JP5722067B2 - 多層構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、多層構造体に関する。より詳細には、発泡ビーズ成形体を含む多層構造体に関する。
自動車や電子機器の内部部品、容器等の材料として、従来プラスチックや金属が採用されてきた。プラスチックは金属等と比較して軽量であるため、電子機器、雑貨及び自動車用部品等に使用用途が拡大している。一方、省エネルギー等の観点から、より軽量で、かつ強度や耐衝撃性等の物性がより優れた材料が求められている。そのような材料の候補の1つに、樹脂発泡成形体がある。
樹脂発泡成形体として、難燃剤を添加した難燃性樹脂発泡ビーズ及びその成形体が知られている(特許文献1、2)。また、樹脂発泡層の表面に未発泡樹脂層を積層した積層シートが知られている(特許文献3)。
特開2000−95892号公報 再表2003−004552号公報 特開2008−110651号公報
樹脂発泡成形体を用いることで、従来のプラスチックや金属と比べて、軽量化は満足いくものとなる。しかしながら、樹脂発泡成形体は空気を多く含むため燃えやすく、難燃性が要求される電子機器や自動車用部品には適用することができなかった。
樹脂発泡成形体の難燃性を向上させるため、例えば、特許文献1〜2のように、難燃剤を添加した樹脂発泡成形体が知られている。しかしながら、難燃剤の添加により、未発泡の樹脂成形体では優れた難燃性向上効果が得られるものの、樹脂発泡成形体では未発泡の樹脂成形体と比べて難燃性向上効果が著しく低い。これは、同じサイズのサンプルで比較した場合、未発泡の樹脂に比べて樹脂発泡成形体は単位体積あたりの樹脂量が少ないため、炭化層を形成しにくく、燃焼時間が長くなってしまうからである。また、樹脂発泡成形体は樹脂量が少ないため、燃焼熱により軟化しやすくなり、結果として燃焼時の樹脂だれが発生しやすくなる。
一方、樹脂発泡成形体への難燃剤の添加量を増加させると、難燃性は改善されるものの、強度や耐衝撃性等の機械物性が低下する。また、難燃剤が樹脂を可塑化させる性質を有するものである場合、樹脂発泡成形体の耐熱性が低下したり、伸張粘度低下により発泡性を阻害したりする等の弊害が発生する。そのため、樹脂発泡成形体への成形加工性だけでなく、複雑で微細な形状への加工を容易にし、かつ、軽量化と難燃性向上を同時に満足することは非常に困難であった。
他方、特許文献3に開示されている積層シートのように、樹脂発泡層の表面に未発泡樹脂層を積層した樹脂発泡成形体(多層構造体)は、剛性等の物性に優れている。しかしながら、樹脂発泡層の難燃性が充分ではなく、特許文献3に開示されている積層シートも含め、剛性等の物性に優れ、かつ充分な難燃性を有する多層構造体は、これまで知られていない。
そこで、本発明は、軽量化と同時に優れた難燃性を維持し、成形加工性に優れ、かつ剛性に優れた多層構造体を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[10]を提供する。
[1] UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である発泡ビーズ成形体からなる発泡層と、少なくとも一層の樹脂層とを備える多層構造体。
[2] 上記発泡層における脂肪族炭化水素系ガスの濃度が1000体積ppm以下である、[1]に記載の多層構造体。
[3] 上記発泡ビーズ成形体が、ポリフェニレンエーテル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂、及び難燃剤を含む基材樹脂からなる、[1]又は[2]に記載の多層構造体。
[4] 上記発泡ビーズ成形体が、ポリフェニレンエーテル系樹脂と難燃剤とを含む基材樹脂からなる、[1]又は[2]に記載の多層構造体。
[5] 上記基材樹脂が、更にポリスチレン系樹脂を含有する、[3]又は[4]に記載の多層構造体。
[6] 上記基材樹脂が、更にゴム成分を含有する、[3]〜[5]のいずれかに記載の多層構造体。
[7] 上記基材樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂40〜94質量%、難燃剤5〜20質量%、及びゴム成分0.3〜10質量%を含有し、残部がポリスチレン系樹脂からなる、[3]〜[6]のいずれかに記載の多層構造体。
[8] 上記難燃剤が非ハロゲン系難燃剤である、[3]〜[7]のいずれかに記載の多層構造体。
[9] 上記樹脂層が、熱可塑性樹脂からなる、[1]〜[8]のいずれかに記載の多層構造体。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の多層構造体を用いた自動車用デッキボード。
本発明により、軽量化と同時に、優れた難燃性を維持し、成形加工性に優れ、かつ耐熱性と剛性に優れた多層構造体を提供することができる。
本発明の多層構造体は、優れた耐熱性、剛性、難燃性を有しているため、これまで金属や未発泡樹脂では簡単になしえない複雑な形状の製品や部材、例えば大幅に単純化されたアセンブリを可能にする電子装置といった装置用のシャーシやデッキボード、ドアトリム、天井材等の自動車部材、OA機器の構造材等を、高温環境下でも寸法精度良く提供することができる。
本発明について、以下具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔多層構造体〕
本発明の多層構造体は、発泡層と、少なくとも一層の樹脂層とを備える。例えば、発泡層に樹脂層が積層された二層構造体、発泡層の表面及び裏面に樹脂層が積層された三層構造体とすることができる。樹脂層は二層以上が積層したものであってもよい。樹脂層が複数ある場合、それぞれ同一の樹脂から形成される層であってもよく、またそれぞれ異なる樹脂から形成される層であってもよい。
本発明の多層構造体における発泡層は、発泡ビーズ成形体からなるものであるため、微細で複雑な形状への加工が可能である。また、樹脂層は、発泡層の形状に合わせて成形が可能である。したがって、多層構造体の形状は、多層構造体が用いられる製品や部材等の形状に合わせて任意に成形することができる。
本発明の多層構造体の曲げ弾性率は、特に限定されないが、150MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましい。曲げ弾性率が150MPaであると、剛性に優れる傾向にあり、デッキボード等様々な用途に使用できる。なお、剛性とは、多層構造体に曲げ荷重が加えられたときの変形のしにくさを表す。
〔発泡層〕
発泡層は、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である発泡ビーズ成形体からなる。本発明の多層構造体は、このような難燃性、耐熱性に優れる発泡層を備えていることにより、樹脂層の種類、特性等に関わらず、難燃性、耐熱性に優れるものとなる。すなわち、本発明の多層構造体は、軽量化と同時に優れた難燃性を維持でき、優れた耐熱性を有するとともに、微細で複雑な形状への加工も容易である。
発泡層(発泡ビーズ成形体)の形状、大きさは、多層構造体が用いられる製品や部材等の形状に合わせて、任意に設定することができる。発泡層の形状、大きさは、例えば、発泡ビーズ成形体の製造時に用いる成形型の形状、大きさによって制御することができる。
発泡層の厚みは、3.0〜50mmが好ましく、5.0〜30mmがより好ましい。なお、発泡層の厚みとは、発泡層が複雑な形状を有する場合も含めて、最大の厚みと最小の厚みの中間値をいう。
〔発泡ビーズ成形体〕
