JP2017145449A - 鋼線及び該鋼線を埋設するゴム−金属複合体 - Google Patents

鋼線及び該鋼線を埋設するゴム−金属複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼線の腐食の進行を抑制することによってゴムとの密着性劣化ならびに腐食疲労を抑制できる鋼線及び該鋼線を埋設するゴム−金属複合体の提供。【解決手段】鋼線と、上記鋼線の表面に下層皮膜と上層皮膜の2層の皮膜が積層されており、上記下層皮膜は、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を合計で0.1質量%以上20.0質量%以下含む。上記鋼線は腐食の進行を抑制することによってゴムとの密着性劣化ならびに腐食疲労を抑制できる。【選択図】なし

Description

本発明は、スチールコードなど、各種ゴム製品の補強等を目的として、ゴム製品中に埋設される鋼線に関し、鋼線の腐食および腐食の進行を抑制することによって、ゴムとの密着性劣化ならびに腐食疲労を抑制できる、皮膜を有する鋼線及び該鋼線を埋設するゴム−金属複合体を提供するものである。
一般に、タイヤやコンベヤ等のゴム製品は、その補強のため、表面にゴムが被覆されたブラスめっき(銅−亜鉛合金めっき)が施された鋼線が用いられている。これらめっき鋼線で補強されたゴム製品の寿命を短くする原因に、鋼線の腐食と、腐食に起因する腐食疲労とがある。タイヤやコンベヤ等に使用されるゴムは水や酸素を透過し、かつ、ゴム製品はゴムに所望の性能を持たせるために様々な添加剤が使用されているため、その内部に水を含んだ際に、ゴム製品補強用鋼線は腐食環境に晒され、腐食する。
さらに、使用中の様々な外的・内的要因によってゴム製品に傷が付き、水が浸入しやすくなることで腐食が促進されることがある。その結果、腐食に伴って鋼線からゴムが剥離したり、腐食疲労によって鋼線本来の疲労寿命よりも早期に破断したりするため、ゴム製品の寿命が鋼線本来の疲労寿命よりも短くなるという問題があった。
このような問題に対し、線材の脱炭を抑制して疲労特性を改善し、かつ、耐食性が向上する技術として、ブラスめっき処理前に行う最終熱処理の前に、Sn、Zn、Biをめっきする技術(特許文献1)や、Niをめっきする技術(特許文献2)が提案されている。
しかし、これらの技術は脱炭抑制には寄与したものの、特に伸線加工の工程や使用中の様々な外的・内的要因によって皮膜に傷がつくと、従来のゴム製品同様に腐食が発生した。
また、線材の腐食を抑制する技術としては、例えば線材の最外層ストランドよりも内側に位置する少なくとも1つのスチールフィラメントに、鉄よりもイオン化傾向が大きい金属を施す技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)が、イオン化傾向が大きい金属は腐食しやすく、線材そのものの腐食は抑制されるものの、イオン化傾向が大きい金属の腐食に伴うゴムとの密着性の劣化が大きく、ゴム製品の耐久性を向上させることは出来なかった。
他にも、ゴム製品補強用の鋼線そのものの耐食性を向上させる技術として、鋼線にZr、Ti、V、Nbなどを添加する技術が提案されている(例えば特許文献4)が、その効果メカニズムは不明であり、また鋼線そのものに添加するためコストが高くなるばかりか、耐食性も不十分であった。
特開2012−167381号公報 特開2012−167380号公報 特開2011−202291号公報 特公平6−74483号公報
上記のように、従来の技術では腐食の抑制、特にめっき層に傷が存在した場合の腐食の進行を抑制し、鋼線からのゴムの剥離や、腐食疲労を十分に抑制する技術は存在しなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、鋼の腐食および腐食の進行を抑制することによってゴムとの密着性劣化、ならびに腐食疲労を抑制できる鋼線と該鋼線を埋設するゴム−金属複合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、ゴムが被覆される鋼線の代表例であるブラスめっき鋼線の腐食について詳細に調査した結果、鋼線に施された貴な皮膜であるブラスめっきの欠損部から鋼が優先的に腐食しはじめ、腐食の進行に伴って貴なめっき層の下層において鋼の孔食が進行し、錆の膨張と破壊によってゴムとの密着層であるブラスめっきなどの皮膜層の剥離が生じることを発見した。
