JP5720963B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、三相ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置に関する。三相ブラシレスモータは、たとえば、電動パワーステアリング装置における操舵補助力の発生源として利用される。
電動パワーステアリング装置に使用されているブラシレスモータの駆動回路は、FET(Field Effect Transistor)などのスイッチング素子を含んでいる。スイッチング素子に故障が発生すると、ステアリングホイールを操作するときにブラシレスモータが負荷となり、操舵が重くなるおそれがある。このような問題に対処するために、ブラシレスモータと駆動回路との結線にリレーが挿入されている。たとえば、三相ブラシレスモータの場合には、二相のモータ結線にそれぞれリレーを挿入し、無制御時およびスイッチング素子の故障時には、それらのリレーをオフするようにしている。
特開2009-35155号公報 特開2008-99394号公報
上記の先行技術では、モータ駆動回路内のスイッチング素子が故障した時には、リレーをオフしているため、ブラシレスモータを駆動することができない。そのため、電動パワーステアリング装置においては、操舵補助力(アシスト力)を発生させることができない。
この発明の目的は、三相ブラシレスモータの駆動回路内の1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に、三相ブラシレスモータを駆動することが可能となるモータ制御装置を提供することである。
この発明による第1のモータ制御装置は、ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータ(18)を制御するためのモータ制御装置であって、2個のスイッチング素子(31UH,31UL;31VH,31VL;31WH,31WL)が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源(33)と接地(34)との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオード(32UH,32UL,32VH,32VL,32WH,32WL)が並列に接続されている駆動回路(30)と、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域を、制御可能領域として特定する制御可能領域特定手段(41)とを含む。
前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において前記三相ブラシレスモータのロータが回転されたときに、2つの正常相のいずれにも負荷電流が流れないロータ回転角領域を可能領域とし、2つの正常相のうちのいずれか一方にのみ負荷電流が流れるロータ回転角領域を不定領域とし、2つの正常相の両方に負荷電流が流れるロータ回転角領域を不可領域とすると、前記可能領域および前記不定領域からなる領域または前記可能領域を前記制御可能領域として特定するように構成されている。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
この構成では、複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域が、制御可能領域として特定される。これにより、複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障した場合にも、三相ブラシレスモータを駆動することが可能となる。
複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子、たとえば、V相のローサイドスイッチング素子(31VL)が短絡故障したとする。この場合には、V相が故障相となり、他の2つの相、すなわち、U相およびW相が正常相となる。短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において三相ブラシレスモータのロータが回転されると、ロータが或る第1の回転角領域にあるときに、短絡故障したスイッチング素子(31VL)と、一方の正常相であるU相のローサイドスイッチング素子(31UL)に並列接続された回生ダイオード(32UL)とによって形成される第1の閉回路(61。図3参照)に負荷電流が流れる。また、ロータが或る第2の回転角領域にあるときに、短絡故障したスイッチング素子(31VL)と、他方の正常相であるW相のローサイドスイッチング素子(31WL)に並列接続された回生ダイオード(32WL)とによって形成される第2の閉回路(62。図3参照)に負荷電流が流れる。前記第1の回転角領域と前記第2の回転角領域の一部は重複しており、その重複領域においては、U相およびW相の両方に負荷電流が流れる。
そこで、たとえば、V相のローサイドスイッチング素子(31VL)が短絡故障した場合には、2つの正常相であるU相およびW相の両方に負荷電流が流れるロータ回転角領域が「不可領域」として特定され、一方の正常相であるU相にのみ負荷電流が流れるロータ回転角領域と他方の正常相であるW相にのみ負荷電流が流れるロータ回転角領域とが「不定領域」として特定され、いずれの正常相にも負荷電流が流れないロータ回転角領域が「可能領域」として特定される。そして、「可能領域」および「不定領域」からなる領域または「可能領域」が「制御可能領域」として特定される。
この発明による第2のモータ制御装置は、ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータ(18)を制御するためのモータ制御装置であって、2個のスイッチング素子(31 UH ,31 UL ;31 VH ,31 VL ;31 WH ,31 WL )が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源(33)と接地(34)との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオード(32 UH ,32 UL ,32 VH ,32 VL ,32 WH ,32 WL )が並列に接続されている駆動回路(30)と、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域を、制御可能領域として特定する制御可能領域特定手段(41)とを含み、前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態での各相の相電圧に基づいて、前記制御可能領域を特定するように構成されている。この構成では、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態での各相の相電圧(誘起電圧)に基づいて、制御可能領域が特定される。
たとえば、V相のローサイドスイッチング素子(31VL)が短絡故障した場合には、正常相(U相、W相)の両方の相電圧(V,V)が、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧(V)以下となるロータ回転角領域(前記第1および第2の閉回路(61,62)のいずれにも負荷電流が流れる領域)が「不可領域」として特定される。また、正常相(U相、W相)の両方の相電圧(V,V)が、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧(V)より大きくなるロータ回転角領域(前記第1および第2の閉回路(61,62)のいずれにも負荷電流が流れない領域)が「可能領域」として特定される。また、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電圧が短絡故障相(この例ではV相)の相電圧(V)より大きくなり、かつ正常相の他方の相電圧が短絡故障相の相電圧(V)以下となるロータ回転角領域(前記第1および第2の閉回路(61,62)のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる領域)が「不定領域」として特定される。そして、「可能領域」および「不定領域」からなる領域または「可能領域」が「制御可能領域」として特定される。
一方、V相のハイサイドスイッチング素子(31VH)が短絡故障した場合には、正常相(U相、W相)の両方の相電圧(V,V)が、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧(V)以上となるロータ回転角領域(図4に示される第3および第4の閉回路(63,64)のいずれにも負荷電流が流れる領域)が「不可領域」として特定される。また、正常相(U相、W相)の両方の相電圧(V,V)が、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧(V)より小さくなるロータ回転角領域(前記第3および図4の閉回路(63,64)のいずれにも負荷電流が流れない領域)が「可能領域」として特定される。また、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電圧が短絡故障相(この例ではV相)の相電圧(V)より小さくなり、かつ正常相の他方の相電圧が短絡故障相の相電圧(V)以上となるロータ回転角領域(前記第3および図4の閉回路(63,64)のうちいずれか一方にのみ負荷電流が流れる領域)が「不定領域」として特定される。そして、「可能領域」および「不定領域」からなる領域または「可能領域」が、「制御可能領域」として特定される。
この発明による第3のモータ制御装置は、ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータ(18)を制御するためのモータ制御装置であって、2個のスイッチング素子(31 UH ,31 UL ;31 VH ,31 VL ;31 WH ,31 WL )が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源(33)と接地(34)との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオード(32 UH ,32 UL ,32 VH ,32 VL ,32 WH ,32 WL )が並列に接続されている駆動回路(30)と、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域を、制御可能領域として特定する制御可能領域特定手段(41)とを含み、前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態での各相の相電流に基づいて、前記制御可能領域を特定するように構成されている。この構成では、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態での各相の相電流に基づいて、制御可能領域が特定される。
たとえば、V相のローサイドスイッチング素子(31VL)が短絡故障した場合には、正常相であるU相およびW相の両方の相電流(I,I)が零より大きくなるロータ回転角領域(前記第1および第2の閉回路(61,62)のいずれにも負荷電流が流れる領域)が「不可領域」として特定される。また、正常相であるU相およびW相の両方の相電流(I,I)が零以下となるロータ回転角領域(前記第1および第2の閉回路(61,62)のいずれにも負荷電流が流れない領域)が「可能領域」として特定される。また、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電流の極性が零以下となり、かつ正常相の他方の相電流が零より大きくなるロータ回転角領域(前記第1および第2の閉回路(61,62)のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる領域)が「不定領域」として特定される。そして、「可能領域」および「不定領域」からなる領域または「可能領域」が、「制御可能領域」として特定される。
一方、V相のハイサイドスイッチング素子(31VH)が短絡故障した場合には、正常相であるU相およびW相の両方の相電流(I,I)が零より小さくなるロータ回転角領域(前記第3および第4の閉回路(63,64)のいずれにも負荷電流が流れる領域)が「不可領域」として特定される。また、正常相であるU相およびW相の両方の相電流(I,I)が零以上となるロータ回転角領域(前記第3および第4の閉回路(63,64)のいずれにも負荷電流が流れない領域)が「可能領域」として特定される。また、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電流の極性が零以上となり、かつ正常相の他方の相電流が零より小さくなるロータ回転角領域(前記第3および第4の閉回路(63,64)のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる領域)が「不定領域」として特定される。そして、「可能領域」および「不定領域」からなる領域または「可能領域」が、「制御可能領域」として特定される。
この発明の一実施形態では、前記第2または第3のモータ制御装置における前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において前記三相ブラシレスモータのロータが回転されたときに、2つの正常相のいずれにも負荷電流が流れないロータ回転角領域を可能領域とし、2つの正常相のうちのいずれか一方にのみ負荷電流が流れるロータ回転角領域を不定領域とし、2つの正常相の両方に負荷電流が流れるロータ回転角領域を不可領域とすると、前記可能領域および前記不定領域からなる領域または前記可能領域を前記制御可能領域として特定するように構成されている。
