JP5738111B2 - 橋桁 - Google Patents

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本発明は、道路橋、鉄道橋などの橋桁に係り、特に、鉄筋コンクリートからなる上床版および下床版と、上床版および下床版を連結して箱状断面形状を形成する一対のウェブとを備えた橋桁に関する。
上記構成を有する橋桁として、ウェブを鋼管からなる斜材で構成したコンクリート・鋼複合トラス橋(特許文献1参照)や、ウェブを高さ方向の中位よりその上辺及び下辺に向けてその橋軸方向長さが徐々に増大する鋼板またはコンクリート板からなる板状部材で構成したもの(特許文献2参照)、ウェブを波形鋼板で構成したもの(特許文献3参照)などが知られている。
これら橋桁では、図7に示すように上床版111および下床版112に橋桁断面の内側に突出する増厚部、すなわち上床版111には下方へ突出する増厚部111bを、下床版112には上方へ突出する増厚部112bを形成することで、上床版111および下床版112とウェブ113との接合強度を高めている。
ところで、最近では、このような箱状断面形状を有する橋桁101において、せん断力の低減を目的として図8に示すように、橋桁101の内部空間101iにケーブル121〜124を斜めに設け、ケーブル121〜124の下端を下床版12に定着させて張力を付与することにより下床版112を支持するようにしたものも出現している。
特許第4154099号公報 特許第4005774号公報 特許第4073746号公報
ここで、特許文献1〜3に示した橋桁では、上記ケーブル121〜124を橋桁の内部空間に設ける場合、図8、図9に示すように、下床版112の上面における増厚部112bの内側に、ケーブル121〜124の架設方向を下床版112と平行に変更するための偏向部112cと、下床版112と平行に延在するケーブル121〜124の端部を定着するためのケーブル定着部112dとを設けている。ところが、偏向部112cには、下床版112から引き離す向きの力がケーブル121〜124の架設角度に応じて加わるため、ケーブルの傾斜角度を大きくすることは困難である。また、1本のケーブルを固定するのに要する下床版部分の長さが長くなるため、ケーブルの架設本数を増やすことも困難である。そのため、せん断力を効果的にケーブル121〜124に負担させることができず、大きなせん断力が加わる橋桁101の支点部近傍では、橋桁101の高さ寸法を大きくする必要があった。
本発明はこのような背景に鑑みなされたものであり、ケーブルの傾斜角度を大きくすることで、支点部近傍における橋桁断面の大型化を抑制することができる橋桁を提供することをその主たる目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、鉄筋コンクリートからなる上床版(11)および下床版(12)と、当該上床版および下床版を連結する一対のウェブ(13)とを備えて箱状断面形状を呈し、橋軸方向両端部近傍に橋脚または橋台により支持される支点部(1a)を有するとともに、当該支点部からその内部空間(1i)に斜めに張設されたケーブル(21〜24)により前記下床版が支持される橋桁(1)であって、前記下床版は、床版部(12a)と、当該床版部の両側部に沿って下方へ延出する一対の増厚部(12b)と、当該増厚部の内側に設けられたケーブル定着部(12d)とを備え、前記ケーブルは、前記床版部を貫通してその下端が前記ケーブル定着部によって定着されるように構成する。
この発明によれば、ケーブルを下床版の床版部を貫通させてケーブル定着部で定着するようにすることで、ケーブルの架設方向を変更する偏向部を設けることなく直接的にケーブルを固定できる。そのため、傾斜角度を大きくしてケーブルの負担可能なせん断力を大きくできるとともに、ケーブルの固定に要する床版部の長さを短くでき、せん断力を効果的にケーブルに負担させることができる。そのため、支点部近傍における橋桁断面の大型化を抑制することができる。
また、本発明の一側面によれば、前記ケーブルは、前記ケーブル定着部によって定着された状態で下側部分が直線状を呈する構成とすることができる。このような構成とすることにより、ケーブルへの引張応力の導入を直接的且つ効率的に行える。また、下床版の構造が簡単になるため製造(施工)が容易になる。
また、本発明の一側面によれば、前記床版部には、前記ケーブル定着部を点検するための貫通孔(15)が形成される構成とすることができる。このような構成とすることにより、貫通孔にCCDカメラなどの点検具を挿入して定着部を点検することが可能になり、下床版の下面側に位置する定着部の点検作業を容易にすることができる。