また同時に、孔食状の腐食箇所を起点として腐食疲労が進行し、早期の破断に繋がることが判明した。これらの知見に基づき、ブラスめっき欠陥部などの鋼露出部での腐食の進行を抑制することが効果的と考え、鋭意検討した結果、密着性を目的としたブラスめっきなどの皮膜の下層皮膜として、鋼線の表面にFeを80質量%以上含みCr、Mo、Ni、Sn、W、Vを所定量含む層を設けることで鋼の腐食の進行が抑制できるとの知見を得て本発明を完成した。その要旨は以下のとおりである。
[1]鋼線の表面に、Feを80質量%以上含み、更にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を合計で0.1質量%以上20.0質量%以下含む皮膜が形成されていることを特徴とする鋼線。
[2]鋼線の表面に下層皮膜と上層皮膜の2層の皮膜が積層されており、前記下層皮膜が、Feを80質量%以上含み、更にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を合計で0.1質量%以上20.0質量%以下含んでいること特徴とする鋼線。
[3]前記Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種を含む皮膜又は下層皮膜の厚みが0.01μm以上1.0μm以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の鋼線。
[4]前記上層皮膜がCuを含有し、更にSn、Znから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を含有していることを特徴とする[2]又は[3]の何れかに記載の鋼線。
[5]前記上層皮膜がブラスめっきであることを特徴とする[4]に記載の鋼線。
[6]前記鋼線の引張り強度が1000MPa以上であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の鋼線。
[7]前記[2]乃至[5]のいずれかに記載の鋼線がゴム中に埋設されてなるゴム−金属複合体。
本発明に係る鋼線では、鋼線の表面にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vを所定量含む下層皮膜を設けることで、腐食環境下においてこの下層皮膜が腐食し、密着性の良い緻密な腐食生成物を形成する。この緻密な腐食生成物層が腐食因子に対するバリアとなり、鋼の腐食の進行を効果的に抑制し、ゴムの剥離を抑制でき、また、孔食を抑制できる。その結果、本発明に係るめっき鋼線によれば、ゴムとの密着性劣化の抑制ならびに腐食疲労の抑制ができる。
以下に、本発明に係る鋼線とその製造方法及び該鋼線を埋設するゴム−金属複合体について、詳細に説明する。なお、これらの実施形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲で任意に組み合わせることができる。
<めっき鋼線>
本発明に係る鋼線は、基本的には鋼線の表面に下層皮膜と上層皮膜の2層の皮膜が積層されている。前記下層皮膜はFeが80質量%以上であって、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を合計で0.1質量%以上20.0質量%以下含む。
なお、これらCr、Mo、Ni、Sn、W、Vは炭化物の状態では腐食生成物層を緻密化する効果は見られなかったため、下層皮膜中に炭化物の状態で存在するものは前記濃度から除かれる。また、前記下層皮膜の成分は、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vのうちの少なくとも一つの元素、及びFe以外に不純物を含有してもよい。ここで、不純物とは、下層皮膜の成分として意識的に添加したものではなく、原料中に、或いは製造工程において混入されるものであり、Al、Mg、Si、Ti、B、S、N、C、Zn、Mn、Cu、Nb、Pb、Cd、Ca、Pb、Y、La、Ce、Sr、Sb、P等を意味する。これらの元素が不純物として、合計して1%程度存在しても、本発明の効果は損なわれない。
(作用等)
前記下層皮膜は、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素の合計を0.1質量%以上とすることで、生成する腐食生成物を緻密で密着性のよいものとすることができる。
なお、上記下層皮膜を構成する上記選択元素含有量の合計を0.5質量%より大きくすることで上記効果をさらに高いレベルで奏することができ、1.0質量%以上とすることで上記効果を極めて高いレベルで奏することができる。
