JP2019176820A - 青汁用の飲食用組成物 - Google Patents

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英樹 田頭
繭香 山下
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繭香 山下
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Seiichi Kitamura
整一 北村
高垣 欣也
Kinya Takagaki
欣也 高垣
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Abstract

【課題】整腸作用及び美容作用を有する青汁用の飲食用組成物を提供すること。【解決手段】本発明の青汁用の飲食用組成物は大麦の茎及び/又は葉を用い、前記大麦は以下の(A)〜(D)の条件のうち該当する条件の数が2つ又は3つである。(A)遺伝子マーカーTe945による判定においてセリンプロテアーゼCxp1の低発現型遺伝子を有する。(B)遺伝子マーカーE31/M41による判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym5を有する。(C)遺伝子マーカーom2による判定においてうどんこ病耐性遺伝子ml-oを有する。(D)遺伝子マーカーk09554-AvaIによる判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym3を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、大麦の茎及び/又は葉を用いた、青汁用の飲食用組成物に関する。
大麦は中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である。大麦の茎及び/又は葉(以下「茎葉」という)は、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、アミノ酸、葉緑素、SOD酵素等に富む健康食品の素材として知られ、青汁、ゼリー、クッキー、ジンジャードリンク、ヨーグルト、サプリメント等の飲食用組成物に用いられている。青汁は、植物の緑葉を含む、乾燥粉末や搾汁等の様々な加工物とした製品であり、簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として利用されている。
大麦の茎葉には、乳酸菌増殖作用があることが知られている(特許文献1)。この乳酸菌増殖作用は、大麦の茎葉を飲食した場合の整腸作用につながると考えられる。
特開2013-031426号公報
健康食品には更なる多機能化がますます求められており、大麦の茎葉及びそれを用いた青汁用の飲食用組成物についても例外ではない。しかしながら、従来、大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物の多機能化は大麦の茎葉以外の別成分の添加等により行われており、整腸作用を維持しながら他の機能を得るために必要な大麦の構成については、これまで十分な検討がなされていなかった。
そこで、本発明者は青汁用の飲食用組成物に用いる大麦について整腸作用に加えて新たな作用を奏するものを得る方法を種々検討した。中でも大麦の簡便な特定方法である遺伝子マーカーによる判定と、大麦の青汁用の飲食用組成物としての特性との関係に着目し、研究を進めた。その結果、特定の遺伝子マーカーによる判定において、特定の判定結果を示す大麦は、その茎葉を用いると、驚くべきことに優れた整腸作用とともに高い美容作用を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は上記の知見に基づくものであり、大麦の茎及び/又は葉を用いた青汁用の飲食用組成物であって、
前記大麦は以下の(A)〜(D)の条件のうち該当する条件の数が2つ又は3つである、青汁用の飲食用組成物を提供するものである。
(A)遺伝子マーカーTe945による判定においてセリンプロテアーゼCxp1の低発現型遺伝子を有する。
(B)遺伝子マーカーE31/M41による判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym5を有する。
(C)遺伝子マーカーom2による判定においてうどんこ病耐性遺伝子ml-oを有する。
(D)遺伝子マーカーk09554-AvaIによる判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym3を有する。
本発明によれば、整腸作用に加えて美容作用を有する組成物を提供することができる。
図1は大麦におけるCxp1低発現型遺伝子の塩基配列を示す。 図2は、Cxp1遺伝子のタイプ(低発現型或いは高発現型)判定用プライマーの塩基配列を示す。 図3は、大麦における、rym5遺伝子座のeIF4E遺伝子の塩基配列を示す。 図4は、rym5遺伝子の判定用プライマーの塩基配列を示す。 図5は、大麦におけるml-o遺伝子の上流領域におけるom2マーカーを含む領域の塩基配列を示す。 図6は、ml-o遺伝子の判定用プライマーの塩基配列を示す。 図7は、大麦における、rym3遺伝子判定用CAPSマーカーであるk09554-AvaIを含む領域の塩基配列を示す。 図8は、rym3遺伝子の判定用プライマーの塩基配列を示す。 図9は、実施例及び比較例についてのビフィズス菌増殖・生存に係る評価結果を示す。 図10は、実施例及び比較例についてのコラゲナーゼ阻害率に係る評価結果を示す。
