JP5740642B1 - 飲食用組成物、飲食用組成物の呈味を改善する方法及び色を改善する方法、乳酸菌増殖用組成物、大麦の茎葉の栽培方法、阿蘇産又は黒ボク土を用いて栽培した大麦の茎葉 - Google Patents

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Abstract

【課題】色が鮮やかであるため見た目が美しく、且つ味や香りがよく、風味が良好で嗜好性の高い飲食用組成物を提供すること。【解決手段】本発明の飲食用組成物は、大麦の茎及び/又は葉を含有する飲食用組成物であって、大麦が六条大麦であり、更に、ビタミン類、タンパク質、食物繊維、多糖類、オリゴ糖、乳製品、豆乳製品、糖類、ミネラル類、植物又は植物加工品、微生物、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、香料、食品添加物、及び、調味料から選ばれる1種以上を含有する。六条大麦が、シルキースノウ、ファイバースノウ及びシュンライから選ばれる少なくとも1品種の六条大麦であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、大麦の茎及び/又は葉を用いた、飲食用組成物、飲食用組成物の呈味を改善する方法及び色を改善する方法、乳酸菌増殖用組成物に関する。本発明はさらに大麦の茎及び/又は葉の栽培方法、阿蘇産又は黒ボク土を用いて栽培した大麦の茎及び/又は葉に関する。
大麦は中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である。大麦は、穂形により、二条大麦と六条大麦等に大別される。二条大麦と六条大麦とでは、穂についている実の列数が異なり、穂を上から見ると二条大麦は2列に、六条大麦は6列に実がついている。六条大麦は、2〜3世紀に朝鮮を経て日本に渡来したとされ、雑穀として利用されるほか、麦茶の原料にも利用されている。一方、二条大麦は日本には欧米から明治時代に導入されたとされ、主に醸造用に用いられている。
大麦の茎及び/又は葉(以下「茎葉」という)は、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、アミノ酸、葉緑素、SOD酵素等に富む健康食品の素材として知られ、青汁、ゼリー、クッキー、ジンジャードリンク、ヨーグルト、サプリメント等の飲食用組成物に用いられている。青汁用の飲食用組成物は、植物の緑葉を含む、乾燥粉末や搾汁粉末等の様々な加工物とした製品であり、簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として利用されている。
従来、青汁等の飲食品において、大麦の茎葉と各種の成分を組み合わせる技術が知られている。例えば茶葉等の植物又は植物加工品と組み合わせた例として特許文献1が挙げられ、難消化性デキストリン等の食物繊維やキシロオリゴ糖等のオリゴ糖と組み合わせた例として特許文献2が挙げられ、ヒアルロン酸等の多糖類と組み合わせた例として特許文献3が挙げられ、マルチトール(還元麦芽糖)等の糖類と組み合わせた例として、特許文献4が挙げられ、カルシウム等のミネラル類と組み合わせた例として特許文献5が挙げられる。このような飲食品において、大麦の茎葉として、二条大麦の茎葉が広く使用されている。
また、六条大麦の若葉を用いた青汁用の飲食用組成物も知られている(特許文献6を参照)。更に非特許文献1には、「赤神力」(登録商標)という品種の六条大麦が、葉が大きく肉厚である等の理由から青汁用の飲食用組成物の原料に適している旨が記載されている。
しかしながら、消費者の間には、植物の緑葉を用いた飲食用組成物について、該緑葉に由来する青臭さ、えぐみがあるといったマイナスイメージが少なからず存在し、大麦の茎葉を用いた飲食用組成物についても同様である。大麦の茎葉を用いた飲食用組成物について、このようなイメージを払拭するために、大麦の茎葉に由来する緑色を鮮やかにして見た目を美しくし、また、えぐみや苦味、青臭さ等を低下させ、風味を向上させることが求められている。しかしながら、飲食品に用いられる大麦の茎葉は、色を鮮やかにしようとすると、甘さが低下したり、えぐみが増しやすい傾向があるとの説もあり、このため、従来の大麦の茎葉を用いた飲食用組成物は、見た目の美しさと、風味の良好さとを両立させるという点で十分なものではなかった。特に、前記の各種成分を大麦の茎葉に組み合わせた飲食用組成物においては、大麦の茎葉に由来する味や臭いの成分と前記各種成分に由来する味や臭いの成分とが混在することにより、このような混合物の味や臭いを良好なものに調整することが困難であり、風味が良好で嗜好性が高いという観点から十分なものではなかった。
一方、青汁などの飲食用組成物の原材料としての大麦若葉の需要に対応するためには、大麦若葉を早く効率的に成長させることが求められる。また、大麦若葉の付加価値を高めるために、味や栄養価を高めることも求められている。
例えば、特許文献7には、バレイショについて、地上部生育期間中10〜15時間の日長条件で、夜間の最低気温が25℃未満及び昼間の気温との日較差が3℃以上で水耕栽培することにより、効率よく多数の塊茎を生産できることが開示されている。また、特許文献8には、嗜好性を改善するための大麦若葉の加工方法が開示されている。
大麦の実の栽培方法として、その大半が水田の裏作又は転作で作付けされているが、関東などの一部の地域では畑で作付けされている。特に麦作の盛んな北関東では、火山灰土壌を母材とし腐植を多く含む土壌である黒ボク土からなる畑において大麦が作付けされている(非特許文献2を参照)。
しかしながら、大麦若葉を効率的に栽培することと、味や栄養価を両立させる方法についての発明は未だなされていない。
また、乳酸菌は、グルコース等の糖類から多量の乳酸を生成する細菌の総称であり、醤油、清酒、味噌等に見出される他、乳製品、穀類、腸等にも分布している。発酵乳、乳酸菌飲料、チーズ等の製造のために、乳酸菌の培養には獣乳を含む培地を使用することが多いが、乳酸菌の栄養要求性が厳格であるため、増殖に適さない菌株が多いという問題がある。このため、乳酸菌を増殖させるための物質として、培地中に、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、アミノ酸等を添加することが知られているが、高価な上に培養条件が制限され、安価かつ簡便に、乳酸菌を増殖させることが難しいという問題がある。
安価且つ簡便に乳酸菌を増殖できる組成物として、本出願人は、先に大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物を提案した(特許文献1)。特許文献1には、段落〔0013〕に、「前記大麦の品種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸麦などが挙げられる」と記載されている。特許文献1の実施例ではこれらのうち二条大麦のみを用いている。
しかしながら、二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物による乳酸菌増殖効果は、十分なものと言い難い。
特開2002−000227号公報 特開2002−051731号公報 特開2002−065205号公報 特開2002−142721号公報 特開2012−085583号公報 特開2011−51948号公報 特開2004−73214号公報 特開平5−7471号公報
"当社のこだわり"、[online]、日本薬品開発株式会社、[平成25年5月29日検索]、インターネット<http://www.jpd.gr.jp/commitment/material.html> 塔野岡卓司、外4名、「黒ボク土におけるオオムギ精麦品質の改良−粉状質胚乳を呈するデンプン変異形質の有用性−」、日本作物学会紀事、2010年、第79巻、第3号、p.296−307
本発明の第1の課題は、大麦の茎葉及び特定成分を含有する食品であって、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、味や香りがよく、風味が良好で嗜好性の高い飲食用組成物を提供することにある。
本発明の第2の課題は、短期間で大きく成長し、効率的に大麦の茎葉を生産することができ、味や栄養価を高めることのできる大麦の茎葉の栽培方法を提供することにある。
本発明の第3の課題は、添加物によって青汁などの飲食用組成物の味の改善や栄養価の維持あるいは向上を図るというよりは、原料そのものによって味や栄養価が改善された六条大麦の茎葉を提供することにある。
本発明の第4の課題は、大麦の茎葉を収穫する目的で、大麦をどのような圃場で作付けすべきかについては、詳細を記載した文献は知られていないことから、適当な圃場で作付けされた青汁用の飲食用組成物に適した六条大麦の茎葉を提供すること、さらにこのような六条大麦の茎葉を含むことから、栽培適性が高く、かつ、栄養が豊富で嗜好性の高い青汁用の飲食用組成物を提供することにある。
本発明の第5の課題は、乳酸菌の増殖促進効果が高い乳酸菌増殖用組成物を提供することにある。
本発明者らは、大麦の茎葉を用いた飲食用組成物の緑色の鮮やかさや風味について、上記第1の課題を解決すべく鋭意研究したところ、驚くべきことに、六条大麦の茎葉を用いた飲食用組成物は、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、風味が良好で嗜好性が高いこと、特定の成分を大麦の茎葉と組み合わせた場合であっても、味や香りが良好で嗜好性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
また、本発明者らは、上記第2の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培することにより、短期間で大きく生育させると同時に、味や栄養価も高めることができることを見出し、本発明を完成した。
さらに、本発明者らは、上記第3の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、六条大麦を熊本県阿蘇地域で栽培することにより、大麦の茎葉の生育が良好であり、特定の栄養素の含量が有意に向上し、かつ、その栄養素が味に影響していることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らは、上記第4の課題について鋭意研究したところ、驚くべきことに、精麦不良を引き起こすとされていた黒ボク土を用いた栽培方法により、六条大麦の葉や茎は、従前の栽培方法を用いて得られた六条大麦の葉や茎に比べて、栽培適性が高く、栄養が豊富で、見た目が美しく、風味が良好であることから、青汁用の飲食用組成物の原料として適し、これを用いた青汁用の飲食用組成物は、栄養が豊富で、嗜好性が高いものであることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らは、上記第5の課題について鋭意研究したところ、驚くべきことに、六条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物は、二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物に比べて、乳酸菌増殖効果が高いことを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]大麦の茎及び/又は葉を用いた飲食用組成物であって、
該大麦が、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の大麦である飲食用組成物。
[2]更に、ビタミン類、タンパク質、食物繊維、多糖類、オリゴ糖、乳製品、豆乳製品、糖類、ミネラル類、植物又は植物加工品、微生物、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、香料、食品添加物、及び、調味料から選ばれるいずれか1種以上を含有する、[1]に記載の飲食用組成物。
[3]ビタミン類、食物繊維、多糖類、オリゴ糖、糖類、ミネラル類、及び、植物又は植物加工品から選ばれるいずれか1種以上を含有する[1]又は[2]に記載の飲食用組成物。
[4]ビタミン類が、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC又はビタミンEであり、
食物繊維が、難消化性デキストリン又はポリデキストロースであり、
多糖類が、N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸又はコンドロイチン硫酸であり、
オリゴ糖が、ビートオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖又はイソマルトオリゴ糖であり、
糖類が、デキストリン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖、果糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール又はでんぷんであり、
ミネラル類が、カルシウム、マグネシウム又は鉄であり、
植物又は植物加工品が、レモン、リンゴ、明日葉、ケール、甘藷、甘藷茎葉、じゃがいも、ニンジン、カボチャ、ニガウリ、トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、スピルリナ又は抹茶である[1]から[3]のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
[5]大麦の茎及び/又は葉を用いた飲食用組成物の呈味を改善する方法であって、
該大麦が、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の大麦である、前記方法。
[6]大麦の茎及び/又は葉を用いた飲食用組成物の色を改善する方法であって、
該大麦が、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の大麦である、前記方法。
