JP2011154908A - スパークプラグ、スパークプラグ用絶縁体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】薄肉化されても十分な耐熱衝撃性を発揮するスパークプラグ用絶縁体及びその製造方法、並びに、十分な耐熱衝撃性を有する小型のスパークプラグを提供すること。
【解決手段】アルミナ基焼結体で形成されたスパークプラグ用絶縁体2であって、その脚長部2iのうち0.95mm以下の肉厚を有する部分の表面をX線回折分析したときに、アルミナの(113)面のピーク強度とムライトの(121)面のピーク強度との合計ピーク強度に対する前記ムライトの前記ピーク強度が15%以上であるスパークプラグ用絶縁体2、1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼成条件で焼成するスパークプラグ用絶縁体2の製造方法、並びに、前記スパークプラグ用絶縁体2を備えたスパークプラグ100。
【選択図】 図1
【解決手段】アルミナ基焼結体で形成されたスパークプラグ用絶縁体2であって、その脚長部2iのうち0.95mm以下の肉厚を有する部分の表面をX線回折分析したときに、アルミナの(113)面のピーク強度とムライトの(121)面のピーク強度との合計ピーク強度に対する前記ムライトの前記ピーク強度が15%以上であるスパークプラグ用絶縁体2、1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼成条件で焼成するスパークプラグ用絶縁体2の製造方法、並びに、前記スパークプラグ用絶縁体2を備えたスパークプラグ100。
【選択図】 図1
Description
この発明は、スパークプラグ、スパークプラグ用絶縁体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、薄肉化されても十分な耐熱衝撃性を発揮するスパークプラグ用絶縁体及びその製造方法、並びに、十分な耐熱衝撃性を有する小型のスパークプラグに関する。
自動車エンジン等の内燃機関に使用されるスパークプラグが備えるスパークプラグ用絶縁体(以下、単に「絶縁体」と称することがある。)として、従来、耐熱性、機械的特性及び耐電圧特性に優れているアルミナ系の絶縁材料からなるアルミナ基焼結体が実用されている。
アルミナ基焼結体で形成された絶縁体として、例えば、特許文献1には、「アルミナ(Al2O3)を主成分とし、ケイ素成分、カルシウム成分及びマグネシウム成分を含む三成分系の少なくとも任意の二成分を含有するスパークプラグ用絶縁体であって、結晶相としてムライト(Al6Si2O13)結晶相を少なくとも有し、かつ、相対密度が95%以上であるアルミナ基焼結体からなることを特徴とするスパークプラグ用絶縁体」が記載されている。
また、アルミナ基焼結体で形成された絶縁体を備えたスパークプラグとして、例えば、特許文献2には「中心電極と接地電極とが絶縁体によって相互に絶縁されるエンジン用スパークプラグであって、前記中心電極の周囲を窒化ケイ素(Si3N4)又はムライト(3Al2O3・2SiO2)によって形成された主絶縁体で囲むと共に、前記接地電極の内周面に酸化アルミニウム(Al2O3)で形成された絶縁体を設けたこと、を特徴とするエンジン用スパークプラグ」が記載されている。
ところで、近年においては、内燃機関の高出力化やエンジンの小型化に伴い、燃焼室内における吸気及び排気バルブの占有面積が大型化してきており、スパークプラグは小型化又は小径化(以下、単に小型化と称する。)される傾向にある。スパークプラグを小型化するには、スパークプラグを構成する絶縁体の肉厚、特に、絶縁体の先端部に形成され、内燃機関の燃焼室内に配置される脚長部の肉厚を、薄肉化することが求められている。
この要求に応えるために絶縁体の肉厚を薄肉化すると、一般に絶縁体自身の耐熱衝撃性が低下するから、高温に曝される前記脚長部は耐熱衝撃性が大きく低下するという問題が新たに生じる。
したがって、スパークプラグの小型化を実現するためには、絶縁体特に前記脚長部を、その耐熱衝撃性を低下させることなく、薄肉化することが大きな課題となっている。
この発明は、薄肉化されても十分な耐熱衝撃性を発揮するスパークプラグ用絶縁体及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、この発明は、十分な耐熱衝撃性を有する小型のスパークプラグを提供することを課題とする。
本発明者らは、アルミナ基焼結体で形成されたスパークプラグ用絶縁体について種々検討したところ、絶縁体を薄肉化すると薄肉化する前の十分な耐熱衝撃性を維持しにくくなるにもかかわらず、ムライトを絶縁体の表面近傍に生成させると薄肉化しても耐熱衝撃性を維持できること、そして、絶縁体特に脚長部の肉厚を0.95mm以下に薄肉化しても、その表面におけるX線回折分析によるムライトのピーク強度がアルミナのピーク強度とムライトのピーク強度との合計ピーク強度に対して15%以上であると、薄肉化する前の高い耐熱衝撃性を維持できることを見出して、この発明を完成させた。
したがって、前記課題を解決するための手段としてのこの発明は、アルミナ基焼結体で形成されたスパークプラグ用絶縁体が、その脚長部のうち0.95mm以下の肉厚を有する部分の表面をX線回折分析したときに、アルミナの(113)面のピーク強度とムライトの(121)面のピーク強度との合計ピーク強度に対する前記ムライトの前記ピーク強度が15%以上であることを特徴とする。
また、本発明者らは、肉厚が0.95mm以下の部分において、その表面をX線回折分析したときのムライトの前記ピーク強度を15%以上とするには、アルミナ基焼結体を形成する原料粉末の成形体を焼成する際に、この成形体に与える熱量等が重要であることを見出して、この発明を完成させた。
したがって、前記課題を解決するための手段としてのこの発明は、原料粉末を成形してなる成形体を、1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼成条件で、焼成することを特徴とする。
