JP5720455B2 - 酸性ガスの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、都市ごみ廃棄物焼却炉、産業廃棄物焼却炉、発電ボイラ、炭化炉、民間工場等の燃焼施設において発生する有害な塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガスの処理方法に関する。詳しくは、酸性ガスを処理するアルカリ剤の添加量を効率的に制御する方法に関する。
有害な塩化水素や硫黄酸化物を含む排ガスは消石灰や重曹等のアルカリ剤で処理され、その後バグフィルター(BF)等の集塵機で除塵された後、煙突から排出される。一方、集塵機で集塵された飛灰は、有害なPb、Cd等の重金属類を含有しており、これら有害重金属を安定化処理した後、埋立処分されている。
酸性ガスを処理するアルカリ剤である5〜30μmに微粉加工された重曹は、消石灰に比べ反応性が高く、酸性ガスを安定的に処理できると共に未反応分が少なく、埋立処分量を削減でき環境負荷低減に有効な手段である。また、重金属処理方法としてはジエチルジチオカルバミン酸塩等のキレートで不溶化処理する方法が一般的であり、短期的には重金属固定効果は高いが、最終処分場における酸性雨によるpH低下及びキレートの酸化自己分解により、鉛等の重金属が再溶出する問題が残る。一方、リン酸等のリン酸化合物による重金属固定は、無機鉱物であるヒドロキシアパタイト形態まで変化させる為、最終処分場における長期安定性に優れ、環境保護の観点から非常に価値の高い処理方法である。さらに、前記微粉重曹で処理した飛灰をリン酸等の重金属固定剤で処理する方法は、多くの環境負荷低減効果を持つ有効な手段である。
ところで、塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガスを処理する消石灰や重曹等のアルカリ剤の添加量を制御することは、酸性ガス処理費用を削減できるだけでなく、アルカリ剤の未反応分を低減し、飛灰の埋立処分量を削減する効果が期待できる。
塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガスを処理するアルカリ剤の添加量は、一般的に、バグフィルターの後段に設置されたイオン電極式の塩化水素測定装置で測定されたHCl濃度をもとにPID制御装置によりフィードバック制御されている。しかしながら、焼却施設等の燃焼施設においては通常入口の酸性ガス濃度を測定する装置は設置されておらず、入口の変動状況がわからない状態でPID制御のパラメーターを設定し制御出力を調整する。ところがPID制御装置はP、I、D、添加量(出力)下限、添加量(出力)上限の5つの設定項目があると共に各項目の設定値が複合して制御出力値を決めることから適正な添加制御を検討するのに多大な時間を要する。このため、一般的にPID制御装置による設定は、制御目標値(SV)を超えた際に添加量が大幅に増加する制御を実施している施設が多い。
しかしながら、通常のPID制御装置の制御出力は、単一の上限しか設定できず、例えばHCl濃度の制御目標値(SV)を40ppmに設定した場合、40ppm以上の濃度で制御出力の単一の上限を限度としてアルカリ剤の添加をすることとなり、アルカリ剤を過剰添加する原因となる。また、上記フィードバック制御は、酸性ガス測定装置の計測遅れの影響を受ける。バグフィルター出口のHCl濃度は通常イオン電極法(例えば京都電子工業製HL−36)で測定され、硫黄酸化物濃度は赤外線吸収法(例えば島津製作所製NSA−3080)で測定されているが、試料排ガスのサンプリング時間、及び計測器の応答時間を含めると5〜10分の多大な計測遅れがある。本計測遅れは、アルカリ剤の添加ラグを引き起こし、酸性ガスの処理不良につながると共にアルカリ剤の過剰添加を引き起こす原因となる。
本課題を解決するため種々制御手法が検討されている。特許文献1においては通常のPID制御式にPをさらに加える「P+PID制御」が提案されている。本提案は、通常のPID制御で困難な酸性ガスの突発的発生の対応を考えてのものである。また、特許文献2及び3においては、入口の酸性ガス濃度をもとにアルカリ剤の添加量を決めるフィードフォワード制御と、アルカリ剤が処理した後の酸性ガス濃度をもとにアルカリ剤の添加量を補うフィードバック制御と、を組み合わせる制御方式が提案されている。本制御方式はフィードバック制御の過剰添加を抑制する効果が見込まれ、酸性ガスの安定処理とアルカリ剤の過剰添加を削減する効果は得られるものと考える。
特開2002−113327号公報 特開平10−165752号公報 特開2006−75758号公報
しかしながら、特許文献1においては、入口の突発的対応はある程度可能であるが、制御出力の上限値並びに下限値が単一設定であるため、入口酸性ガス濃度の変動が激しい施設においては薬剤によるハンチングを引き起こすので、出口酸性ガス濃度のピークが少ない安定した処理は難しい。また、前記測定装置の計測遅れは加味されておらず、計測遅れによるアルカリ剤の添加ラグによる酸性ガスの処理不良には対応することができない。さらに、特許文献2及び3においては、焼却施設等の燃焼施設において、出口の酸性ガス濃度しか計測していない施設が多くを占めており、本制御方式を実施するためには、入口の酸性ガス濃度を計測する新たに高価な酸性ガス測定装置を導入する必要がある。
上記従来を勘案し、本発明は、新たな高価な酸性ガス測定装置を導入する必要のないフィードバック形式において、出口の酸性ガス濃度のピーク発生が少ない安定した酸性ガス処理を行うと共にアルカリ剤の過剰添加を削減するための新たな制御方式による酸性ガス処理方法を提供することを目的とする。
(1) 酸性ガスが含まれる燃焼排ガスにアルカリ剤を添加し、粉塵を集塵した後の酸性ガス濃度を測定する酸性ガス濃度測定機器の測定信号に基づいてアルカリ剤の添加量をフィードバック制御する酸性ガスの処理方法であって、少なくとも平均時間(例えば、後述する5分、15分、30分、1時間、3時間、6時間等)に応じた平均添加量に1倍以下の係数(例えば、後述する95%、90%、80%、70%、50%等)を乗じた基礎添加量を算出する工程と、前記算出した基礎添加量に基づいてアルカリ剤の添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程と、を有する酸性ガスの処理方法。
現状主に用いられるPID制御は、添加出力は、単一の上限と下限しか設定できない。従って、例えば出口HCl濃度の制御目標値(SV)を40ppmに設定した場合、実際の出口HCl濃度が40ppm以下ではアルカリ剤の添加を減らすために制御出力の下限で添加し、制御目標値(SV)40ppm以上ではアルカリ剤の添加を増やすために制御出力の上限で添加をすることを繰り返すアルカリ剤の不適切添加(過剰添加、不足添加)により、出口のHCl濃度は大きく変動すると共にアルカリ剤の過剰添加の原因となる。
これに対し、(1)の発明のように、少なくとも平均時間に応じた平均添加量に1倍以下の係数を乗じた基礎添加量を算出し、算出した基礎添加量に基づいてアルカリ剤の添加量出力値をフィードバック演算により算出した場合、アルカリ剤の不適切添加を防止し、処理すべき出口HCl濃度の変動を少ない安定した処理が可能であると共に(1)の発明による適正添加の結果、アルカリ剤の添加量も削減できる。
(1)の発明は、従来、フィードバック制御では加味できなかった入口のHCl濃度に関連する因子として過去平均添加量に着目し、過去平均添加量に1倍以下の係数を乗じた基礎添加量を制御因子として活用することに特徴がある。これにより、従来のような下限と上限を繰り返し大きく変動するアルカリ剤の添加を行うことなく、添加量のベースとして妥当性のある過去平均添加量に1倍以下の係数を乗じた基礎添加量をベースにアルカリ剤の添加量を例えばPID等のフィードバック制御により算出する。よって、アルカリ剤の添加変動が少なくなり、アルカリ剤自身の添加不良(過剰添加、不足添加)が引き起こすハンチングを抑制し、適切な添加を行うことにより添加量削減が可能となると共に変動の少ない酸性ガスの安定処理が可能となる。
