JP2001192987A - 不活性ガス充填タイヤ用スチールコードおよび不活性ガス充填タイヤ - Google Patents

不活性ガス充填タイヤ用スチールコードおよび不活性ガス充填タイヤ

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JP2001192987A
JP2001192987A JP2000001399A JP2000001399A JP2001192987A JP 2001192987 A JP2001192987 A JP 2001192987A JP 2000001399 A JP2000001399 A JP 2000001399A JP 2000001399 A JP2000001399 A JP 2000001399A JP 2001192987 A JP2001192987 A JP 2001192987A
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plating
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隆蔵 大沢
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 不活性ガスが高圧充填されるタイヤにおい
て、その使用環境に対応したブラスめっき層を与えるこ
とによって、長期または高い使用頻度の下でもゴムとの
接着を保証し得るスチールコードを提供する。 【解決手段】 ブラスめっきを施したフィラメントの複
数本を撚り合わせた、不活性ガス充填タイヤに用いるス
チールコードにおいて、該フィラメントのブラスめっき
の平均厚さを130〜180nmの範囲とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、いわゆる新交通
向けのトラックおよびバス用タイヤに代表されるタイ
ヤ、すなわちより安全で快適な社会環境に対応すべく窒
素などの不活性ガスを高圧充填して使用されるタイヤの
補強材として好適のスチールコードおよびこのスチール
コードを適用した不活性ガス充填タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、トラックおよびバス用タイヤに代
表される、大型のスチールラジアルタイヤにおいて、そ
の骨格をなすカーカスは、ブラスめっきを施したスチー
ルフィラメントの複数本を撚り合わせたスチールコード
を多数本並列させてゴム引きして成るプライによって構
成されている。このカーカスにおけるスチールコードの
補強効果を発揮させるには、スチールコードとゴムとが
強固に接着していることが肝要である。そして、このコ
ードとゴムとの接着性を維持するために、コードを構成
するフィラメントとゴムとの接着を司る、ブラスめっき
について、その銅と亜鉛との割合やめっき厚さを調整す
ることが行われている。
【0003】すなわち、フィラメントとゴムとの接着を
確保するには、ブラスめっきの厚みに大きなばらつきが
なければ、平均で50nm程度のめっき層にて十分であ
るといわれているが、実際には、完全に均一なめっきの
製造が極めて困難であり、かつ空気中の酸素と水分とが
共存する腐食環境下で使用される機会が多いため、めっ
きが薄い部分で容易にコード表面が露出して鉄の溶出を
招くことから、平均200nmから350nmの厚さの
めっき層を設けて、めっき中の亜鉛による犠牲防食機能
を付与する必要がある。
【0004】一方、交通環境の多様化に伴い、新交通向
けタイヤや地下鉄用タイヤ等を対象にして、通常の産業
用タイヤ以上に高度な安全性や運行トラブル回避が可能
である、大型スチールラジアルタイヤが要求されてきて
いる。この種用途のタイヤでは、充填ガスとして不活性
ガス、例えば窒素を充填して使用することによって、火
災問題を回避している。かようなタイヤでは、そのカー
カスやベルトにおけるコードとゴムとの接着に関する環
境、さらにはコード疲労環境は、従来のタイヤに比べて
かなり異なった様相を呈する。
【0005】すなわち、タイヤに不活性ガスが充填され
かつ使用環境も整備されているため、コードとゴムとの
接着性に悪影響を与える活性な充填空気(酸素)と外部
からの水分は低減するが、ブレーキドラム周りのタイヤ
サイドの熱環境は厳しくなることに特徴がある。また、
重荷重となることから、タイヤのサイド部の撓みを抑制
し熱の発生を緩和する必要上、充填ガスを0.9806
65MPa(10kgf/cm2 )以上の高圧で充填するこ
と、並びにタイヤのトレッド摩耗が少ないために極めて
長期間および長距離にわたって使用されることも、新交
