JP2012045934A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性に優れ、バリア層形成時に高温熱処理を必要とせず、ハロゲンを含まないガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】高分子フィルム基材1に、Si系酸化物を含む無機化合物の蒸着層2と、該蒸着層上に架橋樹脂のガスバリア層3が積層されているガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア層が、不飽和ニトリル(a1)と、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)と、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される不飽和化合物(a3)とを単量体とする共重合樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)と、1分子中に有機官能基と加水分解性官能基を有するシラン化合物(C2)との混合物を、前記蒸着層上で反応して得られる架橋樹脂から成るガスバリア性フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、高いガスバリア性に優れた透明ガスバリア性フィルムに関するものである。
ガスバリア性フィルム及びそれを用いた包装材料は、既によく知られている。最も優れたガスバリア性を有する材料は、アルミニウム箔である。しかし、アルミニウム箔は、単独ではピンホール強力が弱く、特殊な用途を除いては使用できない。
また、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等の熱可塑性フィルムは、強度、透明性、成形性に優れているので、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかしながら、これらの熱可塑性樹脂フィルムは、酸素、水蒸気等のガス透過性が大きい。
この問題を解決するため、ガスバリア性が要求される材料にはポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムに塩化ビニリデン(以下「PVDC」と略記する)のエマルジョン等をコーティングしたフィルムが多く用いられてきた。コーティングによりPVDC層を形成したフィルムは、低湿度下だけでなく高湿度下においても高い酸素バリア性を示すとともに、水蒸気に対するバリア性も高い。しかしながら、PVDCコートフィルムを焼却処理により廃棄する際に、PVDC中の塩素に起因する塩素ガスの発生並びに、ダイオキシン発生の恐れを有する。このように、PVDCコートフィルムは、環境並びに人体に多大な悪影響を与える恐れを有することから、他の材料への移行が強く望まれている。
また、ポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムの一方の面に、真空蒸着法等の物理気相成長法を用いて、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を設けた蒸着フィルムなどが提案されている。これら無機酸化物蒸着薄膜層を有するガスバリア性フィルムは、透明であるため、電子ペーパー等の薄型ディスプレイ、太陽電池といった電子デバイス産業に寄与することが可能である。しかし、無機化合物で構成される蒸着層は硬い。このため、屈曲により無機化合物で構成される蒸着層にクラックやピンホールが発生し、ガスバリア性が著しく低下するという問題がある。
このような欠点を補う技術としては、熱可塑性樹脂フィルム上に無機化合物で構成される蒸着層を設け、さらに該蒸着層上にポリマーコーティングによりガスバリア層を積層し、ガスバリア性や可撓性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2004−35833号公報 特開平9−327882号公報
特許文献1記載の技術では、ポリエステルの基材フィルム上に積層したガスバリア層をエステル結合により架橋して設けることにより、高湿度下でのバリア性の向上を図っている。エステル化を十分に進行させて、フィルムのガスバリア性を高めるためには、高温に加熱して反応させることが必要である。このため、生産性に問題がある。
さらに、特許文献2に記載の技術では、基材フィルムと無機化合物で構成される蒸着層との間にプライマー剤により構成されるプライマー層を設けている。このような積層構成を有するフィルムは、無機化合物で構成される蒸着層およびガスバリア層間に強い密着力を発現させることはできる。しかし、生産工程が増えるため生産コストが割高となるという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ハロゲンによる環境汚染のおそれもなく、かつ、酸素及び水蒸気などのガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成をとるものである。すなわち、本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材の少なくとも一方の面に、無機化合物で構成される蒸着層と、該蒸着層上に架橋樹脂で構成されるガスバリア層とが積層されているガスバリア性フィルムであって、前記無機化合物がSi系酸化物を含む無機化合物であり、
前記ガスバリア層が、不飽和ニトリル(a1)10〜30質量部と、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)30〜70質量部と、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)3〜60質量部とを単量体とする共重合樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)と、1分子中に有機官能基と加水分解性官能基を有するシラン化合物(C2)との混合物を、前記無機化合物で構成される蒸着層上で反応して得られる架橋樹脂で構成されることを特徴とするガスバリア性フィルムである。
本発明によれば、優れたガスバリア性を有するフィルムを得ることができる。また、本発明のガスバリア性フィルムは、塩素等のハロゲンを含まない。さらに、本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層形成時に高温での熱処理を必要としない。この結果、安価なコストで生産が可能であり、複雑な生産工程を経ないために生産適性にも優れるという特徴を有するガスバリア性フィルムを提供することができる。
