JP5736461B2 - 電子顕微鏡および試料観察方法 - Google Patents

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Description

本発明は電子顕微鏡、および電子顕微鏡を用いた試料観察法に関する。
ローレンツ顕微鏡法に代表される電子線の偏向状況の可視化手法は、磁性材料の磁化分布の観察など、非生物系の試料における物性情報の観察手法の1つとして広く実施されている。ローレンツ法は、その名称のとおり、磁性材料中を透過する電子線が試料の磁化によりローレンツ力を受けて偏向される様子を観察する手法として開発された。大別して、フーコー法とフレネル法の2つの手法がある。以下、180度反転磁区構造を有する磁性材料観察を例に、それぞれの手法を説明する。
<フレネル法>
図1は180度反転磁区構造を有する磁性試料で電子線が偏向を受ける様子を示したものである。電子線が偏向される角度は、磁化の大きさと試料の厚さに依存する。したがって、厚さが一定で磁化が均一な試料の場合、電子線の受ける偏向は、どの領域でも角度が同じで磁区構造に伴って方位が異なることになる。
図1に示すごとく、180度反転磁区構造を有する試料3に電子線27が入射すると、試料3を透過した電子線27は、それぞれの磁区(31、33)で逆方向に偏向を受ける。偏向を受けた電子線27は、試料下方に十分な距離だけ伝播すると、投影面24上において、180度磁壁32に該当する位置で互いに重なりあう状況と、逆に互いに離れる状況が発生する。この投影面24上での電子線の強度の粗密を結像するのがフレネル法である。図1の下部に投影面上での電子線の強度分布のグラフ25を例示する。
図2はフレネル法で磁性試料を観察する際の光学系の模式図である。図2の下部には、フレネル像を例示する。図2(a)は、試料ではなく試料下側の空間位置35にフォーカスを合わせて観察する様子を示したもので、ちょうど磁壁32の部分が明線(白色)または暗線(黒色)のコントラスト72で観察される。
同様に図2(b)に示すごとく試料上側の空間位置36にフォーカスを合わせても磁壁32の部分が逆のコントラスト72で観察される。すなわち、試料にとってはフォーカスをはずして観察することによって、電子線へ偏向を与える領域の境界線が明線(白色)または暗線(黒色)で観察される。磁性材料で言うならば、フレネル法は磁壁を観察する手法である。このときのフレネル像の境界線の白黒コントラストは、偏向方向の組み合わせとフォーカスの位置に依存する。
また、フォーカスをはずす量(デフォーカス量)は、電子線が受ける偏向の大きさに依存し、大きく偏向される場合には数百nm程度の小さなデフォーカス量で十分なコントラストが得られるが、例えば磁束量子の様に小さな偏向しか与えない観察対象の場合には、数百mmものデフォーカス量が必要である。
<フーコー法>
図3は、フーコー法による磁区構造観察の光学系である。図1と同様に180度反転磁区構造を有する試料3を透過した電子線は、それぞれの磁区(31、33)で互いに逆方向に偏向を受け、その方向に偏向を受けた電子線は、例えば対物レンズ5の後焦点面54(厳密には照射電子線の光源の像面)で、その偏向角度に応じた位置にスポット(11、13)を結ぶ。そこで、対物絞り55を挿入し、観察したい磁区からの電子線のみを選択し像面7上に結像させる。
例えば図3(a)では、磁区31を透過し、紙面上左方向に偏向された電子線を選択した例であり、図3(b)は逆に、磁区33を透過し、紙面上右方向に偏向された電子線を選択した例である。いずれにしても、選択された磁区が白色、選択されなかった磁区が黒色(電子線が来ない)で観察され、磁区構造(31、33)がストライプ状(71、73)のフーコー像として可視化される。磁性材料で言うならば、フーコー法は磁区を観察する手法である。
フーコー法ではインフォーカスで試料像が観察されるため高分解能観察が期待されるが、例えば、磁性材料などの場合、電子線の偏向角度は結晶性試料によるブラッグ角の1/10程度と小さいため、孔径の小さな対物絞りを使用しなければならず、得られる空間分解能は格子分解能の1/10倍程度となり、フレネル法と大きな違いはない。さらに、磁区構造観察のためのコントラストの成因は、観察しない磁区を透過した電子線の遮蔽によるものであり、一部の情報を捨てることによってコントラストを得る手法であった。
そのため、例えば、結晶粒界などの様に複数の磁区に渡った対象を観察する場合には、対物絞りを調整し直して、逆コントラストのフーコー像を別途観察するか、対物絞りを光軸から外して通常の電子顕微鏡像を合わせて観察しておく必要があった。すなわち、複数回の観察が必要で、動的観察、実時間観察などは、ほぼ不可能であった。
上記、フーコー法での課題への対処方法の1つとして、図は省略するが、照射光学系において電子線バイプリズムなどを用いて試料への入射電子線を複数に分割し、それぞれの電子線を試料上の同一領域にそれぞれ異なる入射角度で入射せしめ、試料を透過したそれぞれの電子線を、例えば電子線バイプリズムもしくは絞り機構、あるいはその両方を備える結像光学系によって分離し、それぞれの電子線による試料の像を個別に同時観察する手法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この特許文献1はもともと立体視を目的としており、電子線バイプリズムなどを用いて2つの電子線の照射角度を変化させている。したがって、試料に対して同一照射条件ではなくなることから、厳密に試料の持つ物性(主に磁性を想定している)だけにより変調を受けた像にはならなかった。特に等傾角干渉縞の場合には、入射角度と試料の結晶方位との関係で干渉縞が定まるため、等傾角干渉縞の見え方を同じにするためには、入射角度を同じにする必要が生じる。
また、試料の上部の照射光学系に電子線バイプリズムなど付加装置を必要としており、実際に実験する場合、照射量を正確に分割する困難性が生じるなど煩雑な装置の操作が予想される。このようにフーコー法としては課題も残っている。
上述のローレンツ顕微鏡法以外に、電子線の位相分布から、試料の磁区構造などを観察する手法として、電子線ホログラフィー(非特許文献2)や強度輸送方程式法(特許文献3)、(非特許文献3)などが開発されている。いずれの手法もそれぞれ利点を有しているが、電界放出型電子線など干渉性の高い電子線が必要である上、電子線ホログラフィーでは付加装置として電子線バイプリズムが必要であり、試料形状には参照波を透過させるための領域を考慮しなければならないこと、強度輸送方程式法ではインフォーカスを挟んで少なくとも2枚のデフォーカス量が既知の画像(都合3枚の画像)が必要であり、各像の倍率、位置合わせなどの調整処理が不可欠であること、など実施に当って煩雑さも多いのが実情である。