[7]六条大麦の茎及び/又は葉を含有することを特徴とする乳酸菌増殖用組成物。
[8]前記六条大麦が、倍取、シルキースノウ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の六条大麦である、[7]に記載の乳酸菌増殖用組成物。
[9]月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する、大麦の茎及び/又は葉の栽培方法。
[10]栽培期間が、播種から出穂前である、[9]に記載の方法。
[11][9]又は[10]に記載された方法で栽培された大麦の茎及び/又は葉を含有する飲食用組成物。
[12]月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する、大麦の茎及び/又は葉。
[13]熊本県阿蘇地域で栽培された六条大麦の茎及び/又は葉。
[14][13]に記載の大麦の茎及び/又は葉を含有する飲食用組成物。
[15]少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎及び/又は葉。
[16]少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培され、かつ、飲食用組成物に使用される六条大麦の茎及び/又は葉。
[17]赤土を用いて栽培されたものと比べて、丈、分けつ、色、茎径及び葉幅からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性が優れており、かつ、飲食用組成物に使用される六条大麦の茎及び/又は葉。
[18]六条大麦の種又は苗を少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培する工程
を含む、飲食用組成物に使用される六条大麦の茎及び/又は葉を栽培する方法。
[19][15]〜[17]のいずれか1項に記載の六条大麦の茎及び/又は葉、又は[18]に記載の方法によって得られる六条大麦の茎及び/又は葉を含む青汁用の飲食用組成物。
特定品種の六条大麦の茎葉を用いた飲食品は、色が鮮やかであるため見た目が美しく、且つ、風味が良好で嗜好性が高い。
また本発明の呈味の改善方法は、大麦の茎葉を用いた飲食品における風味及び嗜好性を向上させることができる。
また本発明の色の改善方法は、大麦の茎葉を用いた飲食品における色を鮮やかにでき、見た目が美しいものにすることができる。
特定成分並びに六条大麦の茎葉を用いた飲食用組成物は、色が鮮やかであるため見た目が美しく、且つ、味や香りがよく、風味が良好で嗜好性が高い。
本発明の栽培方法によれば、大麦を早く生育させ、効率よく大麦若葉を生産することができると同時に、味や栄養価も高めることができる。
栄養価の高い阿蘇産大麦の茎葉は、青汁などの飲食用組成物の原料として用いることができ、原料由来の栄養価が高く、かつ、おいしく飲みやすい飲食用組成物を製造することができる。
本発明の六条大麦の茎葉は、従前の栽培方法を用いて得られた六条大麦の茎葉に比べて、栽培適性が高く、栄養が豊富であり、見た目が美しく、風味が良好であり、かつ、青汁等の飲食用組成物に適するものである。このような本発明の六条大麦の茎葉を用いて得られる本発明の飲食用組成物は、栄養が豊富で、嗜好性が高いものである。
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、乳酸菌を良好に増殖させることができる。
図1は、「色の鮮やかさ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。 図2は、「えぐみの弱さ及び甘さ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。 図3は、「えぐみの弱さ及び美味しさ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。 図4は、「青臭さの弱さ、甘みの強さ及び美味しさ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。 図5は、実施例及び比較例における乳酸菌増殖試験の結果を示す写真である。 図6は、黒ボク土を撮影した写真図である。 図7は、赤土を撮影した写真図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[1.飲食用組成物]
本発明は、飲食用組成物に関するものである。
本発明の飲食用組成物は、六条大麦の茎葉(茎及び/又は葉)を飲食用組成物の原料の一つとして用いている。
本発明の飲食用組成物は六条大麦の茎葉を用いていることによって、呈味が改善されたものとなり、また色が改善されたものとなる。具体的には、本発明の飲食用組成物は、六条大麦の茎葉を用いていることによって、二条大麦の茎葉を用いた従来の飲食用組成物に比べて、色が鮮やかであることによる見た目の美しさと、風味の良好さとを両立することができる。具体的に説明すると、本発明の飲食用組成物は、前記従来の飲食用組成物と比べて、大麦の茎葉に由来する緑色が鮮やかであるにも関わらず、甘みの強さやえぐみの弱さの点で優れている。また、本発明の飲食用組成物は、前記従来の飲食用組成物と比べて、えぐみが弱く、青臭さが弱く、美味しく摂取することができる。特に、本発明の飲食用組成物は前述した特定成分を六条大麦の茎葉と共に含有することで、特定成分を二条大麦の茎葉と共に含有する場合に比べて、味や臭いが改善される。
六条大麦は、植物学上で六条大麦に分類されるもの、すなわち、イネ科オオムギ属オオムギのうちの六条大麦(Hordeum vulgare f. hexastichon)であり、形態学的な特徴としては穂を上から見ると6列に実がついているものであれば特に限定されず、野生種、交雑種などのいずれであってもよい。
六条大麦の品種としては様々なものがあることが知られているところ、本発明の飲食用組成物は、特定品種の六条大麦の茎葉を用いることが好ましい。特定品種としては、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウの8品種が挙げられる。これらの品種の六条大麦は、例えば精麦用として、具体的には、麦味噌や麦茶等の原料として一般的に用いられているものである。このうち、特に、特定成分を含有する飲食用組成物の味や香りを一層良好なものとする観点から、前記の8品種のうち、シルキースノウ、シュンライ及びファイバースノウの3品種を用いることが好ましい。本発明の飲食用組成物は、これらの品種のうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。六条大麦の茎葉は、六条大麦の葉、茎又はその両方であり、葉及び茎はそれぞれその一部又は全部であってもよい。
前記の特定品種の大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。具体的には、品種の違いによっても異なるが、一般に、背丈が10cm以上、特に10〜90cm程度、とりわけ30〜60cm程度である大麦から、茎葉を収穫することが好ましいが、これらに限定されるものではない。大麦の茎葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、大麦の茎葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
本発明の飲食用組成物では、前記の特定品種の六条大麦の茎葉として、該茎葉から得られる各種の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、茎葉の乾燥粉末、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、茎葉のエキス及びその乾燥粉末等が挙げられる。
例えば、大麦の茎葉を乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、大麦の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理は、80〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水または水蒸気中で、茎葉を60〜180秒間、好ましくは90〜120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、茎葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。また、蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20〜40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
また、殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
また、乾燥処理としては、茎葉の水分含量が10%以下、特に5%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃〜140℃、より好ましくは80〜130℃にて加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
また、粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された茎葉は必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものを茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、茎葉の粉末のさらなる加工時に取り扱いやすく、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易である。
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号公報を参照)。また例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報、特許第3428956号公報を参照)も挙げられる。また例えば、大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003−033151号公報、特許第3277181号公報を参照)も挙げられる。
大麦の茎葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mmとなるように細片化され、流動性を有するようになる。
大麦の茎葉を搾汁する方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の茎葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。具体的には、特開平08−245408号公報、特開平09−047252号公報、特開平5−7471号公報、特開平4−341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。
また、大麦の茎葉のエキスを得る方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
前記六条大麦の茎葉の加工物のうち、特に、茎葉の乾燥粉末を用いることが、本発明において、飲食用組成物をより一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点や、食物繊維の豊富なものとできる点等から好ましい。
本発明の飲食品の固形分中、六条大麦の茎葉の含有量は、乾燥質量で、下限値としては、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましく、最も好ましくは20質量%以上であり、上限値としては、99.9質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。六条大麦の茎葉の含有量が0.1質量%より少ない場合、本発明の効果が十分に発揮されない場合がある。
本発明において、飲食品は、前記六条大麦の茎葉以外に、その他の成分を含んでいてもよい。前記のその他の成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、ゼラチン、コラーゲンペプチド、植物由来タンパク質等のタンパク質、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどの水溶性食物繊維、ビートオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖等のオリゴ糖、カルシウム、マグネシウム、鉄等のミネラル類、N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類、乳、発酵乳、脱脂粉乳等の乳製品、豆乳、豆乳粉末等の豆乳製品、レモン、リンゴ、明日葉、ケール、甘藷、甘藷茎葉、じゃがいも、ニンジン、カボチャ、ニガウリ、トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、スピルリナ、抹茶などの植物又は植物加工品、乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、麹菌、酵母などの微生物を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖(マルトース)、果糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール、でんぷん等の糖類、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ソーマチン、還元麦芽糖等の甘味料、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸等の酸味料、酸化チタン等の着色料、アラビアガム、キサンタンガム等の増粘剤、シェラック等の光沢剤、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を配合することもできる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、飲食品の形態等に応じて適宜選択することができる。本発明において、飲食品に含まれる大麦の茎葉の加工物以外の成分として、オリゴ糖、水溶性食物繊維、乳酸菌を含むことが、特に好ましい。