本発明のガスバリア性フィルムの構造を示した断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムを製造するためのバッチ式CVD装置を模式的に示す概略図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明のガスバリア性フィルムの構造を示す断面図である。本発明のガスバリア性フィルムは、図1に示すように、高分子フィルム基材1の少なくとも一方の面に、無機化合物で構成される蒸着層2と、該蒸着層上に架橋樹脂で構成されるガスバリア層3とが積層されているガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア層が、共重合樹脂(A)100質量部に占める割合が10〜30質量部である不飽和ニトリル(a1)と、共重合樹脂(A)100質量部に占める割合が30〜70質量部である水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)と不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)を用いて構成され、不飽和ニトリル(a1)と水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)との合計が共重合体樹脂(A)全体100質量部に対して20質量部以上である共重合樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)と、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)と、シラン化合物(C2)との混合物を用いて形成されてなる。使用できるシラン化合物(C2)としては、混合薄膜層とガスバリア層の密着耐性を確保する観点から、ヒドロキシル基に加えアミノ基、ビニル基、エポキシ基の群から選択される1つ以上の官能基を有することが好ましい。
前記無機化合物で構成される蒸着層は、ガスバリア性を有するがピンホールやクラック等の欠陥を有する。このため、そのガスバリア性能は不完全であることが多い。よって、無機化合物で構成される蒸着層上にガスバリア層を設ける。このガスバリア層が、該蒸着層の不完全なガスバリア性を補うだけではなく、ガスバリア層を構成する樹脂が本来有するガスバリア性を発現させる。また、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)をかかるガスバリア層形成するとき配合するが、これにより前記蒸着層とガスバリア層との密着性を発現することができる。この結果、ガスバリア性と、該蒸着層とガスバリア層との間の密着力が格段に向上する。
[高分子フィルム基材]
本発明に使用する高分子フィルム基材としては、有機高分子化合物からなるフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーからなるフィルムを使用することができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである。高分子フィルム基材を構成するポリマーは、ホモポリマー、コポリマーのいずれでもよいし、また、単独またはブレンドして用いることができる。
また、高分子フィルム基材として、単層フィルム、あるいは、2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムや、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用することができる。さらに、混合薄膜層を形成する側の表面には、密着性を良くするために、コロナ処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、粗面化処理や有機物、無機物あるいはこれらの混合物のアンカーコート層が施されていても構わない。本発明に使用する高分子フィルム基材の厚さは特に限定されない。 本発明に使用する高分子フィルム基材には、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加したフィルム等も用いることができる。
本発明に使用する高分子フィルム基材の厚みに特に制限はないが、フレキシブル性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から10μm以上、200μm以下がより好ましい。
[蒸着層]
蒸着層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。蒸着層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法を適宜選択して用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっき、ゾルゲル法等の液相成長法がある。一般に、ガスバリア性フィルムの蒸着層として使用できる無機化合物としては、金属酸化物層、金属窒化物層等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム合金、酸化珪素、酸化窒化珪素等及びそれらの混合酸化物、金属窒化物としては窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化珪素等が例示できる。中でも蒸着フィルムの加工コストの面から無機化合物としては酸化アルミニウム、酸化珪素および酸化窒化珪素が好ましい。本発明においてはガスバリア性能の観点から蒸着層にSi系酸化物が含まれることがより好ましく、SiOが含まれることがさらに好ましい。本発明のガスバリア層は、特にSi系の蒸着層が有するピンホールやクラック等の欠陥といった不完全なバリア性を補う効果を有している。この欠陥補修効果は、Si系の蒸着層表面の粒塊が本発明のガスバリア層の成分の浸透しやすい大きさ・形状に配列されていることによる。また、ガスバリア層が有する水酸基はSi系酸化物と水素結合を形成することで、層間の結合力がより強固となりガスバリア性向上に寄与する。