特開2011−040217号公報 特開2007−134229号公報
A. Tonomura, J. Electron Microsc. 33 (1984) 101. K. Ishizuka and B. Allman, J. Electron Microsc. 54 (2005) 191.
試料上の電子線照射領域全面の情報を得るためには、改めて電子線の偏向成分を選択し直して結像するなど、複数回の観察が必要であった。この方法では複数回の光学系の調整が必要であるだけでなく、照射領域全面の情報を得たとしても時間的に異なるタイミングでの観察であり、動的観察や実時間観察が不可能であるだけでなく、同一照射条件での観察も厳密には困難であった。
本発明における電子顕微鏡は、電子線を発生させる光源と、前記光源から放出される単一の電子線を試料に照射するための照射光学系と、前記試料の像を結像するための対物レンズおよび複数のレンズから構成される結像レンズ系と、前記対物レンズより前記電子線の進行方向下流側であり、かつ前記電子線の経路上において前記電子線が前記試料を透過する際に偏向もしくは回折されることによって生じる前記電子線の陰の空間に配置され、前記試料透過後の電子線を互いに異なる方向に偏向する電子線バイプリズムと、前記電子線バイプリズムにより分離された前記試料の像を観察する観察記録面と、前記分離された試料の像を記録するための画像記録装置と、を有することを特徴とする。
また、本発明における試料測定方法は、電子線を発生させる光源と、前記光源から放出される単一の電子線を試料に照射するための照射光学系と、前記試料の像を結像するための対物レンズおよび複数のレンズから構成される結像レンズ系と、前記対物レンズより前記電子線の進行方向下流側の空間に配置された電子線バイプリズムと、前記試料の像を観察する観察記録面と、前記分離された試料の像を記録するための画像記録装置と、を有する電子顕微鏡を用いる観察法であって、前記照射光学系は前記光源から放出される単一の電子線を前記試料に照射し、前記試料への照射により前記電子線の経路上に生じる前記電子線の陰の空間に配置された前記電子線バイプリズムは、試料を透過後の電子線を互いに異なる方向に偏向し、前記観察記録面は前記電子線バイプリズムにより分離された前記試料の像を観察し、前記画像記録装置は前記観察された前記試料の像を記録し、前記電子顕微鏡は前記試料内において前記電子線が受ける偏向の方位分布、又は前記電子線が受ける回折の方位分布を前記記録された前記試料の像に基づいて求めることを特徴とする。
全く同一の照射条件で画像データを取得できるため、観察面全域に渡る偏向状況の観察が可能となるだけでなく、動的観察、実時間観察が好適に実現できる。
反転磁区構造を持つ試料を電子線が透過する際に受ける偏向の様子を示す模式図である。 ローレンツ顕微鏡法(フレネル法)を説明する模式図である。 ローレンツ顕微鏡法(フーコー法)を説明する模式図である。 電子線バイプリズムと電子線バイプリズムによる電子線の偏向を示す模式図である。 本発明の原理を示す光学系の模式図である。 (a)電子線バイプリズムへの印加電圧が負の場合、(b)電子線バイプリズムへの印加電圧が正の場合における本発明の原理を示す光学系の模式図である。 対物レンズによる電子の光源の像と電子線バイプリズムの中央極細線電極の像を示す実験結果である。 電子線バイプリズムへの印加電圧を変化させたときに観察されるフーコー像を示す実験結果である。Aは−100V、Bは−50V、Cは0V、Dは+50V、Eは+100Vである。 本発明の第2の実施例になる電子顕微鏡の構成例を示す模式図である。 フーコー像の演算処理を示す実験結果である。A、Bはフーコー像、C、DはA、Bからそれぞれ減算処理された差分像である。 フーコー像の演算処理を示す実験結果である。Aは電子顕微鏡像、Bは図10A、Bから合算処理された重畳像である。 本発明の第4の実施例になる四角錘型電子線プリズム(直交する2本の中央極細線電極を持つ電子線バイプリズム)を用いる光学系を示す模式図である。 本発明の第5の実施例になる電子顕微鏡の構成例を示す模式図である。 分極構造を持つ試料を電子線が透過する際に受ける偏向の様子と偏向を受けた電子線による光源の像と電子線バイプリズムの配置の関係を示す模式図である。 結晶性試料を電子線が透過する際に受ける回折の様子と回折を受けた電子線による光源の像と電子線バイプリズムの配置の関係を示す模式図である。 超格子試料を電子線が透過する際に歪場から影響を受ける回折の様子と影響を受けた電子線による光源の像と電子線バイプリズムの配置の関係を示す模式図である。
<電子線バイプリズム>
本発明の説明においては、試料によりいくつかの方向・方位に偏向を受けた電子線の伝播方向をさらに偏向し、各々の電子線の結像位置を空間的に分離させるために電子線バイプリズムを利用する。まず、この電子線バイプリズムについて説明する。
電子線バイプリズムは光学におけるフレネルの複プリズムと同じ作用をする電子光学系における装置で、電界型と磁界型の二種類がある。このうち、広く普及しているものは図4に示す電界型電子線バイプリズムで、中央部の極細線電極9と、その電極を挟む形で平行に保持され接地された一対の平行平板型接地電極99とで構成される。例えば、中央極細線電極9に負電圧を印加すると、中央極細線電極9の近傍を通過する電子線27は、この中央極細線電極9の電位により互いに離れる方向に偏向される。光学系の構成によって、電子線バイプリズムに印加する電圧の正負が変更されることは言うまでも無い。