前記のその他の成分の中でも、本発明の飲食品は、以下の成分を含有することが好ましい。具体的には、ビタミン類、食物繊維、多糖類、オリゴ糖、糖類、ミネラル類、又は、植物若しくは植物加工品である(以下、これらを特定成分という)。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンE等の上記で挙げた各種のビタミン類は、1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。例えばビタミンB1は、糖代謝酵素の補酵素として働き、疲労回復、精神安定などの効果が得られるとされている。ビタミン類としてビタミンB1を用いる場合、ビタミンB1は、チアミン及びその誘導体のいずれであってもよく、また該チアミン又はその誘導体の塩であってもよく、それらの混合物であってもよい。チアミンの誘導体としては、チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン、ビスチアミン、ベンフォチアミン等が挙げられる。
本発明の飲食品においてビタミン類を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.0001質量部以上0.1質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.01質量部以下がより好ましい。
難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の上記で挙げた各種の食物繊維は、1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。例えば難消化性デキストリンは、低カロリーで低脂肪の食品素材であり、整腸作用、血糖上昇抑制、血清コレステロール低下、腸内環境改善、中性脂肪低下等の生理活性効果を有しているとされている。難消化性デキストリンは澱粉から得られる水溶性食物繊維であり、例えば、澱粉に塩酸を添加して加熱処理した後にアミラーゼ処理を行う、もしくは澱粉に塩酸を添加してエクストルーダーを用いて加熱処理を行う、又はこれらの組合せにより得られる組成物から、必要に応じて塩類やグルコース等を除去して難消化性成分を適宜精製することによって得られる。食物繊維としては、製法や由来に関わらず、通常入手可能な食物繊維やそれを含む原料を用いることができる。
本発明の飲食品において食物繊維を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がより好ましい。
N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の上記で挙げた各種の多糖類は、1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。例えばヒアルロン酸は、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖を構成単位とした多糖である。ヒアルロン酸は、コラーゲン、フィブロネクチン、プロテオグリカンとともに細胞外マトリックスを構築し、細胞の保持、組織の潤滑性の保持、機械的障害などの外力への抵抗、細菌感染の防止など、多くの機能を有することが知られている。ヒアルロン酸は関節炎や角結膜上皮障害の治療薬として利用されているが、保湿性に優れていることから化粧品等の保湿成分としても利用されている。また近年ではヒアルロン酸を経口摂取することもある。ヒアルロン酸としては、例えば鶏のトサカ又はその他の動物、植物より抽出し、濃縮生成又は酵素処理して得られたもの、微生物による発酵で生成したもの等を特に制限なく使用できる。またヒアルロン酸はヒアルロン酸の塩を含有してもよく、また、ヒアルロン酸の塩のみでもよい。
本発明の飲食品において多糖類を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.0001質量部以上0.1質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.05質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.04質量部以下がより好ましい。
ビートオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖等の上記で挙げた各種のオリゴ糖は、1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。例えばフラクトオリゴ糖は、スクロースに1個以上のフラクトース残基がβ2→1結合により結合されたオリゴ糖類の総称である。フラクトオリゴ糖の例としては、スクロースに1個のフラクトース残基が結合した1−ケストース、2個結合したニストース、3個結合したフラクトシルニストースやこれらのうち2種以上の混合物が挙げられる。フラクトオリゴ糖としては市販のものを用いてもよいし、公知の方法に従って製造してもよい。フラクトオリゴ糖は、難う蝕性、ビフィズス菌増殖促進作用、コレステロールなどの脂質の代謝改善作用、免疫調節作用、血糖値上昇抑制作用等の様々な生理機能を有することが知られている。
またオリゴ糖のうち例えばイソマルトオリゴ糖とは、鎖状のα−1,4結合のみからなるマルトオリゴ糖と対比して、α−1,2結合、α−1,3結合、およびα−1,6結合の分岐オリゴ糖を多く含むオリゴ糖をいう。α−1,2結合を有するオリゴ糖としては、コージビオースなど;α−1,3結合を有するオリゴ糖としては、ニゲロースなど;α−1,6結合を有するオリゴ糖としては、イソマルトース、パノース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオースなどが挙げられる。本発明で使用するイソマルトオリゴ糖は、天然物から精製または粗精製されたものであり得、その起源は特に限定されない。イソマルトオリゴ糖は、腸内菌叢改善効果、腸内環境改善効果、便通・便性状改善効果などの整腸作用;脂質代謝改善効果;高血圧症改善効果;低う蝕性などを有するといわれている。
本発明の飲食品においてオリゴ糖を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下が好ましく、0.001質量部以上1質量部以下がより好ましく、0.001質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。特に、本発明の飲食品においてフラクトオリゴ糖を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.1質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上0.1質量部以下がさらに好ましい。本発明の飲食品においてイソマルトオリゴ糖を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がより好ましい。
デキストリン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖、果糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール、でんぷん等の上記で挙げた各種の糖類は1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。例えば麦芽糖は、グルコース2分子がα1−4結合した還元性二糖であり、澱粉を酵素分解して得られる。麦芽糖は、水に溶け易く、スクロースの3分の1程度の甘味を有するといわれる。麦芽糖としては、精製品であってもよく、また水飴、麦芽、さつまいも等の麦芽糖を含有する食品素材であってもよい。
また糖類のうち例えばマルチトールは、麦芽糖を原料とし、それを還元したものであり、還元麦芽糖とも呼ばれる。マルチトールはスクロース等に比べてカロリーが低く虫歯になりにくいとされ、飲食品に幅広く使用されている。マルチトールの形態としては、例えば、粉末状、水飴状、シロップ状等が挙げられる。マルチトールは精製品でもよいし、精製品のかわりに還元麦芽糖水飴等のようにマルチトールが含有される原料を用いてもよい。
本発明の飲食品において糖類を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がより好ましい。
またカルシウム、マグネシウム、鉄等の上記で挙げた各種のミネラル類は1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。ミネラル類のうち例えばカルシウムは骨を構成する大切な元素の一つであり、カルシウムの摂取不足は骨粗鬆症や骨の弱体化の主な原因とされている。カルシウムとしては各種のカルシウム塩や天然カルシウムが挙げられる。カルシウム塩としては、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、ステアリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。天然カルシウムとしては、卵殻カルシウム、ホタテ貝殻カルシウム、サンゴカルシウム、牛骨粉、魚骨粉等の生物に由来するものや、ドロマイト、石灰石などの鉱物に由来するもの等が挙げられる。
本発明の飲食品においてミネラル類を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。
また、レモン、リンゴ、明日葉、ケール、甘藷、甘藷茎葉、じゃがいも、ニンジン、カボチャ、ニガウリ、トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、スピルリナ、抹茶等の上記で挙げた各種の植物又は植物加工品は1種のみを用いてもよいし2種以上を混合してもよい。例えば抹茶は健康食品素材又は健康嗜好品等として、また、味、香り、色彩が好ましいことから、飲用のみだけでなく、各種加工飲食品への添加材料として用いられている。抹茶としては、てん茶や、煎茶、玉露など緑茶を粉末化してあればよい。
本発明の飲食品において植物又は植物加工品、中でも抹茶を含有する場合、その含有量は、六条大麦の茎葉1質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。
本発明の飲食用組成物は、任意の形態とすることができる。本発明の飲食用組成物の形態としては、例えば、飲食などの経口摂取に適した形態、具体的には、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
本発明の飲食用組成物の具体例としては、清涼飲料などの各種飲料、パン・菓子類、麺類などの各種食品、調理品等を挙げることができる。ここでいう飲料には、青汁や、青汁に果汁や野菜、乳製品等を添加してジュース、シェイク、スムージーにしたり、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもと等の形態としたものを挙げることができる。ここでいう飲料には、液体状の組成物だけでなく、固形状の組成物であって、飲用時に水などの溶媒と混合して液体状の飲料とするものが含まれる。また、パン・菓子類としては、食パン、菓子パン、フランスパン、イギリスパン、マフィン、蒸しパン、ドーナツ、ワッフル等のパン類や、バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ホットケーキ等のケーキ類、シャーベット、アイス等の冷菓、ゼリー、クッキー等を挙げることができる。麺類としては、うどんや素麺等が挙げられる。調理品としては、カレー、シチュー、味噌汁、野菜スープ等のスープやそれらのもと、粉末調味料等を挙げることができる。
本発明の飲食用組成物は、粉末状(粉末、顆粒などの粉の形態)であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適するとともに、この飲食用組成物が水と混合した時に色が鮮やかであることから好ましい。また本発明の飲食用組成物が固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用する等経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。また、栄養機能表示食品、特定保健用食品として用いても良いことは言うまでもない。
本発明の飲食品は、六条大麦の茎葉をビタミン類、食物繊維、多糖類、オリゴ糖、糖類、ミネラル類、及び、植物又は植物加工品から選ばれる1種以上(特定成分)と共に含有することによって、これら特定成分を二条大麦の茎葉と共に含有した従来の飲食品に比べて、味や香りに優れるため、美味しく摂取でき、嗜好性が高い。
例えばビタミンB1等のビタミン類は通常独特のビタミン臭を有するところ、後述する実施例の記載から明らかな通り、ビタミン類を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、ビタミン類を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて特にえぐ味及び酸味が少なくなり、また甘味が強まり、またビタミン類のビタミン臭が改善され、香りがよいため、美味しく摂取できる。
また例えば後述する実施例の記載から明らかな通り、難消化性デキストリン等の食物繊維を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、食物繊維を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて食物繊維の臭いが改善され、香りがよい。またこの飲食品は、前記従来の飲食品に比べて、特に甘味が強化され、えぐ味、苦味及び酸味も少なくなり、香り及び喉越しもよく、美味しく摂取できる。