発明者らの鋭意検討の結果、Si系酸化物へZnSを混合させた薄膜(以降、ZnS・Si系酸化物混合薄膜、Si系酸化物がSiOの場合はZnS・SiO混合薄膜、と記すこともある)を形成することによっても、ガスバリア性が良好な蒸着層を形成可能であることが分かった。また、このZnS・Si系酸化物混合薄膜を用いることで、良好かつ外部応力によって生じる機械的な曲げに対するフレキシブル性に優れたガスバリアフィルムを得ることが可能であることが明らかとなった。ガスバリア性が良好となる理由は明確ではないが、おそらくZnSに含まれる結晶質成分とSi系酸化物のガラス質成分とを混合させることによって、微結晶を生成しやすいZnSの結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため膜質が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されると考えられる。また、これにより、無機酸化物または金属酸化物だけで形成された薄膜よりも膜の柔軟性が優れるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくく、ガスバリア性低下を抑制できると考えられる。一方で、金属酸化物として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム合金、酸化珪素、酸化窒化珪素等及びそれらの混合酸化物、金属窒化物として窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化珪素等が例示される材料を用いた場合には、ガスバリア性とフレキシブル性の両者に優れた蒸着層を形成することはそれらの硬度の高さゆえに困難である。
本発明におけるZnS・Si系酸化物混合薄膜の組成は、ZnS・Si系酸化物の混合物全体に占めるZnSのモル分率Xが0.7〜〜0.9であることが好ましい。混合物全体に占めるZnSのモル分率Xが0.7より小さくなると、膜内部のガラス質成分が増加して膜の柔軟度が低下するため、例えば温度85℃湿度85%RHなどの高温高湿下で長期保存すると膜にクラックが発生し、ガスバリア性が低下するなどの問題が発生する。また、前記ZnSのモル分率Xが0.9より大きくなると、ZnSの結晶成長を抑制する酸化物が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られないなどの問題が発生する。このような観点から、混合物全体に占めるZnSのモル分率Xは0.75〜0.85であることがさらに好ましい。
蒸着層の膜厚は、用いられる無機物の種類や構成により適宜選択されるが、一般的には2〜300nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜200nmの範囲である。膜厚が300nmを超えると、特に金属酸化物層の場合にはそのフレキシビリティ(柔軟)性が低下し、製膜後(後加工工程等において)の折り曲げ、引っ張りなどの外力で、薄膜に亀裂やピンホール等を生じる恐れがあり、ガスバリア性が著しく損なわれることがある。また、蒸着層の形成スピードが低下するため、生産性を著しく低下させる場合がある。一方、2nm未満の膜厚では、均一な蒸着膜が得られにくく、さらには膜厚が十分でないことがあり、ガスバリア性の機能を十分に発現することができない場合がある。
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、共重合樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)と、ヒドロキシル基を少なくとも1つ含有するシラン化合物(C2)の混合物を用いて形成される。
共重合樹脂(A)は、不飽和ニトリル(a1)と、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)と、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)との少なくとも3成分を単量体とするものである。共重合樹脂(A)における前記(a1),(a2),(a3)由来の構造の構成比率は、不飽和ニトリル(a1)が10〜30質量部と、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)が30〜70質量部と、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)が3〜60質量部であることがより好ましい。
樹脂によって形成される薄膜層のガスバリア性を決定する因子としては、凝集エネルギー、自由体積、結晶化度、配向性等が挙げられる。これらの因子は、ポリマー構造中の側鎖官能基に起因するところが多い。すなわち、構造中に水素結合あるいは静電的相互作用等の分子間相互作用可能な官能基を含むポリマー鎖同士は、相互作用力を駆動力として強く凝集しようとする。その結果、凝集エネルギー、配向性は高まり、自由体積は減少し、ガスバリア性は向上する。逆に、同じくポリマー構造中に立体的に嵩高い官能基を含む場合には、ポリマーの凝集を妨げ、自由体積が大きくなるためにガスバリア性は低下すると考えられる。さらに、形成される分子間相互作用の数量が多くなれば、強く凝集し、自由体積空間を小さくしようという駆動力は大きくなり、結果的にポリマーの凝集密度は高まると考えることができる。
(不飽和ニトリル(a1))
共重合樹脂(A)に用いられる不飽和ニトリル(a1)としては、アクリロニトリルが好ましい。アクリロニトリルはその分子構造中にニトリル基を有し、ニトリル基が大きく分極した官能基であることに由来して強い水素結合形成能を持つ。すなわち、アクリロニトリルを構成成分とする共重合樹脂(A)により形成された塗膜は、アクリロニトリルのニトリル基の寄与により、ガスバリア性を有するものとなる。ガスバリア性はアクリロニトリルの含有量によって調整することができる。
不飽和ニトリル(a1)の配合量が多くなると共重合樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下するため、重合時の分子量増加を妨げるだけでなく塗料化が困難になる場合がある。さらには塗膜の造膜性、透明性も低下するなど実用的ではなくなる場合がある。逆に配合量が少なくなるとガスバリア層のガスバリア性向上効果が不十分となる場合がある。
(水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2))
