外周側に張り出す形状に形成されている。換言すると、係止用接触部237は、バーリング部14の内周部の径より大きい外径に設定されている。なお、係止性能の観点から言うと、係止用接触部237は、貫通孔部12の貫通方向に直交する平面部分に接触可能な程度に大きいサイズに設定されているとよい。そして、係止用接触部237は、シール部材230が貫通孔部12に取り付けられる際に、外周側部分が貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から対向する。
固定部材250は、シール部材230に取り付けられ、シール部材230の内周シール部242におけるバーリング部14に対する密着度を向上させると共に、貫通孔部12に対してシール部材230の挿通方向における位置を固定する部材である(図10参照)。この固定部材250は、全体として円環状に形成されている。固定部材250は、シール押付部254と、第1押え部256と、第2押え部258とを有する。
シール押付部254は、内周シール部242をバーリング部14の内周部に押し付ける部分である(図8参照)。このシール押付部254は、内周シール部42の内周側に配置される筒状(ここでは円筒状)に形成された部分である。より具体的には、シール押付部254は、バーリング部14の内周部に対して、全周に亘って、内周シール部242の厚さ寸法(ここでは、内周凸部243の位置におけるその突起方向の寸法)より小さい間隔をあけて内在可能な外形状に設定されている。すなわち、シール押付部254の外周部は、バーリング部14の内周部の半径に対して、内周シール部242の厚さ寸法より小さい寸法分小さい半径に設定されている。そして、内周シール部242がバーリング部14の内周側に配設されると共に、シール押付部254が内周シール部42の内周側に配置された状態で、内周凸部243がバーリング部14の内周部に当接して内周側に移動しようとする内周シール部242を、シール押付部254が移動規制する。これにより、内周シール部242(ここでは主として内周凸部243)は、厚さ方向に圧縮弾性変形して、バーリング部14の内周部に押し付けられて密着する。
第1押え部256は、被規制部246を介してバーリング部14の先端部に間接的に係止する部分である。この第1押え部256は、シール押付部254の外周部から外周側に張り出す形状に形成されている。より具体的には、第1押え部256は、シール押付部254の基端部に設けられ、円環鍔状に形成されている。また、第1押え部256は、バーリング部14の内径より大きく外周側に張り出すサイズに設定されている。すなわち、円環鍔状の第1押え部256の外径が、バーリング部14の内径より大きく(ここでは、バーリング部14の外径より大きく)設定されている。
そして、この第1押え部56は、シール部材230の挿通方向において、被規制部246に対して基端側に隣接して配設され、グロメット220が貫通孔部12に取り付けられた状態で、被規制部246を挟んでバーリング部14の先端部に対向する。これにより、第1押え部256は、被規制部246を介してバーリング部14の先端部に対して係止可能となっている。
第2押え部258は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接続部236における係止用接触部237を介して間接的に係止する部分である。第2押え部258は、シール押付部254の外周部から外周側に張り出す形状に形成されている。より具体的には、第2押え部258は、シール押付部254の先端部に設けられ、円環鍔状に形成されている。この円環鍔状の第2押え部258の外径は、内周シール部242の内周部(内周凸部243の基端部)の径より大きく設定されている。すなわち、ここでは、第2押え部258は、貫通孔部12の開口縁部に対して、バーリング部14の内周部の径より大きい外径に設定されている係止用接触部237を介して間接的に係止するため、係止用接触部237に内周側且つシール部材230における先端側から接触可能な形状に形成されている。
また、第2押え部258は、周方向に直交する断面視において、略等脚台形状を成している。より具体的には、第2押え部258は、固定部材250をシール部材230に取り付ける際に、凹部238における比較的狭い開口側部分を通じて開口側部分より広い奥側部分に挿入されるため、挿入の作業性を向上させるために先端側(固定部材250における先端側)に傾斜面又は曲面(ここでは、曲面)を有している。すなわち、第2押え部258の先端側部分は、先端側から基端側に向けて徐々に張り出し方向の寸法が大きくなる形状に形成されている。また、第2押え部258は、係止用接触部237を貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触する位置に位置規制するため、貫通孔部12におけるバーリング部14の内周部から開口縁部に亘る曲線部分に沿った形状の係止用接触部237の内周部に沿った形状に形成されている。ここでは、第2押え部258の基端側の面が、係止用接触部237の内周部及び前記貫通孔部12における曲線部分に沿って形成されている。すなわち、第2押え部258の基端側(固定部材250における基端側)部分は、基端側から先端側に向けて徐々に張り出し方向の寸法が大きくなる形状に形成されている。
なお、第2押付部258の凹部238内への挿入作業性を考慮して、シール押付部254の先端側部分の周方向複数箇所に、中心軸方向に沿ったスリット259が形成されていてもよい(図10参照)。すなわち、第2押付部258が、凹部238内への挿入時により内周側に弾性変形しやすくした構成である。