また例えば後述する実施例の記載から明らかな通り、ヒアルロン酸等の多糖類を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、多糖類を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、特に、えぐ味が少なく、甘味が強く、苦味及び酸味も少なく、香りがよく、喉越しもよく、美味しく摂取できる。
また例えば後述する実施例の記載から明らかな通り、フラクトオリゴ糖やイソマルトオリゴ糖等のオリゴ糖を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、フラクトオリゴ糖を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、特にえぐ味が少なく、甘味が強く、香りがよく、美味しく摂取できる。特にイソマルトオリゴ糖を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、イソマルトオリゴ糖を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、苦味も低減される。
また例えば後述する実施例の記載から明らかな通り、糖類として例えば麦芽糖を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、麦芽糖を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、特に甘味が強く、香り及びのどごしがよく、美味しく摂取できる。また糖類として例えばマルチトールを六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、マルチトールを二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、特に香りがよく、美味しく摂取できる。
また例えば後述する実施例の記載から明らかな通り、カルシウム等のミネラル類を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、ミネラル類を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、特に甘味が強く、苦味が少なく、香りもよく、緑色が一層鮮やかになり見た目がよく、美味しく摂取できる。
また例えば後述する実施例の記載から明らかな通り、抹茶等の植物又は植物加工品を六条大麦の茎葉と共に含有する本発明の飲食品は、植物又は植物加工品を二条大麦の茎葉と共に含有する従来の飲食品に比べて、特に甘味が強く、苦味が少なく、香りがよく、美味しく摂取できる。
また、本発明の飲食用組成物は、大麦の茎葉に由来するビタミン類、ミネラル類、食物繊維等を多く含むため、これを摂取することは、健康維持に有用である。また、本発明の飲食用組成物は、乳酸菌を培養し増殖させる作用を有する組成物としても用いることができる。
以下では、本発明の飲食用組成物を乳酸菌増殖用として用いた組成物(以下「乳酸菌増殖用組成物)ともいう。)について説明する。
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、六条大麦の茎及び/又は葉(茎葉)を原料の一つとして用いている。六条大麦の品種としては様々なものがあることが知られているところ、本発明の乳酸菌増殖用組成物は、特定品種の六条大麦の茎葉を用いていることが好ましい。ここでいう特定品種とは、倍取、シルキースノウ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウの6品種である。これらの品種の六条大麦は、例えば精麦用として、具体的には、麦味噌や麦茶等の原料として一般的に用いられているものであるが、乳酸菌増殖用組成物の原料としてはこれまで用いられていなかった。本発明の乳酸菌増殖用組成物が、これら6品種のいずれかを用いる場合、6品種のうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記乳酸菌増殖用組成物は、六条大麦の茎葉の加工物、特に特定品種の六条大麦の茎葉の加工物を含有することによって、乳酸菌を良好に増殖させることができる。特に、前記特定品種として、倍取、シルキースノウ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種を用いると、一層良好に、乳酸菌を増殖させることができる。
乳酸菌増殖用組成物は、乳酸菌の増殖作用を良好とする観点から、粉末状や液体状であることが好ましい。前記の大麦の茎葉の加工物としては、例えば後述する実施例における評価例4の記載から明らかなように、本発明では、茎葉の乾燥粉末や搾汁といった複数の異なる加工物の形態において従来の二条大麦の茎葉に比べて高い乳酸菌増殖効果が得られるものであり、特定の加工物の形態に限定されるものではない。しかしながら、より一層高い乳酸菌増殖効果を得る観点等から、大麦の茎葉の加工物は、茎葉の乾燥粉末、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、茎葉のエキス及びその乾燥粉末から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。また、乳酸菌増殖用組成物は、大麦の茎葉の加工物以外の成分として、オリゴ糖、水溶性食物繊維、乳酸菌を含むことが好ましい。
前記乳酸菌としては、糖類から多量の乳酸を生成する細菌であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium mongoliense、Lactbacillus brevis、Lactbacillus gasseri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus delburvecki、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus halivaticus、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacilus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus sakei、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus fermentum、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis(Enterococcus faecalisと称されることもある))、Enterococcus faesium(Streptococcus faesiumと称されることもある)、Streptococcus thermophilus、Lactococcus lactis(Streptococcus lactisと称されることもある)、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc oenos、Pediococcus acidilactici、Pediococcus pentosaceus、Staphylococcus carnosus、Staphylococcus xylosus、Tetragenococcus halophilus、Bacillus coagulans、及びBacillus mesentericusなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。乳酸菌増殖用組成物が乳酸菌を含有する場合、この乳酸菌は乳酸菌増殖用組成物が増殖対象とする乳酸菌と同一種のものであってもよく、異なる種のものであってもよい。
前記乳酸菌の性質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、耐熱性、耐酸性、耐糖性、耐塩性、有胞子性などが挙げられる。
前記乳酸菌の入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヨーグルトや野菜等の食品から単離された乳酸菌や市販品を用いてもよい。
前記乳酸菌増殖用組成物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、乳酸菌増殖用組成物は粉末状等の固体の形態の組成物とする場合、大麦の茎葉の加工物そのものを用いることによって調製できるほか、必要に応じて該加工物を、オリゴ糖、乳酸菌、水溶性食物繊維等を含む任意成分と混合することによって調製する方法等が挙げられる。また例えば、乳酸菌増殖用組成物を、後述するように乳酸菌用培地及び乳酸菌の培養方法に用いる場合は、無機塩類を含む溶媒に、固体の形態の乳酸菌増殖用組成物を分散又は溶解して分散液又は溶解液等の液体の形態の乳酸菌増殖用組成物を調製する方法等が挙げられる。この場合、任意成分を溶媒に分散又は溶解するタイミングは、大麦の茎葉の加工物の溶媒への分散又は溶解と同時である必要はなく、大麦の茎葉の加工物を分散又は溶解した前、又は後のいずれであってもよい。無機塩類を含む溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられるが、これらの中でも、リン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」ともいう。)が好ましい。このような乳酸菌増殖用組成物は、以下に示す、乳酸菌用培地及び乳酸菌の培養方法において好適に用いることができる。
(乳酸菌用培地及び乳酸菌の培養方法)
前記乳酸菌用培地は、前記乳酸菌増殖用組成物を含有してなり、更に必要に応じて乳酸菌の生育に好適な成分を含有してなる。前記乳酸菌の培養方法は、前記乳酸菌用培地を用いて乳酸菌を培養する方法である。
前記乳酸菌増殖用組成物及び前記の乳酸菌用培地により増殖される乳酸菌としては、糖類から多量の乳酸を生成する細菌であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述の乳酸菌と同様の菌などが挙げられる。
前記乳酸菌用培地における培地成分としては、前記乳酸菌増殖用組成物を含有するものであれば、特に制限はなく、通常乳酸菌に使用される培地の成分の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコース、オリゴ糖等の炭素源;ポリペプトン、酵母エキス、カゼイン等の窒素源;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類などの乳酸菌の生育に好適な成分などが挙げられるが、前記リン酸緩衝生理食塩水と前記特定品種の大麦の茎葉の粉末を含有する乳酸菌増殖用組成物とからなる液体培地が、好適に乳酸菌を増殖させることができる点で好ましい。また、前記乳酸菌増殖用組成物を含む液体培地を、前培養において用いてもよく、本培養において用いてもよい。
前記乳酸菌用培地における前記の特定品種の大麦の茎葉の加工物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限値としては、0.002質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が特に好ましく、上限値としては、90質量%以下が特に好ましい。前記含有量が、0.002質量%未満であると、乳酸菌が増殖されにくいことがある。
前記乳酸菌用培地における滅菌条件としては、前記大麦の茎葉に変質が生じず、乳酸菌に用いることができる培地を滅菌できる条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、115℃〜126℃、15分間〜30分間で高圧蒸気滅菌することが好ましい。
前記乳酸菌の培養条件(培地中のpH、溶存酸素、培養温度、及び培養時間等)としては、通常乳酸菌に使用される培養条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸菌の科学と技術(乳酸菌研究集談会 編)等に記載の培養条件などが挙げられる。
本発明の飲食用組成物を用いた乳酸菌増殖用組成物は、生体内において乳酸菌を増殖させるものでありうる。またこの乳酸菌増殖用組成物は、生体外において乳酸菌を増殖促進させるものであってもよい。
前記の乳酸菌増殖用組成物は、これを用いることにより、安価かつ簡便に、乳酸菌を増殖させることができ、しかも従来の二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物に比べて、乳酸菌の増殖促進効果が高いものとなるので、例えば、乳酸菌を含有する素材、食品、食品素材、食品組成物等の添加物として好適に利用することができる。
また、同様に、前記の乳酸菌増殖用組成物を含有する乳酸菌用培地は、これを用いることにより、安価かつ簡便に、乳酸菌を増殖させることができ、しかも従来の二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用培地に比べて、乳酸菌の増殖促進効果が高いものとなるので、乳酸菌の培養に好適に用いることができ、安全性にも優れるため、例えば、乳酸菌を含有する素材、食品、食品素材、食品組成物等の添加物として好適に利用することができる。
[2.栽培方法]
本発明の栽培方法は、大麦の茎葉の栽培方法に関する。
本発明の栽培方法における大麦は、二条大麦及び六条大麦のいずれの大麦でもよい。二条大麦の例として、ニシノホシ、はるか二条、ニシノチカラ、はるしずく等が挙げられ、六条大麦の例として、ファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ、はがねむぎ、カシマゴール、赤神力(登録商標)、ミノリムギ、マサカドムギ、すすかぜ、カシマムギ、早生坊主等が挙げられる。
