JP5703847B2 - 超低粘度塗剤を用いたグラビアコーティング方法およびこの方法により製造されたガスバリア性フィルム - Google Patents
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Description
圧胴とグラビア版とを用いて被塗布基材に塗剤をグラビアコーティングするに際し、表面のゴム硬度が40〜60度である圧胴を用いて20℃における粘度が0mPa・sより大きく5mPa・s以下である塗剤を塗布するグラビアコーティング方法である。
さらに、圧胴の上部に圧胴を固定するバックアップロールを配し、該バックアップロールの圧胴ならびにグラビア版に対するニップ圧力が0.3MPa以下であるグラビアコーティング方法である。
ガスバリア性フィルム及びそれを用いた包装材料は、既によく知られている。最も優れたガスバリア性を有する材料は、アルミニウム箔である。しかし、アルミニウム箔は、単独ではピンホール強力が弱く、特殊な用途を除いては使用できない。このため、アルミニウム膜はほとんどラミネートフィルムの中間層として使用される。アルミニウムのラミネートフィルムのガスバリア性は非常に優れている。しかし、このラミネートフィルムは、不透明であるため内容物が見えない、確実にヒートシールされたか判断するのが難しい、電子レンジを用いた調理を要する食品の包装材としては使用できない等の欠点がある。
本発明のグラビアコーティング方法を好ましく適用できるガスバリア性フィルムの基材フィルムとしてはポリエステルフィルムが挙げられる。使用できるポリエステルとしては、例えば、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアルキレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレートなど)などのホモ又はコポリアルキレンアリレート、液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
本発明のグラビアコーティング方法を好ましく適用できるガスバリア性フィルムの蒸着層を構成するのは、無機化合物である。使用できる無機化合物としては、金属酸化物層、金属窒化物層等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム合金、酸化珪素、酸化窒化珪素等及びそれらの混合酸化物、金属窒化物としては窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化珪素等が例示できる。この中でも蒸着フィルムの加工コストやガスバリア性能等の面から無機化合物としては酸化アルミニウム、酸化珪素および酸化窒化珪素が好ましい。
本発明のグラビアコーティング方法を好ましく適用できるガスバリア性フィルムのガスバリア層は、共重合体100質量部に占める割合が10〜30質量部である不飽和ニトリル(a)と、共重合体100質量部に占める割合が30〜70質量部である水酸基を有する不飽和化合物(b)とを用いて構成され、不飽和ニトリル(a)と水酸基を有する不飽和化合物(b)との合計が共重合体樹脂全体100質量部に対して20質量部以上である主剤と、イソシアネート基を有する化合物で構成される硬化剤(c)と、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(d1)との混合物を用いて形成されることが好ましい。
さらに好ましくは、ガスバリア層にはヒドロキシル基を少なくとも1つ含有するシランカップリング剤(d2)が添加される。使用できるシランカップリング剤(d2)としては、熱水殺菌処理に対する密着性を確保する観点から、アミノ基、ビニル基、エポキシ基の群から選択される1つ以上の官能基を有することが好ましい。
主剤に用いられる不飽和ニトリル(a)としては、アクリロニトリルが好ましい。アクリロニトリルはその分子構造中にニトリル基を有し、ニトリル基が大きく分極した官能基であることに由来して強い水素結合形成能を持つ。すなわち、アクリロニトリルを構成成分とする共重合体により形成された塗膜には、アクリロニトリルのニトリル基の大きな寄与により、ガスバリア性が付与される。アクリロニトリルの含有量によって発現するガスバリア性は変化する。
