JP5701634B2 - ゴム物品補強用ワイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム物品補強用ワイヤ及びその製造方法に関する。
ゴム物品補強用ワイヤは、ゴム物品としてのタイヤやホースを補強するために用いられる。例えばタイヤでは、ゴム物品補強用ワイヤは、撚線にされ又はそのまま引き揃えられたコードとしてタイヤの構成部材であるベルトやカーカスに埋設されて用いられ、また、ビードワイヤとして用いられる。
ゴム物品補強用ワイヤは、一般に、ワイヤ材に伸線とこれに引き続く熱処理とを一回又は複数回行い、この熱処理のうちの最終熱処理によって均一で微細なパーライト組織を得た後、ブラスめっきを形成する工程を含む製造方法によって製造される。具体的に例えばスチールコード用のワイヤを製造するときには、一般に直径5.5mm程度のワイヤ材を直径1.2〜3.0mm程度にまで一回又は熱処理を挟む二回の乾式伸線を行った後、パーライト組織を得るための熱処理を施し、その後、ブラスめっき処理をしてから湿式の最終伸線を行ってスチールコード用のワイヤが得られる。得られたスチールコード用のワイヤは、その後に撚線工程を経てスチールコードとされる。
パーライト組織を得るための最終熱処理工程は、伸線後のワイヤ材を加熱炉内で1000℃程度まで加熱することで金属組織をオーステナイト化するとともに均質な組成にした後、500〜650℃の範囲に急冷して保持する工程であり、このような工程を行うことで均一で微細なパーライト組織が得られる。
上記最終熱処理工程では、上述のようにワイヤ材が1000℃程度の高温に加熱される。この高温加熱時にワイヤ材の表層部が脱炭することは、極力避けなければならない。ワイヤ材の表層部が脱炭すると、製造されるワイヤの疲労性が悪化することで耐久性は低下し、また、最終熱処理工程の後に行う最終伸線の際に、めっき剥離による色調低下や伸線性の悪化が生じるからである。
脱炭を抑制するために、熱処理の際、加熱炉内の雰囲気の制御などによってワイヤ材表面に均質なスケールを形成させ、このスケールでワイヤ材の表面からの脱炭を防いでいる。しかし、そのスケールの厚さが薄すぎると脱炭し易く、逆に厚過ぎてもスケール割れが発生してそのクラックから脱炭し易くなることから、厚み制御が難しい。このスケールを所定の厚さ範囲に制御する方法(特許文献1)や、熱処理時の鋼の活性化エネルギーや拡散係数等に基づいて算出したスケール厚さに制御する方法(特許文献2)があるが、加熱炉内の雰囲気やワイヤ材の表面状態でスケール厚さが変動してしまう。また、熱処理前にワイヤ材に銅めっきを行って脱炭を抑制する方法(特許文献3)もあるが、銅の融点は1083℃程度であって、加熱炉内の加熱温度に近いため、ワイヤ材の表面に形成される銅めっき層が熱処理中に融解や酸化され易い。また、銅は、ワイヤ材の主成分である鉄よりも貴な金属であるため、ワイヤ材のスケール形成を阻害して脱炭促進させてしまうおそれもある。
また、ゴム物品補強用ワイヤは、例えば、ブラスめっきを施したタイヤ用スチールコードの場合、ゴム中では、イオウや水による腐食環境下にある。ゴム物品補強用ワイヤは、表面にブラスめっき層を有していて、このブラスめっき層によりある程度の耐食性は得られている。しかし、下地の鋼が腐食する場合も多い。したがって、ゴム物品補強用ワイヤは耐食性に優れることも要求されている。この耐食性に関して、ワイヤ材にジルコニウム、チタニウム、バナジウム、ニオブなどを添加することで、耐食性を向上させたワイヤ材があるが(特許文献4)、十分な耐食性を得るのが難しく、また、脱炭抑制効果に乏しい。
