JP5734160B2 - 絶縁材料及びこれを用いた点火プラグ - Google Patents

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Description

本発明は、アルミナ質焼結体からなる絶縁材料及び該絶縁材料を用いた点火プラグに関する。
アルミナ結晶を主相とするアルミナ質焼結体は、絶縁性に優れ、耐電圧が高いため、絶縁材料として好適である。アルミナ質焼結体からなる絶縁材料は、例えば自動車の燃焼機関用の点火プラグ、エンジン部品、IC基板等に広く用いられている。
特に、点火プラグにおいては、小型化の要求が高まり、絶縁碍子の厚みを薄くすることが要求されている。一方、点火プラグにおいては、放電圧を高くすることも要求されている。そこで、点火プラグ用の絶縁材料としては、耐電圧により優れた材料の開発が要求されている。
絶縁材料としては、例えばアルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶の結晶粒界に少なくともイットリウム成分を含む結晶粒界相を有するアルミナ質焼結体が開発されている(特許文献1参照)。かかるアルミナ質焼結体においては、アルミナ結晶の平均結晶粒径が2μm以下で、結晶粒界相が少なくともイットリウム成分としてY2Si27とSiO2とで構成する高融点相を有し、アルミナ質焼結体を100重量%としたとき、上記高融点相が0.1重量%以上15重量%以下の範囲で含有する。
特開2010−208901号公報
しかしながら、特許文献1に示された従来のアルミナ質焼結体においては、アルミナ結晶の粒界に結晶質が存在する。そのため、非晶質のガラス成分だけで、アルミナ結晶の粒界を十分に埋めることができなくなり、依然として結晶粒界に空隙が生じるおそれがある。その結果、絶縁材料の内部において放電が発生し易くなり、耐電圧が低下するおそれがある。そこで、さらに耐電圧特性に優れた絶縁材料の開発が望まれている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであって、耐電圧特性に優れた絶縁材料及びこれを用いた点火プラグを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に非晶質の粒界相を有するアルミナ質焼結体からなる絶縁材料であって、
上記粒界相は、SiO2にCaO及び/又はMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分として希土類元素の酸化物及び/又は周期律表第4族元素の酸化物を含有し、
上記アルミナ質焼結体の断面においては、上記アルミナ結晶の上記結晶粒の平均結晶粒径が2μm以下であり、上記粒界相の外周形の円形度の平均が0.4〜0.6であり、
上記主相と上記粒界相の組成比を、アルミナ:ガラス成分:特定成分=a:b:c(a+b+c=100質量%)とした時に、これら成分を頂点とする三角座標において、点(a、b、c)が、A(98.0、1.0、1.0)、B(90.0、5.0、5.0)、C(93.5、5.0、1.5)、D(97.8、2.0、0.2)の4点で囲まれる範囲内にあることを特徴とする絶縁材料にある(請求項1)。
本発明の他の態様は、燃焼機関に装着され、該燃焼機関の点火を行う点火プラグであって、
外周にネジ部が設けられた取付金具と、該取付金具内に固定された絶縁碍子と、先端部が上記絶縁碍子から突出するように該絶縁碍子内に固定された中心電極と、上記取付金具に固定されて上記中心電極の上記先端部との間に火花放電ギャップを介して対向する接地電極とを備え、
上記絶縁碍子として上記絶縁材料を用いたことを特徴とする点火プラグにある(請求項)。
上記絶縁材料は、上記アルミナ質焼結体からなり、該アルミナ焼結体の断面において、上記アルミナ結晶の平均結晶粒径は2μm以下であり、上記粒界相の円形度の平均は0.4〜0.6である。そのため、上記アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に、非晶質の上記粒界相が充填性よく充填されている。即ち、上記アルミナ結晶の結晶粒の粒界に気孔が発生することを抑制することができる。そのため、上記絶縁材料は、内部で放電が起こりにくく、優れた耐電圧特性を示すことができる。