この発明の一実施形態では、前記第1のモータ制御装置における前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置から制御可能領域を特定するための情報とに基づいて、制御可能領域を特定するように構成されている。この構成では、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置から制御可能領域を特定するための情報とに基づいて、制御可能領域が特定される。
たとえば、スイッチング素子毎に、そのスイッチング素子が短絡故障した場合に対応する「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を記憶したマップが予め作成される。短絡故障時には、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と前記マップとに基づいて、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」が特定される。そして、「可能領域」および「不定領域」からなる領域または「可能領域」が、「制御可能領域」として特定される。
この発明の一実施形態では、前記第1のモータ制御装置における前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、前記三相ブラシレスモータの回転方向と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置および前記三相ブラシレスモータの回転方向から制御可能領域を特定するためのマップとに基づいて、制御可能領域を特定するように構成されている。
前記マップは、たとえば、前記三相ブラシレスモータの回転方向および前記スイッチング素子別に、各スイッチング素子が短絡故障した場合に対応する制御可能領域を表すものであってもよい。
前記マップは、たとえば、前記三相ブラシレスモータが正転および逆転のいずれか一方の回転方向に回転されているときに、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれか1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に対応する制御可能領域を表すものであってもよい。この場合、前記制御可能領域特定手段は、たとえば、請求項9に記載されているように、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報、前記三相ブラシレスモータの回転方向および前記マップに基づいて、前記マップによって表されている制御可能領域を、前記短絡故障したスイッチング素子の位置および前記三相ブラシレスモータの回転方向に対応した制御可能領域に変換する手段を含んでいてもよい。
この発明の一実施形態では、前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、短絡故障したスイッチング素子の位置を特定するための故障箇所特定手段(41,S12)と、ロータ回転角が前記制御可能領域にあるときに、前記正常相によって前記三相ブラシレスモータを駆動するモータ制御手段(41,43,S15)とをさらに含む。
複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、短絡故障したスイッチング素子の位置が特定される。たとえば、短絡故障したスイッチング素子の位置に基づいて、三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域が、制御可能領域として特定される。そして、ロータ回転角が制御可能領域にあるときに、三相ブラシレスモータが駆動される。これにより、複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときにおいても、三相ブラシレスモータを駆動させることが可能となる。
本発明における上述の、またはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された、電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。 図2は、モータ制御装置としてのECUの電気的構成を示すブロック図である。 図3は、ローサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。 図4は、ハイサイドFETが短絡故障した場合に負荷電流が流れる閉回路を示す電気回路図である。 図5は、短絡故障が発生したときの制御部の動作を示すフローチャートである。 図6は、図5のステップS2の詳細な手順を示すフローチャートである。 図7Aは、制御可能領域の特定方法(第1方法)を説明するための説明図である。 図7Bは、制御可能領域の特定方法(第1方法)を説明するための説明図である。 図8Aは、制御可能領域の特定方法(第2方法)を説明するための説明図である。 図8Bは、制御可能領域の特定方法(第2方法)を説明するための説明図である。 図9は、制御可能領域の特定方法(第3方法)を説明するための説明図である。 図10は、制御可能領域の特定方法(第3方法)を説明するための説明図である。 図11Aは、制御可能領域の特定方法(第3方法)を説明するための説明図である。 図11Bは、制御可能領域の特定方法(第3方法)を説明するための説明図である。 図12は、制御可能領域の特定方法(第4方法)を説明するための説明図である。 図13は、制御可能領域において120°矩形駆動方式によって電動モータを駆動するときの、各FETのオン・オフのタイミングを説明するための説明図である。 図14Aは、U相のハイサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図14Bは、V相のハイサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図14Cは、W相のハイサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。 図15Aは、U相のローサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図15Bは、V相のローサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図15Cは、W相のローサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。 図16Aは、U相のハイサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図16Bは、V相のハイサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図16Cは、W相のハイサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。 図17Aは、U相のローサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図17Bは、V相のローサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。図17Cは、W相のローサイドFETが短絡故障しており、かつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、電動モータが逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサの出力信号の理論値を示すグラフである。 図18は、短絡故障FETの特定処理の変形例の手順を示すフローチャートである。
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された、電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
ステアリングシャフト6は、直線状に延びている。また、ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2が回転されると、入力軸8および出力軸9は、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクを検出する。トルクセンサ11によって検出される操舵トルクは、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12に入力される。また、ECU12には、車速センサ23によって検出される車速が入力される。
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が連結されている。
ラック軸14は、自動車の左右方向(直進方向に直交する方向)に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同方向に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸2を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
電動モータ18は、モータ制御装置としてのECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルク、車速センサ23によって検出される車速等に基づいて、電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、操舵トルクと目標アシスト量との関係を車速ごとに記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力が目標アシスト量に近づくように制御する。
図2は、モータ制御装置としてのECU12の電気的構成を示す概略図である。電動モータ18は、U相界磁コイル18U、V相界磁コイル18V、W相界磁コイル18Wを有するステータと、これらの界磁コイル18U,18V,18Wからの反発磁界を受ける永久磁石が固定されたロータとを備えている。
ECU12は、電動モータ18の駆動電力を生成する駆動回路30と、駆動回路30を制御するための制御部40とを備えている。制御部40は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を記憶したメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリ等)とを含むマイクロコンピュータで構成されている。
駆動回路30は、三相ブリッジインバータ回路である。この駆動回路30では、電動モータ18のU相に対応した一対のFET(電界効果トランジスタ)31UH,31ULの直列回路と、V相に対応した一対のFET31VH,31VLの直列回路と、W相に対応した一対のFET31WH,31WLの直列回路とが、直流電源33と接地34との間に並列に接続されている。また、各FET31UH〜31WLには、それぞれ回生ダイオード32UH〜32WLが、接地34側から直流電源33側に順方向電流が流れるような向きで、並列に接続されている。
以下において、各相の一対のFETのうち、電源側のものを「ハイサイドFET」または「上段FET」といい、接地34側のものを「ローサイドFET」または「下段FET」という場合がある。また、6つのFET31UH〜31WLを総称するときには、「FET31」ということにする。同様に、6つの回生ダイオード32UH〜32WLを総称するときには、「回生ダイオード32」ということにする。
電動モータ18のU相界磁コイル18Uは、U相に対応した一対のFET31UH,31ULの間の接続点に接続されている。電動モータ18のV相界磁コイル18Vは、V相に対応した一対のFET31VH,31VLの間の接続点に接続されている。電動モータ18のW相界磁コイル18Wは、W相に対応した一対のFET31WH,31WLの間の接続点に接続されている。各相の界磁コイル18U,18V,18Wと駆動回路30とを接続するための各接続線には、各相の相電流I,I,Iを検出するための電流センサ51,51,51が設けられている。電動モータ18側には、ロータの回転角(電気角)を検出するためのレゾルバ等の回転角センサ52が設けられている。
制御部40は、メモリに格納された所定の動作プログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、制御可能領域特定部41と、正弦波駆動部42と、短絡故障時用駆動部43とが含まれる。
正弦波駆動部42は、故障が発生していない通常時において、各FET31を制御することにより、電動モータ18を180°通電正弦波駆動するものである。正弦波駆動部42には、回転角センサ52によって検出されるロータ回転角(電気角)と、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクと、車速センサ23によって検出される車速と、電流センサ51,51,51によって検出される各相の相電流I,I,Iが入力される。
正弦波駆動部42は、たとえば、操舵トルクと目標アシスト量(電流目標値)との関係を車速毎に記憶したマップと、トルクセンサ11によって検出された操舵トルクと、車速センサ23によって検出された車速とに基づいて、目標アシスト量を決定する。そして、正弦波駆動部42は、目標アシスト量と、電流センサ51,51,51によって検出される各相の相電流I,I,Iと、回転角センサ52によって検出されるロータ回転角(電気角)とに基づいて、電動モータ18の発生するアシスト力(トルク)が目標アシスト量に近づくように、各FET31をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
