JP3830767B2 - 橋梁用連続桁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、橋梁の連続桁に関し、特に、鋼製でΙ桁形状に構成された連続桁に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に示すように、従来のI型形状に構成された橋梁用連続桁1は、中間支点1aの周辺の被支持領域X1では、中間支点1aにかかる応力に耐えるよう断面を大きくしている。即ち、図示はしないが、それ以外の支間領域X2より、被支持領域Xでは下フランジ3を幅広にしたり、上下フランジ3やウエブ4を厚肉にしたり、ウエブを高くする。これによって、領域X1内、特に中間支点1aでの強度が確保されている。また、中間支点1aに垂直補剛材2を多数枚(密に)設けることにより、強度を補強する場合もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の構造では、製作に際して、各領域ごとに幅や厚さの異なるフランジやウエブ用の鋼鈑をいくつも揃え、これら鋼鈑を逐一溶接して継ぎ足さなければならなかった。このような構造では、鋼材重量は削減できても製作工数が多大であり、製作コストが嵩む原因となっている。工数削減のためには、上下のフランジ、ウェブとも桁全長に亘り同一断面の単純な構造が望ましいが、中間支点での強度に応じた構造で全長を通すのでは、鋼材重量が大幅に増加する問題が発生する。
また、近年、阪神淡路大震災で落橋被害が多発した。このため、従来の静定であるゆえに連結部で落橋しやすい単純桁橋から、不静定であるため落橋しにくい連続桁橋が採用されるようになってきている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、橋梁用連続桁において、軽量で単純な断面で通すため、被支持領域にあるフランジやウエブの断面寸法を大きくすること以外の手段によって、被支持領域の強度を高めることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、本発明は、橋梁用連続桁に係り、その第1の特徴では、上下のフランジとウエブとを有して橋軸方向に延び、1又は複数の中間支点で支持される鋼製の桁本体を備えている。この桁本体における上記中間支点の周辺の被支持領域には、第1、第2鉄筋を埋設してなる鉄筋コンクリートが、上記ウエブに添うようにして打設されている。上記第1鉄筋は、垂直に延びるとともに上下端が上下のフランジにそれぞれ連結されている。上記第2鉄筋は、上記橋軸方向に延び、上記第1鉄筋と直交されている。
【0006】
本発明の第2の特徴では、ウエブにも上下フランジにも垂直な仮想の二面と、上下のフランジと、ウエブとによって画成された四角形状の領域部に、上記鉄筋コンクリートが打設、収容されている。ここで、「仮想の二面」とは、「領域部」の範囲を確定するために想定されたものであって、そこにコンクリート打設用の型枠(板材)が設置されることになる。この仮想の二面の何れか一方の位置に、ちょうど垂直補剛材などが存在する場合もあり、その場合は、この垂直補剛材などが型枠として代用される。
【0007】
本発明の第3の特徴では、上記桁本体のウエブに、垂直補剛材が上記橋軸方向に離れて複数設けられ、隣り合う垂直補剛材と上下のフランジとウエブとによって四角形状の凹部が画成されている。この凹部内に上記鉄筋コンクリートが収容されている。
【0008】
本発明の第4の特徴では、ウエブにも上下フランジにも垂直な仮想の二面と、上記上下フランジのうち圧縮応力を受けるフランジと、このフランジに平行でウエブに垂直な仮想の面と、ウエブとによって画成された四角形状の領域部に、上記鉄筋コンクリートが収容されている。「仮想の面」の意味することろは、上記第2の特徴と同様である。
【0009】
本発明の第5の特徴では、上記第1鉄筋の上下端が、上記フランジに突き当てられ、溶接されている。
【0010】
本発明の第6の特徴では、少なくとも一方のフランジに、他方のフランジを向く面にスタッドが溶植されている。このスタッドと上記第1鉄筋とが、筒形状の連結継手を介して連結されている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態として、まず、第1実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図4は、橋梁Bを示したものである。橋梁Bは、橋軸方向に延びる連続桁10を有している。連続桁10は、長手方向に離れた複数の中間支点10aにおいて支承20を介して橋脚30により支持されている。なお、連続桁10は、橋梁Bの幅方向(紙面に直交する方向)に離れて複数本並行して架設されている。これら桁10上に床版(図示せず)が敷設されている。
【0012】
連続桁10は、図1及び図3に示すような、桁本体11が主体となっている。桁本体11は、上下のフランジ12,13とウエブ14とを有するI形鋼で構成されている。ウエブ14の両側面には、垂直補剛材15が長手方向にある間隔をおいて設けられている。隣り合う垂直補剛材15と上下のフランジ12,13とウエブ14とによって四角形状の凹部11aが画成されている。
【0013】
