JP4563235B2 - 耐食性に優れたゴム補強用線条体、および該ゴム補強用線条体とゴムとの複合体 - Google Patents

耐食性に優れたゴム補強用線条体、および該ゴム補強用線条体とゴムとの複合体 Download PDF

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Description

本発明は、ゴム補強用線条体、および該ゴム補強用線条体とゴムとの複合体に関するものであり、例えば、タイヤやホース、工業用ベルトなどのゴム製品を補強するための素材として好適に用いることのできるゴム補強用線条体、および該ゴム補強用線条体とゴムとが複合している複合体に関するものである。
タイヤやホース、工業用ベルトなどのゴム製品を補強するための素材として、従来からゴム補強用スチールコードが用いられている。ゴム補強用スチールコードは、ゴムと複合することによりゴムと密着し、ゴム製品の強度を高めるものである。そのためスチールコードとゴムとの間には、良好な接着性が要求される。こうしたゴム補強用スチールコードは、例えばタイヤを補強するために用いられる。
タイヤ用のスチールコードとゴムとの間の密着性を高める技術として、例えば特許文献1には、伸線加工性が良好で、しかも初期ゴム密着性の良いゴム補強用ワイヤを製造する方法が提案されている。この技術では、高炭素鋼ワイヤの表面に黄銅(ブラス)めっき層を形成した後、該黄銅めっき層の上に銅めっき層を形成し、次いで得られたワイヤを伸線加工することにより黄銅めっきと銅めっきとを機械的に合金化している。黄銅めっきと銅めっきを合金化すると深さ方向に沿って表面ほどCu含有量の多い被覆層となるが、該被覆層の最表面に存在するCuがゴムとの間に適度な硫化物を生成し、両者の密着性を高めている。
ところがゴム補強用スチールコードを用いて補強されたゴム製品に亀裂等が入ると、該亀裂からの水の侵入によりゴム製品内部のスチールコードが腐食されることがある。特に繰り返し応力が加わるカーカス部では腐食疲労を誘発する原因となる。しかし上記特許文献1では、スチールコードの腐食については考慮されていなかった。
特開平11−179419号公報([特許請求の範囲]、[0009]参照)
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐食性に優れたゴム補強用線条体を提供することにある。また他の目的は、耐食性に加えて、ゴムとの接着性が良好なゴム補強用線条体を提供することにある。さらに他の目的は、前記ゴム補強用線条体とゴムとが複合しているゴム複合体を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐食性に優れたゴム補強用線条体とは、鋼素線の表面に、CuおよびZnを含む被覆層を有するゴム補強用線条体であって、前記線条体の長手方向に垂直な断面を観察したときに、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和が、鋼素線の周方向全長に対して50%以上であり、且つ、前記周方向領域について、(1)被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域での平均Cu含有量が50〜95質量%であると共に、(2)被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域における平均Zn含有量が60質量%以上である点に要旨を有する。前記平均Cu含有量が60〜85質量%であると、上記耐食性に加えて、ゴムとの接着性も良好となる。なお、前記ゴム補強用線条体とゴムとが複合しているゴム複合体も本発明の範囲に包含される。
本発明によれば、耐食性に優れたゴム補強用線条体を提供できる。また、本発明によれば、耐食性に加えて、ゴムとの接着性が良好なゴム補強用線条体を提供できる。さらに、本発明によれば、前記ゴム補強用線条体とゴムとが複合しているゴム複合体を提供できる。
上記特許文献1では、鋼素線上に形成された黄銅めっきと銅めっきとを合金化することにより、表面ほどCu含有量が多い被覆層を備えたゴム補強用線条体となり、この被覆層の最表面に存在するCuが、ゴムとの間で適度な硫化物を形成することで、ゴムとゴム補強用線条体との密着性が良好になる。
ところがCuは、鋼素線よりも貴な金属であるため、例えば、ゴム補強用線条体を用いて補強されたゴム製品に亀裂等が入って内部に水が侵入すると、Cuよりも卑な金属で構成されている鋼素線が優先的に腐食されることが分かった。特に上記特許文献1では、理由は後述するが、鋼素線の表面近傍におけるめっき層の成分組成を厳密に規定していないため、得られるゴム補強用線条体は耐食性に劣っていた。
そこで本発明者らは、ゴム補強用線条体の耐食性を高めるべく鋭意検討を重ねた。その結果、鋼素線の表面に、CuおよびZnを含む被覆層を有するゴム補強用線条体の長手方向に垂直な断面を観察したときに、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和が、鋼素線の周方向全長に対して所定以上であり、且つ、前記周方向領域における被覆層の成分組成を適切に調整してやれば、上記課題を見事に解決できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の作用効果について説明する。