制御可能領域特定部41は、電動モータ18の異常が検出されたときに、電動モータ18の駆動を停止させるための制御と、FET31に短絡故障が発生しているか否かの判定と、FET31に短絡故障が発生している場合に短絡故障が発生しているFET位置の特定と、制御可能領域の特定とを行う。制御可能領域とは、6つのFET31UH〜31WLのうちの1つのFETが短絡故障した場合に、電動モータ18を駆動することが可能なロータ回転角領域(電気角領域)をいう。
6つのFET31UH〜31WLのうちの1つのFETが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態でロータが回転されたときには、電気角によっては、短絡故障したFETと、正常なFETに並列接続された回生ダイオードとによって形成される閉回路に負荷電流が流れる。この実施形態では、制御可能領域特定部41は、2つの正常相のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域を「可能領域」として特定し、2つの正常相のうちのいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域を「不定領域」として特定し、2つの正常相の両方に負荷電流が流れる電気角領域を「不可領域」として特定する。
この実施形態では、「可能領域」と「不定領域」とを合わせた領域が、電動モータ18を駆動することが可能な制御可能領域として特定され、「不可領域」が電動モータ18を駆動することが不可能な制御不能領域として特定されることになる。なお、「可能領域」のみを電動モータ18を駆動することが可能な制御可能領域として特定し、「不定領域」と「不可領域」とを合わせた領域を電動モータ18を駆動することが不可能な制御不能領域として特定するようにしてもよい。
図3に示すように、たとえば、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合に、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号61で示す第1の閉回路や符号62で示す第2の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
第1の閉回路61は、短絡故障したV相のローサイドFET31VLと、正常相であるU相のローサイドFET31ULに並列接続された回生ダイオード32ULと、U相界磁コイル18Uと、V相界磁コイル18Vとを含んでいる。一方、第2の閉回路62は、短絡故障したV相のローサイドFET31VLと、正常相であるW相のローサイドFET31WLに並列接続された回生ダイオード32WLと、W相界磁コイル18Wと、V相界磁コイル18Vとを含んでいる。
したがって、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第1の閉回路61および前記第2の閉回路62の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第1の閉回路61および前記第2の閉回路62のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第1の閉回路61および前記第2の閉回路62のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
一方、図4に示すように、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合において、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転されたとする。そうすると、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって、符号63で示す第3の閉回路や符号64で示す第4の閉回路に矢印で示す方向に負荷電流が流れるようになる。
第3の閉回路63は、短絡故障したV相のハイサイドFET31VHと、V相界磁コイル18Vと、U相界磁コイル18Uと、正常相であるU相のハイサイドFET31UHに並列接続された回生ダイオード32UHとを含んでいる。一方、第4の閉回路64は、短絡故障したV相のハイサイドFET31VHと、V相界磁コイル18Vと、W相界磁コイル18Wと、正常相であるW相のハイサイドFET31WHに並列接続された回生ダイオード32WHとを含んでいる。
したがって、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合には、「不可領域」、「可能領域」および「不定領域」は、次のようになる。すなわち、前記第3の閉回路63および前記第4の閉回路64の両方に負荷電流が流れる電気角領域が「不可領域」となる。一方、前記第3の閉回路63および前記第4の閉回路64のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域が「可能領域」となる。そして、前記第3の閉回路63および前記第4の閉回路64のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域が「不定領域」となる。
図3に示すように、V相のローサイドFET31VLが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第1の閉回路61に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるU相の相電圧Vより高い(大きい)ことが必要となる。また、この場合、駆動回路30から電動モータ18に向かって流れる電流の極性を正とすると、正常相であるU相の相電流Iの極性は正となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第2の閉回路62に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるW相の相電圧Vより高いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流Iの極性は正となる。
図4に示すように、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障している場合において、U相界磁コイル18Uを含む第3の閉回路63に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるU相の相電圧Vより低い(小さい)ことが必要となる。また、この場合、正常相であるU相の相電流Iの極性は負となる。同様に、W相界磁コイル18Wを含む第4の閉回路64に矢印で示す方向に負荷電流が流れるためには、短絡故障相であるV相の相電圧Vが正常相であるW相の相電圧Vより低いことが必要となる。また、この場合、正常相であるW相の相電流Iの極性は負となる。
短絡故障時用駆動部43は、制御可能領域特定部41によって特定された「可能領域」および「不定領域」において、電動モータ18を駆動するための処理を行なうものである。
図5は、故障が発生したときの制御部40の動作を示すフローチャートである。
制御可能領域特定部41は、電動モータ18が正弦波駆動部42によって180°通電正弦波駆動されている場合に、電動モータ18に動作不良(故障)が発生したことを検出すると、正弦波駆動部42にモータ停止指令に与える(ステップS1)。正弦波駆動部42は、故障判定部41からのモータ停止指令を受信すると、180°通電正弦波駆動を中止して、全てのFET31をオフにさせる。これにより、電動モータ18が停止する。
この後、制御可能領域特定部41および短絡故障時用駆動部43は、短絡故障時のモータ制御処理を実行する(ステップS2)。短絡故障時のモータ制御処理は、電源オフ指令等の制御停止指令が与えられるまで(ステップS3:YES)、継続して行われる。
図6は、短絡故障時のモータ制御処理の手順を示すフローチャートである。
短絡故障時のモータ制御処理においては、制御可能領域特定部41は、6つのFET31のうちの1つが短絡故障している場合において、短絡故障したFET(短絡故障したFETの位置)が既に特定されているか否かを判別する(ステップS11)。つまり、短絡故障したFETが、3相(U,V,W)のうちのいずれの相のFETであり、かつハイサイドまたはローサイドのうちのいずれのサイドのFETであるかが、既に特定されているか否かが判別される。短絡故障したFETが特定されていない場合には(ステップS11:NO)、制御可能領域特定部41は、各相の相電圧(誘起電圧)V,V,Vに基づいて、短絡故障が発生しているか否か、および短絡故障が発生している場合には短絡故障が発生しているFETを特定するための処理を行なう(ステップS12)。具体的には、制御可能領域特定部41は、まず、一次判定処理を行なう。一次判定処理では、制御可能領域特定部41は、各相の相電圧V,V,Vを取得する。そして、いずれかの相電圧が所定のグランドレベルVG(たとえば0.5[V])以下であるという第1条件を満たしているか否か、およびいずれかの相電圧が所定の電源レベルVB(たとえば5.0[V])以上であるという第2条件を満たしているか否かを調べる。第1条件を満たしている場合には、制御可能領域特定部41は、いずれかの相のローサイドFETが短絡故障であると判定する。第2条件を満たしている場合には、制御可能領域特定部41は、いずれかの相のハイサイドFETが短絡故障であると判定する。第1条件および第2条件のいずれをも満たしていない場合には、制御可能領域特定部41は、短絡故障が発生していないと判別する。
一次判定処理によって短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであるかローサイドFETであるかを特定できた場合には、制御可能領域特定部41は、二次判定処理を行なう。二次判定処理においては、制御可能領域特定部41は、電気角に応じて各FET31を制御することにより、電動モータ18に電流を流す(強制転流制御)。そして、制御可能領域特定部41は、各相の相電圧VU,V,を監視し、それらの電圧波形に基づいて、短絡故障が発生しているFETの相(短絡故障相)を特定する。これにより、短絡故障が発生している一つのFETを特定することができる。
前記ステップS12の処理によって短絡故障が発生しているFETを特定できなかった場合(短絡故障が発生していないと判定した場合も含まれる)には(ステップS13:NO)、図5のステップS3に移行する。ステップS3で、制御終了指令が与えられていない場合には、ステップS11に戻る。なお、前記ステップS12の処理の開始時点において短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであるかローサイドFETであるかが既に特定されている場合には、制御可能領域特定部41は、一次判定処理を行なうことなく、二次判定処理を開始する。
前記ステップS12の処理によって短絡故障が発生しているFETを特定できた場合には(ステップS13:YES)、制御可能領域特定部41は、制御可能領域特定処理を行なう(ステップS14)。具体的には、制御可能領域特定部41は、短絡故障が発生しているFETおよび電動モータ18を回転すべき方向に対応した、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。電動モータ18を回転すべき回転方向は、後述するように、たとえば、トルクセンサ11の出力信号に基づいて決定される。制御可能領域特定処理の詳細については、後述する。制御可能領域特定処理によって、短絡故障が発生しているFETおよび電動モータ18を回転すべき方向に対応した各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が特定されると、制御可能領域特定部41および短絡故障時用駆動部43は、特定された「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」のうち、現在の電気角が属する領域に対応したモータ制御を行なう(ステップS15)。具体的には、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は電動モータ18を駆動する。現在の電気角が「不可領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は電動モータ18を駆動しない。ステップS15の処理の詳細については、後述する。
前記ステップS11において、短絡故障したFETが既に特定されていると判別された場合には(ステップS11:YES)、制御可能領域特定部41は、電動モータ18を回転すべき方向と、既に特定されている所定の情報とに基づいて、短絡故障が発生しているFETおよび電動モータ18を回転すべき方向に対応した各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を特定した後に、ステップS15に移行する。前記所定の情報は、ステップS14において後述する第1または第2方法が採用されている場合には、ステップS14で既に特定されている短絡故障が発生しているFETに対応した、回転方向別の各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を表す情報である。ステップS14において後述する第3方法が採用されている場合には、前記所定の情報は、既に特定されている短絡故障FETと第3方法で採用されるマップデータ(図9に示されるマップデータ)である。ステップS14において後述する第4方法が採用されている場合には、前記所定の情報は、既に特定されている短絡故障FETと第4方法で採用されるマップデータ(電動モータ18がいずれか一方の回転方向で回転されているときに、いずれか1つのFET31が短絡故障した場合に対応する「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を表すマップデータ)である。
