JP5735196B2 - レドーム及びレドームの製造方法 - Google Patents
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ここで、特許文献1及び2には、車両に搭載されて車両の前方の障害物を検知するレーダの検知側に配置されるレドームが開示されている。
車両の上記箇所には、特許文献1に開示されているように、エンブレムやバッジ等の識別マークが形成された合成樹脂製のラジエータグリルが設けられている。このラジエータグリルは車両の顔とも言うべき部品であって、このような箇所にレーダを搭載する場合には車両外部からレーダが視認できるような構造は好ましくなく、周囲のラジエータグリル等の車両外装品と連続した一体感を有するレドームでレーダを隠すことを要する。
ここで、このような金属光輝面をクロムメッキを用いて形成した場合は、形成されたメッキ層が厚すぎるためにレーダの電波透過を妨げ、レーダによる検知ができないことから、レドームとしての機能を持ち得ないことが知られている。そのため、特許文献1及び2には、金属光輝面をインジウムの蒸着やクロムのスパッタリングによって形成し、形成された金属層の厚みをレーダによる検知を妨げない程度の厚みに限定したレドームが開示されている。
本発明のレドームは、車両に搭載されて車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置され、透明部材を備えると共に、透明部材のレーダに対向する対向面に金属塗装層が形成されたレドームであって、金属塗装層には、複数の箔状金属片が透明部材の上記対向面と各々略平行する姿勢で埋没し、前記箔状金属片の箔厚は0.05μm以下であり、かつ、前記箔状金属片の全長は20μm以下であり、前記金属塗装層の厚みは、0.05μm超過0.2μm以下である。
本発明によれば、大規模又は特別な設備を必要とせずにレドームを製造することができるという効果がある。また、本発明によれば、レドームの製造過程における歩留まりを向上させることができるという効果がある。さらに、本発明によれば、レーダによる検知を妨げることなくメッキや金属蒸着等と実質的に同等な鏡面状の金属光輝面を有するレドームを製造することができるという効果がある。
図1は、本実施形態に係るレドーム10が設けられたラジエータグリル1の正面図、図2は、本実施形態に係るレドーム10の正面図、図3は、図2のA−A線視断面図、図4は、図3の領域Kにおける拡大図である。なお、図3及び図4では、説明のために各構成要素の縮尺を適宜変更して記載している。
図1に示すように、ラジエータグリル1は、車両の前面に設けられる車両構成体であり、複数の水平方向に延びる部材及び複数の垂直方向に延びる部材が一体となって構成されている。また、ラジエータグリル1は、その前面中央部にレドーム10を備えている。なお、レドーム10の背面側にはレーダ20(図3参照)が設置されている。
また、レーダ20は、車間距離検知用レーダの適用周波数である76GHz〜77GHzの電波(ミリ波)を出射する発信部と、障害物からの反射電波を受信する受信部とを有している。
なお、レーダ20が出射した電波がレドーム10を透過すると電波の減衰が生じるが、レーダ20が安定して動作し車両と障害物との距離等を正しく計測するために、上記減衰はできるだけ低く抑える必要がある。
図2に示すように、レドーム10は、前面側から見た場合に金属鏡面状を呈する金属部10Aと、黒色を呈する黒色部10Bとを有している。
図3に示すように、レドーム10は、前面側から背面側に向かって、透明(着色透明を含む)部材11、第1着色層12、金属塗装層13、第2着色層14、接着剤層15及びベース部材16が順次配置され一体的に設けられた構成となっている。
透明部材11の前面側及び背面側の表面は共に平滑面となるように成形され、凹部11Aの背面側表面である凹部表面(対向面)11B(図4参照)は、特に平滑面となるように成形されている。また、透明部材11の前面側の表面には擦過等に対する耐久性を向上させ傷等の発生を防止するいわゆるハードコート処理がなされている。