(2) 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程において、前記算出した基礎添加量を前記アルカリ剤の添加量出力値の下限値(例えば、後述するLO:添加量下限)とする(1)に記載の酸性ガスの処理方法。
(2)の発明によれば、基礎添加量を添加量出力値の下限値とすることにより、本基礎添加量をベースにして従来のフィードバック演算により添加量の過不足が調整されるため、アルカリ剤の添加が適正化され、酸性ガスを効率的に処理することができる。
また、平均添加量の平均時間は、特に制限はないが、添加量の移動平均等の平均値を活用するのが有効で平均時間は5分以上、15〜24時間程度で活用するのが好ましい。また、基礎添加量で規定する係数は、1倍以下が良い。1倍以上の係数を用いた場合、酸性ガスの安定処理は可能であるが、入口酸性ガス濃度の減少に伴う添加量の減少を妨げるため過剰添加となる。基礎添加量は、平均添加量の、1倍以下(係数100%以下)であれば良いが、特に0.5〜0.95倍(50〜95%)、特に0.7〜0.9倍(70〜90%)が好ましい。
(3) 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、少なくとも2つの酸性ガス濃度の傾きの範囲(例えば、後述する直近のHCl濃度の傾きの6秒平均が正の範囲及び負の範囲など)を設定する工程と、前記少なくとも2つの傾きの範囲毎に酸性ガス濃度の制御目標値(例えば、後述する実施例8における180ppm、220ppmなど)を設定する工程と、少なくとも前記測定信号及び前記傾きの範囲毎の制御目標値に基づいてアルカリ剤の添加量出力値を算出する工程と、をさらに有し、前記制御目標値を設定する工程において、前記酸性ガス濃度の傾きの範囲が大きい場合(例えば、後述する直近のHCl濃度の傾きの6秒平均が正の場合(酸性ガス濃度上昇時))に設定する制御目標値は、前記酸性ガス濃度の傾きの範囲が小さい場合(例えば、後述する直近のHCl濃度の傾きの6秒平均が負の場合(酸性ガス濃度下降時))に設定する制御目標値より小さい(1)又は(2)に記載の酸性ガスの処理方法。
(3)の発明によれば、バグフィルター出口の酸性ガス濃度の傾きの範囲が大きい場合(酸性ガス濃度上昇時)には、傾きの範囲が小さい場合(酸性ガス濃度下降時)よりも酸性ガス濃度の制御目標値を小さくしたので、酸性ガス濃度上昇時でのアルカリ剤添加量出力値を、酸性ガス濃度下降時よりも大きくできる。よって、酸性ガス濃度増加時にアルカリ剤を添加するタイミングを現状制御に比べて早くでき、酸性ガス測定装置の計測遅れによる酸性ガスの処理不良を改善できる。
また、逆に酸性ガス濃度下降時でのアルカリ剤添加量を、酸性ガス濃度上昇時よりも少なくできるので、酸性ガス濃度減少時にアルカリ剤添加量をはやく低下させることができ、酸性ガス測定装置の計測遅れによる過剰添加を低減できる。
(4) 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、前記測定信号に基づいて演算される添加量出力値の下限値(例えば、後述する図12、図15、図41のLO)と上限値(例えば、後述する図12、図15、図41のLH[制御出力上限])との間に、前記酸性ガス濃度(例えば、後述する図12、図15、図41のBF出口HCl濃度)に対応して前記添加量出力値の新たな上限値(例えば、後述する図12、図15、図41のLM1[出力制限1]、LM2[出力制限2])を1つ以上設定する工程をさらに有する(1)から(3)のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
通常のフィードバック演算における出力上限は1つしかなく、酸性ガス濃度が制御目標値以上になると入口の酸性ガス濃度の大きさにかかわらず、上限値までアルカリ剤は添加可能となり、過剰添加を引き起こす。
これに対し、(4)の発明によれば、添加量出力値の下限値と上限値との間に、現在の酸性ガス濃度に応じた制御出力の制限を加えることにより、酸性ガス濃度の大きさに応じてアルカリ剤の適正な添加が可能となり、添加量の削減が可能となる。
(5) 前記基礎添加量を算出する工程において、移動平均時間が5分以上である場合の平均添加量の0.5倍から0.95倍を基礎添加量とする(1)から(4)のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
上述したように、平均添加量の平均時間は、特に制限はないが、添加量の移動平均等の平均値を活用するのが有効で平均時間は5分以上、15〜24時間程度で活用するのが好ましい。また、基礎添加量で規定する係数は、1倍以下が良い。1倍以上の係数を用いた場合、酸性ガスの安定処理は可能であるが、入口酸性ガス濃度の減少に伴う添加量の減少を妨げるため過剰添加となる。基礎添加量は、平均添加量の、1倍以下(係数100%以下)であれば良いが、特に0.5〜0.95倍(50〜95%)、特に0.7〜0.9倍(70〜90%)が好ましい。
したがって、(5)の発明によれば、酸性ガスの安定処理を行うと共にアルカリ剤の過剰添加を防止することができる。
(6)前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、当該フィードバック演算に加え、塩化水素濃度から演算された制御出力と硫黄酸化物濃度から演算された制御出力の両出力を用いてアルカリ剤の添加量出力値を算出する工程をさらに有する(1)から(5)のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
産業廃棄物焼却炉や民間工場の燃焼施設においては、塩化水素と硫黄酸化物が高濃度で発生することが多い。この際には、塩化水素と硫黄酸化物の両方が処理対象となり、バグフィルター後段に設けられた塩化水素濃度測定装置の塩化水素濃度をもとに求められた制御出力と硫黄酸化物濃度をもとに求められた制御出力を例えば加算することにより、塩化水素並びに硫黄酸化物の両酸性ガスを安定して処理することができる。
したがって、(6)の発明によれば、塩化水素並びに硫黄酸化物の両酸性ガスを安定して処理することができる。
(7)前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、
当該フィードバック演算に加え、塩化水素濃度及び又は硫黄酸化物濃度の平均値に基づいてアルカリ剤の添加量出力値を算出する工程をさらに有する(1)から(6)のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
ところで、酸性ガスの排出濃度管理は各酸性ガス濃度(塩化水素濃度、硫黄酸化物濃度)の1時間平均値で管理している施設がある。一般的には、制御目標値(SV)を設けて制御するが、制御目標値はあくまで目標であり、制御した結果目標値を超える濃度となるケースが往々にしてある。特に添加量削減と酸性ガスの安定処理は相反する思想であることから、添加量削減を求めれば求めるだけ、1時間平均値が管理値を超えるリスクが強まる。この場合、酸性ガス濃度が、1時間平均管理値以上、もしくはそれに近い濃度に達した場合、多量のアルカリ剤(ある一定添加量を規定)を添加することにより、添加量削減と酸性ガスの安定処理が両立できる安心度の高い制御が可能となる。
したがって、(7)の発明によれば、塩化水素濃度及び又は硫黄酸化物濃度の平均値に基づいてアルカリ剤の添加量出力値を算出するので、添加量削減と酸性ガスの安定処理が両立できる安心度の高い制御が可能となる。
(8) 前記アルカリ剤が平均粒子径5〜30μmの微粉重曹である(1)から(7)のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