以下、本願では電子線バイプリズムとして電界型電子線バイプリズムを用いて説明を行う。しかし、本発明は電子線バイプリズムとして電界型、磁界型に依らず構成可能であり、以下の説明で用いる電界型電子線バイプリズムに限定するものではない。
本発明は、1つの鏡体からなる電子顕微鏡の1つの光軸のみをもつ電子光学系において、試料を透過する際に、試料内での磁化分布等によってそれぞれ異なる方向・方位へ偏向を受けた電子線を空間的に分離し、それぞれ異なる画像として個別に結像・記録することを特徴とする。
本発明により、同一領域の複数の観察像が同時に得られる様になり、取得情報量が倍増し、実験効率が向上する。また、観察像を得る方法は、複数の観察像に対応する場所に画像撮影のための装置をそれぞれ配置しても良いし、1つの画像撮影装置で撮影した画像を処理して複数の観察像を抽出しても良い。それぞれの構成で得られる効果の違いは実施例の中で述べている。
さらに、本発明では電子線バイプリズムは使用しても電子線の干渉は用いない。そのため、観察対象が干渉性を必要としない限り、光学系から電子線への干渉性の要求がないことも特徴である。
また、本発明により取得される複数の画像は、全く同時刻に試料を透過した電子線の結像によるものであり、同時観察が厳密に実現されている。そのため、観察記録系の時間分解能に制約されるのみで、通常の電子顕微鏡観察と同様の動的観察、実時間観察が可能となる。
図5に第1の実施例として、本発明の代表的な光学系を示す。電子の光源1から放出された単一の電子線は、照射光学系(照射レンズ4)により試料3への照射に際して適切な電子密度、照射範囲となるように調整される。試料3の所定の領域を照射した電子線は、試料内の例えば反転磁区構造などにより主に2方向の異なる方位に偏向されるため、試料上側の光源の像(クロスオーバー)10が、対物レンズ5を透過後は各々の偏向方向に応じて光源の像(11、13)と2つに分離されている。
図5ではわかりやすくする目的で、試料内で紙面の左方向に偏向された電子線21にハッチングを施している。対物レンズ5による試料3の像37は拡大結像系にて観察記録面89上に結像されるが、各々異なる方向に偏向を受けた電子線(21、23)は、結像レンズ6による光源の像(11、13)の近傍に配置された電子線バイプリズム9によりさらに偏向を受けて空間的に分離され、観察記録面89にそれぞれ個別に像(321、323)を結ぶ。
このように本発明における電子線バイプリズム9の利用の仕方は、従来の電子線ホログラフィーなど干渉法とは本質的に異なり、電子線バイプリズム9は、2つの像(321、323)をそれぞれ個別に結像し、観察・記録する目的で、2方向の電子線(21、23)を空間的に分離させるために使用される。なお、干渉法の場合はホログラフィー電子顕微鏡を用いる制約があるが、本願は従来の電子顕微鏡を用いて実現可能である。
図5では電子線バイプリズム9が結像レンズ6の作り出す陰の空間22に配置された例を示しているが、陰の空間であれば光学系上は、試料の物面と像面を除きどの位置でもよく、電子顕微鏡の機械的位置構成などを勘案して具体的な設置位置が定められれば良い。いずれの位置においても、機械的、空間的に設置可能な電子顕微鏡の装置上のスペースがあることと、中央極細線電極9の太さが陰の空間22内に収まることが必要である。一般に、陰の空間サイズは試料像の拡大とともに逆に縮小されていくので、例えば対物レンズ5による光源の像面54近傍などが妥当と考えられる。
図5においては簡単のため、加速管など照射光学系に至るまでの装置を、省略して電子の光源1として表すとともに、照射光学系も1段の照射レンズ4で代表して示している。拡大結像系においても、本発明の概念をより判り易く説明するため、対物レンズ5と結像レンズ6の各1段のみを描いている。さらに、電子線バイプリズムに関しては中央極細線電極9をその断面形状を示す円でのみ表し、接地電極は省略している。これらは皆、図が煩雑になることを防ぐための省略であって、発明の本質を示すものではない。また、電子線バイプリズムについて、光学系の中で厳密に中央極細線電極を示す場合は『電子線バイプリズムの中央極細線電極』と表記し、電子線の偏向器として慣用する場合には『電子線バイプリズム』とのみ表記するが、符号に関しては同じ9または90を用いる。以上は、図5以降の図、説明においても同様である。
第2の実施例として、図6に最も簡略化した光学系において、電子線バイプリズムへの印加電圧の正負を逆転させた場合の光学系を示す。図6では照射光学系、拡大結像系は省略し、光源の像10、試料3、対物レンズ5、電子線バイプリズム9、像面7のみの構成を描いている。試料3は異なる2方向に電子線を偏向させる材料、例えば反転磁区構造を想定している。
したがって、試料3を透過後の電子線は2方向に偏向され(21、23)、それぞれが対物レンズ5の下側に光源の像(クロスオーバー)(11,13)を結ぶ。図6(a)は電子線バイプリズム9に負の電圧を印加し、両クロスオーバー(11,13)からの電子線(21、23)が互いに重ならないようにしている。電子線バイプリズムにより加えられる偏向の状況は、図5と同様である。
一方、図6(b)は電子線バイプリズム9に正の電圧を印加し、両クロスオーバー(11,13)からの電子線(21、23)が像面7に伝播するまでに交差を完了する様に偏向を与えている。以上は、得られる2つの像(321、323)の位置の左右が入れ替わるだけで同じ結果を得る。