さらに、前記課題を解決するための手段としてのこの発明は、軸状の中心電極と、前記中心電極の径方向周囲に配置される主体金具と、前記主体金具の一端に固着されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において前記中心電極の径方向周囲を覆うように配置された、この発明に係るスパークプラグ用絶縁体とを備えたことを特徴とする。
この発明に係るスパークプラグ用絶縁体は、脚長部のうち0.95mm以下の肉厚を有する部分の表面をX線回折分析したときに、前記ムライトの前記ピーク強度が15%以上であるから、薄肉化されているにもかかわらず脚長部の前記部分が十分な耐熱衝撃性を発揮する。したがって、この発明によれば、薄肉化されても十分な耐熱衝撃性を発揮するスパークプラグ用絶縁体を提供することができる。
また、この発明に係るスパークプラグ用絶縁体の製造方法は、原料粉末を成形してなる成形体を1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼成条件で焼成するから、薄肉化された成形体であっても十分な耐熱衝撃性を発揮するように焼成することができる。したがって、この発明によれば、薄肉化されても十分な耐熱衝撃性を発揮するスパークプラグ用絶縁体の製造方法を提供することができる。
さらに、この発明に係るスパークプラグは、この発明に係るスパークプラグ用絶縁体を備えて成るから、小型化されても十分な耐熱衝撃性を有している。したがって、この発明によれば、十分な耐熱衝撃性を有する小型のスパークプラグを提供することができる。
この発明に係るスパークプラグ用絶縁体をこの発明に係るスパークプラグと共に説明する。この発明に係るスパークプラグは、この発明に係るスパークプラグ用絶縁体を備えて成ることを特徴の1つとしており、軸状の中心電極と、中心電極の径方向周囲に配置される主体金具と、主体金具の一端に固着されて中心電極と対向するように配置された接地電極と、中心電極と主体金具との間において該中心電極の径方向周囲を覆うように配置される、この発明に係るスパークプラグ用絶縁体とを備えて成る。
この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ100は、図1に示されるように、軸状に延びる中心電極3と、この中心電極3の径方向周囲を覆うように配置された絶縁体2と、その絶縁体2を保持する主体金具4とを有する。この主体金具4は炭素鋼(JIS−G3507)により形成され、先端側4aの一端に接地電極5の一端5aが溶接等により固着されている。そして、この接地電極5の他端側は、中心電極3の先端3aに向かって延び、略L字状に曲げ返されて、中心電極3の先端3aと所定の火花放電ギップgを形成している。
前記絶縁体2は、中心部には自身の中心軸線O方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有しつつ縦長に、後述するようにアルミナを主成分とする絶縁材料で形成されている。そして、その一方の端部側に端子電極7が挿入・固定され、同じく他方の端部側に中心電極3が挿入・固定されている。また、この貫通孔6内において端子電極7と中心電極3との間に抵抗体8が配置されている。この抵抗体8の両端部は、導電性ガラス層9及び10を介して中心電極3と端子電極7とにそれぞれ電気的に接続されている。なお、抵抗体8は、ガラス粉末と導電材料粉末及び必要に応じてガラス粉末以外のセラミック粉末とを混合して、ホットプレス等により焼成して得られる抵抗体組成物により形成される。また、この抵抗体8を省略して、一層の導電性ガラスシール層により中心電極3と端子電極7とを一体化した構成としてもよい。
さらに、絶縁体2を詳細にみると、図1及び図2に示されるように、絶縁体2の軸方向中間には、周方向外向きに突出する突出部2eが例えばフランジ状に形成されている。そして、絶縁体2には、中心電極3の先端に向かう側を前方側として、その突出部2eよりも後方側がこれよりも細径に形成された本体部2bとされている。一方、突出部2eの前方側にはこれよりも細径の第一軸部2gと、その第一軸部2gよりもさらに細径の第二軸部2iがこの順序で形成されている。この第二軸部2iは、図1及び図2に示されるように、略筒状に形成された絶縁体2の先端にその軸線方向に延在するように形成され、スパークプラグ100をエンジンに組み付けたときに内燃機関の燃焼室内に配置される。この発明において、第二軸部2iは前記脚長部とも称される。なお、本体部2bの外周面には釉薬2dが施され、当該外周面の後端部にはコルゲーション2cが形成されている。また、第一軸部2gの外周面は略円筒状とされ、第二軸部2iの外周面は先端に向かうほど縮径する略円錐台状とされている。
前記絶縁体2の貫通孔6は、図1及び図2に示されるように、中心電極3を挿通させる略円筒状の第一部分6aと、その第一部分6aの後方側すなわちコルゲーション2c側(図中上方側)においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第二部分6bとを有する。端子電極7と抵抗体8とは第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a内に挿通される。中心電極3の後端部には、その外周面から外向きに突出して電極固定用凸部3bが形成されている。そして、この貫通孔6の第一部分6aと第二部分6bとは、第一軸部2g内において互いに接続しており、その接続位置には、中心電極3の電極固定用凸状部3bを受けるための凸部受け面6cがテーパ面あるいはR面状に形成されている。
また、図1及び図2に示されるように、第一軸部2gと第二軸部2iとの接続部2hの外周面は段付部とされ、これが主体金具4の内面に形成された主体金具側係合部としての凸状部4cと環状の板パッキン11を介して係合することにより、絶縁体2の軸方向の抜止めがなされている。他方、主体金具4の後方側開口部内面と、絶縁体2の外面との間には、フランジ状の突出部2eの後方側周縁と係合する環状の線パッキン12が配置され、そのさらに後方側には粉末滑石13を介して環状の線パッキン14が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具4に向けて前方側に押し込み、その状態で主体金具4の開口縁を線パッキン14に向けて内側にR状にカシメることにより、カシメ部4bが形成され、主体金具4が絶縁体2に対して固定されることになる。