以下、本発明の青汁用の飲食用組成物について、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
本実施形態の青汁用の飲食用組成物は、用いる大麦の遺伝子の構成に特徴の一つを有する。
具体的には、本実施形態で用いる大麦は、以下の(A)〜(D)の条件のうち該当する条件の数が2つ又は3つであることを特徴とする。以下ではこのような大麦を、単に「特定の大麦」とも称する。
(A)遺伝子マーカーTe945による判定においてセリンプロテアーゼCxp1の低発現型遺伝子を有する。
(B)遺伝子マーカーE31/M41による判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym5を有する。
(C)遺伝子マーカーom2による判定においてうどんこ病耐性遺伝子ml-oを有する。
(D)遺伝子マーカーk09554-AvaIによる判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym3を有する。
セリンプロテアーゼCxp1は麦芽タンパク質の分解に関与すると言われている。セリンプロテアーゼCxp1は、セリンカルボキシペプチダーゼCxp1と呼ばれることもある。本発明においては、単にCxp1とも言う。Cxp1の発現が高いと麦芽タンパク質が過剰に分解され、成長に悪影響を及ぼすことが知られている。
rym5及びrym3は、黄緑色の細長いかすり状の斑点、褐色のえそ斑などの原因となる縞萎縮病に関与すると言われている。rym5は縞萎縮病を引き起こす縞萎縮病I、II、IV、V型ウイルスに抵抗性を有するとされ、rym3は縞萎縮病I型〜III型ウイルスに抵抗性を有するとされる。縞萎縮病になると、分けつが減り、草丈が低くなり、症状の激しいものは枯死するなど、大麦の品質や収量に深刻な被害にも繋がることが知られている。
ml-oはMlo座のうどんこ病抵抗性遺伝子である。うどんこ病は、カビの一種うどんこ病菌によって起こされ、感染すると白色粉状の病斑が生じ、症状が進むと葉一面に広がるため、青汁原料としての価値を失ってしまう。うどんこ病の抵拭性遺伝子座としてはMla座,Mlo座,MJg座,MJk座等複数が知られている。
以上の通り、条件(A)〜(D)に記載の大麦の遺伝子は青汁用の飲食用組成物の整腸作用及び美容作用とは何ら関係の知られていないものである。
本実施形態において、以下の(A)〜(D)の条件のうち該当する条件の数が2つである場合とは、以下の場合が挙げられる。
(i)上記条件(A)及び(B)を満たし、条件(C)及び(D)を満たさない。
(ii)上記条件(A)及び(C)を満たし、条件(B)及び(D)を満たさない。
(iii)上記条件(A)及び(D)を満たし、条件(B)及び(C)を満たさない。
(iv)上記条件(B)及び(C)を満たし、条件(A)及び(D)を満たさない。
(v)上記条件(B)及び(D)を満たし、条件(A)及び(C)を満たさない。
(vi)上記条件(C)及び(D)を満たし、条件(A)及び(B)を満たさない。
本実施形態において、以下の(A)〜(D)の条件のうち該当する条件の数が3つである場合とは、以下の場合が挙げられる。
(vii)上記条件(A)、(B)及び(C)を満たし、条件(D)を満たさない。
(viii)上記条件(B)、(C)及び(D)を満たし、条件(A)を満たさない。
(ix)上記条件(A)、(C)及び(D)を満たし、条件(B)を満たさない。
(x)上記条件(A)、(B)及び(D)を満たし、条件(C)を満たさない。
本実施形態において用いる特定の大麦は、上記(i)〜(x)のいずれであってもよく、また(i)〜(x)の異なる複数の条件をそれぞれ満たす大麦の組み合わせであってもよい。
上記の中でも、本実施形態で用いる特定の大麦は、条件(A)を満たすことが、整腸効果と美容効果をより一層効果的に両立する点から好ましい。
以下、各遺伝子の有無の確認方法について、詳細に説明する。
<セリンプロテアーゼCxp1の低発現型遺伝子>
本実施形態において、大麦が(A)の条件を満たすか否かはTe945と呼ばれるCAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequences)マーカーに基づいて判定する。
Te945は、セリンプロテアーゼCxp1遺伝子における一塩基多型(Single NucleotidePolymorphism(SNP))を利用した遺伝子マーカーであり、セリンプロテアーゼCxp1のmRNAの発現量の多寡に関わるeQTLマーカーとして報告されている(Funct. Integr. Genomics,(2006)6:p25-35)。この一塩基多型(SNP)の位置を、図1に示すセリンプロテアーゼCxp1遺伝子配列において二重下線部で示す。図1の配列は、遺伝子バンクDNA DataBank of Japan (DDBJ)においてアクセッションNo.CAJV010037927として開示されている配列の一部である。上記文献(Funct. Integr.Genomics, (2006)6:p25-35)には、大麦の遺伝子は、図1の二重下線部及びその周辺配列が図1のように「atgacattcttg」となっているタイプIIと、「atgacatccttg」となっているタイプIとに分かれていること、CxpIの発現レベルはタイプI>タイプIIであることが示されている。本実施形態においては、このSNP位置をはさむプライマーとして図2に示すプライマー(Fプライマー:配列番号2、Rプライマー:配列番号3)を用い、このプライマーで挟まれた領域をpolymerasechain reaction
