JP5738621B2 - 炭化水素及び炭素の燃焼触媒並びに該燃焼触媒の製造方法 - Google Patents

炭化水素及び炭素の燃焼触媒並びに該燃焼触媒の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化水素及び炭素の燃焼触媒並びに該燃焼触媒の製造方法に関する。
従来、自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等が含まれていることが知られている。そこで、CO及びHCを酸化し、NOxを還元することで、排ガスを浄化することが行われている。排ガスの浄化システムには、従来から、上記酸化反応及び還元反応を促進する排ガス浄化触媒が使用されている。
排ガス浄化触媒は、触媒温度が充分に高い場合、例えば、触媒温度が300℃を超える場合には、比較的良好な排ガス浄化性能を達成することができる。しかしながら、エンジン始動時や低温運転時のように、排気温度が低く、触媒温度が充分に高くなっていない場合、触媒の活性が充分でなく、排ガス中の窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素等の浄化処理が困難なことがある。特に、エンジンを低温で始動させる時に比較的多く発生する炭化水素成分、いわゆるコールドHCの処理は、排ガス浄化の大きな課題の1つとなっている。
また、排ガス中に含まれる炭素微粒子、高分子量炭化水素微粒子等の粒子状物質(PM)の存在が排ガス浄化の大きな問題の1つとなっている。通常、PMはフィルター等による捕集によって排ガスから除去されるが、このように捕集されたPMがフィルターに堆積することによって、排気圧損が上昇する。そのため、定期的にフィルターからPMを除去する必要がある。そこで、従来では、フィルター上に堆積したPMを加熱し、燃焼除去することが行われている。このPM燃焼除去のためには、一般に600℃を超えるような比較的高い温度でPMを加熱する必要があるとされ、具体的な燃焼除去方法としては、例えば、フィルターを電気的に加熱すること、エンジンの制御によって排気温度を高めてフィルターを加熱すること等が提案されている。
しかしながら、加熱時の熱応力によってフィルターが破損する場合がある。そこで、近年では、フィルター表面に貴金属等の触媒を担持させることで、PMを低温で酸化燃焼させることが行われている。
また、特許文献1には、高い酸化性能で炭素含有物質を酸化することができる酸化装置の提供を目的とした技術が開示されている。具体的には、HOと炭素含有成分とを含むガス体中の炭素含有成分を酸化する酸化装置であって、プロトン導電体と、該プロトン導電体上に配置された電極部材とからなり、上記プロトン導電体は、導電率が400℃以下の温度において、0.01Scm−1以上であり、上記電極部材は、互いに接触するアノード電極部及びカソード電極部とを有し、上記アノード電極部によって、該アノード電極部と上記プロトン導電体との境界部分において、該プロトン導電体から供給されるプロトンによる還元反応を促進するよう構成されていることを特徴とする酸化装置が開示されている。特許文献1において、具体的なプロトン導電体としては、Sn0.9In0.1等の無機リン酸化合物が記載されている。
一方、排ガス浄化触媒ではないが、特許文献2には、固体高分子型燃料電池等の燃料電池の電極触媒として、Sn0.9In0.1等のリン酸スズ及び貴金属がカーボン粒子上に担持された電極触媒が開示されている。
また、特許文献3には、固体電解質型燃料電池等の燃料電池に使用できる電解質膜として、少なくとも、組成式Sn(a+b=1、0<a≦1、0≦b<1、x>2.0、y=3.5x、Mは、In、Al、Ga、Sc及びYから選ばれる少なくとも1種の金属カチオン)で表されるプロトン伝導性無機化合物粒子と、ポリベンゾイミダゾールと、フッ素系樹脂と、を混合してなることを特徴とする、ハイブリッド電解質膜が開示されている。
特開2009−233618号公報 特開2009−158131号公報 特開2009−158130号公報
排ガス浄化に対する要求は年々厳しくなっており、エンジン始動時、低速運転時のような排ガス温度が低い条件においても、上記成分をさらに良好に除去できる排ガス浄化装置が必要とされている。特許文献1に記載の炭素含有成分の酸化装置でも、炭化水素や炭素の燃焼効率が不十分であり、さらなる性能向上が必要である。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、従来よりも低温度条件で炭化水素及び炭素の燃焼が可能な燃焼触媒を提供することである。
本発明の炭化水素及び炭素の燃焼触媒は、プロトン伝導体と電子伝導体とを含む炭化水素及び炭素燃焼触媒であって、
前記プロトン伝導体が、Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+、Fe3+及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズであり、
さらに、アルミナを含むことを特徴とする。
本発明の炭化水素及び炭素の燃焼触媒(以下、単に燃焼触媒ということがある)によれば、従来の燃焼触媒と比較して、低温度条件で炭化水素及び炭素の燃焼反応を進行させることが可能である。
本発明において、前記プロトン伝導体としては、プロトン伝導性の観点から、Sn0.9In0.1で表されるリン酸スズが好ましい。
また、本発明において、前記電子伝導体としては、例えば金属が挙げられる。
本発明の燃焼触媒において、前記プロトン伝導体と前記電子伝導体の重量比(プロトン伝導体/電子伝導体)は、997/3以下であることが好ましい。より低温域での炭化水素及び炭素の燃焼が可能となるからである。
前記プロトン伝導体の比表面積が1.0m/g以上であることが好ましい。
また、前記プロトン伝導体の結晶子径が70nm以下であることが好ましい。