図7、図8に実験結果を例示する。試料はマンガン酸化物系の材料で、冷却時には相転移により180度反転磁区構造となることが知られている。観察は加速電圧300kVの電子顕微鏡を用い、試料は106Kに冷却して実施した。
図7は対物レンズ下側の光源の像である。試料による偏向により光源の像が2つに分離されていることがわかる。両光源像の中央部の黒い帯状のコントラストは、電子線バイプリズムの中央極細線電極9の像である。電子線が透過しないため、黒いシルエットとなって観察されている。この電子線バイプリズムは、対物レンズ直下の光源の像面に挿入したものである。
図8は図7の状態で、電子線バイプリズムに電圧を印加したときに観察された試料の像である。それぞれ、図8Aは−100V、Bは−50V、Cは0V、Dは+50V、Eは+100Vの電圧を印加したときの観察像である。図8A、Eより縦方向のストライプは磁区構造によるコントラスト、図8Cより曲線状の縞模様は試料固有の等傾角干渉縞などによるコントラストであることがわかる。
また、観察にはCCDカメラを用い、1画面上に2つの像が記録されるように倍率等を調整した。電圧の印加に伴って、図8Cの通常の電子顕微鏡像が、それぞれの磁区を透過した電子線によるフーコー像に変化することがわかる。印加する電圧の大きさは、観察領域のサイズに依存している。すなわち、観察したい領域が、十分に分離されるだけの電圧を印加できればよい。図8AとEで、左右のフーコー像が入れ替わっているだけであることから、印加する電圧は正負どちらの電圧でもよい。なお、この電子線バイプリズムへの印加電圧が、電子線の加速電圧にも依存することは言うまでも無い。
以上のように、本発明によれば全く同一の照射条件で、かつ、同時に2方向に偏向された電子線による像を取得できる。そのため、動的観察、実時間観察が可能であることは明らかである。さらに、図8の画像取得に際して対物絞りを使用していないことから、高分解能観察への可能性を有している。
図9は、本発明を実施するための光学系をもつ電子顕微鏡の構成例である。図6と同様に対物レンズ5の下側に電子線バイプリズム90が設置されている。2方向へ偏向された電子線をそれぞれ個別に結像するとともに、2つの像(321、323)に合わせて2つの観察記録媒体79が配置されている。
すなわち、それぞれ独立した像(321、323)が、感度等を調整した個別のTVカメラやCCDカメラにより記録されるので、後の演算処理では容易に処理精度を高めることができる。図9では、2つの観察記録媒体79で取得された画像データが、それぞれ個別の制御ユニット78を介して演算処理装置75に送られて、1つの画像データとして表示装置74に出力される様子を示している。
従来の制御ユニット78、データ記録装置77、画像表示装置76を用いた処理システムでも画像演算処理は可能であるが、説明の便宜上また処理精度の高度化への発展性などから、別途の演算処理装置75とその表示装置74を使用する構成図を明示した。しかし、本願はこの構成に限定するものではない。また、観察記録媒体79としては、従来は電子顕微鏡用写真フィルムが使われていたが、近年はTVカメラやCCDカメラの方が一般的になってきているため、そのような説明を行った。この点に関しても、本願はこの構成に限定するものではない。
ここで2つの観察記録媒体79の調整方法の一例について述べる。
(1)感度の調整:
同種同型の記録媒体を用いても、記録系の取得画像の明るさ、コントラストは、同一に調整されている必要がある。そこで、試料3や電子線バイプリズム90を光軸2上に挿入しない状態で観察記録面89を広く均一に電子線照射し、このとき2つの観察記録媒体79において同じ明るさが入力データとなるように感度調整を行う。この入力データが出力されるまでの制御ユニット78やデータ記録装置77、モニタなどの表示装置76の調整も同時に行う。
(2)電子線バイプリズム位置の調整:
上記(1)の調整の後、試料3と電子線バイプリズム90を光軸2上に挿入し、図7に例示した光源の像を観察しながら、電子線バイプリズムの中央極細線電極が2つの光源像の間で、かつ、両光源像を結ぶ線分と直交する様に、中央極細線電極の位置と方位を調整する。その後、両方の像(321、323)が観察されるように像の位置、方位、倍率を調整する。
像(321、323)と観察記録媒体79との光軸2を軸とする方位の調整には、(1)試料3を光軸2を軸として回転させる。(2)電子線バイプリズム90を光軸2を軸として回転させる。(3)磁界型結像レンズ(61、62、63、64)の像回転効果を利用して調整する。(4)観察記録媒体79を光軸2を軸として回転する。などの方法が考えられる。
現在では、(2)として電子線バイプリズム90に回転機構が組み込まれていることが一般的であるが、電子線バイプリズムの中央極細線電極は試料3による電子線27の偏向方位に対して合わせ込まねばならないため、(2)の手段だけで無くその他の手段と併用することが必要となる。
上述のような観察記録媒体79の調整は随時可とするだけでなく、何らかの事情による2つの像(321,323)の明るさ、コントラストの差を、電子光学系ではなく画像処理装置側で補正可能としておくことは実使用に際しての利点となる。このときそれぞれの初期の調整値をデフォルトとして保全するとともに、いつでも復帰可としておくようにすればさらなる利点となる。