(PCR)で増幅し、「catcc」の配列を特異的に切断する制限酵素であるBseGIで処理した後、酵素処理後のDNA断片を電気泳動法に供し、DNA断片の塩基長を確認することによりセリンプロテアーゼCxp1低発現型遺伝子(タイプII)を有するか否かを確認する。図1の配列において、図2のプライマーに対応する位置を一重下線で示す。図1に示す配列において図2のプライマーを用いたPCRにより増幅される断片は382bpであり、低発現型の場合、上記の制限酵素処理後もこの塩基長の断片が観察される。一方、高発現型(catcc)配列を有する場合は、上記制限酵素で切断されることにより、より塩基長の小さなバンド(178bp)が検出されるようになる。より明確な判定のため前記の塩基長の小さなバンドが検出される場合は、202bpの位置に更に別のDNA断片(バンド)が観察されることが好ましい。
上述したように、本実施形態において、Cxp1低発現型遺伝子を有するという(A)の条件の判定には、DNAシークエンス解析によりCxp1遺伝子の塩基配列全体を解析することを要しない。しかしながら、このような解析を行った場合に大麦は、Cxp1遺伝子の塩基配列として、アクセッションNo. CAJV010037927としてDDBJに開示された遺伝子配列における2176番から2187番までの配列を有していることが好ましい。
<縞萎縮病耐性遺伝子rym5>
本実施形態では、大麦が(B)の条件を満たすか否かは、rym5と0.034cMで連鎖することが報告されているAFLP多型由来のSTSマーカーであるE31/M41に基づいて判定する。
rym5遺伝子座のeIF4E遺伝子の塩基配列の一部を図3に示す。図3に示す配列は、DDBJにアクセッションNo. AY661558として記載されている。本実施形態においては、E31/M41に由来するプライマーとして図4に示すプライマー(Theor. Appl.Genet.(2005)110: p283-293により報告されたもの)を用いたPCRを行い、PCR処理物を電気泳動に供し、DNA断片であるバンドの有無及びバンドの塩基長を確認することにより遺伝子rym5を有するか否かを確認する。図3には、図4に示すプライマーに対応する部分を下線で示している。図3に示す配列では、図4のプライマーを用いたPCRにより増幅される断片は436bpである。一方、遺伝子rym5を有しない大麦は通常当該PCRにより増幅産物は得られない。大麦DNAを鋳型とし前記図4に示すプライマーによりPCRで増幅して得られた増幅産物を電気泳動に供したときに436bpに相当する長さのフラグメントが検出された場合に、縞萎縮病耐性遺伝子rym5を有するものとする。
上述したように、本実施形態において、遺伝子rym5の判定に、DNAシークエンス解析により遺伝子rym5の塩基配列全体を解析することを要しない。しかしながら本実施形態で用いる大麦は、DNAシークエンス解析を行った場合に、遺伝子座rym5のeIF4E遺伝子の塩基配列として、アクセッションNo. AY661558としてDDBJに開示された遺伝子配列における44169番から44604番までの配列を有していることが好ましい。
<うどんこ病耐性遺伝子ml-o>
本実施形態において、(C)の条件を満たすか否かは、ml-o遺伝子の5'上流域(−2.3kb)の挿入/欠失変異(In/del変異)を検出する遺伝子マーカーとして報告されているom2を用いて判定する。本実施形態において、ml-o遺伝子を有するとは、om2により検出される挿入変異を有することを意味する。この挿入変異がなされた大麦遺伝子配列の例を図5に示す。図5に示す遺伝子配列はDDBJにおいてアクセッションNo.Y14573.1である遺伝子の一部である。図5において、二重下線部が挿入された配列である。また遺伝子マーカーom2による挿入/欠失変異の判定に用いられるプライマーとしてGenome.Vol.49,2006,p864-872において提案されているプライマーを図6に示し、更に、このプライマーに対応する配列を図5に一重下線で示す。図5に示す例において、挿入変異を有する遺伝子を図6のプライマーで増幅した場合のDNA断片の塩基長は約1000bpであり、挿入変異を有しない場合は約750bpである。このDNA断片の塩基長の違いによりml-oの有無を判定できる。具体的には、大麦のDNAを鋳型とし、図6に示すプライマーによるPCRにより増幅した増幅産物を電気泳動に供することで増幅産物の塩基長を確認できる。前記のプライマーによりPCRで増幅して得られた増幅物を電気泳動に供したときに約1000bpのフラグメントが検出された場合に、遺伝子ml-oを有するものとする。
上述したように、本実施形態において、遺伝子ml-oを有することの判定に、DNAシークエンス解析により遺伝子ml-oの塩基配列全体を解析することを要しない。しかしながら、このような解析を行った場合に大麦は、遺伝子ml-oの塩基配列として、アクセッションNo. Y14573.1としてDDBJに開示された遺伝子配列における8106番から9198番までの配列を有していることが好ましい。