本発明の燃焼触媒の製造方法は、Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+Fe 3+ 及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズと、電子伝導体と、アルミナと、を含む、上記炭化水素及び炭素の燃焼触媒の製造方法であって、
前記リン酸スズを調製する工程として、
前記a=1の場合、スズ塩を含むスズ塩溶液をアルカリ中和し、前記a<1の場合、スズ塩と前記Mの塩とを含む金属塩混合溶液をアルカリ中和する、アルカリ中和工程と、
前記中和工程によって得られた析出物をリン酸で中和する、リン酸中和工程と、
前記リン酸中和工程によって得られた中和物を焼成する、焼成工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、1.0m/g以上のような高比表面積を有するSn1−aを含む燃焼触媒を調製することが可能である。
本発明の燃焼触媒の製造方法において、前記スズ塩はスズ塩化物であることが好ましい。また、前記Mの塩は、Mの塩化物であることが好ましい。
前記焼成工程において、焼成温度は650℃未満であることが好ましい。このような温度範囲で焼成することによって、70nm以下のような微細な結晶粒子径を有するSn1−aを調製することが可能である。
また、焼成工程において、焼成温度は400℃以上であることが好ましい。このような温度範囲で焼成することによって、70nm以下のような微細な結晶粒子径を有すると共に未反応のリン酸を含まないSn1−aを調製可能であり、安定且つ高い活性を発現する燃焼触媒を調製することができる。
本発明の燃焼触媒によれば、従来と比較して低い温度で炭化水素及び炭素を酸化燃焼することができる。また、本発明の燃焼触媒の製造方法によれば、さらに低温域で炭化水素及び炭素を酸化燃焼することが可能な燃焼触媒を提供することが可能である。従って、本発明によれば、排ガス中の炭化水素及び炭素を効率良く除去することが可能である。
本発明の燃焼触媒の模式図である。 本発明の燃焼触媒の炭化水素(HC)燃焼促進メカニズムを説明する模式図である。 本発明の燃焼触媒の炭素燃焼促進メカニズムを説明する模式図である。 実施例及び比較例におけるプロパン酸化の結果を示すものである。 実施例において活性酸素種の生成を検証するために用いた触媒モデルの模式図である。 実施例において活性酸素種の生成を検証するために用いた触媒モデルの模式図である。 図5の触媒モデルを用いたサイクリックボルタンメトリーの結果である。 図6の触媒モデルを用いたサイクリックボルタンメトリーの結果である。 実施例及び比較例におけるプロパン酸化の結果を示すものである。 実施例8の燃焼触媒に用いたSn0.9In0.1(SIPO)のSEM写真(A)及びXRD分析結果(B)である。 実施例9の燃焼触媒に用いたSIPOのSEM写真(A)及びXRD分析結果(B)である。 実施例8及び実施例9におけるプロパン酸化の結果を示すものである。 実施例10の燃焼触媒に用いたSIPOのSEM写真である。 実施例11の燃焼触媒に用いたSIPOのSEM写真である。 実施例10及び実施例11におけるプロパン酸化の結果を示すものである。
本発明の炭化水素及び炭素の燃焼触媒は、プロトン伝導体と電子伝導体とを含む炭化水素及び炭素燃焼触媒であって、
前記プロトン伝導体が、Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+、Fe3+、及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズであり、
さらに、アルミナを含むことを特徴とする。
以下、本発明の燃焼触媒について、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は本発明の燃焼触媒の模式図、図2及び図3は、図1に示す本発明の燃焼触媒による、炭化水素(図2)及び炭素(図3)の燃焼反応の促進メカニズムを説明する模式図である。
図1に示すように、本発明の燃焼触媒100は、プロトン伝導体1と、電子伝導体2と、アルミナ3とを含有する複合体である。燃焼触媒100は、HO及びO、さらに、炭化水素(HC)及び/又は炭素(C)が存在する雰囲気下で、炭化水素及び/又は炭素を酸化し、燃焼する触媒作用を発現する。
具体的には、図2及び図3に示すように、水(HO)、酸素(O)、炭化水素(HC)及び/又は炭素(C)が存在する雰囲気下、燃焼触媒100のプロトン伝導体1と電子伝導体2とが接触する部分には、卑な電位を帯びたアノード電極部4と、貴な電位を帯びたカソード電極部5とがそれぞれ形成される。
このとき、アノード電極部4では、HOがプロトン(H)と電子(e)と活性酸素種(O*)(例えば、OH、O2−、O 、O 2−等)に分解する反応、例えば、HO→H+OH、HO→2H+O2−等が進む。そして、生成した活性酸素種は、炭化水素及び/又はカーボンを酸化燃焼し、二酸化炭素が生成する。すなわち、アノード電極部4では、2nHO+C→nCO+(4n+m)H+4ne、2HO+C→CO+4H+4e等の反応が起きる。
一方、カソード電極部5では、アノード電極部4で生成し、プロトン伝導体1内を移動してきたプロトンと、同様にアノード電極部4で生成し、電子伝導体2内を移動してきた電子とが、酸素と反応し、水が生成する(4H+4e+O→2HO)。
本発明の燃焼触媒は、このような局所電池反応の作用により、低温域での炭化水素及び炭素の燃焼が可能である。
酸素及び水と、炭化水素及び/又は炭素とが存在すれば、プロトン伝導体1と電子伝導体2の境界部にアノード電極部4及びカソード電極部5が形成され、上記したような局所電池型触媒作用が得られる。本発明者らは、このような局所電池型触媒の触媒能を向上させるべく、鋭意検討した結果、燃焼触媒の各電極部に反応ガス分子が到達するためのパスと、各電極部で生成したガス分子が速やかに該電極部から離れるためのパスが必要であることを見出した。
