JPH0926471A - 磁気計測方法及び装置 - Google Patents

磁気計測方法及び装置

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JPH0926471A
JPH0926471A JP7174756A JP17475695A JPH0926471A JP H0926471 A JPH0926471 A JP H0926471A JP 7174756 A JP7174756 A JP 7174756A JP 17475695 A JP17475695 A JP 17475695A JP H0926471 A JPH0926471 A JP H0926471A
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magnetic
measurement
flux density
magnetization
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JP7174756A
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Inventor
Yusuke Yajima
裕介 矢島
Yoshio Takahashi
由夫 高橋
Hiroshi Suzuki
鈴木  寛
Katsuhiro Kuroda
勝広 黒田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】装置の校正を行なわずに磁化の絶対値を高精度
に決定することができる新規な磁気計測方法および装置
を提供すること。 【構成】ローレンツ力による電子線4の偏向6から、試
料5(磁性薄膜)の磁化(ベクトル量)の向きと大きさ
の相対値を検知し、分割した二本の電子線4が試料5を
透過して生じる同二本の電子線間の位相の変化を検出す
ることによって当該二本の電子線が成す面を貫く磁束の
変化をh/e(h:プランク定数、e:電気素量)を単
位として計測し、同計測結果が前記の検知した向きと大
きさの相対値から得る磁束の変化と等しいとして磁束密
度の大きさ(絶対値)を決定する。本発明は、一般的に
は、磁化と磁場が存在する磁束密度の計測に適用するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子線をプローブ(探
針)とする磁気計測方法および装置に係り、特に磁性薄
膜の極微小領域の磁化を測定するのに好適な磁気計測方
法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、磁性薄膜の極微小領域の磁化(ベ
クトル量)の計測には、収束した電子線を試料に透過さ
せてローレンツ力による偏向を検出する、いわゆる走査
ローレンツ法が用いられている〔例えば「ジャーナル
オブ アプライド フィジックス(Journal of Applied
Physics)」第73巻第5811頁〜第5815頁(19
93年)参照〕。電子線が偏向を受けると、検出器上で
電子線のスポット位置がシフトすることを利用して、電
子線の偏向を検出することができる。このようにして得
られる電子線の偏向即ちスポットシフトの信号は、磁化
に比例しているので、走査ローレンツ法によれば磁化の
向きと大きさの相対値を正確に得ることができる。相対
値は、絶対値(真の値)に一定の比例係数を乗じたもの
で、比例係数を具体的に定めなくとも、どの測定点も同
じ比例係数を用いれば、測定点間では正しい相対値を得
ることができる。
【0003】また、電子線は、数nmの径まで収束する
ことができるので、これを高精度に走査することにより
高分解能の磁化測定を行なうことができる。なお、原理
的には磁化の大きさの絶対値を決めることが可能であ
る。しかし、このためには値の判っている標準試料や標
準磁場を用いて検出器の計測値を校正しておく必要があ
る。しかし実際には、この校正を高精度に行なうことが
非常に困難であり、走査ローレンツ法による磁化の絶対
値測定は、特別の場合を除き、一般にはほとんど行なわ
れていない。
【0004】一方、磁性薄膜の極微小領域の磁性を計測
する方法として、試料の磁束によって生じる二本の電子
線間の位相変化を検出する走査干渉法がある(例えば特
開平4−206132号公報参照)。位相変化から高感
度に磁束の変化を検出する方法であるが、同方法では磁
化の絶対値を計測することはできないという問題点があ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
技術の前記問題点を解決し、磁化の大きさの絶対値を装
置の校正を行なわずに高精度に決定することができ、更