通向け大型タイヤに特有の事情である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように不活性ガス
が高圧充填される重荷重用の大型タイヤにおいて、カー
カスプライまたはベルト用のスチールコードに要求され
る性能は、一般産業用重荷重用大型タイヤとは異なり、
特にコードおよびゴムの接着に関しては、従来のスチー
ルラジアルタイヤに要求される性能とは異なり、めっき
とゴムとの接着機構も異なることが予測される。すなわ
ち、環境的にはマイルドな水分環境下での接着劣化が、
主に問題となる。
【0007】そこで、この発明の目的は、不活性ガスが
高圧充填されるタイヤにおいて、その使用環境に対応し
たブラスめっき層を与えることによって、長期または高
い使用頻度の下でもゴムとの接着を保証し得るスチール
コードを、耐久性に優れた不活性ガス充填タイヤに併せ
て提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、発明者らは、新交通システムの運行車両にて長期
間、長時間または長距離走行したタイヤについて、カー
カスプライコードと被覆ゴムとの接着状態を詳細に解析
した。すなわち、高圧空気が充填されたタイヤでは、タ
イヤ内周面のインナーライナーゴム層を透過した酸素が
ゴムとプライコード表面のめっきとが作る接着層を劣化
させる過程を経て接着構造が破壊されるが、窒素充填さ
れたタイヤでは空気充填されたタイヤとは異なるメカニ
ズムを経て劣化が進行していることが新たに判明した。
具体的には、タイヤ外部から侵入する微少な水分がコー
ドフィラメントの主成分である鉄を徐々に溶出させ、結
果として接着層を脆弱なものにする結果、接着構造が破
壊されることが新たに解明できた。このような現象は、
ゴム接着性を阻害するラップフィラメントが存在しない
コードでも発生し、コード最外層のフィラメント表面が
先行的に破壊してコード破断に至ることを見出したので
ある。さらに、かかる鉄の溶出は、めっきが薄くてコー
ドの地鉄の露出度が高いほど激しく、接着層の破壊も進
行するものと推測されたが、現実のタイヤでは全く異な
る事実が存在することも見出した。
【0009】かかる知見を前提に窒素充填された大型重
荷重用スチールラジアルタイヤのスチールコードを構成
するフィラメントにおけるめっき特性が如何に有るべき
かを鋭意検討した結果、この発明を導くに至つた。
【0010】すなわち、この発明の要旨構成は、次のと
おりである。 (1) ブラスめっきを施したフィラメントの複数本を撚り
合わせた、不活性ガス充填タイヤに用いるスチールコー
ドであって、該フィラメントのブラスめっきの平均厚さ
が130〜180nmの範囲にあることを特徴とする不
活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0011】(2) 上記(1) において、フィラメントのブ
ラスめっき表面における銅濃度が30〜45mass%であ
ることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコ
ード。
【0012】(3) 上記(1) または(2) において、フィラ
メントの直径が0.25mm以下であることを特徴とす
る不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0013】(4) 上記(1) ないし(3) のいずれかにおい
て、不活性ガスの充填圧力が0.980665MPa以
上のタイヤに供することを特徴とする不活性ガス充填タ
イヤ用スチールコード。
【0014】(5) 上記(1) ないし(4) のいずれかにおい
て、コードの直径が1.1mm以下であることを特徴と
する不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
【0015】(6) 上記(1) ないし(5) のいずれかにおい
て、コードの切断荷重が1700〜2300Nの範囲で
あることを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチール
コード。
【0016】(7) 1対のビード部間でトロイド状に延び
るカーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に複
数層のベルトをそなえる、不活性ガス充填タイヤにおい
て、該カーカスおよびベルトのいずれか少なくとも一方
に、上記(1) ないし(6) のいずれかに記載のスチールコ
ードを適用したことを特徴とする不活性ガス充填タイ
ヤ。
【0017】
【発明の実施の形態】発明者らは、窒素環境下でのゴム
とめっきとの接着層の劣化過程を詳細に知るため、酸素
環境下での同接着層の劣化過程と比較検討した。すなわ