前述の通り、ガスバリア性を高める観点からは共重合体中の不飽和ニトリル(a)の含有量を高めた方が好ましい。しかし、特に不飽和ニトリル(a)であるポリアクリロニトリルはガラス転移温度が約300℃と高く、造膜させるには高温での処理が必要であるが、基材フィルムの融点などとの関係から造膜の温度を下げることが好ましい。また、ガスバリア性を決定する因子としては、凝集エネルギー密度、自由体積、結晶化度、配向性等が挙げられることは前記したが、極性の高い官能基を有するモノマー成分を共重合用モノマーとして用いる方法は、ガスバリア性を高める1つの手段である。このような観点から、水酸基も高い凝集力を示す官能基として機能し本発明では水酸基を有する不飽和化合物(b)を用いる。さらに本発明のグラビアコーティング方法を好適に使用できるガスバリア性フィルムのように水酸基を有する不飽和化合物(b)をガスバリア層に含有させる場合には、硬化剤との間で架橋構造を形成するため、無機酸化物蒸着層と強く密着し、塗膜強度や熱水処理に対する耐性を発現させることができる。
本発明のグラビアコーティング方法を好適に使用できるガスバリア性フィルムにおいて主剤に好ましく用いられる飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(e)に関して、不飽和カルボン酸エステルとして、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
本発明のグラビアコーティング方法を好適に使用できるガスバリア性フィルムにかかるガスバリア層には、その特性を損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化剤、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを添加してもよい。
本発明のグラビアコーティング方法を好適に使用できるガスバリア性フィルムでは、イソシアネート基を有する化合物で構成される硬化剤を、主剤である共重合樹脂と架橋させるために用いる。主剤として用いる共重合樹脂はそれを単独で塗布した場合、ガスバリア性は発現するものの塗膜強度や熱水処理耐性といった物性は得られない傾向がある。そこで、主剤である共重合樹脂が側鎖として有する水酸基と反応するイソシアネート基を有する化合物を硬化剤として用いる。架橋剤の添加により、架橋構造が生成されるので、ガスバリア性、塗膜強度および熱水処理耐性といった物性を兼ね備えたガスバリア層が形成される。イソシアネート基を有する化合物としては、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
さらに、上記例示したイソシアネート化合物と水酸基を有する化合物等との部分縮合物や各種誘導体の1種またはこれらの2種以上を用いてもよい。例えば、各種低分子量のジオールからオリゴマーまで幅広いジオール類や必要に応じて3官能以上のポリオール類との部分縮合物等が挙げられる。
本発明のグラビアコーティング方法を好適に使用できるガスバリア性フィルムでは、ガスバリア層を形成する材料として、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(d1)を用いる。これにより、無機酸化物蒸着層とガスバリア層との間の密着力が向上する。カルボキシル基または無水カルボン酸基は、無機酸化物層を形成するアルミナやシリカといった材料が有するアルミ−酸素結合や珪素−酸素結合などに対して、配位し易い性質を有する。そのため、ガスバリア層を形成する樹脂組成物に配合して塗布することで、無機酸化物表面に2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物が配位して、表面が有機的になり、樹脂組成物との密着力を向上させることができる。さらに、無機酸化物表面に2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物が配位することで、大気中の水分や熱水殺菌処理時に触れる水が無機酸化物蒸着層に浸透しにくくなるため、密着力の低下を生じにくくなるという効果も得られる。
前記した1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(d1)の数平均分子量は1000以下であることが好ましい。
上記共重合樹脂(主剤)組成物のコーティング液には、シランカップリング剤(d2)が添加されていることも本発明の好ましい態様の一つである。シランカップリング剤(d2)は、1分子中に有機官能基と加水分解性官能基を有するため、無機物と有機物との密着力を向上させる効果がある。したがって、シランカップリング剤(d2)を添加すると、無機酸化物蒸着層とガスバリア層との密着力を熱水殺菌処理にも耐えうる程度に強固なものとすることができる。