本発明においては、特に限定されないが、大麦の茎葉の味や栄養価を高めるために、大麦を播種から出穂前まで栽培して収穫することが好ましく、出穂直前まで栽培して収穫することがより好ましい。なお、本明細書においては、出穂前の大麦の茎葉を、まとめて大麦若葉ということがある。
本発明の栽培方法は、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する。10℃未満の日較差であると、播種後の草丈の伸びが悪い。好ましくは、日較差が月平均で10℃〜20℃、より好ましくは10℃〜15℃、さらに好ましくは10℃〜13℃である。なお、日較差とは、1日のうちの最高気温と最低気温の差(気温差)である。
大麦の茎葉は、気温が4℃未満であるとあまり生育しないことから、1日の平均気温が少なくとも4℃以上であることが好ましい。また、気温が高すぎても大麦の栽培に適さないことから、1日の平均気温が30℃以下であることが好ましい。
大麦を収穫するまで、好ましくは大麦若葉を収穫するまで、月平均で10℃以上の日較差が安定して続くことが好ましい。大麦若葉を収穫するのに、一般的に20日〜90日間栽培するので、その間、平均で10℃以上の日較差があることが求められる。なお、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く期間に栽培することが好ましく、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上、好ましくは6ヶ月以上、さらに好ましくは9ヶ月以上続くような場所で栽培すれば、繰り返し収穫することができる。
上記日較差は、そのような自然条件の圃場を選択して大麦を栽培してもよいし、グリーンハウスのような、人工でそのような条件を作れる圃場で大麦を栽培してもよい。
上記日較差以外の栽培条件、例えば、栽培温度、日長、排水、種子の準備、土壌改良、土壌pH、施肥、耕紀・整地、播種、除草、踏圧・排水、病害虫防除などは、当業者であれば容易に選択することができるが、例えば、農林水産省の「水稲・麦・大豆栽培基準」の「2.麦栽培基準」や、「麦類の栽培と利用/小柳敦史・渡邊好照編」等を参考にすることができる。
本発明の栽培方法によれば、播種から約1ヶ月で草丈が30cm以上になり、大麦の生育を促進することができる。また、本発明の栽培方法により収穫された大麦の茎葉に含まれる成分である炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素、植物に特有の色素、有機化合物等の含有量が向上していると考えられる。具体的には、タンパク質、脂質、糖質、食物繊維、ナトリウム、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK1、ビオチン、パントテン酸、カロテン、葉酸、ナイアシン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、亜鉛、銅、鉄、マンガン、クロム、ヨウ素、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン酸、システイン、スレオニン、セリン、チロシン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、リジン、ロイシン、オクタコサノール、カテキン、グルコン酸、ポリフェノール、クロロフィル、ルテイン、γ−アミノ酪酸、β−グルカンなどが挙げられる。さらに、SOD様活性(スーパーオキシド消去活性)も向上していると考えられる。
本発明の栽培方法により収穫された大麦の茎葉は、青汁等の飲食用組成物に加工することができる。この際、特定の大麦の1品種を単独で使用することができ、又は他の品種とともに2品種以上の組合せで使用することができる。飲食用組成物のための加工方法に加えて、飲食用組成物として配合してもよい添加物や飲食用組成物の形態については、上記[1.飲食用組成物]における該当する記載を参照できる。
[3.六条大麦の茎葉(1)]
本発明の六条大麦の茎葉の第1の態様は、熊本県阿蘇地域で栽培された六条大麦の茎葉に関する。以降では、本発明の六条大麦の茎葉の第1の態様を「六条大麦の茎葉(1)」ともよぶ。
本発明の六条大麦の茎葉(1)の例としては、はがねむぎ、カシマゴール、シルキースノウ、赤神力(登録商標)、ミノリムギ、シュンライ、ファイバースノウ、カシマムギ、マサカドムギ、すすかぜ、カシマムギ、早生坊主などが挙げられる。
本発明の六条大麦の茎葉(1)は、熊本県阿蘇地域で栽培されることに特徴がある。2012年の阿蘇地域(例えば、高森)の気候は、気象庁ホームページの気象統計情報によれば、年平均降水量240mm/月、年平均気温12.8℃、年平均日照時間135時間/月である。
一方、大麦を多く栽培している北海道(例えば、帯広)の気候(2012年)は、年平均降水量98.1mm/月、年平均気温7.2℃、年平均日照時間157時間/月であり、同様に大麦を多く栽培している佐賀県(例えば、鳥栖)の気候(2012年)は、年平均降水量190mm/月であり、鳥栖と近隣の久留米の気候は、年平均降水量238.9mm/月、年平均気温12.8℃、年平均日照時間135時間/月である。
このように、気候は地域差が大きく、大麦の生育に影響を与え、その結果、大麦の茎葉に含まれる栄養素の量にも影響を与える。
大麦の生育が影響されると、例えば、草丈、葉の幅、葉の長さ、葉の厚み等の栽培適性が変化しうる。
栄養素とは、特に限定されないが、例えば、脂質、糖質、食物繊維、各種ビタミン類、葉酸、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどの無機類、ポリフェノール、葉緑素、各種アミノ酸などが挙げられ、具体的なものは上記[2.栽培方法]における該当する記載で挙げられているものである。
本発明の六条大麦の茎葉(1)に有意に多く含まれる栄養素として、例えば、アミノ酸が挙げられ、好ましくは、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンである。これらのアミノ酸のいくつかは、うまみ成分でもあり、味に影響を与えると考えられる。また、これらのアミノ酸は、同じ六条大麦を北海道と阿蘇地域でそれぞれ栽培したときに、阿蘇地域で栽培された六条大麦の茎葉の方に有意に多く含まれていることがわかった。
本発明の六条大麦の茎葉(1)は、青汁等の飲食用組成物に加工することができる。本発明の六条大麦の茎葉(1)を飲食用組成物の原料として使用する際は、特定の六条大麦の1品種を単独で使用することができ、又は他の品種とともに2品種以上の組合せで使用することができる。飲食用組成物のための加工方法に加えて、飲食用組成物として配合してもよい添加物や飲食用組成物の形態については、上記[1.飲食用組成物]における該当する記載を参照できる。
[4.六条大麦の茎葉(2)]
本発明の六条大麦の茎葉の第2の態様は、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉に関する。以降では、本発明の六条大麦の茎葉の第2の態様を「六条大麦の茎葉(2)」ともよぶ。六条大麦の茎葉(2)は、飲食用組成物に使用される六条大麦の茎葉であることが好ましい。
本発明の六条大麦の茎葉(2)の具体例としては、青汁等の飲食用組成物の原料として使用した場合に、二条大麦や六条大麦品種「赤神力」などの葉や茎を用いた従前の飲食用組成物に比べて、栽培適性の高さ、栄養成分の含有量、色が鮮やかであることによる見た目の美しさと、風味の良好さとを備えることができることから、倍取、シルキースノウ、ファイバースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、シュンライ、はがねむぎ及びカシマゴールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の六条大麦の茎葉(2)は、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培されたものである。栽培とは、当業界において通常知られる方法により六条大麦を種や苗などから葉や茎を収穫できる程度にまで生育させることであれば特に限定されず、使用する土以外の温度や湿度などの条件は当業者により適宜設定することができる。
本発明の六条大麦の茎葉(2)において、黒ボク土は、通常知られている黒ボク土であれば特に限定されないが、例えば、主に火山灰土と腐葉土からなり、黒色に近い色をしており、ボクボクした感触(軽くてサラサラしている)の土であると知られている(図6を参照)。赤土(図7を参照)と比べると、黒色が濃いことがわかる。また、黒ボク土は、赤土と比べると、有効態リン酸の含有量が小さく、N:P比が2〜5:12〜17程度である。したがって、大麦を黒ボク土で栽培した場合、大麦に対して過剰なリンの供給を回避できる。さらに、黒ボク土は、赤土より、陽イオン交換量が2倍程度多い。これにより、黒ボク土は、赤土に比べて、豊富な量の交換性石灰、交換性苦土及び交換性加里を含有する傾向にある。黒ボク土の土壌分析データの非限定的な一例は、後述する実施例に記載の表24のとおりとなる。なお、参考として、赤土の土壌分析データも併せて示す。
本発明の六条大麦の茎葉(2)において、少なくとも一部に黒ボク土を含む土は、黒ボク土又は黒ボク土と他の土とを混合させた混合土であれば特に限定されない。例えば、混合土の場合は黒ボク土と他の土との混合割合は黒ボク土:他の土=0.1〜9.9:9.9〜0.1とすることができるが、好ましくは1〜9:9〜1である。混合土で栽培する場合において、黒ボク土の割合を大きくすることにより、黒ボク土と異なる土、例えば、赤土で栽培されたものより、六条大麦の丈、分けつ、色、茎径及び葉幅のいずれかの特性又はこれらの2種以上の特性が優れたものになる。
六条大麦の丈、分けつ、色、茎径及び葉幅は、飲食用組成物の原料の品質に影響する特性である。六条大麦の丈、茎径、葉幅は大きければ大きいほど、また、分けつは多ければ多いほど生育状況が良好で、栽培適性に優れることを示す。六条大麦の色は、飲食用組成物の美観に影響することから、濃緑色であることが好ましい。具体的には、葉色スケールを用いた場合、1本の大麦の葉の平均値が例えば4.0以上であり、好ましくは4.5以上である。
少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培された六条大麦は、例えば、赤土で栽培されたものと比べて、使用する土以外の栽培条件や栽培日数が同一である場合、丈、分けつ、色、茎径及び葉幅からなる群から選ばれる少なくとも1つの特性が飲食用組成物の原料として良好であるものであれば特に限定されず、好ましくはこれらの1つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.1倍以上、より好ましくはこれらの1つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.2倍以上、さらに好ましくはこれらの1つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.3倍以上又はこれらの2つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.1倍以上である。例えば、赤土で栽培した大麦の葉幅が5cmであり、黒ボク土で栽培した大麦の葉幅が6cmである場合、黒ボク土で栽培した大麦の葉幅は、赤土で栽培されたものに比べて1.2倍以上となる。
また、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培された六条大麦は、例えば、赤土で栽培されたものと比べて、使用する土以外の栽培条件や栽培日数が同一である場合、総ポリフェノール量やアミノ酸含有量が高くなる傾向にある。そこで、本発明の六条大麦の茎及び/又は葉は、赤土で栽培されたものと比べて、総ポリフェノール量、アミノ酸含有量又はその両方の総ポリフェノール量及びアミノ酸含有量が高いものであることが好ましい。
本発明の六条大麦の茎葉(2)は、青汁等の飲食用組成物に使用することができる。本発明の六条大麦の茎葉(2)を飲食用組成物の原料として使用する際は、特定の六条大麦の1品種を単独で使用することができ、又は他の品種とともに2品種以上の組合せで使用することができる。
本発明の六条大麦の茎葉(2)は、従前の栽培方法を用いて得られた六条大麦の葉や茎に比べて、栽培適性が高く、栄養が豊富で、見た目が美しく、風味が良好であることから、飲食用組成物の原料として適するものである。したがって、本発明の六条大麦の茎葉(2)を原料として用いた飲食用組成物は、例えば、赤土で栽培したものを原料として用いた飲食用組成物と比べて、栄養が豊富であり、かつ、色が鮮やかであることによる見た目の美しさと風味の良好さとを備えた嗜好性が高いものである。特に、本発明の六条大麦の茎葉(2)を含む飲食用組成物は、粉末の形態とした場合、これを水と混合すると、緑色が鮮やかなものとなる。また、本発明の飲食用組成物の風味について具体的に説明すると、本発明の飲食用組成物は、従来の飲食用組成物と比べて、上記のように緑色が鮮やかであるにも関わらず、甘みが強く、かつえぐみが弱い。また、本発明の飲食用組成物は、従来の飲食用組成物と比べて、えぐみが弱く、青臭さも弱く、かつ美味しく摂取することができる。
本発明の六条大麦の茎葉(2)は、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培した後、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前に収穫されるものであることが好ましいが、詳しくは上記[1.飲食用組成物]における該当する記載を参照できる。
本発明の六条大麦の茎葉(2)は、青汁用の飲食用組成物の原料として使用するために、各種の加工処理に供され得る。飲食用組成物のための加工方法に加えて、飲食用組成物として配合してもよい添加物や飲食用組成物の形態については、上記[1.飲食用組成物]における該当する記載を参照できる。