具体的には、アノード電極部4に水(水蒸気)と炭化水素及び/又は炭素(典型的には、ガス中に浮遊した炭素微粒子)が到達するためのパス、アノード電極部4で生成した二酸化炭素がアノード電極部4から離れるためのパス、カソード電極部5に酸素が到達するためのパス、及びカソード電極部5で生成した水(水蒸気)がカソード電極部5から離れるためのパスが必要である。
そこで、このようなパスを形成するために、本発明の燃焼触媒は、プロトン伝導体1及び電子伝導体2に加えて、アルミナ3を含む点に大きな特徴を有している。アルミナは、他の酸化物と比較して比表面積及び細孔容積が大きいこと、化学安定性が高く活性点への影響が少ないため、燃焼触媒の局所電池触媒作用を保持しつつ、上記のようなガス拡散パスを効率良く形成できることから、触媒能を向上させることができると考えられる。すなわち、本発明によれば、このようなガス拡散性の向上によって、局所電池が形成された燃焼触媒100のアノード電極部4及びカソード電極部5における反応がそれぞれ円滑に進行し、燃焼触媒の触媒能が向上すると考えられる。
尚、燃焼の対象である炭素が、燃焼触媒表面に付着した(固定された)炭素である場合であっても、アルミナを用いることによって、アノード電極部での水蒸気や二酸化炭素の拡散性、カソード電極部での酸素及び水蒸気の拡散性が向上し、燃焼触媒の触媒能向上効果は得られる。
以上のように、本発明の燃焼触媒は、該燃焼触媒のアノード電極部及びカソード電極部の反応ガス拡散性、並びに、アノード電極部及びカソード電極部の生成ガス拡散性の向上に成功し、各電極部における反応が効率良く進行するため、優れた触媒能を発現すると考えられる。その結果、本発明の燃焼触媒は、低温条件下、例えば、自動車のエンジン始動時、低速運転時等においても、優れた炭化水素及び炭素燃焼反応の促進作用を発現する。自動車等の内燃機関の排ガスには、炭化水素、炭素微粒子(PM)、水、及び酸素が含有されている。すなわち、本発明の燃焼触媒は、排ガス中の炭化水素及び炭素微粒子を酸化分解し、排ガスを浄化することができる。
尚、本発明の燃焼触媒の用途は、排ガス浄化触媒に限られず、広い分野において様々な用途に利用することができる。
本発明において、本発明の燃焼触媒が、プロトン伝導体、電子伝導体及びアルミナを含むとは、本発明の燃焼触媒が少なくともこれら3成分を構成成分として含む複合体であることを意味し、複合体の形態としては特に限定されない。例えば、単にこれら3成分が物理混合されたものであってもよい。或いは、3成分のうちの少なくとも任意の2成分間において、一方の成分が他方の成分に担持された形態を含んでいてもよい。このとき担持方法としては、担持させる成分にもよるが、例えば、共沈法、含浸担持法、均一沈殿法、表面析出法等、一般的な方法が挙げられる。
また、本発明において、炭化水素とは、炭素と水素から構成される有機化合物であれば特に限定されない。例えば、自動車等の内燃機関の排ガスに含まれる炭化水素としては、典型的には、C2n+2、C2n−1、C2n、C2n−2、及び環状式炭化水素(例えばシクロヘキサン等)等が挙げられる。
また、本発明において炭素とは、排ガス中に含まれる、炭素微粒子の他、高分子炭化水素等も含む。また、これら炭素は、燃焼触媒の周囲雰囲気を浮遊するもの、燃焼触媒表面に付着(固定)されたものも含む。
以下、本発明の燃焼触媒に含有される成分について説明する。
本発明の燃焼触媒は、プロトン伝導体として、Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+、Fe3+、及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズを含有する。
Snのモル比を示すaは、0<a≦1であれば、特に限定されない。尚、Sn1−aにおけるSnとMの比率は、Sn1−a調製時のSnとMのモル比で調整することができ、蛍光X線分析測定、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析等により測定することができる。
SnPにドープされるIn3+、Al3+、Fe3+、及びMg2+から選ばれる少なくとも1種は、SnPのプロトン伝導性を向上させるという効果を有する。中でも、In3+及びAl3+が好ましく、このうち、In3+が特に好ましい。プロトン伝導体としては、中でも、Sn0.9In0.1が好ましい。
燃焼触媒に含有されるSn1−aのサイズは特に限定されないが、結晶子径(一次粒子径)が100nm以下、特に80nm以下、さらに70nm以下であることが好ましい。このような微細な結晶子径を有するSn1−aを含む燃焼触媒は、上記範囲より大きな結晶子径を有するSn1−aを含む燃焼触媒と比較して、触媒単位体積当たりの処理ガス(供給ガス)の体積流量の比率(いわゆる、空間速度、SV値)が高い場合でも、炭化水素や炭素の燃焼活性(酸化活性)が高い。
結晶子径は、例えば、X線回折(XRD)を用いた常法によって測定することができる。具体的には、XRDにより回折ピークの半価幅を求め、下記式(A)(Scherrer式)に基づいて算出することができる。
D=Kλ/βcosθ・・・式(A)
式(A)中、Kは形状因子、λはX線の波長、βはXRD装置による回折ピークの広がりを補正した半価幅、θは回折角を示す。K=0.9と仮定することができる。回折角の補正は、下記式(B)で表わされるワーレン法の式に基づいて実施することができる。
β=(B−b1/2・・・式(B)
式(B)中、Bは試料の回折ピークの半価幅、bは標準試料の回折ピークの半価幅を示す。
プロトン伝導体であるSn1−aは、比表面積が0.5m/g以上、特に1.0m/g以上、さらに10m/g以上であることが好ましい。このような比表面積を有するSn1−aは、上記範囲より小さな比表面積を有するSn1−aと比較して、活性点が多く、低温条件下で、炭化水素や炭素を燃焼(酸化)することが可能である。