本発明に用いるアルカリ剤は、特に制限はない。特に酸性ガスとの反応が速い平均粒子径が5〜30μmに調整された微粉重曹は、制御応答性が良く、本発明の制御手法の性能を効果的に発揮できる。また、消石灰も適用可能である。この場合、JIS特号消石灰でも適用可能であるが、酸性ガスとの反応性が高い比表面積が例えば30m/g以上である高比表面積の消石灰を用いた方が、本発明の性能を発揮できる。
(9) 前記微粉重曹とは異なる他のアルカリ剤を併用する(8)に記載の酸性ガスの処理方法。
本発明の効果を発揮するアルカリ剤としては特に制限はない。微粉重曹以外のアルカリ剤としては、消石灰、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等が例示できる。また、アルカリ剤が粉体の場合、酸性ガスとの反応性が高い粒子径が30μm未満、特に5〜20μmの微粉のほうが好ましい。予め粒径を調整した剤を適用しても良いし、現地に粉砕設備を設け、粒径の粗いアルカリ剤を現地で粉砕しながら添加しても良い。また、各アルカリ剤を水に溶解したスラリー又は水溶液でも実施が可能である。
(10) 前記他のアルカリ剤は、消石灰、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ、及び粗重曹からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤である(9)に記載の酸性ガスの処理方法。
本発明による制御を実施するアルカリ剤とは異なる安価なアルカリ剤を併用することも経済的に有効な手段となる。併用するアルカリ剤に制限はないが、一般的に用いられる安価なアルカリ剤としては、消石灰、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ、粗重曹が例示できる。
本発明により、新たな高価な酸性ガス測定装置を導入する必要のないフィードバック形式において、出口の酸性ガス濃度のピーク発生が少ない安定した酸性ガス処理を行うと共にアルカリ剤の過剰添加を削減するための新たな制御方式による酸性ガス処理方法を提供することが可能となる。
焼却施設における排ガスであるHClに微粉重曹を添加する酸性ガス処理システム1の構成を表すブロック図である。 シミュレーション反応系の基本構成図である。 排ガス反応における微粉重曹添加当量とHCl除去率の関係を示すグラフである。 バグフィルター上反応における微粉重曹添加当量とHCl除去率の関係を示すグラフである。 入口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実機検討結果の微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 シミュレーション検討結果の微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 シミュレーション検討結果の比較例及び実施例ごとのアルカリ剤添加量等を示す表である。 入口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 比較例1における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例1における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 比較例2、実施例2及び20におけるステップ制御方式の制御設定の表である。 比較例2における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例2における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 比較例3、実施例3,9,10,11,17,18,21及び22におけるステップ制御方式の制御設定の表である。 比較例3における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例3における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例4における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例5における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例6における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例7における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例8における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例9における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例10における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例11における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例12における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例13における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例14における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例15における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例16における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例17における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例18における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 比較例4における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例19における微粉重曹添加量及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例20における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例21における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例22における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 焼却施設における排ガスであるHClに微粉重曹を添加する酸性ガス処理システム2の構成を表すブロック図である。 実機検討結果の比較例及び実施例ごとのアルカリ剤添加量等を示す表である。 比較例5における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 比較例6、実施例23及び24におけるステップ制御方式の制御設定の表である。 比較例6における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例23における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。 実施例24における微粉重曹添加量、入口HCl濃度及び出口HCl濃度の挙動を示すグラフである。
以下に実施形態を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、焼却施設における排ガスであるHClに微粉重曹を添加する酸性ガス処理システム1の構成を表すブロック図である。
