JP4621133B2 - 伸線性に優れた高炭素鋼線材およびその製法 - Google Patents

伸線性に優れた高炭素鋼線材およびその製法 Download PDF

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Description

本発明は、スチールコードやビードワイヤ、PC鋼線、ばね鋼などの伸線加工品の素材となる高炭素鋼であって、高い伸線加工性の下でそれらの伸線加工品を生産性良く製造することのできる伸線性に優れた炭素鋼線材とその製法に関するものである。
上記の様な伸線加工品を製造する際には、素材となる鋼線材に対して殆どの場合サイズ調整や材質(物性)調整のため伸線加工が施されるので、鋼線材の伸線加工性を改善することは生産性等を高める上で極めて有益となる。ちなみに、伸線加工性が改善されると、伸線速度の上昇や伸線パス数の減少によって生産性を向上できるばかりでなく、ダイス寿命の延長など多くの利益を享受できるからである。
ところで伸線加工性については、従来は主として伸線時の耐断線性に主眼を置いた改良研究が行われてきた。例えば特許文献1には、パーライトブロックサイズ、初析セメンタイト量、セメンタイト厚さ、セメンタイト中のCr濃度などに注目し、これらを適正化することで耐断線性を改善する技術が開示されている。
また特許文献2は、上部ベイナイトの面積率や粒内ベイナイトのサイズを制御すると伸線加工限界が向上することを明らかにしている。その他、特許文献3には、鋼中の全酸素量と非粘性介在物組成を制御することによって、耐断線性やダイス寿命を改善する技術が開示されている。ダイス寿命については、鋼線材表面に存在するスケールの剥離性(デスケーリング性)も重要であり、スケール剥離性が不良で鋼線材表面にスケールが残存すると、伸線加工時にダイス欠損の原因になることから、特許文献4は、スケール中に存在する空孔を制御することでメカニカルデスケーリング性を高める技術を開示している。
ところが上記の様な従来技術は、特定の伸線条件下における耐断線性の改善に主眼を置いた技術であり、伸線加工性の観点から、伸線速度の向上や伸線パス数の減少、ダイス寿命の延長には殆ど注目されていない。また非特許文献1の第6章にまとめられている如く、伸線速度の上昇や1パス当りの減面率増大は、伸線加工品の延性劣化やダイス寿命の低下を招くことを明らかにしている。しかし前述した様な従来技術を含めて、伸線速度の上昇や減面率の増大を実用規模で達成可能にするほどの伸線加工性改善効果は得られていない。
特開2004−91912号公報 特開平8−295930号公報 特開昭62−130258号公報 特許第3544804号 日本塑性加工学会編集の「引抜き加工」(コロナ社より1990年10月25日発行)、特に第6章
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、特に生産性を重視し、伸線速度の上昇や減面率の増大、更にはダイス寿命の延長を可能にする伸線加工性に優れた鋼線材を提供し、併せてその様な鋼線材を効率よく製造することのできる方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る伸線性に優れた高炭素鋼線材の構成は、質量%(以下、成分組成の場合は単に%で表わす)で、C:0.6〜1.1%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、N:0.006%以下、Al:0.03%以下、O:0.0030%以下を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなり、金属組織のbcc−Fe結晶粒において、平均結晶粒径(Dave)が20μm以下で、最大結晶粒径(Dmax)が120μm以下であるところに要旨が存在する。
本発明に係る上記鋼線材のより好ましい態様としては、前記金属組織のbcc−Fe結晶粒において、粒径が80μm以上であるものの占める面積率が40%以下であり、更には、平均亜結晶粒径(dave)が10μm以下で、最大亜結晶粒径(dmax)が50μm以下であるもの、及び、平均結晶粒径(Dave)と平均亜結晶粒径(dave)の比(Dave/dave)が4.5以下であるもの、更には、鋼線材の引張強度をTS、当該鋼線材中のC濃度をWcとしたとき、それらが下記式(1)の関係を満たすもの、が挙げられる。
TS≦1240×Wc0.52……(1)
また本発明の鋼線材は、上記成分の他、必要に応じて、Cr:1.5%以下(0%を含まない)、Cu:1.0%以下(0%を含まない)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、或いは更に、Mg:5ppm以下(0ppmを含まない)、Ca:5ppm以下(0ppmを含まない)、REM:1.5ppm以下(0ppmを含まない)から選ばれる少なくとも1種の元素を含むものであっても構わない。