Sn1−aの比表面積は、例えば、窒素ガスを用いたBET吸着法により測定することができる。該BET吸着法は、一般的な方法に準じることができる。
Sn1−aの製造方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、Sn含有化合物及びM含有化合物と、リン酸とを、Sn、M及びリン酸のモル比がSn:M:P=a:1−a:2となるように混合した混合物を、200℃〜400℃の加熱条件下、攪拌してペースト化し、得られたペーストを450〜750℃で焼成する方法が挙げられる。Sn含有化合物としては、例えば、酸化物、塩化物、水酸化物等が挙げられ、具体的には、SnO、SnCl、Sn(OH)等が挙げられる。M含有化合物としては、酸化物、塩化物、水酸化物、硝酸塩等が挙げられ、具体的にはAl(OH)、Al、AlCl、Al(NO・nHO、In、Mg(OH)等が挙げられる。
上記したような高比表面積や微細な結晶粒子径を有するSn1−aを調製できることから、本発明の燃焼触媒は、Sn1−aを調製する工程として、下記工程を有する本発明の製造方法により製造することが好ましい。
すなわち、本発明の燃焼触媒の製造方法は、Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+Fe 3+ 及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズと、電子伝導体と、アルミナと、を含む、炭化水素及び炭素の燃焼触媒の製造方法であって、
前記リン酸スズを調製する工程として、
前記a=1の場合、スズ塩を含むスズ塩溶液をアルカリ中和し、前記a<1の場合、スズ塩と前記Mの塩とを含む金属塩混合溶液をアルカリ中和する、アルカリ中和工程と、
前記中和工程によって得られた析出物をリン酸で中和する、リン酸中和工程と、
前記リン酸中和工程によって得られた中和物を焼成する、焼成工程と、
を含むことを特徴とする。
上述したような、Sn含有化合物及びM含有化合物とリン酸とを混合し、焼成する従来のリン酸スズ(Sn1−a、以下、SMPOということがある)の調製方法(物理混合法)では、得られるSMPOの比表面積が小さく、燃焼触媒の活性点を充分に増やすことが難しい。
これに対して、上記のように、スズ塩或いはスズ塩及びMの塩をアルカリ中和して得られる析出物を、リン酸で中和し、焼成するSMPOの調製方法(中和法)では、物理混合法と比較して、比表面積の小さいSMPOを得ることができる。以下、中和法における上記アルカリ中和工程、リン酸中和工程及び焼成工程について説明する。
アルカリ中和工程は、スズ塩を含むスズ塩溶液、或いは、スズ塩とMの塩を含む金属塩混合溶液にアルカリを添加し、スズ塩、或いは、スズ塩とM塩をアルカリ中和する工程である。アルカリ中和により、析出物(典型的には水酸化物)が生成する。
スズ塩としては、例えば、塩化スズ[SnCl、SnCl]、酢酸スズ[Sn(CHCOO)、Sn(CHCOO)]、等が挙げられる。中でも、水への溶解度の観点から、塩化スズが好ましい。これらスズ塩は、水和物でも無水和物でもよい。
スズ塩溶液は、スズ塩を、該スズ塩を溶解可能な溶媒に溶解して得られる。溶媒としては、水(蒸留、イオン交換等の処理を適宜行ったものでもよい)等が挙げられる。
また、Mの塩としては、例えば、塩化物、酢酸塩、水酸化物等が挙げられる。具体的には、インジウム塩として、塩化インジウム(InCl、InCl)、酢酸インジウム[In(CHCOO)]等、アルミニウム塩として、水酸化アルミニウム[Al(OH)]、塩化アルミニウム(AlCl)、酢酸アルミニウム[Al(CHCOO)]等、鉄塩として、水酸化鉄[Fe(OH)]、塩化鉄(FeCl)、酢酸鉄[Fe(CHCOO)]等、マグネシウム塩として、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、塩化マグネシウム(MgCl)、酢酸マグネシウム[Mg(CHCOO)]等が挙げられる。
金属塩混合溶液は、スズ塩とM塩とを、該スズ塩及び該M塩を溶解可能な溶媒に溶解して得ることができる。溶媒としては、水(蒸留、イオン交換等の処理を適宜行ったものでもよい)等が挙げられる。金属塩混合溶液におけるSnとMのモル比Sn:Mがa:1−aとなるように、Sn塩及びM塩を混合させることで、SnとMをa:1−aのモル比で含有するSMPOを調製することができる。
スズ塩溶液又は金属塩混合溶液に添加され、スズ塩やM塩を中和するアルカリ中和するアルカリとしては、例えば、アンモニア水、NaOH及びKOH等の水酸化物、エタノールアミン及びエチレンジアミン等の水溶性アミン等が挙げられる。アルカリの量は、スズ塩、或いは、スズ塩又はM塩を中和するのに充分な量が添加される。具体的には、スズ塩溶液又は金属塩混合溶液のpHがアルカリ(典型的には8以上)になるような量が添加される。
アルカリの濃度は適宜調整することができる。アルカリが添加された各溶液は、適宜攪拌する。
アルカリ添加後、各溶液中に生成した析出物は、通常、濾別回収する。濾別回収した析出物は、乾燥させてもよいし、乾燥させなくてもよい。乾燥させる場合は、例えば、80〜120℃で、8〜24時間、乾燥させることができる。
リン酸中和工程は、アルカリ中和工程で生成した析出物をリン酸で中和する工程である。
リン酸中和工程において、リン酸(HPO)は、析出物に対して、SMPO(Sn1−a)の調製に必要な量、すなわち、リンのモル数が、析出物中に含まれるSnとMの合計モル数の2倍以上になる量(SnとMの合計に対して1当量以上)が添加される。リン酸の添加量が多すぎると、SMPO中に未反応のリン酸が残留し、得られる燃焼触媒の活性を低下させるおそれがある。そのため、リン酸添加量は、好ましくは、SnとMの合計量に対して1.4当量以下であることが好ましく、特に、1.2当量以下であることが好ましい。