<縞萎縮病耐性遺伝子rym3>
本実施形態において、大麦が(D)の条件に満たすか否かはrym3と連鎖するCAPSマーカーであるk09554-AvaIに基づいて判定される。具体的には、図8に示すプライマーにより増幅した増幅物を、制限酵素AvaIで処理した場合、この酵素処理によりDNAが切断されることにより縞萎縮病耐性遺伝子rym3を有すると判定する。図7に、このプライマーにより増幅される遺伝子配列を示す。図7の配列において図8のプライマーを用いて増幅したバンド長は365bpであり、上記制限酵素で切断した場合には205bp及び156bpの2つのDNA断片に切断される。図7には、図8に示すプライマーに対応する部分を下線で示している。更に具体的には、大麦DNAを鋳型として図8に示すプライマーでPCRを行い、得られた増幅物を制限酵素AvaIで処理し、処理物を電気泳動に供したときに205bpに相当する長さのフラグメント及び、156bpに相当する長さのフラグメントが確認された場合に、遺伝子rym3を有するものとする。
上述したように、本実施形態において、遺伝子rym3を有することの判定に、DNAシークエンス解析により遺伝子rym3塩基配列全体を解析することを要しない。しかしながら、このような解析を行った場合に大麦は、遺伝子rym3の塩基配列として、アクセッションNo. AV929051.1としてDDBJに開示された遺伝子配列における148番から512番までの配列を有していることが好ましい。
上記の遺伝子マーカーにより(A)〜(D)の条件の有無を判定する場合、判定対象となる大麦DNAを抽出する大麦の部位としては、花、種子、果実、葉、茎、根が挙げられ、大麦の種子を用いることが好ましい。
具体的な試験方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
<遺伝子有無判定試験>
(1)大麦からDNAを抽出する。この抽出は適宜市販のキット等を用いて行うことができる。得られたDNA溶液は、DNA濃度が1ng/μL以上20ng/μL以下となるように濃度調整してPCRに供することが好ましい。
(2)(1)で得られたDNA液を鋳型としたPCRを行う。PCRは例えば下記表1の条件にて行うことが好ましい。プライマーとしては上述した図2、4、6及び8に記載のものを用いることができる。
(3)(2)で得られたPCR産物について、Cxp1の低発現型遺伝子及びrym3の有無を判定す
る場合は、上記表1に記載の制限酵素による酵素処理を行う。制限酵素処理は、30℃以上40℃以下で30分以上24時間以下行うことが好ましい。なお、制限酵素として、BseGIはFastDigest BseGI(Thermo Fisher社)を用い、AvaIはAvaI 2,000units(New England Biolabs社)を用いた。
得られた処理物を電気泳動のサンプルとする。電気泳動は適宜公知の方法にて行うことができる。
特定の大麦は、植物学上で六条大麦に分類されるものであっても二条大麦に分類されるものであってもよく、裸麦に分類されるものであってもよく、野生種、交雑種などのいずれであってもよい。
また本実施形態において、条件(A)〜(D)を満たすか否かは、実際の大麦の形質とかい離していてもよい。例えば、条件(A)を満たす大麦は必ずしもセリンプロテアーゼCxp1が低発現型である形質を有していなくてもよく、条件(B)又は(D)を満たす大麦は必ずしも縞萎縮病耐性の形質を有していなくてもよく、条件(C)を満たす大麦は必ずしもうどんこ病耐性の形質を有していなくてもよい。
上記特定の大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。具体的には、品種の違いによっても異なるが、一般に、背丈が10cm以上、特に10〜90cm程度、とりわけ30〜60cm程度である大麦から、茎葉を収穫することが好ましいが、これらに限定されるものではない。大麦の茎葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、大麦の茎葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
本実施形態の青汁用の飲食用組成物では、前記の特定の大麦の茎葉として、該茎葉から得られる各種の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、茎葉の粉砕物及びその乾燥粉末(粉砕末)、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末(細片化末)、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末(搾汁末)、茎葉のエキス及びその乾燥粉末(エキス末)等が挙げられる。