このようにして形成されるスパークプラグ100が備えている絶縁体2は、アルミナ基焼結体で形成され、アルミナ(Al2O3)を主成分として含有している。この絶縁体2特に高い耐熱衝撃性が要求される前記第二軸部2iは、Al2O3とSiO2とを、Al2O3とSiO2との合計質量に対してAl2O3が85〜94.5質量%、SiO2が5.5〜15質量%の割合で、含有しているのが好ましい。絶縁体2が前記割合でAl2O3とSiO2とを含有していると、緻密で耐電圧特性に優れると共に、表面にムライトが生成され十分な耐熱衝撃性を発揮できる。表面に多量のムライトが生成される点で、前記合計質量に対してAl2O3とSiO2との割合はAl2O3が90〜94質量%、SiO2が6〜10質量%であるのが特に好ましい。なお、この発明において、前記Al2O3はアルミナ基焼結体に含有されるAl2O3の他にAlを含有する成分(例えば、イオン等)を酸化物として把握した「Al2O3」を含み、同様に、前記SiO2はアルミナ基焼結体に含有されるSiO2の他にSiを含有する成分(例えば、イオン等)を酸化物として把握した「SiO2」を含む。
前記絶縁体2特に前記第二軸部2iは、好ましくはCaO及びMgOの少なくとも一方を含有している。絶縁体2がこれらの少なくとも一方を含有していると、絶縁体2特に第二軸部2iがより緻密で高い強度を発揮する。CaO及びMgOは、これらの合計で、Al2O3とSiO2との合計質量に対して、0.5〜2.0質量部含有しているのが好ましく、1.0〜2.0質量部含有しているのが特に好ましい。なお、この発明において、前記CaOはアルミナ基焼結体に含有されるCaOの他にCaを含有する成分(例えば、イオン等)を酸化物として把握した「CaO」を含み、前記MgOはアルミナ基焼結体に含有されるMgOの他にMgを含有する成分(例えば、イオン等)を酸化物として把握した「MgO」を含む。
絶縁体2特に前記第二軸部2iは、前記の他に、他の焼結助剤に由来する酸化物例えば希土類酸化物等を含有していてもよい。
前記絶縁体2特に脚長部に相当する第二軸部2iは薄肉化されている。前記第二軸部2iは、図1及び図2に示されるように、その内径が一定で第一軸部2gから先端すなわち接地電極5側に向けて外径が小さくなる略円錐台状を成し、その肉厚は先端に向かって徐々に薄く形成されている。この発明において、絶縁体2特に第二軸部2iの肉厚は、小型化されたスパークプラグ100の寸法等に応じて例えば0.95mm以下に設定される。すなわち第二軸部2iは少なくともその肉厚が0.95mm以下の部分を有している。第二軸部2iにおける肉厚が0.95mm以下となる部分は、特に限定されないが、通常、第二軸部2iの先端を含む部分であり、絶縁体2においては第二軸部2iにおける先端の肉厚が0.95mm以下になっている。第二軸部2iの肉厚は、0.95mm以下であればスパークプラグ100の小型化に十分に対応することができるが、スパークプラグ100の更なる小型化を図る場合等には、例えば、0.90mm以下に設定されることもできる。なお、第二軸部2iの肉厚の下限は、絶縁体2の形態をある程度維持できる限り特に限定されず、例えば0.60mmに設定することができる。
前記組成を有する絶縁体2特に前記第二軸部2iは、その表面にムライト(3Al2O3・2SiO2)の結晶相を有している。この発明においては、前記第二軸部2iのうち肉厚が0.95mm以下に薄肉化された部分の表面にムライト(3Al2O3・2SiO2)の結晶相を有している。表面にムライトの結晶相が存在すると、たとえ薄肉化さていても高い耐熱衝撃性を維持できる。ムライトの結晶相が存在する表面は、少なくとも肉厚が0.95mm以下に薄肉化された部分の表面であればよく、例えば、前記部分の外周面、先端面及び内周面のいずれであってもよい。前記部分全体に高い耐熱衝撃性が要求される場合には、前記部分の外周面、先端面及び内周面すべての表面にムライトを有しているとよい。
そして、前記第二軸部2iのうち0.95mm以下の肉厚を有する部分において、その表面に存在するムライトの存在量は、前記部分の表面をX線回折分析して得られる測定チャート例えば図6に示される一例の測定チャートにおいて、2θが43.3°付近に出現するアルミナの(113)面のピーク強度と2θが40.8°付近に出現するムライトの(121)面のピーク強度との合計ピーク強度に対する前記ムライトの前記ピーク強度(以下、ムライトのピーク強度比と称することがある。)が15%以上となっている。前記ムライトのピーク強度比が15%以上であると、肉厚が0.95mm以下に薄肉化された部分であっても、薄肉化されていない従来のスパークプラグ用絶縁体が有する高い耐熱衝撃性を維持できる。より一層の高い耐熱衝撃性を維持できる点で、前記ムライトのピーク強度比は、アルミナの前記ピーク強度とムライトの前記ピーク強度との合計強度に対して20%以上であるのが好ましい。
前記X線回折分析は、X線発生装置(リガク社製、RU−200T)及びモノクロメータ付き広角ゴニオメータを用いて行うことができる。分析条件は、管電流100A、管電圧40kV、ステップ0.01°、スキャンスピード10°/分とする。
第二軸部2iが薄肉化された前記絶縁体2を備えて成るスパークプラグ100は小型化されており、例えば、ネジ径が呼びでM12以下とされている。なお、前記呼びは、ISO2705(M12)及びISO2704(M10)等に規定された値を意味し、当然に、諸規格に定められた寸法公差の範囲内での変動を許容する。このスパークプラグ100の寸法の一例として図2を参照して以下に挙げる。
・絶縁体2の全長L1:30〜75mm。
・第一軸部2gの長さL2:0〜30mm(但し、突出部2eとの接続部2fを含まず、第二軸部2iとの接続部2hを含む)。
・第二軸部2iの長さL3:2〜27mm。
・本体部2bの外径D1:9〜13mm。