また、上記粒界相は、SiO2にCaO及び/又はMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分として希土類元素の酸化物及び/又は周期律表第4族元素の酸化物を含有する。かかる構成の粒界相は、該粒界相自体も優れた耐電圧特性を示すことができる。
また、上記点火プラグにおいては、上記絶縁碍子として上記絶縁材料を用いている。そのため、該絶縁材料が有する優れた耐電圧特性を生かして、高い耐電圧を示す信頼性の高い点火プラグを構築することが可能になる。
実施例1における、絶縁材料におけるアルミナ質焼結体の結晶構造を模式的に示す説明図。 実施例1における、絶縁材料におけるアルミナ質焼結体の結晶構造を示す図面代用走査型電子顕微鏡写真。 実施例1における、各試料X1〜X5の絶縁材料におけるアルミナ結晶粒の平均粒径と耐電圧との関係を示す説明図。 実施例1における、各試料X6〜X12の絶縁材料における粒界相の円形度と耐電圧との関係を示す説明図。 実施例1における、各試料X1〜X20の絶縁材料におけるアルミナ、ガラス成分、及び特定成分の三角座標における組成比を示す説明図。 絶縁材料におけるアルミナ、ガラス成分、及び特定成分の三角座標における好ましい組成比の範囲を示す説明図。 絶縁材料の粒界相におけるSiO2、CaO、及びMgOの三角座標における好ましい組成比の範囲を示す説明図。 実施例2における、点火プラグの全体構造を示す半断面図。
次に、上記絶縁材料の好ましい実施形態について説明する。
上記絶縁材料は、アルミナ質焼結体からなり、該アルミナ質焼結体は、アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に非晶質の粒界相を有する。
上記アルミナ質焼結体の断面において、上記アルミナ結晶の上記結晶粒の平均結晶粒径が大きくなりすぎると、耐電圧特性が低下するおそれがある。かかる観点から、上記結晶粒の平均結晶粒径の上限は、上述のごとく2μmであることがよい。また、原料コストが高くなるという観点から、上記平均結晶粒径の下限は、0.5μmであることが好ましい。
また、上記アルミナ質焼結体の断面においては、上記粒界相の外周形の円形度を規定する。上記粒界相の外周形の円形度が1に近づくにつれて、上記粒界相の外周形は円形に近くなる。一方、円形度が小さくなるにつれて、上記粒界相の外周形は板状(棒状)に近くなる。いずれの場合でも、上記アルミナ結晶の結晶粒の粒界における気孔が増加し、耐電圧が下がってしまう。かかる観点から、上記アルミナ質焼結体の断面における上記粒界相の外周形の円形度は、平均で、上述のごとく0.4以上かつ0.6以下であることがよい。より好ましくは、円形度の下限は0.5がよい。
上記アルミナ焼結体の断面における上記結晶粒の平均結晶粒径、及び上記粒界相の外周形の円形度の平均は、上記アルミナ焼結体の断面のSEM画像を撮影し、画像処理により測定することができる。円形度は、各粒界相の実際の外周の長さをAとし、各粒界相の面積と同面積の円の面積をBとすると、4πB/A2で算出することができる。
また、上記アルミナ質焼結体の断面における上記粒界相の面積率が0.8〜6.0%であることが好ましい(請求項2)。
上記粒界相の面積率が上述の範囲を超えて大きすぎる場合には、耐電圧の高いアルミナの割合が低下するため、耐電圧が低下するおそれがある。一方、上記粒界相の面積率が上述の範囲よりも小さすぎる場合には、粒界の気孔が増加するため、耐電圧が低下するおそれがある。
上記粒界相の面積率は、上記アルミナ質焼結体の断面における全体面積に対する各粒界相の面積の合計の割合を百分率(%)で表したものである。
上記粒界相の面積率は、上記アルミナ焼結体の断面のSEM画像を撮影し、画像処理により測定することができる。
上記粒界相は、SiO2にCaO及び/又はMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分として希土類元素の酸化物及び/又は周期律表第4族元素の酸化物を含有する。