本発明の別の態様として、本発明の六条大麦の茎葉(2)を栽培する方法が提供される。本発明の六条大麦の茎葉(2)を栽培する方法は、六条大麦の種又は苗を少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培する工程を含む。本発明の六条大麦の茎葉(2)を栽培する方法では、上記工程の前段又は後段に、本発明の六条大麦の茎葉(2)を栽培することという目的を損なわない限り、任意の工程を採用し得る。
本発明の六条大麦の茎葉(2)を含む青汁用の飲食用組成物の使用方法は特に限定されず、上記[1.飲食用組成物]における該当する記載を参照できる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[実施例I]
以下の実施例1−1〜10−4のうち、前記特定成分を含有していない実施例1−1〜1−8は、製造例でもある。
〔実施例1−1〕
原料として、背丈が約30cmで刈り取った倍取の茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように微粉砕処理し、茎葉の乾燥粉末試料を得た。
〔実施例1−2〜1−6、比較例1−1〜1−9〕
実施例1−1で用いた品種の代わりに、下記の表1に示す大麦品種を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、茎葉の乾燥粉末試料を得た。なお、比較例1−9の大麦品種は、以下の評価例1−1〜2−4の標準品として用いた。
[評価例1]
実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−9の粉末試料1.8gを、水100mlと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、比較例1−9の粉末試料から得られたサンプルを、標準品とした。
被験者として、健常な成人10名を無作為に選出した。これらの被験者10名に対し、以下の(1)〜(3)の官能評価を実施した。
(1)評価例1−1(色の鮮やかさ)
前記の被験者10名に、実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−8の各サンプルについて、標準品である比較例1−9のサンプルと比べて色が鮮やかであるか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品に比べて緑色が鮮やかである」と答えた人の数を、色の鮮やかさの評価点として、図1のグラフに示す。図1に示すように、六条大麦(実施例1−1〜1−4、1−6)は、二条大麦(比較例1−2〜1−8及び比較例1−9)と比べて、色が鮮やかであり、嗜好性が高いことが判る。また実施例1−5の六条大麦も、二条大麦のうち最も評価の高い比較例1−2及び1−4と同等程度の色の鮮やかさを有することが判る。
(2)評価例1−2(えぐみの弱さ及び甘さ)
前記の10名の被験者に、実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−8の各サンプルを、標準品である比較例1−9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて「えぐみが弱い」、甘いと感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品に比べてえぐみが弱い」、「標準品よりも甘い」とそれぞれ答えた人の数を、えぐみの弱さ、甘さの評価点として、図2のグラフに示す。図2に示すように、六条大麦(実施例1−1〜1−5)は、従来から飲食品に使用されている六条大麦(比較例1−1)及び二条大麦(比較例1−9)、並びにその他の二条大麦(比較例1−2〜1−8)と比べて、えぐみが弱く、甘いことから、飲みやすく嗜好性が高いことが判る。また、実施例1−6の六条大麦も、えぐみの弱さや甘さの点で二条大麦のうち最も評価の高い比較例1−2及び1−7と同等程度に優れていることが判る。
(3)評価例1−3(えぐみの弱さ及び美味しさ)
前記の10名の被験者に、実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−8の各サンプルを、標準品である比較例1−9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて、「えぐみが弱い」、「また飲みたい」と感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品に比べてえぐみが弱い」、「標準品に比べてまた飲みたい」とそれぞれ答えた人の数を、えぐみの弱さ、美味しさの評価点として、図3のグラフに示す。図3に示すように、特定の六条大麦(実施例1−1〜1−4)は、従来から飲食品に使用されている六条大麦(比較例1−1)及び二条大麦(比較例1−9)、並びにその他の二条大麦(比較例1−2〜1−8)と比べて、えぐみが弱く、美味しいことから、飲みやすく嗜好性が高いことが判る。また実施例1−5及び1−6の六条大麦も、えぐみの弱さや美味しさの点で二条大麦のうち最も評価の高い比較例1−2と同等程度に優れていることが判る。
図1ないし図3の結果から明らかな通り、六条大麦として倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、シュンライ及びファイバースノウを用いた各実施例の粉末試料は、水と混合した時の緑色の鮮やかさに優れるだけでなく、えぐみが弱く甘さが強いという点でも優れ、また、えぐみが弱く美味しいという点でも優れていることが判る。これに対して、二条大麦を用いた各比較例の粉末試料は、色の鮮やかさの点、えぐみが弱く甘いという点やえぐみが弱く美味しいという点において、各実施例の粉末試料に劣っていることが判る。また、六条大麦「赤神力」を用いた比較例の粉末試料は、色の鮮やかさは、各実施例の粉末試料と同等ではあるものの、えぐみが弱く甘さが強いという点や、えぐみが弱く美味しいという点で劣っていることが判る。よって、六条大麦の中でも、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、シュンライ及びファイバースノウを用いることで、色が鮮やかで見た目と味に優れ、風味が良好で嗜好性の高い飲食品を得ることが可能である。
〔実施例1−7〜1−8、比較例1−10〜1−13〕
実施例1−1で用いた品種の代わりに、下記の表2に示す大麦品種を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、茎葉の乾燥粉末試料を得た。
[評価例2]
実施例1−1、1−2、1−7、1−8及び比較例1−9〜1−13の粉末試料1.8gを、水100mlと混合して各サンプルを得た。
被験者として、健常な成人10名を無作為に選出した。これらの被験者10名に対し、以下の(4)〜(6)の官能評価を実施した。また、実施例1−7、1−8については比較例1−9を比較対象とする、以下(7)の官能評価も実施した。
(4)評価例2−1(青臭さの弱さ)
前記の10名の被験者に、実施例1−1、1−2、1−7、1−8及び比較例1−10〜1−13の各サンプルを、標準品である比較例1−9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて青臭さが弱いと感じるか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比べて青臭さが弱い」と答えた人の数を、青臭さの弱さの評価点として図4のグラフに示す。
(5)評価例2−2(甘みの強さ)
前記の10名の被験者に、実施例1−1、1−2、1−7、1−8及び比較例1−10〜1−13の各サンプルを標準品である比較例1−9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて、甘みが強いと感じるか否かを答えさせた。各サンプルについて「標準品と比べて甘みが強い」と答えた人の数を、甘みの強さの評価点として、図4のグラフに示す。
(6)評価例2−3(美味しさ)
前記の10名の被験者に、実施例1−1、1−2、1−7、1−8及び比較例1−10〜1−13の各サンプルを標準品である比較例1−9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて、「美味しい」と感じるか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比べて美味しい」と答えた人の数を、美味しさの評価点として図4のグラフに示す。
図4の結果から明らかな通り、六条大麦として倍取、シルキースノウ、はがねむぎ及びカシマゴールを用いた各実施例の粉末試料は、青臭さの弱さ、甘みの強さ、美味しさの各項目の評価点の合計が20点以上であり、風味が良好で、嗜好性が高いことが判る。これに対して、二条大麦を用いた比較例1−10〜1−13の粉末試料は、前記の各項目の評価点の合計が15点未満であり、風味の点で、各実施例の粉末試料に劣ることが判る。よって、六条大麦の中でも、倍取、シルキースノウ、はがねむぎ及びカシマゴールを用いることで、風味が良好で嗜好性の高い飲食用組成物を得ることが可能である。
(7)評価例2−4(色の鮮やかさ)
前記の被験者10名に、実施例1−7及び1−8の各サンプルについて、前記評価例(1−1)と同様に、標準品である比較例1−9のサンプルと比べて色が鮮やかであるか否かを答えさせたところ、実施例1−7及び1−8のいずれにおいても、被験者10名のうち、9名が「標準品に比べて緑色が鮮やかである」と答えた。よって、実施例1−1〜6で用いた六条大麦品種である倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、シュンライ及びファイバースノウに代えて、はがねむぎ、カシマゴールを用いた場合においても、従来用いていた二条大麦に比べてより色の鮮やかな飲食品が得られることが判る。
[評価例3]
〔実施例2−1〜2−3及び比較例2−2〕
下記表3で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表3に示す特定成分である粉末状のビタミンB1を0.005g配合して粉末試料を得た。ビタミンB1としては、チアミン塩酸塩を用いた。ここで同表において、ニシノホシの茎葉の粉末は比較例1−9で得られたものを用い、シルキースノウの茎葉の粉末は実施例1−2で得られたものを用い、シュンライの粉末は、実施例1−5で得られたものを用い、ファイバースノウの粉末は、実施例1−6で得られたものを用いた(下記の表4〜表11においても同様)。
〔比較例2−1〕
前記のビタミンB1をそのまま粉末試料とした。
(1)評価例3−1(ビタミンB1との配合)
実施例2−1〜2−3及び比較例2−1〜2−2で得られた粉末試料を、水100mlと混合して各サンプルを得た。また、比較例1−9の粉末試料について同様にして得られたサンプルを、標準品とした。
被験者として、健常な成人を無作為に複数名選出した。これらの被験者に対し、下記表3で示す評価項目について標準品の評価点を5点として、最低点を0点とし、最高点を10点とする11段階評価で評価させた。被験者の評価点の平均値を評価値として、表3に示す。また、実施例2−1〜2−3については、得られた評価値から比較例2−2の評価値を引いた値も併せて同表に示す。なお、下記の表3以降における評価項目のうち、「えぐ味」については弱いほど、「甘味」は強いほど、「酸味」は弱いほど、「臭い(香り)」は臭いが弱くまた香りがよいほど、「苦味」は弱いほど、「色」は緑色が鮮やかなほど、高評価としている。
表3に示す結果から、ビタミンB1を六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(2−1〜2−3)の粉末試料は、ビタミンB1を二条大麦の茎葉と共に含有する比較例2−2の粉末試料に比べて、特にえぐ味や甘味、酸味等の味や臭い、のどごし等の点で優れていることが判る。とりわけ「えぐ味」、「甘味」、「酸味」の項において比較例2−2に対して各実施例2−1〜2−3の評価点は1.0点以上、「臭い(香り)」で1.75点以上、「おいしさ」の項で1.25点以上も上回っており、ビタミンB1の独特のビタミン臭が六条大麦の茎葉との配合により改善されていることによって、よりおいしく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例3−1〜3−3及び比較例3−2〕
下記表4で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表4に示す特定成分である粉末状の難消化性デキストリン1gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例3−1〕
前記難消化性デキストリンをそのまま粉末試料とした。
(2)評価例3−2(難消化性デキストリンとの配合)
実施例3−1〜3−3及び比較例3−1〜3−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表4に示す。
表4に示す結果から、難消化性デキストリンを六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(3−1〜3−3)の粉末試料は、難消化性デキストリンを二条大麦の茎葉と共に含有する比較例3−2の粉末試料に比べて、特にえぐ味や甘味、苦味、酸味等の味や臭い(香り)、のどごし等の点で優れることが判る。比較例3−2に対して各実施例3−1〜3−3の評価点は、特に、「えぐ味」の項において1.25点以上、「甘味」の項において1.75点以上、「苦味」の項で1.5点以上、「酸味」の項において1.0点以上、「臭い(香り)」の項で2点以上、「のどごし」の項において1.75点以上、「おいしさ」の項で1.5点以上も上回っており、比較例3−2に比べて、味や臭い(香り)が全般的に向上していることにより、おいしく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例4−1〜4−3及び比較例4−2〕