また、本発明の一側面によれば、前記ウェブは、複数のウェブ部材(14)を前記床版部の上面(12u)にて互いに所定の間隔をおくように橋軸方向に配列したものであり、前記床版部の上面には、前記板状部材へ向けて排水勾配が設けられる構成とすることができる。このような構成とすることにより、ウェブの軽量化を図ることができる。また、板状部材間に間隙があることによって橋桁の内部空間に雨水などが侵入するようになるが、床版部の上面に排水勾配が設けられたことによって内部に侵入した水を外部へ排水することが可能である。
また、本発明の一側面によれば、前記ウェブ部材は、高さ方向の中位よりその上辺及び下辺に向けてその橋軸方向長さが徐々に増大するように形成された板状部材(14)である構成とすることができる。板状部材としては、特許文献2に開示されるように、鋼板からなるものや、鋼板とコンクリートとの組み合わせからなるもの、プレストレスが導入されたコンクリート板からなるものなどが挙げられる。このような構成とすることにより、圧縮力および引張力に効果的に抵抗できるウェブ部材を実現することができる。
また、本発明の一側面によれば、前記複数のウェブ部材の高さ寸法が同一である構成とすることができる。このような構成とすることにより、ウェブ部材の製造および取り扱いを容易にすることができる。
また、本発明の一側面によれば、前記床版部の厚さが前記支点部近傍において橋軸方向の中央部よりも大きい構成とすることができる。このような構成とすることにより、ウェブ部材の厚さ(平面視で橋軸直角方向の寸法)を一定にした場合であっても橋桁支点部付近のせん断耐力を大きくすることで、橋桁中央部のウェブ部材の断面寸法が必要以上に大きくなることを防止し、これによる橋桁の重量化も防止することができる。
このように本発明によれば、ケーブルの傾斜角度を大きくすることや、ケーブルの架設本数を増やすことを可能とし、支点部近傍における橋桁断面の大型化を抑制できる橋桁を提供することができる。
本発明に係る橋桁の側面図 図1中のII−II線に沿って示す横断面図 図2中のIII−III線に沿って示す要部縦断面図 図3中のIV−IV線に沿って示す横断面図 図3中のV−V線に沿って示す横断面図 図3中のVI−VI線に沿って示す横断面図 従来技術に係る橋桁の横断面図 図7に示す橋桁のVIII−VIII線に沿って示す縦断面図 図8中のIX−IX線に沿って示す横断面図
以下、本発明に係る橋桁1の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、橋桁1は、道路橋や鉄道橋として利用できるものであり、複数の橋脚2または図示しない橋台間に架け渡されて連続する連続桁となっている。なお、図1には、橋脚2中心間(スパン)の中央Cから隣の橋脚2中心間の中央Cまで、すなわち連続する2スパンの中央部のみを一部省略して示している。ここでは、橋桁1は、張出し架設工法で架設され、橋脚2により支承3を介して支持される柱頭部施工部1a(支点部)と、柱頭部施工部1aから橋軸両方向へ延出する張出し施工部1bと、隣接する橋脚2間の張出し施工部1bを連結する連結部1cとから構成される。
図2に併せて示すように、橋桁1は、鉄筋コンクリートからなり、略水平に配置されて路盤を構成する上床版11と、その下方に略平行に配置される下床版12と、上床版11と下床版12とを連結する一対のウェブ13とを備えており、内部空間1iを有する箱状断面形状を呈している。ここでは、上床版11の幅寸法が下床版12の幅寸法よりも大きくなっており、一対のウェブ13が下床版12の側縁から上方へ向けて開くように若干の傾斜角度をもって上床版11に至り、上床版11にはウェブ13との接合部からさらに側方へ張り出す張出部11aが形成されている。
上床版11はここでは現場打ちコンクリートにより構築されており、上床版11のウェブ13との各接合部には、下方へ突出して橋軸方向に延在する増厚部11bが形成されている。下床版12もここでは現場打ちコンクリートにより構築されている。下床版12は、略水平に配置された平板状の床版部12aと、床版部12aの両側縁に沿って下方へ突出する一対の増厚部12bとを有している。すなわち増厚部12bは床版部12aのウェブ13との各接合部において橋軸方向に沿って下方へ突出する態様で設けられている。また、下床版12は、一対の増厚部12bを連結する横梁12cを橋軸方向の適所に有している。なお、図3、4、6中には横梁12cと床版部12aなどとを異なるハッチングで示しているが、横梁12cは、同時に打設されたコンクリートによって床版部12aの下面および増厚部12bの側面に一体形成される。