・突出部2eの外径D2:11〜16mm。
・第一軸部2gの外径D3:5〜11mm。
・第二軸部2iの基端側外径D4:3〜8mm。
・第二軸部2iの先端部外径D5(但し、先端面外周縁にRないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、そのR部ないし面取り部の基端位置における外径を指す):2.5〜7mm。
・貫通孔6の第二部分6bの内径D6:2〜5mm。
・貫通孔6の第一部分6aの内径D7:1〜3.5mm。
・第一軸部2gの肉厚t1:0.60〜4.5mm。
・第二軸部2iの基端部肉厚t2(中心軸線Oと直交する向きにおける値):0.60〜3.5mm。
・第二軸部2iの先端部肉厚t3(中心軸線Oと直交する向きにおける値;但し、先端面外周縁にRないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、該R部ないし面取り部の基端位置における肉厚を指す):0.60〜0.95mm。
・第二軸部2iの平均肉厚tA((t2+t3)/2):0.60〜3.25mm。
・第一軸部2gの長さL2:0〜30mm(但し、突出部2eとの接続部2fを含まず、第二軸部2iとの接続部2hを含む)。
・第二軸部2iの長さL3:2〜27mm。
・本体部2bの外径D1:9〜13mm。
・突出部2eの外径D2:11〜16mm。
・第一軸部2gの外径D3:5〜11mm。
・第二軸部2iの基端側外径D4:3〜8mm。
・第二軸部2iの先端部外径D5(但し、先端面外周縁にRないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、そのR部ないし面取り部の基端位置における外径を指す):2.5〜7mm。
・貫通孔6の第二部分6bの内径D6:2〜5mm。
・貫通孔6の第一部分6aの内径D7:1〜3.5mm。
・第一軸部2gの肉厚t1:0.60〜4.5mm。
・第二軸部2iの基端部肉厚t2(中心軸線Oと直交する向きにおける値):0.60〜3.5mm。
・第二軸部2iの先端部肉厚t3(中心軸線Oと直交する向きにおける値;但し、先端面外周縁にRないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、該R部ないし面取り部の基端位置における肉厚を指す):0.60〜0.95mm。
・第二軸部2iの平均肉厚tA((t2+t3)/2):0.60〜3.25mm。
前記第二軸部2iを有する、図2に示される絶縁体2の寸法の一例を挙げると、L1=約60mm、L2=約10mm、L3=約14mm、D1=約11mm、D2=約13mm、D3=約7.3mm、D4=5.3mm、D5=約4.3mm、D6=3.9mm、D7=2.6mm、t1=1.7mm、t2=1.3mm、t3=0.9mm、tA=1.5mmである。
前記絶縁体2は、この発明に係るスパークプラグ用絶縁体の製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)によって、好適に製造される。この発明に係る製造方法は、原料粉末を成形してなる成形体を、1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼成条件で、焼成することを特徴とする。このように1400℃以上の温度で成形体に与える熱量を1200kJ以上とすると、得られる焼結体の表面にムライトの結晶相を、ムライトの前記ピーク強度比を満たすように、析出させることができる。
この発明に係る製造方法においては、まず、アルミナ基焼結体を形成する原料粉末を調製する。この原料粉末は、Al化合物粉末通常アルミナ粉末及びSi化合物粉末、好ましくはMg化合物粉末及びCa化合物粉末の少なくとも一方、所望により、希土類元素化合物粉末、Ba化合物粉末等の焼結助剤となり得る化合物の粉末を含有し、これらの粉末を、通常、8時間以上にわたって混合して、調製することができる。このときの混合比は、Al化合物粉末の酸化物換算質量とSi化合物粉末の酸化物換算質量との合計質量に対して、Al化合物粉末の酸化物換算質量が85〜94.5質量%でSi化合物粉末の酸化物換算質量が5.5〜15質量%であるのが好ましく、Al2O3が90〜94質量%でSiO2が6〜10質量%であるのが特に好ましい。Mg化合物粉末の酸化物換算質量及びCa化合物粉末の酸化物換算質量は、前記合計質量に対して、両者の合計で0.5〜2.0質量部であるのが好ましく、1.0〜2.0質量部であるのが特に好ましい。所望により混合されるその他の粉末の酸化物換算質量は適宜の割合に調整される。Si化合物粉末の酸化物換算質量が前記範囲内にあると、得られる絶縁体2が薄肉化されていても耐電圧性能を低下させることなく高い耐熱衝撃性を維持できる。Al化合物粉末の酸化物換算質量が前記範囲内にあると、原料粉末の焼結性が高く得られる絶縁体2が緻密で高い耐電圧性能を発揮する。前記Mg化合物粉末の酸化物換算質量及びCa化合物粉末の酸化物換算質量が前記範囲内にあると、原料粉末の焼結性が高く得られる絶縁体2が緻密で高い強度を発揮する。これら化合物の粉末は、その平均粒径が1μm以下であるのが好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折法(HORIBA製、「LA−750」)により測定した値である。
前記Si化合物粉末としては、焼成中に酸化されて酸化物に転化する化合物の粉末であればよく、例えば、Siの酸化物(複合酸化物を含む。)、水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等、リン酸塩等の各種無機系粉末を挙げることができ、具体的にはSiO2粉末等を挙げることができる。前記Mg化合物粉末及びCa化合物粉末としては、焼成中に酸化されて酸化物に転化する化合物の粉末であればよく、例えば、これらの酸化物(複合酸化物を含む。)、水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等、リン酸塩等の各種無機系粉末を挙げることができ、具体的には、Mg化合物粉末としてMgO粉末、MgCO3粉末、Ca化合物粉末としてCaO粉末、CaCO3粉末等を挙げることができる。前記希土類元素化合物粉末としては、焼成中に酸化されて酸化物に転化する化合物の粉末であればよく、例えば、希土類元素の酸化物及びその複合酸化物等の粉末を挙げることができ、前記Ba化合物粉末としては、焼成中に酸化されて酸化物に転化する化合物の粉末であればよく、例えば、BaO粉末、BaCO3粉末等を挙げることができる。前記粉末は、現実的に不可避不純物等を含有していることがあるので、高純度のものを用いるのが好ましく、例えば、その純度は99.5%以上であるのが好ましい。