本発明に係るゴム補強用線条体とは、鋼素線の表面にCuおよびZnを含む被覆層を有するものである。鋼素線の成分組成は特に限定されず、ゴム補強用線条体を構成する素材として一般に用いられる鋼素線を使用できる。
本発明に係るゴム補強用線条体は、該線条体の長手方向に垂直な断面(即ち、横断面)を観察したときに、CuおよびZnを含む被覆層厚さが0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和が、鋼素線の周方向全長に対して50%以上である。このことを図面を用いて説明する。
図1は、ゴム補強用線条体の長手方向に垂直な断面の模式図である。図中、1は鋼素線、2は被覆層、3は被覆層の最表面からの深さが0.1μmの位置を示す線、Aは被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域、aは被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域Aにおける鋼素線1の周方向長さ、Bは被覆層厚が0.1μm未満である周方向領域、bは被覆層厚が0.1μm未満である周方向領域Bにおける鋼素線1の周方向長さ、Lは鋼素線1の周方向全長、を夫々示している。
鋼素線1の表面は、一見すると滑らかで、大きな凹凸は見られない。ところが、鋼素線1の表面にはミクロ単位の微小な凹凸があるため、該鋼素線1の表面に被覆層2を設けると、図1に示す如く被覆層厚が0.1μm以上となる周方向領域Aと、被覆層厚が0.1μm未満となる周方向領域Bが併存することになる。このとき、被覆層厚が0.1μm未満である周方向領域Bが周方向領域Aに対して多いと、被覆層厚が小さいためゴム補強用線条体とゴムとの密着性が低下し、ゴム製品の補強素材としての品質が劣化する。
そこで本発明に係るゴム補強用線条体では、該線条体の長手方向に垂直な断面を観察したときに、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域Aにおける鋼素線1の周方向長さaの総和を、鋼素線1の周方向全長Lに対して50%以上とする。
ここで被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域Aにおける鋼素線1の周方向長さaとは、線条体の長手方向に垂直な断面を観察したときに、鋼素線1の周方向全長Lと、被覆層2の最表面からの深さが0.1μmの位置を示す線3との交点を結んで得られる鋼素線1の周方向の長さである。こうして得られた被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域Aにおける鋼素線1の周方向長さaを夫々算出し、総和を求める。
そして得られた総和と、鋼素線1の周方向全長Lとの値から、下記(1)式により鋼素線1の周方向全長Lに対する総和の割合を算出できる。
割合(%)=[被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和]/[鋼素線の周方向全長]×100 …(1)
本発明のゴム補強用線条体においては上記割合を50%以上とする。上記割合が50%未満では、被覆層厚の薄い部分が多くなるためゴムとの密着性が不充分となる。好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上であり、この割合は高い方が望ましい。最も好ましくは100%である。100%とは、鋼素線1の表面に形成されている被覆層2の厚さがすべて0.1μm以上であることを意味している。
なお、上記図1では、鋼素線1の表面には凹凸があるが、この鋼素線1を被覆して得られるゴム補強用線条体の表面には凹凸がなく、長手方向に垂直な断面の形状が、ほぼ円に近いものを示した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、表面に凹凸のある鋼素線1について、該凹凸に沿って被覆層2が設けられていてもよい(図示せず)。即ち、長手方向に垂直な断面が凹凸を呈しているゴム補強用線条体も本発明の範囲に属する。
ゴム補強用線条体の長手方向に垂直な断面は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すれば良い。このときの観察倍率は10000〜50000倍程度とすればよい。
本発明に係るゴム補強用線条体は、上記被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域について、被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域の平均Cu含有量が50〜95質量%であると共に、被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域における平均Zn含有量が60質量%以上であることが重要である。