下地のワイヤ材表面に形成するめっき層に改良を行えば、耐食性が向上することが期待できる、このようなめっき層を有するワイヤに関し、熱処理後のワイヤ材に銅、ニッケル、亜鉛の順にめっきを施した後、熱拡散処理を行うことでニッケル含有ブラスめっきを形成する方法がある(特許文献5)。この方法は、ゴム接着性が向上するとされている。しかし、この方法によるめっき層は、形成されるのが熱処理後であるため、この熱処理中に生じる脱炭を抑制する効果はない。また、ブラス中にニッケルが分散しているので、鋼についての防食効果は低い。更に、ニッケルと銅の相互拡散速度が遅いため、十分に拡散させるためには高温、長時間の熱処理を要し、生産性向上のために高温、長時間の熱処理を施すことが難しい工業的生産の場合には所定の組成のめっき層が得られにくく、よって伸線性に悪影響がある。また、ワイヤ材の表面に銅、亜鉛、ニッケルの順にめっきして、銅、亜鉛およびニッケルの合金からなる層を形成し、この層上にトリアジンチオール処理層を形成する方法がある(特許文献6)。この方法は、ゴムとの湿潤接着性が向上するとされている。しかし、銅、亜鉛、ニッケルの順のめっき処理は、熱処理後に行われるので、この熱処理中に生じる脱炭を抑制する効果はない。更に、ワイヤ材の下地表面にニッケルめっき層と銅−亜鉛−ニッケル三元合金めっき層との内外2層の金属めっき層をその順に設ける方法がある(特許文献7)。この方法は、耐腐食疲労性及び湿潤時接着性が改善するとされている。しかし、ニッケルめっきは、熱処理後の最終湿式伸線の前に行われるため、この熱処理中に生じる脱炭を抑制する効果はない。この他、ワイヤソーのワイヤに関して、ピアノ線の表面にニッケルめっきを施した後、銅、銀、錫、インジウム及びこれらの合金のうちのいずれかのめっきを施す方法がある(特許文献8)。しかし、これらのめっきは、パテンティング等の熱処理を施した後のピアノ線に施されるから、その熱処理中に生じる脱炭を抑制する効果はない。
特開平7−173543号公報 特開平8−232022号公報 国際公開第2009/005534号 特公平6−74483号公報 特開昭55−105548号公報 特開平7−119057号公報 特開2000−69687号公報 特開平4−164511号公報
上述したことから分かるように、従来の方法は、製造工程中におけるワイヤ材の脱炭抑制と製造されたワイヤの優れた耐食性とを充分に両立できる方法ではなかった。
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、製造工程中における熱処理での脱炭を抑制するとともに、製造されたワイヤの耐食性を向上させることのできるゴム物品補強用ワイヤの製造方法と、ゴム物品補強用ワイヤとを提供することを目的とする。
本発明のゴム物品補強用ワイヤの製造方法は、炭素を0.5〜1.2質量%を含む伸線後のワイヤ材に熱処理を行い、この熱処理後のワイヤ材に銅めっき、次いで亜鉛めっきを施した後、加熱する合金化処理でブラスめっき層を形成する工程を含むゴム物品補強用ワイヤの製造方法において、このブラスめっき層を形成する前に行う最終熱処理に先立って、このワイヤ材に厚さが0.5〜3.0μmのニッケルめっき、次いで銅めっきを施す工程を備えることを特徴とする。
本発明のゴム物品補強用ワイヤの製造方法においては、ニッケルめっきと銅めっきとを合金化することもできる。
本発明によれば、ブラスめっき層を形成する前に行う最終熱処理に先立って、このワイヤ材に、高融点で室温〜1000℃の高温化でも高耐食性を示すニッケルめっきを施す工程を備えることから、このニッケルめっきが最終熱処理時の保護被膜となって脱炭を抑制することができ、また、最終伸線後のワイヤの耐食性を向上させることができる。
ゴム物品補強用ワイヤの製造方法の実施形態として、タイヤに用いられるスチールワイヤを製造する方法の一例を説明する。まず、ワイヤ材として炭素0.5〜1.2質量%程度を含み、直径5.5mm程度のワイヤ材を用意する。ワイヤ材中の炭素含有量は、0.5質量%以上とすることにより、ゴム物品補強用ワイヤとして求められる強度が充分に得られ、一方、1.2質量%を超えると、初析セメンタイトの生成が避けられず、伸線性を著しく劣化させることになる。このワイヤ材に一次乾式伸線を行い、次いで一次熱処理を行う。この一次熱処理後のワイヤ材に二次乾式伸線を行って直径1.2〜3.0mm程度のワイヤ材にする。この二次乾式伸線後のワイヤ材に二次熱処理を行う。この二次熱処理は、ワイヤ材をオーステナイト化温度領域まで加熱した後、急冷する熱処理であり、これにより均一で微細なパーライト組織が得られる。このような均一で微細なパーライト組織を得るための熱処理は最終熱処理と呼ばれ、上記のように一次熱処理及び二次熱処理を行う場合は当該二次熱処理が最終熱処理に該当し、省力化のために一次熱処理と二次伸線とを省略することにより乾式伸線と熱処理とをそれぞれ一回ずつ行う場合には、当該熱処理が最終熱処理に該当する。