酸性ガス処理システム1は、制御装置11、微粉重曹添加装置12、バグフィルター13、HCl濃度測定機器14から構成されている。制御装置11は、HCl濃度測定機器14から送信されるHCl濃度測定信号、及び過去の平均添加量から算出される基礎添加量に基づいて微粉重曹の添加量出力値をフィードバック制御(PID制御方式又はステップ方式)により算出する。微粉重曹添加装置12は、制御装置11が算出した微粉重曹の添加量出力値に基づいて排ガス中のHClに微粉重曹を添加する。
なお、基礎添加量は、平均時間(例えば、移動平均時間)に応じた過去の平均添加量に1倍以下の係数を乗じて算出される。
バグフィルター13は、排ガス中のHClと微粉重曹の反応後の粉塵を除去する。HCl濃度測定機器14は、バグフィルター13上に蓄積した微粉重曹(排ガス中のHClとの反応によって残存した微粉重曹がバグフィルター13上に蓄積される)と排ガス反応後のHClとが反応した後のHCl濃度(後述するバグフィルター出口HCl濃度)を測定して、HCl濃度測定信号を制御装置11に送信する。
酸性ガス処理システム1は、このようなサイクルを繰り返してフィードバック制御を行うことで、制御装置11は、微粉重曹添加量の制御出力値を適切なものとする制御を行う。
なお、HCl濃度測定機器14は、例えばイオン電極式のHCl濃度測定装置である。
また、図1に示すように、バグフィルター13上に蓄積した微粉重曹と排ガス反応後のHClとが反応した後のHCl濃度(後述するバグフィルター出口HCl濃度)を測定するようにHCl濃度測定機器14を設置するのが好ましい。これは、排ガス中のHClとの反応によって残存した微粉重曹がバグフィルター13上に蓄積され、この蓄積された微粉重曹が排ガス反応後のHClと反応するため、より正確にHCl濃度の測定ができるからである。
また、制御装置11は、算出した基礎添加量を微粉重曹の添加量出力値の下限値(例えば、後述するLO:添加量下限)としてフィードバック制御を行う。
したがって、本基礎添加量をベースにして従来のフィードバック演算により添加量の過不足が調整されるため、アルカリ剤の添加が適正化され、酸性ガスを効率的に処理することができる。
また、平均添加量の平均時間は、特に制限はないが、添加量の移動平均等の平均値を活用するのが有効で平均時間は5分以上、15〜24時間程度で活用するのが好ましい。また、基礎添加量で規定する係数は、1倍以下が良い。1倍以上の係数を用いた場合、酸性ガスの安定処理は可能であるが、入口酸性ガス濃度の減少に伴う添加量の減少を妨げるため過剰添加となる。基礎添加量は、平均添加量の、1倍以下(係数100%以下)であれば良いが、特に0.5〜0.95倍(50〜95%)、特に0.7〜0.9倍(70〜90%)が好ましい。
さらに、制御装置11は、HCl濃度の傾き(濃度の時間変化率)が正の範囲と負の範囲の2つの範囲を設ける。そして、これら2つの範囲毎にHCl濃度の制御目標値を設定する。
ここで、HCl濃度の制御目標値の設定は、HCl濃度の傾きが正の範囲に対して設ける制御目標値が、負の範囲に対する制御目標値よりも小さくなるように設定してもよい。このようにすることで、HCl濃度上昇時での微粉重曹添加量を、HCl濃度下降時よりも多くできる。また、逆にHCl濃度下降時での微粉重曹添加量を、HCl濃度上昇時よりも少なくできる。よって、フィードバック演算による微粉重曹の添加出力を前倒しで実施することができ、計測遅延による影響をさらに軽減することができる。
さらに、制御装置11は、ステップ方式によるフィードバック制御を行っても良い。ここで、ステップ方式は、HCl濃度に応じた制御出力を段階的に設定する制御方式である。具体的には、PID制御方式において設定されている制御出力値の上限値に加えて、制御出力値の新たな上限値をHCl濃度に対応して設定する。
ここで、通常のPID制御における出力上限は1つしかなく、酸性ガスが制御目標値以上になると酸性ガス濃度の大きさにかかわらず、上限値までアルカリ剤は添加可能となり、過剰添加を引き起こす。そこで、ステップ制御方式を採用することにより、添加量出力値の下限値と上限値との間に、現在のHCl濃度に応じた新たな制御出力上限値を加えることにより、HCl濃度の大きさに応じて微粉重曹の適正な添加が可能となり、添加量の過剰添加の抑制が可能となる。
さらに、HCl濃度に対応して新たな制御出力上限値(例えば、後述する図12、図15、図41のLM1[出力制限1]、LM2[出力制限2])が設定されるが、HCl濃度が高いほど新たな制御出力上限値も高く設定される。ただし、アルカリ剤の過剰添加の抑制のためには、PID制御方式において設定されている制御出力値の上限値(例えば、後述する図12、図15、図41のLH[制御出力上限])より小さい値とすることが好ましい。
本実施形態で用いる酸性ガスの測定装置は計測方式によらず実施が可能である。塩化水素濃度は、イオン電極法、レーザーによる単一吸収線吸収分光法等で測定可能であり、硫黄酸化物は、赤外線吸収法、紫外線蛍光法等で測定が可能である。なお、本実施形態では、従来のフィードバック制御では加味されていなかった妥当な基礎添加量を活用することにより改善効果が得られることから、計測遅延速度によらず本発明の効果が得られる。
産業廃棄物焼却炉や民間工場の燃焼施設においては、塩化水素と硫黄酸化物が高濃度で発生することが多い。この際には、塩化水素と硫黄酸化物の両方が処理対象となり、バグフィルター後段に設けられた塩化水素濃度測定装置の塩化水素濃度をもとに前記制御方式において求められた制御出力と硫黄酸化物濃度をもとに前記制御方式において求められた制御出力を例えば加算することにより、塩化水素並びに硫黄酸化物の両酸性ガスを安定して処理することができる。
さらに、酸性ガスの排出濃度管理を各酸性ガス濃度(塩化水素、硫黄酸化物濃度)の1時間平均値で管理している施設がある。一般的には、制御目標値(SV)を設けて制御するが、制御目標値はあくまで目標であり、制御した結果目標値を超える濃度となるケースが往々にしてある。特に添加量削減と酸性ガスの安定処理は相反する思想であることから、添加量削減を求めれば求めるだけ、1時間平均値が管理値を超えるリスクが強まる。この場合、1時間平均管理値以上、もしくはそれに近い濃度に達した場合、多量のアルカリ剤(ある一定添加量を規定)を添加することにより、添加量削減と酸性ガスの安定処理が両立できる安心度の高い制御が可能となる。
本実施形態で用いるアルカリ剤は、特に制限はない。特に酸性ガスとの反応が速い平均粒子径が5〜30μmに調整された微粉重曹は、制御応答性が良く、本制御手法の性能を効果的に発揮することができる。また、消石灰は、JIS特号消石灰でも可能であるが、酸性ガスとの反応性が高い比表面積が例えば30m/g以上である高比表面積の消石灰を用いた方が、本発明の性能を発揮できる。前記以外のアルカリ剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等が例示できる。
また、アルカリ剤が粉体の場合、酸性ガスとの反応性が高い粒子径が30μm未満、特に5〜20μmの微粉のほうが好ましい。予め粒径を調整した剤を適用しても良いし、現地に粉砕設備を設け、粒径の粗いアルカリ剤を現地で粉砕しながら添加しても良い。また、各アルカリ剤を水に溶解したスラリー又は水溶液でも実施が可能である。
さらに、本実施形態による制御を実施するアルカリ剤とは異なる、安価なアルカリ剤を併用することも経済的に有効な手段となる。併用するアルカリ剤に制限はないが、一般的に用いられる安価なアルカリ剤としては、消石灰、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ、粗重曹が例示できる。
シミュレーション反応系について説明する。
[シミュレーション反応系]:排ガスとバグフィルター上における複合反応
シミュレーション反応系は、微粉重曹と塩化水素(HCL)との反応が排ガス中で瞬時におきる反応と、バグフィルター上に蓄積した未反応の微粉重曹とHCLとの二つの反応により構成した(図2参照)。また、バグフィルターにおける捕集物の滞留時間は、通常2時間程度である。従って、本シミュレーションにおいては、バグフィルター上の微粉重曹は、規定時間(約2時間で設定)で消滅する形とした。