また本発明の鋼線材においては、表層のトータル脱炭量(Dm-T)が100μm以下で、スケール付着量が0.15〜0.85質量%であることも、好ましい実施形態である。
更に本発明の製法は、上記特性を備えた伸線性に優れた高炭素鋼線材を製造するための有用な方法として位置付けられるもので、
第1の製法は、上記成分組成要件を満たす鋼からなり、730〜1050℃に加熱された鋼線材を、15℃/秒以上の平均冷却速度で470〜640℃の温度(T)まで冷却した後、該温度(T)よりも高温である550〜720℃の温度(T)まで3℃/秒以上の平均昇温速度で加熱するところに要旨を有し、
第2の製法は、上記成分組成要件を満たす鋼材を900〜1260℃に加熱し、740℃以上の温度で熱間圧延すると共に1100℃以下の温度で仕上げ圧延した後、750〜950℃の温度域まで水冷して搬送装置上に巻取り、その後、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することにより、巻取り終了から20秒以内に鋼材温度の極小値(T)を500〜630℃まで降下させてから加熱し、巻取り終了から45秒以内に鋼材温度の極大値(T)を上記極小値(T)よりも高温である580〜720℃に高めるところに要旨を有している。
本発明によれば、鋼中のC,Si,Mn,P,S,N,Al,Oの各含有量を規定すると共に、金属組織面からbcc−Fe結晶粒の平均結晶粒径と最大結晶粒径を特定し、好ましくは更に、粗大結晶粒の面積率を抑え、更には、上記bcc−Fe結晶粒の平均亜結晶粒径や最大亜結晶粒径、それらの粒径比を特定することによって、優れた伸線加工性を有し、伸線速度の上昇や減面率の増大により生産性を高め得るばかりでなく、ダイス寿命の延長をも可能にする高炭素鋼線材を提供し、更には、その様な優れた伸線加工性を有する高炭素鋼線材を確実に且つ効率よく製造することのできる方法を提供できる。
以下、本発明において鋼材の化学成分を定めた理由を明らかにし、引き続いて、鋼材組織の結晶粒径などを定めた理由を詳細に説明していく。
まず、鋼材の化学成分を定めた理由を説明する。
C:0.6%以上、1.1%以下
鉄鋼材料の強度に影響する元素であり、本発明の対象とするスチールコード、ビードワイヤ、PC鋼線などに必要とされる強度を確保するには、0.6%以上の添加を必要とする。C含量を多くすると強度は増大するが、多過ぎると延性が劣化するので上限を1.1%とした。
Si:0.1%以上、2.0%以下
高度に伸線加工される鋼材では特に脱酸を目的として添加され、0.1%以上の添加が必要である。また、Siは鋼材の強化にも寄与するため必要に応じて増量するが、過度の添加は固溶強化を増大させると共に脱炭を促進させるので注意すべきであり、本発明では低強度化と脱炭防止の観点から上限を2.0%と定めた。より好ましいSi含量は0.15%以上、1.8%以下である。
Mn:0.1%以上、1.0%以下
脱酸および、有害元素であるSをMnSとして固定し無害化させる目的で0.1%以上の添加を必要とする。またMnは、鋼中の炭化物を安定化させる作用も有しているが、多過ぎると偏析や過冷組織が生じて伸線性を劣化させるので、1.0%以下に抑えねばならない。より好ましいMn含量は0.15%以上、0.9%以下である。
P:0.020%以下(0%を含まない)
Pは伸線加工性に特に有害な元素であり、多過ぎると鋼材の靭延性が劣化するので、本発明では上限を0.020%と定めた。好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.010%以下である。
S:0.020%以下(0%を含まない)
有害元素であるが、前述した如くMn添加によりMnSとして固定できる。しかしS含量が多くなると、MnSの量とサイズが増大し延性が劣化するので、本発明では、上限を0.020%と定めた。より好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.010%以下である。
N:0.006%以下(0%を含まない)
時効硬化によって強度上昇に寄与するが、延性を劣化させるため、本発明では上限を0.006%と定めた。好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.003%以下である。
Al:0.03%以下(0%を含まない)
Alは脱酸剤として有効であり、しかもNと結合してAlNを形成することで金属組織の微細化にも寄与する。しかしAl含量が多過ぎると粗大酸化物が生成し、伸線性を劣化させるので、本発明では上限を0.03%と定めた。より好ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.005%以下である。
O:0.003%以下
鋼中の酸素量が多くなると粗大酸化物が形成され易くなって伸線性が劣化するので、本発明では上限を0.003%と定めた。好ましくは0.002%以下、更に好ましくは0.0015%以下である。