被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域での平均Cu含有量が50質量%以上であれば、ゴム補強用線条体とゴムとを複合させたときに、前記深さ方向領域に存在するCuが、ゴムに含まれるSと反応して硫化物を形成し、ゴムとの密着性が高まる。好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。但し、平均Cu含有量が60質量%以上になると、上記Cuの硫化物が多くなり、ゴムとゴム補強用線条体との界面における接着強度がゴム自体の強度を超える。そのため例えばゴム補強用線条体とゴムとを複合させた複合体からゴム補強用線条体を引き抜く際における引抜き時の破壊は、前記界面では起こらずゴム内で起こるため、平均Cu含有量が60質量%以上であれば引抜強度はほぼ一定となるので望ましい。しかし平均Cu含有量が100質量%になると、ゴム補強用線条体とゴムとを複合化させたときに、Cuとゴムとの反応が過剰となり、界面強度が却って低下するので平均Cu含有量は95質量%以下とする。好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
特に上記平均Cu含有量が60〜85質量%の範囲であれば、上記耐食性向上に加えて、ゴムとゴム補強用線条体との間の密着性も併せて向上するので望ましい。
これに対し、被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域での平均Zn含有量は60質量%以上とする。鋼素線の表面に形成されている被覆層のうち、鋼素線表面近傍にZnが多く存在すると、Znは鋼素線よりも卑な金属であるため、鋼素線よりもZnが優先的に腐食され、鋼素線の腐食を抑制できる。平均Zn含有量は65質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。最も好ましくは100質量%であり、鋼素線がZnからなる被覆層で全面覆われているものが望ましい。
被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域での平均Cu含有量と、被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域での平均Zn含有量は、次に示す手順で測定できる。上記被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域から任意の5点を選択し、マイクロサンプリング付き集束イオンビーム加工観察装置(FIB)で断面観察用試料に加工した後、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)付きの透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、加速電圧200kVの電子線を用いて10万〜50万倍程度の明視野像を得る。次に、被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域、または被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域に電子線を照射して、これらの深さ方向領域における被覆層の成分組成を定量分析する。なお、電子線の照射箇所は3〜5箇所程度とし、測定値を平均したものを上記含有量とする。
なお、FIBとしては、例えば日立製作所製「FB−2000A」、EDX付きの透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製作所製「HF−2000」を用いることができる。
本発明に係るゴム補強用線条体は、上記要件を満足するものであり、その製法は特に限定されないが、次に示す製法を好適に採用できる。
鋼素線の表面に、CuおよびZnを含む被覆層を形成する方法としては、スパッタリング法が好適に適用できる。スパッタリング法であれば、ターゲットの組成を変えることで、被覆層の成分組成を容易に制御できるからである。即ち、ターゲットの組成が、被覆層の成分組成と等しくなるため、被覆層の成分組成を調整するにはターゲットの組成を制御すればよい。またスパッタリング法では、成膜時間を変化させることで、被覆層の厚さを容易に制御できる。さらにスパッタリング法を採用すると、上述した如く深さ方向の成分組成を0.01〜0.1μmレベルで厳密に制御できる。具体的には、鋼素線の表面を、相対的にZn含有量の多いターゲットを用いてスパッタリングし、次いで相対的にCu含有量の多いターゲットを用いてスパッタリングすると、被覆層のうち鋼素線近傍の成分はZnリッチになると共に、被覆層の最表面近傍はCuリッチになる。
上記相対的にZn含有量の多いターゲットとしては、被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域での平均Zn含有量を適切な範囲に制御するために、Znを50〜100質量%含有するターゲットを用いることが好ましい。このターゲットの残部成分は特に限定されないが、例えば、CuやAl,Mg,Co,Niなどである。なお、鋼素線の耐食性を高めるには、ターゲットの残部成分についても鋼素線より卑な金属で構成されていることが好ましいため、特にAlやMgであるものが推奨される。
上記相対的にCu含有量の多いターゲットとしては、被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域での平均Cu含有量を適切な範囲に制御するには、Cuを45〜100質量%含有するターゲットを用いることが好ましい。このターゲットの残部成分は特に限定されないが、例えば、ZnやCo,Ni,Al,Mgなどである。