前述の通り、ガスバリア性を高める観点からは共重合樹脂(A)中の不飽和ニトリル(a1)の含有量を高めた方が好ましい。しかし、特に不飽和ニトリル(a1)であるポリアクリロニトリルはガラス転移温度が約300℃と高く、造膜させるには高温での処理が必要であるが、基材フィルムの融点などとの関係から造膜の温度を下げることが好ましい。また、ガスバリア性を決定する因子としては、凝集エネルギー、自由体積、結晶化度、配向性等が挙げられることは前記したが、極性の高い官能基を有するモノマー成分を共重合用モノマーとして用いる方法は、ガスバリア性を高める1つの手段である。このような観点から、水酸基も高い凝集力を示す官能基として機能し本発明では水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)を用いる。さらに水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)をガスバリア層に含有させる場合には、イソシアネート化合物(B)との間で架橋構造を形成するため、無機化合物で構成される蒸着層と強く密着し、塗膜強度や密着耐性を発現させることができる。
水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)としては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等の不飽和化合物の単量体が挙げられる。これらの水酸基を有する非芳香族不飽和化合物は単独で、または2種類以上組み合わせて選択することができる。これらの水酸基を有する非芳香族不飽和化合物のうち、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートが、良好な重合安定性が得られること、イソシアネート基との反応性が良好なことから好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
共重合樹脂(A)中で、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)の含有量によってガスバリア層の造膜性やガスバリア性、さらにはイソシアネート化合物(B)との架橋点数が変動することに起因して、耐熱性、塗膜硬度などは変化する。非芳香族不飽和化合物(a2)の配合量が少なくなると水酸基に由来する樹脂鎖間の凝集力が十分に働かず、ガスバリア性の向上につながらない場合がある。また、水酸基とイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基との間の架橋反応の進行により形成される架橋点の数が十分ではなく、ガスバリア層の耐熱性が十分に発現しない場合がある。一方、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)の配合量が、多くなると、共重合樹脂中に水酸基数が増加するためイソシアネート化合物(B)配合量も増やす必要を生じ、同時にイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基が未反応で残存し易くなり、ブロッキング等の問題を発生する要因となる場合がある。さらに、前述の(a1)、後述の(B)の含有量が減少するため、ガスバリア性向上効果が小さくなり、塗膜の造膜性が悪化するなどにつながる場合がある。
(不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3))
共重合樹脂(A)に用いられる不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)に関して、不飽和カルボン酸エステルとして、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等が挙げられる。
その他の適用できる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、エポキシアクリレート等が挙げられる。
これらのうち、好ましいのは、不飽和カルボン酸エステルである。不飽和カルボン酸エステルのうちメチルメタクリレート、メチルアクリレートが特に好ましく、メチルメタクリレートがさらに好ましい。
(a3)の配合量が多くなると、共重合樹脂中に占める不飽和ニトリル(a1)及び水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)の相対量が減少し、ガスバリア性が十分に発現しない場合や、架橋構造の不足に伴う塗膜強度や密着耐性が不足する場合がある。
(共重合樹脂(A)における(a1),(a2),(a3)の比率)
上述のように共重合樹脂(A)における(a1),(a2),(a3)の比率には適した値が存在する。例えば、不飽和ニトリル(a1)の配合量は、共重合樹脂(A)の有機溶剤に対する溶解性、および重合時の分子量増加防止、さらには塗膜の造膜性、透明性、ガスバリア層のガスバリア性の観点から、共重合樹脂(A)中に占める割合は好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜25質量%である。
水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)の配合量は、ガスバリア層の造膜性やガスバリア性、イソシアネート化合物(B)との架橋点数、耐熱性、塗膜硬度、水酸基に由来する樹脂鎖間の凝集力の観点から共重合樹脂(A)中に占める割合が30〜70質量%であり、好ましくは50〜70質量%である。
また、不飽和ニトリル(a1)と水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)との共重合樹脂(A)中における質量比率としては、(a1):(a2)が10:70〜30:30であり、好ましくは、20:50〜30:50である。
(a3)の配合量は、ガスバリア性、塗膜強度、密着耐性の観点から、共重合樹脂(A)中に占める割合は3〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
また、不飽和ニトリル(a1)と水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)と不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)の共重合樹脂(A)中における比率としては、(a1)+(a2):(a3)=40:60〜97:3であり、好ましくは、(a1)+(a2):(a3)=60:40〜80:20である。