上記シランカップリング剤(d2)は水と溶剤を配合し、公知の技術を用いて加水分解させることによって、例えばヒドロキシル基がケイ素原子に結合した化合物であるシラノールなど、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するシランカップリング剤を調製する。使用できる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール等が挙げられる。
本発明のグラビアコーティング方法を好適に使用できるガスバリア性フィルムにかかる上記各不飽和ニトリル(a)、水酸基を有する不飽和化合物(b)を配合し、後述するイソシアネート基を有する化合物で構成される硬化剤(c)も配合し、公知の技術を用いて共重合させて、共重合体を製造する。共重合体は、例えば酢酸プロピル−プロピレングリコールモノメチルエーテル−n−プロピルアルコール混合溶液などに溶解させて、上述した硬化剤と混合する。次に、上記共重合樹脂(主剤)溶液と、硬化剤とを、所定量配合して溶剤中に溶解して、ガスバリア層用のコーティング液(塗剤)を得る。使用できる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、水等が挙げられる。
本発明のグラビアコーティング方法の評価は、以下の評価方法を用いて、評価した。
被塗布基材への塗剤転写分以外にグラビア版のセル内に充填された塗剤が圧胴の加圧により、はみ出し、グラビア版と圧胴のニップ部とドクターの間でそのはみ出した
塗剤が液溜まりする現象が目視により見られるかを確認した。
圧胴の表面のゴム硬度が低いことに起因し、コーティング時、被塗布基材が、グラビア版と圧胴のニップ部を通過する際に、被塗布基材の圧胴への付着とその後の強制的な剥離とが連続することにより生じる、被塗布基材巾方向の非常に細かいシワの発生の有無を、コーティング後の基材から縦1000mm、横1000mm(面積1m2)の大きさで評価フィルムを切り出し、目視により確認した。
各種条件により、コーティングした被塗布基材のコーティング厚みを、フィルメ
トリクス株式会社の型番F20を使用して測定した。測定個所は、被塗布基材幅方向
3カ所を各1回ずつ測定した(目視確認で行う巻外観の良好なもののみ測定)。
コーティング後の基材から縦1000mm、横1000mm(面積1m2)の大きさで評価フィルムを切り出し、目視にて確認される直径0.3mm〜2.0mmの円形欠点を気泡欠点として発生数を評価した。各実施例、各比較例について、5枚の評価フィルムについて2回ずつ評価し、合計10個の発生数データの平均値を気泡欠点発生数とした。
酸素透過率は、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)
社製の酸素透過率測定装置(機種名、オキシトラン(登録商標)(OXTRAN2/
20))を使用して、JIS K7126(2000年版)に記載のB法(等圧法)に
基づいて測定した。また、測定は各実施例のみについて、2枚の試験片について2
回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を酸素透過率の値とした。
単位は、cm3/m2・day・atmである。
水蒸気透過率は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)
社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名、パ−マトラン(登録商標)W3/31)
を使用してJIS K7129(2000年版)に記載のB法(赤外センサー法)に
基づいて測定した。また、測定は各実施例のみについて、2枚の試験片について2
回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を水蒸気透過率の値とした。
単位は、g/m2・dayである。
以下の実施例、比較例に用いる共重合体は、アクリロニトリル(AN)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)及びメチルメタクリレート(MMA)の各モノマーを20:50:30に示す割合(質量%)で配合し、公知の技術により共重合して得た。得られた共重合樹脂を酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びn−プロピルアルコールの混合溶剤に溶解させて固形分濃度が30質量%の共重合樹脂溶液を得た。
蒸着フィルム(基材フィルムに無機化合物を蒸着したフィルム)を使用した。
基材フィルムに蒸着層が設けられた蒸着フィルムとして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に酸化アルミ層を蒸着により設けた東レフィルム加工株式会社製 バリアロックス(登録商標)1011HGを用いた(基材巾1000mm)。