本発明の鋼線材は上記化学成分を基本成分とし、残部は実質的に鉄と不可避不純物であるが、必要に応じて下記の元素を含有していてもよい。
Cr:1.5%以下
鋼材の高強度化に有効な元素であるが、過度に添加すると過冷組織が形成し易くなって伸線性を劣化させるので、添加するにしても1.5%以下に抑えねばならない。
Cu:1.0%以下
表層部の脱炭を抑制する作用を有する他、耐食性を高める作用も有しているので、必要に応じて添加することができる。しかし過度に添加すると、熱間加工時に割れを発生し易くなるばかりでなく、過冷組織の形成により伸線性にも悪影響を及ぼすので、本発明では上限を1.0%と定めた。
Ni:1.0%以下
上記Cuと同様に表層部の脱炭抑制と耐食性の向上に有効であることから、必要に応じて添加される。しかし、過度に添加すると過冷組織の形成によって伸線性を劣化させるので、1.0%以下に抑えねばならない。
Mg:5ppm以下
Mgは酸化物を軟質化する作用を有しているので、必要に応じて添加することができる。しかし、過度に添加すると酸化物の性質が変化して伸線性を劣化させるので、多くとも5ppm以下、好ましくは2ppm以下に抑えるのがよい。
Ca:5ppm以下
Caにも酸化物を軟質化する作用があり、必要に応じて添加してもよい。しかし、過度に添加すると酸化物の性質が変化して伸線性を劣化させるので、5ppm以下に抑えるべきであり、より好ましくは2ppm以下に抑えるのがよい。
REM:1.5ppm以下
REMにも酸化物を軟質化する作用があり、必要に応じて添加してもよい。しかし過度に添加すると、上記MgやCaなどと同様に酸化物の性質が変化して伸線性を劣化させるので、上限を1.5ppmとした。より好ましくは0.5ppm以下である。
次に、金属組織について説明する。
本発明では、上記成分組成を満たすことを前提として、その金属組織が、“bcc−Fe結晶粒について、平均結晶粒径(Dave)が20μm以下で、且つ最大結晶粒径(Dmax)が120μm以下”であることを必須とする。
より好ましくは、同じくbcc−Fe結晶粒について、“粒径が80μm以上である結晶粒の面積率が40%以下”、“平均亜結晶粒径(dave)が10μm以下で最大亜結晶粒径(dmax)が50μm以下”で、あるいは更に“平均結晶粒径(Dave)と平均亜結晶粒径(dave)の比(Dave/dave)が4.5以下”であるものである。
伸線時の代表的な断線形態には、例えば「硬鋼線の伸線加工限界とその支配要因、塑性と加工」(高橋ら)、Vol.19(1978),第726頁にも示されている様に、カッピー断線と縦割れ・せん断割れがある。これによると、カッピー断線は素線材のパーライトブロックが粗くて延性が乏しい場合に発生するとされている。そこで例えば特開2004−91912号公報でも、パーライトブロック粒度番号を6〜8番に制御することで耐断線性の改善を図っている。しかしこの発明でも、伸線加工時における伸線速度の上昇を実現するまでには至っていない。
そこで本発明者らは、『カッピー断線は、伸線加工時に結晶回転がスムーズに起こらなかった場所にボイドが発生し成長して破断に至るものであり、たとえ結晶粒度番号で代表される平均的な結晶粒径を微細化しても、粗大な結晶粒が存在すればその部分でボイドが発生し、これが断線を引き起こす』という考え方に基づいて、結晶粒径のサイズと分布の制御に取り組んだ。
また本発明で対象とする相対的に高炭素の鋼線材は、パーライト主体の組織に制御されることが多いため、線材の延性はパーライトブロックで代表されていることが多い(「共析パーライト鋼の延性支配因子」高橋ら,日本金属学会誌,vol.42(1978)第708頁)。しかし通常の鋼材は、フェライトやベイナイトなど他の組織が混在していることから、本発明者らはパーライト以外の組織も含めた全体の結晶粒径のサイズと分布を考慮すべきであるとの考えの下に検討を重ねた。
その結果、本発明で規定する如く、平均結晶粒径(Dave)を20μm以下に微細化した上で、最大結晶粒径(Dmax)を120μm以下に制御すれば、伸線性が大幅に改善されることを突き止めた。ちなみに、平均結晶粒径(Dave)が20μmを超えると、素線が延性不足となる。また、仮に平均結晶粒径(Dave)が20μm以下であったとしても、最大結晶粒径(Dmax)が120μmを超えると伸線加工時に破断し易くなる。更に高度の伸線性を得るには、平均結晶粒径(Dave)を17μm以下とするのがよく、最大結晶粒径(Dmax)は100μm以下とするのがよい。
金属組織面からすると、上記平均結晶粒径(Dave)と最大結晶粒径(Dmax)を特定することで、本発明の一応の目的は達成されるが、伸線加工性の更なる向上を図るには、こうした要件に加えて、下記の要件を満たす様に制御することが望ましい。