この発明に係る製造方法においては、前記原料粉末中にムライト粉末を混合しておくこともできるが、焼成時にムライト結晶粒の周囲に気泡が生じることがあるので、ムライトは後述する成形体の焼成によってアルミナとシリカとから生成させるのが好ましい。
この発明に係る製造方法においては、次いで、原料粉末に親水性結合剤と溶媒とを添加、混合してスラリーを調製する。混合には、例えば、アルミナ製ボールを用いてボールミルにて湿式混合する方法を採用することができる。前記親水性結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、アラビアゴム、デキストリン等を挙げることができ、前記溶媒としては、例えば、水、アルコール等を挙げることができる。これらの親水性結合剤及び溶媒は一種単独でも二種以上を併用することもできる。親水性結合剤及び溶媒の使用割合は、原料粉末を100質量部としたときに、親水性結合は0.1〜5質量部とすることができ、また、溶媒として水を使用するのであれば40〜120質量部とすることができる。
この発明に係る製造方法においては、次いで、得られたスラリーをスプレードライ法等により噴霧乾燥して成形用造粒粉末とする。成形用造粒粉末は、その平均粒径を例えば500μm程度に整粒することができる。
この発明に係る製造方法においては、次いで、成形用造粒粉末を成形して成形体を得る。所望により、得られた成形体を必要に応じて切削、研磨等により所望の形状に加工して、絶縁体形状の成形体とすることができる。例えば、前記成形用造粒粉末をラバープレスゴム型内に投入し、貫通孔形成用プレスピンを挿入しつつプレス成形を行い、得られたプレス成形体の外側をレジノイド砥石にて切削加工して、所定の絶縁体形状の成形体を形成することができる。
この発明に係る製造方法においては、次いで、前記成形体を、1400℃以上の温度でこの成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼結条件で、焼結する。成形体に与える前記熱量が1200kJ以上であると、得られるアルミナ基焼結体が薄肉化されていてもその表面にムライトの結晶相を、ムライトの前記ピーク強度比を満たすように、析出させることができ、高い耐熱衝撃性を発揮する絶縁体2を製造できる。この発明に係る製造方法において、前記熱量は1200kJ以上であればよいが、例えば、薄肉化された絶縁体2の肉厚を例えば0.60〜0.70mmにさらに薄くする場合には、前記熱量を1400kJ以上とすると、より一層薄肉化されてもムライトの結晶相をより一層多量に析出させることができる。なお、前記熱量の上限は特に限定されないが、過量の熱量を成形体に与えると機械的強度及び耐電圧性能が低下することがあるので、例えば、3000kJ以下にするのがよい。前記熱量は、1400℃から所定の焼成温度までの昇温時における熱量と、所定の焼成温度を保持する焼成時における熱量と、所定の焼成温度から1400℃までの降温時における熱量との合計熱量であり、アルミナの比熱0.8J/g・Kを考慮して、昇温時間、焼成温度、保持時間及び降温時間から算出される。
この発明に係る製造方法においては、例えば、前記焼結条件を満足するように、前記成形体を、例えば、大気雰囲気下1450〜1650℃で1〜8時間焼成して、アルミナ基焼結体を得ることができる。焼成温度及び保持時間が前記範囲内にあると、得られる焼結体が緻密となって高い機械的特性及び耐電圧性能を発揮する。
この発明に係る製造方法において、成形体の焼成時における昇温速度及び降温速度を調整すると、成形体により多量の熱量を与えることができ、得られるアルミナ基焼結体が薄肉化されていてもその表面にムライトの結晶相をより一層多量に析出させることができる。例えば、1400℃以上の温度範囲における昇温速度は1.2℃/min以下に設定するのがよく、1400℃以上の温度範囲における降温速度は1℃/min以下に設定するのがよい。
この発明に係る製造方法において、成形体の焼成温度を前記範囲内で高く設定すると、また、成形体の保持時間を前記範囲内で長く設定すると、成形体により多量の熱量を与えることができ、得られるアルミナ基焼結体が薄肉化されていてもその表面にムライトの結晶相をより一層多量に析出させることができる。
この発明に係る製造方法において、複数の成形体を比較的疎に、例えば5cm程度の間隔をあけて配列した状態で焼成すると、成形体により多量の熱量を与えることができ、得られるアルミナ基焼結体が薄肉化されていてもその表面にムライトの結晶相をより一層多量に析出させることができる。
この発明に係る製造方法において、成形体の肉厚が所定の肉厚よりも厚い状態で焼成した後、所定の肉厚になるように切削・研磨等の加工を施すと、加工されて露出する表面はムライトの結晶相をより多量に有している。例えば、前記貫通孔形成用プレスピンよりも外径の小さなプレスピンを用いて、又は、前記貫通孔形成用プレスピンを用いずに、プレス成形して得た成形体を焼成した後、前記貫通孔6が所定の径となるように、掘削加工する方法が挙げられる。このように加工されて露出する表面がより多量のムライトの結晶相を有している理由は詳細には明らかではないが、成形体の肉厚を厚くすることで、成形体中に存在するAl2O3とSiO2とが加工前の絶縁体表面近傍に供給される供給量が増えるので、前記絶縁体表面近傍にムライトの結晶相がより多量に生成し易く、このようにしてより多量に生成した絶縁体表面近傍が前記加工によって露出するためではないかと、考えている。