前記ステップS14の制御可能領域特定処理について説明する。制御可能領域を特定する方法には、以下の3種類の方法がある。
(a)相電圧(誘起電圧)に基づいて制御可能領域を特定する方法(以下、「第1方法」という)。
(b)相電流(負荷電流)に基づいて制御可能領域を特定する方法(以下、「第2方法」という)。
(c)短絡故障が発生したFETの位置と予め作成されたマップとに基づいて、制御可能領域を特定する方法。この方法には、2つの方法があり、一方を第3方法といい、他方を第4方法ということにする。
第1方法と第2方法とは、誘起電圧が発生している状態で、制御可能領域を特定する方法である。このため、ロータが回転されていることが必要となる。したがって、運転者の操舵操作により電動モータ18が回転されている場合には、その状態で制御可能領域を特定することが可能であるが、操舵操作により電動モータ18が回転されていない場合には、制御可能領域特定部41は、電気角に応じて各FET31を制御することにより、強制的に電動モータ18を回転駆動させる必要がある。これに対して、第3方法および第4方法は、予め作成されたマップに基づいて、制御可能領域を特定するものであるため、ロータが回転されている必要はない。
第1方法について説明する。電動モータ18の回転方向には、正転方向(CW:clockwise)と逆転方向(CCW:counter clockwise)とがある。正転方向と逆転方向とでは、短絡故障が発生したFETが同じであっても各相の誘起電圧波形が異なるために制御可能領域が異なるが、制御可能領域の特定方法の考え方は同じである。ここでは、ロータの回転方向が、正転方向である場合について説明する。なお、たとえば、操舵操作により電動モータ18が回転されている場合において、電動モータ18の回転方向は、回転角センサ52によって検出される電気角の変化に基づいて特定することができる。たとえば、電気角が増加する方向に変化しているときには、電動モータ18の回転方向が正転方向であると特定され、電気角が減少している方向に変化しているときには、電動モータ18の回転方向が逆転方向であると特定される。
短絡故障しているFETがローサイドFETである場合と、ハイサイドFETである場合とに分けて説明する。まず、ローサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、図3に示されているように、V相のローサイドFET31VLが短絡故障している場合を例にとって説明する。図7Aは、V相のローサイドFET31VLが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが正転方向に回転されたときの、各相の相電圧(誘起電圧)V,V,Vを示している。
制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)の両方の相電圧V,Vが、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧V以下となる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のいずれにも負荷電流が流れる電気角領域)を「不可領域」として特定する。電気角は、回転角センサ52から得られる。
また、制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)の両方の相電圧V,Vが、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧Vより大きくなる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域)を「可能領域」として特定する。なお、短絡故障しているFETがローサイドFETである場合には、2つの正常相をA,Bで表すと、制御可能領域特定部41は、「可能領域」のうち、一方の正常相Aの相電圧が他方の正常相Bの相電圧以上となる電気角領域を「可能領域(A)」として特定し、前記他方の正常相Bの相電圧が前記一方の正常相Aの相電圧より大きくなる電気角領域を「可能領域(B)」として特定してもよい。上記の例では、制御可能領域特定部41は、「可能領域」のうち、U相の相電圧VがW相の相電圧V以上となる電気角領域を「可能領域(U)」として特定し、W相の相電圧VがU相の相電圧Vより大きくなる電気角領域を「可能領域(W)」として特定してもよい。
また、制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電圧が短絡故障相(この例ではV相)の相電圧Vより大きくなり、かつ正常相の他方の相電圧が短絡故障相の相電圧V以下となる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を「不定領域」として特定する。なお、短絡故障しているFETがローサイドFETである場合には、2つの正常相をA,B、故障相をCで表すと、制御可能領域特定部41は、「不定領域」のうち、一方の正常相Aの相電圧が故障相Cの相電圧より大きくなる電気角領域を「不定領域(A)」として特定し、他方の正常相Bの相電圧が故障相Cの相電圧より大きくなる電気角領域を「不定領域(B)」として特定してもよい。
上記の例では、制御可能領域特定部41は、正常相であるU相の相電圧VがV相の相電圧Vより大きく、かつ正常相であるW相の相電圧VがV相の相電圧V以下となる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のうちW相界磁コイル18Wを含む第2の閉回路62にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(U)」として特定してもよい。一方、制御可能領域特定部41は、正常相であるW相の相電圧VがV相の相電圧Vより大きく、かつ正常相であるU相の相電圧VがV相の相電圧V以下となる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のうちU相界磁コイル18Uを含む第1の閉回路61にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(W)」として特定してもよい。
ハイサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、図4に示されているように、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障している場合を例にとって説明する。図7Bは、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが正転方向に回転されたときの、各相の相電圧(誘起電圧)V,V,Vを示している。
制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)の両方の相電圧V,Vが、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧V以上となる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のいずれにも負荷電流が流れる電気角領域)を「不可領域」として特定する。
また、制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)の両方の相電圧V,Vが、短絡故障相(この例ではV相)の相電圧Vより小さくなる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域)を「可能領域」として特定する。なお、短絡故障しているFETがハイサイドFETである場合には、2つの正常相をA,Bで表すと、制御可能領域特定部41は、「可能領域」のうち、一方の正常相Aの相電圧が他方の正常相Bの相電圧以下となる電気角領域を「可能領域(A)」として特定し、前記他方の正常相Bの相電圧が前記一方の正常相Aの相電圧より小さくなる電気角領域を「可能領域(B)」として特定してもよい。上記の例では、制御可能領域特定部41は、「可能領域」のうち、U相の相電圧VがW相の相電圧V以下となる電気角領域を「可能領域(U)」として特定し、W相の相電圧VがU相の相電圧Vより小さくなる電気角領域を「可能領域(W)」として特定してもよい。
また、制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電圧が短絡故障相(この例ではV相)の相電圧Vより小さくなり、かつ正常相の他方の相電圧が短絡故障相の相電圧V以上となる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のうちいずれか一方にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を「不定領域」として特定する。なお、短絡故障しているFETがハイサイドFETである場合には、2つの正常相をA,B、故障相をCで表すと、制御可能領域特定部41は、「不定領域」のうち、一方の正常相Aの相電圧が故障相Cの相電圧より小さくなる電気角領域を「不定領域(A)」として特定し、他方の正常相Bの相電圧が故障相Cの相電圧より小さくなる電気角領域を「不定領域(B)」として特定してもよい。
上記の例では、制御可能領域特定部41は、正常相であるU相の相電圧VがV相の相電圧Vより小さく、かつ正常相であるW相の相電圧VがV相の相電圧V以上となる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のうちW相界磁コイル18Wを含む第4の閉回路64にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(U)」として特定してもよい。一方、制御可能領域特定部41は、正常相であるW相の相電圧VがV相の相電圧Vより小さく、かつ正常相であるU相の相電圧VがV相の相電圧V以上となる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のうちU相界磁コイル18Uを含む第3の閉回路63にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(W)」として特定してもよい。
以上のようにして、たとえば、運転者の操舵操作によって、電動モータ18が正転方向および逆転方向のうちのいずれかの一方の回転方向に回転されているときの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」が特定された場合には、制御可能領域特定部41は、電動モータ18が他方の回転方向に回転されるときの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。後述するように、電動モータ18が正転方向に回転される場合の「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」と、電動モータ18が逆転方向に回転される場合の「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」との間には、それぞれ、電気角において180°のずれがある。そこで、電動モータ18が一方の回転方向に回転されているときの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」が特定された場合には、それらの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」に基づいて、電動モータ18が他方の回転方向に回転されるときの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定することができる。
たとえば、運転者の操舵操作によって、電動モータ18が正転方向に回転されているときの各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が特定されたとする。この場合には、それらの領域を規定している電気角(以下、「領域規定用電気角α」という)を、次式(1)に基づいて変換することにより、電動モータ18が逆転方向に回転されているときの各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を特定することができる。
180°≦α<360°の場合 α=α−180°
0≦α<180°の場合 α=α−180°+360° …(1)
一方、運転者の操舵操作によって、電動モータ18が逆転方向に回転されているときの各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が特定されたとする。この場合には、これらの領域を規定している電気角(領域規定用電気角α)を、次式(2)に基づいて変換することにより、電動モータ18が正転方向に回転されているときの各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を特定することができる。