一方、前記下層皮膜は、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素の合計が20.0質量%を超えると鋼との電位差が大きくなりすぎる結果、前記下層皮膜に対して鋼が優先して腐食する。このため、下層皮膜の腐食が抑制され、該下層皮膜からCr、Mo、Ni、Sn、W、Vが溶出しないために緻密な腐食生成物が生成しなくなる。そのため、前記下層皮膜に含まれるCr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素の合計の上限は20.0質量%とした。
なお、下層皮膜中の各元素の含有率は、当該皮膜を含むように鋼材をCP(Cross section Polisher)またはFIB(Focused Ion Beam)で加工して断面試料を作製し、これをTEM−EDX、空間分解能の高いEPMAや、SEM−EDXで分析することによって測定できる。
前述した下層皮膜中の前記選択元素の合計が20.0質量%を超えた場合の挙動については、本発明と同様に、NiやSnを使用している特許文献1および特許文献2で提案される技術において、皮膜に傷がついた場合に従来のゴム製品同様に腐食したことからも支持される。すなわち、ブラスめっき処理前に行う最終熱処理の前にNiやSnをめっきし、最終熱処理の際に鋼と合金化をさせたとしてもNi濃度やSn濃度の高いFe合金層となる結果、鋼の方が優先して腐食するため、緻密な腐食生成物が生成しなかったものと考えられる。
以上に示すように、本発明に係る鋼線では、緻密で密着性に優れる腐食生成物を形成する下層皮膜とするために、Feをベースとし、そこに含まれる元素の種類と量を特定のものに限定している。その結果、本発明に係る鋼線によれば、ゴムとの密着性劣化の抑制ならびに腐食疲労の抑制が実現できる。
更に、本願の鋼線は、下層皮膜とゴムとの間に、ゴムとの密着性を向上させる上層皮膜が存在する。このような上層皮膜としては、鋼線とゴムとの密着性の向上に寄与するものならば特に限定されないが、例えば、りん酸塩皮膜、クロメート皮膜、3価クロム処理皮膜、シランカップリング処理皮膜、ウレタン樹脂皮膜、エポキシ樹脂皮膜、アクリル樹脂皮膜、Cu合金皮膜などが挙げられ、また、これらに限らず他の公知の手段を適用することもできる。
特に、必要があれば、上述した上層皮膜を2種以上組み合わせて多層被覆膜として適用することも可能である。
(好適例)
以上に示すめっき鋼線においては、最終伸線後の下層皮膜の厚みを0.01μm以上とすることで、ゴムとの密着性劣化の抑制ならびに腐食疲労の抑制を効果的に達成できる。一方、上記の厚みを1.0μm超としても当該効果の向上が見込めないため、1.0μm以下とすることで、被膜を構成するめっき材料の節約を図ることが出来る。なお、下層皮膜厚みのさらに好ましい範囲は、0.05μm以上0.5μm以下であり、これによりさらに安定して効果を享受できる。
下層皮膜の厚みは、下層皮膜の組成と同様に、CPまたはFIBで加工した断面試料を、TEM−EDXや、空間分解能の高いEPMAやSEM−EDXで分析することによって測定できる。
本願発明の上層皮膜としては、Cuを含有し、更にSn、Znから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を含有しているめっき層であることが好ましい。なかでも加硫ゴムに埋設する際の密着層としてブラスめっき(Cu−Znめっき)を使用することは伸線加工時の潤滑性を向上させる効果があるため、さらに好ましい形態である。加硫ゴム中のSとブラスめっき中のCuは強固な化学結合を形成するため、高い密着性を得ることができる。なお、上層皮膜を構成するブラスめっき層の組成ならびに厚みについては種々の要望に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
ブラスめっき以外のめっき膜や、化成処理膜を上層皮膜として採用する場合には、該皮膜の伸展性や耐擦過性を考慮して、伸線加工後に被覆形成することもできる。
また、本願発明の鋼線には引張り強度が1000MPa以上である鋼材を使用することが好ましく、2800MPa以上である鋼材を使用することはより好ましい。引張強度が1000MPaであれば、めっき鋼線を、例えば、上述したタイヤやコンベア等のゴムを補強する補強材として好ましく用いることができる。なお、めっき鋼線の引張強度は、(スチール)コードの場合はJIS G3510(1992年)、フィラメントの場合はJIS Z2241(1998年)に準拠した引張試験によって、測定することができる。
上記の引張強度を有する鋼線としては、概ね炭素の含有量が0.8質量%以上の高炭素鋼線が挙げられ、線径がφ(直径)0.05mm〜0.4mm程度である。