に一般的には磁束密度の大きさの絶対値を装置の校正を
行なわずに高精度に決定することができる新規な磁気計
測方法及び装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、走査ローレ
ンツ法により計測した磁化の向きと大きさの相対値、及
び走査干渉法によって計測した磁束の変化を理論解析に
より綿密に比較した結果、両計測結果を使って磁化の絶
対値を決定することが可能であることを見い出した。本
発明に係る磁気計測方法及び装置は、このような研究成
果に基づいて発明されたものである。
【0007】図1に本発明において走査ローレンツ法を
実施するための機構(図1a)、走査干渉法を実施する
ための機構(図1b)を示す。図1において、3は電子
銃、4は電子銃から放射される電子線、5は試料(磁性
体薄膜)、7は電子線4を検出する検出器、10は、電
子線4を走査する走査コイル、9は、走査コイル10の
制御のほか、検出器の接続の制御を行なう制御・処理装
置、11は、電子線4を走査して得られる試料の磁化及
び磁束の状態を表示する表示装置である。
【0008】図1aの走査ローレンツ法において、電子
銃3から出た電子線4は、図1では省略されている機構
で加速されてから収束し、収束した状態で試料5の計測
点を透過する。そのとき、電子線4は、ローレンツ力に
より偏向(図1の6に示す)を受ける。そのため、電子
線4を広がりを持ったスポットにして検出器7上に照射
すると、偏向を受けなかったときのスポット(白抜きで
示す)が斜線を施したスポットにシフトする(これをス
ポットシフト8で示す)。白抜きのスポットに対するス
ポットシフト8の差を検出器7で検出すると偏向6が検
出されることになる。
【0009】偏向6と磁化の関係について述べる。試料
は極めて薄い薄膜としているので磁化の向きは試料の面
にほぼ平行である。電子軌道はこの面に直交するので、
電子線は、ローレンツ力を受け、磁化の向きに対して垂
直の方向(面内)に力を受けて曲がる。その曲がる大き
さは、磁化の大きさに比例する。従って、偏向6の向き
と大きさ、即ちスポットシフト8の向きと大きさから磁
化の向きと大きさの相対値を知ることができる。スポッ
トシフト8の向きと大きさは、検出器7を4等分した4
分割型とし、各分割部からの信号の差をとり、スポット
シフト8を互いに直交する二方向の成分に分けて検出す
ることにより得ることができる。このとき、偏向を受け
ないスポットに対して差信号が零になるように設定して
おくと偏向の計測が容易になる。なお、検出器は、この
4分割型に限らず、向きと大きさが検出することができ
る他の方式のものでも利用可能であることは言うまでも
ない。
【0010】ここで、上記検出器7により磁化を十分な
精度で検出可能であることについて説明する。偏向6の
大きさβは、M0を一般的な磁化の大きさ(絶対値)、
tを磁化が分布する領域の厚さ、即ち試料の膜厚とし、
mを電子の質量、Eを電子線4のエネルギーとして、式
(1)で表わされる。
【0011】
【数1】 β=M0t√(e/2mE) ・・・(1) エネルギーEは、通常200keVが採用され、観察の対
象となる試料5の磁化の絶対値M0は、一般にほぼ1T
(テスラ)であり、膜厚tは50nm程度であるから、こ
れらの値を式(6)に代入して、βの概略値として0.0
5mrad を得る。一方、試料5に入射する電子線4の開
き角は5mrad 程度に設定されるので、偏向6による検
出器7上でのスポットシフト8は、スポット径の1/1
0〜1/100の範囲になる。従って、スポット8の大
きさを検出器の大きさよりやや小さい位に選べば、この
程度の範囲を精度良く検出することができる。
【0012】以上の方法により、本発明において、ま
ず、計測点とその付近に選んだ参照点での磁化の相対的
な大きさ(1:α)と、両点の磁化が基準の方向(任意
でよい)と成す角(θ及びθ’)を計測する。ただし、
参照点は、磁化が計測点から単調に増加するか又は単調
に減少するかのいずれかの点である(単調な増減は、ロ
ーレンツ法により容易に確認することができる)。計測
結果の様子を図1の右下に模式図で示した。
【0013】次に、図1bの機構を用いて走査干渉法に
より磁束の変化を計測する。同機構は、図1aの機構の
光学系に、1のバイプリズムと2のスリットを挿入して
得られる。なお、このようなバイプリズム1とスリット
2の着脱により、即座にローレンツ法から干渉法へ、ま
たその逆へ切り換える機構は、発明者の一部他で開発し
たもので、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライ
ド フィジックス(Japanese Journal of Applied Physi
cs)第33巻第L1352頁〜第L1354頁(199
4年)に開示されている。
【0014】磁束の計測において、まず、電子線4はバ
イプリズム1により二本に分割される。分割された電子
線4は、図1では省略されている機構で加速されてから
それぞれ収束し、収束した状態で試料5の計測点を透過
する。透過した二本の電子線4は、広がりをもったスポ
ットとなって重なり合いながら検出器7に照射する。二
本の電子線4は、試料上で離れて(間隔をsとする)透
過するために、互いに位相差があり、重なり合ったスポ
ットに干渉縞12が形成される。干渉縞は、図1bに示
すように、濃淡がある直線状の縦縞模様になる。いま、
二本の電子線4と膜厚で形成される面A(面積はs×
t)を貫く磁化の積分値即ち磁束が変化すると、縦縞模
様が縞の間隔を変えずに左右にシフト(移動)する。具
体的には面Aを貫く磁束がh/e(h:プランク定数、
e:電気素量)だけ増減すると、両電子線4の位相差は
一周期分変化する。更に、位相変化に伴い干渉縞12も
一周期分シフトする。
【0015】そこで、干渉縞12と等間隔のストライプ
から成るスリット2(ディラックの櫛)を検出器7の前
に置くと、シフトが検出器から信号強度の変化として検
出される。検出器7では、各分割部からの信号の和が利
用される。走査ローレンツ法では差が利用されたが、こ
のような信号の演算方法の切り替えは、制御・処理装置
9により実行される。
【0016】本発明においては、二本の電子線の分割方
向を前記角θを定めた基準の方向に揃える操作が行なわ
れる。そのために、バイプリズム1とスリット2に両者
が同時に回転する回転機構が備えられており、分割方向
制御装置13によって回転が制御され、方向を揃える操
作が行なわれる。
【0017】なお、分割方向を基準の方向に揃えるが、
基準の方向は任意でよいので、基準の方向が分割方向で
あるとして、角θは、分割方向と成す角とすることが可
能である。そのようにすると、分割方向を変えること
で、角θを任意の値に設定することができる。
【0018】以上の方法により、本発明において、制御
・処理装置9を使って計測点から参照点へ電子線4を走
査し、その間の磁束の変化を計測する。磁束の変化は、
検出器7の信号変化からh/eを単位として数え、v周
期が計測される。vは、整数とは限らない。
【0019】このようにして得られたα,θ,θ’,v
及び設定値のs,tから、計測点における磁化の絶対値
を求める。求める磁化の絶対値をMとすると、計測点の
面A(面積s×t)を貫く磁束は、式(2)で表わされ、
参照点の面Aを貫く磁束は式(3)で表わされる。そし
て、両2点間の磁束の差が磁束変化δΦとして式(4)に
示される。
【0020】
【数2】 計測点の磁束=Mstsinθ ・・・(2)
【0021】
【数3】 参照点の磁束=αMstsinθ’ ・・・(3)
【0022】
【数4】 δΦ=Mst(sinθ−αsinθ’) ・・・(4) 一方、走査干渉法の測定結果から磁束変化δΦは、式
(5)で表わされる。
【0023】
【数5】 δΦ=vh/e ・・・(5) ここで、2点間の磁化の変化が単調であり、従って磁束
の変化が単調(膜厚tが一定で面Aの面積stが一定で
あるので、磁化に面積を乗じた磁束は単調に変化する)
であれば、式(4)は式(5)と等しくなることが判った。
そこで、式(6)が導かれ、絶対値Mが決定される。
【0024】
【数6】 M=vh/est(sinθ−αsinθ’) ・・・(6) 以上の計測においては、磁化を標準試料で校正する過程
がなく、従って校正に伴って生じる精度の劣化がない。
【0025】なお、上記計測は、電子線が磁化から作用
を受けることを利用した場合についてであるが、電子線
は、磁場からも同様の作用を受け、従って磁化と磁場を
合わせた磁束密度から同様の作用を受ける。そのため、
同じ方法で磁束密度を計測することが可能である。本発
明は、より一般的には、磁束密度の計測に適用すること
ができるものである。
【0026】
【実施例】パーマロイ薄膜の微小部分の磁化の絶対値を
決定した。図2に計測に用いた機構を示す。図2aが走
査ローレンツ法を実施するための機構、図2bが走査干
渉法を実施するための機構で、両者は同一の走査電子顕
微鏡をもって構成された一体型である。図2において、
105は試料回転装置、113は、装置105の回転を
制御する試料回転制御装置を示す。両装置を用いて、二
本の電子線の分割方向を設定するようにした。この装置
によって、バイプリズム1とスリット2の2者を回転す
るのと同一の効果を得ることができる。回転装置105
に試料台を固定し、試料を同試料台に搭載した。回転装