(イソシアネート化合物(B))
本発明においては、イソシアネート化合物(B)は、前記共重合樹脂(A)を架橋させるために用いる。共重合樹脂(A)はそれを単独で塗布した場合、ガスバリア性は発現するものの塗膜強度や密着耐性といった物性は得られない傾向がある。そこで、共重合樹脂(A)が側鎖として有する水酸基と反応するイソシアネート基を有する化合物を硬化剤として用いる。イソシアネート化合物(B)の添加により、架橋構造が生成されるので、ガスバリア性、塗膜強度および密着耐性といった物性を兼ね備えたガスバリア層が形成される。イソシアネート基を有する化合物としては、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
使用できる芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4′−、2,4′−又は2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等が例示できる。
使用できる芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−又は1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が例示できる。
使用できる脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)等が例示できる。
使用できる脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示できる。
これらの有機ジイソシアネートのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。なお、これらは、単独で使用しても複数を併用してもよい。
さらに、上記例示したイソシアネート化合物と水酸基を有する化合物等との部分縮合物や各種誘導体の1種またはこれらの2種以上を用いてもよい。例えば、各種低分子量のジオールからオリゴマーまで幅広いジオール類や必要に応じて3官能以上のポリオール類との部分縮合物等が挙げられる。
共重合樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)の架橋反応生成物により形成されるガスバリア層のガスバリア性を考慮すると、これらのイソシアネート基を有する化合物のうち、1,3−キシレンジイソシアネート(XDI)およびその部分縮合物、及び/又は1,4−キシレンジイソシアネート(XDI)およびその部分縮合物が好ましい。架橋生成物の立体的構造は、ガスバリア性に大きく影響する。ガスバリア性を発現させるためには、キシレンジイソシアネート骨格を有すると好ましい。
本発明では、ガスバリア層を構成する共重合樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)との配合比は特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物(B)が少なすぎると共重合樹脂(A)との間で生じる架橋反応が不十分なものとなり、塗膜が硬化不良を起こすだけでなく塗膜強度が十分発現せずに密着耐性、基材フィルムとの密着耐性等も不足する。またイソシアネート化合物(B)の配合量が多すぎる場合にはブロッキングを生じる原因となるだけでなく、余剰のイソシアネート化合物が他の層に移行するなどして後加工等において不都合を生じることがある。

(2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1))
本発明においては、ガスバリア層を形成する材料として、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)を用いる。これにより、無機化合物で構成される蒸着層とガスバリア層との間の密着力が向上する。カルボキシル基または無水カルボン酸基は、蒸着層を形成するアルミナやシリカといった材料が有するアルミ−酸素結合や珪素−酸素結合などの無機物中の元素と酸素の結合に対して、配位し易い性質を有する。そのため、ガスバリア層を形成する樹脂組成物に配合して塗布することで、蒸着層表面に2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)が配位して、表面が有機的になり、ガスバリア層を形成する樹脂との密着力を向上させることができる。さらに、蒸着層が無機酸化物で有る場合には、無機酸化物表面に2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)が配位することで、大気中の水分が無機化合物で構成される蒸着層に浸透しにくくなるため、密着力の低下を生じにくくなるという効果も得られる。
1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(C1)としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸等が挙げられる。
無水カルボン酸基を持つ化合物としては無水マレイン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、四塩基酸無水物等あるが、金属のように極性の高い基材フィルムへ塗工する場合は、特に四塩基酸無水物のように2つ以上の無水酸を持つ化合物が良好である。四塩基酸無水物としては、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7ーナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ならびに1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)等が挙げられる。これらのうち、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物や1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)を使用することが好ましい。(C1)の添加量はガスバリア層の形成に用いる共重合樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)の和100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、ガスバリア層の経時安定性の観点から0.1〜10質量部程度がより好ましい。0.1質量部以下の添加量の場合には、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)の配位する効率が小さくなり、十分な密着力が得られないことがある。一方、20質量部より多く添加した場合には、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)以外の反応を阻害する働きがあるため塗膜のガスバリア性が低下することがある。