本発明に係る発泡ビーズ成形体は、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である。なお、発泡ビーズ成形体とは、発泡ビーズを成形して得られる成形体を意味する。
一般的に、発泡倍率が高くなるほど空気を多く含むために難燃性を達成しにくくなるが、本発明に係る発泡ビーズ成形体は、発泡倍率が高い場合でも、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−1以上を満足する。UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)は、樹脂の難燃性についての指標を与える試験である。具体的には、特定の大きさの試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を行い、その有炎燃焼持続時間、固定用クランプの位置まで燃焼の有無、燃焼落下物による綿着火の有無等によりV−0、V−1、V−2、不適合と判断するものである。通常、UL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)は、未発泡の樹脂における難燃性評価に用いられる。樹脂発泡体よりも未発泡の樹脂の方が難燃性を付与しやすいため、樹脂発泡体に対しては厳しい試験である。
本発明に係る発泡ビーズ成形体は、上記UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−1以上を満足することにより、従来未発泡の樹脂や金属が主に用いられてきたような高い難燃性が要求される部材において、代替材料として用いること可能となり、難燃性と同時に軽量化・成形体への優れた成形加工性が得られる。
本発明に係る発泡ビーズ成形体の独立気泡率は高い程よく、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。独立気泡率が50%以上であると、発泡ビーズ成形体の圧縮強度や残留歪等への悪影響が少なく、優れた物性を持つ発泡ビーズ成形体となる傾向にある。
本発明に係る発泡ビーズ成形体の発泡倍率は特には限定されないが、1.5〜40cc/gが好ましく、2〜25cc/gがより好ましい。発泡倍率が1.5〜40cc/gの範囲であると、軽量化のメリットを活かしつつ、優れた難燃性を維持しやすくなる傾向にある。
本発明に係る発泡ビーズ成形体の加熱寸法変化率は特に限定されないが、100℃において、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。加熱寸法変化率が10%以下であると、耐熱性に優れるため、高温の環境下で使用する部材にも適用が可能であり、さらには夏場の高温環境下に長期間保存しておくことも可能である。
本発明に係る発泡ビーズ成形体の荷重たわみ温度(HDT)は特に限定されないが、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。荷重たわみ温度が60℃以上であると、耐熱性に優れ、上記と同様の効果が得られる。
本発明に係る発泡ビーズ成形体に含まれる脂肪族炭化水素系ガスの濃度は、1000体積ppm以下が好ましい。なお、本明細書において、脂肪族炭化水素系ガスの濃度とは、発泡ビーズ成形体中に含まれる脂肪族炭化水素系ガスの体積を発泡ビーズ成形体の体積で除して求めた値(体積ppm)であり、1体積ppm(以下、単に「ppm」ともいう。)は0.0001体積%に相当する。また、発泡ビーズに残存する脂肪族炭化水素系ガスの濃度についても同様である。
脂肪族炭化水素系ガスとしては、プロパン、n−ブタン、i―ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系ガスの濃度が1000ppm以下であると、燃焼時に種火が長時間くすぶったり(グローイングという)することがない。UL−94等の燃焼試験においては、燃焼時間に加えグローイング時間が規定されており、上記残存ガス量が少ないと、燃焼試験、特にV−0という規格をクリアすることが可能となる。
〔発泡ビーズ〕
発泡ビーズ成形体に用いる発泡ビーズは、基材樹脂を発泡させたものである。発泡ビーズは、平均粒子径が0.5〜10mmであることが好ましく、0.7〜5mmであることがより好ましい。発泡ビーズの平均粒子径が、0.5〜10mmであると、複雑で微細な形状を有する発泡ビーズ成形体の成形がより一層容易になる。
発泡ビーズの密度は、0.033〜0.80g/ccであることが好ましく、0.04〜0.67g/ccであることがより好ましく、0.05〜0.5g/ccであることがさらに好ましい。発泡ビーズの密度が、0.033〜0.80g/ccであると、軽量化を満足しつつ、所望の難燃性を満足することがより一層容易になる。
発泡ビーズの発泡倍率は特には限定されないが、1.5〜30cc/gが好ましく、2〜20cc/gがより好ましい。発泡倍率が1.5〜30cc/gの範囲であると、軽量化のメリットを活かしつつ、優れた難燃性を維持しやすくなる傾向にある。多段階で所望の発泡倍率に調整する際には、一次発泡倍率は1.4〜10cc/gが好ましい。この範囲であると、セルサイズが均一になりやすい傾向にあり、二次発泡能も付与しやすくなる傾向にある。
発泡ビーズの独立気泡率は高い程よく、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。独立気泡率が50%以上であると、発泡ビーズ成形体への成形加工性がより優れる発泡ビーズとなる傾向にある。
〔基材樹脂〕
基材樹脂は、樹脂成分を少なくとも含む。これら以外にも、例えば、難燃剤、ゴム成分等を含んでいてもよい。
樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ポリスチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、フッ素ゴム系等の熱可塑性エラストマー、ポリアミド系、ポリアセタール系、ポリエステル系、フッ素系の熱可塑性エンジニアリングプラスチック、粉末ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。また本発明の目的を損なわない範囲で変性、架橋された樹脂を用いてもよい。また、基材樹脂に含まれる熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等のアミノ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリフェニレンエーテル系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂を含む熱可塑性樹脂が、難燃性向上の点で好ましい。
本明細書において、ポリカーボネート系樹脂は、ビスフェノール類とホスゲン(若しくはジフェニルカーボネート)とから誘導される炭酸エステル樹脂とすることが好ましく、高いガラス転移点と耐熱性とを有することが特徴である。このようなポリカーボネート系樹脂としては、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)エタン等から誘導されたポリカーボネートが好適である。これらのポリカーボネートは、一般に140〜155℃のガラス転移点(Tg)を有する。
ポリカーボネート系樹脂としては、重量平均分子量が18,000〜60,000であるものが好ましい。
なお、本明細書中において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