以下の各成分を混合し30分間密閉攪拌して固形分濃度約9.0質量%の塗剤を調整した。
・共重合樹脂溶液 12.0部、
・DIC株式会社製キシレンジイソシアネートを主成分とする硬化剤 HX−75(固形分濃度75質量%) 6.0部、
・メチルエチルケトン 66.0部、
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 5.0部、
・1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)のアセトン希釈液(5質量%)8.0部、
・degussa社製シリカフィラー OK412 0.01部、
・信越化学工業製3−アミノプロピルトリエトキシシランを主成分とするシランカップリング剤 KBE903 3.75部にアセトン20.33部、水0.92部添加し、公知の技術にて2時間加水分解させたもの 3.0部(固形分濃度15質量%)この時の塗剤の粘度は、2mPa・sであった(20℃、東機産業製 型番BLIIにて測定)。
共通条件として、ロール・ツー・ロールのダイレクトグラビアコーティング機に密閉式ドクターを使用し、150線/cm深度64μmの格子柄を使用し、速度100m/分にてコーティングを行った。乾燥温度はヒートラベルにて71℃になるよう設定した。
〔スムージングロール〕
炭素鋼(S45C)を材質としたロール表面にクロムメッキを施した、直径100mmのスムージングロールを使用した。
圧胴のゴム硬度を50度のものを用い、圧胴とバックアップロールのニップ圧力をそれぞれ0.1〜0.4MPa、なし(0MPa)〜0.3MPaまで変化させ、コーティング実施(各500mずつ作製)。
圧胴のゴム硬度を40度のものを用い、圧胴のニップ圧力を0.1MPaに固定、バックアップロールのニップ圧力をなし(0MPa)と0.2MPaに設定し、コーティング実施(各500mずつ作製)。
圧胴のゴム硬度を60度のものを用い、圧胴のニップ圧力を0.1MPaに固定、バックアップロールのニップ圧力をなし(0MPa)と0.2MPaに設定し、コーティング実施(各500mずつ作製)。
グラビア版より下流に付設したスムージングロールを乾燥前塗剤に接して、グラビアロールの周速度の10〜40%の範囲(各実施例の周速度は表1のとおり)でリバース回転させた以外は、実施例6〜8と同ニップ条件により、コーティング実施した(各500mずつ作製)。
圧胴のゴム硬度を80度のものを用いる以外は、実施例1〜16と同ニップ条件により、コーティング実施(各500mずつ作製)。
圧胴の表面のゴム硬度を40〜60度とすることで液溜まり現象は抑制され、コーティング厚み均一性ならびに巻外観が良好となった。比較例は、グラビア版と圧胴のニップ部とドクターの間で液溜まりの逃げ道がないので、その結果、両サイドに塗剤が逃げ出し、結果被塗布基材の両サイドの塗布量が多くなり、巻外観の平面性に欠ける結果となった。
また、圧胴のグラビア版に対するニップ圧力を、0.4MPa以下とすること、ならびにバックアップロールの圧胴ならびにグラビア版に対するニップ圧力を0.3MPa以下とすることで被塗布基材巾方向シワも抑制できた。また、圧胴のニップ圧力とバックアップロールのニップ圧力が、それぞれ0MPa以上で、かつ両者の和が0.4MPa以下の時に最も好適に被塗布基材巾方向シワが抑制することができた。
2:グラビア版
3:ドクター
4:パン
5:圧胴
6:バックアップロール
7:被塗布基材
8:密閉式ドクター
9:シールブレード
10:スムージングロール
Claims (5)
- 圧胴とグラビア版とを用いて被塗布基材に塗剤をグラビアコーティングするに際し、表面のゴム硬度が40〜60度である圧胴を用いて20℃における粘度が0mPa・sより大きく5mPa・s以下である塗剤を塗布するグラビアコーティング方法。
- 圧胴のグラビア版に対するニップ圧力が、0.4MPa以下である請求項1に記載のグラビアコーティング方法。
- 圧胴の上部に圧胴を固定するバックアップロールを配し、該バックアップロールの圧胴ならびにグラビア版に対するニップ圧力が0.3MPa以下である請求項1または2に記載のグラビアコーティング方法。
- グラビア版に付設されるドクターが密閉式である請求項1〜3のいずれかに記載のグラビアコーティング方法。
- グラビア版の下流にスムージングロールを付設し、該スムージングロールを被塗布基材上の塗剤に接して、周速度をグラビアロールの周速度の5〜45%の範囲でリバース回転させる請求項1〜4のいずれかに記載のグラビアコーティング方法。
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