また、上記1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(C1)を重合した化合物を使用する事もできる。前記した1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(C1)の数平均分子量は1000以下であることが好ましい。
(シラン化合物(C2))
本発明においては、ガスバリア層を形成する材料として、1分子中に有機官能基と加水分解性官能基を有するシラン化合物(C2)を用いる。有機官能基がガスバリア層中の有機基と結合を形成し、また加水分解性官能基が無機化合物で構成される蒸着層とオキシシラン結合を形成することで、蒸着層とガスバリア層との密着力を向上させる効果がある。
また、共重合樹脂(A)中のヒドロキシル基がイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基と架橋反応することに加え、シラン化合物(C2)中の加水分解性官能基が加水分解されて生成するヒドロキシル基が無機化合物で構成される蒸着層表面のヒドロキシル基と水素結合することで、無機化合物で構成される蒸着層とガスバリア層との密着力は、さらに向上し強固なものとなる。
シラン化合物(C2)としては、無機化合物で構成される蒸着層とガスバリア層の密着耐性を確保する観点から、有機官能基としてアミノ基、ビニル基、エポキシ基の群から選択される1つ以上の官能基を有することが好ましい。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、Nー2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、Nー2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が例示できる。これらのシラン化合物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
シラン化合物(C2)の添加量はガスバリア層の形成に用いる共重合樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)の和100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、ガスバリア層の経時安定性の観点から0.1〜2質量部程度がより好ましい。0.1質量部以下の添加量の場合にはシラン化合物の効果が薄く、十分な密着力が得られないことがある。一方、10質量部より多く添加した場合にはシラン化合物(C2)がガスバリア層中で可塑剤のような働きをするため塗膜のガスバリア性が低下することがある。
[シラン化合物の調製]
上記シラン化合物(C2)は水と溶剤を配合し、公知の技術を用いて加水分解させることによって、例えばヒドロキシル基がケイ素原子に結合した化合物であるシラノールなど、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するシラン化合物を調製する。使用できる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール等が挙げられる。
[ガスバリア層の形成]
本発明では、前記共重合樹脂(A)に、イソシアネート化合物(B)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)、シラン化合物(C2)を配合し、公知の技術を用いて架橋させて、ガスバリア層を形成する。共重合樹脂(A)は、例えば酢酸プロピル−プロピレングリコールモノメチルエーテル−n−プロピルアルコール混合溶液などに溶解させて、上述したイソシアネート化合物(B)と混合する。次に、上記共重合樹脂(A)溶液と、イソシアネート化合物(B)とを、所定量配合して溶剤中に溶解して、ガスバリア層用のコーティング液(塗剤)を得る。使用できる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、水等が挙げられる。
無機化合物で構成される蒸着層上に設けるガスバリア層の厚みは、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.2〜2μmである。ガスバリア層の厚みが、0.1μm以上であると、ガスバリア性の十分な向上が得られ、コーティング時の加工性も高まり、膜切れやはじきなどの欠陥のないガスバリア層を形成することができる。一方、ガスバリア層の厚みが3μm以下であると、コーティング時の乾燥条件が低温、短時間であっても溶剤が十分に乾燥するので、フィルムにカール等の変形が生じることがなく、製造コストが高騰するといった問題点も起こらず好ましい。
本発明において、コーティングにより無機化合物で構成される蒸着層上にガスバリア層およびオーバーコート層を形成して積層する場合において、コーティング液(塗剤)に使用する溶剤にもよるが好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上の温度で乾燥させることが好ましい。乾燥温度が70℃より低い場合には塗膜の乾燥が不十分となり、充分なガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難となる。また、ガスバリア層の形成においては共重合樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)との間の架橋反応は主として上記乾燥時に進行するが、架橋反応をより進行させる目的でエージング処理をすることもできる。エージング処理により架橋反応はより進行し、塗膜強度、ガスバリア性、密着耐性等をより向上させることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性を必要とする様々な分野に利用することができる。