本願発明の鋼線が埋設されるゴム組成物の種類は特に限定されず、例えば、一般に公知の天然ゴムや合成ゴムを単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、クロロスロホン化ポリエチレン、アクリルゴム等のオレフィン系ゴムや、ウレタンゴムや、フッ素ゴムや、多硫化ゴムなどを用いることができる。
<鋼線の製造方法>
以上、本発明の好適な実施形態に係る鋼線の構成について詳細に説明したが、続いて、この鋼線の製造方法について説明する。
まず、圧延または伸線した鋼線を酸洗し、表面のスケール除去及び脱脂をする。このとき、酸洗に用いる酸溶液としては、例えば、塩酸や硫酸等を用いることができる。
次に、酸洗した鋼線の表層にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vを所定量含む下層皮膜を設ける。下層皮膜の形成方法は公知の方法を用いることができ、蒸着法、スパッタ法、イオンビーム法、電気めっき法などが適用できるが、所望の組成を得られるならば特に限定されない。例えば電気めっきであれば硫酸浴、塩化物浴、シアン化物浴、ピロりん酸浴、ほう酸浴、クエン酸浴、その他錯体浴およびこれらの組合せなどを使用できる。まためっき浴にはFeイオンの他にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる1つ以上の単イオンまたは錯イオンを添加することでCr、Mo、Ni、Sn、W、Vを所望量含む下層皮膜を鋼線の表層に形成すればよい。また、めっき浴中のイオンの安定化やめっきの特性を制御するために添加剤を加えることはさらに良い形態である。
なお、電気めっき浴の組成、温度、流速、およびめっき時の電流密度や通電パターンなどは所望のめっき組成となるように適宜決定すればよく、あえて限定しない。
下層皮膜の厚みの制御は、蒸着法であれば加熱時の電流値と時間を調整すればよく、スパッタ法およびイオンビーム法であれば印加する電流値と時間を調整すればよく、電気めっき法であれば所望の組成となる電流密度の範囲内で電流値と時間を調整すればよい。
下層皮膜の形成は均一で微細なパーライト組織を得るための最終熱処理の前に行っても良いが、鋼中のCが拡散して炭化物を形成する可能性があるため、最終熱処理後に行うことが望ましい。
最終熱処理と下層皮膜の形成をしたのち、湿式で最終伸線を行って、所望の線径と強度を得る。
ここで、ゴムとの密着性を確保するために、下層皮膜の表面上に上層皮膜を形成する。上層皮膜の形成方法は公知の方法を用いることができ、りん酸塩皮膜であれば浸漬やスプレー法で、クロメート皮膜や3価クロム処理皮膜であれば塗布法や電解法で、シランカップリング処理皮膜、ウレタン樹脂皮膜、エポキシ樹脂皮膜、アクリル樹脂皮膜であれば塗布法で、Cu合金皮膜であれば電気めっきなどで形成できる。塗布方法も特に限定されず、浸漬法やスプレー法などが適用できる。
上層皮膜の形成は、りん酸塩皮膜、クロメート皮膜、3価クロム処理皮膜や樹脂のように延展性が低い場合には、最終伸線後に形成するのが望ましい。一方、Cu合金皮膜のうちブラスめっき(Cu−Zn)やCu−Snめっきは延展性が高く、湿式での最終伸線の際に潤滑皮膜としても働くため、最終伸線前に形成するのが望ましい。
Cu合金皮膜のうち、ブラスめっき(Cu−Zn)やCu−Snめっきについては、シアン化物浴やピロりん酸浴などから合金めっきを直接形成してもよいが、CuめっきとZnめっき、または、CuめっきとSnめっきを、それぞれ単独にめっきして積層させた後、ZnまたはSnの融点以上に加熱し、拡散による合金化で形成してもよい。
また、加熱拡散によるCu合金皮膜の形成を最終伸線後に行う場合、加熱処理によって組織が焼きなまされてしまい、鋼線の強度が低下してしまうため、最終伸線前に形成する必要がある。
以上のようにして鋼線の表層に下層皮膜と、好ましくは上層皮膜を形成しためっき鋼線にゴム組成物を被覆させ、ゴム中にめっき鋼線が埋設されたゴム−金属複合体を形成する。最後に、ゴム組成物の強度を向上させるため、ならびに、上層皮膜としてCu合金めっきが形成されている場合には、密着性向上のために、ゴム−金属複合体に、170℃〜220℃で、数分〜数時間の加硫処理をする。加硫処理に用いる加硫剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、硫黄およびその同属元素(Se,Te)、含硫黄有機化合物、有機過酸化物、金属酸化物(MgO,PbO,ZnOなど)、有機多価アミン、変性フェノール樹脂、イソシアナート類など多様なものを使用できる。また、加硫処理の際、加硫時間の短縮、加硫温度の低下、加硫剤量の減少、ゴム製品の品質向上を目的として、加硫剤に加えて、加硫促進剤を添加してもよい。