図9は、従来型の加速電圧100kVから300kVの電子顕微鏡を想定して、電子線バイプリズム90や、拡大結像系のレンズ(61、62、63、64)を描いているが、本発明における電子顕微鏡光学系の構成要素は、この図のものに限定するものではない。さらに、実際の装置ではこの図9に示した構成要素以外に、電子線の進行方向を変化させる偏向系、電子線の透過領域を制限する絞り機構などが存在する。
しかし、これらの装置は、本発明には直接的な関係が無いので図9では省略している。さらに、電子光学系は真空容器18中に組み立てられ、真空ポンプにて継続的に排気されているが、真空排気系についても本発明とは直接の関係が無いため省略する。このような省略は、必要に応じて以降の図においても同様である。
図10、図11に得られた2枚の画像データの演算処理の例を示す。処理前の画像データは図8の実験結果のものである。演算処理に先立って各々の画像データの試料の位置を合わせておくことは言うまでもない。その方法として、例えば、2つの画像の相関を取るなどの画像処理手法を用いれば、演算処理の画素レベルから画素の1/10程度のサブ画素のレベルでの位置の合わせ込みを実現することができる。
図10AとBは図8Aの2つのフーコー像である。縦方向のストライプは磁区構造によるコントラスト、曲線状の縞模様は等傾角干渉縞などによるコントラストである。図10Aと図10Bを比較すると磁区のコントラストが反転している。この2つのフーコー像から相互に減算処理したものが、図10CとDである。
すなわち、図10Cは図10Aから図10Bを減算した差分像で、画像の明るさ(強度)のゼロが中間調となる様に全体の表示の際の明るさを調整している。 図10Dは図10Cとは逆に、図10Bから図10Aを減算した差分像である。図10Cと図10Dを比較すると明らかに磁区のコントラストが反転している。
磁区構造コントラストの反転だけでなく、図10C、Dともに差分像であるため、像全体の背景を成す磁区構造と関係しない等傾角干渉縞などの試料中の模様が減算処理によって除去され、図8よりも磁区構造が強調された画像となっている。すなわち、磁区構造観察の際にアーティファクトとなる試料が固有に持つ欠陥などのコントラストが除去されている。この減算処理は、高精度・高感度な磁区構造の観察に有効である。
別の演算処理例を図11に示す。図11Aは通常の電子顕微鏡像で、図8Cと同じものである。図11Bは図8Aの両図、すなわち、図10のAとBの画像を加算した重畳像である。図11AとBを比較すると、曲線状の縞模様などが一致しており、両者は同じ画像となっている。すなわち、2方向に偏向を受けたそれぞれのフーコー像を合算することによって、従来と同じ電子顕微鏡像が得られることを示している。本発明によれば、電子顕微鏡像を得るために電子線バイプリズムを光軸から移動させたり、電子線バイプリズムへの印加電圧をゼロにするなどの追加作業とその後の観察は不要である。
以上の減算、加算の両画像処理が有効であったのは、全く同一の照射条件で、かつ、同時に2方向に偏向された電子線によるフーコー像であるため、得られた両フーコー像の明るさ、コントラスト、ノイズ、試料の持つ背景像などが、高い精度で一致しているからと考えられる。本発明がこれらの演算処理に有効であることは明らかである。
このような複数画像の減算、加算の演算処理だけでなく、複数画像間の乗算、除算の処理も同様に実施可能である。また、各々の単一画像に対して実施される演算処理、例えば、背景への加算/減算処理(画像全体の明るさ調整)、背景への乗算/除算処理(画像のコントラスト調整)あるいは関数に基づく乗算/除算処理(明るさ分布の均一化処理)は、通常の画像演算処理として何らの問題なく実施可能である。さらに、画像ぼかしフィルタリング、フーリエ変換処理による空間周波数処理(ハイパスフィルタリングやローパスフィルタリング)なども実施可能である。
試料内で電子線が受ける偏向の方向・方位は、2方向だけとは限らない。仮に比較的単純な反転磁区構造をとる材料であっても、試料内に結晶方位の異なる領域が存在すれば、その領域では磁区の方向が変化する可能性がある。そこで電子縁バイプリズムを複数用いることによって電子線の偏向方向・方位に依存したそれぞれの像を得ることができれば、試料内の構造をより詳細に可視化することが可能となる。
図12に四角錐型電子線プリズム95を用いる際の構成図を示す。四角錘型電子線プリズムは、中央極細線電極を2本直交させた言わば2個1組の電子線バイプリズムで、光学における四角錘型プリズムと同様の光学素子となる。中央極細線電極を直交させた場合でも、電子線への偏向の性能は通常の電子線バイプリズムと大きく変わることはない。2つの電子線バイプリズムを近距離で配置するよりも簡便で、同様の効果が期待される。
図12では簡単のため、電子線は伝播を代表するそれぞれ1本の軌道27でのみ描いている。試料3内に直交する4つの方向・方位に電子線を偏向する領域があるとき、入射電子線27はそれぞれの領域で4方向・方位に偏向される。この電子線27を先述までと全く同様に対物レンズ5の下側の光源の像面54近傍に配置した四角錘型電子線プリズム95によりそれぞれの伝播方向を偏向させ、像面7上にそれぞれ個別の像(311、312、313、314)を結像させる。