以下本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお実施例中で「部」とは、特に注釈の無い限り「質量部」であることを意味する。
[特性の評価方法]
本発明のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率は、以下の評価方法を用いて、評価した。温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名、パ−マトラン(登録商標)W3/31)を使用してJIS K7129(2000年版)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。また、測定は各実施例・比較例について2枚の試験片について2回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を各実施例、比較例における水蒸気透過率の値とした。
塗料の外観はガスバリア性フィルムとした後の透明性をヘイズ値を尺度に用いて評価した。日本電色工業(株)製 濁度計(NDH2000)にて測定を行った。また、測定は各実施例・比較例について、10cm×10cmサイズのガスバリア性フィルムのサンプル3枚を切り出し、ガスバリア層側から測定して、ヘイズ値の平均値を算出し、5%以下を透明、5%を超える場合を白濁と判断した。
蒸着層とガスバリア層間の密着性はガスバリア層上に1mm間隔の直線状カットを11本、縦横に入れ、1mmのクロスカットマス目を100個作り、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼りつけ、180度方向に剥離し、ハードコート層の残存した個数により、評価した。なお、残存した個数が100個である場合を「○」、それ未満の場合は「×」と示した。
[ガスバリア層の製造に用いる共重合体樹脂溶液の調整]
以下の実施例、比較例に用いるガスバリア層は、アクリロニトリル(AN)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)及びメチルメタクリレート(MMA)の各モノマーを表1に示す割合(質量部)で配合し、公知の技術により共重合して共重合樹脂a〜jを得た。各共重合体樹脂のモノマーの混合比を、表1に示す。得られた共重合樹脂を酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びn−プロピルアルコールの混合溶剤に溶解させて固形分濃度が30質量%の共重合樹脂溶液を得た。なお、各共重合体樹脂溶液により得られた塗料の外観を、表1に示す。
(実施例1)
(蒸着フィルム(高分子フィルム基材上に金属化合物を蒸着したフィルム)の製造)
高分子フィルム基材として厚さ188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム東レ株式会社製ルミラー(登録商標)を用い、図2に示すバッチ式CVD装置を使用し、混合薄膜層上にSiO膜を膜厚が100nmとなるように1層設けた。図2は珪素系薄膜層を形成する製造方法を実施するための枚葉式CVD装置の概略を示す装置構成図である。まず、混合薄膜層を形成したロールからシート状に切り出し試料ホルダ5にセットした。次に、アルゴンガス0.5L/minと珪素系有機化合物の気化装置からヘキサメチルジシロキサンを70cc/min導入し、高周波電源によりプラズマ電極に投入電力500Wを印加すると、珪素含有プラズマが発生し、混合薄膜層上にSiO膜が形成された。これを用いてSiO膜を膜厚が100nmとなるように1層設けた。
[ガスバリア層の製造]
(シラン化合物の加水分解)
信越化学工業株式会社製シラン化合物KBE-903(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)3.8部、純水 0.9部、アセトン 20.3部を配合し、スターラーを用いて30℃120分間攪拌して加水分解させた固形分濃度15質量%のシラン化合物の加水分解物を得た。
(コーティング液)
共重合樹脂a 10.0部、DIC株式会社製キシレンジイソシアネートを主成分とする硬化剤 HX−75 4.9部、メチルエチルケトン 25.4部、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(PDMA)のメチルエチルケトン希釈液(10質量%)3.0部 、シラン化合物の加水分解物1.63部を30分間攪拌して固形分濃度15質量%のガスバリア層用のコーティング液を得た。
(ガスバリア層の製造)
上記蒸着フィルムの蒸着層上に、ワイヤーバーを用いてコーティング液を塗布し、140℃で30秒間加熱し、架橋反応を進めると共に溶媒を乾燥除去し、乾燥後塗布量が0.9g/mとなるようにガスバリア層を設けた。このようにしてガスバリア性フィルムを製造した。
(実施例2)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂bを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例3)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂cを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例4)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂dを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例5)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂eを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例6)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂fを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例7)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂gを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例8)