下記表5で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表5に示す特定成分である粉末状のヒアルロン酸0.03gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例4−1〕
前記ヒアルロン酸をそのまま粉末試料とした。
(3)評価例3−3(ヒアルロン酸との配合)
実施例4−1〜4−3及び比較例4−1〜4−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表5に示す。
表5に示す結果から、ヒアルロン酸を六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(4−1〜4−3)の粉末試料は、ヒアルロン酸を二条大麦の茎葉と共に含有する比較例4−2の粉末試料に比べて、特にえぐ味や甘味、苦味等の味や臭い(香り)、のどごし等の点で優れることが判る。各実施例4−1〜4−3の評価点は、比較例4−2に対して、特に、「えぐ味」の項で2.5点以上、「甘味」の項で2点以上、「苦味」の項で2.25点以上、「酸味」の項で1.0点以上、「臭い(香り)」の項で2.5点以上、「のどごし」の項において1.25点以上、「おいしさ」の項が2点以上も上回っており、比較例4−2に比べて、味や臭い(香り)が全般的に向上していることにより、美味しく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例5−1〜5−3及び比較例5−2〕
下記表6で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表6に示す特定成分である粉末状のフラクトオリゴ糖0.004gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例5−1〕
前記フラクトオリゴ糖をそのまま粉末試料とした。
(4)評価例3−3(フラクトオリゴ糖との配合)
実施例5−1〜5−3及び比較例5−1〜5−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表6に示す。
表6に示す結果から、フラクトオリゴ糖を六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(5−1〜5−3)の粉末試料は、フラクトオリゴ糖を二条大麦の茎葉と共に含有する比較例5−2の粉末試料に比べて、特にえぐ味や甘味等の味や臭い(香り)の点で優れることが判る。比較例5−2に対して各実施例5−1〜5−3の評価点は、特に、「えぐ味」の項で1.0点以上、「甘味」の項で1.75点以上、「臭い(香り)」の項で1.25点以上、「おいしさ」の項において1.5点以上も上回っており、比較例5−2に比べて、味や臭い(香り)が向上していることにより、美味しく摂取でき、嗜好性が高くなっていることが判る。
〔実施例6−1〜6−3及び比較例6−2〕
下記表7で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表7に示す特定成分である粉末状のイソマルトオリゴ糖0.3gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例6−1〕
前記イソマルトオリゴ糖をそのまま粉末試料とした。
(5)評価例3−5(イソマルトオリゴ糖との配合)
実施例6−1〜6−3及び比較例6−1〜6−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表7に示す。
表7に示す結果から、イソマルトオリゴ糖を六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(6−1〜6−3)の粉末試料は、イソマルトオリゴ糖を二条大麦の茎葉と共に含有する比較例6−2の粉末試料に比べて、特にえぐ味や甘味等の味や臭い(香り)の点で優れることが判る。比較例6−2に対して各実施例6−1〜6−3の評価点は、特に、「えぐ味」の項で1.25点以上、「甘味」および「苦味」の項で1.0点以上、「臭い(香り)」の項で1.75点以上、「おいしさ」の項において1.25点以上も上回っており、比較例6−2に比べて、これらの味や臭い(香り)が向上していることにより、美味しく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例7−1〜7−3及び比較例7−2〕
下記表8で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表8に示す特定成分である粉末状の麦芽糖1gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例7−1〕
前記麦芽糖をそのまま粉末試料とした。
(6)評価例3−6(麦芽糖との配合)
実施例7−1〜7−3及び比較例7−1〜7−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表8に示す。
表8に示す結果から、麦芽糖を六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(7−1〜7−3)の粉末試料の評価値は、麦芽糖を二条大麦の茎葉と共に含有する比較例7−2の粉末試料に対して特に、「甘味」の項で1.5点以上、「臭い(香り)」および「のどごし」の項で1.25点以上、「おいしさ」の項において1.75点以上も上回っており、比較例7−2に比べて、甘味等の味やのどごしが向上していること等により、美味しく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例8−1〜8−3及び比較例8−2〕
下記表9に示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表9に示す特定成分である粉末状のマルチトール1gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例8−1〕
前記マルチトールをそのまま粉末試料とした。
(7)評価例3−7(マルチトールとの配合)
実施例8−1〜8−3及び比較例8−1〜8−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表9に示す。
表9に示す結果から、マルチトールを六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(8−1〜8−3)の粉末試料の評価値は、マルチトールを二条大麦の茎葉と共に含有する比較例8−2の粉末試料に対して特に、「臭い(香り)」の項で1.25点以上、「おいしさ」の項において1.5点以上も上回っており、比較例8−2に比べて香りが向上していること等により、美味しく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例9−1〜9−3及び比較例9−2〕
下記表10で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表10に示す特定成分である粉末状のカルシウム(サンゴカルシウム)0.1gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例9−1〕
前記カルシウムをそのまま粉末試料とした。
(8)評価例3−8(カルシウムとの配合)
実施例9−1〜9−3及び比較例9−1〜9−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表9に示す。
表10に示す結果から、カルシウムを六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(9−1〜9−3)の粉末試料の評価値は、カルシウムを二条大麦の茎葉と共に含有する比較例9−2の粉末試料に対して特に、「甘味」の項で1.5点以上、「苦味」の項で1.0点以上、「臭い(香り)」および「色」の項において1.25点以上、「おいしさ」の項で1.25点以上も上回っており、比較例9−2に比べて甘味等の味や香りが向上していること等により、美味しく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
〔実施例10−1〜10−3及び比較例10−2〕
下記表11で示す品種の大麦の茎葉の粉末1gと、下記表11に示す特定成分である抹茶0.3gを配合して粉末試料を得た。
〔比較例10−1〕
抹茶をそのまま粉末試料とした。
(9)評価例3−9(抹茶との配合)
実施例10−1〜10−3及び比較例10−1〜10−2で得られた粉末試料について、(1)評価例3−1と同様にして評価値を得た。その結果を表9に示す。
表11に示す結果から、抹茶を六条大麦の茎葉と共に含有する各実施例(10−1〜10−3)の粉末試料の評価値は、抹茶を二条大麦の茎葉と共に含有する比較例10−2の粉末試料に対して特に、「甘味」の項で1.5点以上、「苦味」および「臭い(香り)」の項において1.0点以上、「おいしさ」の項で1.5点以上も上回っており、比較例10−2に比べて甘味等の味や香り等が向上していることにより、美味しく摂取でき、嗜好性が向上していることが判る。
[評価例4]
実施例1−1、1−2、1−7、1−8及び比較例1−9、1−10の粉末試料について、生体内での乳酸菌増殖効果のモデル試験として、以下の乳酸菌増殖試験を実施した。
<乳酸菌増殖試験1>
(乳酸菌用培地の作成)
粉末試料0.1gを、50mlコニカルチューブにとり、食品衛生検査指針に準じて作製したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)50mlで懸濁させた。この懸濁液を0.5mlとり、9.5mlPBSで希釈して、粉末試料の含有量が0.01質量%であるPBS(以下「0.01%麦添加PBS」ともいう。)を得た。この0.01%麦添加PBSを試験管に3mlとり、そこに6mlのPBSを加え、粉末試料の含有量が0.0033質量%であるPBS(0.0033%麦添加PBS)を得た。これをオートクレーブにて121℃、20minの条件で滅菌し、乳酸菌用培地を得た。
(乳酸菌の培養)
乳酸菌として、CELL BIOTECH製 Streptococcus faecalisの乾燥菌体(白色微粉末) 5×1011個/gを使用した。この乾燥菌体1gを50ml遠沈管にとり、PBS10mlで懸濁させた。この懸濁液を乳酸菌数の理論値が102個/ml(1×10-9g/ml)となるまで段階希釈したもの1mlを、前記で得られた乳酸菌用培地9mlに添加し、35℃、48hrの条件で静置培養を行った。これらの培養液について、培養開始より0、24、48hr時点におけるCFU測定を行った。CFU測定は、具体的には、BCP培地の寒天プレートに各培養時点の培養液100μlを付したものを、35℃で24時間インキュベートした後、コロニー数を計数することによって行った。
コロニー数の計数に用いたプレートの写真を図5に示す。また、得られたCFU値(cfu/g)の平均値を、乳酸菌数として下記の表12に示す。具体的には、実施例1−1及び1−2については上記静置培養を三連で行い、該三連で行った静置培養のそれぞれで得られた培養液についてCFU測定を二連で行った計六連の平均値を示し、実施例1−7及び1−8並びに比較例1−9及び1−10については上記静置培養を一連で行い、得られた培養液のCFU測定を二連で行った計二連の平均値を示す。表12及び図5における参考例1は、陰性コントロールとして、PBS1mlを、乳酸菌用培地9mlに添加して同様に静置培養したものについて、同様のCFU測定を行った結果である。
表12及び図5に示す結果から、六条大麦の茎葉の加工物である各実施例の粉末試料を用いて乳酸菌を培養すると、乳酸菌が良好に増殖することが判る。これに比べて、二条大麦の茎葉の加工物である各比較例の粉末試料を用いて乳酸菌を培養した場合、増殖しにくいことが判る。
更に、実施例1−5、1−6及び比較例1−9で得られた茎葉の乾燥粉末試料並びに、実施例1−2、1−5、1−6及び比較例1−9で得られた搾汁試料について、上記<乳酸菌増殖試験1>と同様の<乳酸菌増殖試験2>を実施した。
<乳酸菌増殖試験2>
(乳酸菌用の粉末試料入り培地の作成)
<乳酸菌増殖試験1>と同様にして、粉末試料入り培地を作成した。
(乳酸菌用の搾汁試料入り培地の作成)
PBS10mlに搾汁試料3μlを添加した。搾汁試料のBrix値が10%であり、搾汁試料添加後のPBSの密度が1g/cm3と仮定すると、「(3μl×10%)/10ml=0.003%」の計算式から、この培地中の固形分量は0.003質量%と計算された。これをオートクレーブにて121℃、20minの条件で滅菌し、乳酸菌用の粉末試料入り培地を得た。
(乳酸菌の培養)
乳酸菌として、CELL BIOTECH製 Streptococcus faecalisの乾燥菌体(白色微粉末)5×1011個/gを使用した。この乾燥菌体1gを50ml遠沈管にとり、PBS10mlで懸濁させた。この懸濁液を乳酸菌数の理論値が5×103個/mlとなるまで段階希釈した乳酸菌液100μlを、前記で得られた乳酸菌用の粉末試料入り培地9.9ml及び搾汁試料入り培地9.9mlにそれぞれ添加した。これ以外は、<乳酸菌増殖試験1>と同様にして、粉末試料入り培地に乳酸菌を添加した培養液については培養開始より8、24、32及び48hrの各時点におけるCFU測定を行った。また、搾汁試料入り培地に乳酸菌を添加した培養液については、培養開始より24及び48hrの各時点においてCFU測定を行った。これらのCFU測定は、<乳酸菌増殖試験1>と同様の方法で行った。なお各培養液の培養開始0hrのコロニー数は直接測定していないものの、1.6×103cfu/gと考えられる。これは、各培地に添加する前の乳酸菌液(理論値5×103個/ml)のCFU測定をしたところ1.6×105cfu/gであり、前記の各培養液においては、この乳酸菌液を100分の1に希釈しているためである。
表13に示す結果から、六条大麦の茎葉の加工物として、茎葉の乾燥粉末を用いた場合だけでなく茎葉の搾汁を用いて乳酸菌を培養した場合においても、二条大麦の加工物である比較例の搾汁試料を用いた場合に比べて、乳酸菌を良好に増殖させることができることが判る。
[実施例II]