このようにして得られるアルミナ基焼結体は、通常、絶縁体2の形状及び寸法に調整されているから、このアルミナ基焼結体のまま絶縁体2とされることができる。
この絶縁体2を備えて成るスパークプラグ100は例えば次のようにして製造される。すなわち、絶縁体2の貫通孔6の第一部分6aに中心電極3を挿入した後、前記貫通孔6の反対側から導電性ガラス粉末を充填し、その後、貫通孔6内に押さえ枠を挿入して充填したガラス粉末を予備圧縮し、加熱後に導電性ガラス層10になる導電性ガラス粉末層を形成する。次いで、貫通孔6の第二部分6bに抵抗体用原料粉末を充填して同様に予備圧縮し抵抗体8となる層を形成する。さらに、前記と同様にして、加熱後、導電性ガラス層9となる導電性ガラス粉末層を形成する。その後、所望により釉薬2dとなる釉薬を絶縁体2の本体部2bの外周面に塗布し、組立体を得る。このようにして得られた組立体を炉内に入れてガラス軟化点以上である800〜950℃の所定温度に加熱し、その後、端子全具を貫通孔6の第二部分6b内へ中心電極3と反対側から中心軸線O方向に圧入して導電性ガラス粉末層9、10及び抵抗体8となる層を中心軸線O方向にプレスする。この加熱により、所望により塗布された釉薬2dでコルゲーション2cが同時に形成される。その後、得られた加熱後の組立体に、接地電極5等が固着された主体金具4を組み付け、主体金具4の後端を加締めることにより固定してスパークプラグ100を製造することができる。
この発明に係るスパークプラグは、自動車用の内燃機関例えばガソリンエンジン等の点火栓として使用され、内燃機関の燃焼室を区画形成するヘッド(図示せず)に装着される。この発明に係るスパークプラグは、如何なる内燃機関にも使用することができるが、絶縁体2は薄肉化されているにもかかわらず十分な耐熱衝撃性を発揮するから、この発明に係るスパークプラグ100は、小型化された内燃機関、及び、高出力化された内燃機関等に好適に使用されることができる。
この発明に係るスパークプラグは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記絶縁体2において、0.95mm以下の肉厚を有する部分は前記第二軸部2iの先端とされているが、この発明において、0.95mm以下の肉厚を有する部分は前記第二軸部全体であってもよく、また、絶縁体全体であってもよい。
また、前記第二軸部2iは、略円錐台状を成し、その肉厚が先端に向かって徐々に薄く形成されているが、この発明において、第二軸部は内径及び外径が一定の略円筒状を成し、その肉厚が一定であってもよい。
前記スパークプラグ100は、中心電極3の先端面と接地電極5における一端の表面とが、中心電極の中心軸線O方向で火花放電間隙を介して対向するように配置されているが、この発明において、中心電極の側面と接地電極における一端の先端面が、中心電極の半径方向で火花放電間隙を介して対向するように配置されていてもよい。この場合に、中心電極の側面に対向する接地電極は単数が設けられても複数が設けられてもよい。
また、前記スパークプラグ100は、中心電極3及び接地電極5を備えているが、この発明においては、中心電極の先端部、及び/又は、接地電極の表面に、貴金属チップを備えていてもよい。中心電極の先端部及び接地電極の表面に形成される貴金属チップは、通常、円柱形状を有し、適宜の寸法に調整され、適宜の溶接手法例えばレーザー溶接又は電気抵抗溶接により中心電極の先端部、接地電極の表面に溶融固着される。中心電極の先端部に形成された貴金属チップの表面と接地電極の表面に形成された貴金属チップの表面とで前記火花放電間隙が形成される。この貴金属チップを形成する材料は、例えば、Pt、Pt合金、Ir、Ir合金等の貴金属が挙げられる。
(原料粉末の準備)
原料粉末として、絶縁体を構成する主たる材料群として、平均粒径0.5μmのアルミナ(Al2O3)粉末(純度99.8%以上)と、平均粒径0.6μmのSiO2粉末(純度99.9%)と、平均粒径0.8μmのCaCO3粉末(純度99.9%)と、平均粒径0.3μmのMgO粉末(純度99.9%)とを第1表に示す質量比(CaCO3についてはCaの酸化物「CaO」に換算したときの質量)となるように秤量し、これらに前記の焼結助剤を適宜混合して、原料粉末を調製した。なお、第1表において、Al2O3とSiO2との合計質量に対するAl2O3及びSiO2の質量割合を括弧内に記載した。
原料粉末として、絶縁体を構成する主たる材料群として、平均粒径0.5μmのアルミナ(Al2O3)粉末(純度99.8%以上)と、平均粒径0.6μmのSiO2粉末(純度99.9%)と、平均粒径0.8μmのCaCO3粉末(純度99.9%)と、平均粒径0.3μmのMgO粉末(純度99.9%)とを第1表に示す質量比(CaCO3についてはCaの酸化物「CaO」に換算したときの質量)となるように秤量し、これらに前記の焼結助剤を適宜混合して、原料粉末を調製した。なお、第1表において、Al2O3とSiO2との合計質量に対するAl2O3及びSiO2の質量割合を括弧内に記載した。
(実施例1)
第1表に示す組成「No.1」及び「No.4」の原料粉末総量100質量部と親水性結合剤としてのポリビニルアルコール2質量部と溶媒としての水70質量部とをアルミナ製ボールを用いたボールミルにて湿式混合して、成形用スラリーを調製した。次いで、この成形用スラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥して球状の成形用造粒粉末を調製し、ふるいにより粒径10〜355μmに整粒した。得られた成形用造粒粉末をラバープレスゴム型内に投入し、貫通孔形成用プレスピンを挿入しつつ約100MPaの圧力でプレス成形を行い、得られたプレス成形体の外側をレジノイド砥石にて切削加工して、所定の絶縁体形状を有する成形体に成形した。この成形体における前記第二軸部2iの先端に対応する部分の肉厚t3を焼成による収縮を考慮して焼成後に0.9mmとなるように調整した。