二次熱処理後のワイヤ材を酸洗いして表面のスケールを除去した後、表面にブラスめっき層を形成する。このブラスめっき層の形成は、例えばワイヤ材を銅めっき浴に通して銅めっき層を形成した後、このワイヤ材を亜鉛めっき浴に通して銅めっき層上に亜鉛めっき層を形成してから、加熱することにより銅と亜鉛とを熱拡散させて合金化することにより行う。ブラスめっき層が形成されたワイヤ材に湿式伸線を行って所定のワイヤ径のスチールワイヤが得られる。その後は必要に応じてワイヤの矯正処理が行われる。
本発明の製造方法は、ブラスめっき層をワイヤ材に形成する前に行う最終熱処理に先立って、ワイヤ材にニッケルめっきを施す。その一例では、乾式伸線後、最終熱処理前のワイヤ材にニッケルめっきを施す。
ニッケルめっきが施されたワイヤ材の表面には、ニッケルめっき層が形成されている。ニッケルは、比較的に融点(1453℃)が高く、また、表面に不動態被膜を形成し易いため、鉄や銅に比べて室温から1000℃以上までの広い範囲で高い耐食性を示す。したがって、例えば、インコネルなどのニッケル合金は耐熱材として使用され、また、オーステナイト系ステンレス鋼のような鉄−クロム−ニッケル合金は、室温で高耐食性を示す合金として知られている。
また、ニッケルは、鉄同様に炭素を固溶できるが、その拡散速度は、最終熱処理時における加熱温度である1000℃程度では、ニッケルの方が遅く、脱炭しにくい金属である。
したがって、最終熱処理前にニッケルめっき層が形成されたワイヤ材は、最終熱処理時においては、脱炭しにくい当該ニッケルめっき層が保護被膜となって下地のワイヤ材を覆っているため、脱炭が充分に抑制され、また、最終熱処理後、ブラスめっきが施されたワイヤとしてゴム物品の補強のために用いられているときには、このニッケルめっき層の優れた耐食性によって当該ワイヤの耐食性を向上させることができる。
そればかりでなく、ニッケルは不動態被膜を除去できれば、ブラスめっき中の銅とゴムとの過剰な接着性を抑制してワイヤの接着性を向上させる効果もある。特に湿潤下での接着促進環境下では、その効果が大きい。
本発明の製造方法は、ニッケルめっきを施した後、このニッケルめっき上に銅めっきを施し、その後に最終熱処理に供することもできる。ニッケルめっき後に銅めっきを実施することで、熱処理時にはニッケルめっきのみを施した場合と同様に脱炭を抑制させることができるとともに、熱処理後はニッケルの優れた耐食性と銅の優れた耐食性とが相まって、ワイヤの耐食性をいっそう向上させることができる。
ニッケルめっき層と、このニッケルめっき層上に重ねて形成された銅めっきとの間で合金化できれば、その効果が大きい。ニッケル−銅間での合金化では、全率固溶型の合金が生じ、ニッケル中に銅が固溶しても、脆化の起因となる金属間化合物の形成がなく、延性に富む。また、銅中にニッケルが固溶すると、融点が上がる。したがって、最終熱処理時においては、銅単独のめっき層の場合に懸念される1000℃以上での融解、酸化が抑制される。したがって、最終熱処理前にニッケル、銅の順にめっきした後に、当該最終熱処理をすれば、脱炭抑制させながらも、最終熱処理の加熱によってニッケルと銅とが相互に拡散するため、合金化処理を別途に実施しなくてもニッケルと銅とが合金化でき、この合金化により優れた接着効果も大きく期待できる。また、合金化をしても、めっき層は下地のワイヤ材に接する側がニッケルリッチの濃度であり、表面側が銅リッチの濃度であり、組成がめっき層の厚さ方向に変化している。したがって、ニッケルや銅による耐食性向上効果も具備している。