[1.阿蘇地域及び鳥栖地域の気温差比較]
大麦を栽培する地域として、阿蘇地域と鳥栖地域を選択し、2013年10月2日に、それぞれの圃場に大麦を播種し、栽培した。なお、本明細書においては、阿蘇地域とは、熊本県の菊池を含む阿蘇山のすそ野一帯で同じような気候を示す地域をいい、鳥栖地域とは、佐賀県の鳥栖及び福岡県の久留米を含む平地一帯で同じような気候を示す地域をいう。
栽培期間の気温及び気温差について、阿蘇地域(菊池)及び鳥栖地域(久留米)における2013年10月1日〜12月31日のデータを表14及び表15に示す(気象庁ホームページより)。また、2013年10月〜12月の平均気温及び気温差を月毎にまとめたものを表16に示す。
表14〜表16から、阿蘇地域における10月から12月の3ヶ月間の日較差(気温差)は、継続して10℃以上であることがわかった。それに対して、鳥栖地域における10月から12月の3ヶ月間の日較差(気温差)は、何れも10℃未満であった。
また、阿蘇地域(菊池)と鳥栖地域(久留米)の気温データ(気象庁ホームページより、計測期間1981年から2010年)を以下の表17に示す。
表17より、阿蘇地域では、日較差(気温差)が年平均10℃以上、具体的には年平均11.3℃であり、9月から5月までの9ヶ月間にわたって、日較差が月平均10℃以上であることがわかった。鳥栖地域では、日較差が年平均10℃未満、具体的には年平均9.3℃であり、4月から5月までの2ヶ月間にわたって、日較差が月平均10℃以上であることがわかった。
[2.阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した場合の草丈比較評価]
2013年秋に、阿蘇地域と鳥栖地域の圃場において、二条大麦のニシノホシ、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを栽培して、阿蘇地域において播種後8日目、19日目、29日目、39日目、44日目、51日目及び63日目に、鳥栖地域において播種後8日目、15日目、27日目、34日目、41日目、49日目及び63日目に、草丈を測定した。その結果を以下の表18に示す。
表18より、阿蘇地域と鳥栖地域とで、同様の播種後の日数で草丈を比較すると、いずれの品種においても阿蘇地域で栽培したときの生育が良好であることがわかった。さらに、阿蘇地域では、試験をしたすべての大麦品種で、播種後39日目で40cm以上になり、鳥栖地域で栽培されたものと比べて約1ヶ月で生育に明らかな差がみられた。
また、阿蘇地域での播種後39日目の草丈と、鳥栖地域での播種後41日目の草丈を比較すると、阿蘇地域での栽培期間が2日短いが、いずれの品種においても阿蘇地域の方が鳥栖地域以上に生育していることがわかった。
さらに、2013年秋の栽培時に、各品種において、背丈が45cmを超えた播種後日数を比較した結果を表19に示す。
表19に示すとおり、鳥栖地域に比べて、阿蘇地域で栽培したときには、いずれの品種においても背丈が45cmを超える日数が短く、生育が良いことが示された。
以上より、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培した大麦は、そのような条件を満たさない条件下で栽培した大麦と比較して、生育が良くなっており、大麦の茎及び/又は葉を効率よく生育させることができることがわかった。
[3.阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した場合のアミノ酸含有量比較評価]
2013年秋、阿蘇地域及び鳥栖地域において、二条大麦であるニシノホシ並びに六条大麦であるファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを播種から約70日間栽培し、茎葉を収穫した。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、ブランチング槽で90〜100℃で90〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下になるまで、乾燥機中で温風によって乾燥させた。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕機を用いて粉砕処理し、茎葉の乾燥粉末を得た。
茎葉の乾燥粉末100g当たりのアミノ酸の含有量を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法で測定した。結果を表20に示す。
いずれの品種においても、阿蘇地域で栽培すると、鳥栖地域で栽培したものと比べて、茎葉中、明らかにアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、ヒスチジン、グリシン、スレオニン、バリン及びイソロイシンの含量が高いことが分かった。また、二条大麦(ニシノホシ)に比べて、六条大麦(ファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ)の方が、より含量が向上する傾向にあった。
[実施例III]
[1.阿蘇地域及び北海道地域において栽培した場合の草丈比較評価]
北海道及び阿蘇において、二条大麦のニシノホシ、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを、栽培して、播種から約60日目の草丈を測定した。
結果を表21に示す。表中の数値の単位は「cm」である。
[2.阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域において栽培した場合の草丈比較評価]
阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域の圃場において、二条大麦のニシノホシ、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを栽培して、各品種において、背丈が45cmを超えた播種後日数を比較した結果を表22に示す。
表23に示すとおり、鳥栖地域や北海道地域に比べて、阿蘇地域で栽培したときには、いずれの品種においても背丈が45cmを超える日数が短く、生育が良いことが示された。
[3.阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域において栽培した場合のアミノ酸含有量比較評価]
2013年春、阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域において、六条大麦であるファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライ並びに二条大麦であるニシノホシを播種から約70日間栽培し、茎葉を収穫した。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、ブランチング槽で90〜100℃で90〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下になるまで、乾燥機中で温風によって乾燥させた。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕機を用いて粉砕処理し、茎葉の乾燥粉末を得た。
茎葉の乾燥粉末100g当たりのアミノ酸の含有量を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法で測定した。結果を表23に示す。
いずれの品種においても、全般的に、阿蘇地域で栽培したものは、北海道地域や鳥栖地域で栽培したものと比べて、茎葉中、明らかにアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びアルギニンの含量が高いことが分かった。また、二条大麦(ニシノホシ)に比べて、六条大麦(ファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ)の方が、より含量が向上する傾向にあった。
[実施例IV]
1.実施例11−1〜4及び比較例11−1〜2
プランターに黒ボク土を入れ、プランター毎に六条大麦「シルキースノウ」、「シュンライ」、「ファイバースノウ」及び「カシマゴール」の4品種(実施例11−1〜4)又は二条大麦「ニシノホシ」及び「はるか二条」の2品種(比較例11−1〜2)の種4.8gを播種(20g/m2)した。給水や雑草管理などの通常の植物栽培法により、上記6品種の大麦を栽培した。なお、「カシマゴール」および「はるか二条」の種については、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の九州沖縄農業研究センターから提供されたものを使用した。
2.実施例11−5〜8及び比較例11−3〜4
実施例11−1〜4及び比較例11−1〜2で用いた黒ボク土の代わりに、黒ボク土及び赤土の混合土(黒ボク土:赤土=1:9)を用いた以外は、実施例11−1〜4及び比較例11−1〜2と同様にして、大麦を栽培した。なお、赤土は、天日干しにより乾燥させ、固まっている部分を破砕したものを用いた。
3.比較例11−5〜10
実施例11−1〜4及び比較例11−1〜2で用いた黒ボク土の代わりに、赤土を用いた以外は、実施例11−1〜4及び比較例11−1〜2と同様にして、大麦を栽培した。なお、赤土は、天日干しにより乾燥させ、固まっている部分を破砕したものを用いた。
黒ボク土及び赤土の土壌分析データの一例は表24のとおりである。
実施例11−1〜8及び比較例11−1〜10について、使用品種及び土をまとめたものを表25とした。
[評価例5−1]
栽培中の六条大麦について、10日間隔で、丈、分けつ数、茎径、葉幅及び色(スケールを使用)を測定した。赤土の測定値を基準とした黒ボク土及び混合土の相対値を表26に示す。表26に示されているとおり、黒ボク土又は黒ボク土及び赤土の混合土で栽培した六条大麦は、赤土で栽培したものと比べて、同じ栽培日数において、丈、分けつ数、茎径、葉幅及び色のいずれかの特性又はこれらの2種以上の特性において優れたものであった。また、黒ボク土を用いた条件では栽培開始後3日目程度で発芽したのに対して、赤土及び混合土を用いた条件では栽培開始後7日目前後で発芽した。このことから、黒ボク土を用いることにより、発芽日数を短縮することができることがわかった。


[評価例5−2]
栽培開始後33日後に収穫した六条大麦「シルキースノウ」及び「カシマゴール」並びに二条大麦「ニシノホシ」及び「はるか二条」の茎葉を水洗いし、付着した泥などを除去した後、得られた茎葉1gを用いて、Folin−Denis法(財団法人日本食品分析センター編集、五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説)により、総ポリフェノール量(質量%)を、クロロゲン酸を標準物質として測定した。結果を表27に示す。表27が示すとおりに、六条大麦「シルキースノウ」及び「カシマゴール」では、赤土で栽培した場合と比べて、黒ボク土及び混合土で栽培した場合に総ポリフェノール量が増加する傾向にあった。それに対して、二条大麦「ニシノホシ」及び「はるか二条」では、そのような傾向は見られなかった。このことは、黒ボク土を少なくとも一部に含む土で栽培すると、総ポリフェノール量が比較的高い六条大麦の茎葉が得られることを示す。


[評価例5−3]
栽培開始後33日後に収穫した茎葉を水洗いし、付着した泥などを除去した後、得られた茎葉についてジューサーを用いて搾汁し、得られた搾汁液を用いて、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法でアミノ酸の含有量を測定した。結果、数種のアミノ酸については、総ポリフェノール量と同様に、六条大麦では、赤土で栽培した場合と比べて、黒ボク土及び混合土で栽培した場合にアミノ酸含有量が増加する傾向にあった。このことは、黒ボク土を少なくとも一部に含む土で栽培すると、アミノ酸含有量が比較的高い六条大麦の茎葉が得られることを示す。
本発明によれば、原料由来の栄養素やうまみ成分の含有量が高い健康食品を提供することができる。また、本発明によれば、大麦の茎葉を短期間で効率よく生育させると同時に、味や栄養価を高めることのできる栽培方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 大麦の茎及び/又は葉を用いた青汁用の飲食用組成物であって、
    該大麦が、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ又はファイバースノウである品種の大麦であり、
    前記の大麦の茎及び/又は葉が乾燥粉末であって、該乾燥粉末は、水分含量が5質量%以下である、青汁用の飲食用組成物。
  2. 大麦が、はがねむぎ又はカシマゴールである品種の大麦であり、
    前記の乾燥粉末は、90質量%以上が200メッシュ区分を通過する、請求項1に記載の青汁用の飲食用組成物。
  3. 前記の乾燥粉末が、大麦の茎及び/又は葉を切断する処理と、大麦の茎及び/又は葉をブランチングする処理と、大麦の茎及び/又は葉を乾燥する処理と、大麦の茎及び/又は葉を粉砕する処理とを有する製造方法により得られたものである、請求項1又は2に記載の青汁用の飲食用組成物。
  4. 大麦の茎及び/又は葉を用いた青汁用の飲食用組成物の呈味及び色を改善する方法であって、
    該大麦として、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ又はファイバースノウである品種の大麦を用い、
    大麦の茎及び/又は葉として、水分含量が5質量%以下である乾燥粉末を用いる、青汁用の飲食用組成物の呈味及び色を改善する方法。
  5. 前記の大麦として、はがねむぎ又はカシマゴールである品種の大麦を用い、
    前記の乾燥粉末は、90質量%以上が200メッシュ区分を通過する、請求項4に記載の青汁用の飲食用組成物の呈味及び色を改善する方法。
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