なお、金属塗装層13は、複数の箔状金属片Mと透明樹脂分13Sとを含有する塗料13L(図6(c)参照)の塗膜を乾燥させることで形成される。透明樹脂分13Sとしては、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)が使用される。
図4に示すように、金属塗装層13内の透明部材11側における箔状金属片Mは、各々が凹部表面11Bと略平行する姿勢で透明樹脂分13S内に埋没している。なお、複数の箔状金属片Mは、透明部材11の凹部表面11Bに平行する方向に関して、互いに離間し一定の隙間を形成している。
図5は、電波の減衰を計測するための試験装置Tの構成を示す概略図である。
試験装置Tは、レーダ20と、レーダ20の電波射出側に設置されたテストパネルPと、テストパネルPのレーダ20と逆側に設置された検知器Dとを備えている。
検知器Dは、レーダ20が出射しテストパネルPを透過した電波を検知するものである。
図6は、本実施形態に係るレドーム10の製造方法を示す概略図である。
本実施形態におけるレドーム10の製造方法は、透明部材11を成形する第1成形工程(成型工程)と、第1着色層12を形成する第1塗布工程と、箔状金属片Mを含有する塗料13Lを塗布する第2塗布工程(塗布工程)と、塗料13Lを乾燥させ金属塗装層13を形成する乾燥工程と、第2着色層14を形成する第3塗布工程と、接着剤層15を形成する第4塗布工程と、ベース部材16を成形する第2成形工程と備える。
以下、各工程について説明する。
透明部材11は、射出成形等を用いて成形され、その前面及び背面は共に平滑面となるように成形される。また、透明部材11には凹部11Aが形成され、凹部11Aの凹部表面11Bは特に平滑面となるように成型される。成形後、透明部材11の前面側の表面には擦過等に対する耐久性を向上させ傷等の発生を防止するハードコート処理がなされる。
シルク印刷等により、透明部材11の背面の黒色部10Bに対応する部分に黒色の第1着色層12が形成される。
スプレー塗装等により、透明部材11の背面側全面に箔状金属片Mと透明樹脂分13Sとを含有する塗料13Lが塗布される。塗料13Lの配合は、質量比で溶剤が全体の約99%、含有物が約1%であり、箔状金属片Mは上記含有物の5%〜50%、それ以外が透明樹脂分(PVC)13Sとなっている。
なお、本実施形態における塗料13Lは質量比で約99%を溶剤が占めており、乾燥時の塗膜の体積変動が大きく、一定の方向性をもって箔状金属片Mを配向させることができる。
塗料13Lを乾燥環境(例えば70℃の環境で10分等)内で乾燥させる。塗料13Lを乾燥させることで、金属塗装層13が形成される。
ここで、箔状金属片Mが0.03μmという非常に薄い箔厚で形成されているため、乾燥により塗料13L内の溶剤が蒸発し塗膜が次第に薄くなること、及び、透明部材11における凹部表面11Bが平滑面となっていることから、箔状金属片Mには凹部表面11Bと各々略平行する姿勢に配向させる力が作用する。さらに、箔状金属片Mの最大長が金属塗装層13の厚みよりも長いため、箔状金属片Mは凹部表面11Bと各々略平行する姿勢に配向される。
結果として、塗料13Lの乾燥後には、箔状金属片Mは凹部11Aの凹部表面11Bと各々略平行する姿勢で金属塗装層13に埋没して固定される。ここで、箔状金属片Mは透明樹脂分13Sに各々被覆されている。
なお、金属塗装層13の背面側表面は、何ら規制を受けないために波打っており、上記表面近傍の箔状金属片Mは凹部表面11B近傍の箔状金属片Mに比べランダムに配向されている。
スプレー塗装等により、金属塗装層13の背面側全面に灰黒色の合成樹脂塗料が塗布される。上記灰黒色の塗料を乾燥させることで、第2着色層14が形成される。
第2着色層14の背面側全面又は一部に接着剤が塗布され、接着剤層15が形成される。