即ち、同じく金属組織のbcc−Fe結晶粒において、粒径が80μm以上である結晶粒を面積率で40%以下に制御し、結晶粒全体を均一微細化すれば、伸線性を更に改善することができる。粒径80μm以上の結晶粒のより好ましい面積率は25%以下で、特に好ましいのは0%である。
また、伸線性の更なる向上を目指して更に検討を重ねたところ、隣接する結晶との方位差が小さい境界を持つ結晶単位である所謂亜結晶粒も結晶回転に影響しており、平均亜結晶粒径(dave)を10μm以下、最大亜結晶粒径(dmax)を50μm以下に抑えれば、伸線性が一段と高められることを知った。即ち、粗大な亜結晶粒径のものを少なくして均一微細化すると応力集中部が低減し、ボイド発生が抑制されるためと考えられる。こうした効果を発揮させる上でより好ましい平均亜結晶粒径(dave)は7μm以下、最大亜結晶粒径(dmax)は40μm以下である。
更に、平均結晶粒径(Dave)と平均亜結晶粒径(dave)については、上述した範囲内で両者の比(Dave/dave)を小さく抑えれば、伸線性が一段と向上することが確認された。伸線中の結晶回転が鋼素材全体に渡ってスムーズとなり、応力集中を起こし難くなるためと考えられる。こうした作用を有効に発揮させる上で好ましい(Dave/dave)比は4.5以下、より好ましくは4.0以下である。
更に本発明において、伸線性の更なる向上を図るには、『TS≦1240×Wc0.52』(TSは鋼線材の引張強度、Wcは当該鋼線材中のC濃度を表わす)の関係を満たす様に制御することも有効となる。
伸線速度を上昇させ、減面率を増大すると、ボイドが発生し易くなるばかりでなく、鋼線材やダイスの温度が上昇し、断線(縦割れ・せん断割れ)やダイス寿命の低下につながる。伸線速度や減面率が同一であるとき、温度上昇は線材の強度にも大きな影響を及ぼし、引張強度の低いものほど温度上昇は低く抑えられる。また鋼線材全体としての引張強度には、線材内の強度ばらつきの影響も大きく、また、引張強度は鋼線材中のC含量によってほぼ決まってくること、そして、該引張強度(TS)と当該鋼線材のC含量(Wc)の関係が上記式の関係を満たす様に調整すれば、伸線時の温度上昇による断線が有為に抑制されると共に、ダイス寿命も向上することが確認された。
更に加えて本発明では、伸線加工性の一層の向上を図るため、鋼線材の表層脱炭量とスケール付着量が伸線性に与える影響についても検討を加えたところ、『表層トータル脱炭量(Dm-t)が100μm以下で、表層スケール付着量が0.15〜0.85質量%であるもの』も優れた伸線加工性を示すことが確認された。
ちなみに、鋼線材の成分設計や組織制御により伸線性を改善した場合でも、鋼線材表面のスケール性状によって伸線性は影響を受ける。鋼線材は、伸線加工に先立って化学的、機械的に脱スケール処理されるが、その工程でスケールが除去しきれず残存したまま伸線加工を行うと、ダイス欠損を引き起こす。スケール付着量がスケール剥離性に及ぼす影響は大きく、スケール付着量が多いほどその剥離性は良好であるが、多過ぎると剥離後に発錆することがある。また、鋼線材表面で脱炭が起こっている場合、スケール付着量が十分であっても、スケールが脱炭部に噛み込んでスケール剥離が困難になる。そのため本発明では、スケール由来の伸線性阻害要因を極力低減するための要件についても追求した結果、上記の様に、表層トータル脱炭量(Dm-T)を100μm以下に制御し、更に表層スケール付着量を0.15〜0.85質量%の範囲に制御すれば、スケール起因の伸線性低下を可及的に抑制できることを確認したのである。
次に、上記特性を備えた高炭素鋼線材の製造方法について説明する。
まず第1の方法は、前述した成分組成の要件を満たす鋼からなる730〜1050℃に加熱された鋼線材を、平均冷却速度15℃/秒以上の速度で冷却し、470〜640℃の温度(T)まで冷却した後、該温度(T)よりも高温である550〜720℃の温度(T)まで3℃/秒以上の平均昇温速度で加熱する方法である。
また第2の方法は、同じく前述した成分組成の要件を満たす鋼材を900〜1260℃に加熱し、740℃以上の温度で熱間圧延すると共に1100℃以下の温度で仕上げ圧延した後、750〜950℃の温度域まで水冷して搬送装置上に巻取り、その後、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することにより、巻取り終了から20秒以内に鋼材温度の極小値(T)を500〜630℃まで降下させてから加熱し、巻取り終了から45秒以内に鋼材温度の極大値(T)を上記極小値(T)よりも高温である580〜720℃に高める方法である。
即ち上記特性を備えた鋼線材を得るには、炭化物を一旦固溶して変態前の組織を均一にするため、まず730℃以上に加熱する必要がある。このとき、加熱温度が高いほどスケール剥離性は向上するが、加熱温度が1050℃を超えると変態前の結晶粒が粗大化し、引き続いて行う冷却工程で変態による組織制御が困難になるので、加熱温度は1050℃以下に抑えるべきである。このときのより好ましい加熱温度は750℃以上、1000℃以下である。