リン酸中和工程において、析出物は、リン酸の添加前に、適宜、解砕してもよい。解砕することで、リン酸による中和を効率良く進めることができる。解砕方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
焼成工程は、リン酸中和工程で得られた中和物を加熱し、焼成する工程である。
焼成温度は、特に限定されず、通常350〜1100℃の範囲とすることができるが、結晶子径の小さい、微細なSMPOが得られることから、650℃未満であることが好ましい。一方、未反応のリン酸が残留することを抑制し、高SV条件下においての燃焼触媒の失活を抑える観点から、焼成温度は400℃以上であることが好ましい。
焼成時間は特に限定されず、焼成温度とリン酸の量に応じて適宜決定することが好ましいが、未反応のリン酸が残留することを抑制する観点から、焼成温度が400℃以上の場合、12時間以上であることが好ましく、特に、18時間以上であることが好ましく、さらに、24時間以上であることが好ましい。
本発明の燃焼触媒において、プロトン伝導体としては、Ti1−b(0<b≦1、Mは、In3+及び/又はAl3+)で表されるリン酸チタンを使用することもできる。
Tiのモル比を示すbは、0<b≦1であれば、特に限定されない。尚、Ti1−bにおけるTiとMの比率は、Ti1−b調製時のTiとMのモル比で調整することができ、蛍光X線分析測定、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析等により測定することができる。
TiPにドープされるIn3+及び/又はAl3+は、TiPのプロトン伝導性を向上させるという効果を有する。In3+及びAl3+のうち、In3+が好ましい。
燃焼触媒に含有されるTi1−bのサイズは特に限定されない。
また、Ti1−bの製造方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、Ti含有化合物及びM含有化合物と、リン酸とを、Ti、M及びリン酸のモル比がTi:M:P=b:1−b:2となるように混合した混合物を、200℃〜400℃の加熱条件下、攪拌してペースト化し、得られたペーストを450〜750℃で焼成する方法が挙げられる。Ti含有化合物としては、例えば、酸化物、塩化物、水酸化物等が挙げられる。M含有化合物としては、上記Sn1−aの製造方法と同様のものを用いることができる。
本発明の燃焼触媒は電子伝導体を含有する。本発明において電子伝導体としては、電子伝導性を有するものであれば特に限定されないが、導電率が25℃〜100℃の範囲で1000S/cm以上の物質であることが好ましい。ここで、導電率が25℃〜100℃の範囲で1000S/cm以上とは、25℃〜100℃の全範囲において、導電率が1000S/cm以上である必要はなく、25℃〜100℃の少なくとも一点において導電率が1000S/cm以上であればよい。電子伝導体は、25℃〜60℃の範囲で1000S/cm以上であることが好ましい。
具体的な電子伝導体としては、例えば、金属が挙げられ、具体的には、Pt、Ag、Cu、Fe、Cr、Ir、Ni、Co、Au、W、Mo、Pd、Rh及びこれら金属の2種以上からなる合金が挙げられる。中でも、Pt、Ag、Au、Fe、Niが好ましく、特にPtが好ましい。また、導電性セラミックスを電子伝導体として用いることもできる。具体的な導電性セラミックスとしては、例えば、SiC、AlN、マグネリ相チタニア(Ti)等が挙げられる。中でも、SiCが好ましい。
電子伝導体は、上記したように電子伝導性を有していればよいが、燃焼触媒のアノード電極部及び/又はカソード電極部における電極反応に対して触媒作用を発現することが期待できるという観点からは、Pt、Pd、Auが好ましいものとして挙げられ、中でもPtが好ましい。
燃焼触媒に含有される電子伝導体のサイズは特に限定されない。
本発明の燃焼触媒は、アルミナを含有する。アルミナの結晶形態は特に限定されず、α、γ、δ、θ等のいずれでもよく、α−アルミナ及びγ−アルミナが好ましい。
本発明の燃焼触媒において、必須成分である上記3成分の含有割合は特に限定されないが、燃焼触媒の炭化水素燃焼及び炭素燃焼に対する触媒能の観点からは、プロトン伝導体(Sn1−a)と電子伝導体との重量比(プロトン伝導体/電子伝導体)が、1/999以下であることが好ましく、特に997/3以下であることが好ましい。
本発明の燃焼触媒の製造方法は特に限定されない。
例えば、プロトン伝導体と、電子伝導体と、アルミナとを、物理混合する方法が挙げられる。物理混合法としては、一般的な方法を採用することができ、例えば、乳鉢混合等が挙げられる。
また、まず、プロトン伝導体の表面に、共沈法等の担持方法により、電子伝導体を担持させた担持体を調製した後、該担持体とアルミナとを物理混合する方法も挙げられる。
本発明の燃焼触媒は、既述したように、低温度条件、例えば、200℃以下のような温度条件であっても、炭化水素や炭素の燃焼反応を進行させることができる。従って、本発明の燃焼触媒を用いることによって、例えば、自動車等の排ガス中に含まれる炭化水素や炭素微粒子等を効率良く燃焼分解し、排ガス処理システムの排ガス浄化性能を向上させることが可能である。
[燃焼触媒の調製及び炭化水素の酸化]
(実施例1)
<燃焼触媒の調製>
以下のようにして、Sn0.9In0.1(以下、SIPOという)を調製した。すなわち、SnO(6.782g)とIn(0.694g)を、85%HPO(16.141g)と混合し、300℃で高粘度ペースト状になるまで攪拌した。得られたペーストをアルミナポットで、650℃で2.5時間焼成した後、乳鉢ですり潰した。
白金黒(1mg)と、上記で得られたSIPO(99mg)と、α−Al(ナノテック社製)(100mg)とを、乳鉢中で混合(物理混合)し、燃焼触媒を調製した。
<炭化水素の酸化>