ポリカーボネート系樹脂は、他の1種類以上の樹脂と混合が可能であり、その例としてポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル―スチレン共重合体(AS樹脂)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド又はポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
他の樹脂と混合する場合は、難燃性の観点から、ポリカーボネート樹脂の含有量は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
本明細書において、ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記一般式(1)で表される重合体のことをいう。ここで一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲンと一般式(1)中のベンゼン環との間に少なくとも2個の炭素原子を有するハロアルキル基又はハロアルコキシ基で第3α−炭素を含まないもの、を示す。また、nは重合度を表す整数である。
Figure 0005722067
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜60,000であるものが好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−ジフェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−ステアリルオキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。この中でも特に、R及びRが炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRが水素若しくは炭素数1〜4のアルキル基のものが好ましい。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、他の1種類以上の樹脂と混合が可能であり、その例として、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリアミドに代表されるエンプラ系樹脂、ポリフェニレンスルファイドに代表されるスーパーエンプラ系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、加工性向上の点から、ポリスチレン系樹脂と混合することが好ましい。
本明細書において、ポリスチレン系樹脂とは、スチレン及びスチレン誘導体のホモポリマーに加え、スチレン及びスチレン誘導体を主成分とする共重合体のことをいう。スチレン誘導体として、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジフェニルエチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ホモポリマーのポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリクロロスチレン等が挙げられ、共重合体のポリスチレン系樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−N−アルキルマレイミド共重合体、スチレン−N−アルキル置換フェニルマレイミド共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−n−アルキルアクリレート共重合体、スチレン−n−アルキルメタクリレート共重合体、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体のほか、ABS、ブタジエン−アクリロニトリル−α−メチルベンゼン共重合体等の三元共重合体も挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、グラフト共重合体、例えば、スチレングラフトポリエチレン、スチレングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、(スチレン−アクリル酸)グラフトポリエチレン、スチレングラフトポリアミド等も含まれる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、重量平均分子量が180,000〜500,000であるものが好ましい。
基材樹脂には、難燃性向上の点から難燃剤が含まれていることが好ましい。難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤があり、有機系難燃剤としては、臭素化合物に代表されるハロゲン系化合物や、リン系化合物シリコーン系化合物に代表される非ハロゲン系化合物がある。無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムに代表される金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンに代表されるアンチモン系化合物等が挙げられる。
上記難燃剤の中でも、環境の観点から、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、リン系、シリコーン系の難燃剤がより好ましいが、これに限定されるものではない。
リン系の難燃剤には、リン又はリン化合物を含むものを用いることができる。リンとしては赤リンが挙げられる。また、リン化合物として、リン酸エステルやリン原子と窒素原子の結合を主鎖に有するホスファゼン化合物群等が挙げられる。リン酸エステルとして、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート等が挙げられ、また、これらを各種置換基で変性した化合物や、各種の縮合タイプのリン酸エステル化合物も含まれる。この中でも、耐熱性、難燃性、発泡性の観点からトリフェニルホスフェートや一般式(2)で表されるリン酸エステル化合物が好ましい。
Figure 0005722067

ここで、一般式(2)中、Q〜Qは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基を示す。一般式(2)におけるQ〜Qで好ましいのは水素又はメチル基である。一般式(2)におけるQ、Qで好ましいのは水素であり、Q、Qで好ましいのはメチル基である。一般式(2)におけるmは1以上の整数である。該リン酸エステル化合物はm量体の混合物であっても構わない。一般式(2)におけるn1〜n4は、それぞれ独立に1〜5の整数であり、n5及びn6は、それぞれ独立に1〜4の整数である。
また、シリコーン系難燃剤には、(モノ又はポリ)オルガノシロキサン類を用いることができる。(モノ又はポリ)オルガノシロキサン類としては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のモノオルガノシロキサン類、及びこれらを重合して得られるポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、これらの共重合体等のオルガノポリシロキサン類等が挙げられる。オルガノポリシロキサンの場合、主鎖や分岐した側鎖の結合基は、水素又はアルキル基、フェニル基であり、好ましくはフェニル基、メチル基、エチル基、及びプロピル基であるが、これに限定されない。末端結合基は、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、フェニル基、いずれも使用される。シリコーン類の形状にも特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状等の任意のものが利用可能である。