第1表に示す組成「No.1」及び「No.4」の原料粉末総量100質量部と親水性結合剤としてのポリビニルアルコール2質量部と溶媒としての水70質量部とをアルミナ製ボールを用いたボールミルにて湿式混合して、成形用スラリーを調製した。次いで、この成形用スラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥して球状の成形用造粒粉末を調製し、ふるいにより粒径10〜355μmに整粒した。得られた成形用造粒粉末をラバープレスゴム型内に投入し、貫通孔形成用プレスピンを挿入しつつ約100MPaの圧力でプレス成形を行い、得られたプレス成形体の外側をレジノイド砥石にて切削加工して、所定の絶縁体形状を有する成形体に成形した。この成形体における前記第二軸部2iの先端に対応する部分の肉厚t3を焼成による収縮を考慮して焼成後に0.9mmとなるように調整した。
得られた成形体を5cm間隔でその軸線が略並行となるように配列した状態で大気雰囲気下において第2表に示す各焼成条件で焼成した。このとき、各成形体に与えられた、1400℃以上での前記熱量を、式:[0.8×(焼成温度−1400)×昇温時間(h)×3600]/2+[0.8×(焼成温度−1400)×保持時間(h)×3600]+[0.8×(焼成温度−1400)×降温時間(h)×3600]/2から算出し、その結果を第2表に示した。次いで、釉薬をかけて仕上焼成して、第二軸部2iの先端が0.9mmの肉厚t3を有する図1及び図2に示す絶縁体2をそれぞれ製造した。なお、この絶縁体2の寸法は前記範囲内にあった。
前記焼成条件のうち、焼成条件A、Bは熱量を1200kJ未満とし、焼成条件D以外の焼成条件は1400℃以上の温度範囲における降温速度を20.8℃/minとした。
このようにして得られた絶縁体2を蛍光X線で分析して、検出された成分を酸化物換算質量の合計を100質量%としたときの、各絶縁体2中に含有されるAl、Si、Ca及びMgの各成分の含有量を酸化物換算で測定したところ、第1表に示す混合割合にほぼ一致していた。
各絶縁体2の前記第二軸部2iにおける先端の外周面、先端部及び内周面それぞれを前記条件でX線回折分析して測定チャートを得た。測定チャートの一例を図6に示す。測定チャートにJCPDSカードNo.15−776に相当するピークが存在することを確認した後、測定チャートにおいて、2θが40.8°付近に出現するムライトの(121)面のピーク強度と、2θが43.3°付近に出現するアルミナの(113)面のピーク強度とから、ムライトの前記ピーク強度比を算出した。その結果を第2表に示した。
第2表において、1400℃以上の温度範囲における昇温速度が0.8℃/minの焼結条件「E」で焼結して成る絶縁体は前記昇温速度が1.2℃/minの焼結条件「C」で焼結して成る絶縁体よりもムライトのピーク強度比が大きくなることが理解できた。また、1400℃以上の温度範囲における降温速度が0.8℃/minの焼結条件「D」で焼結して成る絶縁体は前記昇温速度が20.8℃/minの焼結条件「C」で焼結して成る絶縁体よりもムライトのピーク強度比が2倍程度も大きくなることが理解できた。
このようにして得られた絶縁体2を用いて前記のようにして図1に示されるスパークプラグ100を製造した。
(実施例2)
第1表に示す「組成No.4」の原料粉末を用いて第2表に示す焼結条件「A」〜「K」で前記先端の肉厚t3が0.9mm及び0.6mmの第二軸部2iを有する絶縁体を実施例1と基本的に同様にして製造し、各絶縁体を用いて実施例1と同様にして22種のスパークプラグを製造した。一方、第1表に示す「組成No.6」の原料粉末を用いて第2表に示す焼結条件「B」で前記先端の肉厚t3が1.2mmの第二軸部2iを有する絶縁体を実施例1と基本的に同様にして製造し、各絶縁体を用いて実施例1と同様にしてスパークプラグを製造した。このようにして製造した23種のスパークプラグそれぞれの絶縁体におけるムライトのピーク強度比を実施例1と同様にして測定した。
第1表に示す「組成No.4」の原料粉末を用いて第2表に示す焼結条件「A」〜「K」で前記先端の肉厚t3が0.9mm及び0.6mmの第二軸部2iを有する絶縁体を実施例1と基本的に同様にして製造し、各絶縁体を用いて実施例1と同様にして22種のスパークプラグを製造した。一方、第1表に示す「組成No.6」の原料粉末を用いて第2表に示す焼結条件「B」で前記先端の肉厚t3が1.2mmの第二軸部2iを有する絶縁体を実施例1と基本的に同様にして製造し、各絶縁体を用いて実施例1と同様にしてスパークプラグを製造した。このようにして製造した23種のスパークプラグそれぞれの絶縁体におけるムライトのピーク強度比を実施例1と同様にして測定した。
(耐熱衝撃性試験)
前記23種のスパークプラグ100を図5に示される耐熱衝撃性試験装置に取り付けて耐熱衝撃性試験を行った。具体的には、図5に示される耐熱衝撃性試験装置に各スパークプラグ100を取り付けた後に、放射温度計20によりスパークプラグ100における第二軸部2iの表面温度を測定しながら、第二軸部2iの先端の表面温度が1000℃に1分間保持されるようにバーナー21により加熱し、次いで、第二軸部2iの先端に送風口22より送風して冷却する加熱冷却サイクルを1サイクルとして合計10サイクル繰り返し行った。このとき、放射温度計20により測定された第二軸部2iにおける先端の表面温度のうち急冷したときの最低温度と1000℃との温度差をΔT/℃とした。10サイクル終了後に第二軸部2iの先端が破壊したか否かを目視で確認した。第二軸部2iの先端が破壊されていない場合には、加熱冷却サイクルにおける送風量を多くして第二軸部2iの冷却温度を10サイクル毎に徐々に低くした。第二軸部2iの先端が破壊したときの前記温度差を絶縁体の耐熱衝撃性(ΔT/℃)とした。このようにして得られた各絶縁体の耐熱衝撃性(ΔT/℃)のいくつかを、同一の前記肉厚t3を有するスパークプラグ毎に、ムライトの前記ピーク強度比に対してプロットしたグラフを図3に示した。