各ウェブ13は、橋軸方向に一列に配置されたプレキャストコンクリートからなる複数の板状部材14により構成されている。板状部材14は、高さ方向の中位よりその上辺及び下辺に向けてその橋軸方向長さが徐々に増大するバタフライ(蝶)形状を呈しており、全ての板状部材14が同一形状且つ同一寸法とされている。板状部材14は、特許第4,005,774号に開示される通り公知であるため、その詳細な説明は省略するが、引張荷重が加わる部位に適宜斜め方向にプレストレスが導入されており、X字状に交差するように加わる圧縮力および引張力に対する大きな耐力を有する構成となっている。そして、全ての板状部材14が同一形状且つ同一寸法とされていることで、板状部材14の製造および取り扱いが容易になっている。
これら板状部材14は、下床版12における接合面(上面12u)において互いに所定の間隔をおくように所定の中心間隔に配置され、下端が下床版12に突入し、上端が上床版11に突入した状態で下床版12および上床版11のコンクリートと一体接合される。なお、図示は省略するが、板状部材14の上端部および下端部にはプレキャスト製造時に鉄筋或いはスタッドジベルが多数突出形成され、これらがコンクリート中に埋設されることによって板状部材14と下床版12および上床版11との接合強度が向上している。
また、下床版12の上面12uには、図中に矢印で示すように、ここでは下床版12の橋軸直角方向の中央から両側方へ向けて下りとなる1%程度の排水勾配が設けられている。したがって、板状部材14の間から内部空間1iに雨水などが進入しても、進入した水が排水勾配によって下床版12の側縁へ流れて板状部材14間の隙間から外部へ排水される。
図3、図4に示すように、橋桁1の内部空間1iには、柱頭部施工部1aを最高部として連結部1c(橋脚2間の中央C)へ向けて斜め下方へ延在し、下床版12の床版部12aを貫通して横梁12cに至る複数のケーブル21〜24が張設されている。これらケーブル21〜24は、下端が橋軸方向について異なる位置となるように、ここでは4本ずつ断面における左右にそれぞれ対称に配置され、両端(図3には一端側のみを示す)がそれぞれ横梁12cの橋軸直角方向の端部近傍に定着されている。つまり、横梁12cの両端部がケーブル21〜24に対するケーブル定着部12dとなっている。
これらケーブル21〜24は、ケーブル定着部12dによって定着された状態において、柱頭部施工部1aの端面から延出する下側の部分、つまり内部空間1i内に延在する部分、下床版12の床版部12aおよび横梁12cの内部に延在する部分が直線状となっており、この状態で下端がケーブル定着部12dに定着されている。そして、床版部12aにおける各ケーブル定着部12dよりも連結部1c寄りの位置には、ケーブル定着部12dによるケーブル21〜24の定着状態を点検するための点検孔15(図2,3参照)が床版部12aを貫通するように形成されており、内部空間1iにいる点検員がCCDカメラなどを点検孔15に挿入して点検できるようになっている。
図5、図6に併せて示すように、下端が連結部1c寄りに定着する3本のケーブル21〜23は、ケーブル定着部12dの直上の橋軸直角方向について同一位置に張設されており、柱頭部施工部1aにおいても上下方向に互いにオフセットしている。一方、下端が最も柱頭部施工部1a寄りに定着するケーブル24は、橋軸直角方向について、下端は他のケーブル21〜23と同一位置で定着されているが、上部は他のケーブル21〜23よりも外(側方)寄りに配置されている、つまり断面視で鉛直方向に対して若干傾斜するように張設されている。そのため、このケーブル24は、上部が側面視で他のケーブル21〜23と交差可能であり、柱頭部施工部1aにおいて可能な限り高い位置を通過することで大きな傾斜角度で張設可能となっている。
これらケーブル21〜24は、張出し架設工法によって張出し施工部1bが延伸され、所定のコンクリート強度が発現すると、柱頭部施工部1aに形成された図示しない鋼線挿通孔に通してジャッキなどで緊張した状態で両端をケーブル定着部12dに定着させることで、下床版12などの進捗に合わせて順次張設される。このように、斜めに設置されたケーブル21〜24に引張のプレストレスが導入されることで、橋桁1のせん断力および曲げ力に対する耐力が向上する。
特に、下端が橋桁1の最も柱頭部施工部1a寄りに定着されたケーブル24の傾斜角度が大きくなっているため、大きなせん断力が加わる橋桁1の柱頭部施工部1a近傍のせん断耐力が大幅に向上している。また、ケーブル21〜24の下端が床版部12aにおける橋軸方向の短い範囲に設けられたケーブル定着部12dにより定着可能なため、より多くのケーブル21〜24が設置可能になっており、これによっても橋桁1のせん断耐力が向上している。さらに、ケーブル21〜24が、ケーブル定着部12dによって定着された状態で下側部分が直線状を呈する構成となっていることにより、ケーブル21〜24への引張応力の導入を直接的且つ効率的に行うことができるうえ、下床版12の構造が簡単になり、型枠組立などの施工も容易になっている。なお、下床版12の構築においては、増厚部12bや横梁12cが下方に突出する態様となっているために、従来の上方へ突出する態様で必要となる浮き型枠が必要なく、これによっても施工が容易になっている。