また、従来より知られた各種難燃剤及び難燃助剤、例えば、環状窒素化合物、その具体例としてはメラミン、アンメリド、アンメリン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メトン、メロン等のトリアジン骨格を有する化合物及びそれらの硫酸塩、結晶水を含有する水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、ホウ酸亜鉛化合物、スズ酸亜鉛化合物等も用いてもよい。また1種だけでなく、複数組み合わせて含んでいてもよい。
基材樹脂には、発泡性向上の点からゴム成分が含まれていることがより好ましい。
ゴム成分としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは、ポリスチレン系樹脂からなる連続相中に粒子状に分散しているものが好ましい。これらゴム成分を添加する方法として、ゴム成分そのものを加えてもよく、スチレン系エラストマーやスチレン−ブタジエン共重合体等の樹脂をゴム成分供給源として用いてもよい。後者の場合、ゴム成分の比率(R)は下記式で計算できる。
R=C×Rs/100
C:ゴム成分供給源中のゴム濃度(質量%)
Rs:基材樹脂中のゴム供給源含有量(質量%)
なお、基材樹脂には、上記以外にも、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、顔料、染料、耐候性改良剤、耐衝撃改質剤、ガラスビーズ、無機充填材、タルク等の核剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。特に、基材樹脂にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加することが好ましい。PTFEは、燃焼試験時の液ダレ防止のために好適であり、難燃性改善に効果的である。
基材樹脂中の樹脂成分の含有量は、基材樹脂全量に対して、40〜100質量%であることが好ましく、45〜95質量%であることがより好ましい。
基材樹脂が、樹脂成分としてポリフェニレンエーテル系樹脂を含む場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、基材樹脂全量に対して、40〜94質量%であることが好ましく、45〜90質量%であることがより好ましく、50〜85質量%であることがさらに好ましい。
基材樹脂が、樹脂成分としてポリカーボネート系樹脂を含む場合、ポリカーボネート系樹脂の含有量は、基材樹脂全量に対して、70〜97質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることがより好ましく、82〜90質量%であることがさらに好ましい。
基材樹脂が難燃剤を含む場合、基材樹脂中の難燃剤の含有量は、基材樹脂全量に対して、5〜20質量%が好ましい。難燃剤の含有量が5質量%以上であると、所望の難燃性が発現しやすくなる傾向にある。20質量%以下であると、難燃剤による基材樹脂の可塑化効果が適度となり、耐熱性が向上する傾向にある。さらに、発泡時の樹脂の伸張粘度が向上し、発泡倍率をより高くすることができ、発泡ビーズの独立気泡率がより一層向上し、発泡ビーズ成形体への成形加工性がより優れたものとなる。このように、難燃性と発泡性のバランスを調整することは非常に重要である。
基材樹脂がゴム成分を含む場合、ゴム成分の含有量は、基材樹脂全量に対して、0.3〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。0.3質量%以上であると所望の難燃性が発現しやすくなる傾向にある。さらに、0.5質量%以上であると樹脂の柔軟性、伸びに優れ、発泡時に発泡セル膜が破膜しにくく、発泡倍率が上がり、発泡後も成形加工性に優れる発泡ビーズが得られ易くなる傾向にある。難燃性を重視すると、ポリフェニレンエーテル系樹脂や難燃剤は、より多く添加する方が好ましいが、これらはどちらも添加量が増えると発泡性には悪影響を与える傾向がある。そのような組成において、発泡性を付与させるのにゴム成分は好適である。これは特に、常温から徐々に温度を上げ、非溶融状態で樹脂を発泡させるビーズ発泡において重要であり、溶融状態の樹脂を発泡させる押出発泡とは大きく異なる点である。成形加工品の形状の自由度の観点では、板状に押出す押出発泡品より、所望の金型に充填し成形可能なビーズ発泡品の方が有利であり、発泡ビーズで難燃性と高発泡を両立したことは非常に有用である。
一方、ゴム成分の含有量は10質量%以下であれば所望の難燃性が発現しやすくなる傾向にある。さらに、8質量%以下であると、十分な耐熱性が得られる傾向にある。ゴム粒子の形状は特には限定されず、ゴム成分を外殻とする粒子の内部に複数のポリスチレン系樹脂微粒子を内包した、いわゆるサラミ構造を形成していてもよく、ゴム成分を外殻とする粒子の内部に単数のスチレン系樹脂微粒子を内包した、いわゆるコアシェル構造であってもよい。ゴム成分のゴム粒径は特には限定されないが、サラミ構造の場合は0.5〜5.0μm、コアシェル構造の場合は0.1〜1.0μmが好ましい。この範囲であると、より優れた発泡性を発揮しやすい傾向にある。
基材樹脂は、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、難燃剤及びゴム成分を含むことが好ましい。この場合の各成分の含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂40〜94質量%、難燃剤5〜20質量%及びゴム成分0.3〜10質量%であり、残部がポリスチレン系樹脂からなることが好ましい。
基材樹脂はまた、例えば、ポリカーボネート系樹脂及び難燃剤を含むものとすることができる。この場合の各成分の含有量は、例えば、ポリカーボネート系樹脂80〜95質量%、難燃剤5〜20質量%とすることができる。
基材樹脂の形状は特に限定されないが、例としてビーズ状、ペレット状、球体、不定型の粉砕品等が挙げられる。その大きさは、好ましくは0.2〜5.0mm、さらに好ましくは0.2〜3.0mmである。大きさがこの範囲にあると、発泡後の発泡ビーズが適度な大きさになり、取り扱い易く、また、成形時の充填がより密になりやすくなる。
〔発泡ビーズ成形体の製造方法〕
次に、本発明に係る発泡ビーズ成形体の製造方法について説明する。
本発明に係る発泡ビーズ成形体は、基材樹脂に発泡剤を含有(含浸)させ(含浸工程)、発泡させることにより発泡ビーズを形成し(発泡工程)、得られた発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させること(成形工程)により得ることができる。
含浸工程において、基材樹脂に発泡剤を含有させる方法は特には限定されず、一般的に行われている方法が適用できる。発泡剤を含有させる方法として、水等の懸濁系を利用して水性媒体で行う方法(懸濁含浸)や、重炭素水素ナトリウム等の熱分解型発泡剤を用いる方法(発泡剤分解法)、ガスを臨界圧力以上の雰囲気にし、液相状態にして基材樹脂に接触させる方法(液相含浸)、臨界圧力未満の高圧雰囲気下で気相状態で基材樹脂に接触させる方法(気相含浸)等が挙げられる。この中でも特に、臨界圧力未満の高圧雰囲気下で気相含浸させる方法が好ましい。気相含浸させる方法は、高温条件下で実施される懸濁含浸に比べてガスの樹脂への溶解度がより良好で、発泡剤の含有量を高くしやすくなる。そのため、高発泡倍率を達成しやすく、基材樹脂内の気泡サイズも均一になりやすくなるからである。発泡剤分解法も同様に高温条件下で実施されるだけでなく、加えた熱分解型発泡剤全てがガスになる訳ではないため、ガス発生量が相対的に少なくなりやすい。そのため気相含浸の方がより発泡剤含有量を高くしやすい利点がある。また、液相含浸と比べると、耐圧装置や冷却装置等の設備がよりコンパクトになりやすく、設備費が低く抑えやすくなる。