図2を参照して、シミュレーション反応系の基本構成を説明する。
まず、焼却施設における薬注制御では、バグフィルター出口に設置されたイオン電極式のHCl濃度測定機器のHCl濃度(処理後)信号を基にPID等の制御式の演算により薬剤添加量(微粉重曹添加量(Ag))を決定し(下記式(1))、決定した添加量の微粉重曹(酸性ガス処理剤)を排ガス(入口HCl濃度(Hi))に添加する。煙道に添加された微粉重曹は排ガス中のHCl等の酸性ガスと反応し、排ガス中のHClが除去される。
Ag=Ag1+LO (1)
Ag:微粉重曹添加量[kg/h]
Ag1:HCl濃度測定機器の出力から規定される添加量[kg/h](ステップ方式の場合、図12、15、41参照)
LO:添加量下限[kg/h]
通常時(本発明に係る基礎添加量を適用しない場合)には、予め設定したLOを使用する。
本発明に係る基礎添加量を適用する場合には、LOを指定時間の移動平均添加量に所定の係数を乗じた基礎添加量として出力を演算する。
また、微粉重曹による入口HCl濃度のHCl除去率は、弊社微粉重曹の適用知見から排ガス反応微粉重曹添加当量(Jg)と排ガス反応HCl除去率(αg)との関係(図3)及びバグフィルター上反応微粉重曹添加当量(Js)とバグフィルター上反応HCl除去率(αs)との関係(図4)から試算した。また、HClと微粉重曹との反応は瞬時とした。まず、排ガスにおける反応後のHCl濃度(Hg)は、排ガス反応の微粉重曹添加当量(Jg)と排ガス反応HCl除去率(αg)により導かれる(下記式(2))。なお、排ガス反応の微粉重曹添加当量(Jg)は、下記式(3)により算出される。
Hg=Hi×(1−αg÷100) (2)
Hi:入口HCl濃度(ppm)
Hg:排ガス反応後HCl濃度(ppm)
αg:排ガス反応におけるHCl除去率(%)
[排ガス反応微粉重曹添加当量とHCl除去率の関係(図3)から設定]
Jg=Ag÷{Hi÷0.614÷1000÷M1×M2×F÷1000} (3)
Jg:排ガス反応微粉重曹添加当量
Ag:微粉重曹添加量(kg/h)
Hi:入口HCl濃度(ppm)
M1:HCl分子量[36.5で設定]
M2:重曹分子量[84で設定]
F:排ガス量(Nm/h)[55,000Nm/hで設定]
また、排ガス反応により残存した微粉重曹は、バグフィルター上に随時蓄積する。BF上に蓄積した微粉重曹は、排ガス反応後のHClと反応し、バグフィルター出口のHCl濃度(Ho)が決まる。この際、BF上蓄積微粉重曹量(As)は、排ガス反応で蓄積した微粉重曹からBF上でHClと反応した微粉重曹量を差し引いた。また、本バグフィルター上蓄積微粉重曹量(As)と排ガス反応後のHCl濃度(Hg)から試算されるバグフィルター上微粉重曹添加当量(Js)(下記式(5))からバグフィルター上でのHCl除去率(αs)を決め、バグフィルター出口のHCl濃度(Ho)を決定した(下記式(4))。
Ho=Hg×(1−αs÷100) (4)
Hg:排ガス反応後HCl濃度(ppm)
Ho:バグフィルター出口HCl濃度(ppm)
αs:バグフィルター上反応のHCl除去率(%)
[バグフィルター上微粉重曹添加当量とHCl除去率の関係(図4)から設定]
Js=As÷{Hg÷0.614÷1000÷M1×M2×F÷1000} (5)
Js:バグフィルター上微粉重曹添加当量
As:バグフィルター上微粉重曹量(kg/h)
Hg:排ガス反応後HCl濃度(ppm)
M1:HCl分子量[36.5で設定]
M2:重曹分子量[84で設定]
F:排ガス量(Nm/h)[55,000Nm/hで設定]
As=Z÷Ts×3600 (6)
:バグフィルター上微粉重曹蓄積量(kg)
Ts:単位シミュレーション時間(=データサンプリング時間)(sec)
[0.5sec設定]
=Zn’×(1−2.3÷T4×Ts) (7)
n’:未反応微粉重曹量(kg)
T4:バグフィルター上蓄積微粉重曹90%消滅時定数(sec)
[7,200sec設定]
Ts:単位シミュレーション時間(=データサンプリング時間)(sec)
[0.5sec設定]
n’=(Ag÷3600×Ts−Rg)+(Zn−1−Rs) (8)
Ag:微粉重曹添加量(kg/h)
Ts:単位シミュレーション時間(=データサンプリング時間)(sec)
[0.5sec設定]
Rg:排ガス反応における重曹反応量(kg/h)
n−1:Ts(Sec)前のバグフィルター上微粉重曹蓄積量(kg)
Rs:バグフィルター上反応における重曹反応量(kg/h)
Rg=(Hi÷0.614÷1000÷M1×M2×F÷1000)÷3600×Ts×αg÷100 (9)
Hi:入口HCl濃度(ppm)
M1:HCl分子量[36.5で設定]
M2:重曹分子量[84で設定]
F:排ガス量(Nm/h)[55,000Nm/hで設定]
αg:排ガス反応におけるHCl除去率(%)
Rs=(Hg÷0.614÷1000÷M1×M2×F÷1000)÷3600×Ts×αs÷100 (10)
Hg:排ガス反応後HCl濃度(ppm)
M1:HCl分子量[36.5で設定]
M2:重曹分子量[84で設定]
F:排ガス量(Nm/h)[55,000Nm/hで設定]
αs:バグフィルター上反応のHCl除去率(%)
本反応後のバグフィルター出口のHCl濃度がイオン電極式のHCl濃度測定機器14で測定される。ところで、イオン電極式のHCl濃度測定機器14では、施設による遅延時間(T1)、排ガスサンプリングによる計測遅延時間(T2α)、及びイオン電極式の測定による計測遅延時間(T2β,応答時間)があり、フィードバック特有の制御遅れが発生する。
そこで本シミュレーションのHCl濃度測定機器14の遅延時間(T)は、施設による遅延時間(T1)とHCl濃度測定機器14の計測遅延時間(T2)の合計とした(下記式(11))。なお、HCl濃度測定機器14の計測遅延時間(T2)は、HCl処理後の排ガスを煙道からサンプリングする計測遅延時間(T2α)とイオン電極式HCl濃度測定機器(T2β)の計測遅延時間(応答時間)を設定し、これらの和とした(下記式(12))。一般的に用いられているイオン電極式の90%応答時間(計測遅延)は、HClガスの吸収液への拡散が影響するためT2βは(下記式(13))とした。本シミュレーションにおいて、計測遅延時間の長いイオン電極式は、実機施設の状況からT1=30秒,T2α=390秒(サンプリング遅延210秒+臭素スクラバー通過遅延180秒),T2β=180秒の計600秒(10分:T1=0.5分,T2=9.5分)とした。
なお、イオン電極式より計測遅延時間の短いHCl濃度測定機器を用いる場合、計測遅延時間を変えて挙動を確認した。
[HCl濃度測定機器(低速応答、イオン電極式を模擬)]
T=T1+T2 (11)
T:HCl濃度測定機器のシミュレーション反応系の遅延時間(sec)
T1:施設の遅延時間(sec)[30sec設定]
T2:HCl濃度測定機器の計測遅延時間(sec)
T2=T2α+T2β (12)
T2α:HCl濃度測定機器の排ガスサンプリング時間(sec)
[390sec設定]
T2β:HCl濃度測定機器の90%応答時間(sec)[180sec設定]
T2β=2.3×τ (13)
=Yn−1+(X−Yn−1)÷τ×Ts (14)
τ:時定数(sec)
Ts:単位シミュレーション時間(=データサンプリング時間)(sec)
[0.5sec設定]
Xn:現在の測定装置入力HCl濃度(ppm)
Yn:現在の測定装置出力HCl濃度(ppm)
n−1:前回(Ts(sec)前)の測定装置出力HCl濃度(ppm)
また、酸性ガスを処理するアルカリ剤の添加量は、HCl計測機器で測定された濃度を基に試算したフィードバックにより求められる添加出力を基に規定される(上記式(1))。本発明に係る基礎添加量は、移動平均添加量×係数(1倍以下)をフィードバック制御の下限として演算した。