例えば、大麦の茎葉を粉砕末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、大麦の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。粉砕末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理は、80〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水または水蒸気中で、茎葉を60〜180秒間、好ましくは90〜120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、茎葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。また、蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20〜40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化
冷却が好ましい。このような冷却処理は、茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
乾燥処理としては、茎葉の水分含量が10質量%以下、特に5質量%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃〜140℃、より好ましくは80〜130℃にて加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された茎葉は必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものを茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、茎葉の粉末のさらなる加工時に取り扱いやすく、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易である。
具体的な粉砕末化の方法としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号公報を参照)。また例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報、特許第3428956号公報を参照)も挙げられる。また例えば、大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003−033151号公報、特許第3277181号公報を参照)も挙げられる。
大麦の茎葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mmとなるように細片化され、流動性を有するようになる。得られた細片化物は凍結乾燥や熱風乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(細片化末)とすることもできる。
大麦の茎葉を搾汁する方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の茎葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。具体的には、特開平08−245408号公報、特開平09−047252号公報、特開平5−7471号公報、特開平4−341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。得られた搾汁は、必要に応じて濃縮
してもよいし、凍結乾燥や熱風乾燥、噴霧乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(搾汁末)とすることもできる。搾汁末とする場合は、搾汁のみを乾燥しても良いし、必要に応じて賦形剤と共に乾燥することもできる。
大麦の茎葉のエキスを得る方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法を挙げることができる。得られたエキスは、必要に応じて濃縮してもよいし、凍結乾燥や熱風乾燥、噴霧乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(エキス末)とすることもできる。エキス末とする場合は、エキスのみを乾燥しても良いし、必要に応じて賦形剤と共に乾燥することもできる。
本発明においては、前記大麦の茎葉の加工物のうち、乾燥粉末(粉砕末、細片化末、搾汁末、エキス末)を用いることが好ましく、粉砕末又は搾汁末がより好ましく、特に、茎葉を乾燥及び粉砕することにより得られる粉砕末を用いることが、青汁用の飲食用組成物をより一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点や、食物繊維の豊富なものとできる点、ビフィズス菌増殖効果や美容効果が高い等から好ましい。粉砕末は、搾汁工程を経ずに製造される。
本発明の青汁用の飲食用組成物は、大麦の茎葉のみを含有しても良いし、以下に述べるその他の成分を含有しても良い。本発明の青汁用の飲食用組成物の固形分中、大麦の茎葉の含有量は、乾燥質量で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましく、5.0質量%以上が特に好ましく、最も好ましくは10.0質量%以上である。また上限値としては、99.9質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましく、80.0質量%以下が特に好ましい。