気相含浸条件は特には限定されないが、雰囲気圧力として0.5〜6.0MPaが好ましい。また、雰囲気温度は5〜30℃が好ましく、7〜15℃がより好ましい。雰囲気圧力、雰囲気温度が上記範囲であると、より効率的に基材樹脂へのガス溶解が進行しやすくなる。特に、雰囲気温度は低ければ含浸量が増えるが含浸速度は遅くなり、雰囲気温度が高ければ含浸量は減るが含浸速度は速くなる傾向であり、その兼ね合いから効率的に基材樹脂へのガス溶解を進行するために上記の雰囲気温度を設定するのが好ましい。
発泡剤は特には限定されず、一般的に用いられているガスを使用することができる。その例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の無機ガス、トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)ジクロロフルオロエタン(R141b)クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC−245fa、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−225ca等のフルオロカーボンや、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn―ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステル等のカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。
難燃性の観点から、発泡剤は可燃性や支燃性がないことが好ましく、ガスの安全性の観点から無機ガスがより好ましい。また、無機ガスは炭化水素等の有機ガスに比べ樹脂に溶けにくく、発泡工程や成形工程の後、樹脂からガスが抜けやすいので、成形品の経時での寸法安定性がより優れる利点もある。さらに、残存ガスによる樹脂の可塑化も起こりにくく、成形後、より早い段階から優れた耐熱性を発現しやすいメリットもある。無機ガスの中でも、樹脂への溶解性、取り扱いの容易さの観点から、炭酸ガスが好ましく、その含浸量は樹脂に対して3〜13質量%あることが好ましい。より好ましくは3.5〜10質量%である。
炭酸ガスの含浸量が3質量%以下であると、より高い発泡倍率を達成しにくくなるうえ、気泡サイズがばらつきやすく、発泡ビーズ間での発泡倍率のばらつきが大きくなる傾向にある。13質量%以上であると、気泡サイズが小さくなり、過発泡気味になるため独立気泡率が維持されにくくなる傾向にある。
発泡工程における、発泡方法は特に限定されないが、例えば、高圧条件下から一気に低圧雰囲気下に開放し、基材樹脂内に溶解しているガスを膨張させる方法や、加圧水蒸気等により加熱し、基材樹脂内に溶解したガスを膨張させる方法等が挙げられる。この中でも特に、加熱発泡させる方法が好ましい。これは、高圧条件下から一気に低圧雰囲気下に開放する方法に比べると、発泡ビーズ内部の気泡サイズが均一になりやすいからである。また、発泡倍率の制御、特に低発泡倍率品の制御が行いやすい利点がある。
加圧水蒸気は、例えば、発泡炉の下部から多数の蒸気孔より導入し、樹脂を攪拌羽により攪拌することで、より均一かつ効率的に発泡させることができる。攪拌羽の回転数は、20〜120rpmが好ましく、50〜90rpmがより好ましい。回転数が20rpm以下であると均一に加圧水蒸気が当たらず発泡制御が困難であったりブロッキング等の不具合が起こったりする傾向であり、120rpm以上であると発泡時のビーズが攪拌羽によりダメージを受け、独立気泡率が低下したり、所望の発泡倍率が得られない傾向にある。
発泡ビーズを所望の発泡倍率まで発泡させる際、発泡工程において、一段階で所望の発泡倍率まで発泡させてもよく、二次発泡、三次発泡と、多段階で発泡させてもよい。多段階で発泡させる場合、各段階での発泡前に予備ビーズ(最終段階の発泡を行っていないビーズ等をいう)に無機ガスで加圧処理を行うことが好ましい。加圧処理に用いるガスは特には限定されないが、難燃性やガスの安全性の観点から無機ガスが好ましい。無機ガスの例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等が挙げられ、取り扱いの容易さと経済性の観点から、炭酸ガスや空気が好ましいが、それに限定されるものではない。加圧処理の方法も特には限定されないが、加圧タンク内に予備ビーズを充填し、該タンク内に無機ガスを供給して加圧する方法等が挙げられる。
発泡ビーズに含まれる脂肪族炭化水素系ガスの濃度を1000ppm以下とするには、例えば、発泡剤として無機ガスを用いることや、発泡ビーズを高温(例えば、40℃〜80℃の間で任意に設定することができる)条件下に長時間置き残存するガスを放出させる「熟成工程」を経ることにより行うことができる。
成形工程では、発泡ビーズを一般的な成形加工方法により成形することができる。
成形加工方法の例として、成形型内に発泡ビーズを充填し、加熱することにより発泡させると同時にビーズ同士を融着させた後、冷却により固化させ、成形する方法が挙げられるがこれに限定されない。発泡ビーズの充填方法は特には限定されないが、例として充填時に金型を多少開いた状態で充填するクラッキング法や、金型を閉じたままの状態で加圧して圧縮したビーズを充填する圧縮法、圧縮ビーズを充填後にクラッキングを行う圧縮クラッキング法等が挙げられる。
発泡ビーズを充填する前に無機ガス雰囲気下で加圧処理を施す加圧工程を行うことが好ましい。加圧処理を施すことにより、発泡ビーズ内の気泡に一定のガス圧力を付与でき、より均一に発泡成形しやすくなるためである。加圧処理を実施する場合の圧力源は特には限定されないが、前述した難燃性や耐熱性、寸法安定性の観点から無機ガスを用いるのが好ましい。無機ガスの例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等が挙げられ、取り扱いの容易さと経済性の観点から、炭酸ガスや空気が好ましいが、それに限定されるものではない。加圧処理の方法も特には限定されないが、加圧タンク内に発泡ビーズを充填し、該タンク内に無機ガスを供給して加圧する方法等が挙げられる。
成形工程で発泡ビーズを使用することにより、公知の型内成形方法により微細な形状や複雑な形状の成形体も製造することが可能であり、使用できる用途の幅が広がることも特徴である。
例えば、従来の発泡ビーズを型内成形する一対の成形型を用い、加圧大気圧下又は減圧下に発泡ビーズを成形型キャビティー内に充填し、型閉めし成形型キャビティー体積を0〜70%減少するように圧縮し、次いで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる減圧成形法による方法(例えば、特公昭46−38359号公報)、発泡ビーズを加圧気体により、予め加圧処理して発泡ビーズ内の圧力を高めて、発泡ビーズの二次発泡性を高め、二次発泡性を維持しつつ大気圧下又は減圧下に発泡ビーズを成形型キャビティー内に充填し型閉めし、次いで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51−22951号公報)等により成形する。