蒸着層としてSiOを設けるかわりに蒸着層にSiONを設ける以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを製造した。
(実施例9)
蒸着層としてSiOを設けるかわりに、ZnSのモル分率Xが0.80の組成となるようなZnS・SiO混合薄膜を1層設ける以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。なおZnS・SiO混合薄膜の蒸着にはZnS、SiOを用いて形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(三菱マテリアル(株)製ターゲット、ST−IVシリーズ)を用い、アルゴンガスプラズマによる巻き取り式のスパッタリング(真空度2×10−1Pa、高周波電源により投入電力500W)を実施した。
(比較例1)
コーティング液調合時に5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物(PDMA)のメチルエチルケトン希釈液を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例2)
コーティング液調合時にシラン化合物の加水分解物を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例3)
蒸着層を設けない以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを製造した。
(比較例4)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂hを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例5)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂iを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例6)
共重合樹脂aのかわりに共重合樹脂jを用いる以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例7)
蒸着層としてSiOを設けるかわりに蒸着層にAlOxを設ける以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例8)
蒸着層としてSiOを設けるかわりに蒸着層にTiOを設ける以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例9)
蒸着層としてSiOを設けるかわりに蒸着層にSiCNを設ける以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例10)
蒸着層としてZnS・SiO混合薄膜を設けるかわりに、ZnSを用いて形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(三菱マテリアル(株)製ターゲット、ST−IVシリーズ)を用いZnSを設ける以外は、実施例9と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
Figure 2012045934
本発明のガスバリア性フィルムは、水蒸気等に対する高ガスバリア性、透明性、耐熱性を有するものであるから、高度な特性が必要とされる食品、医薬品、電子部品等の包装や、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の薄型ディスプレイ、太陽電池といった電子デバイス産業に寄与することが可能である。
1:高分子フィルム基材
2:蒸着層
3:ガスバリア層
4:枚葉式CVD装置
5:試料ホルダ
6:プラズマ電極
7:ガスバリア性フィルム
8:珪素系有機化合物の気化装置
9:珪素系有機化合物の導入ノズル

Claims (8)

  1. 高分子フィルム基材の少なくとも一方の面に、無機化合物で構成される蒸着層と、該蒸着層上に架橋樹脂で構成されるガスバリア層とが積層されているガスバリア性フィルムであって、前記無機化合物がSi系酸化物を含む無機化合物であり、
    前記ガスバリア層が、不飽和ニトリル(a1)10〜30質量部と、水酸基を有する非芳香族不飽和化合物(a2)30〜70質量部と、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びエポキシアクリレートからなる群から選択される1つ以上の不飽和化合物(a3)3〜60質量部とを単量体とする共重合樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C1)と、1分子中に有機官能基と加水分解性官能基を有するシラン化合物(C2)との混合物を、前記無機化合物で構成される蒸着層上で反応して得られる架橋樹脂で構成されることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 前記Si系酸化物がSiOである請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記蒸着層がZnSを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記不飽和ニトリル(a1)がアクリロニトリルである請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記非芳香族不飽和化合物(a2)が、2−ヒドロキシエチルメタクリレートである請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記不飽和化合物(a3)がメチルメタクリレートである、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記化合物(C1)が四塩基酸無水物である請求項1〜6の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  8. 前記シラン化合物(C2)の有機官能基がアミノ基、ビニル基およびエポキシ基からなる群から選択される1つ以上の官能基を有する請求項1〜7の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
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