まず、上記得られた燃焼触媒を石英菅内に配置した。このとき、燃焼触媒がガスで飛ばないように、石英菅内の燃焼触媒を配置した前後を石英ウールで塞いだ。
次に、石英菅に、C(0.1vol%)、O(0.5vol%)、HO(3vol%)を含むアルゴンガスを流量30ml/minで供給し、石英菅出口のCO濃度をガス分析装置で測定し、室温〜600℃におけるプロパン(C)の変換率を調べた。空間速度(SV)は9500h−1である。尚、プロパンの変換率は、石英菅に供給されたプロパンがCO以外の成分に変換されないという仮定の下、理想気体近似を用いて求めた。結果を図4に示す。
(比較例1)
実施例1において、白金黒、SIPO及びアルミナの代わりに、白金黒(1mg)とSIPO(99mg)とを乳鉢中で混合(物理混合)したこと以外は同様にして、触媒を調製した。
得られた触媒について、実施例1と同様にして、Cの変換率を調べた。結果を図4に示す。
(比較例2)
実施例1において、白金黒、SIPO及びアルミナの代わりに、白金黒(1mg)と、SIPO(99mg)と、カーボン粒子(Cabot Corporation製、Black Pearls)(100mg)とを、乳鉢中で混合(物理混合)したこと以外は同様にして、触媒を調製した。
得られた触媒について、実施例1と同様にして、Cの変換率を調べた。結果を図4に示す。
(比較例3)
<燃焼触媒の調製>
γ−Al(ナノテック製)10gに対して、ジニトロジアンミンPt硝酸溶液を、Pt量が1wt%(すなわち1mg)となるように添加した混合物を調整した。該混合物を用いて、含浸法により、γ−Al上にPtが担持されたPt/γ−Al(Pt量1mg)を得た。
<炭化水素の酸化>
得られた触媒について、実施例1と同様にして、Cの変換率を調べた。結果を図4に示す。
(比較例4)
実施例1で使用した白金黒(10mg)そのものを触媒として使用し、実施例1と同様にして、Cの変換率を調べた。結果を図4に示す。
(比較例5)
実施例1において調製したSIPO(100mg)そのものを触媒として使用し、実施例1と同様にして、Cの変換率を調べた。結果を図4に示す。
[結果]
図4に示すように、実施例1の触媒は、150℃からプロパン(C)の燃焼が始まり、200℃では変換率が100%に達した。
これに対して、比較例1〜5のいずれも、150℃からプロパン(C)の燃焼が始まるものの、200℃での変換率は20%にも満たなかった。特に、アルミナを含まない点で実施例1の触媒と異なる比較例1の触媒は、500℃で変換率が100%近くに達し、実施例1の触媒と比較して高温でプロパンを燃焼するものであり、その触媒能が大きく劣ることがわかる。また、比較例1〜5のうち、最も触媒能が高い比較例3の触媒も、変換率が100%に達するのは450℃であり、実施例1の触媒と比較して高温でプロパンを燃焼し、その触媒能が劣ることがわかる。
以上の結果より、本発明の燃焼触媒は、既存の触媒よりも低温でプロパンを酸化燃焼することが可能であり、酸化能に優れることがわかる。
[活性酸素種生成の検証]
本発明の燃焼触媒の燃焼反応促進メカニズムは、上記したように、局所電池の形成が起こり、アノード電極部でHOの分解に伴って活性酸素種が生成し、この活性酸素種が炭化水素及び炭素を燃焼するというものである。ここでは、この活性酸素種の生成を検証するために、図5及び図6に示すモデル触媒を作成し、電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー)を行った。
具体的には、上記実施例と同様にして調製したSIPOをペレット状に成形したプロトン伝導膜(厚さ1mm)の一方の面にアノード(Pt/C電極、Pt 4mg/cm)及び他方の面にカソード(Pt/C電極 0.6mg/cm)を配置し、モデル触媒を得た。
図5に示すように、300℃の温度条件下、モデル触媒のアノードにHO(3vol%)を含むアルゴンガスを流量30ml/minで供給し、且つ、カソードにO(0.5〜21vol%)を含むアルゴンガスを流量30ml/minで供給しながら、掃引速度10mV/secでサイクリックボルタンメトリーを行った。結果を図7に示す。
一方、図6に示すように、300℃の温度条件下、モデル触媒のアノードにHO(3vol%)及びC(0.1〜7vol%)を含むアルゴンガスを流量30ml/minで供給し、且つ、カソードにO(0.5〜21vol%)を含むアルゴンガスを流量30ml/minで供給しながら、掃引速度10mV/secでサイクリックボルタンメトリーを行った。結果を図8に示す。
図7より、アノードにHOを供給したモデル触媒(図5)では、高電位側で大きな電流が流れていることがわかる。これは、従来報告されているラマン分光測定の結果から、C−O 2−由来の活性酸素種によるカーボンの酸化に起因すると推定される。
一方、図8より、アノードにHOと共にCを供給したモデル触媒(図6)では、0.5V付近で低電位側に掃引しているにもかかわらず、大きな酸化電流が流れていることがわかる。これは、直接メタノール方燃料電池における反応(電極に吸着しているCO、CHOH、及びこれらの誘導体の酸化反応)との類似から、Pt−OH由来の活性酸素種による炭化水素の酸化と推定される。
以上の結果から、PtとSIPOを含む複合体は、HO、Oに加えて、炭化水素又は炭素が存在する環境下、局所電池を形成し、炭化水素及び炭素の燃焼反応を促進する触媒として作用することが確認された。そして、上記局所電池型触媒のアノードで生成する活性酸素種は2種あり、低電位側で生成する比較的弱い酸化力を有する活性酸素種は炭化水素を酸化し、高電位側で生成する強い酸化力を有する活性酸素種は炭素を酸化することが確認された。
[プロトン伝導体と電子伝導体の比率]