同一寸法に形成された板状部材14は、上床版11および下床版12に対してそれぞれ同一の埋め込み長さをもって埋設されており、橋桁1の内部空間1iの高さが一定とされている。一方、下床版12は、張出し施工部1bのうち柱頭部施工部1aに近い部位において床版部12aの厚さが他の部分、具体的には橋軸方向のスパンの中央Cに位置する連結部1cに比べて大きくなっている。橋桁1のせん断力は柱頭部施工部1aに近いほど大きくなるが、複数のケーブル21〜24とこの構成とにより、橋桁1の柱頭部施工部1a近傍におけるせん断耐力が大きくなっている。このように、橋桁1の柱頭部施工部1a近傍において床版部12aの厚さが大きくされることにより、同一形状且つ同一寸法に形成された板状部材14の薄肉化が可能となり、橋桁1の軽量化が実現している。
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、橋桁1が複数の橋脚2間に連続する連続桁であるが、隣接する橋脚2間でそれぞれ独立した橋桁であってもよい。また、上記実施形態の橋桁1は、橋脚2に支承3を介して支持されているが、橋脚2と一体に形成されてラーメン構造を呈する形態であってもよい。さらに、上記実施形態では、プレキャスト成形された複数の板状部材14がウェブ13を構成しているが、現場打ちコンクリートでウェブ13を一対の壁状あるいは複数の板状に構築したり、特許文献1に開示されるような複合トラス橋に用いられる鋼管などからなる複数の斜材でウェブ13を構成したり、或いは特許文献3に開示されるような波形鋼板でウェブ13を構成したりしてもよい。また、上記実施形態に示した本発明に係る橋桁1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
1 橋桁
1a 柱頭部施工部(支点部)
1i 内部空間
2 橋脚
11 上床版
12 下床版
12a 床版部
12b 増厚部
12c 横梁
12d ケーブル定着部
12u 上面
13 ウェブ
14 板状部材(ウェブ部材)
15 点検孔(貫通孔)
21、22、23、24 ケーブル

Claims (7)

  1. 鉄筋コンクリートからなる上床版および下床版と、それぞれ複数の板状部材により構成され、前記上床版および前記下床版の両側部を連結する一対のウェブとを備えて箱状断面形状を呈し、橋軸方向両端部近傍に橋脚または橋台により支持される支点部を有するとともに、当該支点部からその内部空間に斜めに張設されたケーブルにより前記下床版が支持される橋桁であって、
    前記上床版は、下方へ突出して橋軸方向に延在し、前記ウェブとの接合部をなす一対の上側増厚部を備え、
    前記下床版は、床版部と、当該床版部の両側部において下方へ突出して橋軸方向に延在し、前記ウェブとの接合部をなす一対の下側増厚部と、当該一対の下側増厚部の内側に両下側増厚部を連結するように設けられ、両端部がケーブル定着部をなす横梁とを備え、
    前記ケーブルは、前記床版部を貫通してその下端が前記ケーブル定着部によって定着されたことを特徴とする橋桁。
  2. 前記ケーブルは、前記ケーブル定着部によって定着された状態で下側部分が直線状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の橋桁。
  3. 前記床版部には、前記ケーブル定着部を点検するための貫通孔が形成されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の橋桁。
  4. 前記ウェブは、前記複数の板状部材を前記床版部の上面にて互いに所定の間隔をおくように橋軸方向に配列したものであり、
    前記床版部の上面には、前記板状部材へ向けて排水勾配が設けられたことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の橋桁。
  5. 前記板状部材は、高さ方向の中位よりその上辺及び下辺に向けてその橋軸方向長さが徐々に増大するように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の橋桁。
  6. 前記複数の板状部材の高さ寸法が同一であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の橋桁。
  7. 前記床版部の厚さが前記支点部において橋軸方向の中央部よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載の橋桁。
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