ち、下記に実験A〜Dとして示すように、酸素または窒
素雰囲気において、当該雰囲気での経過時間、または経
過時間および雰囲気ガス濃度を種々に変化したときの、
スチールコードのゴム接着層の状態について調査した。
具体的には、実験A〜Dに示す条件に従う雰囲気で走行
させたタイヤを解剖し、一定のコード長および幅で切り
出した部分について、ゴムとコードとを強制的に剥離し
たときの、剥離面を観察した。
【0018】記 実験A:相対湿度50%および温度80℃の酸素含有雰囲気
下において、酸素濃度および時間を種々に変化。 実験B:相対湿度50%および温度80℃の窒素雰囲気(酸
素濃度は実質ゼロ)下において、時間を種々に変化。 実験C:相対湿度95%および温度80℃の酸素含有雰囲気
下において、酸素濃度および時間を種々に変化。 実験D:相対湿度75%および温度80℃の窒素雰囲気(酸
素濃度は実質ゼロ)下において、時間を種々に変化。
【0019】なお、上記の条件AおよびBでは、酸素雰
囲気と窒素雰囲気との比較を行うために、湿度を同じ50
%に設定した。また、条件CおよびDは、それぞれ一般
タイヤの使用雰囲気および新交通向けタイヤの使用雰囲
気を再現したものである。
【0020】上記の実験Aでは、剥離面にブラス色が認
められ、このブラス色の剥離面は、時間の経過並びに酸
素濃度の増加に伴って増大した。すなわち、酸素環境下
における、剥離面のブラス色はめっき層が露出している
こと、つまりめっき層とゴムとの剥離が容易に生じるこ
とを示している。一方、実験Bでは、剥離面がゴムで覆
われていて、時間が経過しても剥離面の状態に変化はな
かった。すなわち、窒素環境下ではコードとゴムとの接
着が、酸素環境下に比較して、十分に維持されることが
わかった。
【0021】次に、上記の実験Aにおける湿度を増加し
た、実験Cでは、実験Aと同様、剥離面にブラス色が認
められ、このブラス色の剥離面は、時間の経過並びに酸
素濃度の増加に伴って増大するが、その増大割合は実験
Aよりも更に大きい。すなわち、酸素環境下において
は、湿度の増減によって接着力に変化はあるものの、同
じメカニズムの下に接着層の劣化が生じていることがわ
かる。
【0022】一方、上記の実験Bにおける湿度を増加し
た、実験Dでは、剥離面が全てゴムで覆われるわけでは
なく、部分的に銀色を呈し、この銀色の部分は時間の経
過とどもにやや増加する傾向にあった。すなわち、銀色
部分はめっき層ではなく地のスチールが露出したもので
あり、窒素雰囲気下では湿度の増加によって、この露出
度合いが増加することが判明した。その剥離程度の違い
に加えて、露出部分が酸素環境下ではブラス色を呈する
のに比し、窒素環境下では銀色を示すことから明らかな
ように、接着層の劣化のメカニズムは、酸素雰囲気下で
の場合と異なることが新たに判った。
【0023】以上の実験結果から、一般タイヤが使用さ
れる酸素+高水分の雰囲気での接着劣化と新交通向けタ
イヤが使用される無酸素+低水分の雰囲気での接着劣化
とは異なっており、自ずからコードに要求されるめっき
特性も異なることが予測された。
【0024】次に、発明者はめっき組成およびめっき厚
さを種々に変更したコードを試作し、新交通向けタイヤ
が使用される環境と条件の下に、コードとゴムとの接着
劣化を評価したところ、接着劣化の抑制に著しく有効な
めっき厚さが存在することを見出した。
【0025】さて、通常の空気入りタイヤに適用される
スチールコードのめっき厚さは平均200nmから35
0nm程度であるが、これは、酸素と水分が共存する非
常に激しい腐食環境では、この程度以上のめっき厚さが
ないと容易に剥離面にコードが露出するからである。す
なわち、酸素と水分の共存下においては、めっきが一定
の厚さ以上存在することによって、めっき中の亜鉛が犠
牲電極となって鉄の溶出が抑制されるものと考えられ
る。
【0026】一方、酸素が供給されない環境、それもタ
イヤ外皮を通じて徐々にしか水分が増加しない環境にお
いては、めっき中の亜鉛を犠牲電極とする必要がないか
ら、めっき層はゴムとコードとの接着に寄与すればよ
く、基本的にはめっき厚みが関係することはない。とこ
ろが、めっき厚によっては、めっき層とゴムとの間に両
者の架橋となるCux Sが形成された後にブラスが点在
して残存する結果、僅かな水分を有する雰囲気下におい
て、Cux S/ブラス/鉄の3極による局部電池が形成
され、この局部電池の数が多いと鉄の溶出が進むことに
なる。
【0027】とりわけ、めっき線材からウェット伸線過
程で製作されたフィラメントにおけるめっき分布は、図
1(a) に示すように、地鉄1との界面が複雑に入り込ん
だ凹凸状であり、表面のブラスめっき2中の銅が被覆ゴ