また該加熱後の冷却工程で、前述した本発明の制御対象とする結晶粒径が決まってくる。結晶粒径を極力均一且つ微細化するには、該加熱後の冷却速度をできるだけ速くした方がよく、本発明では平均冷却速度を15℃/秒以上と定めている。また、冷却時の到達温度(T)が低いほど結晶粒は微細化するが、470℃を下回る温度まで冷却すると伸線性を害する過冷組織が生成し易くなるため、下限を470℃と定めた。到達温度が640℃超では、平均粒径が粗大化するので少なくとも640℃以下にまでは冷却しなければならない。該冷却時のより好ましい到達温度は480℃以上、630℃以下である。
本発明では、結晶粒微細化のための上記冷却工程に引き続いて、到達温度(T)よりも高温である550〜720℃の温度(T)に昇温することを必須とする。この昇温時の温度(T)は鋼材の強度に顕著な影響を及ぼし、該温度(T)が高くなるほど強度は低下し、伸線加工性には有利となる。550℃未満では強度低下が不十分であり、一方、720℃を超えて過度に高温になると、変態が不十分となり却って強度上昇を招くことがある。該昇温時のより好ましい到達温度は580℃以上、715℃以下である。
すなわち、470℃以上、640℃以下(より好ましくは480℃以上、630℃以下)の温度(T)にまで一旦冷却した後、T<Tであり550℃以上、720℃以下(より好ましくは580℃以上、715℃以下、更に好ましくは710℃以下)の温度(T)に再加熱することで、結晶粒が均一微細で低強度の鋼材が得られる。
但しこの際、温度(T)から温度(T)への平均昇温速度が遅過ぎると、本発明が意図するレベルまでの低強度化が達成できなくなるので、この間の平均昇温速度は3℃/秒以上とすることが不可欠の要件となる。即ち上記第1の方法で伸線性に優れた鋼線材を得るには、730℃以上、1050℃以下(より好ましくは750℃以上、1000℃以下)に加熱された線材を平均冷却速度15℃/秒以上で470℃以上、640℃以下(より好ましくは480℃以上、630℃以下)の温度(T)まで冷却した後、該温度(T)よりも高温である550℃以上、720℃以下(より好ましくは580℃以上、715℃以下、更に好ましくは710℃以下)の温度(T)に3℃/秒以上の速度で昇温することが重要となる。
一方、本発明が適用される鋼線材が熱間圧延線材である場合は、前記第2の方法を適用して下記の様に制御する。
まず、加熱炉で900〜1260℃に加熱した後、740℃以上の温度で熱間圧延し、仕上げ圧延温度は1100℃以下に制御する。加熱温度が900℃未満では加熱が不十分であり、1260℃を超えると表層脱炭域が広くなるからである。より好ましい加熱温度は900℃以上、1250℃以下である。また、圧延温度を下げると表層脱炭が促進されて結果的にスケール剥離性が劣化するので、熱間圧延の下限温度は740℃と定めた。より好ましい下限温度は780℃である。また仕上げ圧延温度が1100℃を超えると、次工程で行う冷却、再加熱による変態組織制御が困難になるため、仕上げ圧延温度の上限は1100℃と定めた。
仕上げ圧延の後は750〜950℃に水冷し、コンベア等の搬送装置上に巻取って載置する。水冷後に行う温度管理は、その後の変態制御とスケール制御のためであるが、冷却時の到達温度が750℃を下回る低温になると表層に過冷組織が生成し、一方、950℃を超える高温域ではスケールの変形能がなくなり、運搬時に剥離して錆発生の原因になる。
巻取り後は、平均冷却速度15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、搬送装置上への巻取り載置から20秒以内に鋼材温度の最低値を500〜630℃の温度(T)に制御すると共に、引き続いて該温度(T)から、載置後45秒までに鋼材温度の最高値を上記温度(T)よりも高温である580〜720℃の温度(T)に再加熱することが、伸線性に優れた金属組織を得る上で重要な要件となる。
即ち、巻取り載置後20秒以内の最低温度(T)が500〜630℃となる様に15℃/秒以上の速度で制御冷却することで、結晶粒を均一且つ微細にすることができる。冷却速度が15℃/秒未満では、冷却速度不足で金属組織を十分に均一微細化できず、一部粗大粒が発生する。この時の冷却速度は速いほど金属組織の微細化には有効であるが、熱間圧延後に衝風冷却する場合は鋼線材内の冷却速度のばらつきが大きくなり易い。従って、冷却速度は120℃/秒以下、より好ましくは100℃/秒以下にするのがよい。また、この冷却工程で480℃未満にまで冷却した場合も表層に過冷組織が発生し、逆に630℃を超えた場合は粗大粒が生成し易くなる。巻取り載置から20秒以内に好適温度域まで冷却しない場合も、金属組織が粗大化する。