図1及び図4に示すように、桁本体11には、架設後の連続桁に負の曲げモーメントのかかる領域か否かによって、橋軸方向に分割された2種類の仮想の領域R1,R2が設定されている。一方の被支持領域R1は、負の曲げモーメントとなる領域(一部正の曲げモーメントとなる領域を含むこともある)で、中間支点10a周辺を占める。橋軸方向の境界作成を容易にするため、支承20の近くの5本の垂直補剛材に囲まれた4つの凹部11aに跨がらせている。(負の曲げモーメントの範囲によっては、凹部11aの数は変動する。)他方の支間領域R2は、被支持領域R1以外の支間部分を占めている。支間領域R2のウエブ14には、上フランジ12寄りに、水平補剛材16が設けられている。なお、水平補剛材16は、被支持領域R1には設けられていない(図3参照)。
【0014】
図1及び図2に示すように、被支持領域R1の凹部11aには、ウエブ14に添うようにして、鉄筋コンクリート40が打設充填されている。鉄筋コンクリート40の表面は、フランジ12,13あるいは垂直補剛材15の縁と面一になっている。(設計上必要とされる強度によっては、コンクリートをフランジや垂直補剛材よりも薄くあるいは厚く打設する事もある。)
【0015】
鉄筋コンクリート40には、コンクリート41の内部に、上下フランジに垂直に延びる垂直鉄筋42(第1鉄筋)と、この垂直鉄筋42に直交して水平(橋軸方向)に延びる水平鉄筋43(第2鉄筋)とが、複数本ずつ格子状に埋設されている。垂直鉄筋42の上下端は、上下のフランジ12,13にそれぞれ突き当てられ、例えばスポット溶接やアーク溶接にて連結されている。水平鉄筋43は、垂直鉄筋42に、ウエブ14側から当てがわれ、番線(図示せず)にて結束されている。
【0016】
鉄筋コンクリート40は、被支持領域R1にのみ設けられており、支間領域R2には設けられていない。
【0017】
鉄筋コンクリート40は、桁製作工場で桁本体11の製作に引き続いて施工してもよく、橋梁Bの架設現場で桁本体11を架設中に施工してもよい。
【0018】
上記のように構成された連続桁10の作用を説明する。
連続桁10は、鉄筋コンクリート40におけるコンクリート41の圧縮強度と鉄筋42,43の引張強度によって桁本体11の変形を確実に拘束することができる。これによって、被支持領域R1の上フランジの曲げねじれ座屈強度やウエブの剪断座屈強度等の負の曲げモーメントに対する耐荷力を、大きく向上させることができる。(実験の結果、鉄筋コンクリートの無い鋼製桁本体だけのものに対して、その桁本体に鉄筋コンクリートを打設した本発明の適用品は、2〜3倍の耐荷力を有していた。)
【0019】
したがって、被支持領域R1のフランジ13の幅及び厚さ並びにウエブ14の高さ及び厚さを、支間領域R2と等しくすることができ、領域R1,R2ごとに別の鋼鈑を用いる必要がない。また、垂直補剛材15を中間支点10a付近に狭い間隔で複数枚配置する必要もない。これによって、桁本体11の製作を効率的かつ低コストで行うことができる。また、鋼材重量も低減できる。一方、被支持領域R1の鉄筋コンクリート40は、鉄筋42,43の溶接や結束、及びコンクリート41の打設によって比較的簡単に施工できる。
【0020】
鉄筋コンクリート40は、被支持領域R1にのみ設けられ、支間領域R2には設けられていないので、支間領域R2の自重による断面力は増加することはない。しかも、鉄筋コンクリート40は、凹部11aの深さと同じかそれと同等の肉厚しかないので、被支持領域R1の自重による断面力の増加を極力小さくすることができる。
【0021】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、本発明の第2実施形態は、被支持領域R1を、垂直補剛材15間としない場合の実施形態である。被支持領域R1の両端となるべき位置P1,P2には、上記第1実施形態における垂直補剛材15を型枠とする代わりに、ウエブ14にも上下フランジ12,13にも垂直に型枠を設置する。これによって、型枠と、それより中間支点10a側の垂直補剛材15との間に、四角形状の領域部11a’が画成される。この領域部11a’と凹部11aに垂直鉄筋42と水平鉄筋43を配筋したうえで、コンクリート41を打設し、鉄筋コンクリート40を形成する。
この第2実施形態では、被支持領域R1を、負の曲げモーメントになる領域のみとすることができ、中間支点10aにかかる曲げモーメントに対し、最も短いコンクリート打設範囲で対応をすることができる。
【0022】
図6に示すように、本発明の第3実施形態は、桁本体11が被支持領域R1において圧縮応力で座屈しないように、鉄筋コンクリート40で強度増加を図る場合の実施形態である。上記の第1、第2実施形態における上フランジ12を型枠とするのに代えて、上下フランジ12,13の間にフランジ13と平行に型枠を設置し、型枠と下フランジ13とで形成される四角形状の領域部11a”にのみ水平鉄筋42を配筋し、この領域部11a”にコンクリート41を打設する。垂直鉄筋42は、下側部だけがコンクリート41に埋設され、上側部はコンクリート41から露出することになる。
この第3実施形態によれば、中間支点10aにかかる圧縮応力と引張応力を効率よく分担させることができる。
【0023】
図7に示すように、本発明の第4実施形態では、上フランジ12の下面に、短鉄筋44(スタッド)が溶植されている。この短鉄筋44と垂直鉄筋42の上端部とが、筒形状のカプラー45(連結継手)によって軸力を伝達可能に連結されている。同様に、下フランジ13の上面にも短鉄筋44が溶植され、カプラー45を介して垂直鉄筋42の下端部と連結されている。