上記希土類元素は、例えばY、Sc、またはランタノイド元素であることが好ましい。また、上記周期律表第4族元素は、Hf、Zr、またはTiであることが好ましい。上記特定成分としては、1種類あるいは複数種類の酸化物を用いることができる。
上記アルミナ質焼結体においては、上記主相と上記粒界相の組成比を、アルミナ:ガラス成分:特定成分=a:b:c(a+b+c=100質量%)とした時に、これら成分を頂点とする三角座標において、点(a、b、c)が、A(98.0、1.0、1.0)、B(90.0、5.0、5.0)、C(93.5、5.0、1.5)、D(97.8、2.0、0.2)の4点で囲まれる範囲内にあることが好ましい
上記主相と上記粒界相におけるアルミナとガラス成分と特定成分との組成比が上記三角座標における上述の範囲から外れる場合には、上述の粒界相における外周形の円形度を0.4〜0.6という範囲に調整することが困難になる。なお、上記三角座標において、点(a、b、c)が、A(98.0、1.0、1.0)、B(90.0、5.0、5.0)、C(93.5、5.0、1.5)、D(97.8、2.0、0.2)の4点で囲まれる範囲を図6に示す。
上記粒界相における上記ガラス成分の組成比を、SiO2MgO:CaO=a´:b´:c´(a´+b´+c´=100質量%)とした時に、これら成分を頂点とする三角座標において、点(a´、b´、c´)が、A´(100、0、0)、B´(75、25、0)、C´(75、20、5)、D´(95、0、5)の4点で囲まれる範囲内(ただしA´点を除く)にあることが好ましい(請求項)。
上記ガラス成分の組成比が上記三角座標における上述の範囲を満たすことにより、粒界の気孔をより少なくすることができ、耐電圧をより向上させることができる。なお、上記三角座標において、A´(100、0、0)、B´(75、25、0)、C´(75、20、5)、D´(95、0、5)の4点で囲まれる範囲を図7に示す。
また、上記特定成分は、Y23、HfO2、ZrO2、Sc23及びTiO2から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(請求項)。
この場合には、非晶質の粒界相の耐電圧をより高めることができ、上記絶縁材料の耐電圧特性をより向上させることができる。同様の観点から最も好ましくはY23がよい。
上記絶縁材料は、耐電圧特性が要求される用途に好適である。
好ましくは、内燃機関における点火プラグにおける絶縁碍子に適用することができる。
上記絶縁材料は、上記アルミナ質焼結体からなり、耐電圧特性だけでなく、強度も高い。そのため、耐電圧特性及び強度が要求される上記点火プラグにおける絶縁碍子に好適である。
(実施例1)
次に、実施例にかかるアルミナ質焼結体からなる絶縁材料について説明する。
本例の実施例にかかる絶縁材料のアルミナ質焼結体の断面における結晶粒及び粒界の模式図を図1に示す。同図に示すごとく、本例の実施例にかかる絶縁材料は、アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒11の粒界に非晶質の粒界相12を有するアルミナ質焼結体1からなる。
粒界相12は、SiO2にMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分としてY23(イットリア)を含有する。アルミナ質焼結体1の断面においては、アルミナ結晶の結晶粒11の平均結晶粒径が2μm以下であり、粒界相12の外周形の円形度の平均が0.4〜0.6である。
本例においては、原料として平均粒径の異なるアルミナ粉末を用い、また焼成温度を変えて、アルミナ結晶粒11の平均粒径の異なる5種類のアルミナ質焼結体からなる絶縁材料(試料X1〜試料X5)を作製した。
以下、代表例として、試料X3の絶縁材料の製造方法を具体的に説明する。
即ち、まず、粒界相用の原料粉末として、平均粒径0.8〜1.2μmのイットリア粉末と、平均粒径0.4〜0.8μmのシリカ粉末と、平均粒径1μmのマグネシア粉末とを準備した。これらの原料粉末を、質量比で、イットリア:シリカ:マグネシア=1:7:2で配合し、分散媒としての水に分散させて混合原料スラリーを得た。次いで、混合原料スラリーに、平均粒径1μmのアルミナ粉末を混合した。このとき、混合原料スラリー中の全粉末100質量%中におけるイットリア粉末とシリカ粉末とマグネシア粉末との合計量が3質量%となるように、アルミナ粉末を配合した。