180°≦α<360°の場合 α=α+180°−360°
0≦α<180°の場合 α=α+180° …(2)
制御可能領域特定部41は、電動モータ18を回転すべき回転方向と、第1方法で特定した正転方向に対応した各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)ならびに逆転方向に対応した各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)とに基づいて、短絡故障が発生しているFETおよび電動モータ18を回転すべき方向に対応した、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。
電動モータ18を回転すべき回転方向は、たとえば、トルクセンサ11の出力信号に基づいて決定される。具体的には、トルクセンサ11の出力信号が右方向の操舵トルクを表しているか、左方向の操舵トルクを表しているかに基づいて、電動モータ18を回転すべき方向が決定される。つまり、トルクセンサ11の出力信号が右方向の操舵トルクを表している場合には、右方向の操舵を補助するトルクを発生させるための回転方向が電動モータ18を回転すべき回転方向として決定される。一方、トルクセンサ11の出力信号が左方向の操舵トルクを表している場合には、左方向の操舵を補助するトルクを発生させるための回転方向が電動モータ18を回転すべき回転方向として決定される。
次に、第2方法について説明する。第2方法を適用する場合には、図2に破線で示すように、電流センサ51,51,51によって検出される相電流が、制御可能領域特定部41に入力される。電動モータ18が正転方向に回転している場合と逆転方向に回転している場合では、短絡故障が発生したFETが同じであっても各相の電流波形が異なるために制御可能領域が異なるが、制御可能領域の特定方法の考え方は同じである。ここでは、ロータの回転方向が、正転方向である場合について説明する。
短絡故障しているFETがローサイドFETである場合と、ハイサイドFETである場合とに分けて説明する。まず、ローサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、図3に示されているように、V相のローサイドFET31VLが短絡故障している場合を例にとって説明する。図8Aは、V相のローサイドFET31VLが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが正転方向に回転されたときの、各相電流I,I,Iを示している。
制御可能領域特定部41は、正常相であるU相およびW相の両方の相電流I,Iが零より大きくなる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のいずれにも負荷電流が流れる電気角領域)を、「不可領域」として特定する。また、制御可能領域特定部41は、正常相であるU相およびW相の両方の相電流I,Iが零以下となる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域)を、「可能領域」として特定する。
また、制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電流の極性が零以下となり、かつ正常相の他方の相電流が零より大きくなる電気角領域を「不定領域」として特定する。なお、短絡故障しているFETがローサイドFETである場合には、2つの正常相をA,Bで表すと、制御可能領域特定部41は、「不定領域」のうち、一方の正常相Aの相電流が零以下となる電気角領域を「不定領域(A)」として特定し、他方の正常相Bの相電流が零以下となる電気角領域を「不定領域(B)」として特定してもよい。
上記の例では、制御可能領域特定部41は、正常相であるU相の相電流Iが零以下であり、かつ正常相であるW相の相電流Iが零より大きくなる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のうちW相界磁コイル18Wを含む第2の閉回路62にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(U)」として特定してもよい。一方、制御可能領域特定部41は、正常相であるW相の相電流Iが零以下であり、かつ正常相であるU相の相電流Iが零より大きくなる電気角領域(第1および第2の閉回路61,62のうちU相界磁コイル18Uを含む第1の閉回路61にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(W)」として特定してもよい。
ハイサイドFETが短絡故障している場合について説明する。ここでは、図4に示されているように、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障している場合を例にとって説明する。図8Bは、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障している場合に、操舵操作によって電動モータ18のロータが正転方向に回転されたときの、各相電流I,I,Iを示している。
制御可能領域特定部41は、正常相であるU相およびW相の両方の相電流I,Iが零より小さくなる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のいずれにも負荷電流が流れる電気角領域)を、「不可領域」として特定する。また、制御可能領域特定部41は、正常相であるU相およびW相の両方の相電流I,Iが零以上となる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のいずれにも負荷電流が流れない電気角領域)を、「可能領域」として特定する。
また、制御可能領域特定部41は、正常相(U相、W相)のいずれか一方の相電流の極性が零以上となり、かつ正常相の他方の相電流が零より小さくなる電気角領域を「不定領域」として特定する。なお、短絡故障しているFETがハイサイドFETである場合には、2つの正常相をA,Bで表すと、制御可能領域特定部41は、「不定領域」のうち、一方の正常相Aの相電流が零以上となる電気角領域を「不定領域(A)」として特定し、他方の正常相Bの相電流が零以上となる電気角領域を「不定領域(B)」として特定してもよい。
上記の例では、制御可能領域特定部41は、正常相であるU相の相電流Iが零以上であり、かつ正常相であるW相の相電流Iが零より小さくなる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のうちW相界磁コイル18Wを含む第4の閉回路64にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(U)」として特定してもよい。一方、制御可能領域特定部41は、正常相であるW相の相電流Iが零以上であり、かつ正常相であるU相の相電流Iが零より小さくなる電気角領域(第3および第4の閉回路63,64のうちU相界磁コイル18Uを含む第3の閉回路63にのみ負荷電流が流れる電気角領域)を、「不定領域(W)」として特定してもよい。
以上のようにして、たとえば、運転者の操舵操作によって、電動モータ18が正転方向および逆転方向のうちのいずれかの一方の回転方向に回転されているときの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」が特定された場合には、制御可能領域特定部41は、前記第1方法と同様な方法で、電動モータ18が他方の回転方向に回転されるときの「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。
制御可能領域特定部41は、電動モータ18を回転すべき回転方向と、第2方法で特定した正転方向に対応した各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)ならびに逆転方向に対応した各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)とに基づいて、短絡故障が発生しているFETおよび電動モータ18を回転すべき方向に対応した、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。電動モータ18を回転すべき回転方向は、たとえば、トルクセンサ11の出力信号に基づいて決定される。
第3方法について説明する。第3方法では、電動モータ18の回転方向(CW,CCW)およびFET別に、各FETが短絡故障した場合に対応する「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を表すマップがあらかじめ作成されて、不揮発性メモリに格納される。
図9は、このようなマップの内容例を示している。図9において、CWおよびCCWは、図6のステップS15において電動モータ18が駆動される際の電動モータ18の回転方向を表しており、CWは正転方向を、CCWは逆転方向を表している。U,V,W、上段および下段は、短絡故障したFETの位置を表している。つまり、U,V,Wは、短絡故障したFETに対応する相を表している。上段は、短絡故障したFETが上段FET(ハイサイドFET)であることを表し、下段は、短絡故障したFETが下段FET(ローサイドFET)であることを表している。このようなマップは、理論値または計測データに基づいて作成される。
制御可能領域特定部41は、電動モータ18を回転すべき回転方向と、短絡故障したFET31の位置と、前記マップとに基づいて、短絡故障が発生しているFETおよび電動モータ18を回転すべき方向に対応した、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。電動モータ18を回転すべき回転方向は、たとえば、トルクセンサ11の出力信号に基づいて決定される。
マップを、理論値に基づいて作成する場合について説明する。図10は、通常駆動時の各相の誘起電圧波形V,V,Vおよび電気角θの理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、回転方向は、正転方向(CW)である。また、この例では、通常駆動時において、U相の誘起電圧波形が正から負へと変化する点が電気角θの0°として設定されている。
通常駆動時の各相の誘起電圧の理論値V,V,Vは、振幅をEとすると、次式(3)で表される。
=E・sin(θ−π)
=E・sin(θ−π−(2/3)π)
=E・sin(θ−π+(2/3)π) …(3)
図11Aは、V相のローサイドFET31VLが短絡故障したと仮定した場合の、電気角θに対する各相の誘起電圧波形V’,V’,V’の理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、電動モータ18の回転方向は、正転方向(CW)であると仮定している。V相のローサイドFET31VLが短絡故障したと仮定した場合の、各相の誘起電圧V’,V’,V’の理論値は、通常駆動時の各相の誘起電圧の理論値V,V,Vを用いて次式(4)で表される。
’=V−V
’=0
’=V−V …(4)
図11Aに示されるような理論値に基づいて、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合の制御可能領域が予め求められる。具体的には、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’(図11Aの例では0)より大きくなる電気角領域(この例では、150°〜270°)が「可能領域」として求められる。特に、「可能領域」のうち、U相の誘起電圧V’がW相の誘起電圧V’以上となる領域(この例では、210°〜270°)が「可能領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’がU相の誘起電圧V’より大きくなる領域(この例では、150°〜210°)が「可能領域(W)」として求められる。また、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’以下となる電気角領域(この例では、330°〜90°)が「不可領域」として求められる。
そして、「可能領域」と「不可領域」の中間の電気角領域(90°〜150°,270°〜330°)が「不定領域」として求められる。特に、「不定領域」のうち、U相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より大きくなる電気角領域(270°〜330°)が「不定領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より大きくなる電気角領域(90°〜150°)が「不定領域(W)」として求められる。
図11Bは、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障したと仮定した場合の、電気角θに対する各相の誘起電圧波形V’,V’,V’の理論値(シミュレーション値)を示している。この例では、電動モータ18の回転方向は、正転方向(CW)であると仮定している。図11Bに示されるような理論値に基づいて、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合の制御可能領域が予め求められる。