置以外の装置や構造は、図1と同一であるので、その他
については説明を省略する。
【0027】本計測においては、計測点の磁化の向きθ
が90度になるように基準の方向を定めるとともに、参
照点の磁化の向きθ’を向きθに対して直角になるよう
に選ぶか又は逆方向になるようにに選んだ。このよう
に、角θ及びθ’を設定するのは、計測を簡便に行なう
ためである。この簡便法は、図1において説明した方法
(以下ではこれを「一般法」と称する)において基準の
方向、即ち電子線4の分割方向と磁化が成す角θ及び
θ’を特別な値(0度、90度、180度)に限定した
ものである。角θ及びθ’を特別な値に設定すること
は、試料回転制御装置113による制御のもとで試料回
転装置105を所望の向きに回転することで容易に達成
することができる。
【0028】初めに、このような簡便法について一般的
説明を行なう。説明では、図3に模式的に示した磁性膜
内の点1における磁化の絶対値Mを決定する場合を取り
上げる。まず、点1での磁化の向きを走査ローレンツ法
により決定する。次に、磁化の向きが点1と直角になる
場所(図3中の点2)を走査ローレンツ法により探す。点
2が決定できたら、電子線4の分割方向を点1の磁化と
垂直、すなわち点2の磁化と平行にし、点1と点2を含
む範囲で走査干渉法による計測を行う。このとき、両電
子線4と薄膜の厚さがなす面Aを貫く磁束は、点1では
Mst(sinθ=1)であったのが点2では0(sinθ=
0)となる。したがって、点1から点2に至る間で磁化
の変化が単調であることが確認され(これは走査ローレ
ンツ法により確認する)、従って磁束の変化が単調であ
り(膜厚tが一定)、かつ、この間に走査干渉法での信
号変動がv1周期であることが計測されれば Mts=v1h/e が成立つから M=v1h/ets と決定することができる。
【0029】他方の簡便法では、磁化の大きさは点1と
同じだが向きが逆の場所(図3中の点3)を利用する。
この点3も、走査ローレンツ法により容易に探すことが
できる。点2を利用する方法と同様に、電子線4の分割
方向を点1の磁化と垂直にして点1と点3を含む範囲で
走査干渉法による計測を行う。すると、点1から点3に
至る間に両電子線4と試料の厚さが成す面の間を貫く磁
束はMts(sinθ=1)から−Mts(sinθ=−1)
に逆転する。したがって、2点間の磁束の変化が単調で
あって、かつ、この間の走査干渉信号の変動がv2周期
であることが計測されれば 2Mts=v2h/e となり M=v2h/2ets と決定することができる。
【0030】なお、角θ’を特別な値に設定すること
は、試料5の磁化構造によっては不可能な場合があり得
る。しかし、このような例は実際には非常に稀であるの
で、事実上ほとんどの試料5において図3に説明した簡
便法を用いて絶対値Mを決定することができる。また、
この簡便法では、走査ローレンツ法は磁化の方向を決め
ることにのみ利用される。一般法では必要であった磁化
の相対値を計測する必要がない。従って、簡便法には、
単に一般法に比べて簡便であるというだけではなく、相
対値測定に伴う誤差が結果に含まれないという利点があ
る。
【0031】以上説明した通り、一般法は、試料5が簡
便法を適用できない磁化構造を持つ場合、試料5の観察
領域全体にわたって絶対値Mを決定する場合、すでに観
察した走査ローレンツ法による像と走査干渉法による像
からその中の特定の点または領域の絶対値Mを決定する
場合など、簡便法が利用できない場合に利用するのが望
ましい。
【0032】本実施例においては簡便法を用いてパーマ
ロイ薄膜の微小部分の磁化の絶対値を決定した。参照点
を選ぶために、まず試料の観察領域全面のローレンツ像
を表示した。これは、制御・処理装置9による制御下
で、走査コイル10により電子線4を試料5面上に一様
に走査しながら差信号を検出し、同差信号をこれと同期
して走査する表示装置11に表示したものである。磁化
の向きと大きさの相対値の分布が画面に示される。図4
は、電子顕微鏡用のマイクログリッド上にスパッタ法で
作成したパーマロイ薄膜(厚さ30nm)の走査ローレ
ンツ像であり、図4a、図4bは、それぞれ磁化の水平
成分、垂直成分の像である。これらの像において、外側
の枠のように見える部分がマイクログリッドであり、そ
の枠内の円形状の部分がマイクログリッドに保持された
パーマロイ薄膜である。同薄膜の磁化の水平及び垂直の
各成分の相対的な大きさが画像の濃淡としてそれぞれ表
示されている。
【0033】図4cは、これらのデータをもとに作成し
た磁化のベクトルマップであり、この磁性膜が渦巻状の
磁化構造を持っていることを示している。ここでは、図