また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧したキャビティー内に、当該圧力以上に加圧した発泡ビーズを充填した後、キャビティー内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる圧縮充填成形法(特公平4−46217号公報)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡ビーズを、大気圧下又は減圧下の一対の成形型のキャビティー内に充填した後、次いでスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる常圧充填成形法(特公平6−49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6−22919号公報)等によっても成形することができる。
〔樹脂層〕
樹脂層は、未発泡の樹脂からなる層である。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等とすることができるが、多層構造体の剛性をより向上できることから、熱可塑性樹脂とすることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、耐熱ポリスチレン系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら熱可塑性樹脂のうち、加工性、耐熱性をより優れたものにする場合にはポリプロピレン系樹脂が、発泡層との接着性をより向上させる場合にはポリスチレン系樹脂が好ましい。
なお、樹脂層中には、上記以外にも、他の熱可塑性樹脂、上述した難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、顔料、染料、耐候性改良剤、耐衝撃改質剤、ガラスビーズ、無機充填材、タルク等の核剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。特に、多層構造体の難燃性をより向上させる観点から、樹脂層に上述した難燃剤を含むことが好ましい。
樹脂層は、上述した各成分を含んだ樹脂フィルム等に予め成形しておいてもよく、また、上述した各成分を含む樹脂層用溶液を調製しておいてもよい。
樹脂層の厚みは、0.01〜3.0mmが好ましく、0.1〜2.7mmがより好ましく、0.5〜2.5mmがさらに好ましい。樹脂層の厚みがこの範囲にあることにより、多層構造体の剛性がより優れたものとなる。また、発泡層の厚みと樹脂層の厚みとの比は、5000〜1であることが好ましく、500〜5であることがより好ましく、100〜7であることがさらに好ましい。発泡層の厚みと樹脂層の厚みとの比がこの範囲にあることにより、多層構造体の軽量化、難燃性、耐熱性の効果がより一層優れたものとなる。
〔多層構造体の製造方法〕
本発明の多層構造体は、例えば、上述した発泡ビーズ成形体、上述した樹脂フィルム等をそれぞれ製造した後、これらを接着することにより製造することができる。また、上述した発泡ビーズ成形体を製造した後、上述した樹脂層用溶液を発泡ビーズ成形体に塗布又は浸漬することにより製造することもできる。
樹脂フィルム等(樹脂層)と発泡ビーズ成形体(発泡層)との接着は、熱融着や接着剤を使用し行われるが、これに限定されるものではない。
熱融着は、樹脂フィルムに用いられている樹脂と発泡ビーズ成形体に用いられている樹脂とが、互いに接着性の良い樹脂同士である場合に行うことが好ましい。具体的には、樹脂フィルム及び発泡ビーズ成形体を、融着可能な程度にまで溶融させた後、互いに接触させて接着することができる。また、接着性のあまり良くない樹脂同士である場合においても、コロナ処理等によるアンカー効果により、樹脂フィルム等(樹脂層)と発泡ビーズ成形体(発泡層)とをより強固に接着させることが可能である。また、物理的な切削加工等により発泡ビーズ成形品表面を荒らすことにより、より強固に接着させることも可能である。
樹脂層と発泡層との接着に用いられる接着剤としては、樹脂同士を接着可能なものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系等を用いることができる。
本発明の多層構造体は、軽量、かつ優れた耐熱性、剛性、難燃性を有しているため、自動車の部材(例えば、デッキボード)として特に有用である。また、各種タンク等の高温環境下で使用し、難燃性や断熱性を必要とする部材にも利用可能であり、パソコンやOA機器等の難燃性だけでなく、高温環境下での寸法精度が求められる微細、かつ複雑な部材にも利用可能となり、同時に軽量化も満足するために、非常に有用である。
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)密度
発泡体(発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体)の重量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cc)を測定し、その重量を体積で除した値W/V(g/cc)を密度とした。
(2)発泡倍率
発泡体(発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体)の重量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cc)を測定し、その体積を重量で除した値V/W(cc/g)を発泡倍率とした。
(3)独立気泡率
発泡倍率(cc/g)が既知の発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の真の容積(Vx)を、ベックマン(株)製の空気比較式比重計を用いて測定し、下記式により独立気泡率:S(%)を算出した。
Figure 0005722067

Vx:発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の真の容積(cm
Va:発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の容積(発泡倍率×重量)(cm
W :発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の重量(g)
ρ :発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の基材樹脂の密度(g/cm
(4)脂肪族炭化水素系ガスの濃度
発泡体(発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体)試料を適量ヘッドスペースボトルに仕込み、発泡体試料軟化点以上の温度で約1時間加熱した。その後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC14B)により、ヘッドスペースボトル内のガスを定量した。キャリアガスとしてヘリウム(He)を用い、定流量モード(約30ml/mim)で制御した。また、カラム(PorapakQ、80/100mesh、3.2mmφ×2.1m)を50〜150℃で昇温、保持を行い、熱伝導度型検出器(TCD)により検出を行った。検出したエリア面積と標準ガス試料で作成した検量線とから脂肪族炭化水素系ガスの体積を算出し、発泡体試料の体積で除して、脂肪族炭化水素系ガスの濃度(ppm)を算出した。なお、表1及び表2においては、「脂肪族炭化水素系ガスの濃度」を単に「ガス濃度」と表記する。