更に、青汁用の飲食用組成物に含まれる大麦の茎葉中、上記特定の大麦の茎葉の割合は、10.0質量%以上であることが好ましく、30.0質量%以上であることがより好ましく、50.0質量%以上であることが特に好ましく、70.0質量%以上であることが最も好ましい。
本発明の飲食用組成物の摂取量としては特に制限はないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、成人の1日当たり、本発明の大麦の茎及び/又は葉が、10mg/日以上となるように摂取することが好ましく、50mg/日以上となるように摂取することがより好ましく、100mg/日以上となるように摂取することがさらに好ましい。
青汁用の飲食用組成物は、前記大麦の茎葉以外に、その他の成分を含んでいてもよい。前記のその他の成分としては、例えば、ビタミン類、タンパク質、オリゴ糖、ミネラル類、多糖類、乳製品、植物加工品、乳酸菌、などの微生物、糖類、甘味料、クエン酸、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤のほか、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を配合することができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、飲食品の形態等に応じて適宜選択することができる。本実施形態において、青汁用の飲食用組成物に含まれる大麦の茎葉の加工物以外の成分として、オリゴ糖、水溶性食物繊維、乳酸菌を含むことが、特に好ましい。
本実施形態の青汁用の飲食用組成物は、任意の形態とすることができる。青汁用の飲食用組成物の形態としては、例えば、飲食などの経口摂取に適した形態、具体的には、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状
、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
本実施形態の青汁用の飲食用組成物には、青汁や、青汁に果汁や野菜、乳製品等を添加してジュース、シェイク、スムージーにしたり、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもと等の形態としたものを挙げることができる。
青汁用の飲食用組成物は、粉末状(粉末、顆粒などの粉の形態)であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適するとともに、この飲食用組成物が水と混合した時に色が鮮やかであることから好ましい。また青汁用の飲食用組成物が固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用する等経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。また、栄養機能表示食品、特定保健用食品、機能性表示食品として用いても良いことは言うまでもない。
以上の通り、本実施形態の青汁用の飲食用組成物は上記の遺伝子マーカーによる判定において、上記の条件を満たす大麦の茎葉を用いていることによって、ビフィズス菌増殖作用等の整腸作用が改善されたものとなり、またコラゲナーゼ阻害作用等の美容作用が改善されたものとなる。コラゲナーゼはコラーゲンを分解する酵素である。コラーゲンは、ヒアルロン酸やエラスチンなどと同様に、哺乳動物の結合組織に含まれ、皮膚の保水、潤滑性、および柔軟性などに寄与する成分である。コラーゲンは炎症や加齢に伴い、コラゲナーゼの活性が亢進し、コラーゲンの分解量が増加してしまう。その結果、コラーゲンの合成と分解とのバランスが崩れるため、炎症反応の亢進、あるいは老化による皮膚のシワ、関節痛が引き起こされるなどの問題が生じる。従って、コラゲナーゼの酵素の活性を阻害する成分は、コラーゲンの低減に伴う炎症、シワや関節痛などを防止・予防できると期待される。なお、本発明における整腸作用とは、便通改善作用を含むものである。
従って、本実施形態の青汁用の飲食用組成物は、ビフィズス菌増殖用途、腸内フローラ(腸内環境)改善用途、整腸用途、コラーゲン分解酵素阻害用途、コラーゲン低減抑制用途、コラーゲン保持用途、関節痛、炎症などの低減用途や皮膚のシワ防止用途、皮膚における潤滑性、柔軟性若しくは保水性の向上用途、美容用途から選ばれる1又は2以上の用途に使用することができる。
具体的に、本発明の飲食用組成物のこれらの用途は、医薬品(医薬部外品を含む)やいわゆる健康食品として用いられ、いわゆる整腸を訴求する健康食品においては、「おなかの健康が気になる方へ」、「お通じの気になる方へ」、「おなかの調子を整える」、「おなかの健康を守る」、「腸内の環境を良好にする」、「お通じを良好に保つ」、「便通を良好にする」、「腸内細菌のバランスを整える」等を表示したものを例示することができる。また、いわゆる美容を訴求する健康食品においては、「肌のうるおいを保つ」、「肌をバリアする」、「肌を守る」、「しみが気になる方に」、「しわが気になる方に」、「ストレスに負けない肌に」、「美容にうれしい」、「肌にうれしい」等を表示したものを例示することができる。