具体的には、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より小さくなる電気角領域(この例では、330°〜90°)が「可能領域」として求められる。特に、「可能領域」のうち、U相の誘起電圧V’がW相の誘起電圧V’以下となる領域(この例では、30°〜90°)が「可能領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’がU相の誘起電圧V’より小さくなる領域(この例では、330°〜30°)が「可能領域(W)」として求められる。また、正常相(U相,V相)の両方の誘起電圧V’,V’が、短絡故障相(V相)の誘起電圧V’以上となる電気角領域(この例では、150°〜270°)が「不可領域」として求められる。
「可能領域」と「不可領域」の中間の電気角領域(90°〜150°,270°〜330°)が「不定領域」として求められる。特に、「不定領域」のうち、U相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より小さくなる電気角領域(90°〜150°)が「不定領域(U)」として求められ、W相の誘起電圧V’が短絡故障相(V相)の誘起電圧V’より小さくなる電気角領域(270°〜330°)が「不定領域(W)」として求められる。
同様にして、電動モータ18の回転方向が正転方向(CW)である場合において、U相のローサイドFET31ULが短絡故障した場合の各領域、U相のハイサイドFETUHが短絡故障した場合の各領域、W相のローサイドFETWLが短絡故障した場合の各領域およびW相のローサイドFETWLが短絡故障した場合の各領域が求められる。このようにして求められた各領域に基づいて、電動モータ18の回転方向が正転方向(CW)である場合のマップが予め作成される。また、同様な方法により、電動モータ18の回転方向が逆転方向(CCW)である場合のマップが予め作成される。これにより、図9に示すようなマップが得られる。
第4方法について説明する。第4方法では、電動モータ18が正転(CW)および逆転(CCW)のいずれか一方の回転方向で回転されているときに、いずれか1つのFET31が短絡故障した場合に対応する「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を表すマップがあらかじめ作成されて、不揮発性メモリに格納される。そして、制御可能領域特定部41は、このマップと、短絡故障していると特定されたFET31の位置情報と、電動モータ18を回転させるべき回転方向とに基づいて、短絡故障しているFET31および電動モータ18の回転方向に対応した、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を特定する。電動モータ18を回転すべき方向は、たとえば、トルクセンサ11の出力信号に基づいて決定される。短絡故障していると特定されたFET31の位置情報は、当該FET31に対応する相(短絡故障相)がUVWのいずれの相であるかを示す情報と、当該FET31が上段または下段のいずれのFET31であるかを示す情報とからなる。
図12は、第4方法による制御可能領域特定処理の手順を示している。
この実施形態では、図9に示されているマップデータのうち、短絡故障対象のFET31がV相のローサイドFET31VLであり、かつ電動モータの回転方向が正転方向(CW)である場合に対応する「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」を表すデータ(以下、「基準データ」という)のみがマップとして不揮発性メモリに格納されているものとする。
制御可能領域特定部41は、電動モータ18を回転させるべき回転方向が正転方向(CW)であるか否かを判別する(ステップS21)。電動モータ18を回転させるべき回転方向が正転方向(CW)である場合には(ステップS21:YES)、制御可能領域特定部41は、ステップS23に移行する。
一方、電動モータ18を回転させるべき回転方向が逆転方向(CCW)である場合には(ステップS21:NO)、制御可能領域特定部41は、基準データにおいて、各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を規定している電気角(領域規定用電気角α)を次式(5)に基づいて変換する(ステップS22)。
180°≦α<360°の場合 α=α−180°
0≦α<180°の場合 α=α−180°+360° …(5)
これにより、各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が変換される。変換後の各領域を規定している電気角が領域規定用電気角αとされる。この後、ステップS23に移行する。
図9から分かるように、同じ位置(相および上下段が同じ)のFET31に対応する各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)は、正転方向(CW)と逆転方向(CCW)との間では、電気角において180°ずれている。この実施形態では、基準データが正転方向(CW)に対応するデータであるため、電動モータ18を回転させるべき回転方向が逆転方向(CCW)である場合には、領域規定用電気角αがα−180゜に変換される。ただし、変換後の電気角αが負の値になる場合には、領域規定用電気角αがα−180°+360°に変換される。
ステップS23では、制御可能領域特定部41は、既に特定されている短絡故障相がV相であるか否かを判別する。既に特定されている短絡故障相がV相である場合には(ステップS23:YES)、制御可能領域特定部41は、ステップS27に移行する。
既に特定されている短絡故障相がV相ではないと判別された場合には(ステップS23:NO)、制御可能領域特定部41は、既に特定されている短絡故障相がU相であるか否かを判別する(ステップS24)。既に特定されている短絡故障相がU相である場合には(ステップS24:YES)、制御可能領域特定部41は、領域規定用電気角αを次式(6)に基づいて変換する(ステップS25)。
120°≦α<360°の場合 α=α−120°
0≦α<120°の場合 α=α−120°+360° …(6)
これにより、各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が変換される。変換後の各領域を規定している電気角が領域規定用電気角αとされる。この後、ステップS27に移行する。
既に特定されている短絡故障相がU相でない場合、つまり、既に特定されている短絡故障相がW相である場合には(ステップS24:NO)、制御可能領域特定部41は、領域規定用電気角αを次式(7)に基づいて変換する(ステップS26)。
0°≦α<240°の場合 α=α+120°
240°≦α<360°の場合 α=α+120°−360° …(7)
これにより、各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が変換される。変換後の各領域を規定している電気角が領域規定用電気角αとされる。この後、ステップS27に移行する。
図9から分かるように、電動モータ18の回転方向および上下段の位置が同じFET31に対応する各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)は、短絡故障相によって電気角がずれている。この実施形態では、基準データがV相に対応するデータであるため、短絡故障相がU相である場合には、領域規定用電気角αがα−120゜に変換される。ただし、変換後の電気角αが負の値になる場合には、領域規定用電気角αがα−120°+360°に変換される。
また、短絡故障相がW相である場合には、領域規定用電気角αがα+120゜に変換される。ただし、変換後の電気角αが360°以上となる場合には、領域規定用電気角αがα+120°−360°に変換される。
ステップS27では、制御可能領域特定部41は、既に特定されている短絡故障FET31が下段(ローサイド)FETであるか否かを判別する。既に特定されている短絡故障FET31が下段FETである場合には(ステップS27:YES)、制御可能領域特定部41は、今回の制御可能領域特定処理を終了する。
一方、既に特定されている短絡故障FET31が上段(ハイサイド)FETである場合には(ステップS27:NO)、領域規定用電気角αを次式(8)に基づいて変換する(ステップS25)。
180°≦α<360°の場合 α=α−180°
0≦α<180°の場合 α=α−180°+360° …(8)
これにより、各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)が変換される。この後、制御可能領域特定部41は、今回の制御可能領域特定処理を終了する。
図9から分かるように、電動モータ18の回転方向および短絡故障相が同じFET31に対応する各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)は、短絡故障FETの上下段位置によって電気角が180°ずれている。この実施形態では、基準データが下段FETに対応するデータであるため、短絡故障FETが上段FETである場合には、領域規定用電気角αがα−120゜に変換される。ただし、変換後の電気角αが負の値になる場合には、領域規定用電気角αがα−120°+360°に変換される。
このように、基準データにおいて各領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を規定している領域規定用電気角αが変換されることにより、短絡故障しているFET31および電動モータ18を回転させるべき回転方向に対応した、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」が求められる。
たとえば、短絡故障しているFET31がU相の上段であり、電動モータ18を回転させるべき回転方向が逆転方向(CCW)である場合を例にとって説明する。
基準データでは、「可能領域」は150°〜270°の範囲である。この例では、電動モータ18を回転させるべき回転方向が逆転方向(CCW)であるので、前記ステップS22により、「可能領域」は330°〜90°の範囲に変換される。また、この例では、短絡故障相はU相であるため、前記ステップS25により、「可能領域」は210°〜330°の範囲に変換される。さらに、この例では、短絡故障FET31が上段であるため、前記ステップS28により、「可能領域」は30°〜150°の範囲に変換される。図9において、短絡故障しているFET31がU相の上段であり、電動モータ18の回転方向が逆転方向(CCW)である場合の「可能領域」は30°〜150°の範囲であり、上記演算結果と一致する。
また、基準データでは、「不定領域」は、90°〜150°の範囲(一方の不定領域)と、270°〜330°の範囲(他方の不定領域)である。この例では、電動モータ18を回転させるべき回転方向が逆転方向(CCW)であるので、前記ステップS22により、一方の不定領域は270°〜330°の範囲に変換され、他方の不定領域は90°〜150°の範囲に変換される。また、この例では、短絡故障相はU相であるため、前記ステップS25により、一方の不定領域は150°〜210°の範囲に変換され、他方の不定領域は330°〜30°の範囲に変換される。さらに、この例では、短絡故障FET31が上段であるため、前記ステップS28により、一方の不定領域は330°〜30°の範囲に変換され、他方の不定領域は、150°〜210°の範囲に変換される。図9において、短絡故障しているFET31がU相の上段であり、電動モータ18の回転方向が逆転方向(CCW)である場合の「不定領域」は、150°〜210°の範囲と、330°〜30°の範囲であり、上記演算結果と一致する。
次に、図6のステップS15のモータ制御処理について説明する。このモータ制御処理においては、制御可能領域特定部4は、まず、現在の電気角が属している領域(「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」)を判別する。そして、現在の電気角が属している領域に応じて、短絡故障時用駆動部43を制御する。
現在の電気角が「不可領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は電動モータ18を駆動しない。現在の電気角が「可能領域」に属している場合または「不定領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は、電動モータ18を駆動する。たとえば、現在の電気角が「可能領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は、120°矩形駆動方式、120°片側PWM駆動方式等によって、電動モータ18を駆動する。また、現在の電気角が「不定領域」に属している場合には、短絡故障時用駆動部43は、矩形波駆動方式、120°矩形駆動方式等によって、電動モータ18を駆動する。
以下、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」に属している場合に、120°矩形駆動方式によって、電動モータ18を駆動する場合について説明する。
図13は、電動モータ18が120°矩形駆動方式によって正転方向に回転駆動される場合において、各FET31がオン状態にされるタイミングを説明するための説明図である。図13には、通常時において電動モータ18を駆動した場合の電気角θに対する各相の誘起電圧波形V,V,Vが示されているとともに、通常時において電動モータ18を120°矩形駆動する場合の電気角θに対する各FET31のオン・オフのタイミングが示されている。