(5)難燃性
米国UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠した試験を行い、難燃性の評価を行った。以下測定方法を示す。
得られた発泡体(発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体)を、長さ125mm、幅13mm、厚さ3mmの試験片に成形し、該試験片を5本用いて判定した。試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりV−0、V−1、V−2、不適合の判定を行った。下記に該当しないものは不適合(×)とした。
V−0:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は10秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試験片がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V−1:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試験片がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V−2:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試験片がない、燃焼落下物による綿着火有り。
(6)加熱寸法変化率
成形直後の発泡ビーズ成形体について、JIS K6767の寸法安定性評価・B法に準拠した試験を行い、加熱寸法変化率を評価した。評価温度は100℃とした。
(7)成形加工性
発泡ビーズ成型加工性は、クルツ社製成形機K−68にて発泡ビーズから平板(300mm×300mm×17mm)成形を行って評価した。得られた発泡ビーズ成形体が、その表面に隙間がなく、発泡ビーズ同士がしっかり融着し、板状であったものを○、表面に隙間があるか、又は板状でなかったものを×とした。
多層構造体成形加工性は、目視にて確認し、発泡ビーズ成形体と樹脂層の界面が隙間なく、しっかり癒着しているものを○、界面に隙間があるか、又は剥がれがあるなど融着が不十分なものを×とした。
(8)荷重たわみ温度(HDT)
JIS K7191フラットワイズB法に準拠した試験により発泡ビーズ成形体を評価した。具体的には、発泡ビーズ成形体からサンプルサイズ12.7mm×127mm×6.4mmの試験片を作製し、支点間距離64mm、荷重0.45MPaをかけながら30℃から昇温速度2℃/minにて昇温し、たわみ0.34mmに達したときの温度をHDTとして評価した。
(9)平均粒子径
発泡ビーズの平均粒子径は次のようにして求めた。発泡ビーズの光学顕微鏡写真から各発泡ビーズの長径と短径を求め、長径と短径の平均値を各発泡ビーズの粒子径(mm)とした。ランダムに選択した5〜10個の発泡ビーズについて上記粒子径を求め、その平均値を平均粒子径(mm)とした。
(10)曲げ弾性率
JIS K7221に準拠し、多層構造体の曲げ弾性率(MPa)を求めた。具体的には、温度23℃、相対湿度50%に制御した室内に24時間静置して状態調整した多層構造体をAUTOGRAPH AG−5000D(島津株式会社製)での測定に供し、JISに規定する計算式から曲げ弾性率を算出した。
(11)多層構造体の難燃性
作成した多層構造体サンプルに対して、UL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠した試験を実施し、長さ125mmのサンプルが燃え尽きるまでの時間を測定した。燃え尽きるまでの時間が120秒以上、又は途中で消火したものを○、120秒未満のものを×とした。
[実施例1]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)(商品名:ザイロンTYPE S201A、旭化成ケミカルズ(株)製)を60質量%、非ハロゲン系難燃剤(ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP))を18質量%、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)10質量%(基材樹脂中のゴム成分含有量は0.6質量%)及び汎用ポリスチレン樹脂(PS)(商品名:GP685、PSジャパン(株)製)を12質量%加え、押出機にて加熱溶融混練の後に押し出し、基材樹脂ペレットを作製した。特開平4−372630の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.2MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて基材樹脂ペレットに対して二酸化炭素を7質量%含浸させ、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽を77rpmにて回転させながら加圧水蒸気により発泡させた。得られた発泡ビーズの発泡倍率及び独立気泡率を表1に示す。この発泡ビーズの脂肪族炭化水素系ガスの濃度を発泡直後に測定したが、検出限界(50ppm)以下であった。
この発泡ビーズを0.5MPaまで1時間かけて昇圧し、その後0.5MPaで8時間保持し、加圧処理を施した。これを、水蒸気孔を有する型内成形金型内に充填し、加圧水蒸気で加熱して発泡ビーズ相互を膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出し、発泡ビーズ成形体を得た。得られた発泡ビーズ成形体の脂肪族炭化水素系ガスの濃度を測定したが、検出限界(50ppm)以下であった。この発泡ビーズ成形体の難燃性はV―0であり、耐熱性も良好であった(表1)。
この発泡ビーズ成形体の両面に、樹脂フィルムを熱融着させ、多層構造体を製造した。なお、樹脂フィルムとして、ポリプロピレン系樹脂(商品名:MA3、日本ポリプロ(株)製)を用いて作製した厚さ約2mmのフィルムを使用した。この多層構造体は良好な曲げ弾性率、難燃性を示した(表1)。
[実施例2]
ポリプロピレン系樹脂に代えて汎用ポリスチレン樹脂(商品名:GP685、PSジャパン(株)製)を用いて樹脂層を作製したこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。実施例2の発泡ビーズ成形体は、実施例1と同様に優れた難燃性、耐熱性を示した(表1)。また、実施例2の多層構造体は、実施例1と同様に良好な曲げ弾性率、難燃性を示した(表1)。
[実施例3]
ポリプロピレン系樹脂に代えて難燃HIPS樹脂(商品名:VS718、PSジャパン(株)製)を用いて樹脂層を作製したこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。実施例3の発泡ビーズ成形体は、実施例1と同様に優れた難燃性、耐熱性を示した(表1)。また、実施例3の多層構造体は、実施例1と同様に良好な曲げ弾性率、難燃性を示した(表1)。
[実施例4〜7]
BBPに代えてトリフェニルホスフェート(TPP)を難燃剤として用いたこと、ゴム濃度が6質量%のHIPSに代えてゴム濃度が19質量%のHIPSを用いたこと、各成分の組成、及び発泡倍率を表1に示したとおり変更したこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。なお、実施例7については、BBPとTPPを併用した。実施例4〜7の発泡ビーズ成形体は、実施例1と同様に優れた難燃性、耐熱性を示した(表1)。また、実施例4〜7の多層構造体は、良好な曲げ弾性率、難燃性を示した(表1)。