青汁用の飲食用組成物をビフィズス菌増殖用途に用いる場合は、生体内(例えば腸内)でのビフィズス菌増殖及び生体外でのビフィズス菌増殖のいずれに用いてもよい。また前記ビフィズス菌としては、糖類から多量の乳酸を生成する細菌であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacteriuminfantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacteriumadolescentis、Bifidobacterium mongolienseなどが挙げられる
。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜4、比較例1及び2>
複数の大麦品種の種子について、上記<遺伝子有無判定試験>を行った。つまり、上記表1に示す遺伝子マーカーを用いる上記の方法にてDNA抽出、PCR及び必要に応じた制限酵素処理並びに電気泳動を行った。具体的な条件・手順は以下の通りとした。
・DNA抽出:品種の異なる複数の大麦植物体それぞれから、複数の種子を採取した。一つの植物体に由来する複数の種子の一部についてDNA抽出した。DNA抽出は、Dneasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いた。抽出方法はキットに付属のプロトコル通りとした。
・PCR:上記で得られたDNAをDNA濃度が7.5ng/μLとなるようにNuclease Free Waterで希釈してPCRに用いた。PCRは上記濃度調整後のDNA液を鋳型として下記各試薬を下記表2の用量にて混合し、得られた液について上記表1の条件にて行った。なお表2中、Ex Taq及びそのバッファはタカラバイオ社の製品である。
・制限酵素処理:得られたPCR産物にNuclease FreeWater20μlを加えて2倍希釈した。(A)Cxp1の低発現型遺伝子の有無及び(D)縞萎縮病耐性遺伝子rym3の有無を判定する場合は、上記表1の制限酵素を用い、下記表3に記載の配合でチューブ内で表3の各液を混合した後、密閉したチューブを37℃のウォーターバスに沈め、1時間インキュベートし、次いで氷上で冷却した。なお下記表3において、制限酵素Bufferとしては酵素に添付のバッファーを用いた。得られた処理物を電気泳動のサンプルとした。その他の遺伝子を判定する場合は、制限酵素処理を行わずに上記のようにNuclease Free Water で2倍希釈したPCR産物をそのまま電気泳動のサンプルとした。
・電気泳動:フラスコ中に0.5xTBE(Tris Borate EDTA) Buffer及びアガロースをアガロースの濃度が1質量%又は2質量%となるように加え、分散させた。フラスコをオートクレーブにかけてアガロースを溶解後、軽く攪拌した。粗熱がとれたらGelGreen(BIOTIUM社)を微量加えて再度攪拌した。専用の型を用いてアガロースゲル(以下、AGE)を形成した
。泳動槽(Mupidαミニゲル泳動槽;アドバンス)に0.5xTBEBuffer、AGEを入れた。ゲルが浸るまで0.5xTBE Bufferを入れた。6x Loading Buffer(タカラバイオ社) 1μL、サンプル 5μLを混和した後、AGEの各ウェルへそれぞれアプライした。100Vにて、適時泳動を行った。
上記の方法にて以下の判定結果となった種子と同じ植物体から得られた種子を下記表4の対応により実施例及び比較例の大麦とした。下記の表4において○は条件を満たすという判定結果であったことを示し、×は条件を満たさない判定結果であったことを示す。
上記の判定が得られた各実施例及び比較例の大麦の種子を公知の方法にて播種、栽培し、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期の段階で茎葉を採取し、下記方法にて粉砕末を得、これを粉末状の青汁用の飲食用組成物とした。
<乾燥粉末の製造方法>
収穫した大麦の茎葉を水洗いし、付着した泥などを除去し、次いで5cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜95℃の熱湯で約100秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、70〜80℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を、ミキサーを用いて約1mmの大きさに粗粉砕処理し、次いでジェットミル粉砕機を用いて微粉砕処理することにより、大麦の茎葉の粉砕末を得た。
得られた実施例1〜4、比較例1の青汁用の飲食用組成物について、以下の評価1に供したほか、実施例1〜4、比較例1及び2の青汁用の飲食用組成物について、以下の評価2に供した。
<評価1:整腸作用>
体内でのビフィズス菌増殖のモデル実験として、以下の試験を行った。
ビフィズス菌(学名Bifidobacterium bifidum)を96ウェルプレートに入った、独立行政法人製品評価技術基盤機構の提供するカタログ番号385番の培地(385培地)に接種し、37℃、嫌気性雰囲気下で24時間培養した。
得られた培養液を、385培地で希釈して、濁度を0.5McFarlandにあわせた。
粉末状の青汁用の飲食用組成物をオートクレーブした後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて10mg/mLに調製し、最終濃度の10倍濃度のサンプル液を調製した。