4cのベクトルマップ中の点Pを測定点とした。磁化の
絶対値Mの決定に、一般法、簡便法のいずれを用いるこ
とも可能であるが、ここでは簡便法の後者の方法を利用
した。
【0034】まず、点Pとは磁化の大きさは等しいが向
きが逆の点Qを図4cのベクトルマップ中で選んだ。こ
のベクトルマップによれば、点Pと点Qは、ほぼ磁化の
渦巻きの中心を通る直線上にある。そして、磁化は、点
Pから渦巻きの中心まではほぼMのままに保たれ、渦巻
きの中心で急峻に逆転した後は再び一定となり点Qに至
ることがわかる。そこで次に、電子線4の分割方向を点
Pの磁化の向きと垂直にして、この領域の走査干渉法に
よる像を撮った。これを図5に示す。図5の像は、図2
bにおいて、制御・処理装置9による制御下で、分割し
た電子線4を試料5面上で走査コイル10により試料5
面上を一様に走査しながら和信号検出を行い、同信号を
これと同期して走査する表示装置11に表示したもので
ある。磁束が変化して分布する様子が表示される。
【0035】ここで、両電子線4間の磁束は、点Pから
渦巻きの中心を経て点Qに至るまでにMtsから−Mt
sへと単調に変化していることを確認した。そこで、図
5の上端右に挿入図として示したPQ間のラインプロッ
トから信号の周期的変動回数v2を数えると、明らかに
2=5.0であった。したがって、2Mts=5.0
h/eが成り立つ。ここで、tは30nmであり、sは
400nmとしているので、これらの値を上式に代入し
てMの値を0.83Tと決定することができた。
【0036】このようにして得られたMの値は、バルク
状パーマロイの値1.08Tとほぼ同程度であり妥当な
結果といえる。値がやや小さくなっているのは、成膜方
法がスパッタ法であることや、バルクではなく薄膜であ
ることなどによると考えられる。
【0037】次に、以上の結果をもとに本実施例におけ
る磁気計測の感度を検討する。走査干渉法での信号強度
の周期的変動の分解能は、図5に示した結果より、1周
期の1/10程度であることがわかる。これは (1/10)h/e=0.4fWb(1fWb=10-15
Wb) の磁束変化に相当するから、Mtの変動δ(Mt)は、
sを400nmとして δ(Mt)=(1/10)h/es =1T・nm まで検出できることになる。
【0038】そこで次に、この結果を走査ローレンツ法
の感度と比較する。前述した通り、走査ローレンツ法で
は検出器7上での電子線4のスポットシフト8からMt
を得る。本実施例の場合、検出可能なスポットシフト8
の最小値はスポット径の1/500程度であるから、ロ
ーレンツ力による電子線4の偏向量βが 5mrad(1/500)=10μrad 変化すれば検出できる。したがって、この変化をδβと
すると δβ=δ(Mt)√(e/2mE) であるから δ(Mt)≒20T・nm を得る。以上の検討から、本発明では、走査ローレンツ
法を単独で用いるよりも感度において20倍程度有利に
なることが分かった。
【0039】なお、本発明には、感度とは別に走査ロー
レンツ法と比較して次のような特徴がある。すなわち、
本発明で得られる磁化の絶対値Mは、走査干渉法におけ
る信号強度の周期的変動回数から決まるので、真の値か
ら特定の方向に偏ることはない。これに対して走査ロー
レンツ法では、絶対値Mを決めるのに標準試料や標準磁
場による差信号強度の事前校正が必要なので、校正誤差
に起因する特定方向への偏りが発生する可能性がある。
従って、本発明は、偏りのない正確な値が得られるとい
う点においても走査ローレンツ法を単独で用いるよりも
優れている。
【0040】なお、本実施例で使用した装置は、電子
銃、試料台、検出器等の主要な部分が一体となっている
ので、走査ローレンツ法と走査干渉法の計測で位置のず
れが生じない利点がある。しかし、本発明は、このよう
な装置構成や計測方法に限定されるものではない。即
ち、ローレンツ力による電子線4の偏向6から磁化の向
きと相対的な大きさを検知することと、二本の電子線4
の相対位相変化から両電子線4と試料の厚さが成す面を
貫く磁束の変化を検知することにより、この磁束変化を
h/eを単位として数えることで磁化の絶対値を決定す
ることが可能であれば、本実施例における装置構成や計
測方法とは異なるものであっても本発明の本質を損なう
ことなくこれを実現できることは言うまでもない。
【0041】また、本実施例では磁化の計測について説
明したが、前記したように、本発明は、磁束密度の計測
にも全く同様の方法により適用することができる。従っ
て、例えば磁気ヘッドの場合などのように、磁場源の近
傍に分布する空間磁場の計測にも適用することが可能で
ある。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、走査干渉法の感度の高