ムと反応しCux Sを形成すると、図1(b) に示すよう
に、部分的にめっき2が存在しない部分が多数の領域で
生成する結果、めっき部分Pが島状に点在して残される
ことになる。そして、この残存するブラスPを中心とし
て、Cux S/ブラス/鉄の3極による局部電池が形成
される。かように形成される局部電池の数は、めっき層
厚とCux S層厚との関係によって決定され、従来のよ
うな200nmをこえる厚めっきでは残存するめっきが
多くなるから、基本的には局部電池の数を増加すること
になり、不活性ガス雰囲気においては却ってコードの腐
食が促進されることになる。
【0028】そこで、ウェット伸線で作られるフィラメ
ントのめっき厚さを種々に調整し、めっきの厚さによる
効果を鋭意研究した結果、窒素および微少水分が存在す
る雰囲気での接着劣化の抑制には、平均めっき厚さの上
限を180nmの範囲に制御することが極めて有効であ
ることを見出し、この発明を完成するに至ったのであ
る。
【0029】一方、めっき厚さが130nm未満になる
と、ゴムとの初期接着性が阻害され、窒素および低水分
雰囲気下での接着も急激に悪化する。すなわち、図2に
示すように、コード単体の鉄の溶出量がめっき厚さ13
0nmを境に急激に増加することがわかる。この結果
は、ウェット処理を経ためっきが130nm未満の厚さ
になると、初期接着してない部分が増大してくるためと
考えられる。なお、図2に示した結果は、希塩酸にコー
ドを一定時間浸漬した際に溶出する、鉄の量を調査した
結果によるものである。
【0030】また、めっき組成については、安定した初
期接着を確保するには、ブラスめっき表面における銅濃
度を30〜45mass%に制御することが好ましい。なぜ
なら、銅濃度が30mass%未満では、ゴムとの接着反応
が遅く初期接着性が得られず、一方45mass%をこえる
と、コードとゴムとの密着が完全でない状態すなわちタ
イヤの加硫以前に、反応が進行し、結果的に初期接着性
が阻害されるからである。ここで、ブラスめっき表面と
は、最表面からの深さが10nm以下の領域、つまり金
属表面における電子の平均自由行程厚さ内の領域を示
す。
【0031】さらに、コードの直径を1.1mm以下に
することによって、耐接着劣化性を大幅に改良できる。
すなわち、コードの直径が1.1mmをこえると、タイ
ヤ転動時に生じる動的入力によって、コードとゴムとの
間の剪断応力が大きくなり、コードおよびゴム間の界面
の破壊が早期に進行するため、1.1mm以下にするこ
とが好ましい。
【0032】ちなみに、特開平8−260368号公報
には、特に潤滑剤中で伸線を行うウェット伸線工程によ
っても、薄くて均一なブラスめっき層を得るための技術
が開示されているが、めっき厚さ分布の標準偏差を10
〜30nmに制限する必要があり、現実のコード製造プ
ロセスを大幅に変更しなければならず、その生産性は低
く、汎用性に乏しい。
【0033】この点、この発明では、銅および亜鉛の電
気めっきに加えて行う、熱拡散、そしてウェット伸線の
工程は通常の条件でよく、またウェット伸線において特
別な潤滑条件を考慮する必要もない。
【0034】次に、発明者は、上記しためっき層を有す
るスチールコードを、不活性ガス充填タイヤ、中でも重
荷重用タイヤに適用する際の、より有利な態様について
検討した。
【0035】さて、この発明が主に対象とする重荷重用
タイヤのカーカスには、従来、図3に示すような、多層
撚り構造のコードが用いられてきた。該コードは、大曲
げ入力などに対して優れた性能を発揮するが、コードの
周面に沿ってスパイラル状に巻き付けるラップフィラメ
ントLを有するため、長期の走行に伴ってラップフィラ
メントLとコード最外層フィラメントとの相対ずれによ
り、該ラップフィラメントL付近における最外層フィラ
メントとゴムとの間で接着破壊が生じ易いことから、近
年ではラップフィラメントを省略することによって、接
着耐久性の低下を回避する傾向にある。
【0036】一方、カーカスプライは圧力容器としての
内圧保持が第1義的に要求されることから、疲労性との
両立を念頭に置く必要があり、例えば特開平9−228
269号公報には、1+6+11構造のコードが提案さ
れている。しかし、この1+6+11構造コードでは、
特にコード軸心付近のコアフィラメントの飛び出しを抑
制するために、フィラメントに型付けなどが必要とな
り、コード製造工程における制御が厳しくなる結果、生
産性が低下してコスト増を招く不利がある。
【0037】すなわち、不活性ガス充填タイヤは高圧充
填されることから、まず圧力容器として用いるコードは
強力が大きく、かつこの強力を長期にわたり保持できる
こと、つまり耐疲労性に優れることが必要である。とり