また、図5に示すように変動する入口HCl濃度を用いて、実機におけるPIDの添加挙動並びにHCl発生状況(図6)及び本シミュレーション反応系の結果(図7)から排ガス反応とBF上反応のHClとの反応効率を設定した。本検討結果を図6及び図7に示す。本施設においては、排ガスのHCl除去効率が80%、BF上反応の除去効率が65%で実機とシミュレーションの挙動が一致した(図6、図7)。従って、本条件で以下シミュレーションを行った。なお、本シミュレーションにおいては、制御手法による制御応答性を明らかにするため、比較的変動の大きな時間帯の入口HCl濃度(Hi)を用いて実施した。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の実施例における検討は、実機検討結果からシミュレーション反応系を制作し、各制御手法による制御結果を検討したものである。なお、基礎添加量における平均添加量の平均時間の長い条件(3時間、6時間)があるため、入口HCl濃度を繰り返し用い、6〜9時間経過時の結果で評価した。
[比較例1]
図9に示す入口HCl濃度を用いて、前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間計9.5分)で計測したHCl濃度を基にPID制御方式「P(比例ゲイン)=100%,I=0.1秒,D=0.1秒,添加量出力下限200kg/h,添加量出力上限480kg/h」において出口HCl濃度の制御目標値(SV)を200ppmに設定しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度(平均,1時間平均最大,瞬時最大,1時間平均最少,瞬時最少)を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図10に示す。
酸性ガスの排出管理値として良く用いられる出口HCl濃度の1時間平均値の最大値は、212ppm、瞬時最大は384ppmであった。
[実施例1]
30分移動平均添加量(kg/h)に80%の係数を乗じ、基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例1に示す同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図11に示す。
実施例1によれば、1時間平均値のHClの最大値は、189ppm、瞬時最大は309ppmと比較例1に比べ酸性ガス処理性能が向上すると共に添加量も330kg/hから315kg/hに削減された。
ここで、ステップ制御方式の概要を説明する。比較例2,3及び6、実施例2,3,9〜11,17,18,20〜24ではPID制御方式に代わりステップ制御方式による制御を行う。
ステップ方式はPID制御方式と異なり、出口のHCl濃度に応じて出力を段階的に規定する制御方式とした。比較例2、実施例2,20(図12)で説明するとHCl濃度がSV制御目標値[制御出力開始濃度(出力下限以上)]〜SM1間は制御出力をLOとLM1間で段階的に出力する。HCl濃度がSM1〜SM2間ではLM2で設定した制御出力を出力し、SM2以上ではLH(制御出力上限)を出力する形式とした。なお、通常のPID制御式では出力制限がなく、LOとLHの設定だけである。また、HCl傾きによる制御演算で用いるHCl濃度と制御出力を決めるテーブルの補正はSVA1とSVA2で行い、HCl傾きが正の時は演算で用いるHCl濃度からSVA1を引き、HCl傾きが負の時は演算で用いるHCl濃度にSVA2を足した。これにより同一のHCl濃度を入力した際に演算される制御出力が、HCl傾きの値が大きい場合(酸性ガス濃度が増加傾向)の制御出力値がHCl傾きの値が小さい場合の制御出力値に比べ大きくなる形式とした。
なお、微粉重曹添加量(Ag)は、上記式(1)で求められる。
[比較例2]
前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間9.5分)で計測したHCl濃度を基にステップ方式の制御において制御目標値(本方式ではアルカリ剤の制御出力が出力下限以上に添加される濃度をSVと規定する)を200ppmに設定しフィードバック制御(図12参照)した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図13に示す。
ステップ方式による出口HCl濃度の1時間平均値の最大値は、212ppm、瞬時最大は383ppmであった。
[実施例2]
30分移動平均添加量(kg/h)に80%の係数を乗じ、基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例2に示すステップ方式の同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図14に示す。
実施例2によれば、ステップ方式においても出口HCl濃度の1時間平均値の最大値は、195ppm、瞬時最大は320ppmと比較例2に比べ酸性ガス処理性能が向上すると共に添加量も295kg/hから289kg/hに削減された。
[比較例3]
前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間9.5分)で計測したHCl濃度を基にステップ方式の制御において直近のHCl濃度の傾きの6秒平均が正の場合、制御目標値(SV)を180ppm(SV−20ppm)とし、直近のHCl濃度の傾きの6秒平均が負の場合、制御目標値(SV)を220ppm(SV+20ppm)としてフィードバック制御(図15参照)した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図16に示す。
本ステップ方式に加え、制御目標値をHCl濃度の傾きにより変更(以降SV変更と称す)した本フィードバック制御による出口HCl濃度の1時間平均値の最大値は、216ppm、瞬時最大は381ppmであった。
[実施例3]
30分移動平均添加量(kg/h)に80%の係数を乗じ、基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例3に示すフィードバック形式の同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図17に示す。
実施例3によれば、前記フィードバック方式においても出口HCl濃度の1時間平均値の最大値は、198ppm、瞬時最大は283ppmと比較例3に比べ酸性ガス処理性能が向上すると共に添加量も301kg/hから289kg/hに削減された。
[実施例4〜8]
平均時間を変えた移動平均添加量(kg/h)[実施例4:5分、実施例5:15分、実施例6:1時間、実施例7:3時間、実施例8:6時間]に80%の係数を乗じ、基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例1に示す同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図18〜22に示す。
実施例4〜8によれば、平均添加量に1倍以下の係数を乗じた基礎添加量をフィードバック制御の因子として活用し、アルカリ剤の添加量を演算することにより酸性ガスの安定処理が可能となる。
実施例4〜8の効果は、平均添加量の因子をフィードバックに活用することにより得られ、平均時間に特に制限がない。添加量平均時間5分(実施例4)においては同等の添加量で出口HCl濃度1時間平均値最大で186ppm,瞬時最大369ppmと酸性ガスの安定処理効果が得られる。さらに添加量平均時間6時間(実施例8)においても出口HCl濃度の1時間平均値最大は194ppm,瞬時最大308ppmと安定処理効果が得られると共に添加量も311kg/hに削減されている。添加量の平均時間は5分以上が好ましく、特に15分〜6時間が好ましい。
[実施例9〜11]