第1着色層12から接着剤層15までが形成された透明部材11を不図示の金型装置内にインサートし、射出成形等を用いて接着剤層15の背面側にベース部材16が成形される。
以上で本実施形態のレドーム10の製造が完了する。
レドーム10に形成された金属塗装層13の厚みが増加した場合、より多くの電波が金属塗装層13に吸収されることから、レドーム10を透過した電波の減衰は大きくなる。
ここで、図5に示す試験装置Tを用いて金属塗装層13を透過した電波の減衰を計測し、金属塗装層13の厚みと金属塗装層13を透過した電波の減衰との関係を図7を参照して説明する。
図7は、金属塗装層13の厚みと、金属塗装層13を透過した電波の減衰との関係を示す概略図である。
複数のテストパネルPを図5に示す試験装置Tに設置し、各々のパネルを透過した電波の減衰を測定した。金属塗装層13の厚みと、金属塗装層13を有するテストパネルPを透過した電波の減衰との関係を図7に示す。
この許容値に合致する金属塗装層13の厚みを図7を用いて検討すると、金属塗装層13の厚みを凡そ0.13μm以下とすると車載レーダ用レドーム10には十分使用できることが判明した。
レドーム10の前面側から金属部10Aの部分に光が入射すると、光は透明部材11を透過し、金属塗装層13内の箔状金属片Mが埋没している箇所まで到達する。ここで、複数の箔状金属片Mが透明部材11の凹部表面11Bと各々略平行する向きに配向しているため、上記入射光は箔状金属片Mの透明部材11側の表面で鏡面反射し、その反射方向は略一定の方向となる。したがって、金属部10Aの前面側は金属鏡面状を呈する。
本実施形態によれば、大規模又は特別な設備を必要とせずにレドーム10を製造することができるという効果がある。また、本実施形態によれば、レドーム10の製造過程における歩留まりを向上させることができるという効果がある。また、本実施形態によれば、レーダ20による検知を妨げることなく、メッキや金属蒸着等と実質的に同等な鏡面状の金属光輝面を有するレドーム10を製造することができるという効果がある。また、本実施形態によれば、箔状金属片Mは透明樹脂分13Sに被覆されているため、長期に亘り腐食が発生しにくいという効果がある。
また、金属塗装層13の背面側に別途成形した有色のベース部材16を貼付し、レドーム10を製造する場合は、第2着色層14は形成せずともよい。
Claims (2)
- 車両に搭載されて前記車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置され、透明部材を備えると共に、前記透明部材の前記レーダに対向し、平滑に形成された対向面に鏡面状の金属塗装層が形成されたレドームであって、
前記金属塗装層には、複数の箔状金属片が前記透明部材の平滑に形成された前記対向面と各々略平行する姿勢で埋没し、
前記複数の箔状金属片は、前記透明部材の平滑に形成された対向面に平行な方向に関して、互いに離間して隙間を形成し、
前記箔状金属片の箔厚は0.05μm以下であり、かつ、前記箔状金属片の全長は20μm以下であり、
前記金属塗装層の厚みは、0.05μm超過0.2μm以下である
ことを特徴とするレドーム。 - 車両に搭載されて前記車両周囲の障害物を検知するレーダの検知側に配置されるレドームの製造方法であって、
透明部材を成形する成型工程と、
前記透明部材の前記レーダに対向し、平滑に形成された対向面に複数の箔状金属片を含有する塗料を塗布する塗布工程と、
前記塗料が乾燥しつつ前記箔状金属片を前記透明部材の平滑に形成された前記対向面と各々略平行する姿勢で、互いに離間して隙間を形成するように配向させる乾燥工程と、
を備え、
前記箔状金属片の箔厚は0.05μm以下であり、かつ、前記箔状金属片の全長は20μm以下であり、
前記金属塗装層の厚みは、0.05μm超過0.2μm以下である
ことを特徴とするレドームの製造方法。
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