次いで、イットリア粉末、シリカ粉末、マグネシア粉末、及びアルミナ粉末を含有する混合原料スラリーを噴霧乾燥して、混合原料造粒粉末を得た。次いで、混合原料造粒粉末を成形して混合原料成形体を得た。そして、得られた混合原料成形体を温度1500℃にて1〜3時間焼成し、アルミナ質焼結体からなる絶縁材料(試料X3)を得た。
本例においては、後述の表1に示すように、上述の試料X3とは、アルミナ粉末の平均粒径、及び焼成温度等を変更して、さらに4種類のアルミナ質焼結体からなる絶縁材料(試料X1、試料X2、試料X4、及び試料X5)を作製した。
本例において作製した絶縁材料(試料X1〜X5)について、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)写真にて確認した。代表例として、試料X3の絶縁材料の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。このSEM写真により、本例の実施例にかかる絶縁材料(アルミナ質焼結体)は、アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に非晶質の粒界相が形成されていることを確認した。なお、本例において、非晶質の粒界相は、SiO2にMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分としてイットリアを含有する。
次に、試料X1〜X5について、アルミナ質焼結体におけるアルミナ結晶を構成する結晶粒の平均粒径(μm)、非晶質の粒界相の外周形の円形度、及び粒界相の面積率(%)を測定した。
平均粒径、円形度、及び面積率は、各試料の断面について倍率1万倍のSEM写真を撮影し、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製の「Win ROOF ver.5.0」)を用いて測定した。
平均粒径は、画像処理ソフトにおいてSEM画像におけるアルミナ結晶の結晶粒をなぞり、その円相当径を算出し、これを3視野で行い、その平均を求めることにより測定した。その結果を表1に示す。
また、円形度は、画像処理ソフトにおいて二値化したSEM画像における非晶質の粒界相を識別し、上述の定義に従って算出し、これを3視野で行い、その平均を求めることにより測定した。その結果を表1に示す。
また、面積率は、画像処理ソフトにおいて二値化したSEM画像における非晶質の粒界相を識別し、全体面積に対する各粒界相の面積の割合を算出し、これを3視野で行い、その平均を求めることにより測定した。その結果を表1に示す。
次に、各試料の絶縁材料について耐電圧を測定した。
まず、各試料を円板状に切り出し、ダイヤモンド砥粒研磨盤を用いて研磨し、直径φ15mm×厚み1.0mm(1.0±0.05mm)の円板状の測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルを用いてJIS−C2141(1992年)に準じた方法により耐電圧を測定した。
具体的には、まず、円板状の測定用サンプルの上下面に、ニードル状に尖らせた二つのプローブ(Tektronix P6015A)をそれぞれ当接させた。次いで、定電圧電源(KIKUSUI PAK20-18A、PAK20-36A)から発信器(WAVE WF1943A)とコイルとにより発生させた高電圧をプローブ間に印加した。そして、オシロスコープ(Tektronix DPO3034)でモニターしながら、プローブ間の印加電圧を20kVから10秒間に1kVの割合で段階的に上昇させた。そして、測定用サンプルが絶縁破壊したときの印加電圧を試料の耐電圧(kV/mm)とした。その結果を表1に示す。また、各試料におけるアルミナ結晶粒の平均粒径と、各試料の耐電圧との関係を図3に示す。同図において、横軸はアルミナ結晶粒の平均粒径(μm)を示し、縦軸は耐電圧(kV/mm)を示す。