実施例1において、白金黒とSIPOとの比率(重量比。PtとSIPOの合計を100とする)を、Pt:SIPO=10:90(実施例2)、5:95(実施例3)、3:97(実施例4)、0.5:99.5(実施例5)、0.3:99.7(実施例6)、0.1:99.9(実施例7)に変更したこと以外は同様にして、燃焼触媒を調製した。得られた触媒について、実施例1と同様にして、Cの変換率を調べた。結果を図9に示す。尚、図9には、上記実施例1(SIPO:Pt=99:1)及び上記比較例3の結果も併せて載せた。
図9より、SIPOとPtの重量比(SIPO/Pt)が999/1以下である、実施例1〜7の触媒は、比較例3の触媒と比べると優れた触媒能を有していた。実施例1〜7の触媒を比較すると、SIPO/Ptが997/3以下である実施例1〜6の触媒が特に優れた触媒能を示すことがわかった。
[リン酸スズの調製方法(物理混合と中和法)]
(実施例8)
<燃焼触媒の調製>
以下のようにして、物理混合によりSIPOを調製した。
まず、ビーカーに、酸化スズ(SnO(IV)、nano−Tek社製)6.78gと、酸化インジウム(In、和光純薬工業社製)0.69gと、85wt%HPO(和光純薬工業社製)16.14gを秤量し、純水150mlを加え、均一に攪拌した。
次に、ビーカーに攪拌子を入れ、ホットスターラー上で常温で約3分間攪拌した。
続いて、ホットスターラーを300℃に加熱し、攪拌を続けた。攪拌は、ビーカー側面に付着した水滴がなくなるまで行った。
攪拌の停止後、攪拌物を650℃で4.5時間焼成し、SIPOを得た。
得られたSIPOについてSEM観察及びX線回折(XRD)測定を行った。結果を図10(A:SEM写真、B:XRD測定結果)に示す。
XRD測定の結果、SIPOは、未反応物と思われるSnOを含むことが確認された(図10のB中の星印)。また、XRD測定の結果を用いてScherrer式により算出したSIPOの結晶子径は82nmだった。さらに、SIPOの比表面積は、窒素ガスを用いたBET吸着法により測定したところ、0.5m/gだった。
上記SIPOを水に分散させた後、SIPO 100重量部に対して、白金が1重量部となるように、ポリビニルピロリドン(PVP)を保護材とする白金コロイド(白金粒子径2nm、田中貴金属社製)を添加した。これを、攪拌しながら350℃で加熱することで、水を蒸発させると共にPVPを除去した。
得られたPt/SIPOに対して、等質量のγ−Al(nano−tek社製)を混合し、燃焼触媒を調製した。
<炭化水素の酸化>
まず、上記で得られた燃焼触媒(粉末)を196MPaでプレスしてペレットに成形し、評価試料を作製した。
次に、上記ペレット(3.5g)を配置した石英菅に、C(0.1vol%)、O(0.5vol%)、HO(3vol%)を含む窒素ガスを流量1L/minで供給し、石英菅出口のCO濃度をガス分析装置で測定し、100℃〜600℃におけるプロパン(C)の変換率を調べた。SVは約8000h−1である。尚、プロパンの変換率は、石英菅に供給されたプロパンがCO以外の成分に変換されないという仮定の下、理想気体近似を用いて求めた。結果を図12に示す。
(実施例9)
<燃焼触媒の調製>
SIPOを以下のようにして、中和法で調製したこと以外は、実施例8と同様にして燃焼触媒を調製した。
まず、塩化スズ(SnCl・5HO)5.36gと塩化インジウム(InCl・4HO)0.50gとを秤量し、蒸留水をイオン交換した水150mlを加え、攪拌し、溶解させた。
次に、上記溶液に、pH8.0になるまで10wt%アンモニア水を添加し、沈殿を生成させた。さらに1時間室温で攪拌した。
生成した沈殿を濾別回収し、イオン交換水で洗浄した後、120℃の乾燥機を用いて12時間乾燥させた。
得られた乾燥物を解砕し、85wt%HPO(和光純薬工業社製)5.5g加えた後、セラミックス容器に移して650℃で4.5時間焼成し、SIPOを得た。
得られたSIPOについてSEM観察及びX線回折(XRD)測定を行った。結果を図11(A:SEM写真、B:XRD測定結果)に示す。
XRD測定の結果、SIPOは、純粋なSIPOであり、実施例8のSIPOとは異なりSnOを含まなかった。また、XRD測定の結果を用いてScherrer式により算出した結晶子径は88nmだった。さらに、SIPOの比表面積は、窒素ガスを用いたBET吸着法により測定したところ、11.5m/gであり、実施例8のSIPOの約23倍だった。
また、実施例8と実施例9のSIPOのSEM写真(図10のAと図11のA)を比べると、実施例9のSIPOの方が、粒子が細かいことが確認できた。
<炭化水素の酸化>
実施例8と同様にして、プロパンの変換率を測定した。結果を図12に示す。
図12より、SIPOを物理混合で調製した実施例8よりも、SIPOを中和法で調製した実施例9の方が、より低温条件下、プロパンの燃焼反応を促進することが分かった。また、活性化エネルギーを一定と仮定して、アレニウス式より頻度因子を算出すると、実施例9の燃焼触媒は、実施例8の3.4倍、反応を促進するという結果が得られた。
[リン酸スズの調製方法(燃焼温度)]
<燃焼触媒の調製>
(実施例10)
以下のようにして、中和法によりSIPOを調製した。
まず、塩化スズ(SnCl・5HO)5.36g(約0.0153モル)と塩化インジウム(InCl・4HO)0.50g(約0.0017モル)とを秤量し、蒸留水をイオン交換した水150mlを加え、攪拌し、溶解させた。
次に、上記溶液に、pH8.0になるまで10wt%アンモニア水を添加し、沈殿を生成させた。さらに1時間室温で攪拌した。
生成した沈殿を濾別回収し、イオン交換水で洗浄した後、120℃の乾燥機を用いて12時間乾燥させた。
得られた乾燥物を解砕し、85wt%HPO(和光純薬工業社製)5.5g(約0.0477モル)加えた後、セラミックス容器に移して400℃で24時間焼成し、SIPOを得た。尚、上記85wt%HPO添加量は、SnとInの合計量に対して1.4当量分(リンのモル数が、SnとInの合計モル数に対して2.8倍となる量)である。