[実施例8]
炭酸ガスに代えてn−ブタンを発泡剤として用いたこと以外は実施例4と同様にして製造及び評価を行った。ただし、発泡ビーズの脂肪族炭化水素系ガスの濃度については、発泡後、発泡ビーズを80℃で6ヶ月間熟成させてから測定を行った。その結果、800ppmであった。
実施例8の発泡ビーズ成形体の性能評価を実施したところ、燃焼時間は他の実施例の発泡ビーズ成形体に比べ長くなるものの、V−1の基準を満たしており、難燃性に優れたものであった。また、実施例8の発泡ビーズ成形体は、他の実施例の発泡ビーズ成形体と同様に、優れた耐熱性を示した(表1)。さらに実施例8の多層構造体は、他の実施例の多層構造体と同様に良好な曲げ弾性率、難燃性を示した(表1)。
[実施例9]
PPEに代えてポリカーボネート系樹脂(PC)(商品名:FPR3000、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を用いたこと、HIPS及びPSを用いなかったこと、各成分の組成、及び発泡倍率を表1に示したとおり変更したこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。基材樹脂にポリカーボネート系樹脂を使用しても、発泡ビーズ成形体の難燃性、発泡性及び耐熱性、並びに多層構造体の曲げ弾性率、難燃性について、どの性能も低下することなく、良好であった(表1)。
[実施例10]
PCに代えてポリカーボネート系樹脂(PC/ABS)(商品名:MB3800、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)を用いたこと以外は実施例9と同様にして製造及び評価を行った。実施例10の発泡ビーズ成形体は、実施例9の発泡ビーズ成形体と同様に優れた難燃性、耐熱性を示した(表1)。また、実施例10の多層構造体は、実施例9の多層構造体と同様に、良好な曲げ弾性率、難燃性を示した(表1)。
[比較例1〜5]
ゴム濃度が6質量%のHIPSに代えてゴム濃度が19質量%のHIPSを用いたこと、各成分の組成、及び発泡倍率を表2に示したとおり変更したこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。
比較例1の発泡ビーズ成形体は、ポリフェニレンエーテル系樹脂比率が低いため、低発泡倍率においても難燃性はV−2にも満たず、熱寸法安定性(加熱寸法変化率)も著しく劣る結果となった。
比較例2では、ポリフェニレンエーテル系樹脂比率が高すぎるため、基材樹脂ペレット作製時の押し出しにおいて熱劣化による異物が多発し、評価に値する発泡ビーズ成形体が得られなかった。
比較例3の発泡ビーズ成形体は、難燃剤の量が少なすぎるため、難燃性がほとんど発現しなかった。
比較例4では、難燃剤が多すぎるため、発泡ビーズの独立気泡率が大幅に低下し、発泡ビーズ成形体が得られなかった。
比較例5では、ゴム成分を全く用いていないため、樹脂の柔軟性、伸び不足によるセル膜の破膜が発生し、成形加工性が低下してしまい、良好な発泡ビーズ成形体が得られなかった。
[比較例6〜7]
脂肪族炭化水素系ガスの濃度の評価を行うまでの発泡ビーズの熟成条件を変更したこと以外は実施例7と同様にして製造及び評価を行った。
比較例6は、発泡ビーズを40℃で半年間熟成させてから、脂肪族炭化水素系ガスの濃度を測定した。その結果、1320ppmであった。比較例6の発泡ビーズ成形体の難燃性評価を実施したところ、燃焼時の樹脂だれは発生しないが、燃焼時間が長く、V−0、V−1、V−2のいずれにも該当せず、不適合であった。
比較例7は、発泡ビーズを40℃で3ヶ月間熟成させてから、脂肪族炭化水素系ガスの濃度を測定した。その結果、15380ppmであった。比較例7の発泡ビーズ成形体の難燃性評価を実施したところ、サンプルは炎を上げ燃え尽きた。また、熱寸法安定性にも劣る結果となった。
[比較例8〜9]
発泡ビーズ成形体に代えて、表2に示した成分及び組成で調製した基材樹脂を未発泡のまま加熱プレスで成形したプレス成形体を用いたこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。
未発泡のポリフェニレンエーテル系樹脂S201A及びTPPからなる基材樹脂を使用した比較例8のプレス成形体は、難燃性、耐熱性は良好なものの、軽量化は達成されなかった。また、硬いために微細、かつ複雑な形状には成形困難であり、多層構造体を得ることができなかった。
未発泡のポリカーボネート系樹脂MB3800及びBBPからなる基材樹脂を使用した比較例9のプレス成形体は、難燃性、耐熱性は良好なものの、軽量化は達成されなかった。また、硬いために微細、かつ複雑な形状には成形困難であり、多層構造体を得ることができなかった。
[比較例10]
発泡ビーズに代えて、表2に示した成分及び組成で調製した基材樹脂を未発泡のまま加熱プレスでフィルム状(サンプルサイズ:300μm×150mm×150mm)に成形したフィルム成形体を用いたこと以外は実施例1と同様にして製造及び評価を行った。
発泡ビーズに代えてフィルム成形体を発泡に用いた場合、発泡はするものの、複雑形状の金型への充填は困難であり、微細、かつ複雑な形状には成形不可能であった。また、難燃性評価を実施したところ、サンプルは炎を上げ燃え尽きた。
Figure 0005722067
Figure 0005722067
本発明の多層構造体は、軽量化と同時に高い難燃性と耐熱性、剛性を維持し、特に自動車部材やOA機器の構造材として好適である。

Claims (8)

  1. UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である発泡ビーズ成形体からなる発泡層と、少なくとも一層の樹脂層とを備える多層構造体であって、
    前記発泡ビーズ成形体が、ポリフェニレンエーテル系樹脂40〜94質量%、難燃剤5〜20質量%、及びゴム成分0.3〜10質量%を含有し、残部がポリスチレン系樹脂からなる基材樹脂からなる、
    多層構造体
  2. UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である発泡ビーズ成形体からなる発泡層と、少なくとも一層の樹脂層とを備える多層構造体であって、
    前記発泡ビーズ成形体が、ポリカーボネート系樹脂、及び難燃剤を含む基材樹脂からなる、
    多層構造体。
  3. 前記基材樹脂が、更にポリスチレン系樹脂を含有する、請求項に記載の多層構造体。
  4. 前記基材樹脂が、更にゴム成分を含有する、請求項2又は3に記載の多層構造体。
  5. 前記発泡層における脂肪族炭化水素系ガスの濃度が1000体積ppm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層構造体。
  6. 前記難燃剤が非ハロゲン系難燃剤である、請求項のいずれか一項に記載の多層構造体。
  7. 前記樹脂層が、熱可塑性樹脂からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の多層構造体。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の多層構造体を用いた自動車用デッキボード。
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