なお、上述した様に、Zn含有ターゲットを用いてスパッタリングした後、Cu含有ターゲットを用いてスパッタリングすると、鋼素線の表面に形成される被覆層は2層構造となるが、本発明においては、鋼素線の表面に形成されている被覆層全体を見たときにZnとCuが含まれていればよい。よって例えば、Zn含有ターゲットを用いてスパッタリングして得られる層にCuが含まれていない場合や、Cu含有ターゲットを用いてスパッタリングして得られる層にZnが含まれていない場合であっても、鋼素線の表面に形成されている被覆層全体を見たときにZnとCuが含まれていれば、本発明の範囲に包含される。
次に、上記被覆層を有する鋼素線を伸線すると、ゴム補強用線条体が得られる。伸線条件は特に限定されないが、伸線後に得られるゴム補強用線条体の直径が、0.05〜0.5mm程度となる様に行なうことが好ましい。また、伸線して得られたゴム補強用線条体は、複数本撚って用いてもよい。
なお、上記ではスパッタリング法を採用した場合について重点的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、鋼素線表面近傍における平均Zn含有量と線条体表面近傍における平均Cu含有量が上記範囲を満足すればよい。即ち、例えば、鋼素線表面に電気めっき等の湿式法でZnめっきした後、Cuめっきし、次いで熱拡散処理によりCu−Zn合金めっき層を形成し、伸線加工してもよい。なお、熱拡散時にZnが鋼素線と拡散反応してめっき層の密着性を低下させることを考慮すると、鋼素線の表面に溶融めっき等でZn含有量が60質量%以上となるブラスめっきを被覆した後、この表面にCu含有量が50〜95質量%のブラスめっきを被覆し、次いで熱拡散処理することなく直接伸線してもよい。
本発明に係るゴム補強用線条体は、例えば、タイヤやホース、工業用ベルトなどを補強するための素材として好適に用いることができる。即ち、本発明に係るゴム補強用線条体とゴムとが複合しているゴム複合体(例えば、タイヤやホース、工業用ベルトなど)も本発明に含まれる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実験例1]
直径1mmの鋼素線の表面に、Znを50〜100質量%含有するターゲット(残部の成分はCu)を用いてスパッタリング法によりZn含有ブラスめっき層を形成し、次いでこの上に、Cuを45〜100質量%含有するターゲット(残部の成分はZn)を用いてスパッタリング法によりCu含有ブラスめっき層を形成した。なお、以下では、Zn含有ブラスめっき層とCu含有ブラスめっき層とをまとめて「被覆層」と称することがある。
次に、被覆層を有する鋼素線を種々の条件で直径0.2mmとなるまで伸線してゴム補強用線条体を得た。
得られたゴム補強用線条体の長手方向に垂直な断面を、SEMを用いて30000倍で観察し、鋼素線の周方向全長を測定した。次に、被覆層の厚さ分布を調べ、鋼素線の周囲長さを、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域と被覆層厚が0.1μm未満である周方向領域に分け、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さを算出した。算出された周方向長さの総和を求め、鋼素線の周方向全長に対する前記総和の割合を上記(1)式から算出した。その結果、下記表1に示すゴム補強用線条体については、全て前記総和の割合は70%であった。
次に、上記被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域から任意の5点を選択し、マイクロサンプリング付きFIB(日立製作所製「FB−2000A」)で断面観察用試料に加工した後、EDX付きのTEM(日立製作所製「HF−2000」)を用いて上記手順に沿って、被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域(以下では、[最表面部]と標記することがある)、または被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域(以下では、[最下部]と標記することがある)における被覆層の成分組成を定量分析した。成分組成の測定は、最表面部および最下部について夫々5箇所とし、各測定箇所において深さ方向に5点測定した。そして被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域(最表面部)については平均Cu含有量を、また被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域(最下部)については平均Zn含有量を夫々算出した。即ち、平均とは、5箇所の測定位置において夫々5点づつ成分組成を測定するため、25点測定した平均値を意味する。
得られたゴム補強用線条体を3本撚ったものを、ゴムに埋設した後、加硫し、ASTM(American Society For Testing and Materials;米国材料試験協会)のD2229に従い、加硫接着直後の引抜強度を測定した。