表1及び図3に示すように、アルミナ結晶を構成する結晶粒の大きな試料X5においては、耐電圧が不十分であった。これに対し、アルミナ結晶を構成する結晶粒の平均粒径2μm以下である試料X1〜4においては、優れた耐電圧を示した。なお、試料X1〜X4においては、粒界相の外周形の円形度の平均についても0.4〜0.6という範囲内にある。
次に、本例においては、原料の配合割合及び焼成温度等を変更することにより、粒界相の外周形の円形度、及び粒界相の面積率等が異なるさらに15種類のアルミナ質焼結体からなる絶縁材料(試料X6〜試料X20)を作製した。試料X6〜X20は、原料の配合割合及び焼成温度等を変更した点を除いては、上述の試料X3と同様にして作製したアルミナ質焼結体からなる絶縁材料である。試料X6〜X20についても、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)写真にて確認した。そして、SEM写真により、本例の実施例にかかる絶縁材料(アルミナ質焼結体)は、アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に非晶質の粒界相が形成されていることを確認した。なお、本例において、非晶質の粒界相は、SiO2にMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分としてイットリアを含有する。
次に、試料X6〜X20についても、アルミナ質焼結体におけるアルミナ結晶を構成する結晶粒の平均粒径(μm)、非晶質の粒界相の外周形の円形度、及び粒界相の面積率(%)を測定した。測定方法は上述の通りであり、その結果を後述の表2に示す。
さらに、試料X6〜X20について、耐電圧を測定した。測定方法は上述の通りであり、その結果を後述の表2に示す。また、試料X6〜試料X12のデータに基づいて、粒界相の円形度と耐電圧との関係を図4に示す。同図において、横軸が粒界相の円形度を示し、縦軸が耐電圧(kV/mm)を示す。
表2及び図4より知られるごとく、非晶質の粒界相の外周形の円形度が平均で0.4〜0.6という範囲から外れる絶縁材料(試料X6、X7、X11、X12、及びX17〜X20)においては、耐電圧が不十分であった。これに対し、粒界相の円形度が平均で0.4〜0.6という範囲内にある絶縁材料(試料X8〜10、及びX13〜X16)においては、優れた耐電圧を示した。なお、試料X8〜10、及びX13〜X16においては、アルミナ結晶を構成する結晶粒の平均粒径についても2μm以下という範囲にある。
また、本例において作製した合計20種類の絶縁材料(試料X1〜X20)について、アルミナ:ガラス成分:特定成分=a:b:c(a+b+c=100質量%)とした時に、これら成分を頂点とする三角座標において、アルミナ結晶からなる主相と非晶質の粒界相の組成比を図5に示す。
図5、表1、及び表2より知られるごとく、点(a、b、c)が、A(98.0、1.0、1.0)、B(90.0、5.0、5.0)、C(93.5、5.0、1.5)、D(97.8、2.0、0.2)の4点で囲まれる範囲内から外れると(試料17〜X20)、粒界相の円形度を平均で0.4〜0.6という範囲内にすることが困難になり、耐電圧が低下していた。
以上のように、本例によれば、アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に非晶質の粒界相を有するアルミナ質焼結体からなり、粒界相は、SiO2にCaO及び/又はMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分として希土類元素の酸化物及び/又は周期律表第4族元素の酸化物を含有し、アルミナ質焼結体の断面において、アルミナ結晶の上記結晶粒の平均結晶粒径が2μm以下であり、粒界相の外周形の円形度の平均が0.4〜0.6である絶縁材料は、耐電圧特性に優れることがわかる。
(実施例2)
本例においては、実施例1において作製した絶縁材料(試料X3)を絶縁碍子として用いた点火コイルの例である。
図8に示すごとく、本例の点火プラグは、自動車用エンジンなどの燃焼機関の点火に用いられる。