わけ、フレッティング磨耗(損傷)に起因したコード強
力の低下を抑制できることが有利である。さらに、コー
ド性状の制御が比較的緩やかな低コストのコードである
ことも、併せて必要になる。
【0038】そこで、コードに負荷される張力と安全率
とを考慮しながら、コードの持つべき切断荷重とコード
および被覆ゴム間の相対ずれ量との関係を検討したとこ
ろ、コードの切断荷重を1700N以上にすれば、高内
圧充填による重荷重への対応が有利に実現することが判
明した。
【0039】また、フィラメントの直径は0.25mm
以下であることが好ましい。なぜなら、コードを構成す
る各フィラメントの表面歪はフィラメント径に比例して
大きくなるため、フィラメント直径は小さいほど耐久性
に有利である。しかし、所定のコード強力を確保できる
太さが必要であり、このコード強力の確保とフィラメン
ト表面歪みの低下とを両立させるために、フィラメント
の直径を0.25mm以下とする。
【0040】一方、低コスト化の視点からは、フィラメ
ントが細くなると、コード伸線時の断線率が上昇し、ま
た伸線ダイスの交換頻度が増加し、さらに細径フィラメ
ントにて所定のコード強力を確保するには多層撚り構造
を採用する必要があり、さらに高コストになる。
【0041】そこで、フィラメントの直径あるいはコー
ドの直径を小さくし、かつコード強力を確保しながら低
コスト化するには、引張強さの高いフィラメントを活用
しながらコード構造の簡素化、つまり3層構造から2層
構造化を進めること、同時に撚り行程を少なくすること
が決め手になる。特に、この2層化構造を1回で撚り合
わせることが望ましい。このような構造としては、例え
ば図4に示す2層構造のコンパクト撚り構造、もしくは
図5に示す実質2層構造のコンパクト撚り構造等、束よ
り可能な構造がより有利に適合する。
【0042】上記したコードは、その多数本を互いに並
行に揃えてゴムシートに埋設してなるプライを、タイヤ
のカーカスまたはベルトに適用して、タイヤの補強に供
する。ここで、タイヤは、例えば図6に示す、トラック
およびバス用タイヤが有利に適合する。このタイヤは、
1対のビードコア10間でラジアル方向にトロイド状に延
びる有機繊維コードのプライからなるカーカス11、この
カーカス11のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置し
た、少なくとも4層、図示例で6層のベルト12およびこ
のベルト12のタイヤ径方向外側に配置したトレッド13か
ら成る。
【0043】
【実施例】図6に示した、サイズE13.50/85R
16の新交通向けのトラックおよびバス用タイヤのカー
カスに、表1および2に示す仕様のコードを、表1およ
び2に示す条件にて適用した。かくして得られた各タイ
ヤについて、新品タイヤでのコードの初期接着性と、標
準リムに組み込み窒素ガスを1.0787MPaで充填
してから、25万km〜30万km走行させた後、該タ
イヤにおけるコードの接着性およびコード強力の保持性
を調査した。その調査結果を、スチールコードの構造、
めっき特性、フィラメント引張強さおよびコードの切断
荷重、コードの製造コストに併せて、表1および2に示
す。
【0044】ここで、表1には(3+9+1)のスパイ
ラル付き2層撚り構造、つまり現実の市場走行品を比較
例にして実施例の効果を明らかにし、また表2にはスパ
イラル近傍から発生する接着破壊をなくすために既に改
良が実施されている(1+6+11)でラップフィラメ
ントなしの実質2層撚り構造と対比して示してある。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】表1において、比較例1は、市場で25万
km走行させたタイヤの(3層+ラッピングフィラメン
ト)スチールコードの結果であり、比較例2はめっきの
仕様は変更をせずに単純にフィラメントの高張力化によ
って2層構造とし、さらにラップフィラメントを省略し
た例である。比較例1では、コードの初期接着性はセパ
レーションの発生がないにも関わらず、ゴム付着量がゼ
ロであり、中には新品タイヤのサイド部においてセパレ
ーションが発生している場合もあった。また、比較例2
では、コード径を0.94mmまで減少し、かつラップ
フィラメントを省略したにも関わらず、走行後の剥離試
験でのコードの接着性を100%まで改良するに至って
いない。これに比して、実施例1,2および3では、め
っき付着量を160nmまで滅少させることによってセ
パレーシヨンはもちろんのこと、剥離テストにおいても
コードが露出することはなく、タイヤサイド部の接着劣
化を起因とする故障を皆無に抑えることが可能になっ
た。新交通システムは高度な安全性と快適性を求める性