以上に示す、本発明に係る鋼線の製造方法によれば、鋼線の表層に、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる1種以上の元素を適切な濃度で含む下層皮膜を形成することができ、鋼線の腐食および腐食の進行を抑制することができ、ゴムとの密着性劣化ならびに腐食疲労を抑制できる鋼線を得ることができる。
なお、鋼線メーカーは、上層皮膜まで施工して出荷する場合の他、下層皮膜被覆前の素鋼線で出荷する場合や、下層皮膜を形成した製品にオイルコートを施した中間素材の形態で出荷する場合もある。
以下、本発明の効果を発明例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の発明例で用いた条件に限定されるものではない。また、表1〜表3中の下線部は、本発明の範囲から逸脱していることを意味する。
Figure 2017145449
Figure 2017145449
Figure 2017145449
質量%で、C:0.82%、Si:0.21%、Mn:0.42%、P:0.007%、S:0.016%の鋼を溶解し、直径5.5mmの鋼線に圧延した。得られた熱間圧延材を酸洗し、スケールを除去した後、線径1.8mmまで伸線加工した。この伸線材を、最終熱処理として、加熱炉にて950℃で、2分間加熱してオーステナイト化したのちに、600℃まで冷却速度100℃/sで急冷し、その温度に10秒保持した。
得られた鋼線に対して、連続してアルカリ溶液による電解脱脂と硫酸による電解酸洗を施し、表1および表2の組成となるように、電気めっきにて下層を形成した。Fe−CrめっきとFe−NiめっきとFe−SnめっきとFe−Vめっきは硫酸浴で、Fe−Mo、Fe−Wめっきはクエン酸アンモニウム浴でめっきを行い、それぞれのめっき組成はめっき浴組成と電流密度を変動させて制御した。また、その厚みはめっき時間を変動させて制御した。
下層皮膜を形成後、直ちに水洗を行い、引き続いて上層皮膜を形成した。上層皮膜としては伸線加工後の平均厚さが230nmで、Cu濃度が63質量%となるブラスめっきを、ピロりん酸Cuめっきと硫酸Znめっきを順に行った後に、500℃に加熱して4sec保持する合金化処理を行って形成した。
その後、湿式潤滑剤を用いた湿式伸線により、線径が0.1〜0.4mmになるように伸線加工を行い、めっき鋼線を製造した。比較のために、下層を形成せずに、鋼線に直接Cuめっき及びZnめっきと拡散熱処理によって、平均厚さが230nmであり、Cu濃度が63質量%であるブラスめっきを設けためっき鋼線を製造した。下層のめっき組成ならびにめっき厚さはめっき鋼線から試料を採取して、CPにて作製した断面試料についてFE−SEM−EDXにて観察ならびに測定して求めた。
得られた鋼線4本を、5mmのピッチで撚り合わせてコードとし、金型にセットして、表4に示すゴム組成物に埋め込み、160℃で、30分加熱するホットプレスにより加硫処理を行い、評価用試料を作製した。この試料の中央に鋼線に対して直角方向にめっき鋼線が露出する程度にカッターで切り込みをいれたものを用いて、劣化後の密着性ならびに孔食状の腐食有無を評価した。劣化後の密着性は、劣化処理前後の接着強度を測定し、劣化処理前後の接着強度を比較し、劣化処理前の強度を100としたとき、劣化処理後の強度が50未満となるものをC、50以上70未満となるものをB、70以上となるものをAと評価し、B以上を合格とした。このとき、接着強度は引張試験装置でコードをゴムから引き抜いた時の引抜力を測定し、最大引抜力で評価した。また、劣化処理は相対湿度95%、温度80℃の恒温恒湿槽中で300hr保持した。孔食状の腐食有無については引き抜いた鋼線から試料を採取し、CPにて作製した断面試料についてFE−SEM−EDXにてブラスめっき層下の腐食形状を確認し、孔食状の腐食の深さが1μm以上であればC、1μm未満であればB、0.5μm未満であればAとし、B以上を合格とした。結果を表1〜表2に示す。
Figure 2017145449
腐食疲労は、得られた鋼線4本を、5mmのピッチで撚り合わせてコードとしたものについて応力負荷方式の疲労試験をJIS Z 2371(2000年)に基づく中性塩水噴霧試験環境下で試験した。腐食疲労の評価は下層の無いめっき鋼線の寿命(比較例1)を100としたときの指数で表し、100以下をC、101〜129をB、130以上をAとし、B以上を合格とした。結果を表1〜表2に示す。
次に、[0037]で表1の6、11、18、24、29、35と同様の組成、厚みとなるように下層皮膜を形成したもの、および比較例として下層皮膜を設けなかったものに対し、ブラスめっき以外の上層皮膜を形成して[0039]と同様の試験をした結果を表3に示す。