次に、得られたゴム補強用線条体から長さが10mの試験片を切り出し、この試験片を3質量%NaCl水溶液に100時間浸漬した後、浸漬前後における鋼素線の腐食減量を測定した。
測定された引抜強度と腐食減量は、標準的なゴム補強用線条体を比較対象として用い、相対的に評価した。即ち、標準的なゴム補強用線条体について引抜強度と腐食減量を測定し、測定された値を100として上記で得たゴム補強用線条体の引抜強度と腐食減量の相対値を求めた。
なお、標準的なゴム補強用線条体としては、最表面部と最下部における成分組成が、Cu:63質量%、Zn:37質量%となる様に単層めっきした鋼素線を用いた。この標準的なゴム補強用線条体の長手方向に垂直な断面を観察すると、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和は、鋼素線の周方向全長に対して70%であった。
上記で得られたゴム補強用線条体について、被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域における成分組成と、被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域における成分組成を下記表1に示す。なお、この実験例1では、成分組成がCuとZnからなるターゲットを用いたため、最表面部および最下部の成分組成もCuとZnで構成されていた。
また、各ゴム補強用線条体について、引抜強度と腐食減量の相対値を下記表1に併せて示す。
Figure 0004563235
表1から明らかな様に、最表面部におけるCu含有量が50〜95質量%で、且つ、最下部におけるZn含有量が60質量%以上であれば、腐食減量の相対値は100未満となり、耐食性に優れたゴム補強用線条体となる。特に、最表面部におけるCu含有量が60〜85質量%であれば、引抜強度の相対値が100を超え、ゴムとの密着性が良好なゴム補強用線条体となる。
[実験例2]
上記実験例1と同じ手順で、被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域における成分組成がCu:70質量%、Zn:30質量%で、被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域における成分組成が、Cu:5質量%、Zn:95質量%のゴム補強用線条体を得た。
このときスパッタリングでの成膜時間を変化させることにより、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和を、鋼素線の周方向全長に対して40〜100%の範囲に調整した。
得られたゴム補強用線条体を用いて上記実験例1と同様に引抜強度と腐食減量を測定すると共に、上記実験例1と同様に相対値を求めた。
得られたゴム補強用線条体における上記総和の割合と、引抜強度および腐食減量を夫々下記表2に示す。
Figure 0004563235
表2から明らかな様に、上記総和の割合が50%以上であれば、腐食減量の相対値が100未満となり、耐食性に優れたゴム補強用線条体となる。但し、上記総和の割合が40%以上50%未満であっても腐食減量の相対値は100未満となり、耐食性に優れたものとなるが、引抜強度の相対値は著しく小さくなり、ゴムとの密着性が劣化するため実用に適さない。
図1は、ゴム補強用線条体の長手方向に垂直な断面の模式図である。
符号の説明
1 鋼素線
2 被覆層
3 被覆層の最表面からの深さが0.1μmの位置を示す線
A 被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域
a 被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向全長
B 被覆層厚が0.1μm未満である周方向領域
b 被覆層厚が0.1μm未満である周方向領域における鋼素線の周方向全長
L 鋼素線の円周

Claims (3)

  1. 鋼素線の表面に、CuおよびZnを含む被覆層を有するゴム補強用線条体であって、
    前記線条体の長手方向に垂直な断面を観察したときに、被覆層厚が0.1μm以上である周方向領域における鋼素線の周方向長さの総和が、鋼素線の周方向全長に対して50%以上であり、且つ、
    前記周方向領域について、(1)被覆層最表面から深さ0.01μmまでの深さ方向領域の平均Cu含有量が50〜95質量%であると共に、(2)被覆層最表面からの深さが0.1μmの位置から鋼素線表面に達するまでの深さ方向領域における平均Zn含有量が60質量%以上、であることを特徴とする耐食性に優れたゴム補強用線条体。
  2. 前記平均Cu含有量が60〜85質量%である請求項1に記載のゴム補強用線条体。
  3. 請求項1または2に記載のゴム補強用線条体とゴムとが複合していることを特徴とするゴム複合体。
JP2005095751A 2004-03-31 2005-03-29 耐食性に優れたゴム補強用線条体、および該ゴム補強用線条体とゴムとの複合体 Expired - Fee Related JP4563235B2 (ja)

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