各FET31のオン・オフのタイミングを表す帯状のタイミング図のうち、上段はハイサイドFETに対するオン・オフのタイミングを表し、下段はローサイドFETに対するオン・オフのタイミングを表している。360゜の電気角範囲が、60°毎の6つの小領域に分割されている。そして、各小領域には、オン状態にされるFETに対応する相を表す文字(U,V,W)が記入されている。
このタイミング図によれば、通常時に120°矩形駆動方式で電動モータ18を駆動する場合、各小領域とその小領域においてオンされるFET31との関係は、次のようになる。
330°〜 30°:V相のハイサイドFET31VH,W相のローサイドFET31WL
30°〜 90°:V相のハイサイドFET31VH,U相のローサイドFET31UL
90°〜150°:W相のハイサイドFET31WH,U相のローサイドFET31UL
150°〜210°:W相のハイサイドFET31WH,V相のローサイドFET31VL
210°〜270°:U相のハイサイドFET31UH,V相のローサイドFET31VL
270°〜330°:U相のハイサイドFET31UH,W相のローサイドFET31WL
6個のFET31のうちの1つに短絡故障が発生した場合には、短絡故障時用駆動部43は、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」にあるときには、前記タイミング図において現在の電気角に対してオン状態となるべき2つのFETをオンさせる。たとえば、V相のローサイドFET31VLが短絡故障した場合には、電動モータ18の回転方向が正転方向であるとすると、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」は、次のようになる。
「可能領域(U)」:210°〜270°
「可能領域(W)」:150°〜210°
「不定領域(U)」:270°〜330°
「不定領域(W)」:90°〜150°
「不可領域」:330°〜90°
したがって、現在の電気角が「不可領域」である330°〜90°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は短絡故障したFET以外のFETの全てをオフ状態とする。この場合には、電動モータ18は駆動されない。
現在の電気角が「不定領域(W)」である90°〜150°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、W相のハイサイドFET31WHとU相のローサイドFET31ULとをオンさせる。この場合には、図2または図3を参照して、電源33からW相のハイサイドFET31WHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18W,18U,18V)を経由した後、U相のローサイドFET31ULおよびV相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。これにより、電動モータ18が駆動され、アシスト力が発生する。
現在の電気角が「可能領域(W)」である150°〜210の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、W相のハイサイドFET31WHとV相のローサイドFET(故障FET)31VLとをオンさせる。この場合には、電源33からW相のハイサイドFET31WHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18W,18V)を経由した後、V相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。これにより、電動モータ18が駆動され、アシスト力が発生する。
現在の電気角が「可能領域(U)」である210°〜270°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、U相のハイサイドFET31UHとV相のローサイドFET(故障FET)31VLとをオンさせる。この場合には、電源33からU相のハイサイドFET31UHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18U,18V)を経由した後、V相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。これにより、電動モータ18が駆動され、アシスト力が発生する。
現在の電気角が「不定領域(U)」である270°〜330°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、U相のハイサイドFET31UHとW相のローサイドFET31WLをオンさせる。この場合には、電源33からU相のハイサイドFET31UHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18U,18W,18V)を経由した後、W相のローサイドFET31WLおよびV相のローサイドFET(故障FET)31VLを介して接地34へと流れる。
一方、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障した場合には、電動モータ18の回転方向が正転方向であるとすると、「可能領域」、「不定領域」および「不可領域」は、次のようになる。
「可能領域(W)」:330°〜30°
「可能領域(U)」:30°〜90°
「不定領域(U)」:90°〜150°
「不定領域(W)」:270°〜330°
「不可領域」:150°〜270°
したがって、現在の電気角が「可能領域(W)」である330°〜30°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、V相のハイサイドFET(故障FET)31VHとW相のローサイドFET31WLとをオンさせる。この場合には、図2または図4を参照して、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18W)を経由した後、W相のローサイドFET31WLを介して接地34へと流れる。
現在の電気角が「可能領域(U)」である30°〜90°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、V相のハイサイドFET(故障FET)31VHとU相のローサイドFET31ULとをオンさせる。この場合には、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18U)を経由した後、W相のローサイドFET31ULを介して接地34へと流れる。
現在の電気角が「不定領域(U)」である90°〜150°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、W相のハイサイドFET31WHとU相のローサイドFET31ULとをオンさせる。この場合には、電源33からW相のハイサイドFET31WHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18W,18Uを経由した後、U相のローサイドFET31を介して接地34へと流れるとともに、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18U)を経由した後、U相のローサイドFET31を介して接地34へと流れる。
現在の電気角が「不可領域」である150°〜270°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は短絡故障したFET以外のFETの全てをオフ状態とする。
現在の電気角が「不定領域(W)」である270°〜330°の電気角領域に属しているときには、短絡故障時用駆動部43は、図13のタイミング図に従って、U相のハイサイドFET31UHとW相のローサイドFET31WLとをオンさせる。この場合には、電源33からU相のハイサイドFET31UHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18U,18W)を経由した後、W相のローサイドFET31WLを介して接地34へと流れるとともに、電源33からV相のハイサイドFET(故障FET)31VHを通過した電流は、電動モータ18(界磁コイル18V,18W)を経由した後、W相のローサイドFET31WLを介して接地34へと流れる。
なお、電動モータ18を逆転方向に回転駆動させる場合には、現在の電気角が「可能領域」または「不定領域」にあるときに、通常時において電動モータ18を120°矩形駆動方式によって逆転方向に駆動する場合において現在の電気角に対してオン状態となるべき2つのFETをオンさせればよい。
上記実施の形態によれば、駆動回路30内の6つのFET31のうち、1つのFETに短絡故障が発生した場合において、電動モータ18を駆動させることが可能な電気角領域(ロータ回転角領域)を、制御可能領域として特定できるようになる。これにより、現在の電気角が制御可能領域に属しているか否かを判定でき、現在の電気角が制御可能領域に属しているときに、電動モータ18を駆動させることができるようになる。この結果、1つのFETが゛短絡故障した場合にも、電動モータ18による操舵のアシストが可能となる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、図6のステップS12において、制御可能領域特定部41は、まず、一次判定処理を行なうことによって、短絡故障が発生しているFETがハイサイドFETであるかローサイドFETであるかを特定し、次に、制御可能領域特定部41は、二次判定処理を行なうことによって、短絡故障が発生しているFET31の相(短絡故障相)を特定している。二次判定処理においては、制御可能領域特定部41は、電気角に応じて各FET31を制御することにより、電動モータ18に電流を流し、各相の相電圧VU,V,の電圧波形に基づいて、短絡故障相を特定している。
しかし、次に示すような短絡故障FETの特定処理の変形例に基づいて、短絡故障しているFETを特定してもよい。短絡故障FETの特定処理の変形例の考え方について説明する。1つのFET31が短絡故障した場合において、他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によってロータが回転されると、前述したように、電動モータ18に誘起電圧が発生し、この誘起電圧によって不可領域または不定領域において負荷電流が流れるようになる(例えば、図3,図4参照)。負荷電流が流れると、モータ負荷となる。前述したように、不可領域においては2つの閉回路に負荷電流が流れ、不定領域においては1つの閉回路に負荷電流が流れるので、不可領域におけるモータ負荷は不定領域におけるモータ負荷よりも大きくなる。このため、不可領域における操舵トルクが大きくなる。
不可領域は、電動モータ18の回転方向および短絡故障しているFET31によって異なる。このため、操舵トルクの絶対値が最大となるロータの回転角(モータ電気角)は、電動モータ18の回転方向および短絡故障しているFET31に対応した不可領域内の回転角となる。そこで、電動モータ18の回転方向と、操舵トルクの絶対値が最大となるモータ電気角を特定することによって、短絡故障しているFET31を特定することができる。なお、電動モータ18の回転方向は、回転角センサ52によって検出される電気角の変化に基づいて特定することができる。たとえば、電気角が増加する方向に変化しているときには、電動モータ18の回転方向が正転方向であると特定され、電気角が減少している方向に変化しているときには、電動モータ18の回転方向が逆転方向であると特定される。
図14A〜図14Cは、1つのハイサイドFET31が短絡故障しておりかつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者による操舵操作によって電動モータ18が正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値(シミュレーション値)を示すグラフである。なお、図14A〜図17Cに示されるモータ電気角は、図10に示されるように、通常駆動時において、U相の誘起電圧波形が正から負へと変化する点を0°にとった場合の電気角である。
この例では、トルクセンサ11の出力信号は、+2.5±2.5[V]の範囲をとるものとする。また、運転者による操舵操作によって電動モータ18が正転方向(CW)に回転されている場合には、トルクセンサ11の出力信号は、+2.5[V]〜0.5[V]の範囲をとり、トルクセンサ11の出力信号が小さいほど、操舵トルクの絶対値が大きくなるものとする。また、運転者による操舵操作によって電動モータ18が逆転方向(CCW)に回転されている場合には、トルクセンサ11の出力信号は、+5.0[V]〜2.5[V]の範囲をとり、トルクセンサ11の出力信号が大きいほど、操舵トルクの絶対値が大きくなるものとする。
図14Aは、U相のハイサイドFET31UHが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が90°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図14Bは、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が210°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図14Cは、W相のハイサイドFET31WHが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が330°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図15A〜図15Cは、1つのローサイドFET31が短絡故障しておりかつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者の操舵操作によって電動モータ18が正転方向(CW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示すグラフである。