前記23種のスパークプラグ100を図5に示される耐熱衝撃性試験装置に取り付けて耐熱衝撃性試験を行った。具体的には、図5に示される耐熱衝撃性試験装置に各スパークプラグ100を取り付けた後に、放射温度計20によりスパークプラグ100における第二軸部2iの表面温度を測定しながら、第二軸部2iの先端の表面温度が1000℃に1分間保持されるようにバーナー21により加熱し、次いで、第二軸部2iの先端に送風口22より送風して冷却する加熱冷却サイクルを1サイクルとして合計10サイクル繰り返し行った。このとき、放射温度計20により測定された第二軸部2iにおける先端の表面温度のうち急冷したときの最低温度と1000℃との温度差をΔT/℃とした。10サイクル終了後に第二軸部2iの先端が破壊したか否かを目視で確認した。第二軸部2iの先端が破壊されていない場合には、加熱冷却サイクルにおける送風量を多くして第二軸部2iの冷却温度を10サイクル毎に徐々に低くした。第二軸部2iの先端が破壊したときの前記温度差を絶縁体の耐熱衝撃性(ΔT/℃)とした。このようにして得られた各絶縁体の耐熱衝撃性(ΔT/℃)のいくつかを、同一の前記肉厚t3を有するスパークプラグ毎に、ムライトの前記ピーク強度比に対してプロットしたグラフを図3に示した。
図3に示されるように、前記肉厚t3が0.9mm及び0.6mmのいずれの場合であっても、前記第二軸部2iにおける先端の表面に存在するムライトの前記ピーク強度が15%以上であれば、薄肉化された絶縁体2は、1.2mmの肉厚t3を有する従来の絶縁体が発揮する高い耐熱衝撃性と同等以上の耐熱衝撃性を発揮できることが分かった。また、図3に示されるように、絶縁体の肉厚が薄くなるほど、耐熱衝撃性はムライトの前記ピーク強度に依存し、ムライトの前記ピーク強度の変化に対する耐熱衝撃性の上昇幅が大きくなることが分かった。なお、「組成No.4」以外の第1表に示す原料組成においても同様の結果が得られた。
(実施例3)
第1表に示される組成「No.1」〜「No.6」を用いて、先端の肉厚t3が0.9mmの第二軸部2iを備えた絶縁体2を、第2表に示される焼成条件「C」で実施例1と基本的に同様にして、製造した。なお、絶縁体2の第二軸部2iにおけるAl2O3とSiO2との含有量を蛍光X線で分析したところ前記含有量にほぼ一致した。製造した絶縁体2におけるムライトの前記ピーク強度比を算出して、SiO2の含有量(図4において「SiO2の割合(質量%)」と称する。)に対するムライトのピーク強度比を図4に示した。図4における各プロットは、SiO2の含有量が小さい方から順に、組成「No.1」、「No.2」、「No.6」、「No.3」、「No.4」及び「No.5」に対応する。
第1表に示される組成「No.1」〜「No.6」を用いて、先端の肉厚t3が0.9mmの第二軸部2iを備えた絶縁体2を、第2表に示される焼成条件「C」で実施例1と基本的に同様にして、製造した。なお、絶縁体2の第二軸部2iにおけるAl2O3とSiO2との含有量を蛍光X線で分析したところ前記含有量にほぼ一致した。製造した絶縁体2におけるムライトの前記ピーク強度比を算出して、SiO2の含有量(図4において「SiO2の割合(質量%)」と称する。)に対するムライトのピーク強度比を図4に示した。図4における各プロットは、SiO2の含有量が小さい方から順に、組成「No.1」、「No.2」、「No.6」、「No.3」、「No.4」及び「No.5」に対応する。
図4に示されるように、SiO2の含有量を5.5質量%以上にすると、薄肉化された第二軸部2iであってもムライトのピーク強度比を15%以上にできることが分かった。第2表の結果をも考慮すると、SiO2の割合が5.5質量%以下であっても焼成条件を変更し、熱量が多くなる焼結条件で前記成形体を焼成すれば薄肉化された第二軸部2iにムライトを15%以上析出することは可能であると推測される。ただし、1600℃以上など焼成温度を高くする等して得られた絶縁体2はアルミナ結晶の異常粒子成長により機械的強度の低下、耐電圧性能の低下を伴うことがある。したがって、アルミナ結晶の異常粒子成長を防止しつつ、ムライトのピーク強度比を15%以上にするには、SiO2の含有量を5.5質量%以上にすることが効果的であり、さらに、1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上の焼結条件が効果的であることが分かった。
2 絶縁体
2i 第二軸部(脚長部)
3 中心電極
4 主体金具
5 接地電極
100 スパークプラグ
2i 第二軸部(脚長部)
3 中心電極
4 主体金具
5 接地電極
100 スパークプラグ
Claims (5)
- アルミナ基焼結体で形成されたスパークプラグ用絶縁体であって、
前記スパークプラグ用絶縁体は、その脚長部のうち0.95mm以下の肉厚を有する部分の表面をX線回折分析したときに、アルミナの(113)面のピーク強度とムライトの(121)面のピーク強度との合計ピーク強度に対する前記ムライトの前記ピーク強度が15%以上であることを特徴とするスパークプラグ用絶縁体。 - 前記スパークプラグ用絶縁体は、Al2O3とSiO2との合計質量に対して、85〜94.5質量%のAl2O3と5.5〜15質量%のSiO2とを含有していることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ用絶縁体。
- 前記スパークプラグ用絶縁体は、CaO及びMgOの少なくとも一方を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ用絶縁体。
- 原料粉末を成形してなる成形体を、1400℃以上の温度で前記成形体に与える熱量が1200kJ以上となる焼成条件で、焼成することを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ用絶縁体の製造方法。
- 軸状の中心電極と、前記中心電極の径方向周囲に配置される主体金具と、前記主体金具の一端に固着されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において前記中心電極の径方向周囲を覆うように配置された、請求項1〜3のいずれかに記載のスパークプラグ用絶縁体とを備えたことを特徴とするスパークプラグ。
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