得られたSIPOを水に分散させた後、SIPO 99重量部に対して、白金が1重量部となるように、ポリビニルピロリドン(PVP)を保護材とする白金コロイド(白金粒子径2nm、田中貴金属社製)を添加した。これを、攪拌しながら350℃で加熱することで、水を蒸発させると共にPVPを除去した。
得られたPt/SIPOに対して、等質量のγ−Al(nano−tek社製)を混合し、燃焼触媒を調製した。
(実施例11)
SIPO調製時、焼成温度を400℃から650℃に変更し、且つ、焼成時間を24時間から5時間にしたこと以外は、実施例10と同様にして燃焼触媒を調製した。
<SIPOの評価>
実施例10及び実施例11で調製したSIPOのSEM写真を図13及び図14に示す。400℃で焼成した実施例10のSIPOの方が650℃で焼成した実施例11のSIPOより粒子が細かいことがわかる。
また、実施例10及び実施例11のSIPOのXRD測定を行い、実施例8と同様にして平均結晶子径を算出したところ、実施例10は52nm、実施例11は90nmであり、SEM観察同様、実施例10の方が実施例11よりも微粒子化していることが確認された。
さらに、窒素ガスを用いたBET吸着法により、SIPOの比表面積を測定したところ、実施例10は7.0m/g、実施例11は2.9m/gであり、実施例10は実施例11の2.4倍の比表面積を有していた。
<炭化水素の酸化>
まず、上記にて得られた実施例10及び実施例11の燃焼触媒(粉末状体)をそれぞれ196MPaでプレスしてペレットに成形し、評価試料を作製した。
次に、上記ペレット(3.5g)を配置した石英菅に、C(0.1vol%)、O(0.5vol%)、HO(3vol%)を含む窒素ガスを流量1L/min(SV=8000h−1)又は10L/min(SV=80000h−1)で供給し、石英菅出口のCO濃度をガス分析装置で測定し、100℃〜600℃におけるプロパン(C)の変換率を調べた。尚、プロパンの変換率は、石英菅に供給されたプロパンがCO以外の成分に変換されないという仮定の下、理想気体近似を用いて求めた。変換率が50%となる温度を図15に示す。
結晶子径が小さく且つ比表面積が大きい実施例10の燃焼触媒は、実施例11の燃焼触媒と比較して、高SV条件下、低温でプロパンの燃焼を促進し、高SV条件による失活が抑制されていることがわかった。
[SIPO調製におけるリン酸の量と焼成時間]
(実施例12)
実施例10において、SIPO調製の際、リン酸の添加量(SnとInの合計量に対する当量)と焼成時間を下記表のように変更したこと以外は同様にして燃焼触媒を調製した。
表1において、「○」は得られたSIPOが粉末状を呈したこと、「×」は得られたSIPOがペースト状を呈したことを表わしている。SIPOがペースト状を呈したのは、焼成後も未反応のリン酸が残留していたためである。SIPOがペースト状を呈した燃焼触媒は、白金の活性が発現されなかった。
表1の結果から、SIPOを400℃で焼成する場合、燃焼触媒中に未反応のリン酸が残留しないようにするためには、12時間以上焼成し、且つ、SnとInの合計量に対するリン酸量をリン換算で1.0〜1.4倍量の範囲にすることが好ましいことがわかる。
1…プロトン伝導体
2…電子伝導体
3…アルミナ
4…アノード電極部
5…カソード電極部
100…燃焼触媒

Claims (11)

  1. プロトン伝導体と電子伝導体とを含む炭化水素及び炭素の燃焼触媒であって、
    前記プロトン伝導体が、Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+、Fe3+、及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズであり、
    さらに、アルミナを含むことを特徴とする、炭化水素及び炭素の燃焼触媒。
  2. 前記プロトン伝導体が、Sn0.9In0.1で表されるリン酸スズである、請求項1に記載の炭化水素及び炭素の燃焼触媒。
  3. 前記電子伝導体が金属である、請求項1又は2に記載の炭化水素及び炭素の燃焼触媒。
  4. 前記プロトン伝導体と前記電子伝導体の重量比(プロトン伝導体/電子伝導体)が、997/3以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化水素及び炭素の燃焼触媒。
  5. 前記プロトン伝導体の比表面積が1.0m/g以上である、請求項1乃至4のいずれかに記載の炭化水素及び炭素の燃焼触媒。
  6. 前記プロトン伝導体の結晶子径が、70nm以下である、請求項1乃至5のいずれかに記載の炭化水素及び炭素の燃焼触媒。
  7. Sn1−a(0<a≦1、Mは、In3+、Al3+Fe 3+ 及びMg2+から選ばれる少なくとも1種)で表されるリン酸スズと、電子伝導体と、アルミナと、を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の炭化水素及び炭素の燃焼触媒の製造方法であって、
    前記リン酸スズを調製する工程として、
    前記a=1の場合、スズ塩を含むスズ塩溶液をアルカリ中和し、前記a<1の場合、スズ塩と前記Mの塩とを含む金属塩混合溶液をアルカリ中和する、アルカリ中和工程と、
    前記中和工程によって得られた析出物をリン酸で中和する、リン酸中和工程と、
    前記リン酸中和工程によって得られた中和物を焼成する、焼成工程と、
    を含むことを特徴とする、燃焼触媒の製造方法。
  8. 前記スズ塩がスズ塩化物である、請求項7に記載の燃焼触媒の製造方法。
  9. 前記Mの塩がMの塩化物である、請求項7又は8に記載の燃焼触媒の製造方法。
  10. 前記焼成工程において、焼成温度が650℃未満である、請求項7乃至9のいずれかに記載の燃焼触媒の製造方法。
  11. 前記焼成工程において、焼成温度が400℃以上である、請求項7乃至10のいずれかに記載の燃焼触媒の製造方法。
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