平均時間を変えた移動平均添加量(kg/h)[実施例9:15分、実施例10:1時間、実施例11:3時間]に80%の係数を乗じ、基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例3に示す同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図23〜25に示す。
ステップ+SV変更方式によるフィードバック制御における添加量平均時間15分〜3時間で変えた際の実施例9〜11によれば、添加量平均時間に関わらず、酸性ガス安定処理効果と添加量削減効果が得られる。本方式は、特に添加量が288〜292kg/hと添加量削減効果に優れた制御方式である。
[実施例12〜16]
1時間移動平均添加量(kg/h)に乗ずる係数を変え[実施例12:95%、実施例13:90%、実施例14:80%、実施例15:70%、実施例16:50%]基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例1に示す同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図26〜30に示す。
実施例12〜16の効果は、平均添加量の因子をフィードバックに活用することにより得られ、基礎添加量を演算する際に平均添加量に乗ずる係数は1倍以下であれば良く特に制限がない。本係数に1倍(100%)以上の係数を乗じた場合、入口HCl濃度が減少しても、本基礎添加量に用いる平均添加量が減少せず過剰添加を引き起こす。
本基礎添加量を演算する係数が95%(実施例12)〜70%(実施例15)においては、いずれも出口HCl濃度の1時間平均値最大並びに瞬時最大値が比較例1に比べ低下し、酸性ガスの安定処理効果を得ると共に添加量削減効果が得られた。また、係数が50%では(実施例16)添加量が若干増加したものの酸性ガス安定処理効果が得られている。基礎添加量を演算する際に平均添加量に乗ずる係数は、1倍以下であれば良く。好ましくは50〜95%、特に70〜90%が好ましい。
[実施例17、18]
1時間移動平均添加量(kg/h)に乗ずる係数を変え[実施例17:90%、実施例18:70%]基礎添加量とし、添加量出力下限として活用した以外は、比較例3に示す同一設定条件において演算しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図31、32に示す。
ステップ+SV変更方式によるフィードバック制御における基礎添加量を演算する際に乗ずる係数を70〜90%で変えた際の実施例17、18によれば、基礎添加量を演算する係数に関わらず、酸性ガス安定処理効果と添加量削減効果が得られる。また、本方式は、特に添加量が289〜297kg/hと添加量削減効果に優れた制御方式である。
[比較例4]
前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間計2秒)で計測したHCl濃度を基にPID制御方式「P(比例ゲイン)=100%,I=0.1秒,D=0.1秒,添加量出力下限200kg/h,添加量出力上限480kg/h」において出口HCl濃度の制御目標値(SV)を200ppmに設定しフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図33に示す。
測定機器の計測遅延時間による影響を検討した。計測遅延の少ない高速応答のHCl測定機器を用いてフィードバック制御した場合、アルカリ剤の添加量変化と出口HCl濃度の変化は瞬時に起こり改善はされるものと予測された。しかしながら、アルカリ剤添加変動による添加不良は起こると予測され、酸性ガスの排出管理値として良く用いられる出口HCl濃度の1時間平均値の最大値は、209ppm、瞬時最大は385ppmであった。
[実施例19]
前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間計2秒)で計測したHCl濃度を基にPID制御演算した以外は実施例1と同一条件でフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図34に示す。
[実施例20]
前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間計2秒)で計測したHCl濃度を基にステップ方式による演算をした以外は実施例2と同一条件でフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図35に示す。
[実施例21]
前記シミュレーションにおいてHCl測定機器(測定機器計測遅延時間計2秒)で計測したHCl濃度を基にステップ+SV変更方式による演算をした以外は実施例3と同一条件でフィードバック制御した。
微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図36に示す。
実施例21によれば、計測機器の計測遅延時間の長短に関わらず効果を発揮する。また制御形式としてはフィードバック形式であればいずれも効果を発揮する。実施例19〜21は、計測遅延時間2秒を想定した結果であるが、フィードバックによるアルカリ剤の添加不良を抑制し、いずれも酸性ガスの安定処理効果並びに添加量削減効果が得られた。
[実施例22]
前記シミュレーションにおいて出口HCl濃度の1時間平均値が190ppmを超えた場合、480kg/hのアルカリ剤の添加を実施した以外は、実施例10と同一条件(遅延時間9.5分,ステップ+SV変更)でフィードバック制御した。微粉重曹添加量と微粉重曹で処理した後のバグフィルター出口HCl濃度を図8に示す。また、本制御時の微粉重曹添加量とバグフィルター出口HCl濃度の挙動を図37に示す。
酸性ガスの排出濃度管理は各酸性ガス濃度(塩化水素、硫黄酸化物濃度)の1時間平均値で管理している施設がある。制御においては制御目標値(SV)を設けて制御するのが一般的であるが、制御目標値はあくまで目標であり、制御した結果目標値を超える濃度となるケースがある。
本実施例は、出口HCl濃度の1時間平均値が200ppmを超えた実施例10において、1時間平均管理(190ppm以上は480kg/h添加)を実施した例である。出口の1時間平均値が管理すべき濃度に近づいた場合、アルカリ剤を大量に添加する制御を実施することにより、酸性ガスの更なる安定処理効果と効率的なアルカリ剤の利用が可能となる。
以下、実機検討結果である、比較例5、6、実施例23、24について説明するにあたり、比較例5、6、実施例23、24において用いられる酸性ガス処理システム2の構成について説明する。
図38は、焼却施設における排ガスであるHClに微粉重曹を添加する酸性ガス処理システム2の構成を表すブロック図である。
酸性ガス処理システム2は、制御装置21、微粉重曹添加装置22、微粉重曹添加装置26、バグフィルター23、HCl濃度測定機器(イオン電極方式)24から構成されている。制御装置21は、HCl濃度測定機器(イオン電極方式)24から送信されるHCl濃度測定信号、及び過去の平均添加量から算出される基礎添加量に基づいて微粉重曹の添加量出力値をフィードバック制御(PID制御方式又はステップ方式)により算出する。微粉重曹添加装置22は、制御装置21が算出した微粉重曹の添加量出力値に基づいて排ガス中のHClに微粉重曹を添加する。また、微粉重曹添加装置26は、制御装置21が算出した微粉重曹の添加量出力値とは無関係に一定量の微粉重曹を排ガス中のHClに添加する。
なお、基礎添加量は、平均時間(例えば、移動平均時間)に応じた過去の平均添加量に1倍以下の係数を乗じて算出される。
バグフィルター23は、排ガス中のHClと微粉重曹の反応後の粉塵を除去する。HCl濃度測定機器(イオン電極方式)24は、バグフィルター23上に蓄積した微粉重曹(排ガス中のHClとの反応によって残存した微粉重曹がバグフィルター23上に蓄積される)と排ガス反応後のHClとが反応した後のHCl濃度(後述するバグフィルター出口HCl濃度)を測定して、HCl濃度測定信号を制御装置21に送信する。