本実施例においても、偏向を受けた電子線と四角錘型電子線プリズム、および観察記録面での観察記録媒体の位置関係の調整のため、試料、四角錘型電子線プリズム、結像レンズによる像回転機能、観察記録系のいくつかが、光軸を軸とした回転可能であることは言うまでも無い。また、図12においては、四角錘型電子線プリズム95は、対物レンズ5の下側に配置されているが、対物レンズ5の代わりに拡大結像系のレンズのいずれかを用いても良いし、四角錘型電子線プリズムに代わって複数の電子線バイプリズムを、偏向を受けた電子線の陰の空間に直交配置してもよい。
このとき、複数の電子線バイプリズム同士を電子レンズを介して配置する場合には、上下2つの電子線バイプリズムが、介在する電子レンズによる光学系的に等価な関係(例えば、結像光学系における物面と像面の関係)を満たしていれば、あたかも同一の空間に2つの電子線バイプリズムが在るのと同じ効果が得られる。
以上のような構成を、さらに多数の電子線バイプリズムとともに用いることができれば、試料内部の構造、すなわち試料内における電子線の偏向方位を、詳細な分布図として可視化することも可能となる。特に、四角錘型電子線プリズム95が光源の像面54に一致している場合には、四角錘型電子線プリズム95を光軸を軸として少しずつ回転させながら各々画像を記録できれば、他には光学系を構成する素子の調整は不要で、より詳細に試料3内の電子線の偏向方位を分布図として可視化することが可能となる。
図12では、円弧状矢印と文字θでこの方位の回転を示している。試料3内の電子線を偏向させる原因が磁化であれば、試料内の磁化分布を可視化することになるし、電荷であれば誘電体の電荷分布を可視化することになる。いずれにしても、より詳細な電子線の偏向方位とその分布図を可視化できる。但し、光軸2を原点とした方位分布の分解能、精度が向上するのであり、電子線が試料から受ける偏向角度の大きさに関してはこの限りではない。この目的のためには光軸からの離軸距離に応じた結像が必要であり、これには対物絞りの併用などが手法として考えられる。
また、四角錘型電子線プリズム95が光源の像面54に一致していない場合には、四角錘型電子線プリズム95の方位回転に伴い各々の像(311、312、313、314)もその位置が回転する。この場合には、四角錘型電子線プリズム95の回転と連動させて観察記録媒体79も位置を回転移動させる必要がある。ただし、1つの画像撮影装置で撮影した画像データなど、回転移動による変化を画像処理にて補償できる場合は、回転移動を省略することもできる。
図13は、図9と同様の本発明を実施するための光学系をもつ電子顕微鏡の構成例である。実施例5で述べた複数の電子線バイプリズムを電子レンズを介して配置した光学系を持つ装置構成を例示している。すなわち、第1の電子線バイプリズム91は対物レンズ5の下側に、第2の電子線バイプリズム92は第1の結像レンズ61の下側に配置されている。
第1の結像レンズ61にとって、第1の電子線バイプリズム91が物面位置、第2の電子線バイプリズム92が像面位置になっていれば、光学的には倍率を除いて全く等価な位置関係に該当する。倍率に関しても、倍率1を選択することは全く問題ない。第1の結像レンズ61による第1の電子線バイプリズム像の回転が加わるが、それを考慮して上下の電子線バイプリズムの方位関係を選択すればよい。
図13では、観察記録系としては1つの観察記録媒体79を用いる構成を例示している。実施例2で示した実験例(結果の図8)における、観察記録系に関してはこの構成である。このような構成は、例えば大画面、大画素数のCCDカメラなどを用いればよい。現在でも4096画素×4096画素のCCD素子は、主流となってきているが、この分野は日進月歩であり、将来さらに大画面、大画素数のCCD素子が使用できる様になることは想像に難くない。このように1つの大画面、大画素数検出器が使用できれば、図9で説明した複数の検出器間の調整作業は不要となり、本発明の実施は作業が大幅に軽減される。この効果は他の実施例で使用した場合も同様である。
また、実施例4で述べた演算処理の実施に際しては、図8の実験結果に示したごとく、画像データの記録された領域は画像の明るさが背景とは顕著に異なるので、容易に複数の画像を分離し、後の演算処理に供することができる。さらに、図8B、Dのごとく、画像全体が完全に分離されていない場合でも、観察したい範囲が空間的に分離されれば、その範囲を抽出し後の演算処理に供することが可能である。これらの演算処理に必要な複数画像の試料位置の合わせ込みは、実施例4で述べたのと同様に実現可能である。
これまで主に磁性材料の反転磁区構造を持つ試料を想定して説明してきたが、誘電材料などの誘電分極構造、半導体素子など電位分布を含む試料でも磁区構造と同様に電子線の偏向方向としてそれぞれの誘電分極、電位分布を可視化できる。
図14は、分極構造を持つ誘電材料3での電子線27の偏向の様子と電子線バイプリズム9による偏向の与え方の概要を示している。ただし、誘電材料3の結晶構造は無視している。結晶構造の観察に関しては、次の実施例8で述べる。試料3の厚さが均一の場合、透過する電子線が分極の強さによって同じ角度だけ偏向を受ける点は、図1に示した磁性材料の場合と同じである。
また、対物レンズの下側の光源の像面54において2つに分離された光源の像(101、103)の間で垂直に電子線バイプリズムの中央極細線電極9が配置される。図14下部に示す光源の像面54中のコントラストは、図7の実験結果と対応付けている。この対応付けは以降の図でも同様である。誘電体の電荷分布を観察する場合でも、全く同様の観察手法が実施できることから、名称の由来にかかわらずローレンツ法と呼ばれている。