更に、銅めっきを施すことにより、最終熱処理後のワイヤ材のめっき層表面には、銅又は銅リッチな部分が形成されている。この部分は、最終熱処理後にブラスめっき層を形成するための銅成分として活用することができる。したがって、最終熱処理前に銅めっきを施した後に最終熱処理を行い、この最終熱処理後は銅めっき層を形成することなく、又はめっき層の厚さを従来よりも薄くした銅めっき層を形成した後に亜鉛めっき層を形成し、次いで加熱して熱拡散させる合金化処理のみでブラスめっき層又は銅−亜鉛−ニッケルの合金めっき層を形成することが可能となる。このような最終熱処理後に銅めっき層を形成することなく、又は厚さを従来よりも薄くした銅めっき層を形成することにより、ゴム物品補強用ワイヤの生産性を向上させることができる。
本発明の製造方法において、ニッケルめっきは、無電解めっき、電解めっきのいずれでも可能である。ニッケルめっき浴を設けて、乾式伸線装置を経たワイヤ材をこのニッケルめっき浴に通すことにより実施する。
ニッケルめっきにより形成されるニッケルめっき層の厚さは、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上がより好ましい。ニッケルめっき層上に、銅めっき層を形成する場合は、ニッケルめっきの厚さ及び銅めっき層の厚さの合計が0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上がより好ましい。更に好ましくは、最終製品のめっき厚を考慮して、ニッケル単独めっきの場合では、ニッケルめっきの厚さは0.5〜3μm、ニッケル−銅の積層めっきの場合では、ニッケルめっきの厚さは単独の場合と同じ0.5〜3μm、銅めっきの厚さは、0.5〜3μmの範囲とする。このめっき層の厚さが0.2μmよりも薄いと、めっきのムラが生じ易く、また最終熱処理時の炭素の拡散により脱炭しやすくなる。また、3μm以上厚くても、効果が変わらず、コストや生産性が悪化する。
本発明のゴム物品補強用ワイヤは、本発明の製造方法によって得られ、ワイヤ基体上にめっき層を備え、このめっき層は、ワイヤ基体に接する側にニッケル部又はニッケル−銅合金部を有し、表面側にブラス部を備えるものである。製造工程において最終熱処理前に形成されるニッケルめっき層、又はニッケルめっき層及び銅めっき層による積層、若しくは合金化めっき層は、最終熱処理後に形成されるブラスめっき層と一体化する。一体化した後に加熱を行い、熱拡散により合金化していることから、一体化前の各層に対応する明快な境界はなくめっき層中に各成分の原子が分散している。もっとも、この一体化しためっき層は、そのめっき層の厚さ方向に組成(すなわち、成分濃度)が変化していて、具体的には、下地のワイヤ材に接する側はニッケル又はニッケル−銅合金の成分がリッチなニッケル部又はニッケル−銅合金部を備えていて、表面側は、ブラスすなわち銅−亜鉛合金の成分がリッチなブラス部を備えている。ワイヤ材に接する側にニッケル部やニッケル−銅合金部を備えていていることから、ニッケルによる優れた耐食性を有し、また、表面側に、ブラス部を備えていることから、優れた接着性を有している。
(実施例1〜2及び参考例1〜11)
炭素0.8質量%を含有し、直径5.5mmのワイヤ材に一次伸線を行って線径3.0mmとした。次に、一次熱処理として1000℃に加熱、冷却後、二次伸線を行って線径1.8mmとした。得られたワイヤ材に対して、ニッケルめっきを施して表1に示すニッケルめっき層厚とした。また、一部の実施例については、ニッケルめっきに引き続いて銅めっきを施して表1に示す銅めっき層厚とした。ニッケルめっきおよび銅めっきの際に使用した浴の組成およびめっき条件は、次のとおりである。
電解ニッケルめっき<ワット浴>
硫酸ニッケル 250g/L
塩化ニッケル 50g/L
pH 5.5
陰極電流密度 5A/dm
めっき槽温度 50℃
<無電解ニッケルめっき>
塩化ニッケル 30g/L
酢酸ナトリウム 10g/L