なお、バグフィルターの入口HCl濃度は、図示しないHCl濃度測定機器(レーザー方式)によって測定される。
酸性ガス処理システム2は、このようなサイクルを繰り返してフィードバック制御を行うことで、制御装置21は、微粉重曹添加量の制御出力値を適切なものとする制御を行う。
[比較例5]
産業廃棄物焼却炉において、減温塔出口〜バグフィルター間にレーザー形式のHCl測定機器(京都電子工業製KLA−1)を設置し、入口HCl濃度を測定した。また、バグフィルター出口のイオン電極方式のHCl測定機器(京都電子工業製HL−36N)で測定される信号を基に排出基準値を管理する酸素換算値にてフィードバック制御を実施した。なお、出口のSOx濃度信号によるフィードバック添加出力(SV180ppm)をHCl濃度による添加出力に加算して、実施したが、本施設においては、SOxが発生しなかったため本報告からは割愛する。
また、酸性ガスを処理するアルカリ剤は、8μm微粉重曹(栗田工業製ハイパーサーB−200)を上記フィードバック制御により添加した。アルカリ剤の添加装置は、最大添加量の問題から2台活用し、1台は180kg/h定量添加とし、1台は前記出口HCl濃度信号を基に「下限を20kg/h上限300kg/h、PID制御設定P(比例ゲイン)=100%,I=0.1秒,D=0.1秒」でフィードバック制御した。
バグフィルター入口HCl濃度並びにバグフィルター出口HCl濃度と微粉重曹の添加量(添加装置2台合算)を図39に示す。また、本制御実施時の微粉重曹添加量とバグフィルター入口出口のHCl濃度の挙動を図40に示す。
[比較例6]
同一施設において、バグフィルター出口のイオン電極方式のHCl測定機器(京都電子工業製HL−36N)で測定されるHCl濃度信号(酸素換算値)にてフィードバック制御を実施した。なお、同様に出口のSOx濃度信号によるフィードバック添加出力(SV180ppm)をHCl濃度による添加出力に加算して、実施した。
また、添加装置は、同様に1台は180kg/h定量添加とし、1台は「ステップ+SV変更方式(詳細は図41参照)」とした。
バグフィルター入口HCl濃度並びにバグフィルター出口HCl濃度と微粉重曹の添加量(添加装置2台合算)を図39に示す。また、本制御実施時の微粉重曹添加量とバグフィルター入口出口のHCl濃度の挙動を図42に示す。
[実施例23]
同一施設において、「ステップ+SV変更方式」のフィードバック制御において、基礎添加量[30分移動平均添加量,係数70%]を活用し、出口HCl濃度1時間平均値が213ppm以上[本施設HCl管理値215ppm以下]で300kg/h添加する以外は、比較例6と同一の設定でフィードバック制御を実施した。なお、同様に出口のSOx濃度信号によるフィードバック添加出力(SV180ppm)をHCl濃度による添加出力に加算して、実施した。
また、添加装置は、同様に1台は180kg/h定量添加とし、1台は「ステップ+SV変更方式(詳細は図41参照)」とした。
バグフィルター入口HCl濃度並びにバグフィルター出口HCl濃度と微粉重曹の添加量(添加装置2台合算)を図39に示す。また、本制御実施時の微粉重曹添加量とバグフィルター入口出口のHCl濃度の挙動を図43に示す。
本実施例は、本発明の実機による適用結果である。比較例5、6に比べ、入口HCl濃度の変動が少なくなった。本実施例によれば、本発明に係る効率的なアルカリ剤の添加によりアルカリ剤の入口HCl濃度に対する添加量を示す添加当量は、比較例5、6に比べ削減でき、効率的な制御が可能であった。
[実施例24]
同一施設において、「ステップ+SV変更方式」のフィードバック制御において、比表面積が30m/g以上の高反応消石灰(奥多摩工業株式会社製タマカルクECO)を併用活用する以外は、実施例23と同一の設定でフィードバック制御を実施した。なお、同様に出口のSOx濃度信号によるフィードバック添加出力(SV180ppm)をHCl濃度による添加出力に加算して、実施した。
また、添加装置1台は、高反応消石灰を170kg/h定量添加とし、もう1台は「ステップ+SV変更方式(詳細は図41参照)」とした。
バグフィルター入口HCl濃度並びにバグフィルター出口HCl濃度と微粉重曹の添加量(添加装置2台合算)を図39に示す。また、本制御実施時の微粉重曹添加量とバグフィルター入口出口のHCl濃度の挙動を図44に示す。
本実施例は、比較的工業的に安価な消石灰と微粉重曹を併用して活用した事例である。本手法においても安定して酸性ガスの安定処理効果が得られる。安価な消石灰を活用し、酸性ガス処理費用が削減されることから工業的に有効な手法である。
1 酸性ガス処理システム
11 制御装置
12 微粉重曹添加装置
13 バグフィルター
14 HCl濃度測定機器

Claims (9)

  1. 酸性ガスが含まれる燃焼排ガスにアルカリ剤を添加し、粉塵を集塵した後の酸性ガス濃度を測定する酸性ガス濃度測定機器の測定信号に基づいてアルカリ剤の添加量をフィードバック制御する酸性ガスの処理方法であって、
    少なくとも所定時間に応じた平均添加量に1倍未満の係数を乗じた基礎添加量を算出する工程と、
    前記算出した基礎添加量に基づいてアルカリ剤の添加量出力値をフィードバック演算により算出し、前記アルカリ剤の添加量出力値として、前記算出した基礎添加量以上であって、予め定めた上限以下の値を得る工程と、を有する酸性ガスの処理方法。
  2. 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程において、
    前記算出した基礎添加量を前記アルカリ剤の添加量出力値の下限値とする請求項1に記載の酸性ガスの処理方法。
  3. 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、
    前記測定信号に基づいて演算される添加量出力値の下限値と上限値との間に、前記酸性ガス濃度に対応して前記添加量出力値の新たな上限値を1つ以上設定する工程をさらに有する請求項1又は2に記載の酸性ガスの処理方法。
  4. 前記基礎添加量を算出する工程は、5分以上から選択される予め定めた時間毎に前記酸性ガス濃度を所定時間測定し続けたときの前記酸性ガス濃度の平均値で規定される移動平均添加量の0.5倍から0.95倍を基礎添加量とする工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
  5. 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、
    当該フィードバック演算に加え、塩化水素濃度から演算された制御出力と硫黄酸化物濃度から演算された制御出力の両出力を用いてアルカリ剤の添加量出力値を算出する工程をさらに有する請求項1から4のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
  6. 前記添加量出力値をフィードバック演算により算出する工程は、
    当該フィードバック演算に加え、塩化水素濃度及び又は硫黄酸化物濃度の平均値を元にアルカリ剤の添加量出力値を算出する工程をさらに有する請求項1から5のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
  7. 前記アルカリ剤が平均粒子径5〜30μmの微粉重曹である請求項1から6のいずれかに記載の酸性ガスの処理方法。
  8. 前記微粉重曹とは異なる他のアルカリ剤を併用する請求項7に記載の酸性ガスの処理方法。
  9. 前記他のアルカリ剤は、消石灰、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ、及び粗重曹からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤である請求項8に記載の酸性ガスの処理方法。
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