すなわち、試料が誘電材料、もしくは、半導体素子などに置き換えることで、本発明を実施するための手法を維持しつつ、同様の効果を得ることができる。
図15に結晶性試料を観察するときの、試料3による電子線のブラッグ回折の様子と電子線バイプリズム9による偏向の与え方の概要を示す。結晶によるブラッグ回折は、結晶構造の周期性に応じその周期構造の方向に正負の方向両方に回折波が発生する。図15では光軸を中心に4回対称のブラッグ回折波が発生する様子を示している。回折を受けずにそのまま試料3を透過する電子線もあるので、光源の像面54では都合5つの電子回折スポット(110、111、112、113、114)を結ぶことになる。
例えば図15は、電子線バイプリズム9を用いて、スポット110に由来する透過電子線による像(明視野像:図は省略)とスポット113に由来する回折電子線による像(暗視野像:図は省略)の同時観察するための構成である。すなわち、本方法によれば明視野像と暗視野像の同時観察が可能となる。但し、結晶性試料の場合には、上述のとおり複数の回折電子線が発生しているので、対物絞りなどを用いて個別観察を行いたい回折電子線のみに制限する必要がある。図15の白丸56は、制限に用いる対物絞りの孔をイメージしたものである。
また、図は省略するが、電子線バイプリズムの中央極細線電極9をビームストッパとしても併用し(実施例9と図16を参照)、例えば透過電子線を遮蔽し、中央極細線電極9の左右の回折電子線を2つの暗視野像として結像観察することも可能である。さらに、実施例4のごとく、四角錘型電子線プリズムあるいは2本の中央極細線電極を直交させた電子線バイプリズムを用いる場合には、明視野像、暗視野像のうちから4つの画像を同時観察可能である。
半導体素子のシリコン基板と電極金属の界面など異種材料の接する界面、あるいは結晶粒の粒界、さらには磁性材料などに磁場を印加した際の試料縁部での磁歪など、結晶性試料には種々の事情により歪が発生しその歪の分布が材料全体に波及効果を及ぼすことが知られている。これらを総称して歪場と呼ぶ。この歪場は電子線へもわずかではあるが偏向を与え、暗視野ホログラフィーなどにより可視化されている。
図16は、一例として人工超格子による回折像と電子線バイプリズム9による偏向の与え方の概要を示したものである。結晶によるブラッグ回折は、光軸から離れたもっと高次の位置にスポットを結ぶため省略している。光源の像面54上の超格子による2つの電子回折スポット(121、123)の周囲に歪場による回折波の収斂した領域130が発生している。そこで超格子回折スポット123を遮蔽する形で電子線バイプリズムの中央極細線電極9を配置し、超格子回折スポット123の近傍の歪場による回折電子線を個別に結像する察法である。図15と同様に対物絞り孔56により所定の超格子スポット123周辺のみを選択する。
本願発明の各実施例を電子顕微鏡に適用することで、フォーカスが合った状態で、試料内の観察面全面に渡る電子線への偏向もしくは回折の状況の動的観察、および実時間観察が実現可能である。そして、試料によって偏向もしくは回折された電子線を、電子光学上の角度空間など、電子線の陰の空間に配置された電子線バイプリズムを用いて、それぞれ偏向もしくは回折を受けた電子線の伝播方向ごとに改めて偏向を加えることにより、電子光学系の像面上の異なる位置に、個別かつ同時にそれぞれの電子線を結像できる。
これにより、フォーカスが合った状態で、試料による偏向状況に応じた複数の画像を観察記録面で個別かつ同時に観察可能となり、試料の観察面全面に渡って漏れなく電子線への偏向状況が可視化される。また、対物絞りによる空間周波数制限を行なっていないため、従来のフーコー法よりも高分解能観察が可能となる。
そして別の効果として、複数の画像取得に際して光学系の変更・再調整は必要なく、照射系、結像系を通じて全く同じレンズ、偏向器が用いられるため、誘導磁場やレンズ電流の揺らぎなど、取得される複数の画像に加わるノイズ等の外乱は全く同じものであり、画像解析時のアーティファクトを生じにくくさせる。
さらに別の効果として、全偏向角度の画像を取得しているので、画像処理により偏向成分の投影面上への分布の描画も可能であるだけでなく、各々の画像間の差分像や合算像など画像解析への展開が容易であり、精緻な観察が可能となる。
1…電子線の光源もしくは電子銃、10…試料上方の電子線の光源の像、11…試料により紙面上右方向へ偏向された電子線の光源の像もしくは電子回折スポット、13…試料により紙面上右方向へ偏向された電子線の光源の像もしくは電子回折スポット、101、102、103、104…試料透過時の偏向により4方向・方位に分割された各々の電子線の光源の像もしくは電子回折スポット、110…試料を透過した電子線の光源の像もしくは電子回折スポット、111、112、113、114…試料透過時のブラッグ回折により4方向・方位に分割された各々の電子線の光源の像もしくは電子回折スポット、121、123…超格子の回折により分割された各々の電子線の光源の像もしくは電子回折スポット、130…歪場による電子回折スポット、18…真空容器、19…電子源の制御ユニット、2…光軸、21…試料により紙面上右方向へ偏向された電子線、22…陰の空間、23…試料により紙面上右方向へ偏向された電子線、24…投影面、25…投影面上の電子線の強度分布、27…電子線もしくは電子線の軌道、3…試料、31・33…磁区、32…磁壁、311、312、313