Cu-Snめっきは、伸線加工後の平均厚さが230nmでCu濃度が80質量%となるように、ピロりん酸Cuめっきと硫酸Snめっきを順に行った後に、400℃に加熱して4sec保持する合金化処理を行って形成した。Cu-Niめっきは、伸線加工後の平均厚さが230nmでCu濃度が80質量%となるように、ピロりん酸Cuめっきと硫酸Niめっきを順に行った後に、800℃に加熱して5min保持する合金化処理を行って形成した。
りん酸塩皮膜、シランカップリング皮膜、クロメート皮膜、ウレタン樹脂皮膜は、下層皮膜を形成後、直ちに水洗を行い、湿式潤滑剤を用いた湿式伸線により、線径が0.1〜0.4mmになるように伸線加工を行ったものに形成した。ぞれぞれ、りん酸塩皮膜は日本パーカラインジング(株)製PBL−3080で通常の化成処理条件により付着量が3g/mとなるように形成した。シランカップリング処理は3−アミノプロピルトリメトキシシランに浸漬し、引き上げ乾燥して0.3μmの厚みとなるように調整した。クロメート皮膜はCr3+:10〜50g/l、Cr6+:10〜50g/l、SiOコロイド: 100g/lの部分還元塗布型クロメート処理液に浸漬して引上げ、最高到達温度160℃で乾燥して300mg/m2となるように調整した。なお、付着量は蛍光X線分析により求めた。樹脂皮膜の例として、ウレタン樹脂皮膜はカチオン性ポリウレタン樹脂の水分散液に浸漬して引上げ、最高到達温度190℃で乾燥して1μmの厚みとなるように調整した。
得られた鋼線を[0039]および[0040]に示すように評価用試料を作製して評価した。結果を表3に示す。
表1〜表3によれば、(下層皮膜を備え、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる1つ以上の元素の含有量を調整した)発明例はいずれも、劣化後の密着性、孔食状の腐食状態、腐食疲労のいずれも改善し、合格であった。このため、発明例の鋼線については、いずれも、鋼線の腐食および腐食の進行を抑制することによってゴムとの密着性劣化ならびに腐食疲労を抑制できた、といえる。
これに対し、(下層皮膜中の、Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる1つ以上の元素の含有量について調整していない、または下層皮膜を備えない)比較例はいずれも、劣化後の密着性、孔食状の腐食状態、腐食疲労の少なくとも1つを満たさなかった。このため、比較例の鋼材については、いずれも、鋼線の腐食および腐食の進行を抑制することによってゴムとの密着性劣化ならびに腐食疲労を抑制できる、とはいえない。

Claims (7)

  1. 鋼線の表面に、Feを80質量%以上含み、更にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を合計で0.1質量%以上20.0質量%以下含む皮膜が形成されていることを特徴とする鋼線。
  2. 鋼線の表面に、下層皮膜と上層皮膜の2層の皮膜が積層されており、前記下層皮膜が、Feを80質量%以上含み、更にCr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を合計で0.1質量%以上20.0質量%以下含んでいること特徴とする鋼線。
  3. 前記Cr、Mo、Ni、Sn、W、Vから選ばれる元素のうち少なくとも一種を含む皮膜又は下層皮膜の厚みが0.01μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の鋼線。
  4. 前記上層皮膜がCuを含有し、更にSn、Znから選ばれる元素のうち少なくとも一種以上を含有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の鋼線。
  5. 前記上層皮膜層がブラスめっきであることを特徴とする請求項4に記載の鋼線。
  6. 前記鋼線の引張り強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の鋼線。
  7. 前記請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の鋼線がゴム中に埋設されてなるゴム−金属複合体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110804888A (zh) * 2019-09-30 2020-02-18 江苏冠晟超导科技有限公司 一种加强复合镀镍钢丝及其生产工艺

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