点火プラグ5は、自動車用エンジン等の燃焼機関に装着され、その点火に用いられるものであり、燃焼機関の燃焼室を区画するエンジンヘッド(図示略)に設けられたねじ穴に挿入されて固定されるよう構成されている。本例における点火プラグ5は、耐電圧特性に優れたアルミナ質焼結体からなる絶縁材料を絶縁体として用いる。なお、以下の説明において図の上方を基端側、図の下方を先端側又は燃焼室側と称す。
点火プラグ5は、実施例1の試料X3の絶縁材料を用いて略筒状に形成した絶縁碍子50と、その内側に保持される中心電極51と、絶縁碍子50の外周を覆いつつエンジンヘッド(図示略)に固定する取付金具52と、これに沿設された接地電極53とによって構成されている。取付金具52は、例えば、導電性の低炭素鋼等の高耐熱性金属材料を用いて略筒状に形成されている。取付金具52の外周面には、エンジンヘッド(図示略)に設けられたねじ穴に固定するためのネジ部522が設けられている。本実形態において、ネジ部522の呼び径は10mm以下であり、ネジ部522は、JIS(日本工業規格)でいうM10以下のものである。
取付金具52の中腹内周は先端側に向かって径小となる係止部523が形成され、内側に絶縁碍子50の大径部502が係止、固定されている。取付金具52の基端側外周にはネジ部522を締めつけるためのナット部526が形成されている。取付金具52の基端側には、加締め部524が形成されている。封止部材525を介して絶縁碍子50の大径部502を加締め固定している。
ネジ部522は、エンジンヘッド(図示略)に設けられたネジ穴にガスケット55を介して螺結される。ネジ部522を形成した取付金具52の内側は、中心電極51との間で電界を形成する側面電極520を構成している。
絶縁碍子50は、アルミナ質焼結体からなる絶縁材料(実施例1の試料X3)を用いて略筒状に形成されている。絶縁碍子50の軸孔501には略長軸状に形成された中心電極51が挿入・固定されている。絶縁碍子50の中腹には径大となる大径部502が形成され、取付金具52の内側に係止・固定されている。絶縁碍子50の先端部503は、取付金具52の先端部521から燃焼室側に突出している。絶縁碍子の先端部503を取付金具52の先端部521から突出させることにより、本例のように細径のプラグにおいても中心電極先端部511と取付金具先端部521との間の放電を抑制している。
絶縁碍子52の基端側は、取付金具52の加締め部524から露出する碍子頭部504が設けられている。碍子頭部504は、コルゲート状に形成され中心電極端子部515と取付金具52との表面距離を長くして沿面リークを防止している。
中心電極51は、例えば内材としてCu等の熱伝導性に優れた金属材料が用いられ、外材としてNi基合金等の耐熱性及び耐食性に優れた金属材料が用いられて長軸状に形成されている。中心電極51は、その先端部511が絶縁碍子50の先端部503から燃焼室側に突出するように設けられている。中心電極51の先端部511には、耐熱性の高い中心電極放電チップ512が当該先端部511から燃焼室側に向かって突出して設けられている。中心電極51の基端側には、絶縁碍子50の軸孔501内部において、中心電極51と導電性のガラスシール513を介して電気的に接続された長軸状のステム514が設けられている。さらにその基端側には、碍子頭部504から露出し、外部の点火装置(図示略)に接続される中心電極端子部515が形成されている。
取付金具52の先端部521に沿設して、接地電極53が形成されている。接地電極53は、例えばNiを主成分とするNi基合金等を用いて略柱形状に形成されている。本例においては、接地電極53は、断面が略角柱形状をなしており、基端側が取付金具52の先端部521に溶接などにより固定され、中間部が略L字型に曲げられて、他端側の側面531において中心電極51の先端部511と対向いている。
接地電極53の側面531には、中心電極51の先端部511に設けられた中心電極放電チップ512と火花放電ギャップ54を介して対向して基端側に向かって突出する接地電極放電チップ532が設けられている。この火花放電ギャップ54の大きさは、例えば1mm程度にすることができる。