次に、グロメット220を貫通孔部12に取り付ける作業について説明する。
まず、シール部材230を貫通孔部12に対して取り付ける(図11参照)。より具体的には、接続部236を貫通孔部12の内周側に押し縮めつつ、バーリング部14が内周シール部242、外周シール部244及び被規制部246によって形成される溝内に配設されるように、シール部材230を貫通孔部12に対してバーリング部14の先端側から押し付ける。シール部材230が貫通孔部12に取り付けられた状態で、係止用接触部237は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触している(図12参照)。また、内周シール部242の内周凸部243は、バーリング部14の内周部に対して押し付けられて弾性変形し、密着している。
次に、固定部材250を貫通孔部12に取り付けられたシール部材230に対して取り付ける(図12参照)。すなわち、シール押付部254及び第2押え部258を凹部238内に挿入する。この際、シール押付部254は、凹部238における比較的狭い開口側の内部空間に配設され、第2押え部258は、凹部238における開口側より広い奥側の内部空間に配設されている。そして、固定部材250がシール部材230に取り付けられた状態で、内周シール部242(主として内周凸部243)は、その内周側に配置されたシール押付部254により、バーリング部14の内周部に押し付けられて、より大きく圧縮弾性変形している(図8参照)。また、被規制部246が第1押え部256によりバーリング部14の先端部に押し付けられると共に、係止用接触部237が第2押え部258により貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から押し付けられている。すなわち、第1押え部256は、被規制部246を介してバーリング部14の先端部に係止すると共に、第2押え部258は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から係止用接触部237を介して係止した状態となる。
以上により、グロメット220が貫通孔部12に対して取り付けられる。なお、ワイヤーハーネス1は、グロメット220が貫通孔部12に取り付けられた後に挿通されてもよいし、グロメット220の取り付け前に各部材及び貫通孔部12に対して予め挿通されていてもよい。
これまで、グロメット220が、円形の貫通孔部12に対応して全体として円環状に形成されている例で説明したが、貫通孔部12が楕円形又は多角形に形成されている場合にはその形状に対応して楕円環状又は多角形の環状に形成されていてもよい。
また、第1押え部256及び第2押え部258について、円環鍔状に形成されている例で説明したが、これに限られるものではなく、例えば、シール押付部254の外周部から周方向において断続的に外周側に張り出す形状に形成されていてもよい。
また、これまで、シール部材230について被規制部246が設けられた例で説明してきたが、被規制部246が省略されてもよい(外周シール部244が省略される場合に限る)。この場合、第1押え部256は、バーリング部14の先端部に対して直接的に係止する構成となる。もっとも、シール部材230を貫通孔部12に対して貫通方向により確実に位置決めする観点から言うと、被規制部246が設けられていることが好ましい。
第2実施形態に係るグロメット220によると、内周シール部242をシール押付部254によりバーリング部14の内周部に押し付けることにより止水を図る構成であるため、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け態様により取り付け方向における誤差が生じたとしても、止水性能は影響されず、より安定して止水性能を確保することができる。
また、シール部材230は、筒部232と、筒部232の外周側に設けられる内周シール部242と、被規制部246と、内周シール部242から外周側に張り出す形状に形成されて貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から接触可能な係止用接触部237とを有し、固定部材250は、シール押付部254と、第1押え部256と、シール押付部254の外周部から外周側に張り出す形状に形成されて係止用接触部237を介して貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から係止可能な第2押え部258とを有する。このため、貫通孔部12に対して一方側からグロメット220を取り付けることができ、グロメット220の取り付け作業性を向上することができる。
また、被規制部246が設けられた構成によると、シール部材230の貫通孔部12に対する貫通方向の位置決めをより確実に行うことができる。
また、シール部材230が、バーリング部14の外周部に対して外周側から密着可能な環状の外周シール部244をさらに有している構成によると、バーリング部14の内周部及び外周部の両方で止水を行うことができ、より止水性能を向上させることができる。
また、内周シール部242が、外周側に突起し且つ周方向に沿って延在する内周凸部43を有している構成によると、バーリング部14の内周部に対する密着度を向上させて、止水性能を向上させることができる。