図15Aは、U相のローサイドFET31ULが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が270°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図15Bは、V相のローサイドFET31VLが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が30°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図15Cは、W相のローサイドFET31WLが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が150°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図16A〜図16Cは、1つのハイサイドFET31が短絡故障しておりかつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者の操舵操作によって電動モータ18が逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示すグラフである。
図16Aは、U相のハイサイドFET31UHが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が270°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図16Bは、V相のハイサイドFET31VHが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が30°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図16Cは、W相のハイサイドFET31WHが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が150°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図17A〜図17Cは、1つのローサイドFET31が短絡故障しておりかつ他のFETの全てがオフとなっている状態で、運転者の操舵操作によって電動モータ18が逆転方向(CCW)に回転された場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示すグラフである。
図17Aは、U相のローサイドFET31ULが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が90°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図17Bは、V相のローサイドFET31VLが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が210°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図17Cは、W相のローサイドFET31WLが短絡故障したと仮定した場合のモータ電気角に対するトルクセンサ11の出力信号の理論値を示している。モータ電気角が330°のときに、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクの絶対値が最大となる。
図14A〜図17Cにより、電動モータの回転方向と操舵トルクの絶対値が最大となるときのモータ電気角(以下、「トルク最大時のモータ電気角」という)との組合せと、短絡故障しているFETとの関係は、表1に示されるような関係となる。
Figure 0005720963
図18は、短絡故障FETの特定処理の変形例の手順を示すフローチャートである。
まず、運転者によってステアリングホイール2が操舵されるのを待つ(ステップS31)。ステアリングホイール2が操作されると(ステップS31:YES)、制御可能領域特定部41は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクと、回転角センサ52によって検出されるロータの回転角(モータ電気角)とを取り込み、両者を関連付けて記憶する(ステップS32)。そして、制御可能領域特定部41は、ロータの1回転分以上に相当する操舵トルクが取り込まれたか否かを判別する(ステップS33)。ロータの1回転分以上に相当する操舵トルクが取り込まれていないときには(ステップS33:NO)、ステップS32に戻り、再度、操舵トルクおよびモータ電気角を取り込んで記憶する。
前記ステップS33において、ロータの1回転分以上に相当する操舵トルクが取り込まれたと判別された場合には(ステップS33:YES)、制御可能領域特定部41は、操舵トルクの絶対値が最大となるときのモータ電気角をトルク最大時のモータ電気角として特定する(ステップS34)。そして、制御可能領域特定部41は、特定されたトルク最大時のモータ電気角と、電動モータ18の回転方向と、前記表1の内容とに基づいて、短絡故障しているFET31を特定する(ステップS35)。
前記ステップS34によって特定されるトルク最大時のモータ電気角には多少の誤差が含まれると考えられる。そこで、次のようにして、特定されたトルク最大時のモータ電気角が前記表1内のいずれのトルク最大時のモータ電気角に該当するかを判定することが好ましい。すなわち、前記表1内の各トルク最大時のモータ電気角に対して、そのモータ電気角を中心とした幅(たとえば±30°の幅)を持たせた電気角範囲をそれぞれ設定しておく。そして、特定されたトルク最大時のモータ電気角がいずれの電気角範囲に含まれるかを判定することにより、特定されたトルク最大時のモータ電気角が前記表1内のいずれのトルク最大時のモータ電気角に該当するかを判定する。
なお、制御可能領域特定部41は、前記一次判定処理によって短絡故障が発生していると判定された後に、前記二次判定処理の代わりとして、図18を用いて説明した短絡故障FETの特定処理を行なうようにしてもよい。
この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途に使用されている三相ブラシレスモータに対しても、適用することができる。
本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
この出願は、2010年3月29日に日本国特許庁に提出された特願2010−75739号および2010年9月27日に日本国特許庁に提出された特願2010−215853号に対応しており、これらの出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。
18…電動モータ、30…駆動回路、31…FET、32…回生ダイオード、33…電源、34…接地、40…制御部

Claims (10)

  1. ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    2個のスイッチング素子が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源と接地との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオードが並列に接続されている駆動回路と、
    前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域を、制御可能領域として特定する制御可能領域特定手段とを含み、
    前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において前記三相ブラシレスモータのロータが回転されたときに、2つの正常相のいずれにも負荷電流が流れないロータ回転角領域を可能領域とし、2つの正常相のうちのいずれか一方にのみ負荷電流が流れるロータ回転角領域を不定領域とし、2つの正常相の両方に負荷電流が流れるロータ回転角領域を不可領域とすると、前記可能領域および前記不定領域からなる領域または前記可能領域を前記制御可能領域として特定するように構成されている、モータ制御装置。
  2. ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    2個のスイッチング素子が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源と接地との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオードが並列に接続されている駆動回路と、
    前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域を、制御可能領域として特定する制御可能領域特定手段とを含み、
    前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態での各相の相電圧に基づいて、前記制御可能領域を特定するように構成されている、モータ制御装置。
  3. ロータおよび界磁コイルを有する三相ブラシレスモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    2個のスイッチング素子が直列に接続された直列回路を三相の各相に対応して3組備え、電源と接地との間においてそれらの直列回路が並列接続されており、各スイッチング素子に回生ダイオードが並列に接続されている駆動回路と、
    前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、前記三相ブラシレスモータの駆動が可能となるロータ回転角領域を、制御可能領域として特定する制御可能領域特定手段とを含み、
    前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態での各相の相電流に基づいて、前記制御可能領域を特定するように構成されている、モータ制御装置。
  4. 前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子以外の全てのスイッチング素子がオフとなっている状態において前記三相ブラシレスモータのロータが回転されたときに、2つの正常相のいずれにも負荷電流が流れないロータ回転角領域を可能領域とし、2つの正常相のうちのいずれか一方にのみ負荷電流が流れるロータ回転角領域を不定領域とし、2つの正常相の両方に負荷電流が流れるロータ回転角領域を不可領域とすると、前記可能領域および前記不定領域からなる領域または前記可能領域を前記制御可能領域として特定するように構成されている、請求項またはに記載のモータ制御装置。
  5. 前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置から制御可能領域を特定するための情報とに基づいて、制御可能領域を特定するように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
  6. 前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報と、前記三相ブラシレスモータの回転方向と、予め作成されかつ短絡故障したスイッチング素子の位置および前記三相ブラシレスモータの回転方向から制御可能領域を特定するためのマップとに基づいて、制御可能領域を特定するように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
  7. 前記マップは、前記三相ブラシレスモータの回転方向および前記スイッチング素子別に、各スイッチング素子が短絡故障した場合に対応する制御可能領域を表すものである、請求項6に記載のモータ制御装置。
  8. 前記マップは、前記三相ブラシレスモータが正転および逆転のいずれか一方の回転方向に回転されているときに、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれか1つのスイッチング素子が短絡故障した場合に対応する制御可能領域を表すものである、請求項6に記載のモータ制御装置。
  9. 前記制御可能領域特定手段は、短絡故障したスイッチング素子の位置を表す情報、前記三相ブラシレスモータの回転方向および前記マップに基づいて、前記マップによって表されている制御可能領域を、前記短絡故障したスイッチング素子の位置および前記三相ブラシレスモータの回転方向に対応した制御可能領域に変換する手段を含む、請求項8に記載のモータ制御装置。
  10. 前記複数のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子が短絡故障したときに、短絡故障したスイッチング素子の位置を特定するための故障箇所特定手段と、
    ロータ回転角が前記制御可能領域にあるときに、前記正常相によって前記三相ブラシレスモータを駆動するモータ制御手段とをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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