96well plateにサンプル液を20μL/well入れ、更に、0.5McFarlandに濁度を調整した菌液を180μL/well添加した。なおBackground補正のためサンプル液入りのwellに菌を有しない培地を180μL添加したwell(コントロール)も用意した。その後、37℃で24時間、嫌気性雰囲気下で培養した。培養後の液にCell counting kit-8(同仁化学)の原液7μ
L/well添加し、発色するまで静置した後、還元されたWST-8の吸収極大である450nmの吸光度を測定した。得られた測定値からコントロールに対する吸光度の比(%)を求めた結果を図9に示す。なお、吸光度が高いほど、培養後の液中におけるビフィズス菌数が多いことを示す。
<評価2:美容作用>
(1)粉末状の青汁用の飲食用組成物をオートクレーブした後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて4mg/mLに調製し、最終濃度の4倍濃度のサンプル液を調製した。このサンプル液を96well black plateへ50μL/well添加した。但し、一部のwellではコントロールとして、サンプル液の代わりにPBS50μLを添加した。
(2)96well black plateに、更に酵素溶液(Test)または0.1質量%BSA含有D-PBS(-)(Blank)を100μL/wellで添加し、37℃で10分間インキュベートした。なおD-PBS(-)は和光純薬製のタブレット型PBS(型番T900)1錠を100mLの純水に溶解した溶液であり、これにアルブミン(ウシ血清由来コーンフラクションV、和光純薬製)を溶解して濃度0.1質量%としたものが0.1質量%BSA含有D-PBS(-)である。また酵素溶液はCollagenase B(Roche)が10mg/mL入ったD-PBS(-)溶液を0.1質量%BSA含有D-PBS(-)にて濃度10μg/mLに希釈したものである。
(3)インキュベート後の96well blackplateに、蛍光基質溶液(MOCAc-Pro-Leu-Gly-Leu-A2pr(DNP)-Ala-NH2(ペプチド研究所)の1mM DMSO溶液を0.1質量%BSA含有D-PBS(-)で5μMに調製したもの)を50μL/wellで添加し、遮光して37℃、60分間インキュベートした。
(4)マイクロプレートリーダーを用いて、320nmで励起し、405nmにおける蛍光強度を測定した。
(5)測定した蛍光強度を用いて、下記式にてコラゲナーゼ阻害率を算出した。結果を図10に示す。
コラゲナーゼ阻害率(%)=[1− (Sampletest- Sampleblank)/(Controltest- Controlblank)]×100
なお上記式で、Sampletestはサンプル液及び酵素溶液を添加したwellの蛍光強度、Sampleblankはサンプル液を添加し、酵素溶液未添加(0.1質量%BSA含有D-PBS(-)添加)であるwellの蛍光強度、Controltestはサンプル液未添加(PBSを添加)であり酵素溶液を添加したwellの蛍光強度、Controlblankはサンプル液及び酵素溶液が未添加であるwellの蛍光強度である。
図9及び図10より、特定の遺伝子マーカーにより特定の遺伝子型を有する本発明の青汁用の飲食用組成物がビフィズス菌増殖作用及びコラゲナーゼ阻害作用に優れ、整腸及び美容に有効であることが判る。
[本発明の組成物の製造]
[製造例1](インスタント飲料用顆粒の製造)
下記成分を混合してインスタント飲料用顆粒3gを製造した。得られたインスタント飲料用顆粒を、水100mLに溶解して服用することで、優れた美容及び整腸効果が得られる。
(A)及び(B)の条件を満たし、(C)及び(D)の条件を満たさない大麦茎葉の粉砕末
40質量%
難消化性デキストリン 5質量%
エリスリトール 5質量%
香料 2質量%
デキストリン 残部
[製造例2](インスタント飲料用顆粒の製造)
下記成分を混合してインスタント飲料用顆粒4gを製造した。得られたインスタント飲料用顆粒を、水100mLに溶解して服用することで、優れた美容及び整腸効果が得られる。
(C)及び(D)の条件を満たし、(A)及び(B)の条件を満たさない大麦茎葉の搾汁末
60質量%
ケール粉砕末 10質量%
抹茶 3質量%
トレハロース 20質量%
ビタミンB 0.2質量%
ビタミンC 0.2質量%
デキストリン 残部

Claims (2)

  1. 大麦の茎及び/又は葉を用いた青汁用の飲食用組成物であって、
    前記大麦は以下の(A)〜(D)の条件のうち該当する条件の数が2つ又は3つである、青汁用の飲食用組成物。
    (A)遺伝子マーカーTe945による判定においてセリンプロテアーゼCxp1の低発現型遺伝子を有する。
    (B)遺伝子マーカーE31/M41による判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym5を有する。
    (C)遺伝子マーカーom2による判定においてうどんこ病耐性遺伝子ml-oを有する。
    (D)遺伝子マーカーk09554-AvaIによる判定において縞萎縮病耐性遺伝子rym3を有する。
  2. 前記大麦は上記条件(A)に該当する、請求項1に記載の青汁用の飲食用組成物。
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