【0024】
この第4実施形態によれば、カプラー45によって鉄筋42,44の端部どうしの間隔を調節することができる。したがって、垂直鉄筋42の長さが一定していなくてもフランジ12,13との連結を確実に行うことができる。また、架設現場でコンクリート41を打設する場合、工場で短鉄筋44を溶植しておけば現場作業は容易となる。
【0025】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。
例えば、桁本体として鋼箱桁を用いてもよい。
また、図7の第4実施形態において、垂直鉄筋42の上下端の何れか一方だけカプラー45を介して短鉄筋44と連結し、他方は、対向するフランジ12又は13に直接突き当て、溶接してもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の特徴によれば、鉄筋コンクリートによって桁本体の変形を拘束することができる。これによって、連続桁における中間支点周辺の被支持領域の強度を大きく向上させることができる。
本発明の第2の特徴によれば、上下フランジとフランジに垂直な板材を型枠にしてコンクリートを容易に打設することができ、設計上必要な部分のみ桁の強度を一層高めることができる。
本発明の第3の特徴によれば、上下フランジと垂直補剛材を型枠にしてコンクリートを容易に打設することができる。また、桁の強度をより一層高めることができる。
本発明の第4の特徴によれば、下フランジと下フランジに平行な板材とフランジに垂直な板材を型枠にしてコンクリートを容易に打設することができ、桁の圧縮強度を一層高めることができる。
本発明の第5の特徴によれば、第1鉄筋のフランジへの連結を、溶接によって簡単に行うことができる。
本発明の第6の特徴によれば、第1鉄筋の長さが一定していなくても、フランジへの連結を確実に行うことができる。また、工場で短鉄筋を溶植しておくことにより、架設現場での作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る連続桁の斜視図である。
【図2】上記連続桁の被支持領域の断面図である。
【図3】上記連続桁の桁本体の斜視図である。
【図4】上記連続桁を適用した橋梁の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る連続桁の正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る連続桁の正面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る連続桁の被支持領域の断面図である。
【図8】従来の連続桁の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
B 橋梁
10 連続桁
11 桁本体
11a 凹部
11a’ 領域部
11a” 領域部
12 上フランジ
13 下フランジ
14 ウエブ
15 垂直補剛材
40 鉄筋コンクリート
42 垂直鉄筋(第1鉄筋)
43 水平鉄筋(第2鉄筋)
44 短鉄筋(スタッド)
45 カプラー(連結継手)

Claims (6)

  1. 上下のフランジとウエブとを有して橋軸方向に延び、1又は複数の中間支点で支持される鋼製の桁本体を備え、この桁本体の上記中間支点の周辺には、第1、第2鉄筋の全てもしくは一部を埋設してなる鉄筋コンクリートが、上記ウエブに添うようにして打設されており、上記第1鉄筋が、上記ウエブから離れ垂直に延びるとともに上下端が上下のフランジにそれぞれ連結され、上記第2鉄筋が、上記ウエブから離れ上記橋軸方向に延び上記第1鉄筋と直交されていることを特徴とする橋梁用連続桁。
  2. 上記ウエブにも上下フランジにも垂直な仮想の二面と、上下フランジと、ウエブとによって画成された四角形状の領域部に、上記鉄筋コンクリートが打設、収容されていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁用連続桁。
  3. 上記ウエブには、垂直補剛材が上記橋軸方向に離れて複数設けられ、隣り合う垂直補剛材と上下のフランジとウエブとによって四角形状の凹部が画成されており、この凹部内に上記鉄筋コンクリートが収容されていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁用連続桁。
  4. 上記ウエブにも上下フランジにも垂直な仮想の二面と、上記上下フランジのうち圧縮応力を受けるフランジと、このフランジに平行でウエブに垂直な仮想の面と、ウエブとによって画成された四角形状の領域部に、上記鉄筋コンクリートが打設、収容されていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁用連続桁。
  5. 上記第1鉄筋の上下端が、上記フランジに突き当てられ、溶接されていることを特徴とする請求項1から4までの何れかに記載の橋梁用連続桁。
  6. 少なくとも一方のフランジには、他方のフランジを向く面にスタッドが溶植され、このスタッドと上記第1鉄筋とが、連結継手を介して連結されていることを特徴とする請求項1から4までの何れかに記載の橋梁用連続桁。
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