、314…偏向により4分された各々のフーコー像、321、323…偏向により2分された各々のフーコー像、35…試料下側のフォーカス位置、36…試料上側のフォーカス位置、37…対物レンズによる試料の像、試料の制御ユニット、39…試料の制御ユニット、4…照射レンズ、40…加速管、41…第1照射レンズ、42…第2照射レンズ、47…第2照射レンズの制御ユニット、48…第1照射レンズの制御ユニット、49…加速管の制御ユニット、5…対物レンズ、51…制御系コンピュータ、52…制御系コンピュータのモニタ、53…制御系コンピュータのインターフェース、54…対物レンズ下側の光源の像面、55…対物絞り、56…対物絞りの孔、59…対物レンズの制御ユニット、6…結像レンズ、61…第1結像レンズ、62…第2結像レンズ、63…第3結像レンズ、64…第4結像レンズ、66…第4結像レンズの制御ユニット、67…第3結像レンズの制御ユニット、68…第2結像レンズの制御ユニット、69…第1結像レンズの制御ユニット、7…対物レンズによる試料の像面、71・73…磁区の像、72…磁壁の像、74、76…画像表示装置、75…演算処理装置、77…画像記録装置、78…観察記録媒体の制御ユニット、79…観察記録媒体、89…観察記録面、9…電子線バイプリズムもしくは電子線バイプリズムの中央極細線電極、90…電子線バイプリズム、91…第1の電子線バイプリズム、92…第2の電子線バイプリズム、95…四角錘型電子線プリズム、96…電子線バイプリズムの制御ユニット、97…第1の電子線バイプリズムの制御ユニット、98…第2の電子線バイプリズムの制御ユニット、99…平行平板接地電極

Claims (10)

  1. 電子線を発生させる光源と、
    前記光源から放出される単一の電子線を試料に照射するための照射光学系と、
    前記試料の像を結像するための対物レンズおよび複数のレンズから構成される結像レンズ系と、
    前記対物レンズより前記電子線の進行方向下流側であり、かつ前記電子線の経路上において前記電子線が前記試料を透過する際に偏向もしくは回折されることによって生じる前記電子線の陰の空間に配置され、前記試料透過後の電子線を互いに異なる方向に偏向する電子線バイプリズムと、
    前記電子線バイプリズムにより分離された前記試料の像を観察する観察記録面と、
    前記分離された試料の像を記録するための画像記録装置と、を有する
    ことを特徴とする電子顕微鏡。
  2. 請求項1においてさらに、
    前記記録された前記試料の像に基づいて、前記電子線が受ける偏向の方位分布、又は前記電子線が受ける回折の方位分布を求める演算処理を行う演算処理装置を有する
    ことを特徴とする電子顕微鏡。
  3. 請求項1において、
    前記電子線バイプリズムが配置される空間は、前記対物レンズによる光源の像面近傍である
    ことを特徴とする電子顕微鏡。
  4. 請求項1において、
    前記画像記録装置は、前記電子線バイプリズムにより分離された前記試料の像を各々記録するための複数の画像記録装置である
    ことを特徴とする電子顕微鏡。
  5. 請求項4においてさらに、
    前記各々記録された前記試料の像に基づいて、前記電子線が受ける偏向の方位分布、又は前記電子線が受ける回折の方位分布を求める演算処理を行う演算処理装置を有する
    ことを特徴とする電子顕微鏡。
  6. 電子線を発生させる光源と、前記光源から放出される単一の電子線を試料に照射するための照射光学系と、前記試料の像を結像するための対物レンズおよび複数のレンズから構成される結像レンズ系と、前記対物レンズより前記電子線の進行方向下流側の空間に配置された電子線バイプリズムと、前記試料の像を観察する観察記録面と、前記分離された試料の像を記録するための画像記録装置と、を有する電子顕微鏡を用いる観察法であって、
    前記照射光学系は前記光源から放出される単一の電子線を前記試料に照射し、
    前記試料への照射により前記電子線の経路上に生じる前記電子線の陰の空間に配置された前記電子線バイプリズムは、試料を透過後の電子線を互いに異なる方向に偏向し、
    前記観察記録面は前記電子線バイプリズムにより分離された前記試料の像を観察し、
    前記画像記録装置は前記観察された前記試料の像を記録し、
    前記電子顕微鏡は前記試料内において前記電子線が受ける偏向の方位分布、又は前記電子線が受ける回折の方位分布を前記記録された前記試料の像に基づいて求める
    ことを特徴とする試料観察法。
  7. 請求項6において、
    前記電子線が受ける偏向、又は前記電子線が受ける回折は前記試料の磁化によるものである
    ことを特徴とする試料観察法。
  8. 請求項6において、
    前記電子線が受ける偏向、又は前記電子線が受ける回折は前記試料の電荷もしくは電位によるものである
    ことを特徴とする試料観察法。
  9. 請求項6において、
    前記電子線が受ける偏向、又は前記電子線が受ける回折は前記試料のブラッグ回折によるものである
    ことを特徴とする試料観察法。
  10. 請求項6において、
    前記電子線が受ける偏向、又は前記電子線が受ける回折は前記試料の結晶の歪場によるものである
    ことを特徴とする試料観察法。
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