該冷却の後は、続いて該温度(T)から、巻取り載置より45秒までに鋼材温度の最高値が該温度(T)よりも高温である580〜720℃の温度(T)に制御することで、熱間圧延材の強度を有為に低下させることができる。このときの低強度化をより効果的に進めるには、巻取り載置から該温度域に達するまでの時間を42秒以内、更に好ましくは40秒以内とするのがよい。ここで、温度Tが温度Tよりも低かったり、温度Tが580℃未満である場合は強度が不十分となり、温度Tが720℃を超える場合は、強度と共に延性も低くなる。
以上の様に、伸線性に優れた熱間圧延線材を得るには前記第2の方法を採用し、加熱炉で900〜1260℃(より好ましくは900〜1250℃)に加熱した後、圧延温度740℃以上(より好ましくは780℃以上)で熱間圧延し、仕上げ圧延温度は1100℃以下に制御し、引き続いて750〜950℃に水冷して搬送装置上に巻取り載置した後、15℃/秒以上の速度で冷却し、巻取り載置から20秒以内の鋼材温度の最低値を500〜630℃の温度(T)に制御し、次いで該温度(T)から、巻取り載置から45秒までの鋼材温度の最高値をT<Tで580〜720℃の温度(T)に制御することで、伸線加工性に優れた高炭素鋼線材を効率よく得ることができる。温度(T)の好ましい範囲は580〜715℃、更に好ましいのは580〜710℃である。
以下、実験例を挙げて本発明の構成および作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実験例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
実験例1
表1に示す化学組成を有する直径5.5mmの熱間圧延鋼線材を作製した。なお、表1中のREMは、La,Ce,PrおよびNdの合計量である。得られた各熱間圧延鋼線材を、図1および表2,3に示す条件で大気炉加熱し、鉛炉へ連続的に装入して熱処理することにより、種々の鋼線材を得た。なお本実験例では大気炉と鉛炉を用いて熱処理した例を示したが、本発明はもとよりこれらの設備の使用に限定されるものではなく、他の加熱炉や保持炉を使用することも勿論可能である。
得られた各鋼線材について、組織的特徴とスケール特性および引張特性を評価した。組織的特徴のうち、結晶粒と亜結晶粒の結晶単位に関しては、本発明では各結晶単位のばらつきを評価することが重要であることから、その評価手法としてSEM/EBSP(Electron Back Scatter diffraction Pattern)法を採用した。尚、SEMとしてはJEOL社製の商品名「JSM−5410」を使用し、EBSP法には、TSL社製の「OIM(Orientation Imaging Microscopy)システム」を使用した。
各鋼線材から湿式切断で試料を採取した後、EBSP測定用の試料調整に湿式研磨、バフ研磨、化学研磨を採用し、研磨加工の歪みと凹凸を極力低減した試料を作成した。このとき、観察面が鋼線材の縦断面となる様に研磨加工した。
得られた試料を使用し、鋼線材の線径中心部をEBSP測定位置として測定を行った。測定ステップは0.5μm以下とし、各鋼線材の測定面積が60000μm以上となる様にした。測定後に結晶方位の解析を行ったが、解析の信頼性を高めるため、平均CI(Confidence Index)値が0.3以上である測定結果を用いて解析した。
bcc−Fe結晶方位の解析により、本発明で意図する結晶単位としては方位角度差が10°以上である境界線に囲まれる領域を「結晶粒」、方位角度差が2°以上である境界線に囲まれる領域を「亜結晶粒」として、各々の解析結果(バウンダリーマップ:一例を図2に示す)を得、各バウンダリーマップを画像解析ソフト「Image-Pro」で処理して各結晶単位を計算し評価した。
まず、上記「Image-Pro」でバウンダリーマップにて境界線で囲まれる個々の領域(結晶単位)の面積を求める。次に、その面積を元に個々の結晶単位を円相当径に近似して計算した円直径を個々の結晶粒径として採用した。それらの計算結果を元に、図3に一例を示す如く統計処理することによって、平均結晶粒径(Dave)、平均亜結晶粒径(dave)、最大結晶粒径(Dmax)、最大亜結晶粒径(dmax)、80μm以上の結晶粒の占める面積率、平均結晶粒径と平均亜結晶粒径の比(Dave/dave)を夫々求めた。
組織的特徴のうちトータル脱炭量は、JIS G0558に記載されている測定方法によって求めた。試料は鋼線材から切断採取し、線材横断面が観察面となる様に樹脂に埋め込んだ後、湿式研磨、バフ研磨を施し、5%ナイタールで金属組織を現出させて光学顕微鏡観察を行い、鋼線材表層の脱炭量を測定した。脱炭評価は各鋼線材につき各々2個以上測定し、平均値を求めた。
またスケール特性は、鋼線材表層に付着しているスケール量によって評価した。具体的には、各鋼線材から長さ200mmの試料を切断採取し、塩酸を用いた酸洗前後の試料の重量差からスケール付着量を計算した。スケール評価には、各鋼線材について10本以上測定してその平均値を用いた。