さを活かすとともに、測定精度の低下が避けられない装
置校正を不要とし、高精度で、かつ、簡便な方法で磁化
の絶対値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気計方法を説明するための構成
図及び処理方法を示す図。
【図2】本発明に係る磁気計方法及び装置の実施例を説
明するための構成図。
【図3】本実施例の処理方法を説明するための図。
【図4】図3に示した本実施例の処理方法を用いた適用
例を説明するための第1の図。
【図5】図3に示した本実施例の処理方法を用いた適用
例を説明するための第2の図。
【符号の説明】
1…バイプリズム 2…スリット 3…電子銃 4…電子線 5…試料 7…検出器 9…制御・処理装置 10…走査コイル 11…表示装置 13…分割方向制御装置 105…試料回転装置 113…試料回転制御装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 黒田 勝広 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ローレンツ力による電子線の偏向から磁束
    密度(ベクトル量)の向きと大きさの相対値を検知し、
    二本に分割した電子線が計測対象を透過して生じる二本
    の電子線間の位相の変化を検出することによって当該二
    本の電子線が成す面を貫く磁束の変化をh/e(h:プ
    ランク定数、e:電気素量)を単位として計測し、同計
    測結果が前記検知した向きと大きさの相対値から得る磁
    束の変化と等しいとすることによって磁束密度の大きさ
    (絶対値)を決定することを特徴とする磁気計測方法。
  2. 【請求項2】計測対象上に計測点と当該計測点から磁束
    が単調に増加するか又は単調に減少するかのいずれかの
    点を参照点として設定し、両点での磁束密度の向き及び
    大きさの相対値と、計測点から参照点に至る間での二本
    の電子線が成す面を貫く磁束の変化とから計測点での磁
    束密度の絶対値を決定することを特徴とする請求項1に
    記載の磁気計測方法。
  3. 【請求項3】計測点での二本の電子線の分割方向を当該
    計測点での磁束密度の向きと直交するように設定し、磁
    束密度の向きが分割方向と平行となる点を参照点とする
    ことを特徴とする請求項2に記載の磁気計測方法。
  4. 【請求項4】計測点での二本の電子線の分割方向を当該
    計測点での磁束密度の向きと直交するように設定し、磁
    束密度が計測点の磁束密度と大きさの相対値が同じでか
    つ向きが逆の点を参考点とすることを特徴とする請求項
    2に記載の磁気計測方法。
  5. 【請求項5】磁束密度の向き及び大きさの相対値と、二
    本の電子線が成す面を貫く磁束の変化を同一の走査型透
    過電子顕微鏡をもって構成された一体型の機構を用いて
    計測することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれ
    か一に記載の磁気計測方法。
  6. 【請求項6】前記計測対象が磁性薄膜であり、前記磁束
    密度が同磁性薄膜の磁化であることを特徴とする請求項
    1〜請求項5のいずれか一に記載の磁気計測方法。
  7. 【請求項7】収束した電子線を計測対象に照射し、当該
    計測対象を透過した電子線のローレンツ偏向を電子線が
    検出器上に形成するスポットのシフトから検出すること
    で計測対象の電子線照射部の磁束密度の向きと大きさ相
    対値を計測する機構と、電子線が計測対象に至る前にバ
    イプリズムにより電子線を二本に分割し、当該二本の電
    子線をそれぞれ収束して計測対象に照射し、当該計測対
    象を透過した後に電子線を重ね合わせることによって生
    じる干渉縞のシフトを当該干渉縞と等周期の間隔を持つ
    多孔スリットからの透過電子強度から検出することで、
    分割した二本の電子線が成す面を貫く磁束の変化を計測
    する機構とを備えた磁気計測装置において、電子線照射
    部の磁束密度の向きと二本の電子線の分割方向との成す
    角度を設定するための計測対象を回転する装置を備えた
    ことを特徴とする磁気計測装置。
  8. 【請求項8】前記計測対象が磁性薄膜であり、磁束密度
    が同磁性薄膜の磁化であることを特徴とする請求項7に
    記載の磁気計測装置。
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