格上、タイヤのトラブルに起因する故障の可能性は10
0%排除されることが望ましく、この発明によってこれ
を実現できる見通しがえられた。また、コストの観点か
らは、より廉価な製造を可能にすることも重要な要件で
あり、実施例2および3のコンパクト構造品は更に好ま
しく、より低コストのコード、ひいてはタイヤを供給で
きることを意味している。
【0048】また、表2の比較例3は、特開平9−22
8269号公報に開示されている、実質2層構造のコー
ドを市場で30万km走行させた結果であり、極めて大
幅に接着劣化性が改良され、コード露出がほとんどなく
なっている。しかし、この場合でもコード露出がゼロに
至っていない。この構造をそのままにして、めっきにつ
いてこの発明に従って規制したのが実施例4であり、こ
の実施例4によれば、接着劣化によるトラブルの可能性
をゼロにできることがわかる。実施例5は実施例4のフ
ィラメント撚り方向を同一にすることによって、さらに
走行後の強力保持性が改良でき、高内圧充填タイヤの安
全性向上の点でメリットを生み出せることを示したもの
である。実施例6と実施例7とは、いわゆる典型的な束
撚りコードである19本のコンパクト撚り構造コードを
例にコード直径の影響について比較検討した事例で、コ
ード直径を1.1mm以下に制限すると、接着性をより
改善できることがわかる。
【0049】
【発明の効果】この発明によれば、不活性ガスが高圧充
填されるタイヤに使用するスチールコードに対して、そ
の使用環境に対応したブラスめっき層が与えられるか
ら、長期または高い使用頻度の下でもゴムとの接着を保
証することができる。従って、このスチールコードを用
いることによって、耐久性に優れた不活性ガス充填タイ
ヤの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ウェット伸線を経たフィラメントにおけるブ
ラスめっき層を示す模式図である。
【図2】 めっき厚さと鉄の溶出量との関係を示す図で
ある。
【図3】 トラックおよびバス用タイヤに用いられてい
る3層構造のコードを示す図である。
【図4】 この発明に適したコンパクト撚り構造のコー
ドを示す図である。
【図5】 この発明に適したコンパクト撚り構造のコー
ドを示す図である。
【図6】 この発明のタイヤの構造を示す図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブラスめっきを施したフィラメントの複
    数本を撚り合わせた、不活性ガス充填タイヤに用いるス
    チールコードであって、該フィラメントのブラスめっき
    の平均厚さが130〜180nmの範囲にあることを特
    徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
  2. 【請求項2】 請求項1において、フィラメントのブラ
    スめっき表面における銅濃度が30〜45mass%である
    ことを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコー
    ド。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、フィラメン
    トの直径が0.25mm以下であることを特徴とする不
    活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    不活性ガスの充填圧力が0.980665MPa以上の
    タイヤに供することを特徴とする不活性ガス充填タイヤ
    用スチールコード。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    コードの直径が1.1mm以下であることを特徴とする
    不活性ガス充填タイヤ用スチールコード。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
    コードの切断荷重が1700〜2300Nの範囲である
    ことを特徴とする不活性ガス充填タイヤ用スチールコー
    ド。
  7. 【請求項7】 1対のビード部間でトロイド状に延びる
    カーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に複数
    層のベルトをそなえる、不活性ガス充填タイヤにおい
    て、該カーカスおよびベルトのいずれか少なくとも一方
    に、請求項1ないし6のいずれかに記載のスチールコー
    ドを適用したことを特徴とする不活性ガス充填タイヤ。
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