引張特性の評価は、各鋼線材から長さ400mmの試料を切断採取し、万能試験機によりクロスヘッドスピード10mm/min、ゲージ長150mmで引張試験を行った。各鋼線材につき40本以上測定し、それらの平均値を引張強度(TS:MPa)および絞り値(RA:%)とした。
次に、伸線性の評価について述べる。各鋼線材は、伸線前工程として脱スケール処理および潤滑皮膜処理を行った。脱スケール処理には塩酸を使用し、酸洗処理によりスケールを除去した。スケール除去後、潤滑皮膜処理として各鋼線材表面に燐酸塩皮膜を付与してから伸線加工に供した。その後、連続伸線機によって最終線径で0.9mmまで乾式伸線加工を行った。
この実験例では、伸線加工時の生産性向上を目的とし、伸線加工条件としては、最終伸線速度600m/分でダイス数14個の条件(1)、ダイス数は14個のままで最終伸線速度を800m/分に高めた条件(2)、更に最終伸線速度800m/分でダイス数を12個に減らした条件(3)の3つの条件で実施した。
条件(1)から(3)になるにつれて、伸線加工の生産性は向上するが伸線加工条件は厳しくなり、伸線加工に供する鋼線材には高い伸線性が必要となる。この3つの条件で各鋼線材につき50トンずつ伸線加工を行い、伸線中の断線の有無とダイス寿命を評価した。ダイス寿命の評価は、伸線中にダイスが破損した場合は(×)評価とし、50トンの伸線加工中にダイス破損は生じないがダイスが磨耗し、伸線後にダイス交換を必要とする場合は(△)評価、50トン伸線後にもダイス破損および磨耗によるダイス交換の必要性がない場合を(○)評価とした。(−)で示したのは、断線したためダイス寿命を評価するに至らなかったものである。
結果を表4および図4に示す。
Figure 0004621133
Figure 0004621133
Figure 0004621133
Figure 0004621133
表1〜4より、次の様に解析できる。
まず、平均結晶粒径(Dave)と最大結晶粒径(Dmax)については、図4にまとめて示す如く、(Dave)を20μm以下、(Dmax)を120μm以下に制御することで伸線性が向上し、伸線速度を上げても破断せず高速伸線が可能になる。更に、付加的要件として、(Dave)を17μm以下、(Dmax)を100μm以下に組織を均一微細化し、平均亜結晶粒径(dave)を10μm以下、最大亜結晶粒径(dmax)を50μm以下、(Dave/dave)比を4.5以下に制御し、TSを1240×Wc0.52以下に低強度化すれば、高速伸線化に加えてダイス数を減少しても断線なく伸線が可能となり、伸線加工性を一段と高めることができる。
平均結晶粒径(Dave)と最大結晶粒径(Dmax)の要件は満たすものの、上記付加的要件を満たしていない表2〜4のNo.2、14、18、24、29、30、40、41は、高速伸線化は可能であるものの、ダイス数が減少したときに破断が発生している。また、ダイス寿命の観点からすると、スケール剥離性がよくない表2〜4のNo.3は、伸線条件を厳しくしても伸線中の断線は生じないが、伸線後にダイス交換を必要とするほどダイス寿命に悪影響がみられる。また、鋼が軟質化不足で『TS≦1240×Wc0.52』を満たしていない表2〜4のNo.29、30、40も、ダイス寿命がよくない。
その他、伸線性に及ぼす成分組成の影響は表3,4のNo.43〜48に現われている。即ち、表3,4のNo.43、44で用いている鋼種A16、A17はP,S含有量が高いため、金属組織は適正に制御しているにもかかわらず断線が発生している。また、表3,4のNo.45で用いている鋼種A18は、Si含有量が多過ぎるため顕著な脱炭を起こしておりスケール剥離性が悪く、また強度も高過ぎるため伸線中にダイス破損や断線が発生している。
表3,4のNo.46で用いている鋼種A19は、Mn含量が多過ぎるため過冷組織が生じて強度が高く、No.47の鋼種A20はN含有量が多過ぎるため延性不足であり、伸線中にひずみ時効脆化を起こし易い。No.48の鋼種A21も同様にC含量が規定値を超えているため、延性が乏しいうえに伸線中のひずみ時効脆化を生じ易い。
以上の様に、鋼成分が本発明の規定範囲から外れているものは、本発明の組織的特徴を満たしていても満足のいく伸線性は得られない。
実験例2
熱間圧延のままで伸線性を向上させるため、下記表5に示す鋼種を用いて検討を行った。表5に示した鋼種は、B4を除いて、全て本発明で定める成分組成の要件を満足している。表5中のREMは、La,Ce,PrおよびNdの合計含量である。
表5に記載の鋼種を、表6および図5に示す条件で熱間圧延した。熱間圧延材の場合は、加熱炉から圧延、冷却まで全ての工程において制御する必要があり、図5に示す如く前記実験例1の場合(図1)よりも管理項目が複雑となる。得られた熱間圧延材に対し、前記実験例1と同様にして組織的特徴、スケール特性、引張特性、伸線性を評価した。
結果は表6〜8および図6にまとめて示す通りであり、熱間圧延においても、加熱から巻取り冷却に渡る一連の工程の各管理項目を適切に制御することで、組織的特徴、スケール特性および引張特性を本発明の規定範囲内に制御することができ、伸線性評価結果から、熱間圧延ままでも優れた伸線性が得られることを確認できる。