なお、中心電極放電チップ512及び接地電極放電チップ532は、例えば、Ir(イリジウム)合金やPt(白金)合金等からなり、それぞれ中心電極先端部511及び接地電極側面531にレーザ溶接や抵抗溶接等にて接合されている。
ここで、上述したように、本例においては、絶縁碍子50として、実施例1の試料X3の絶縁材料を用いている。この絶縁材料は、平均粒径2μm以下のアルミナ結晶を主相とし、粒界相の外周形の円形度の平均が0.4〜0.6であるものである。試料X3の絶縁材料は、実際に絶縁碍子50を形成した後、耐電圧測定用に切り出した試料においても焼結体中に空孔がほとんど観察されず、優れた耐電圧特性を有している。
また、点火プラグ5を実機のエンジンにて、放電電圧35kV、高負荷(スロットル全開、平均5500rpm)耐久試験を200時間運転したが、貫通放電現象は観測されなかった。
したがって、本例における点火プラグ5は、緻密で欠陥が少なく、高い耐電圧特性を備えており極めて信頼性が高い。
点火プラグ5の中心電極51と接地電極53との間に高電圧が印加されたときに、絶縁碍子50の耐電圧が低いと中心電極51と側面電極520との間で貫通放電を起こす虞があるが、アルミナ質焼結体からなる絶縁材料(試料X3)によって形成した絶縁碍子50は実施例1に示すように耐電圧特性に優れているため、絶縁碍子50の肉厚が薄くても貫通放電を起こす虞がない。
1 アルミナ質焼結体
11 結晶粒
12 粒界相

Claims (5)

  1. アルミナ結晶を主相とし、該アルミナ結晶を構成する結晶粒の粒界に非晶質の粒界相を有するアルミナ質焼結体からなる絶縁材料であって、
    上記粒界相は、SiO2にCaO及び/又はMgOが添加されたガラス成分中に、特定成分として希土類元素の酸化物及び/又は周期律表第4族元素の酸化物を含有し、
    上記アルミナ質焼結体の断面においては、上記アルミナ結晶の上記結晶粒の平均結晶粒径が2μm以下であり、上記粒界相の外周形の円形度の平均が0.4〜0.6であり、
    上記主相と上記粒界相の組成比を、アルミナ:ガラス成分:特定成分=a:b:c(a+b+c=100質量%)とした時に、これら成分を頂点とする三角座標において、点(a、b、c)が、A(98.0、1.0、1.0)、B(90.0、5.0、5.0)、C(93.5、5.0、1.5)、D(97.8、2.0、0.2)の4点で囲まれる範囲内にあることを特徴とする絶縁材料。
  2. 請求項1に記載の絶縁材料において、上記アルミナ質焼結体の断面における上記粒界相の面積率が0.8〜6.0%であることを特徴とする絶縁材料。
  3. 請求項1又は2に記載の絶縁材料において、上記粒界相における上記ガラス成分の組成比を、SiO2MgO:CaO=a´:b´:c´(a´+b´+c´=100質量%)とした時に、これら成分を頂点とする三角座標において、点(a´、b´、c´)が、A´(100、0、0)、B´(75、25、0)、C´(75、20、5)、D´(95、0、5)の4点で囲まれる範囲内(ただしA´点を除く)にあることを特徴とする絶縁材料。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁材料において、上記特定成分は、Y23、HfO2、ZrO2、Sc23及びTiO2から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする絶縁材料。
  5. 燃焼機関に装着され、該燃焼機関の点火を行う点火プラグであって、
    外周にネジ部が設けられた取付金具と、該取付金具内に固定された絶縁碍子と、先端部が上記絶縁碍子から突出するように該絶縁碍子内に固定された中心電極と、上記取付金具に固定されて上記中心電極の上記先端部との間に火花放電ギャップを介して対向する接地電極とを備え、
    上記絶縁碍子として請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁材料を用いたことを特徴とする点火プラグ。
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