次亜りん酸ナトリウム 10g/L
pH 5.0
めっき槽温度 90℃
<ピロリン酸銅めっき浴>
ピロリン酸銅 85g/L
ピロリン酸カリウム 300g/L
pH 8.6
陰極電流密度 1A/dm
めっき槽温度 50℃
Figure 0005701634
めっき後のワイヤ材を加熱炉にて1050℃で、2分間加熱してオーステナイト化してから、600℃まで冷却速度100℃/sで急冷し、その温度に10秒保持する最終熱処理を行った。この最終熱処理は、いわゆるパテンティング処理である。
最終熱処理後に、めっき処理として銅めっきを、上記のピロリン酸銅めっき浴と同じ条件で、ワイヤ材表面に、参考例1、3、4、6,7、8及び10では厚さ1.2μmに、参考例2及び5並びに実施例1及び2では最終熱処理前の銅めっき層厚さとの合計で厚さ1.2μmとなるように、それぞれ形成した。また、参考例9及び11では銅めっき処理を省略した。次いで亜鉛めっきを、銅めっきされたワイヤ材表面に厚さ0.8μmに形成した後、400℃で300秒間、加熱保持して熱拡散させた。この熱拡散後のワイヤのめっきは、熱拡散により合金化されて、銅と亜鉛との比が65:35となるようなブラスめっき層が1μm以上の厚さで形成された。また、参考例2及び5、実施例1及び2、参考例9及び11は、最終熱処理時にニッケルめっきと銅めっきとが合金化したため、下地のワイヤ側がニッケルリッチ、表面側がブラスリッチのニッケル−銅−亜鉛合金の組成を有していた。熱拡散後のワイヤを湿式の最終伸線を行ってスチールワイヤを得た。
このスチールワイヤに撚線工程を実施してスチールコードを作製し、このスチールコードに接着性能を評価した。この接着性能評価については、初期接着性と接着耐久性で評価し、この初期接着性は素線径0.30mmのブラスめっき鋼線を1×3構造に撚りスチールコードを作製した後、これを等間隔に平行に並べ、両側からゴムでコーティングした後、160℃、7〜15分の加硫後、得られたゴム−スチールコード複合体につき、ゴムからスチールコードを剥離し、その時のゴム付着率を測定して、その結果を、従来例を100とした指数で示した。数値が大きいほど接着性が良好であることを示す。また、接着耐久性は、初期接着性と同様にゴムでコーティングした後、160℃、20分で加硫後、得られたゴム−スチールコード複合体につき、湿度95%、温度75%の大気圧雰囲気中に7〜14日放置し、その後ゴムからスチールコードを剥離し、その時のゴム付着率を測定して、その結果を、従来例を100とした指数で示した。数値が大きいほど接着性が良好であることを示す。
また、最終熱処理による脱炭量を評価するために、上述した製造工程中、最終熱処理後であって、最終伸線工程前のワイヤの一部を取り出して、炭素分析機器である炭素・硫黄同時分析装置によってワイヤ全体の炭素含有量を測定し、更に酸を用いた電解研磨によりワイヤ体積の2%を溶解し、全体として体積の10%表面層を除去した後、炭素分析量を測定し、電解研磨前後での炭素量(質量%)の差を脱炭量とした。
接着性能評価及び脱炭量を、表1に併記する。
表1から分かるように、従来例、比較例に比べ各実施例は、脱炭、耐久接着性共に良好であり、厚さ0.2μm以上、特に0.5μm以上のめっきでは、良好な脱炭抑制、耐久接着効果が得られた。

Claims (2)

  1. 炭素を0.5〜1.2質量%を含む伸線後のワイヤ材に熱処理を行い、この熱処理後のワイヤ材に銅めっき、次いで亜鉛めっき施した後、加熱する合金化処理でブラスめっき層を形成する工程を含むゴム物品補強用ワイヤの製造方法において、
    このブラスめっき層を形成する前に行う最終熱処理に先立って、このワイヤ材に厚さが0.5〜3.0μmのニッケルめっき、次いで銅めっきを施す工程を備えることを特徴とするゴム物品補強用ワイヤの製造方法。
  2. 前記ニッケルめっきと銅めっきとを合金化する請求項記載のゴム物品補強用ワイヤの製造方法。
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