Figure 0004621133
Figure 0004621133
Figure 0004621133
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以上の説明した様に、所定成分組成の要件を満たす炭素鋼線において、特に平均結晶粒径(Dave)を20μm以下、最大結晶粒径(Dmax)を120μm以下とし、金属組織単位のサイズばらつきを低減すると共に均一微細化することで、優れた伸線性を有する高炭素鋼線材を得ることができる。
実験例1で採用した製造パターンの概略図である。 本発明で得た鋼線材のバウンダリーマップの1例を示す図である。 実験で得た鋼線材の結晶単位の評価例を示すグラフである。 実験例1で得た平均結晶粒径と最大結晶粒径が性能に及ぼす影響をまとめて示すグラフである。 実験例2で採用した製造パターンの概略図である。 実験例2で得た平均結晶粒径と最大結晶粒径が性能に及ぼす影響をまとめて示すグラフである。

Claims (9)

  1. 質量%で、C:0.6〜1.1%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、N:0.006%以下、Al:0.03%以下、O:0.0030%以下を満たし、更に、Mg:5ppm以下(0ppmを含まない)、Ca:5ppm以下(0ppmを含まない)、REM:1.5ppm以下(0ppmを含まない)から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、金属組織のbcc−Fe結晶粒において、平均結晶粒径(Dave)が20μm以下で、最大結晶粒径(Dmax)が120μm以下であることを特徴とする伸線性に優れた高炭素鋼線材。
  2. 前記金属組織のbcc−Fe結晶粒において、粒径が80μm以上であるものの占める面積率が40%以下である請求項1に記載の高炭素鋼線材。
  3. 前記金属組織のbcc−Fe結晶粒において、平均亜結晶粒径(dave)が10μm以下で、最大亜結晶粒径(dmax)が50μm以下である請求項1または2に記載の高炭素鋼線材。
  4. 前記金属組織のbcc−Fe結晶粒において、平均結晶粒径(Dave)と平均亜結晶粒径(dave)の比(Dave/dave)が4.5以下である請求項1〜3のいずれかに記載の高炭素鋼線材。
  5. 鋼線材の引張強度をTS、当該鋼線材中のC濃度をWcとしたとき、それらが下記式(1)の関係を満たすものである請求項1〜4のいずれかに記載の高炭素鋼線材。
    TS≦1240×Wc0.52……(1)
  6. 鋼が更に他の元素として、Cr:1.5%以下(0%を含まない)、Cu:1.0%以下(0%を含まない)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)から選ばれる少なくとも1種の元素を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の高炭素鋼線材。
  7. 表層のトータル脱炭量(Dm-T)が100μm以下であり、且つスケール付着量が0.15〜0.85質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の高炭素鋼線材。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の伸線性に優れた高炭素鋼線材の製法であって、
    前記請求項1または6に規定される成分組成の鋼からなり、730〜1050℃に加熱された鋼線材を、15℃/秒以上の平均冷却速度で470〜640℃の温度(T)まで冷却した後、該温度(T)よりも高温である550〜720℃の温度(T)まで3℃/秒以上の平均昇温速度で加熱することを特徴とする、伸線性に優れた高炭素鋼線材の製法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の伸線性に優れた高炭素鋼線材の製法であって、
    前記請求項1または6に規定される成分組成の鋼材を900〜1260℃に加熱し、740℃以上の温度で熱間圧延すると共に1100℃以下の温度で仕上げ圧延した後、750〜950℃の温度域まで水冷して搬送装置上に巻取り、その後、15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することにより、巻取り終了から20秒以内に鋼材温度の極小値(T)を500〜630℃まで降下させてから加熱し、巻取り終了から45秒以内に鋼材温度の極大値(T)を上記極小値(T)よりも高温である580〜720℃に高めることを特徴とする、伸線性に優れた高炭素鋼線材の製法。
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